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p.73 抽出テキスト

心筋梗塞急性期に,発症時と類似した胸部症状が出現した場合は心筋虚血由来である可能性が高く,硝酸薬やβ遮断薬などの薬物治療を強化する.また,診断のために心電図や心筋バイオマーカーの変化を評価する784).明らかな心筋バイオマーカーの再上昇が認められた場合には再梗塞と診断できるが,心筋梗塞発症後は心電図所見や心筋バイオマーカーは経時的に変化し,再灌流の有無や梗塞サイズの影響も受けるため,診断が難しいことも多い(とくに発症24 時間以内).したがって,心電図,心筋バイオマーカー,心エコー所見なども含め臨床所見から総合的に診断する必要がある.

ステントを用いたprimary PCI 施行例に心筋虚血由来の胸痛が発生し,ST 再上昇が出現した場合には,ステント内血栓症(急性および亜急性血栓症)を疑う.抗血小板薬と薬剤溶出性ステント(DES)の改良で,急性期のステント血栓症による再梗塞はベアメタルステント(BMS)時代より低率となったが785, 786),重症で迅速な冠血行再建が必要とされることが多い.

11.2 急性心膜炎

急性心膜炎は心筋梗塞発症数日後に高率に発生する.心膜炎の合併例では梗塞サイズが大きく,ときに心不全を生じることもある787, 788).胸部症状は吸気時や臥位で増強することが多い.心膜摩擦音が聴取されれば診断は確定的であるが784),短時間しか聴取されないこともあり,頻回に聴診する必要がある.梗塞サイズの大きいQ 波梗塞の場合や,再灌流療法非施行例で虚血症状としては典型的でなくても胸部症状を訴え,心膜液貯留が増加した場合には, “oozing rupture” の発生も念頭に置く必要がある789).

治療の第一選択はアスピリン(1回0.33~1.5 g,1日1.0 ~

4.5 g,適宜増減,ただし最高量まで)である.非ステロイ

ド系抗炎症薬は痛みを軽減する目的で使用してもよいが,心筋瘢痕の菲薄化や梗塞拡大を起こす危険があり,長期間使用すべきではない.とくにイブプロフェンはアスピリンの抗血小板作用に干渉するため,用いるべきではない790).コルチコステロイドは梗塞瘢痕の菲薄化や心破裂に関与するため791, 792),原則として使用しない.また,心膜炎再発例に対しては,痛風発作の緩解および予防で用いられるコルヒチンの有効性も報告されているが,本邦では保険適用外である793–795).

11.3 脳卒中

急性脳卒中は,心筋梗塞の0.75 ~1.2% に発症すると報告されており796–798),その死亡率は 40% と高い797).脳梗

塞の既往,高血圧,高齢,低心機能,心房細動はAMI 後の塞栓性脳卒中発症の危険因子であり796, 799, 800),なかでも心房細動は最も重要な因子である.左室内血栓の形成は, LVEF の低下例800)やKillip 分類クラスIII,IV の例で多い801).

左室内血栓,左室の広範な無収縮が認められる患者では,抗血小板薬の投与とともに, PT-INR を2 前後に維持することを目標にワルファリン投与を行うべきである.ワルファリン治療の期間は,心原性塞栓の原因となる基礎疾患に応じて考慮する.一般に左室内血栓を合併した心筋梗塞患者では,少なくとも3 ヵ月間の抗凝固療法が必要である.また,頸動脈エコーも施行し,頸動脈にカテーテル治療または外科的治療の適応となる狭窄病変がないかを検索すべきである802).

11.4 深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症

心不全合併患者が長期入院,長期臥床を強いられる場合には,抗凝固療法が必要である803).深部静脈血栓症の発症の予防とリスク評価については,「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017 年改訂版)」804)に準ずる.

12 梗塞サイズの評価

梗塞サイズはACS の急性期および慢性期死亡や心不全再入院に相関することから,重要な予後規定因子の1 つである805, 806).さらに梗塞部の心筋バイアビリティー(生存能)の評価は,血行再建術の適否のみならず心室リモデリングの発生に関して重要な情報となる.

12.1 心筋バイオマーカー

梗塞サイズは,これまでCK またはクレアチンキナーゼMB 分画(CK-MB)の経時的な測定によって得られる最

表67 心筋梗塞の評価における心筋バイオマーカーの推奨

とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

梗塞サイズの推定に発症後72~96 時間の心筋トロポニン値を用いることを考慮してもよい208, 807–809) IIb B