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p.35 抽出テキスト

1.4 心停止自己心拍再開後

本邦では毎年約10 万人が院外で突然死するとされ,その最大の原因が急性冠症候群(ACS)である.ACS に起因する心停止への対策および対応は救急医療において重要である.

心停止自己心拍再開後に12 誘導心電図でST 上昇を示した患者に対するprimary PCI の施行は,生命予後および神経学的転帰の改善の観点から推奨される275–279).一方, ST 上昇を示さない患者では,非心原性の原因が否定され,進行する心筋虚血の存在が強く疑われる場合には,神経学的予後なども考慮したうえで緊急冠動脈造影(CAG)を考慮する(適応があればPCI を行う)

275–278, 280).ただし,心

停止自己心拍再開後の心電図では心筋虚血を正確に診断できない場合が少なくなく,ST 上昇が認められないからといって冠動脈の急性閉塞を必ずしも否定することはできない.心停止自己心拍再開後の患者では,臨床所見を総合的にみて,冠血行再建を念頭に置いた緊急CAG の適用を適切に判断することが求められる.

1.5 血栓吸引療法Primary PCI 時に血栓吸引療法を先行させることは,末

梢へ飛散するプラーク破片や血栓の量を減らし,no reflow現象の軽減や心機能の改善に寄与する可能性がある.複数の臨床試験により,血栓吸引療法はより良好な再灌流と予後改善につながることが示唆されてきた284).これらの結果から,2013 年の米国心臓病学会(ACC)/ 米国心臓協会(AHA)ガイドライン70)および2013 年の日本循環器学会ガイドライン233)ともに,血栓吸引療法はクラスIIa とされていた.

しかし,TOTAL 試験281)やTASTE 試験282),これらの試験を含む17 試験のメタ解析283)では,死亡,再梗塞,ステント血栓症,再血行再建などの転帰について,血栓吸引療法の有効性は示されなかった.血栓量が多い群の比較でも同様の結果であった.むしろ脳卒中のリスクに関しては,有意差はなかったがわずかに血栓吸引療法で多い傾向にあった283).これらの結果を受け,2015 年のACC/ AHA/SCAI ガイドライン285)では,予定されたルーチンの血栓吸引療法はクラスIII,選択的または救済(ベイルアウト)目的の血栓吸引療法はクラス IIb に変更された.

また,梗塞領域や予後の改善に対する末梢保護デバイスの効果も明らかではないことが,無作為化臨床試験の結果で報告されている286).ただし,血管内エコー法(IVUS)で長軸方向に5 mm 以上の超音波減衰(attenuated)プラークが認められた患者へのPCI において,フィルターデバイスと血栓吸引カテーテルを用いた遠位部塞栓保護は,血行再建後のno-reflow の発現率を低下させることを示した日本人のデータもある287).

1.6 アクセスルート

近年,経験豊富な経橈骨動脈アプローチ術者により, ACS に対する経橈骨動脈アプローチの良好な結果がいくつかの試験により報告されてきた.

MATRIX 試験288)やACS 患者を対象にしたRIVAL 試験289),STEMI 患者を対象としたRIFLE-STEACS 試験290)などにおいて,出血や血管合併症,輸血の必要性,さらには死亡に関して経橈骨動脈アプローチによるリスク

表21 心停止自己心拍再開後の患者に対するprimary PCI

の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

心停止自己心拍再開後に12 誘導心電図でST 上昇または新規発症の左脚ブロックを示した患者に対し,緊急CAG を施行する(適応があればPCI を施行する) 275–279) I B心停止自己心拍再開後に12 誘導心電図でST 上昇を示さない患者で,心筋虚血が強く疑われる場合,緊急CAG を考慮する(適応があればPCI を施行する) 275–278, 280) IIa C

表22 Primary PCI 時の血栓吸引療法の推奨とエビデン

スレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

Primary PCI において選択的または救済(ベイルアウト)目的で血栓吸引療法を考慮してもよい281–283) IIb C Primary PCI においてルーチンに血栓吸引療法を先行することは推奨されない281–283) III No benefit A表23 Primary PCI 時のアクセスルートに関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

経橈骨動脈アプローチに経験豊富な術者の場合,経大腿動脈アプローチよりも経橈骨動脈アプローチを選択する288–

291) I A