p.24 抽出テキスト
従来の病変枝数による評価よりも冠動脈病変の重症度を正しく反映し,予後の推測にも有益であることが報告されている140). 冠動脈造影に基づく指標はその後,危険度スコアにLMT病変やバイパスグラフト病変のスコアを加えたBritish Cardiovascular Intervention Society myocardial jeopardy score(BCIS-JS)や141),病変形態の複雑性を加味したSYNTAXスコアへと発展した. 2.1.2 SYNTAXスコア SYNTAXスコアは今日最も汎用されているリスク評価指標である.左右冠動脈の優位性の評価,病変部位の評価,病変形態の評価の3ステップからなり,血管径2 mm以上で50%以上の狭窄病変はすべてが評価対象となる.この指標は過去の造影による評価を応用したもので,スコアの重みづけは厳格な統計的手法から導きだされたものではなく,専門家のコンセンサスによるものである.しかしながら,SYNTAX試験でPCI後の予後層別化に有益であることが示されたことから注目されるようになった142, 143).その後多くの研究で3枝病変例や主幹部病変例におけるPCIのリスク評価としての臨床的有用性が確認されている. SYNTAXスコア≦22は低リスク,23~32は中等度リスク, ≧33は高リスクの3段階に分類される.なお,CABGにおいては周術期成績と長期予後の予測におけるSYNTAXスコアの臨床的意義は高くない144). 2.1.3 解剖学的指標と患者背景因子を統合した指標 SYNTAXスコアは病変の解剖学的な複雑性や広がりを表現した指標であり,リスク評価指標としての有益性が示 されているが,長期予後は冠動脈病変の重症度のみで規定されるわけではなく,患者背景も重要な規定因子である.このため,SYNTAXスコアに患者背景を組み入れたいくつかの指標が提唱されている(表12). その代表がSYNTAXスコアIIである(図3).SYNTAXスコアに加えて年齢,クレアチニンクリアランス,LVEF,非保護主幹部病変,閉塞性末梢動脈疾患,性別,慢性閉塞性肺疾患を因子として組み入れており145),その有用性はPCI/CABG症例において検証されている146–149).LMT病変を対象としたEXCEL試験はSYNATXスコアIIを用いて対象をCABGとPCIに割り付けた比較試験であるが,術前の予測4年生存率と実際の予後はCABG,PCIともによく符合していた146).そのうえで,臨床像において高齢,男性,慢性閉塞性肺疾患の症例ではPCI群で,若年,女性,腎機能障害,低左心機能の症例ではCABG群で,実際の生命予後が予測よりも良好であったと報告している146). 本邦における検討としてはCREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2がある.PCIの2190例とCABGの1796例を対象とした検討で,両者の長期予後はSYNTAXスコアIIによって予測可能であり,リスク層別化においてSYNTAXスコアよりも有益であったと結論している147).さらなる検証が必要であるが,SYNTAXスコアIIはCABG,PCI双方の4年生命予後が予測可能である点から,治療方針の決定においてより具体的かつ有益な臨床的指標になりうると考えられる. 2.1.4 まとめ このように多くの指標が存在するが,個々のリスク評価指標どうしを比較した検討は少ない.また,超高齢社会を 表12 血行再建のリスク評価指標の分類 解剖学的病変評価・SYNTAXスコア・MSCT SYNTAXスコア解剖学的病変評価+臨床評価・Global Risk Classification・臨床SYNTAXスコア・ロジスティック臨床SYNTAXスコア・SYNTAXスコアII機能的狭窄度評価(虚血の評価)・機能的SYNTAXスコア術後評価・残存SYNTAXスコア・CABG SYNTAXスコア 図2危険度スコアにおける冠動脈のセグメント分類(Califf RM, et al. 1985 140) より) Copyright (1985) by the American College of Cardiology Foundation, with permission from Elsevier. https://www.sciencedirect.com/journal/journal-of-the-americancollege-of-cardiology 左冠動脈 右冠動脈左前下行枝・対角枝 左前下行枝回旋枝辺縁枝 中隔枝 後下行枝6 回旋枝 5 4 3 1 2