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p.48 抽出テキスト

3.2 血栓溶解療法

組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)による血栓溶解療法は,多施設共同研究であるUNASEM,TIMI IIIB 試験の結果,予後を改善せず,出血性合併症や心筋梗塞の発症が高率であることが明らかにされた435, 455). NSTE-ACS に対する初期治療として血栓溶解療法を施行する治療戦略は推奨されない.

3.3 PCI

NSTE-ACS に対するPCI は,心筋虚血を改善,心収縮力を保護,再梗塞またはSTEMI への進展を防止するための基本的な治療戦略である.NSTE-ACS に合併する致死性不整脈の防止策としても有効である.CAG による冠動脈病変の解剖学的所見,予測される余命,左室機能,他臓器の併存疾患,灌流域の心筋生存能など,個々の患者の臨床背景を把握したうえでPCI の適応について決定する. PCI の施行にあたっては書面による説明と同意の取得が必要である.また,PCI 施行施設は厚生労働大臣が定めた施設基準を満たす必要があり,熟練した術者が経験豊富な医療スタッフと協力して適切な環境で実施すべきである.

早期侵襲的治療としてのPCI の施行時期については一定の見解がない.大規模臨床試験であるFRISC II では,

早期侵襲的治療群におけるPCI は入院から平均4 日で, TACTICS-TIMI 18 試験では4 ~48 時間(平均25 時間)で施行されている192, 432).TIMACS 試験では,24 時間以内の施行を早期侵襲的治療,36 時間以後の施行を後期侵襲的治療と位置づけている434).

1990 年代初頭までは,ACS に対する緊急PCI の治療成績は待機的PCI にくらべて不良であったが458, 459),冠動脈ステント留置術により破綻したプラークを安定化させることが可能となり,ステント留置の導入によって緊急PCI の成績は著しく向上した.1996 年のTIMI IIIB 試験では病変成功率は97% であり,心筋梗塞の発生率が4.3%,緊急バイパス術の施行が1.4% であった437).現在では,安定労作性狭心症に対する待機的PCI とほぼ同等の治療成績と考えられている437, 444, 460, 461).

近年の多くの研究では,PCI の施行時期が入院後6 時間以内から1 週間以内まで広く設定されているが,早期侵襲的治療群で死亡や心筋梗塞の発生率が低いという報告が多い434, 451).とくに,リスクスコアで評価した高リスクから中等度リスク例で利点が顕著とされている462).6 時間以内にCAG を行った超積極的介入試験(ISAR-COOL)や48時間以内にCAG を行った超高齢者群でも同様の治療成績であった447, 463).また,短期予後に差がなくても,4 ~ 5 年後の時点で死亡や心筋梗塞の発症に有意差が示された報告もある464).

PCI のアクセスルートについては,一貫して経橈骨動脈アプローチの有効性が報告されており,経橈骨動脈アプローチを第一選択とすることが推奨される288, 289).ACS 患者8,404 例を対象に経橈骨動脈アプローチと経大腿動脈アプローチを無作為に比較したMATRIX 試験では,経橈骨動脈アプローチ群においてアクセスルート関連の出血,血管合併症,輸血の必要性,さらに死亡率が有意に低かった288).

ACS に対する薬剤溶出性ステント(DES)の使用については,主にSTEMI の発症やステント血栓症のリスクが危惧されていた.しかし,多くの無作為化臨床試験やそのメタ解析では,一貫してDES のステント血栓症の発症リスクはベアメタルステント(BMS)とくらべて有意差がなく,再血行再建率を有意に減少させることが示された267, 465–470).NSTE-ACS だけを対象とした研究データは少ないが,Kandzari らはCRUSADE レジストリーにおいて,高リスクのNSTE-ACS では,DES 使用による死亡・心筋梗塞の発生リスクはBMS よりむしろ低いことを示した471).また,現在使用されている新世代のDES は,第一世代のDES よりもステント血栓症の発生率が低く,安

表38 NSTE-ACS における血栓溶解療法の推奨とエビデンスレベル推奨クラスエビデンス

レベル

冠血行再建を目的として血栓溶解療法を施行すべきではない435, 455) III Harm A

表39 NSTE-ACS におけるPCI に関する推奨とエビデンスレベル推奨クラスエビデンス

レベル

経橈骨動脈アプローチの経験が豊富な術者の場合,緊急または早期PCI では経大腿動脈アプローチよりも経橈骨動脈アプローチを選択する288, 289) I A緊急または早期PCI にDES を用いる456, 457) I A多枝病変の患者に対して緊急または早期PCI を行う場合に,責任病変のPCIだけでなく他枝に対するPCI を考慮してもよい450–453) IIb Bルーチンの血栓吸引療法は推奨されない281, 282) III No Benefit A