p.58 抽出テキスト
る30 日死亡率は対照群が41.3%,IABP 群が39.7% で, IABP 群の優越性は証明されなかった580).これを含む12の無作為化試験2,123 例のメタ解析では,心原性ショックの有無にかかわらずIABP はAMI の30 日死亡率を改善しないと結論づけられた584).こうした事実から,最近の欧米のガイドラインでは心原性ショックに対するIABP の使用の推奨度が引き下げられた70, 100, 221). しかし上記には,無作為化試験であってもいくつかの問題が内在することが指摘されている.たとえば,IABP- SHOCK II 試験ではIABP 群の大半(87%)でPCI 後にIABP が開始されており,より早期に導入すべきだったという意見があることや,CRISP-AMI 試験では対照群の8.5% にIABP,IABP-SHOCK II 試験でも対照群の10%にIABP,7.4% にLVAD への交差があり,転帰に影響した可能性が残ることなどである.STEMI 患者を対象とした補助循環の臨床試験では,救命が優先されるがゆえに医療行為の変更を回避できず,治療企図(intention-to-treat)解析では評価が困難な面があり,また,登録患者の重症度の不均一性など,試験デザイン上,デバイス本来の効果を証明しにくい性質を有している.前述のCRISP-AMI 試験の副次サブ解析では,大きな梗塞巣や心筋虚血の持続例に限定して評価すると,6 ヵ月の死亡率が有意に改善することが判明した585).しかし,本邦の14,000 例超の実臨床のデータベースに基づいた解析では,さまざまな因子を統計学的に調整しても,心原性ショック486 例の院内死亡率はIABP 非使用群よりもIABP 使用群で有意に高く,肯定的な結果が得られていないのが実情である586). 本ガイドラインには本邦におけるACS の標準的な治療指標を提供する役割があるため,ACS を収容する大半の施設で使用できる補助循環であるかという現実的な課題への配慮が必要である.とくに,新しい補助循環であるIM- PELLA はACS に対する効果をもつことが期待されるが,本邦での使用実績は未だ不十分であり,実施可能施設が限られている.IABP-SHOCK II 試験結果の公表後の米国においてさえ,IABP の使用率は施設ごとに著しく異なることが報告されている587).欧米のガイドラインの動向も踏まえつつも,中小規模のPCI 施設が多く,primary PCI が積極的に行われている本邦の特性や現状を最大限に考慮し,本ガイドライン作成委員会ではIABP 適用推奨レベルを決定した. 4.2 IMPELLA IMPELLA は,左室内に留置してモーターの駆動により左室内の血液を汲み出し,大動脈から全身に拍出する流量補助装置である.心負荷軽減と心筋循環改善による心機能 改善効果が期待され,カテーテルベースのデバイスであるため,ショック時に迅速かつ低侵襲に対応できる.ACS治療はカテーテルによる血行再建を主軸とするため, IMPELLA のデバイスシステムはこの治療体系に適用しやすい.登録研究の結果から,STEMI に合併する心原性ショックに対する効果が期待されている588).IABP に対するIMPELLA の優越性は無作為化試験では証明されていないが589, 590),これらの無作為化試験は小規模で,補助循環の効果が期待される患者の選択基準が不十分であり,適切な対象に施行された場合の効果を否定するものではない.現時点では評価が不十分なため,先行する欧米のガイドラインでは,ACS 患者に対するIMPELLA 使用に関して具体的な推奨度は言及されていない.本邦ではこのデバイスは導入されたばかりであり,本ガイドラインも当面は欧米のガイドラインを追随することが妥当と思われる.今後は,対象を絞り込んだより規模の大きい臨床試験を企画し,効果や安全性について正当に評価することが望まれる. 4.3 VA-ECMO(PCPS) VA-ECMO は,膜型人工肺と遠心ポンプを用いた閉鎖回路で構成され,内科医が適用可能な経皮的な人工心肺補助装置である.脱血管は大腿静脈から挿入し,その先端は右房に,送血管は大腿動脈に留置する.右房から遠心ポンプで脱血し,人工肺で酸素化して返血する.本邦では,静脈脱血・動脈送血装置であるVA-ECMO をPCPS とよんできたが,欧米の呼称との統一を図るためVA-ECMO と記載する.この場合,呼吸不全の補助に用いられる静脈脱血・静脈送血装置であるveno-vnenos(VV)-ECMO と区別する必要がある.VA-ECMO は,主に本邦を中心としたアジア諸国で比較的用いられている補助心肺装置で,IM- PELLA が臨床で使用できる欧米での使用率は低い595). 本邦のPCPS 研究会によるアンケート集計では,2013 表50 VA-ECMO 適用の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 薬剤不応性の心原性ショック患者に対してVA-ECMO の適用を考慮する591, 592) IIa C機械的合併症による進行性循環不全に対して,手術までの循環維持にVA- ECMO の適用を考慮してもよい330, 593) IIb C自己心拍再開後に重度の心機能低下がある患者に対してVA-ECMO の適用を考慮してもよい594) IIb C