GL検索 v0.1.0
画像は 56 ページを描画したものです
page 56

p.56 抽出テキスト

3.5 Ca 拮抗薬

不安定狭心症(UA)患者を対象に含む欧米のメタ解析において,Ca 拮抗薬は心筋梗塞の発症を抑制しないことが報告された557).しかし日本人では欧米人とくらべ,心筋梗塞発症後の早期の冠攣縮誘発率が3 倍近く高いことが知られている561).すなわち日本人のACS 患者では,基礎的病態として冠攣縮が重要な役割を果たしていると考えられ,ACS の再発予防としてCa 拮抗薬の重要性が示唆される.日本人を対象とした2 つの無作為化比較試験において, Ca 拮抗薬はβ遮断薬と同等のイベント抑制効果を有していることが証明された556, 562).ただし,短時間作用型ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬は,交感神経の活性化,頻脈,血圧低下から心筋虚血を誘発する可能性がある.

3.6 脂質代謝異常改善薬

3.6.1 AMI の急性期の脂質低下療法の現状

心筋梗塞二次予防における,スタチンを用いた低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値低下療法の心血管事故抑制効果は,多くの大規模臨床試験で立証されてい

る563–565).また,血管内エコー法(IVUS)を用いた研究において,スタチンによるLDL-C 値の低下が冠動脈プラークを退縮させ,その効果は LDL-C 値低下と正相関することも報告されている566).本邦においてACS を対象に,心血管事故を主要エンドポイントにして実施された前向き臨床試験は,症例数が少なくエビデンスレベルは低い.しかし,ACS を対象にプラーク退縮をエンドポイントとして実施された前向き臨床試験では,ACS の発症早期から保険診療で認可されている最大用量のスタチンを投与することにより,冠動脈プラークが有意に退縮することが明らかにされた567, 568).そして,プラーク退縮と中・長期の心血管事故が関係すること,短期間のプラーク退縮がイベントの予測因子であることもこれまでの臨床試験から報告されている569-574).以上の点から,本邦のACS 患者でも早期から忍容可能な最大用量のストロング・スタチン(アトルバスタチン,ピタバスタチン,ロスバスタチン)を使用することが推奨される.二次予防のためのスタチンの介入試験では,介入後の目標LDL-C 値は70 mg/dL 未満 とされているが, ACS による入院時にLDL-C 値が70 mg/dL 未満の患者についても,スタチンの有用性は観察研究や大規模臨床試験から明らかにされている574, 578).以上の結果から,スタチン介入前のLDL-C 値にかかわらずスタチンの投与は推奨される.しかし,下限値については現時点でエビデンスはない578).

3.6.2 潜在する家族性高コレステロール血症

家族性高コレステロール血症(FH)は,高LDL-C 血症,腱黄色腫・皮膚黄色腫,早発冠動脈疾患を3 徴とする遺伝性疾患であり,生下時から高LDL-C 血症状態が持続するため,若年時から動脈硬化性疾患の発症リスクが高い.ヘテロ接合体のFH は本邦でも200 人から500 人に1 人の割合と推定され,日常臨床でも意外に少なくない遺伝性疾患である.さらに,冠動脈疾患既往患者では一般集団の約10 倍の確率でFH が認められる575).AMI を対象に本邦で実施された観察研究では,アキレス腱肥厚(9 mm 以上)例の3.5 人に1 人が,成人ヘテロ接合体FH 診断基準の3項目をすべて満たすことが報告された576).ACS 患者のFH スクリーニングに際しては,急性期ではLDL-C 値が低下していることや577),若年者ではアキレス腱肥厚が目立たないことも念頭に置く必要がある.

3.6.3 LDL-C 値の急性期の管理目標と 非スタチン系LDL-C 値低下薬の位置づけ

AMI の急性期からストロング・スタチンの最大用量の使

表47 入院中のCa 拮抗薬投与の推奨とエビデンスレベル推奨クラスエビデンス

レベル

冠攣縮性狭心症を合併,または冠攣縮が原因で発症したことが明確な患者に対して,虚血発作予防を目的として長時間作用型Ca 拮抗薬を投与する556) I B冠攣縮を有しない患者に対して,ルーチンでのCa 拮抗薬の投与は推奨されない557) III No benefit A発症後早期に短時間作用型ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬を投与すべきではない558) III Harm A左室機能低下や房室ブロックを合併する患者に対して,ジルチアゼムまたはベラパミルを投与すべきではない559,

560) III Harm C

表48 急性期の脂質低下療法に関する推奨とエビデンスレベル推奨クラスエビデンス

レベル

ストロング・スタチンを,忍容可能な最大用量で投与する563–574) I A FH の可能性を考え,家族歴の聴取とアキレス腱を含む身体診察を行う575–577) I A