p.13 抽出テキスト
表3胸痛に関するスコア 部位胸骨の裏側+3前胸部+2頚部・顎・心窩部+1心尖部-1放散痛上肢(左右のいずれか) +2肩・背部・頚部・顎+1性状圧迫感・潰される感じ・絞扼感+3重圧感・締め付け感+2チクチク感・刺される感じ・引掻感-1強さ重度+2中等度+1症状への影響ニトログリセリン+1体位-1呼吸-1随伴症候呼吸困難+2吐き気・嘔吐+2発汗+2労作性狭心症の既往+3合計スコアが6以上の場合に冠動脈疾患の可能性が高いと判断. (Geleijnse ML, et al. 2000 2) より) Reproduced and translated by permission of Oxford University Press on behalf of the European Society of Cardiology. OUP and ESC are not responsible or in any way liable for the accuracy of the translation. The Japanese Circulation Society is solely responsible for the translation in this publication/reprint. 第1章 診 断 1 症候,身体所見 冠動脈疾患の中の慢性安定狭心症については,その特徴的な症候が250年前にWilliam Heberdenによって記載されたことに端を発している(労作によって誘発される胸骨下や前胸部を中心とした絞扼感で,上肢への放散痛を認め,安静にて軽快する.ときには不安感や発汗を伴うことがある) 1).以来,労作性狭心症(安定狭心症)の症状については種々のスコア化(表3) 2)などにより,定型的狭心症(typical angina),非定型的狭心症(atypical angina)の区別,さらには非心臓性胸痛(non-cardiac chest pain)との鑑別がなされるようになっている.その後,画像診断の進歩により,一部の症例では胸部症状を自覚しない無症候性心筋虚血や,臨床的に無症候でありながら陳旧性心筋梗塞を認めることが判明し,さらに薬物治療による狭心症の全般的な予後の改善も踏まえて,今日では安定狭心症をより広範囲に,「安定冠動脈疾患:stable coronary artery disease」あるいは「安定型虚血性心疾患:stabale ischemic heart disease」などと規定する方向性もみられる3, 4).本ガイドラインでは原則として「安定狭心症」ではなく「安定冠動脈疾患」を用いることとする(他の文献に言及する場合はこの限りではない). 診断において他に重要な点は,年齢・性別・喫煙・高血圧・糖尿病・脂質異常症などの冠危険因子に基づく冠動脈疾患罹患確率の推定であり,古典的にはFraminghamリスクスコアが知られている5).本邦における類似の疫学調査としてはNIPPON DATA 80 6),吹田研究7)が報告されているが,「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」におけるリスクチャートはNIPPON DATA 2017 から吹田研究に変更された8).このリスク評価指標では,男性における高血圧と低HDLコレステロール血症,女性における糖尿病と喫煙の関与の強さに着目している(図1) 8, 9). 安定冠動脈疾患の多くは理学所見では異常を認めない.しかし,頚動脈・大腿動脈などを中心とした動脈の触知と血管雑音の有無は基本的診察項目であり,家族性高コレス テロール血症に特徴的なアキレス腱の肥厚を見落とさないことが重要である10).心臓の聴診についてもIV音などの過剰心音や心雑音などに関する丁寧な評価が重要となる.