GL検索 v0.1.0
画像は 34 ページを描画したものです
page 34

p.34 抽出テキスト

症例で長期臨床成績に有意差はみられなかった.一方,総虚血時間が3 時間以内の早期に再灌流できた症例では良好な成績が得られたのに対し,総虚血時間が長くなるにつれて治療成績が悪化していた.ただし,発症2 時間以内の早期来院例では,door to balloon time 90 分以内を達成した場合の長期臨床成績は有意に良好であった.この結果は, door to balloon time の短縮だけでなく総虚血時間を短縮することの重要性を示している.Door to device time 90 分以内は,最低限の許容時間であり目標時間ではない.再灌流までの総虚血時間をできるだけ短くすることが予後改善のために最も有効な方策であることを考えれば,STEMIの診断から病変部位のワイヤー通過までの時間は60 分以内を目標とすべきである.

一方,発症から12 時間以上が経過し,血行動態および電気生理的に安定していて症状が消失している患者に対し,primary PCI を行うことの効果は限定的である260, 265).

STEMI に対するprimary PCI におけるベアメタルステント(BMS)の使用に関しては,バルーン拡張のみの血管形成術とくらべ死亡率は改善されないものの,再血行再建率が改善されることが示されている254, 255).近年はSTEMIに対して薬剤溶出性ステント(DES)が使用されることが多いが,STEMI 患者においてもBMS と比較して死亡,心筋梗塞の発生率は変わらず,再血行再建率を改善することが多くの臨床試験から報告されている267, 268).したがって,再狭窄率が高いと考えられる患者背景や病変背景がある場合にはDES の使用がより考慮される.ただしその使用に際しては,2 剤の抗血小板薬内服による出血のリスクや,近日中の手術など侵襲的手技の必要性の有無を考慮する必要がある.

ステント留置のタイミングに関しては,初回血管形成術により梗塞責任冠動脈の血流が安定した後,遅延(deferredまたはdelayed)ステント留置とよばれる治療戦略により冠動脈の血流を保持,血栓塞栓症のリスクを低減することで,臨床転帰が改善される可能性が示唆されてきた. DANAMI 3-DEFER 試験269)では,ステント留置を延期する治療戦略が,STEMI 患者における心筋血流の回復と臨床転帰の改善につながるかが検討された.全死亡,心不全による入院,非致死性心筋梗塞の再発には差はみられなかったが,予定外の標的血管の血行再建術はdeferred ステント留置群のほうが有意に多かった.STEMI 患者に対してルーチンにステント留置を延期するという治療戦略には,有益性がないと考えられる. 1.2 緊急心臓外科手術体制が 整っていない場合

心臓血管外科が併設されていない施設におけるprimary PCI は,緊急性が要求されるSTEMI の治療において熟練した術者が施術する場合には容認される.その場合にも,心臓外科手術室との連携体制を整えておく必要がある.

1.3 心原性ショック

SHOCK trial では,STEMI 発症後36 時間以内に心原性ショックとなりショック後18 時間以内に緊急血行再建術をした例で,6 ヵ月後の死亡率は有意に低下し,とくに75歳未満の患者では有効であった199).また,75 歳以上でも患者の機能状態が良好であれば,血行再建術により生存率は高まることが報告されており271–273),心原性ショックを伴う患者に対するPCI は高いレベルで推奨されている.心原性ショック患者であればこそ一刻も早い血行再建が必要である一方,本邦のデータとして,高齢かつ心停止したショック患者に対するprimary PCI は予後を改善させないことも報告されている274).

表19 緊急心臓外科手術体制が整っていない場合のprimary PCI の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

適切な血行動態補助を行いながら近隣病院の心臓外科手術室に迅速に転送できる場合に限り,primary PCI を考慮する(ただし,遅延なく迅速にPCI を施行できる場合に限る)270) IIa B

表20 心原性ショック患者に対するprimary PCI の推奨

とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

75 歳未満の心原性ショックの患者に対してprimary PCI を行う199) I A 75 歳以上の心原性ショックの患者に対してprimary PCI を考慮する271–273) IIa B