p.29 抽出テキスト
7 つの各項目にポイントで重みをつけ,合計ポイント数が大きいほど予後が不良とされている203). 1.8.2 心電図 心電図は,ACS の診断だけでなく重症度評価や予後予測にも重要な情報を提供する. STEMI における急性期心電図の異常Q 波の出現は心筋傷害が高度であることを示し,血栓溶解療法時代もPCI 時代も予後不良と関連することが報告されている204, 205). QRS スコア206)は,異常Q 波の有無よりも心筋傷害の程度をより定量的に評価できる心電図指標である.CREDO- Kyoto AMI レジストリーでは,発症24 時間以内にprimary PCI を施行したSTEMI 患者2,607 例で,入院時心電図のQRS スコアが高いほど5 年死亡率が高くなることが報告されている121).またSTEMI で虚血範囲の広い例は高リスクであり,再灌流時間のさらなる短縮が望まれる100).LAD の近位部閉塞の指標としては,下壁誘導のST 下降が最も有用とされ,他に新規の完全右脚ブロックの合併やaVR 誘導のST 上昇が報告されている.ただし,いずれの指標も特異度は高いが感度が低いことに注意が必要である118, 119).RCA の近位部閉塞では右室梗塞を合併することがあり,右室梗塞合併患者の予後は不良である.右室梗塞の診断には右側胸部誘導(V4R 誘導)の1.0 mm以上のST 上昇が有用とされているが,この所見は発症早期に消失しやすいことに注意する107).また,脚ブロック合併患者におけるSTEMI の診断は二次性ST-T 変化のため容易でないが,右脚ブロックや左脚ブロック合併患者(とくに後者)の予後は不良であり100),再灌流療法の適応を迅速に判断することが重要である. NSTE-ACS で,入院時心電図のST 下降(0.5 mm 以上)は高リスクの所見であり,予後不良の強力な予測因子である127).ST 下降の程度が高度な例,広範にST 下降を示す例,ST 下降が遷延する例の重症度は高く,予後はより不良である127).さらに広範なST 下降にaVR 誘導のST 上昇を伴う例は,左主幹部や多枝病変による重症虚血が疑われる127).一般に,ST 下降を示す例にくらべて陰性T 波を示す例の予後は良好であるが134),陰性T 波が広範囲に及ぶ(6 誘導以上で)例の予後は不良であるとされている128).また,前胸部誘導の陰性T 波はLAD 病変を示唆する135). QRS 幅はST 変化よりも鋭敏な心筋虚血の指標とされており,STEMI,NSTE-ACS ともにQRS 幅の増大は重症虚血を示唆する127). 1.8.3 血液生化学検査 胸痛のために救急部門を受診した患者で,心電図でST上昇を示さずCK-MB 値が正常でも,心筋トロポニンI の上昇が認められれば,その上昇の程度に応じて早期死亡率は1.0% から7.5% まで直線的に増加する176, 215, 216).また,胸痛,心電図上のST-T 変化,血清CK-MB の上昇を示す患者でも,心筋トロポニンT の上昇は30 日予後の最も有用な予測因子であることが報告されている217).高感度心筋トロポニンの測定はSTEMI だけでなくNSTEMI の早期診断にも有用であり,高値であるほど死亡率が高いことが報告されている144).血中CRP 値は急性炎症を反映するマーカーであり,UA では,CRP 0.3 mg/dL 以上の例は 0.3 mg/dL 未満の例にくらべ早期心事故が3 倍高率に生じ ることが報告されている.CRP は冠動脈硬化におけるプラーク不安定化のマーカーとして着目されており218),UAで急性炎症反応の指標が上昇している場合は,無症状であっても不安定性が持続している,または再発しやすいことを示す可能性があるとされてきた219).CANTOS 試験では,高感度CRP が2 mg / L 以上の心筋梗塞既往例を対象に抗炎症作用を有するIL-1β阻害薬の効果を検討した結果,CRP の低下とともに4 年の観察期間中の心筋梗塞・脳卒中・心血管死亡率が低下したことが示され,改めてバイオマーカーとして注目を集めた220).さらに,2014 年のAHA/ACC のNSTE-ACS ガイドラインでは,新たなバイオマーカーとして脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が,予後を規定する情報として有用である可能性が記載された(クラスIIb,レベルB) 221). その他,高血糖は非糖尿病患者でも死亡と心不全の強力な予測因子であり222),腎機能障害も短期および長期予後に影響を与える因子である223).血清クレアチニン自体は,年齢や性別の影響を受け腎機能の指標として限界があるた 表13 血液生化学検査によるリスク評価の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 心筋トロポニン *値の上昇とその程度は,短期および長期予後予測に有用である147, 163, 207, 208) I B梗塞サイズの推定に,発症後72~96時間の心筋トロポニン値を用いることを考慮してもよい156, 208) IIb B ACS 疑いの患者のリスク評価として, BNP またはNT-proBNP の測定を考慮してもよい209–214) IIb B *トロポニンT,I