p.85 抽出テキスト
感染性心内膜炎4%,奇異性塞栓症4% と報告されている.同時に他臓器への塞栓を起こした患者は23%,塞栓源が特定された患者は31% であった.心房細動を有する冠動脈塞栓患者の検討では,発症予測評価としてCHADS2 スコアよりもCHA2DS2-VASc スコアのほうが有用であったことが示唆されている.また,それらの患者のほとんどで発症時の抗凝固療法が不十分であったことも特記すべきである890). 予後に関して,5 年全死亡率は28%,5 年心臓死率は17.5% と,動脈硬化性AMI とくらべそれぞれ有意に高いことが報告されている890).また,5 年間における冠動脈塞 栓の再発率は8.7% で,全例が心房細動であった. 現状では,冠動脈塞栓に起因するAMI の再灌流療法について,系統的な治療成績の報告は少ない.本邦からの報告では,末梢病変での塞栓では血管径が小さくPCI には不適などの理由から,全体の58% にしかPCI が施行されていない.PCI 施行例では97% が血栓吸引療法を施行され,32% でその後バルーン拡張やステント留置が追加されている.しかしPCI 手技後の再灌流成功(TIMI 血流分類3)率は66% と低い890). 第8章 二次予防 1 一般療法 退院後の生活習慣の改善は二次予防において非常に重要であり,この項では禁煙と肥満,体重管理について記載する.他の因子(食事療法,節酒,運動療法,血圧管理など)については「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2017 年版)」988)を参照されたい. 1.1 禁煙への取り組み 喫煙は動脈硬化性疾患の主要な危険因子の1 つである.喫煙が冠動脈疾患の進展・発症に関与することは国内外の 疫学研究によって報告されている891, 902).その機序として,内皮機能障害,酸化ストレス,血小板凝集,線溶系亢進,炎症などの複数の因子が関与する903–906).喫煙は少量であっても心筋梗塞の発症リスクを上昇させ892, 893),タバコの種類によらず有害であることにも留意すべきである894).近年,急激に普及している新型タバコの健康への影響は不明瞭であるが907),少数の検討では交感神経活性を高め,酸化ストレスを増加させ,心血管発症リスクを上昇させる可能性が報告されている908).いかなる喫煙も心血管疾患の再発率を高めるだけでなく,癌や肺疾患発症のリスクも高めることから,禁煙はすべての動脈硬化疾患患者で達成すべき目標である.また,受動喫煙でも心血管リスクの上昇は明らかである894–896).受動喫煙の減少が心血管リスクを低下させることも示されており909, 910),受動喫煙禁止法の改正は臨床的意義をもたらす可能性が高い.今後は職場や家庭での受動喫煙を防ぐ指導を徹底することが社会的課題である. 禁煙が心血管イベントの発生の抑制に比較的早期から寄与することが本邦から報告されている897).急性冠症候群(ACS)発症後に禁煙した患者は,喫煙を継続した患者にくらべて心筋梗塞発症の相対リスクが0.57 であることが示されている898).また,医師が患者に禁煙指導をすることは禁煙率を高める899).家族支援が禁煙達成率に与える影響 表80 二次予防における禁煙に関する推奨とエビデンスレ ベル 推奨クラスエビデンス レベル すべての患者で喫煙歴を把握するI A喫煙歴のある患者に対して喫煙の弊害を説明し,禁煙指導・支援を行う.受動喫煙の弊害も説明し,患者家族や職場への指導を行う891–901) I A