p.55 抽出テキスト
3.3 レニン・アンジオテンシン・ アルドステロン系阻害薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は,左室機能低下(LVEF 40% 以下)や心不全症状を有する患者への発症後早期の投与が推奨される237).ACE Inhibitor Myocardial Infarction Collaborative Group によるメタ解析の結果では,ACE 阻害薬はAMI 発症0 ~36 時間以内の投与によって,30 日死亡を有意に減少させた547).この効果はとくに発症1 週間以内に顕著に認められた.またACE阻害薬の効果は,Killip 分類クラスII またはIII,入院時の心拍数が100/分以上の高リスク例,前壁梗塞患者でとくに大きかった. アンジオテンシンII 受容体拮抗薬(ARB)の有効性は, AMI 急性期から投与が開始されたVALIANT 試験によって検証された542).ACE 阻害薬に上乗せされたARB の追加効果は明らかでなかったが,ACE 阻害薬に代わって標準治療に上乗せされたバルサルタンは,ACE 阻害薬と同様に心血管イベントを抑制した. REMINDER 試験では,発症24 時間以内の心不全症状のないSTEMI 患者に対しミネラルコルチコイド受容体拮抗薬エプレレノンの効果が検証された548).その結果,エプレレノンの上乗せはNT-proBNP 値の上昇を有意に抑制した.同様にALBATROSS 試験では,カンレノ酸カリウム(ソルダクトン)200 mg の単回静注に続き経口スピロノラクトン25 mg を投与することにより,STEMI 患者での死亡率が80% 抑制されることが示された549). 3.4 硝酸薬,ニコランジル 硝酸薬は内皮非依存性に冠動脈を拡張するだけでなく,心臓の前負荷,後負荷を減少させ,心筋の酸素需要を抑制することによって心筋虚血を改善させる.一方,硝酸薬とアデノシン三リン酸(ATP)感受性K 開口薬の複合薬であるニコランジルは,上記硝酸薬の効果に加え,抵抗血管における血管平滑筋の弛緩作用を併せもち,微小循環を改善する. しかし,発症24 時間以内のAMI 58,050 例を対象に硝酸薬の効果を検討した無作為化試験ISIS-4 では,経口徐放性一硝酸イソソルビドによる5 週後の死亡率改善効果はみられなかった237).ニコランジルの効果についてSTEMI患者を対象に検討した本邦の無作為化比較試験では,primary PCI 施行前にニコランジル12 mg を単回投与することにより,平均追跡期間2.4 年における心血管イベントの発生が有意に低下することが示された401).一方,本邦のJ-WIND-KATP 試験では,ニコランジル0.067 mg/kg を静注急速投与の後,24 時間0.1 mg/kg/ 時で投与しても, AMI の梗塞サイズ(∑CK)と予後の改善効果は認められなかった399).前記両試験を含むメタ解析の結果では,心筋梗塞の再灌流療法にあわせて投与されるニコランジルは,微小循環や左心機能改善に有用であることが示された405). 表45 入院中のRAAS 阻害薬投与の推奨とエビデンスレベル推奨クラスエビデンス レベル 左室機能低下(LVEF 40% 以下)や心不全を有するリスクの高い患者に対して,発症24 時間以内にACE 阻害薬を投与する237) I A左室機能低下や心不全を有する患者,とりわけACE 阻害薬不耐患者に対して,ACE 阻害薬の代替としてARB を投与する542, 543) I A左室機能低下(LVEF 40% 以下),心不全,糖尿病を有するACE 阻害薬およびβ遮断薬既投与患者で,腎不全や高カリウム血症がない場合,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を投与する544) I A禁忌のないすべての患者に対してACE阻害薬の投与を考慮する545, 546) IIa A表46 入院中の硝酸薬,ニコランジル投与の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 虚血症状が持続する患者に対してニトログリセリンを舌下投与するI C虚血症状,高血圧,心不全が持続する患者に対してニトログリセリンを静脈投与するI C Primary PCI を施行するSTEMI 患者に対してニコランジルの静脈投与を考慮してもよい405) IIb B勃起不全治療薬服用後24 時間以内の患者に対して硝酸薬を投与すべきではない552) III Harm B収縮期血圧90 mmHg 未満,または通常の血圧にくらべて 30 mmHg 以上の血圧低下,高度徐脈(<50/ 分), 頻脈(>100/ 分)を示す患者,右室梗塞を合併した急性下壁梗塞患者に対して,硝酸薬を投与すべきではないIII Harm C