p.33 抽出テキスト
群と比較して<25%および25~40%の群ではステント血栓症が有意に多かったと報告している214).一方,839例の慢性完全閉塞(CTO)病変例を対象とした前向き観察研究(93.6%でPCI 手技成功)は,LVEF ≧50%,35~50%, ≦35%の3群間で2年後の心血管イベントに差はなく, LVEF≦35%のPCI成功例では平均LVEFが29.1±3.4%から41.6±7.9%へと改善されたと報告している215).PCI技術や薬物治療の進歩が臨床成績に影響を与えていることが推測されるが,低心機能例と正常心機能例では患者背景が大きく異なる場合も少なくないので,観察研究の結果は常に慎重に解釈する必要があることを示唆している. 低心機能例を対象としたPCIとCABGのRCTも行われていないが,他のRCTのサブ解析や観察研究のデータが報告されている.SYNTAXスコア32以下の左冠動脈主幹部(LMT)病変例における,第2世代のエベロリムス溶出性ステント(EES)によるPCIとCABGを比較したEXCEL試験のサブ解析では,LVEF<50%の症例(PCI群111例, CABG群115例)において一次エンドポイント(3年の総死亡,脳卒中,心筋梗塞)の発生率に,PCI群(20.4%)とCABG群(18.2%)とで有意差はみられなかった193).第1世代のDESによる観察研究としては,CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2の報告がある.初回血行再建を受けた15,939例中3枝病変またはLMT病変を有する3584例が抽出され,収縮能が保持された症例(LVEF> 50%,2676例)では,傾向スコアで調整した5年の総死亡および心臓死はPCI群とCABG群で差がなかったが,収縮能の低下した症例(LVEF≦50%,908例)ではPCI群の総死亡(ハザード比HR 1.49,95%CI 1.04~2.14,P = 0.03)および心臓死(HR 2.39,95%CI 1.43~3.98,P< 0.01)はCABG群よりも高率であった216).新世代DESによるPCIの観察研究としては,左室収縮能の低下した(LVEF ≦35%)多枝病変例における血行再建として,第2世代EESを用いたPCIとCABGとの比較を行ったニューヨーク州レジストリーの報告がある217).傾向スコアマッチングによる2126例(PCI,CABGそれぞれ1063例)の中央値2.9年の観察期間で,PCI群はCABG群と同等の総死亡率(HR 1.01,95%CI 0.81~1.28,P =0.91)であった.PCI は遠隔期に心筋梗塞のリスクが高く,特に不完全血行再建に終わった症例や繰り返し血行再建を受けている症例ではその傾向が強かった.これに対してCABGは脳卒中のリスクが高かった.この研究では,完全血行再建が可能であれば低心機能の多枝病変であってもPCIは有意義な選択肢かもしれないと結論付けている. 一般的には,LVEF<50%の中等度~重度低心機能例では,CABGはPCIより良好な遠隔期生存率を示しており,遠隔期の心血管イベント発生率をより低下させることが示 されているが213, 218),CABGかPCIかの選択は,患者の臨床状態,冠動脈病変の解剖,どの程度まで血行再建できるか(完全血行再建が可能か),心筋バイアビリティ,併存する弁膜症,そして他の合併症などを慎重に考慮し,ハートチームによって決定されるべきである. 1.2 PCI 新世代DESを用いたPCIによるレジストリーではPCIとCABGの間で生命予後には差がないことも示されているが,低心機能例におけるPCIと薬物治療・CABGとのRCTは行われていないため,エビデンスとしては不十分である.心筋バイアビリティが残存しており,患者背景などからCABGの適応と考え難く,冠動脈病変が解剖学的にPCIに適していると判断される場合に,PCIが考慮される(表16). なお,高リスク例に対するPCIにおける大動脈バルーンパンピング(IABP)の予防的使用は,救済のためのIABP使用と比較して死亡率の低下と主要合併症の減少をもたらすことが,観察研究により報告されている219, 220).また,低心機能(平均LVEF 23.6%)で広範な冠動脈疾患を有する症例を対象としたRCTであるBCIS-1では,IABPの予防的使用を行う群と行わない群でPCI後のアウトカムに差はみられなかったが,予防的使用を行わない群でも12%の例でPCI中にIABPを必要とした221).したがって,低心機能例に対するPCIにおいてルーチンの予防的IABP使用は推奨されないが,高リスク症例ではIABPを直ちに使用できるよう準備を整えておくことが重要と考えられる. 近年登場した補助循環用ポンプカテーテル(Impella ®)は,カテーテル式の小型軸流ポンプ循環補助装置で, IABPよりも高流量の循環補助が可能であり,VA-ECMO (体外式膜型人工肺)で問題となる左室への後負荷を軽減することができるデバイスである.本邦では現在,心原性ショックを呈し,内科的治療抵抗性の急性左心不全症例が適応とされ,多施設後ろ向き研究では心原性ショックを呈する急性冠症候群症例(36例)の非保護LMT病変に対するPCIにおいて,Impella 2.5をPCI前に挿入した例のほうがPCI後に挿入した例よりも30日生存率が有意に高かったこと(48.1%対12.5%,P=0.004)が報告されている222).また,心原性ショックを呈する急性心筋梗塞例(48例)を対象としたImpellaとIABPのRCTでは,30日予後および6ヵ月予後は両群間で有意差が認められていない223).低心機能例に対する待機的PCIにおけるImpella使用に関するエビデンスは十分ではなく,今後のRCTの結果やレジス