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p.94 抽出テキスト

る.脂質低下療法に関する無作為化大規模臨床試験のメタ解析1011)では,心臓死と総死亡の両イベントを低下させるのはn-3 多価不飽和脂肪酸とスタチンのみであることが示されているが,いずれの試験も2000 年代の試験である. REDUCE-IT 試験が報告され,現在,本邦を含め世界中で進行している大規模臨床試験の結果によっては推奨度が変更される余地がある.

2.7 糖尿病治療

2.7.1 糖尿病治療の原則

糖尿病は心血管疾患のきわめて重要な危険因子である.本邦や海外の疫学研究,観察研究では,糖尿病患者の冠動脈疾患発症リスク,冠動脈疾患による死亡リスクは健常人にくらべ2 ~3 倍高いことが報告されている1028–1032).また,糖尿病を合併するACS 患者における中長期の心血管事故の発生も,非糖尿病患者にくらべて高い1014, 1033). UKPDS 80 の結果から,糖尿病患者の合併症の抑制には早期からの厳格な血糖管理が有効であること1014),耐糖能異常時からイベントリスクが高まることが報告されており,空腹時血糖値126 mg/dL 未満かつHbA1c 値が6.5% 未満でも,経口糖負荷試験により積極的に耐糖能を評価しておくことが重要である.また,血糖管理だけでなく,血圧,脂質,喫煙,肥満などの冠危険因子を統合的に管理するこ

とがさらに重要である1012, 1013).

糖尿病診療ガイドラインでは,一般的な合併症予防のための血糖管理の目標値はHbA1c 7.0%未満とされているが,年齢,罹病期間,臓器障害,低血糖の危険性,支援体制などを考慮し,個々の患者に応じて目標値を設定する必要がある1034).糖尿病を合併する患者では食事療法と運動療法を中心とした生活習慣の改善を指導し,血糖管理目標値に到達しない場合に薬物治療を開始する.心血管イベントの既往のある患者への薬剤の選択は,心血管事故減少のエビデンス,薬剤の特性,患者側の因子を把握して決定する必要がある.

2.7.2 薬物治療

a.  メトホルミン

メトホルミンは欧米では第一選択として用いられており,本邦でも他の薬剤と並んで第一選択薬である.本邦では承認用量が2,250 mg/日まで増量されたことから使用率は増加している.心血管イベント発生低下のエビデンスとして, UKPDS 80 では,肥満2 型糖尿病を対象とした早期メトホルミン投与により,強化療法終了後10 年の時点でも心筋梗塞と全死亡のリスク低下が持続していたことが報告されている1014).心筋梗塞二次予防における心血管事故抑制効果を示した単独の前向き臨床試験は少数であり1015),大規模臨床試験でのエビデンスは乏しいが,その多面的作用と経済性も加味して肥満合併糖尿病患者に推奨される. b.  ナトリウム・グルコース共役輸送体2 阻害薬

ナトリウム・グルコース共役輸送体2(SGLT-2)阻害薬は,腎近位尿細管でSGLT-2 を介したグルコースの再吸収を抑制し,血糖降下作用を示す薬剤である.大規模臨床試験で心血管事故減少と腎保護作用が示されたことから,心筋梗塞後の二次予防においても重要な位置を占める.心血管疾患の二次予防の患者を対象としたEMPA-REG OUTCOME試験では,エンパグリフロジンが心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中からなる主要3 心血管イベント(3 point-MACE)を14%,心血管死を38% 低下させることが示された1016–1019).二次予防の患者が約60% 含まれたCANVAS 試験では,本邦での承認用量を超えた用量ではあるが,カナグリフロジンは3-point MACE を14% 抑制することが示された1035).心血管死の抑制は有意ではなかったが,二次予防集団に対する層別解析において, 3-point MACE,心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中の各個別イベントのいずれについてもリスク低下傾向がみられた1036).エンパグリフロジンは,本邦の患者を含むアジア人を対象とした層別解析において,3-point

表90 二次予防における糖尿病治療に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

糖尿病治療において血糖,体重血圧管理,血清脂質の良好なコントロール状態の維持を目指す1012, 1013) I A早期からHbA1c 7.0%(NGSP

*値)未満を目標とする血糖管理を行う1014) I B糖尿病の既往のない患者に対して糖負荷試験の施行を考慮する509) IIa A肥満を合併する糖尿病患者に対してメトホルミンの投与を考慮する1015) IIa B糖尿病合併患者に対して,心血管イベント抑制が証明されているSGLT-2 阻害薬の投与を考慮する1016–1020) IIa B心不全を合併しない糖尿病合併患者に対して,ピオグリタゾンの投与を考慮する1021–1023) IIa B糖尿病合併患者に対してGLP-1 受容体作動薬の投与を考慮してもよい1024–1027) IIb B * 米国のNational Glycohemoglobin Standardization Program の

方法による測定値