p.74 抽出テキスト
高値,または総遊出量(遊出動態の曲線下面積:area under curve から算出)から求められてきた810–812).最近では心筋トロポニンI や心筋トロポニンT も用いられる812).心筋トロポニンT は最高値807)または72 ~96 時間値が梗塞サイズと相関し808 ,809),心筋トロポニンI は72 時間値が梗塞サイズと相関するという報告がある208). 一方,ACS の早期診断に有用な高感度心筋トロポニンIや高感度心筋トロポニンT が,梗塞サイズと良好に相関するという報告はない. 12.2 心臓核医学検査 心筋血流製剤には,201Tl と99mTc 製剤2 種類(99mTc sestamib:MIBI,99mTc tetrofosmin:TF)の計3 製剤が用いられ,梗塞サイズ推定や心筋バイアビリティ評価における診断精度はほぼ同等とされている813).左室を17 分画ないし20 分画し,集積程度を視覚的に5 段階評価する.スコアの総和が大きいほど梗塞範囲が広い.局所の集積程度を健常部の集積程度と比較して算出する% 摂取率は心筋バイアビリティの指標であり,一般に安静像において%摂取率が50 ~60% 以上の場合に心筋バイアビリティありと判断される.血行再建後の壁運動回復に関する診断能は,感度80%,特異度60% 程度と報告されている814). 18F-FDG PET による心筋バイアビリティ評価において,梗塞急性期の心筋血流イメージングでは梗塞巣の血流分布が本来の残存心筋量よりも過度に低下することが知られており,この時期における心筋バイアビリティ評価は過小評価につながる傾向にあるといわれている.また,梗塞急性期の梗塞巣では,残存心筋の糖代謝に伴うFDG 集積の他に,炎症細胞浸潤を反映したFDG 集積もみられるため,正確な心筋バイアビリティの評価は困難と考えられている. 心臓核医学検査については,「心臓核医学検査ガイドライン(2010 年改訂版)」815)に詳細に記述されている. 12.3 心血管磁気共鳴検査ACS における心血管磁気共鳴(CMR)では,シネMRI, T2 強調画像,遅延造影(LGE),T1 およびT2 マッピングが用いられる.シネCMR の最大の利点は,放射線被曝がなく造影剤が不要であるため,右室および左室の壁運動,壁厚,心室容積,左心機能を,非侵襲的に定量的かつ高い再現性をもって評価することができる点にある824, 825). 12.3.1 梗塞巣の同定と梗塞サイズの定量評価 梗塞巣は急性および陳旧性のいずれもLGE-CMR で陽性像を示す(白く描出される).LGE-CMR で測定される梗塞サイズは病理学的所見とよく一致し,LGE-CMR では心筋梗塞の存在,部位,貫壁性の有無,サイズが正確に診断できる826–829). 心筋梗塞の部位診断において,LGE-CMR は空間分解能が高いため,単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)で診断が困難な小梗塞や心内膜下梗塞の診断に優れている.LGE-CMR とSPECT を直接比較した検討では,LGE-CMR がすべての心筋梗塞の診断で有意に診断能が高いことが示された826).また,LGE-CMR は右室梗塞の診断にも優れている828).さらに,LGE-CMR で測定された梗塞サイズは,従来の予後予測因子であった左室容積やLVEF よりも優れた予後予測指標であることが報告され806, 830),また,心筋梗塞発症1 ヵ月以内に撮像されたLGE-CMR のメタ解析では,梗塞サイズが4 分位中最も大きい群は1 年以内の総死亡および心不全入院と強く相関することが報告された831).一方,LGE-CMR による梗塞サイズの評価時に注意すべき点として,心筋梗塞発症1 ヵ月以内の急性期には梗塞巣周辺のリスク領域にも心筋浮腫の影響で造影効果が出るため,梗塞サイズを過大評価してしまう.したがって,梗塞サイズの定量や後述する心筋バイアビリティ評価の場合は,発症から1 ヵ月以上経過した慢性期にLGE-CMR を行うべきである. LGE-CMR において,梗塞巣の中心部が島状に造影されず,中心部に暗い部分が残る現象は微小血管閉塞(MOまたはMVO)とよばれる.MVO は早期MVO と晩期MVO に区分され,パーフュージョンMRI とLGE-MRIで確認できる.早期MVO はパーフュージョンMRI で造影1 ~2 分以降も遷延する非造影部と定義され,晩期MVO はLGE-MRI で造影後10 ~15 分後まで残る非造影部を指す816).MVO はT2*(T2 star と読む)画像で低信号を示すことから梗塞巣内出血であると考えられており,再灌流障害に起因すると認識されている817, 818).MVO は再灌流療法の遅れた大きな梗塞に合併しやすく,MVO が存在すると左室リモデリングや心事故の発生が多いことが報告されている819). 表68 心筋梗塞の評価におけるCMR の推奨とエビデンス レベル推奨クラスエビデンス レベル 心エコー法で梗塞サイズや壁運動を十分評価できない患者に対し,シネCMRを考慮する816–819) IIa C心筋梗塞巣の描出を目的としてガドリニウム造影LGE-CMR 施行を考慮する 820– 823) IIa C