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p.24 抽出テキスト

筋筋原線維の構造蛋白である心筋トロポニンT,I,ミオシン軽鎖が流出する.心筋トロポニンT は一部(約6%)が細胞質に可溶性分画として存在する.STEMI では虚血早期の細胞質からの遊出(発症12 ~18 時間後の第1 ピーク)と筋原線維壊死(発症90 ~120 時間後の第2 ピーク)による2 峰性の遊出動態を示し,1 峰性の遊出動態を示す心筋トロポニンI とは異なる158).CK は従来から最も一般的な心筋壊死のマーカーであり159, 160),広く心筋梗塞の診断,予後予測に用いられてきた160).CK-MB はその心筋特異性から,総CK との比を考慮すれば心筋傷害評価の意義は高いとされる.ショック,直流通電などにより骨格筋損傷があると総CK 値,CK-MB ともに上昇するが,骨格筋損傷ではCK-MB の割合は5% を超えない点で鑑別可能である.STEMI では発症後3 ~8 時間で上昇し,10 ~24 時間で最大となり,3 ~6 日後に正常化する.血中CK の最高値は心筋壊死量を反映するが,早期再灌流療法施行例ではピーク到達時間が早くなり最高値も高くなる.

CK,CK-MB,ミオグロビンやその他のバイオマーカーは心筋トロポニンとくらべて診断感度が低く,陽性化にはより強い組織障害を要する.一方,心筋トロポニンは心筋特異度が高く,健常人で上昇することはない.心筋トロポニンの上昇は健常人の99 パーセンタイル値を超える場合と定義され,CK が上昇しない程度の微小心筋傷害も確実に検出できる.バイオマーカーを用いたACS の評価では,測定が簡便で,かつ迅速に(できれば30 分以内に)結果が得られることが重要である.市販されているキットではベッドサイドで採血後10 ~12 分後に測定結果を得ることができることから(point of care system),心筋トロポニンT の迅速定性および定量測定法は有用である.さらに高感度心筋トロポニン測定系は従来のトロポニン系にくらべて測定精度が高く,発症後2 時間以内の超急性期の診断にも有用であることが示されている161–163).搬入時の数値が高値であるほど高い死亡リスクと関連する164–167).ACS を疑う患者における心筋トロポニン測定について図3 に示す.ただし,心筋トロポニンは心不全,腎不全,心筋炎,急性肺血栓塞栓症,敗血症など虚血以外の原因による心筋傷害でも上昇するため,注意を要する168).また,心筋トロポニン陰性でも,冠攣縮によるACS は否定し得ない. 1.7 画像診断

1.7.1 胸部X 線

ACS の診断における胸部X 線検査は,鑑別診断と重症度評価のうえで重要である.心陰影の拡大,肺うっ血,肺水腫,胸水の有無を評価する.心陰影拡大は,心筋梗塞既往,急性左心不全,心膜液貯留,大動脈弁または僧帽弁逆流に伴う左室容量負荷が存在することを示す.胸部X 線写真だけで胸痛の鑑別が可能となる疾患は限られているが,肋骨疾患,気道疾患,肺・胸膜疾患,縦隔疾患,心臓および心膜疾患,肺・体血管疾患の形態的診断には有用である.緊急に診断治療が必要となる鑑別疾患としては,急性大動脈解離と急性肺血栓塞栓症がある.上行大動脈解離では冠動脈を巻き込んでAMI を合併することもあり,診断に苦慮する場合も多い.胸部X 線検査で上縦隔陰影の拡大,二重陰影,大動脈壁内膜石灰化の偏位を示す場合には前者を疑い,超音波検査,造影CT 検査を施行して鑑別する必要がある.また,肺動脈の途絶,遮断,区域性乏血が認められた場合は後者を疑い,超音波検査,造影CT 検査などを行う必要がある.呼吸困難や低酸素血症を認めるにもかかわらず,胸部X 線検査で異常所見がない場合にも急性肺血栓塞栓症を疑う.胸部X 線写真を評価する際には,つねに撮影体位や撮影条件について確認する必要がある.救急患者や重症例ではポータブル撮影,とくに臥位で撮影されることが多く,十分な吸気止めができないこともある.このような条件下では,胸部X 線所見は過小または過大評価される可能性があることを念頭に置く.

表7 ACS の診断における胸部X 線検査の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

心臓疾患(うっ血性心不全,心臓弁膜症,虚血性心疾患)および心膜疾患,または大動脈疾患(急性大動脈解離)の徴候・症状のある患者に対して胸部X 線検査を行うI C肺・胸膜疾患および縦隔疾患の徴候・症状のある患者に対して胸部X 線検査を考慮するIIa Cすべての胸痛患者に対して胸部X 線検査を考慮してもよいIIb C