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p.31 抽出テキスト

4 血行再建のタイミングと ad hoc PCI

血行再建の遅れは心筋梗塞合併などのリスクを伴うため,血行再建を行うことを決定した後ある一定期間内に行ったほうが安全である204–206).2018年のESC/EACTSのガイドラインではLMT病変例や,抗狭心症薬内服にても高頻度に狭心症症状を呈するような重症例では2週間以内,その他の安定狭心症で血行再建の適応がある症例は6週間以内に,血行再建を行うことを推奨している64).

4.1 ad hoc PCI

冠動脈CTの普及によって術前に冠動脈病変の把握が可能となったため,診断のための冠動脈造影に引き続いてPCIを実施するad hoc PCIは一つの治療戦略となっている.この手法は簡便であり,費用や患者負担においてもメリットを有すると考えられる.実際,CREDO-Kyotoコホート2 の検討では,ad hoc 1722例(24.8%)と非ad hoc 5221例(75.1%)で調整後5年生存率に差はなく(15%対15%, P=0.53),ad hoc PCIはむしろ脳卒中リスクを軽減した(ハザード比0.78,P=0.06) 207).このようにad hoc PCIの有用性は否定できないが,ad hoc PCIは適応が曖昧となりやすく,不要なPCIを増長させるリスクがある.インフォームドコンセントが不十分となりやすいなどのデメリットも内在する.このため本ガイドラインでは,表15の3項目を満たす場合に限りad hoc PCIを許容し,ルーチンでの実践

は推奨しないこととした.

4.2 staged PCI

staged PCIは多枝病変における一つの治療戦略である. PCIを複数回に分けて実施することにより,1回の手技時間は短縮され,造影剤腎症のリスク,被曝に伴う障害が低減されるといったメリットが想定される.安全性,有効性の両面からstaged PCIは有益である可能性があるが,これらの点におけるstaged PCIの優位性は示されていない208).したがって,多枝病変例であっても一機的にPCIを計画するほうが妥当と考えられる.しかし,実際には多くの理由によってstaged PCIが選択されている.その理由は腎機能障害,造影剤使用量,病変の複雑性,急性冠症候群,被曝線量,年齢,低心機能,手技合併症など多岐にわたる209).

このような現況を踏まえ,米国SCAIでは2012年に合意文書としてstaged PCIについての考え方を提示している210).多枝病変に対し一機的PCIを施行する条件としては,1機能的狭窄度(虚血の程度)が有意であることに加え,症状,予後の観点から主病変以外の病変に対するPCI施行の理由が明白であること,2合併症がなく,主病変の治療に成功し,造影剤,被曝の点でまだ十分に余裕があること,3患者からの要望があり,PCIの遅延は患者に不利益を生む可能性があること,などが挙げられている.

造影剤,被曝など安全性の観点でPCIには制限があるため,すべての術者は事前にどの病変に対し治療または虚血評価を行うか,その順番をどうするか,治療手技はどうするか,そして治療のタイミングをどうするか(一機的かstaged PCIか)について計画し,患者にインフォームしておくべきであり,予定と異なる事態に陥った場合には柔軟性をもって対応することが肝要である.

表15 ad hoc PCI が許容されるケース

1. 虚血の証明がなされている. 2.  解剖学的にPCIを選択することをハートチームで決定している. 3.  患者への説明が十分になされている.