p.91 抽出テキスト
欧州で行われた,安定狭心症に対するニコランジルの効果を評価したIONA 試験の副次解析において,心筋梗塞の既往例では有意に心血管イベントが抑制された957).また,前述のJCAD 研究におけるニコランジルの検討では,全死亡,心臓死,非致死性心筋梗塞の有意な抑制が示された960).また,小規模の研究ではあるが,本邦で行われたSTEMI に対する前向き研究で,ニコランジルの使用は心血管イベント発生の減少と関連があった961). 2.5 Ca 拮抗薬 短時間作用型のCa 拮抗薬が主であった時代のメタ解析557)の結果では,Ca 拮抗薬は心筋梗塞既往患者の再発を抑制しなかった.長時間作用型のアムロジピンが使用されたCAMELOT 試験962)では,試験対象の40% 弱に心筋梗塞既往患者が含まれ,アムロジピン10 mg はエナラプリル20 mg やプラセボと比較して有意に心血管イベントの発生を抑制することが示された. 日本人の心筋梗塞発症後1 ヵ月以内の1,090 例を登録したJBCMI 試験556)では,Ca 拮抗薬の効果がβ遮断薬と比較された.その結果,平均455 日の観察期間において,Ca拮抗薬はβ遮断薬と同様に心血管死亡を抑制すること,また,冠攣縮が関与するUA はβ遮断薬群で有意に増加することが示された.Ca 拮抗薬の同様の効果は,より小規模の日本人を対象とした別の無作為化比較試験においても確認された562).この試験では,登録された心筋梗塞の41%に存在した冠攣縮性狭心症患者を対象から除外しており, Ca 拮抗薬の効果は冠攣縮の素因を有しない患者において もβ遮断薬と互角であることが示唆された. 2.6 脂質代謝異常改善薬 2.6.1 低比重リポ蛋白コレステロールの位置づけと 管理目標値 本邦でのACS 患者の予後が,安定型冠動脈疾患にくらべ不良であることは観察研究から明らかである.PACIFIC研究における心血管事故の発生率は35 人以上/1000 人年50)であり,冠動脈疾患患者全体の二次予防におけるイベント発生率4.5~15 人/1000 人年982–984)にくらべ,発症1 年以内は少なくとも2 倍以上高い.このことから,ACS 患者は冠動脈疾患の中でも高リスクと位置づけられる.また,大規模無作為化臨床試験のメタ解析で,低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値低下に相関して心血管事故が減少し,とくに高リスク例ほど低下による絶対的イベント減少も大きいことが示されていることから970, 985),本邦でも予後がより不良なACS 患者において LDL-C 値を積極的に下げることには妥当性がある.本邦の二次予防におけるLDL-C 管理目標値はこれまで100 mg/dL 未満とされていたが986, 987),2017 年の日本動脈硬化学会ガイドラインでは, ACS に対する達成目標値は70 mg/dL 未満と設定された 表88 二次予防におけるCa 拮抗薬投与の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 冠攣縮性狭心症を合併,または冠攣縮が原因で発症したことが明らかな患者に対して,虚血発作予防を目的として長時間作用型Ca 拮抗薬を投与する556) I B冠攣縮性狭心症の合併の有無にかかわらず,心血管イベント抑制を目的として,β遮断薬の代替として長時間作用型Ca 拮抗薬の投与を考慮する562) IIa B心血管イベント抑制を目的として,標準治療への上乗せまたはACE 阻害薬の代替として,長時間作用型Ca 拮抗薬の投与を考慮してもよい962) IIb Bうっ血性心不全や房室ブロックを合併する患者に対してジルチアゼムまたはベラパミルを投与すべきではない559, 560) III Harm C表89 二次予防における脂質代謝異常改善薬投与の推奨と エビデンスレベル推奨クラスエビデンス レベル ストロング・スタチンを忍容可能な最大用量で投与する963–970) I A FH の患者で,最大用量のスタチンを用いてもLDL-C 値が70 mg/dL に到達しない場合に,PCSK-9 阻害薬投与を考慮する967, 971–973) IIa B最大用量のスタチンを用いてもLDL-C値が70 mg/dL に到達しない高リスク患者に対して,エゼチミブ投与を考慮する966, 969, 974–977) IIa B最大用量のスタチンを用いてもLDL-C値が70 mg/dL に到達しない高リスク患者に対して,PCSK-9 阻害薬投与を考慮してもよい967, 978–980) IIb B低HDL-C 血症を伴う高TG 血症患者に対して,フィブラート製剤の投与を考慮してもよい981) IIb Cスタチンに高純度EPA 製剤の併用を考慮してもよい982, 1008) IIb B