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p.95 抽出テキスト

MACE だけでなく個々のイベントに対しても有意な減少効果を示したことから,アジア人にも有効である可能性が示唆される1020).さらに,EMPA-REG OUTCOME 試験には心不全既往だけでなく心筋梗塞既往患者も多数登録されており,何らかの心筋傷害を有している患者に対するイベント抑制効果,とくに心不全・死亡減少効果が示されていることから,心筋梗塞後の患者に対する投与の推奨度は高い. c.  グルカゴン様ペプチド1 受容体作動薬

グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬は,血糖値依存性にインスリン分泌を促進し,グルカゴン分泌を抑制する糖尿病の注射治療薬であり,血糖降下作用以外に,胃排泄遅延作用や中枢神経を介した食欲抑制作用により体重を減少させる効果があることが大きな特徴である.心血管系のイベント減少効果はLEADER 試験で示されており,本邦の承認用量の倍量のリラグルチド投与群ではプラセボ群にくらべ,3-point MACE(心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中)が13%,心血管死が22%,全死亡が15% 抑制された1024).対象の約80% が二次予防の患者であったSUSTAIN-6 試験では,長期作用型GLP-1 受容体作動薬セマグルチドがプラセボにくらべ,3-point MACE を有意に抑制することが示された1025).一方,リキシセナチドを用いたELIXA 試験や1026),週1 回製剤であるエキセナチドを用いたEXSCEL 試験1027)では,プラセボ群と比較して心血管イベント抑制効果は認められなかった.薬剤によりイベント抑制効果に差異があることや,リラグルチドの用量が本邦の承認用量と異なることから,欧米の結果をそのまま適用できるかは不明であるが,限定された条件下では心血管イベントの発生を抑制したエビデンスのある薬剤である.注射薬という難点があり,糖尿病専門医の意見を聞いたうえで選択する. d.  ピオグリタゾン

インスリン抵抗性を改善する経口血糖降下薬であるチアゾリジン薬の中で,二次予防効果の可能性が示されているのがピオグリタゾンである.PROactive 試験では大血管障害の既往例が対象とされ,主要エンドポイントの発生率に関する有効性は示されなかったが,主要副次エンドポイントである全死亡・非致死性心筋梗塞・脳卒中の発生は有意に抑制された1021).メタ解析においても,対照群(プラセボまたはスルホニル尿素薬,ビグアナイド薬,インスリン治療)にくらべピオグリタゾンの心血管事故抑制効果が報告された1022).また,冠動脈疾患を有する2 型糖尿病患者において,ピオグリタゾンはグリメピリドにくらべ,18 ヵ月の観察期間における血管内超音波上のプラークの進展を有意に抑制することも報告された1023).海外の疫学研究で膀胱癌の発症リスクをわずかに高めたとの報告があることから,添付文書上,膀胱癌治療中は使用しないこと,既往

患者にはこの点を十分説明のうえ慎重に使用することとなっている.その後の前向き観察研究(KPNC 研究)で膀胱癌の発生とピオグリタゾンとの関連は否定されたが,複数の見解が存在しているのが現状である1037–1039). e.  αグルコシダーゼ阻害薬

STOP-NIDDM 試験では,耐糖能異常の時期から心血管疾患のリスクは高いこと,食後高血糖を抑制するαグルコシダーゼ阻害薬(アカルボース)は糖尿病の発症,心血管事故,とくに心筋梗塞の発症を抑制することが示された1040, 1041).2 型糖尿病患者を対象としたメタ解析でも,心血管事故の抑制効果が認められた1042).αグルコシダーゼ阻害薬単独で二次予防効果を実証した新しい臨床試験はないが,早期の糖尿病や耐糖能異常の患者に対しては投与を考慮する. f.  ジペプチジルペプチダーゼ4 阻害薬

ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は,血糖依存性にインスリンの分泌を促進,グルカゴン分泌を抑制し,血糖低下作用を示す.低血糖リスクが低いことや,消化管副作用が少なく他の糖尿病治療薬にくらべてコンプライアンスがよいことから,本邦では広く使用されている.しかし,大規模臨床試験で心血管イベントの有意な減少は示されていない.EXAMINE 試験(アログリプチン)はACS 1043),TECOS 試験(シタグリプチン)は冠動脈疾患患者を対象としたが1044),イベント減少効果は示されず, SAVOR-TIMI 53 試験(サキサグリプチン)ではむしろ心不全を増加させた1045).ただし,これらの大規模臨床試験は非劣性・安全性を証明するために計画されたものであり, DPP-4 阻害薬の有効性を否定した試験ではない.

2.8 ワクチン

インフルエンザワクチンの心血管事故抑制効果を検討した無作為化比較試験のメタ解析では,1 年以内の心筋梗塞の既往のある高リスク群でワクチンの有用性が認められた1046).肺炎球菌ワクチンの心血管事故抑制効果に関

表91 二次予防におけるワクチン接種の推奨とエビデンス

レベル推奨クラスエビデンス

レベル

心筋梗塞発症1 年以内の患者に対して季節性インフルエンザワクチンの接種を推奨する1046) I B高齢者と高リスクの患者に対して肺炎球菌ワクチンの接種を考慮する1047) IIa C