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p.70 抽出テキスト

PMR の70 ~90% の症例が,発症した時点で心原性ショックに陥る752).完全断裂型のほうが僧帽弁の逸脱範囲が広く,発症時にショックに陥りやすい.部分断裂型の58%,完全断裂型の80% が,ショックのためにIABP が必要な状態になるとの報告がある754). 2 診断

PMR の診断の基本は,心原性ショック状態のAMI 患者で,心尖部から胸骨左縁にかけて出現する比較的高調な全収縮期雑音である.III 音の亢進による心室性奔馬調律を伴うことが多い.確定診断には経胸壁心エコー法が最も有用であり754),動揺弁尖(flail leaflet)の検出による診断感度は88 ~93% と高い.心エコー法での主要な4 徴候は,左室内にみられる左室運動と関連しない奇異な可動性の組織,弁尖の逸脱,僧帽弁逆流,非梗塞部の左室壁運動の亢進である755).感染や胸部鈍的外傷などによっても乳頭筋と弁尖を連結する腱索が断裂することがあるが,腱索断裂では断裂部の先端が細く,鞭のようにしなっている点で,乳頭筋組織が腱索の先端に塊状に付着しているPMR と鑑別できる.経胸壁心エコー法の画像が明瞭に描出されない場合は経食道心エコー法が有用である756). 3 治療

僧帽弁手術が行われる以前のPMR の保存的治療では死亡率は80% であり,現在は外科的治療が治療の第一選択である.確実に僧帽弁閉鎖不全を修復するため,僧帽弁置換術が選択されることが多い717).しかし,部分断裂型で病変範囲が比較的小さい症例や,健常な乳頭筋が残存している症例では,断裂した乳頭筋を健常乳頭筋に固定する術式,健常な乳頭筋を使って人工腱索を形成する術式も行われている757).最近では経皮的僧帽弁固定用クリップを使った術式も報告されている758). 4 治療成績

外科的治療の進歩により,手術後の死亡率は30% 前後から最近では9% にまで改善した717, 752–754).他の機械的合併症と同様に,発症時の急激な血行動態の悪化に適正に対処し,手術室に搬送することが治療成績を向上させる. 9 急性腎障害

ACS の後に発生する急性腎障害(AKI)の機序として,造影剤誘発性腎症(CIN),コレステリン塞栓,心原性ショックによる腎血流低下などが知られている.とくに梗塞サイズ・リスク領域が大きく,血行動態が不安定な症例では,primary PCI 後のAKI の原因は単一ではない.

AKI の国際的な診断基準として,次の3 分類が汎用される.2004 年にAcute Dialysis Quality Initiative(ADQI)により作成されたRIFLE 分類,2007 年にAcute Kidney Injury Network(AKIN)により作成されたAKIN 分類, 2012 年にKidney Disease, Improving Global Outcomes (KDIGO)により作成されたAKI のガイドライン(KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury)

770)で

ある.ACS 患者では,造影剤を使用しない場合でもAKIの発症にショックが関連することが知られており,その原因として心拍出量の低下,静脈うっ滞による腎血行動態の変化が関与するとされる.また,免疫・炎症反応,アシドーシスや急性高血糖の要因によってもAKI を発症しやすい状態になる771).

さらに,CAG,PCI を行った際のCIN は大きな要因で

表63 CAG,PCI 後のAKI(CIN を含む)予防に関する

推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

不必要な造影を避け,造影剤の使用量を可能なかぎり減らす努力をする759–

761) I B腎機能低下が認められる患者に対してPCI 施行前後に生理食塩液の輸液を行う762) I B腎機能低下が認められる患者に対して造影前に重炭酸ナトリウム(重曹)液の短時間投与を考慮してもよい763) IIb C CKD 患者に対して,カテーテル検査やPCI 施行後にCIN を予防する目的で血液透析・血液ろ過を行うことは推奨されない762, 764–766) III No benefit B肺うっ血が認められない患者に対して利尿薬 (とくにループ利尿薬) を投与すべきではない767) III Harm B造影剤使用前後24 時間に,非ステロイド系抗炎症薬を使用すべきではない762,

768, 769) III Harm C