p.21 抽出テキスト
糖尿病症例に対するメトホルミンやα グルコシダーゼ阻害薬の投与が大血管障害発症を抑制したとの報告はあるが,慢性冠動脈疾患患者を対象にそれらの有用性を示した報告はない.ピオグリタゾンはPROactive試験の心筋梗塞既往例のサブ解析において心血管イベントを抑制した110).その一方,浮腫の増加と心不全症例には注意が必要である.心血管系の既往を有する糖尿病患者を多く含んだナトリウム・グルコース共役輸送体2阻害薬エンパグリフロジンを投与したEMPA-REG OUTCOME試験では複合エンドポイントが有意に減少し,心血管死は38%減少した111).これに続いて,カナグリフロジンを投与したCANVAS Program試験と,グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬リラグリチドを投与したLEADER試験では,ともに主要エンドポイントが有意に減少した112, 113). 2.3.3 脂質異常症 CTTメタ解析はスタチンによるLDLコレステロール 38.7 mg/dL低下により心血管イベントが21%減少すること を示した114).急性冠症候群を対象としたESTABLISH試験115)やJAPAN-ACS試験116),急性冠症候群と安定狭心症を対象としたPRECISE-IVUS試験117)では,スタチンまたはスタチンとエゼチミブの併用により冠動脈プラークが退縮した.また,スタチンとエゼチミブ併用や118),スタチンと前駆蛋白変換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9)阻害薬エボロクマブを投与したFOURIER試験119),PCSK9阻害薬アリロクマブを投与したODYSSEY OUTCOMES試験では120),心血管イベントの有意な減少を認めた.ESCによる2017年のST上昇型急性心筋梗塞に対するガイドラインでは,「最大耐容量のスタチンを用いてLDLコレステロール値が70 mg/dL以上であれば,エゼチミブやPCSK9阻害薬併用を考慮する」と追記された121). 日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」では,二次予防目的の患者に対して100 mg/dL未満を目標とし,管理が難しい場合には50%以上の低下を 目標としている.一方,家族性高コレステロール血症,急性冠症候群,糖尿病などの心血管イベント高リスク例に対しては「LDLコレステロール70 mg/dL未満を考慮する」とした9).安定冠動脈疾患を対象としたREAL-CAD試験において,ピタバスタチン4 mg群は1 mg群に比較し心血管イベントが19%低かったことから,本邦の安定狭心症患者に対しても保険承認内最大用量のスタチンの投与が推奨される122). エイコサペンタエン酸(EPA)製剤に関しては,JELIS試験ではスタチンとEPA製剤の併用により冠動脈イベントが19%低下した123).二次予防解析では冠動脈イベントが23%低下し,特に心筋梗塞とPCIの既往例では41%低下した124).GISSI-Prevenzione試験では,n-3系多価不飽和脂肪酸により心血管イベントリスクが有意に低下した125).脂質低下療法に関するメタ解析では,心臓死と総死亡の両イベントを低下させるのはn-3系多価不飽和脂肪酸とスタチンのみであった126).しかし,その後の臨床試験ではn-3系多価不飽和脂肪酸の有用性について一貫した結果が得られなかったが,LDLコレステロールがコントロールされた高中性脂肪血症を合併する心血管疾患既往または高リスクの症例を対象として高用量のEPA製剤を用いたREDUCE-IT試験では,一次複合エンドポイントが25%減少した127).今後,対象症例や投与量について検証が必要である. 低HDLコレステロール血症を伴う心筋梗塞と安定狭心症を対象としたBIP試験では,ベザフィブラートにより中性脂肪200 mg/dL以上の群で心筋梗塞の再発と突然死が減少し128),メタボリックシンドローム合併群で心筋梗塞の再発が減少した129).フィブラートと心血管イベントリスクに関するメタ解析では,フィブラートの心血管イベント抑制効果が示されている130).