p.37 抽出テキスト
シロスタゾール(ホスホジエステラーゼ[PDE]III 阻害抗血小板薬)は,primary PCI を受けた患者を対象としたチクロピジンとの比較試験で同等の有用性が示されているが300),ステント留置後の検討では,チクロピジンにくらべステント血栓症の発症率が高かった304).また,心拍数上昇作用があることから,心不全患者には慎重に投与する必要がある. b. その他の抗血小板薬 本邦では使用できない抗血小板薬に,血小板膜糖蛋白IIb/IIIa 阻害薬がある.同薬は強力な血小板凝集阻害薬で,フィブリノーゲンの結合を阻止して血小板凝集を阻害する.不安定狭心症(UA)患者におけるアスピリン,ヘパリン投与下での血小板膜糖蛋白IIb/IIIa 阻害薬の有効性を検討した大規模臨床試験では,狭心症の短期的安定化と血行再建の初期成績改善に有効であることが示されたが,本邦では臨床試験で有効性を示すことができず,使用は認可されていない305). c. 2 剤併用抗血小板療法継続期間 第1 世代のDES は,BMS よりも留置後1 年以降のステント血栓症発症率が高いことが問題となり,より長期間の2 剤併用抗血小板療法(DAPT)が必要であるとされた. 2009 年以降は,第2 世代,第3 世代DES の開発が進み,ステント血栓症発症率も低下してDAPT 期間はこれまでよりも短縮される傾向にある.ステント血栓症の予防のためにDAPT を継続すべき期間について明確な結論はない. DAPT を継続することは出血性合併症を増加させる危険性があり,血栓症予防と出血性合併症が二律背反する見地から検討すべき問題である. 抗凝固薬を服用している心房細動患者がACS を発症した場合,継続して抗凝固薬を服用する必要がある.ワルファリンなどの抗凝固薬の長期服用が必要な患者にPCI を行う場合,抗血小板療法の強化による出血リスクの上昇が懸念される.この問題に関してWOEST 試験309)では,抗凝固薬にアスピリンとクロピドグレルの2 剤を加えるより,クロピドグレルのみを追加したほうが,出血リスクが低く,全死亡または心血管イベントのリスクも低いことが示された.一方,ステント血栓症リスクには差はみられなかった.抗凝固薬を服用中の患者にPCI を行う場合の至適な抗血栓療法のプロトコールは確立されていないが,ワルファリン+アスピリン+クロピドグレルの3 つの抗血栓薬を併用する期間はなるべく短くすることが望ましい.詳細に関しては「第6 章3.1 抗血栓薬」の項を参照していただきたい. 1.7.2 抗凝固療法 a. 未分画へパリン へパリンは再灌流療法が施行される以前から,ACS 患者の治療に有用との知見が確立されている.さらに急性期にPCI を行うことが通常となった現在では,PCI 施行時の使用が一般的である.Primary PCI での未分画ヘパリンの投与量について,本邦で検討された報告はないが,2013年のACC/AHA ガイドラインでは70 ~100 単位/kg を急速静注し,活性凝固時間(ACT)を250 秒以上に維持することとされている70).ACS 患者を対象とした小規模の試験では,ヘパリン単独投与での有効性は認められておらず,アスピリンとヘパリンの併用が推奨される308). ヘパリンによる抗凝固効果には個人差が大きいため,ACT や活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)をモニターすることが望ましい.また,本薬の突然の中止はトロンビンを活性化して易血栓性となる可能性があるため309, 310),中止する場合は漸減する方法が推奨される. また,約3% にヘパリン起因性血小板減少症(HIT)が発症するとされ308),血小板数が10 万以下になった場合は注意を要する.HIT は非免疫機序で発生するI 型と,ヘパリン依存性の自己抗体が出現するII 型に分類される.I 型はヘパリン自体の物理生物学的特性による一過性の血小板減少(10 ~20% の減少)で,ヘパリン投与2 ~3 日後に発症し,ヘパリンを継続したままでも自然に回復する.一方,II 型は主として抗PF4・ヘパリン複合体抗体(HIT 抗体)の産生により,ヘパリン投与5 ~14 日後に発症する.血小板数が投与開始時の50% 以下に減少し,重篤な動静脈血栓症の合併を起こすことがあるため,すみやかなヘパリン中止とアルガトロバンによる代替抗凝固療法が必要となる.低分子ヘパリンは未分画ヘパリンと比較して, STEMI 患者での再灌流率の上昇,再梗塞や死亡率の低下 表26 Primary PCI 時の未分画ヘパリン投与の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル Primary PCI 施行時にアスピリンと併用しながらへパリン70~100 単位/kgを急速静注投与し,ACT を250 秒以上に維持する70, 307) I C HIT の発症を予測,診断するために,血小板数を測定するI C tPA,プロウロキナーゼ,遺伝子組換えtPA など血栓親和性のある血栓溶解薬を使用した場合,APTT モニタリング下でのヘパリン併用を考慮するIIa C