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p.16 抽出テキスト

FFRにより虚血が証明された病変に対するPCIは,至適薬物治療単独よりも緊急血行再建のリスクを減らすことが, FAME 2試験により示されている40, 41).

多枝病変例においては,冠動脈造影による病変枝数やSYNTAXスコアなどの解剖学的重症度評価は予後予測に有用であるが,造影による評価は過大評価となる.冠動脈造影上の3枝病変において,機能的狭窄度評価(虚血の評価)でも3枝病変であるものは2%程度にすぎず42),FFRを計測することにより約40%の症例で治療選択自体が変更となりうる43, 44).また機能的狭窄度によりSYNTAXスコアを評価する機能的SYNTAXスコアでは,冠動脈造影上高リスク群の約30%は中等度リスク以下に分類される45).非侵襲的画像検査は多枝病変例での個々の病変ごとの虚血評価には限界があるため,FFRを用いた機能的狭窄度評価が推奨される.

正確なFFR計測においては,前処置としてカフェインカットが必要であり,確実な最大充血の惹起が必須である.アデノシン静注,パパベリン塩酸塩冠注,ニコランジル冠注が使用される.また,血管抵抗が最小となり安定している拡張期時相(wave-free period)の瞬間的圧較差比を瞬時血流予備量比(iFR)と呼ぶ.この指標は最大充血惹起を必要としないためFFRより簡便であり,PCIの適応閾値としてFFR 0.80 に対応する値であるiFR 0.89 が用いられている46, 47).最近FFRとiFRを比較したRCTにより,iFRの診断的有用性に関してFFRに対する非劣性が実証された48, 47).近年,最大充血を要しないその他の指標(diastolic pressure ratio: dPR,diastolic hyperemia-free ratio: DFR,resting full-cycle ratio: RFR)も提唱され,FFRとの良好な相関に加えてiFRと同様の臨床的有用性も示唆されており,iFRを含めてresting indexと総称されるようになっている49–51).冠動脈血流速度予備能比(CFVR)はドプラフローワイヤーを冠動脈内に挿入し,負荷時冠血流速度/安静時冠血流速度の比として算出される.CFVRは心外膜冠動脈狭窄度のみならず冠微小循環も反映する虚血診断法であり,FFRとの相補的な役割も報告されている52, 53).

4 心筋バイアビリティの評価

心筋バイアビリティは通常,心筋血流SPECTで虚血の有無や血流低下の程度により評価されており, 201Tlでは細胞膜とNa/Kポンプの機能を, 99mTcではミトコンドリアの機能を評価している54).ドブタミン負荷エコー法に比較して心筋血流SPECTの診断感度は同等もしくはそれ以上,特異度は劣るとされ, 201Tl心筋血流SPECTでは感度

86%,特異度59%と報告されている55). 99mTc心筋血流SPECTでは過小評価を予防するためにニトログリセリンの舌下も有効で56, 57),感度81%,特異度66%と報告されている58).安静像における集積比(局所と健常部の集積度の比較)が50~60%以上みられる場合,「心筋バイアビリティあり」と判断される.

心筋負荷血流SPECTにおいて心筋バイアビリティ評価が不十分な場合,フッ素18標識フルオロデオキシグルコース( 18F FDG)PETによる心筋バイアビリティ診断が有用である59).「血流・糖代謝ミスマッチ」は心筋バイアビリティの存在を示す所見(冬眠心筋)と判断され,低心機能例648例(LVEF 31±12%)を対象とした観察研究では,早期血行再建による生存率は負荷安静82Rb/ 18F FDG PETによって血流・糖代謝ミスマッチを指摘された例においてのみ高く,特に心筋バイアビリティの範囲が10%を超える場合に血行再建の効果が大きかったと報告されている60).

腎性全身性線維症の発症予防の観点から,慢性腎臓病(CKD)ステージG3b以下(糸球体濾過量GFR<30 mL/ min/ 1.73m 2)の例ではガドリニウム造影剤の使用は不可能であるが,造影心筋MRIによる遅延造影(LGE)も心筋バイアビリティ診断に有用である.心筋梗塞部位におけるLGEの深達度が心内膜側から50%以内であればバイアビリティありと判断される61).壁厚が5.5 mm未満と菲薄化した心筋であっても,LGEの深達度が壁厚の50%未満であれば,血行再建により壁運動が改善されうることが報告されている62).

SPECT, 18F FDG PET,またはドブタミン負荷エコー法により心筋バイアビリティが評価された低心機能の冠動脈疾患の3088例(LVEF 32±12%)を対象としたメタ解析によると,PCIまたはCABGによる血行再建の生命予後改善効果は,心筋バイアビリティを有する例では認められたが,バイアビリティを認めない例ではみられなかった63).このため,低心機能例における心筋バイアビリティの評価は血行再建の適応を判断するうえできわめて重要な位置を占めるが,この情報のみでなく患者背景や病変特性などを含めた総合的な判断が重要である.