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p.62 抽出テキスト

血行動態の悪化または難治性の心筋虚血を伴う心房細動や心房粗動に対しては,同期下での電気的除細動が推奨される.初回エネルギー量は単相性では200 J,二相性では120 ~200 J とし,除細動できなければ段階的に増加させる637–640).電気的除細動に反応しない心房細動や,反応してもすぐに再発する場合,または血行動態の悪化や心不全を伴わない心房細動には,薬物治療による心拍数コントロールを行う.

重篤な閉塞性肺疾患やアレルギーがないかぎり,心房細動の心拍数コントロールにはβ遮断薬の投与が望ましい642, 643).急性期のコントロールとしては,プロプラノロール2 ~10 mg を静注(1 分間に1 mg 以上は投与しない),ランジオロール1μg/kg/分の速度で静脈内持続投与を開始し1 ~10μg/ kg/分の用量で適宜調節,エスモロール1 回0.1 mL/kg または1 mg/kg を30 秒間で静注する.血圧が100 mmHg 未満に低下したり,心拍数が50/分未満まで減少すれば投与を中断する.AMI 急性期の検討では, β遮断薬の静注投与は心拍数のコントロールに有効であり,心筋酸素需要を減少させることが示された644, 645).β遮断薬の投与が禁忌であればベラパミルまたはジルチアゼムの静注を考慮するが,これらのCa 拮抗薬は陰性変力作用をもつため,心不全の増悪に注意する必要がある646).

心房細動に対するアミオダロンの静注は,交感神経活性を抑制するとともにCa 拮抗薬としての効果を発揮し,房室伝導能を抑制する.アミオダロン静注によって心房細動から洞調律へ復帰する確率は低いが,心拍数のコントロールは期待される647).心房細動を合併したACS 患者でのアミオダロンの有効性を評価した検討はないが,心不全患者に対する心拍数コントロールにおけるアミオダロン投与の有用性を検討した報告648),通常の治療後も遷延する頻脈を伴う心房頻拍の患者に有効であったという報告もあり649), 2014 年のAHA のガイドライン650)では,AMI に合併した心房細動の心拍数コントロール治療として,アミオダロンはクラスIIa とされている.しかし,本邦では心房細動に対するアミオダロンの静注は保険適用外である.

ジゴキシンは,重篤な左室機能障害または心不全を合併しているAMI 患者では代替治療となる651).しかし,その効果発現には通常60 分以上かかるとされ,効果が最大となるのは6 時間以降である.また,交感神経亢進時にはジゴキシンの効果は減弱する.高齢者や低カリウム血症,腎機能障害を有する患者では過剰投与に注意する.

リエントリー性発作性上室頻拍では心拍数が非常に高いため,以下に示す順序で治療を行う.1Valsalva 手技などの迷走神経刺激を行う.2ATP を静注する(1~2 秒かけて10 mg を,無効であれば1 ~2 分後に20 mg を静注する.必要があればさらに20 mg の投与を繰り返す).3持続する場合には同期電気的除細動を行う653).

5.3 徐脈性不整脈

表57 徐脈性不整脈の薬物治療に関する推奨とエビデンス

レベル推奨クラスエビデンス

レベル

症候性徐脈に対してアトロピン静注投与を考慮する594) IIa C症候性徐脈に対してエピネフリンまたはドパミンの静注投与を考慮してもよい594) IIb C

表56 つづき

推奨クラスエビデンス

レベル

頻脈性心房細動および心房粗動を合併する患者に対してβ遮断薬を投与する642,

643) I C気管支攣縮または房室ブロックを有さない患者に対して,心房細動および心房粗動による速い心室応答を減らすために,β遮断薬の静注投与を考慮する644, 645) IIa C左室機能低下または房室ブロックを有さない患者に対して,心房細動および心房粗動による速い心室応答を減らすために,非ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬の静注投与を考慮する646) IIa C心房細動および心房粗動による速い心室応答を減らし,左室機能を改善させるために,静注アミオダロン投与を考慮する647–650) IIa C重篤な左室機能障害や心不全を合併している心房細動または心房粗動患者に対して,速い心室応答を減らし左室機能を改善させるために,ジゴキシン静注を考慮する651) IIa C心房細動および心房粗動を合併する患者に対してIc 群抗不整脈薬を投与すべきではない643, 652) III Harm B