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ることが多い.心拍出量を維持するためには生理食塩液または低分子デキストランによる急速大量輸液を行い,左室の前負荷を増加させる必要がある.その場合,PCWP を15 mmHg 程度に維持するように心がける.しかし,右室機能低下例への大量輸液時には,心室中隔が左室側に圧排されて左室容量が低下し,血行動態が悪化することもある.また,PCWP が18 mmHg 以上に上昇すると左心不全徴候が出現する可能性がある.急速大量輸液500~1000 mLで反応がない場合はカテコラミン,さらにはIABP や右心補助心臓の適応となることもある707).硝酸薬や利尿薬の投与は著明な低血圧を引き起こす危険性があるため,きわめて慎重に行わなければならない.房室ブロックや心房細動などの不整脈を合併した場合には,心房心室順次ペーシングや電気的除細動を早期に行う必要がある708).早期の再灌流療法は右室機能を改善し,房室ブロックの発現を予防するとされている709, 710). 8 機械的合併症の評価と治療 AMI 後の機械的合併症は,左室自由壁破裂(LVFWR),心室中隔破裂(VSR または心室中隔穿孔[VSP]),乳頭筋破裂(PMR)の3 病態を示す.発症の原因はAMI によって脆弱になった心筋の断裂である.左室自由壁で心筋の断裂が発生するとLVFWR,心室中隔で発生するとVSR,乳頭筋で発生するとPMR となる.LVFWR では心タンポナーデ,VSR とPMR では急激な心内血流の変化により,AMI 後の突発的な循環不全,ショックに陥ることも多く,いずれも非常に死亡率の高い合併症である.とくにLVFWR は発生率が低いにもかかわらず,STEMI 患者の入院死亡原因として,心原性ショック,心不全に次いで多いことが報告されている711). 1 発生率 2010 年に報告されたAPEX-AMI レジストリーでは, STEMI 患者5,745 例のうち,機械的合併症は52 例(0.91%)に発生し,LVFWR が0.52%,VSP が0.17%, PMR が0.26% であった712).歴史的には,再灌流療法前の時代,血栓溶解療法時代,ステント留置を含むPCI の時代へとAMI の治療法が進歩するにつれて,AMI 後の機械的合併症の発生率は減少している713). 2 発生時期と発症機転 以前は,AMI 発症2,3 日後~1 週間に機械的合併症が発生しやすいといわれていたが, AMI 発症後24 時間以内に多く発生しているという報告もある382).入院治療の遅れ(AMI 発症後24 時間以上),血圧を上昇させるような発症後の身体活動,高齢,女性,初回AMI などが発生の危険因子としてあげられる714).逆に,再灌流療法,β遮断薬, ACE 阻害薬,アスピリン使用などが発生率を低下させる効果があると報告されている713). 3 診断 いずれの病態も急激に循環動態が変化し,緊急処置を要 表62 機械的合併症の治療に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 心エコー法により機械的合併症を迅速に診断し,外科的治療について心臓外科医にコンサルトするI C機械的合併症による心原性ショック患者に対してIABP を使用するI C 表61 右室梗塞の診断基準 (「後藤葉一:右室梗塞,冠動脈疾患の集中治療(平盛勝彦,斎藤宗靖,土師一夫編),p119,1988,南江堂」705)より許諾を得て改変し転載) A.剖検 B.大基準• 心電図でV4R 誘導のST 上昇(0.1 mV以上) • 心エコーで右室のakinesis またはdyskinesis • 平均右房圧≧10 mmHg かつ(平均肺動脈楔入圧-平均右房圧)≦5 mmHg • 右房圧のnoncompliant 波形• 肺動脈圧の交互脈または早期立ち上がり C.小基準• 下壁梗塞• 心エコーでの右室の拡大• 平均右房圧≧6 mmHg(安静時) • Kussmaul 徴候• 99mTc ピロリン酸の右室への集積 確定診断1.剖検診断2.臨床診断• 大基準2 項目以上• 大基準1 項目と小基準2 項目以上(心エコー,平均右房圧の項目は重 複しないこと) • 小基準4 項目以上