p.80 抽出テキスト
入浴は日本人にとって日々の習慣であり,患者は清拭よりシャワー・入浴を希望する.しかし,入浴中の心停止の報告もあるため,AMI 発症後は制限されることが多い.伊藤らは,AMI 患者における不感温度(36°C)での入浴の場合,浸水位の上昇による心拍数の徐脈化はほとんど認められなかったこと,温熱による直接的な血管拡張作用が降圧効果をもたらしたこと,浴槽のお湯の排水時にも循環動態の大きな変調はみられず,不整脈を惹起することもなかったことを報告しており,浸水負荷に対する副交感神経の応答低下,不感温度を用いた入浴が循環動態を改善する可能性,降圧による心筋への後負荷減少が示唆されること,一定の条件下の入浴は安全に行えることを考察している842).また,木村らは,看護師介助によるシャワー浴負荷は200 m 歩行負荷にくらべ酸素摂取量が有意に少なく,心拍数や血圧の変化もなかったと報告している843).しかし,これらは少数を対象とした検討であり,安全性の観点から初回のシャワー・入浴は監視下で,前後の自覚症状,血圧,心拍数をモニタリングしながら行う必要があると思われる. 13.5 運動負荷試験の実施・意義 ACC/AHA 2002 Guideline Update for Exercise Testingによると,予後の評価,身体活動度の処方,内科治療やインターベンションの追加の評価のため,運動負荷試験を退院前または退院してすぐに行うことが推奨されている844).特殊な場合を除き,通常発症から4 ~6 日で亜最大負荷が, 14 ~21 日で症候限界性運動負荷が推奨されている.PCIを含む治療の改善によって死亡率は減少したが,PCI 非施行または運動負荷ができない患者の予後は悪いことも知られている.さらに,低強度負荷でのST 下降のある患者,5 METs 以下の運動耐容能の患者,運動で血圧が低下する患者の予後は不良である844). 13.6 心臓リハビリテーションの導入率 入院心臓リハビリテーションの長期的予後に関する有効性についてはデータに乏しいが,二次予防のための治療を改善することが示されている.また,退院早期の心臓リハビリテーションは身体機能,心血管疾患危険因子の管理,精神社会的健康,再入院率を改善することから,心臓リハビリテーションの導入率を高めることには意義がある845). 京都大学で行われたACS の医療の質指標に関する検討では,ACS 患者のうち心臓リハビリテーションへの参加を主治医に勧められた割合は32%,心臓リハビリテーションの継続率は38% と,いずれも低いことが示された847).また,その有効性にかかわらず,心臓リハビリテーションへのAMI 患者の参加率は14 ~35% であり,不参加の要因は,プログラムへの交通の便や医療保険の問題の他,女性,高齢者,少数民族であることだった848).高齢冠動脈疾患患者における導入成功の最大の要因は主治医からの勧めであったとされる846).また,Thomas らは,ACS 後の心臓リハビリテーション/ 二次予防プログラムは,二次予防のための治療の提供や患者の予後を改善する体系的,効果的ケアモデルであるが,患者の参加が不十分であること,その原因として患者自身,提供元,システム上の障壁があること,導入のためのシステム,主治医からの勧めの程度,導入に関する責任の評価がその改善を支援することを指摘している845). 運動療法への参加に寄与する因子には,外的因子(安全性,交通の便,社会的支援),内的因子(身体機能,認知機能,感情),文化的因子があり,前2 者については図6に示すようなフレームワークを使うと理解しやすい.とくに認知機能や社会的因子がしばしば取り上げられている849) . 通常の導入方法にくらべ,該当患者が自動的に選択され,退院前に心臓リハビリテーションへの参加に必要な手続きを行う方法では,参加率が50% と通常の方法の32% より高かったとされ,より簡便な導入システムを作ることが大切である850). 表76 運動負荷試験の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 予後,身体活動度,追加治療の評価のために,急性期の運動負荷試験を行う844) I A表77 心臓リハビリテーション導入に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 外来心臓リハビリテーションの導入率を高めるため,主治医が積極的に心臓リハビリテーションを勧める845, 846) I A