p.29 抽出テキスト
の有無とその程度,2心不全など予後規定因子の有無, 3狭心症症状の重症度,4薬物治療の内容の4項目が方針決定のポイントであるとする米国のAUCの考え方を推奨する170).なお,理論的根拠は希薄であるが,左冠動脈優位の回旋枝近位部病変はLAD近位部病変と同じ臨床的位置づけとされている170). 3.3 多枝病変 DMを合併する多枝病変例を対象とした研究にはBARI 2D試験,FREEDOM試験がある172, 183).血行再建(CABGまたはPCI)を優先する戦略と至適薬物治療を優先する治療戦略を比較したBARI 2D試験では,CABGによる治療のみが薬物治療優先に比して心臓死,心筋梗塞合併ともに低率であった183).1900例がCABGとPCIに割り付けられ予後が比較されたFREEDOM試験では,CABG群の5年死亡率および心筋梗塞合併率は有意に低率(死亡10.9%対16.3%,心筋梗塞6.0%対13.9%)で,脳卒中合併率は有意に高率(5.2%対2.4%)であった. 冠動脈病変の複雑性評価の重要性を明らかにしたのがSYNTAX試験である.5年の総死亡率はCABG群9.2%対PCI群14.6%,心筋梗塞発生率は3.3%対10.6%,再血行再建率は12.6%対25.4%で,いずれのエンドポイントもCABG群のほうが有意に優れていた(それぞれP=0.006, P=0.001,P=0.001).SYNTAXスコアによる層別化のサブ解析では,低スコア(0~22)例では複合エンドポイント(総死亡,心筋梗塞,再血行再建)に差を認めなかったが(26.8%対33.3%,P=0.21),中等度スコア(23~32)例と高スコア(≧33)例ではCABG群のほうが複合エンドポイントが有意に低率であった(それぞれ22.6%対37.9%:P= 0.0008,24.1%対41.9%:P=0.0005) 143). その後に報告された臨床試験の成績はSYNTAX試験とほぼ同様の成績である.たとえば,BEST試験では880例が第2世代のDESによるPCIとCABGの2群に割り付けられ,4.6年の追跡で両群の死亡率には差はなかったが, PCI群で心筋梗塞合併,再血行再建が有意に高率であった142).11の比較試験における3枝病変5054例のプール解析では,非DM例ではCABGとPCIに成績の差を認めないが,DM例ではCABGのほうが5年死亡率は良好であり,この差異はSYNTAXスコアが高いほど顕著であった173). 後ろ向き解析ではあるが,CREDO-Kyotoレジストリーでは3枝病変5651例の成績がCABGとPCIで比較され, CABG施行と脳卒中のリスクの上昇が関連したものの,総合的な死亡リスクの低下との関連もみられた184).さらにCREDO-Kyotoは同時期の米国レジストリーとの比較も行っており,DM合併例では血行再建後の予後が両国にお いて異なることも報告している174). ニューヨーク州レジストリーからはCABGと第1世代のDESによるPCIとの比較,および第2世代DESによるPCIと同時期CABGとの比較が報告されている185, 186).2002年~2005年の8121例の検討ではCABG群のほうが5年生存率が有意に良好であったが185),2015年の報告では死亡率には両群間で差が認められなかった(平均2.8年の観察, PCI群3.1%/年,CABG群2.9%/年,P=0.50).しかし,依然として心筋梗塞合併(1.9%/年 対1.1%/年,P<0.001)と再血行再建(7.2%/年 対3.1%/年,P<0.001)はPCI群で高率であり,逆に脳卒中のリスクはCABGで有意に高かった(0.7%/年 対1.0%/年,P<0.001) 186). このように多枝病変の治療成績は病変の複雑性とDMの有無によって規定される.一般的にDMで病変の複雑性が高度であればあるほどCABGのほうが有利である.このため本ガイドラインでは,DM,冠動脈病変重症度の2因子を組み合せた分類で層別し,推奨クラスを作成した. 3.4 左冠動脈主幹部病変 1980年代の臨床試験で薬物治療に対するCABGの優位性が示されて以来187–189),LMT病変はCABGによる血行再建の絶対的適応と考えられてきた.一方,PCIは遠隔期再狭窄率が高く,またLMT病変例の多くは多枝病変を合併していて,生命予後の観点からもCABGのほうが有利であったことから190, 191),不向きであるとされてきた.しかし最近では,症例を選択すればDESによる治療は5年までの成績でCABGと遜色ないことが報告されている142, 192). SYNTAX試験では705例のLMT病変に対するCABGとPCIが比較され,5年後の生存率(CABG群14.6%, PCI群12.8%,P=0.53),心筋梗塞発症率(CABG群4.8%, PCI群8.2%,P=0.10),複合エンドポイント(死亡,心筋梗塞,脳卒中,再血行再建)発生率(CABG群31.0%, PCI群36.9%,P=0.12)に差を認めなった.一方,脳卒中はCABG群,再血行再建はPCI群で有意に高率であった142, 192).さらに本試験のサブ解析では,複合エンドポイントの発生率がSYNTAXスコアによって異なることが示された.SYNTAXスコア0~22の低リスク例,23~32の中等度リスク例ではCABG群とPCI群とで差はないが(それぞれP=0.74,P=0.88),33以上の高リスク例ではPCI群のほうが有意に高率であった(P=0.003) 192).このサブ 解析の結果はSYNTAXスコア32以下の症例に対しPCIを選択することの妥当性を示唆している. この考え方は最近報告されたEXCEL試験で実証された.