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p.98 抽出テキスト

切である.Seki らは高齢冠動脈疾患患者を対象とした無作為化試験において,6 ヵ月間の外来心臓リハビリテーション施行により下肢骨格筋筋力,SF-36 下位尺度および不安指標は有意に改善したが,抑うつ指標は改善しなかったと報告した1069, 1070).抑うつに関しては認知行動療法など,臨床心理士の関与が重要である.

患者のQOL 改善に関連して,入浴について“ 熱めの湯で,肩までつかる” といった希望がある.そこで,田中らは心疾患患者において“42°Cで肩まで10 分間つかる” 入浴を行うことを検討したところ,個々人のダブルプロダクト(DP:収縮期血圧と心拍数の積)の変動幅は大きかったが, 10 例において入浴中の不整脈,虚血性変化は認められなかった1071).また,嫌気性閾値(AT)時のDP との比較で,心疾患患者のDP は入浴のいずれの時点においてもAT 値より低かったことを報告している.したがって,回復期患者の通常の入浴はQOL の観点から,入浴時の注意点を遵守すれば制限不要である.

患者は性行為が非常に強い運動ととらえており,性行為による再発作や急死に対する恐怖心がある.長谷川は,性行為は階段昇降と同様の強さと考えられること,軽症・中等症の患者では家庭内での性行為は問題ないこと,過労時,過食後,飲酒時,暑いまたは寒い温度,刺激的な環境での性行為は危険であり,婚外性交は禁止されなければならないことを提案している1072).

社会復帰は重要な問題であるが,若年女性の復職率は同年齢の男性にくらべて低い.復職は左室機能,完全血行再建,調律異常の有無,仕事の内容によって決定されるが,休養期間が長いことは弊害となるため,可能なかぎり軽~中等度の身体活動は保つように指導する1073).航空機による海外旅行の可否についてはエビデンスが少なく,旅行期間,同伴の有無,不安の程度によって異なる.LVEF 40%以上の場合は旅行に伴うリスクは低いが,40% 未満,残存虚血,不整脈がある場合は病態が安定するまで避けたほうがよい1074).

3.2.3 安全性

厚生労働省班会議による心臓リハビリテーションの安全性に関する全国実態調査において,再灌流療法時代における本邦の回復期心臓リハビリテーションは安全であり,とりわけ,運動負荷試験結果に基づく運動処方に従って実施される正式な心臓リハビリテーションプログラムはきわめて安全であることが示された1075).また,運動療法の変更または中止につながった整形外科的障害は0.3%,外傷は0.1% であった.

Onishi らは,6 ヵ月間の外来心臓リハビリテーションプログラムに参加した高齢冠動脈疾患患者は,背景因子に差

のない不参加患者にくらべて心事故(心血管死亡・ACS・血行再建術・心不全入院・脳卒中)発生率が低かったと報告している1076).

Soga らは,待機的PCI 翌日にBorg 指数13 点(6 ~ 20)を強度目標として実施した運動トレーニングは, 30 日以内のステント血栓症または心血管事故を増加させず,安全であったと報告している1077).また,同一筆者らは3,672例を対象とした前向き観察研究において,PCI 後の運動トレーニングがステント血栓症を増加させず,狭心症による予定外受診を減少させたと報告している1078).

3.2.4 冠危険因子に対する効果

AMI 患者215 例(平均年齢65 ± 11 歳,男性178 例)を対象に,4 ヵ月間の回復期心臓リハビリテーション実施群123 例と非実施群92 例に分けて検討した結果では,退院後4 ヵ月時にBMI と禁煙の目標を達成した患者の割合は,心臓リハビリテーション実施群で非実施群にくらべ有意に高かったことが報告されている1079).

OASIS 試験によると,生活習慣の指導から6 ヵ月後の心血管イベントの発生率は,禁煙者が非禁煙者にくらべて低かった.また,薬物治療のアドヒアランスは抗血小板薬が96.1%,スタチンが78.9%,ACE 阻害薬/ARB が72.4% と良好であったが,運動療法・食事療法のアドヒアランスは,両方できていない例が28.5%,いずれかができていない例が41.6%,両方できていた例が29.9% と低いことが報告された898).

一方,BLITZ-4 研究では,AMI から6 ヵ月後の薬物治療へのアドヒアランスは90% 以上と高かったが,血圧(140/90 mmHg 未満),LDL-C 値(100 mg/dL 未満), HbA1c 値(7% 未満)の目標達成率,喫煙継続率はそれぞれ74%,76%,45%,27% と不十分であった.魚摂取不足,野菜や果物摂取不足,運動不足はAMI の前後でそれぞれ73% から55%,32% から23%,74% から59% へ改善した.また,多変量解析の結果,心臓リハビリテーションの導入は運動不足,喫煙継続,野菜や果物摂取不足が少ないことと関連していた1080).つまり,医療関係者は単に薬物治療のアドヒアランスを問題とするだけでなく,確立された原則によって服薬の理由を明確にし,アドヒアランスを促進させることが大切で,この意味では薬剤師の現場での活動が期待される1081).

CHOICE 試験は,心臓リハビリテーションに参加しなかった144 例のACS 患者について,電話支援,強制的脂質管理,個人に合わせたリスク修正を行った群と行わなかった群に分け,1 年間追跡した単施設無作為化比較試験