p.59 抽出テキスト
年からの3 年間で7,697 例にVA-ECMO が使用されたと報告されている596).そのうち3,298 例が急性心肺不全で, 2,364 例が救命領域での適用であった.ACS 例の詳細は不明であるが,SAVE-J 研究597)では救命領域の約75% がACS であったことから推定すると,3 年間でおよそ1,700例程度に使用され,年間600 例程度に用いられている可能性が示唆される. VA-ECMO の有効性に関するこれまでの報告は観察研究のみであり,無作為化比較試験はない.VA-ECMO は急性循環不全全般に使用される装置であり,ACS に限定した調査結果は少ない.VA-ECMO を用いたACS 患者の検討では,予後へ影響する因子として再疎通までの時間,再疎通成功が報告されている591).また,ショックの重症度も補助循環の有効性に影響していることが考えられ,その評価もなされている.心原性ショックを合併したACS 患者にVA-ECMO を適用した単施設後ろ向き観察研究では,重度の心原性ショックへの効果はみられなかったが,中等度のショックには有効であったという報告592),有効性の規定因子は年齢とCI であったという報告598)がなされている. 劇症型心筋炎など心機能の回復の可能性が高い非冠動脈疾患とは異なり,ACS ではPCI で救済できた心筋以外には心筋傷害が残存するため,VA-ECMO の効果が弱い可能性がある.この点からも,補助循環を要するACS 患者では,より早期に冠血行再建を行う努力が求められる591). 4.3.1 ER でのVA-ECMO の適応 ACS 患者でER でのVA-ECMO が適応となるのは,来院時に心肺停止で二次救命処置(ACLS)に無反応の場合,および循環動態の完全破綻には至っていないが致死性不整脈があり,カテコラミン不応性の低心拍出量により心原性ショックを示す場合である.また,機械的合併症による循環不全も適応と考えられる.とくに,心室中隔穿孔(VSP)では左室から右室への短絡血流のため,酸素化が比較的維持されていながらも前方駆出心拍出量が低下し,循環不全による代謝性アシドーシスが起こることが少なくない.容量負荷になっている右室からの脱血が良好であることが期待できるので,VA-ECMO のよい適応である593, 599).一般に,機械的合併症では急速に循環不全が進行し,確定診断をしながら補助循環を適用しなければならないことが少なくない.VA-ECMO を導入するかIABP から開始するかは,患者の個々の病状による.調律不全による完全破綻またはカテコラミン不応性の心原性ショックでは,VA-ECMO が優先されることが多い.比較的余裕がある場合には, IABP を先行させて冠血行再建を実施し,病態に応じてVA-ECMO を追加することもある.ただし,IMPELLA が導入されればこの過程は異なってくると想定される.その 理由は,呼吸器に問題がない例に対して呼吸循環補助と同時に後負荷増大を生じるVA-ECMO を適用する必要性がないこと,IMPELLA では生理的補助が可能になることなどである.IABP のエビデンスが確立されずむしろ否定されつつあることから,補助循環に関する状況は変革期を迎えているといえる.CULPRIT-SHOCK 試験でVA-ECMOの適用例が20% 程度にとどまり,IMPELLA の適用率が高いことからも,それが示唆されているといえる330). 心肺停止を生じたACS への補助循環適用に関するガイドラインとしては,日本蘇生協議会(JRC)のガイドラインを参照することを推奨する.また,体外循環式心肺蘇生(ECPR)とPCI などに関連する文献も参照されたい600–602).心拍再開後の低心機能への補助循環の適用は,JRC ガイドラインでもエビデンスレベルが低いと記載されている594). 4.3.2 VA-ECMO からの離脱 VA-ECMO からの離脱は心機能が回復した場合に行う.流量を1.0 L/分まで減量し,心機能,循環不全の指標に問題がなければ,ON-OFF テストで評価し,離脱することが多い.一般に血圧,心拍数,左室壁運動,LVEF,CI,呼気終末二酸化炭素濃度,尿量などを検討して離脱を考えるが,前向きに検証されたものはなく,指標としてのエビデンスレベルは低い.塩基過剰(BE)や603),APACHE II スコア604)がその指標になるとする報告もあるが,いずれも少数例での後ろ向き研究であり,現時点では離脱についてエビデンスが確立された推奨できる客観的指標はない. 4.4 LVAD ACS でLVAD の適応になる状況は多くはない.LVADの適応検討となる代表的なACS は,左主幹部を責任血管とする高度重症病変である.この場合,LVAD の適用前にIABP やVA-ECMO などが適用されていることが少なくなく,一般に急性期を経て離脱困難になった場合にLVAD の適用が検討されるが,多臓器不全や重症感染症を合併していることも多く,LVAD までに至る例は少ない.多臓器不 表51 LVAD 適用の推奨とエビデンスレベル推奨クラスエビデンス レベル 左主幹部病変・多枝病変例で,IABP, VA-ECMO,IMPELLA などからの離脱困難な心原性ショック患者に対して,体外式LVAD の適用を考慮してもよい594, 603) IIb C