p.22 抽出テキスト
第4章 血行再建の準備 1 血行再建の意義 1.1 血行再建の原則 血行再建を考慮する場合の留意点を以下に要約する. 1 虚血が証明された病変であり,臨床的意義を有する病変 であることが必要条件である. 2 血行再建の目的が何であるか,すなわち症状の改善,心 血管イベント予防による予後改善のいずれであるか,または両方であるかを理解し,患者,医師の双方で認識が共有されている必要がある. 3 患者のリスクは術前に評価されるべきである.この評価 は病変のリスク評価と周術期リスク評価に分類される. SYNTAXスコアは冠動脈の重症度を示唆する病変リスクの合理的な代用指標であり,この指標を発展させたSYNTAXスコアIIはPCI,CABG後の4年予後を推測する指標である.両者は治療方針の決定において有益な情報を提供する.一方,周術期リスクとしてはSTSスコア,JapanSCOREが有益である.本ガイドラインではこれらの指標を用いて各症例のリスクを総合的に評価することを推奨する. 4 左冠動脈主幹部(LMT)病変,3枝病変など重症冠動脈 病変においてはハートチーム・アプローチによる決定を支持する.このため,重症冠動脈病変の冠動脈造影は診断にとどめ,ad hocでPCIを行うことなく,ハートチームでの議論を優先させることが望ましい. 1.2 血行再建の根拠 血行再建(PCI/CABG)が適切に行われれば虚血の改善により,臨床徴候の改善,心筋梗塞・死亡のリスク低下などの予後改善が期待できる.この効果は多くの臨床試験で示されている(表9) 64).なお,生活習慣の永続的な是正に加えて,薬物治療は血行再建時の短期リスクの軽減,血行 再建後の長期的な予後改善の両面から重要である.本ガイドラインでも,血行再建に先んじる適切な薬物治療の導入,さらに血行再建後の薬物治療の維持は必須であることを強調した.このように血行再建と適切な薬物治療は相補的な役割を担っているものと捉えられている. 血行再建の有益性が薬物治療単独に勝る症例の存在はRCTで数多く示されているが131–133),この結果を実臨床に応用するには多くの制限があることを認識する必要がある.例えば,RCTは通常,比較的若年で左室機能が保たれ血行再建の既往がない症例が対象となっている.また,薬物治療群であっても必要に応じて血行再建を受けることが可能である.このため純粋な薬物治療との比較試験は成立しえない.さらに,古典的なRCTの多くは造影ガイドで血行再建が実施されており,FFRや瞬時血流予備量比(iFR)による虚血の証明が必須ではなかった点も留意が必要である.虚血ガイドによる血行再建は造影ガイドによる血行再建よりも有益であることが最近のRCTで示され37, 39, 134),造影上の75%狭窄は虚血を示唆するとは必ずしもいえないからである29, 30).冠動脈病変の重症度は冠動脈CTや冠動脈造影で評価可能であるが,中等度狭窄においては他のモダリティで虚血の有無を検証することが必須である.その際,虚血の範囲の大きさは血行再建の意義を考慮するうえで重要な知見となる.最後に,多くのRCTの 表9血行再建が臨床的意義を有する冠動脈病変の重症度 予後改善が目的LMT,狭窄度>50% *近位部LAD,狭窄度>50% * 2 枝または3 枝,狭窄度>50% *でLVEF <40%左室に10%以上の虚血域を有する.多枝閉塞で唯一の残枝,狭窄度>50% * 症状改善が目的有意狭窄 *で,薬物治療下でも生活が制限される狭心症症状を有する. *虚血が証明されていることが必要(Neumann FJ, et al. 2018 64) を参考に作表)