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p.52 抽出テキスト

2.1 酸素吸入

最近の報告では,低酸素血症のない患者への酸素投与の有効性は否定されている230–233, 504).低酸素血症,心不全やショックの徴候がある場合には酸素を投与すべきであるが,ルーチンの酸素投与は推奨されない.

2.2 安静度

ACS のなかでも心筋バイオマーカーが著明に有意な上昇を示す患者では,心筋壊死により心筋が脆弱となっている可能性を考慮し,血圧をコントロールすることが重要である.過剰な心負荷を避けるためにも,発症早期は極力安静にすることが望ましい.安静の期間は,再灌流の有無,心筋バイオマーカーの最高値,心電図変化の推移などをみながら患者ごとに判断する.近年は,早期再灌流に成功し明らかな合併症を伴わない場合には,早期離床,早期リハビリテーションの介入が薦められている505).具体的には, CCU 収容当日はベッド上安静とし,第2 病日にはベッドサイドの立位で心電図やバイタルサインに変化のないことを確認する.血清CK 値が最高値に到達した2 日後には,トイレ歩行や洗面をスタッフの介助と監視を受けながら開始するなどである.

2.3 食事および血糖管理

PCI 直後は絶食とし,数時間後に介助での飲水を開始する.飲水が問題なくできれば食事もすみやかに開始する.熱いまたは冷たい飲み物の,心筋梗塞患者への悪影響はないといわれている515).

また,心筋梗塞急性期は重症例ほど耐糖能が低下する516).心筋梗塞の急性期,ストレス反応下の高血糖は糖尿病の有無にかかわらず予後不良因子であり506, 507),早期再灌流療法の時代になっても入院時高血糖は独立した予後不良因子である508).急性期の血糖値は心筋虚血や心機能低下,痛み刺激など急性ストレスにより上昇するため,高血糖は必ずしも糖尿病の既往を意味するわけではないが509),高血糖の持続や血糖値の変動は,酸化ストレス,内皮機能障害,凝固能亢進などのさまざまな有害な生理反応を惹起する. DIGAMI-1 研究517)では,心筋梗塞の急性期にインスリン治療によって血糖管理を行うことで死亡率が減少することが報告された.一方,NICE-SUGER 試験では,血糖達成目標値を81~108 mg/dL とする群と180 mg/dL 未満とする群の2 群に分け,死亡と低血糖を評価した結果,108 mg/dL を達成値とした群は180 mg/dL を達成値とした群

にくらべ死亡と低血糖の発生率が有意に高かった518).厳格な血糖管理は低血糖の発生を増やし,心血管事故の危険性を高めることが報告されている510, 511).したがって,急性期の血糖管理では低血糖を回避することは必須の条件である.とくに,早期再灌流療法は心筋虚血を解除し,症状も軽減させることから,ストレス反応による高血糖も改善させる可能性が高い.インスリンによる血糖低下作用と重なれば急速に血糖を低下させ,低血糖の引き金ともなりうる.したがって,高血糖例では血糖値を頻回に測定しながら90 mg/dL 以上を維持し,180 mg/dL 未満を目標に血糖管理を行うことが推奨される.インスリン持続静注を開始する場合は可能なかぎり糖尿病専門医と相談することが望ましい.

2.4 排尿,排便

導尿留置カテーテルは尿道損傷や感染のリスクを増加させる可能性があることから,時間尿の測定がどうしても必要な場合以外は挿入すべきではない501).CCU 内での排便は心拍数を増加させ502),再発作や心破裂のリスクを高めるため,酸化マグネシウムなどの薬物治療でスムーズな排便を促すことも検討する.

2.5 鎮静,睡眠,精神療法

CCU 管理では,厳しい監視,生体監視装置の機械音,なかば強制的な身体束縛,不眠,点滴ラインによる拘束, Foley カテーテルによる苦痛,不十分な病状の説明などが,不安や抑うつ状態をひき起こすことに留意すべきである503).睡眠導入薬による十分な睡眠,抗不安薬の投与,専門の精神科医やカウンセラーによる面接が有効である場合も少なくない519).さらに譫妄や認知症,薬物(リドカイン, β遮断薬,ジギタリスなど)による外因性精神症状にも十分に注意を払わなくてはならない.そのためには患者の入院前の生活状況を確認することが必要である.

2.6 家族面会と患者教育

患者の不安や抑うつを防止,治療するためには,患者およびその家族に対する早期の病状説明や生活指導が重要である520).とくに配偶者の病状の理解はその後の患者の回復に大きく影響するといわれているので521),病態,治療内容,予後だけでなく,発症要因(A 型行動パターン,遺伝的素因,食事などの生活習慣,ストレス要因など)につい