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p.68 抽出テキスト

することが多い.ER またはベッドサイドでの診断が必要不可欠であり,心エコー法は非常に有効である.心エコー法において,LVFWR では心タンポナーデ,VSR では心室中隔を介した左-右短絡血流,PMR では高度の僧帽弁逆流,僧帽弁逸脱,断裂した乳頭筋が観察されることで,ほぼ診断は確定される. 4 治療

特殊な例を除いて外科的治療以外に救命方法はないが,これまでの報告では外科的治療の成績は不十分である.理由は急激な血行動態の破綻による全身状態の悪化である.したがって,VA-ECMO(PCPS)やIABP を迅速に使用し,循環を維持して全身状態の悪化を回避し,早期に外科的治療を行うことが治療成績を向上させると考えられる.

8.1 LVFWR

1 病態

1980 年代,LVFWR はAMI 後死亡の10% 前後を占め,他の機械的合併症(VSR:1 ~2%,PMR:0.5 ~5%)にくらべて多いと報告されていた715).しかし,PCI の普及によって発生率は減少し,最近では貫壁性心筋梗塞の1% 以下,発生時期はAMI 後7 日以内と報告されている100).

LVFWR は,梗塞部が突然破裂して急速に循環虚脱に陥るblow out 型と梗塞部からじわじわと出血するoozing 型に分類される.発生の危険因子として,高齢,女性,高血圧,閉塞した冠動脈への再灌流の遅れや初回AMI などがあげられている. 2 診断

AMI 後の循環不全合併例には,ただちに経胸壁心エコー法を行うべきである716).血行動態が比較的安定しており, CT 検査がすぐに行える環境であれば,CT 検査も有用である.心嚢液貯留を認め,心タンポナーデの徴候があり,心嚢穿刺で血液が排出されば確定診断となる. 3 治療

LVFWR の生存率は手術治療なしでは極端に低く,緊急手術が生存のための唯一の選択肢となる.まず血行動態の回復,維持が救命のための絶対条件で,蘇生処置としてVA-ECMO,IABP の緊急導入を要する場合もある.循環が維持できている場合においても,IABP による補助循環は後負荷低減により左室壁の圧負荷を軽減することから,破裂部位の拡大,手術後の縫合線の裂開を防止する効果が期待できると考えられる.

それと同時に心嚢ドレナージを併行することが重要である.経皮的心嚢ドレナージは,心嚢内に血腫が形成されるとその効果が不十分となることもあるため,緊急開胸血腫除去を行う必要もある.

oozing 型では手術時にすでに出血が止まっている場合も多く,非縫合術式の良好な成績が報告されている717–721).非縫合術式は人工心肺なしでも行えるため,出血傾向を助長することなく止血効果が得られる.blow out 型では,梗塞部切除とともに直接縫合閉鎖,パッチ縫合閉鎖など心筋断裂部位の縫合閉鎖術が必要となる717, 719, 722).脆弱化した心筋への縫合は縫合線での再破裂の危険が高いため,健常部に縫合することが重要である. 4 治療成績

診断技術の向上,手術術式の進歩にもかかわらず, LVFWR の死亡率は80% 前後と高く,とくにblow out 型の死亡率は高い383, 718, 723).一方,oozing 型の生存率はblow out 型よりも高い.2017 年の冠動脈外科全国アンケート調査結果では,手術が行えた例での死亡率はblow out型で66.6%,oozing 型で20.2%,全体では35.1% であった.LVFWR の救命には,突発的な循環虚脱に対して心嚢ドレナージ,VA-ECMO などで迅速に循環を維持しながら手術室に搬入することが最も重要である.

8.2 VSR

1 病態

VSR の報告は,1847 年のLatham の病理解剖所見が最初といわれている724).AMI に対する積極的なPCI などの血行再建によりVSR は減少傾向にあり,発生率は血栓溶解療法前の時代では1 ~2%,血栓溶解療法時代では0.4 ~ 0.6%,現在では0.17 ~0.31% となった712, 725–727).ただし発生率は減少したが,死亡率は今も41 ~80% と高い728). 1990 ~2007 年の15 万人弱のAMI 患者の集計資料では,入院死亡,1 年死亡は1990 ~1992 年でそれぞれ41%, 60%,2005~2007 年でそれぞれ44%,56% と変わっていない.内科的治療にくらべて外科的治療の利点は入院生存率を向上させることのみであり,30 日生存率,1 年生存率には効果がみられなかったことが報告されている.突然の重度の循環不全による全身状態の悪化が,1 年生存率に大きく影響を及ぼしていると推測される723).

心室中隔を栄養する冠動脈は,前壁側心尖部領域を左前下行枝(LAD)が灌流し,後壁・心基部付近を右冠動脈(RCA),左優位の左回旋枝(LCX)から分岐する中隔枝が灌流する728).LAD の閉塞による前壁梗塞では心尖部近くの心室中隔が穿孔し,RCA または左優位のLCX の閉塞による下壁側壁梗塞では心室中隔後壁の心基部近くが穿孔する傾向にある.発生率は前壁,下壁梗塞ほぼ同等と報告されている.