GL検索 v0.1.0
画像は 30 ページを描画したものです
page 30

p.30 抽出テキスト

SYNTAXスコア32以下のLMT病変1905例が,CABGと第2世代のDESによるPCIの2群に割り付けられ,3年間追跡された.総死亡,心筋梗塞,脳卒中の複合エンドポイントはPCI群15.4%,CABG群14.7%でPCI群の非劣性が示された193).PCIの非劣性は一貫しており,DM,慢性腎臓病,分岐部病変などの因子による相互作用は認められなかった193).NOBLE試験では,1201例がステントストラットの厚い初期のDESを用いたPCIとCABGに割りつけられ,5年間のMACCE発生率が比較された.PCIのCABGに対する非劣性が仮説であったが,29%対19%(P= 0.0066)で仮説は確認されなかった.周術期心筋梗塞がイベントとして評価されなかったこと,死亡率に差はなかったもののステント血栓症が過去の報告よりもPCI群で高率であったこと,遠隔期脳卒中合併がPCI群で高率であったことが要因であると指摘されている194).

DESを用いたPCIとCABGによるこれらRCTのメタ解析が報告されているが,いずれも5年までの生命予後,心筋梗塞発症については,両群間に差は認められていない195–198).また,4478例のプール解析ではDM例でもCABGとPCIで成績に差はなかったと結論している173).

このようにPCIはLMT病変に対してCABGに代わる再血行再建術となりうる可能性が示唆されている.しかし, SYNTAXスコアの値によって成績は均一でないことや198),短期的には安全性の面でPCIに,長期的には主として再血行再建のリスクの面からCABGにメリットがあることも指摘されている.最終的な結論を得るためにはより長期の追跡結果が必要であろう.

なお,本邦から,シングルステント例は分岐部LMTであっても非分岐部LMTと5年後の成績に差がないこと, 2ステント例は生命予後で差はないものの再血行再建を含め死亡,血栓症のリスクが若干高率であることが報告されている171).したがって,ほとんどの分岐部病変でPCIの成績はCABGと遜色ないものと考えられるが,すべてのLMT病変を一律に扱うことはできない.本ガイドラインでは2ステント留置を必要とする分岐部病変はSYNTAXスコアの値に関係なくクラスIIbとし,ハートチームによる議論を原則とした.複雑病変に対するPCIでは常に術者の技量,経験,患者背景などを勘案する必要がある. 3.5 完全血行再建

表14 完全血行再建の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

多枝病変に対して行う. I A機能的狭窄度評価(虚血の評価)に基づいて行う. IIa B

完全血行再建は一般的には血管造影所見により定義されている.すなわち,灌流域によらず,1.5 mm以上の枝が50%以上の狭窄を来していて,それらの枝がすべて血行再建された場合に完全血行再建と判断される199).この定義に基づいて完全血行再建,不完全血行再建が予後に及ぼす影響が検討されている.

不完全血行再建ではPCI,CABG後の長期成績が悪化したという報告がある199, 200).一方,CABG後では悪化がなかったがPCI後は悪化したという報告や201),PCI後もCABG後も成績に影響しなかったという報告もある202). CABGによる不完全血行再建はおもに吻合する冠動脈の径が小さいか,またはび漫性病変であることによると考えられ,PCIでの不完全血行再建は完全閉塞病変,高度石灰化病変など手技難易度,複雑性が原因として上記の要因に加わる.PCIによる近位部病変の不完全血行再建では末梢に重要な灌流域を残し,臨床的な影響を残しやすい可能性がある.

生命予後の観点から多枝病変では基本的には完全血行再建を心がけるべきであろうが,血管径など解剖学的な所見のみで完全血行再建を行うべきかどうかを決定することには限界がある.その枝の灌流域の広さや生存心筋量が血行再建後の予後に大きな影響を及ぼすことを考慮して血行再建を決定すべきであることは,論を待たない.心筋血流予備量比(FFR)に基づく血行再建がグラフトの開存性を改善するという報告もあり203),PCI,CABGともに虚血の評価に基づいた完全血行再建で,より長期成績の改善が見込まれると考えられる.さらには,治療の目標に基づいて血行再建の範囲が決定されるべきである.