p.97 抽出テキスト
プログラムには,運動トレーニング,冠危険因子の修正,教育,ストレス管理,精神的支援が含まれることが望ましい.運動療法は冠動脈疾患例の死亡率を22% 低減する1054).また,心臓リハビリテーションは直接的な身体的効果をもたらすだけでなく,冠危険因子や生活習慣行動にも影響を及ぼす1055).ACS 患者の入院期間が短くなった状況で,外来心臓リハビリテーションへの参加を通してエビデンスに基づいた治療が行われているかを確認できることはプログラムの利点の1 つである.外来心臓リハビリテーションの期間は8 ~24 週が推奨されている1056, 1057). 3.2.1 予後(死亡率,心血管イベント) STEMI 患者1,523 例とNSTEMI 患者1,371 例を含む2005 French FAST-MI レジストリーでは,心臓リハビリテーション導入率は年齢が若い患者,STEMI 患者で高く,心臓リハビリテーション導入群の死亡率は非導入群より低かった(14.7% vs 25.9%,P <0.01) 1058).多因子を調整しても,心臓リハビリテーション導入群の死亡率のハザード比は0.76 であった.また,二次予防のための薬物治療では,心臓リハビリテーション導入群でアスピリン以外の薬物治療の継続率が有意に高かった. Suzuki らはJCAD の3 年追跡研究で,観察開始時に運動指導を受けた4,237 例(36%)は指導を受けなかった例にくらべて,背景因子調整後の総死亡率が有意に低かったことを報告している1059). Kamakura らは,予後に関して低リスク(若年,再灌流療法成功,LVEF 良好,心不全なしの条件をすべて満たす)と想定されるAMI 患者は,そうでない患者にくらべて冠危険因子を3 個以上保有する率が有意に高いが(49% vs 39%,P <0.05),外来心臓リハビリテーションプログラムに積極的に参加することで,運動耐容能と冠危険因子プロファイルが不参加患者にくらべて改善することを示した1060). Takaya らは,慢性腎臓病合併AMI 患者が外来心臓リハビリテーションに積極的に参加することで,運動耐容能,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP),心拍反応とともに腎機能(推定糸球体濾過量)が有意に改善することを報告した1061). DES の再狭窄予防効果は明らかであるが,長期の総死亡率や心血管イベントの抑制効果はないことが報告されている1062).黒瀬らはACS 患者を対象に,責任病変より遠位部に存在する50% 未満の軽度狭窄病変を解析対象として心臓リハビリテーションの効果を評価したところ,心臓リハビリテーション参加群では非参加群にくらべ,プラーク面積,プラーク容積が有意に改善され,6 ヵ月後の最高酸素摂取量,最高ワット数も有意に改善された.両群間で スタチン投与率,LDL-C 値,LDL/HDL 比の変化に有意な差はみられなかったが,高感度CRP 値は参加群で低値の傾向であった.本研究では,狭窄病変を血管内超音波ではなく定量的冠動脈造影で評価していること,非参加群の6 ヵ月後の運動耐容能の評価がないこと,無作為化試験ではないなどの限界はあるが,運動による血管内皮機能の改善や炎症サイトカインの低下が血管炎症を軽減し,プラークの進展を抑制した可能性が示唆された1063). To ́th-Zsa ́mboki らは,適切なDAPT 下のACS 患者で,多職種が関与する3 ヵ月の心臓リハビリテーション(食事療法,身体活動,ストレス管理,生活習慣指導を含む)に参加した84 例と,1 回の食事指導と集団運動療法のみの心臓リハビリテーションに参加した51 例を比較した結果,血小板凝集パラメーターや血小板由来成長因子が3 ヵ月の心臓リハビリテーション参加群で有意に減少したことを報告し,心臓リハビリテーションの非薬物療法としての新たな効果を示唆した1064). 一方,急性期の再灌流療法とスタチン治療の時代における心臓リハビリテーションの予後に関する効果が,心臓リハビリテーション転帰研究(CROS)で検討された.コホート研究では,心臓リハビリテーションはACS 患者の死亡率を有意に減少させることが示されたが,CROS の組入れ基準を満たした唯一の無作為化試験では中立の結果であった1065).また,GOSPEL 試験では,PCI を受けた1,438 例を傾向スコアマッチング解析した結果,心臓リハビリテーション参加により全死亡率は有意に低下したものの,心死亡率,心筋梗塞発症率,再血行再建術率には有意差はみられなかった1066).英国で行われた多施設無作為化比較試験のRAMI 試験では,AMI 患者1,813 例を包括的心臓リハビリテーション参加群(20 時間の運動療法/6 ~8 週)と通常治療群に分けて比較したところ,2 年後の死亡率, 7 ~9 年後の死亡率,心イベント,生活の質(QOL)スコアに有意差はなかったことが報告された1067).日常の身体活動に両群間で差がないことや,運動耐容能の評価がないことの限界はあるが,PCI 時代の心臓リハビリテーションのあり方に課題を提起した.これは,本邦での心臓リハビリテーションの有効性に関する多施設研究の報告は少なく,エビデンスが不十分であると後藤が指摘している点と一致しており1068),今後のさらなる検討が必要である. 3.2.2 心理,QOL 一般にAMI 患者は不安感が高く,うつ病の発症率は一般人と比較して約3 倍と報告されていることから,患者健康質問票(PHQ-9)を用いた抑うつ評価や心理的支援は大