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p.28 抽出テキスト

ただし,LMT単独病変で2ステントを要する場合はSYNTAXスコアの値に関係なく別のカテゴリー(IIbに相当)に分類した.これは,LMTに対するPCIの成績は著しく改善されたものの,1つのステントによる治療例に比し2ステント例は再血行再建を含め死亡,血栓症のリスクが若干高率であり,同一とは考え難いことによる171).

治療方針決定におけるもう一つの重要な因子はDMである.DM例におけるCABGの優位性は多くの臨床試験で示されているが144, 171),SYNTAXスコアとPCI,CABGの成績との関連を検討した研究はなかった.このような中,多枝病変とLMT病変に対する11の比較試験11,518例の個人データを用いたプール解析が2018年に発表された172).その結果は,多枝病変例の5年生命予後は,非DM例ではCABGとPCIで差がないが,DM例ではCABGのほうが有意に良好であり,その差は冠動脈病変の複雑性が高いほどより顕著であった173).他に同様のメタ解析はないが,本研究は質の高い主要な臨床試験がほぼ網羅された最大規模のプール解析であり,この成績を本ガイドラインに反映させることは妥当であると判断した.

本ガイドラインではこれらを総合的に勘案し,DM,冠動脈病変重症度の2因子を組み合せた分類で層別化し,推奨クラスを作成した.なお,本邦におけるDM合併例に対するCABG,PCIの成績は,いずれも米国より良好という報告があるが174, 175),DMを有する低SYNTAXスコア病変例に対するPCIやCABGの成績はいまだ存在しない.今後はこのギャップを補完するエビデンスの蓄積が必須である.

なお,第2世代のDESによってPCIの成績は安定し, CABGに匹敵する成績が期待できることが多くの試験で示されているが,臨床試験で検証された症例は比較的均一な背景を有する症例に限定されている.また,治療方針は病変部位や形態のみによって決定されるものではない.例えば,多枝の複雑病変に対する治療法として,完全血行再建のためにはPCIよりもCABGが優れており,また生命予後改善のためにもCABGのほうが有利である.一方,80歳以上の高齢者では狭心症のコントロール改善が治療の主眼となる場合が多く,この際には侵襲性で勝るPCIが選択肢となる.

このように治療方針は,治療の目標,治療法が含有する潜在的なリスク,術者の技量,患者の意向などから総合的に決定されるべきものである.このため,冠動脈病変以外のリスク評価が必須である.また,エビデンスが不十分であるため表13 で推奨クラスIIbまたはクラスIIIに分類される病変を有する症例については,各施設,地域での自施設の成績に準拠したハートチームによる有機的な議論が行われるべきである.

3.2 1枝病変

1枝病変はLAD近位部病変とその他の1 枝病変に大別される.

LAD近位部病変は予後に関係する高リスク病変であり,内胸動脈を用いたCABG,あるいは新世代のDESを用いたPCIが推奨される.古典的なメタ解析の結果によると, PCIの長期予後(死亡率,心筋梗塞・脳卒中発症率)はCABGと比べて遜色ないが,再血行再建率ではCABGに劣っている176, 177).しかし,メタ解析の対象となった臨床試験はベアメタルステント(BMS)時代のものであり, DESによって再血行再建率が著しく減じた今日178),PCIの成績は著しく向上したと推測される.実際,シロリムス溶出性ステント(SES)の前向き登録試験j-Cypherレジストリーは481例のLAD入口部病変と5369例のLAD 非入口部近位部病変の成績を比較し,3年間の再血行再建率,心筋梗塞/死亡リスクに差はなかったと報告している179).また,ニューヨーク州レジストリーは,傾向マッチングさせた単独LAD近位部病変に対するCABGとPCI(それぞれ715例)の成績を比較し,3年予後に差はなかったと報告している180).したがって,DESによるLAD入口部病変の治療は他のLAD病変の場合と比べて遜色ない成績を期待でき,多くのLAD入口部病変に対してPCIはCABGに代わる治療手段になりえると考えられる.

しかし,入口部完全閉塞病変や病変形態が複雑なLAD入口部病変では,依然として長期予後を考慮すべきであり, CABGが有力な選択肢となる.

LAD近位部病変以外の1枝病変に対する血行再建のメリットを示すエビデンスは不足しており,海外のガイドラインにおける推奨レベルは全く異なったものとなっている. 2012年のACC/AHAのガイドラインでは予後改善の観点からはPCI,CABGともにクラスIIIに分類されている181).これは,薬物治療を優先する治療戦略との比較で,PCIを優先する治療戦略の優位性が示されていないことを反映している88, 89).一方2018年のESC/EACTSのガイドラインでは,PCIはクラスI,CABGはクラスIIbである64).虚血ガイドのPCIと薬物治療の比較試験では一貫してPCIの有用性が示されており36, 40),虚血に関するデータを有する3つの比較試験(COURAGE試験のサブ解析,FAME 2, SWISSI)のメタ解析ではPCIが薬物治療よりも3年死亡率を低下させることが示されているからである182).

本ガイドラインにおける推奨レベルは2018年のESC/ EACTSのガイドラインと同一としたが,併せて,1虚血