p.38 抽出テキスト
について同等以上の効果があること311–314),出血性合併症のリスクも増加しないことが報告されている315, 316). 本邦では,STEMI 患者およびPCI 施行時における低分子ヘパリンの使用は未認可である. b. 抗トロンビン薬(アルガトロバン) 本邦で未分画ヘパリンの代わりに静脈内投与できる唯一の抗トロンビン薬はアルガトロバンである.米国では,血栓溶解療法時の併用薬として未分画ヘパリンと同等の有用性が認められ318),HIT を合併したACS 患者のPCI 施行時にも使用される317).本邦では,HIT における血栓症の発症抑制に適応とされていたが,2011 年にHIT 患者(発症リスクのある場合を含む)におけるPCI 施行時の抗凝固薬としても認可された. PCI 施行時は,0.1 mg/kg を3 ~5 分かけて静脈内投与し,術後4 時間まで6μg/kg/分を目安に静脈内持続投与する.投与開始から10 分程度でACT を測定し,術後4時間まではACT が250 ~450 秒となるように持続投与量を調節する319).患者の状態に応じて術後4 時間以降の抗凝固療法の継続の要否を判断し,必要な場合は0.7 μ/kg/分に減量後,適宜APTT を測定し,APTT が投与前値の 1.5 ~3 倍程度となるよう持続投与量を調節する(3 倍を 超えた場合は投与をいったん中止する).なお,持続投与量は目安であり,適切な凝固能のモニタリング下で出血リスクなどを考慮して適宜調整する.とくに,本剤は肝代謝されるため,肝機能障害患者では投与量を減じる必要がある(肝機能障害患者では,術後4 時間以降も持続投与が必要な場合は0.2 μg/kg/分に減量する). 1.8 残存病変に対する冠血行再建 1.8.1 冠血行再建の適応と施行時期 STEMI において多枝病変は約50% 程度といわれている320, 321).多枝病変例の予後は不良とされており,残存冠動脈病変への冠血行再建を考慮することは重要である322, 323).しかし,STEMI 患者における残存冠動脈病変に対し,血行再建の適切な時期や,血行再建の適応を決める負荷試験の適切な時期に関する明確なエビデンスは存在しない. 1.8.2 残存病変に対するPCI 残存冠動脈病変に対するPCI についての過去の研究には,非無作為化のものやPCI 施行時期がさまざまなものが含まれていた.そのためか,primary PCI を責任冠動脈病変のみに施行し,後日残存冠動脈病変にstaged PCI を施行することが,有害事象を減少させると考えられる傾向にあったにもかかわらず,各研究の結果は必ずしもこの見解に一致するものではなかった262–264, 331–334). これらの論点を解決する無作為化試験は少ない.多枝病変のSTEMI 患者214 例を3 つの群(1梗塞責任冠動脈病変のみへ血行再建を行う群,2梗塞責任冠動脈病変と同時に残存冠動脈病変へ血行再建を行う群,3残存冠動脈病変へstaged PCI で血行再建を行う群)に割り付けた無作為化試験では,2.5 年の平均観察期間中,梗塞責任冠動脈病変のみの血行再建群で有意に主要心血管イベント発生率が高かった320).この試験の後に,梗塞責任病変のみのPCI と完全血行再建を比較した5 つの研究が報告された.Primary PCI 施行時に残存冠動脈病変にも同時にPCIを施行したPRAMI 試験(n=465,観察期間23 ヵ月) 321), Compare-Acute 試験(n=885,観察期間12 ヵ月) 323), TRANSLATE-ACS Observational 研究(n =6,601,観察期間12 ヵ月) 335),入院期間中にstaged PCI を施行した DANAMI-3-PRIMULTI 試験(n=627,観察期間27 ヵ月) 324),入院中にimmediate PCI かstaged PCI を施行したCvLPRIT 試験(n=296,観察期間12 ヵ月) 325)である.残存冠動脈病変に対し,PRAMI 試験ではCAG で50% 以上の狭窄,CvLPRIT 試験では70% 以上の狭窄,他の2 試験では血流予備量比(FFR)でPCI 適応の有無を判断している.それぞれの試験で複合エンドポイントは異なるが,主要イベントは完全血行再建群で有意に減少していた.また,全死亡はすべての試験において有意差が認められなかったが,PRAMI 試験,DANAMI-3-PRIMULTI 試験, Compare-Acute 試験では,完全血行再建群で再血行再建率が減少した.TRANSLATE-ACS Observational 研究では,完全血行再建群で6 週間での再入院率が減少したが, 表27 Primary PCI 時の抗トロンビン薬(アルガトロバ ン)投与の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル HIT の患者に対してアルガトロバンを使用する317) I B表28 残存病変に対するPCI の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 多枝病変で虚血症状が残存している患者に対して,非梗塞責任血管へのPCIを同一入院中に行う323, 324) I B多枝病変の患者に対して,非梗塞責任血管へのPCI を同一入院中にstaged手技として考慮する320, 324–330) IIa A