p.99 抽出テキスト
である.その結果,リスク修正を行った群は有意に危険因子の管理が良好であり,平均総コレステロール値は156 対183 mg/dL,収縮期血圧は132 対144 mmHg,BMI は 28.9 対31.2 であり,身体活動,危険因子の目標の理解も 良好であった1082). 以上の検討は,運動療法の有無にかかわらず,二次予防が危険因子の管理に有用であることを示しており,包括的な心臓リハビリテーション介入が重要である. 3.2.5 運動処方 日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション標準プログラム策定部会による「心臓リハビリテーション標準プログラム(2013 年版)―急性心筋梗塞急性期・回復期―」には,運動プログラム作成の項に以下のように示されている1083). 1. 有酸素運動の頻度,強度,持続時間,様式を処方し, 実施する. a) 頻度:3 ~7 日/ 週,できれば毎日b) 強度:最大酸素摂取量の40 ~60%,最大心拍数の 55 ~69%,心拍数予備能の40 ~60%(Karvonen法のk =0.4 ~0.6),嫌気性代謝閾値の心拍数または嫌気性代謝閾値1 分前の運動強度c) 持続時間:20 ~60 分d) 様式:ウォーキング,エアロビクス体操,サイクリ ング,ジョギング,軽い水泳など2.レジスタンストレーニングの頻度,強度,持続時間,様 式を処方し,実施する. a) 頻度:2 ~3 回/ 週b) 強度:上肢運動は1RM の30 ~40%,下肢運動で は50 ~60%,1 セット10 ~15 回反復できる負荷量,中程度の疲労,Borg 指数11 ~13 “ややきつい” を上限c) 持続時間:上肢と下肢で異なる運動を8 ~10 種類 と1 ~3 セットd) 様式:ゴムバンド,足首や手首への重錘,ダンベル, フリーウエイト,プーリー,ウエイトマシンなど 3 運動プログラムへは入院中にエントリーし,退院後も外 来に通院しながら3ヵ月程度(2~5ヵ月) 実施する. 4.リスクの程度によって発症後30~90 日の監視型運動療 法を行い,その後は非監視型運動療法へ移行し,最終的には運動プログラムが自己管理できるようになる. 3.2.6 維持期 本邦では1982 年に,スポーツを用いた集団スポーツ運動療法が虚血性心疾患患者を対象に開始され1084),その効果として心筋シンチグラフィでの灌流改善,降圧効果,脂 質改善効果,不整脈の改善,うつ傾向の低下が報告された.運動耐容能とNK 細胞活性の有意な正の相関が認められ,免疫機能の改善も期待されている1085).NPO 法人ジャパンハートクラブは,本邦における循環器病の一次/ 二次予防のための心臓リハビリテーションの普及を目的に設立された.主な活動は,一般市民,慢性期心疾患患者や生活習慣病患者を対象として,運動療法の正しい知識と有用性を啓発すること,運動療法指導者を育成することである.そして,ドイツ型維持期心臓リハビリテーションシステムを参考にメディックスクラブを運営し,全国展開している1086).運動指導は心臓リハビリテーション指導士の資格を取得した指導者によって行われており,提供される運動療法の質は高い. Sunamura らは急性期にPCI を施行された1,497 例の検討で,心臓リハビリテーション導入率は39% と低かったが,6 ヵ月の完遂率は80% と良好であったと報告している1087).一方,Arakawa らは,地域連携クリニカルパスの導入によっても心臓リハビリテーションの参加率は19% と低かったと指摘している1088).森沢らの報告では,回復期リハビリテーション病院での心臓リハビリテーションの実施状況は7.5% であり,未実施の理由として循環器専門医の不在や心臓リハビリテーション経験者の不在が半数を占めた.急性期と回復期病院の連携システムの構築,心臓リハビリテーションに関わるスタッフの教育体制の充実が今後の課題であると指摘している1089).さらに,すべてのACS 患者は心臓リハビリテーションの適応であるが,全員が参加するにはそれに見合うだけの体制が整っていないことが指摘されている845).最近はクリニックが心臓リハビリテーション認定施設の資格を取得し,心臓リハビリテーションを提供することも行われているが,在宅心臓リハビリテーションや,インターネット,モバイル通信を使った新しいモデルが必要となる.そのためには,楽しく運動を継続できるよう指導する健康運動指導士の活躍が期待される. 4 地域連携 ACS の二次予防を有効に行っていくためには,1退院までに,患者および家族に二次予防の必要性および方法を十分に説明して理解を得ること,2退院後の有効なケアシステムに移行すること,の2 点が重要となる1090–1092).長期にわたり十分な治療を継続する必要があり,その大部分はプライマリケア医を中心とした,いわゆる地域医療の