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p.43 抽出テキスト

第5章 非ST上昇型急性冠症候群の急性期評

価・治療

1 リスクの層別化

非ST 上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に対する治療の最大の目標は患者の短期的および長期的な予後改善であることから,有害事象発症リスクを推測することは治療戦略を考慮するうえで重要である.

自覚症状,病歴,身体所見,心電図検査,血液生化学検査から急性冠症候群(ACS)の疑いが高いか否かをまず判断する.その可能性により,非心臓性疾患,慢性安定狭心症,ACS の可能性あり,ACS 確実の4 つのカテゴリーに患者を分類できる.ACS,またはその疑いが強いと判断した場合,次いで短期的な生命予後(心臓死,非致死的な心事故の発生)に関するリスク層別化を行う.

病歴や身体所見からなるBraunwald の分類(詳細は「第3 章1.8.1 病歴および身体所見」参照)による短期リスク評価は,短期生命予後188, 189),冠動脈造影(CAG)における冠動脈病変重症度192, 193)との関連が示されており,これにより有害な臨床転帰の推定が可能である.後述するリスクスコアも含めてリスク評価を行うことは,初期ケアを行

う管理場所(冠動脈疾患集中治療室[CCU],一般病棟,外来),治療方針,とくに血行再建の必要性などの決定にも有益である.実際,リスク評価に基づいて治療戦略を決定することの臨床的有効性が証明されており427),初診時から少なくとも12 時間以内にこの判断が行われるべきである.

リスクが高いと判断された患者はCCU での管理が必要であり,中等度リスクの患者も高リスクに準じた管理が求められる428).低リスクの患者は外来管理も可能である.リスク評価は初診時の一点のみでなく,経時的な心電図,心筋バイオマーカーの評価によって行われるべきであり,再評価時にリスクが高くなっている場合には治療戦略の変更が考慮される142, 146).また,来院時には心筋虚血を示唆する所見がないACS 患者を見逃さないことが大切であり,受診時一時点のみの評価では高リスク患者を見逃す危険性もある.患者を一定時間救急室(ER)に留まらせる,または入院の閾値を低くして入院させ,症状, 心電図所見, 心筋バイオマーカーの経時的変化を観察することが重要である.

GRACE,TIMI,およびPURSUIT リスクスコアは,長期予後のリスク判定のために開発されたスコアであるが,初診時のリスク評価にも有益であることが報告されている76, 178–180).これらのリスクスコアの詳細については「第3章1.8.1 病歴および身体所見」を参照されたい.

出血性合併症の発生は入院期間の延長や生命予後に関連する場合もあり,出血はNSTE-ACS の予後予測因子として重要である.ACS 患者は安定冠動脈疾患にくらべ出血を併発しやすく,また,抗血栓薬の投与に伴って出血を有害事象として発症することが多い429).出血に関連する因子として,患者背景では女性,高齢,血清クレアチニン,白血球数,貧血,ST 上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST 上昇型心筋梗塞(NSTEMI)が,治療関連因子ではヘパリンの投与,本邦では使用できないが血小板糖蛋白IIb/IIIa 拮抗薬の投与が報告されている430).CRUSADE出血性リスクスコアでは、1入院時のヘマトクリット値, 2クレアチニンクリアランス,3心拍数,4女性,5心不全の徴候,6血管疾患の既往,7糖尿病,8収縮期血

第5章 非ST上昇型急性冠症候群の

急性期評価・治療

表34 NSTE-ACS でのリスク層別化に関する推奨とエビデンスレベル推奨クラスエビデンス

レベル

すべての患者において臨床像,心電図所見や心筋バイオマーカーに基づいたリスク評価を行う142, 146) I A短期リスクの層別化に基づいて初期の治療方針を決定する427) I B高リスク患者は救急治療室でリスク評価を行い,入院後はCCU 管理とする428) I B ACS の可能性が高い患者に対して心電図検査,心筋バイオマーカー測定を繰り返し行い,短期リスクを再評価する142, 146) I B TIMI リスクスコア,GRACE リスクスコアによる評価を治療戦略決定の一助として考慮する178–180) IIa B