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p.23 抽出テキスト

側性変化によるもので実際にはSTEMI のことがあるため,注意が必要である.診断を誤らないためには,ST 下降を認める誘導の対側の誘導でST 上昇がないかを確認する.また純後壁梗塞では梗塞部位が左室後壁に限局するため, 12 誘導心電図ではST 上昇を示さず,左室後壁のST 上昇の対側性変化として前胸部誘導でST 下降のみを伴うことがある.この場合,NSTE-ACS との鑑別が問題になるが, ST 下降を認める誘導として後壁梗塞の場合はV1-3 誘導が中心であるのに対し133),心内膜下虚血発作時はV4-6誘導が中心であり,ST 下降パターンが両者の判別に役立つ.しかし後壁梗塞の診断確定には,背側部誘導を記録することが望ましい. b.  陰性T 波

陰性T 波はST 下降と並ぶ代表的な心電図所見である.一般に,陰性T 波を示す例の予後はST 下降を示す例にくらべ良好とされているが134),陰性T 波が6 誘導以上で広範に認められる例は予後不良であることが報告されている128).貫壁性虚血発作ではST が上昇した誘導で陰性T 波が出現するので,陰性T 波を示す誘導から虚血責任血管や虚血部位を診断できる.ACS 患者における前胸部誘導の陰性T 波はLAD 病変を示唆するが135),鑑別すべき循環器救急疾患として急性肺血栓塞栓症,たこつぼ症候群があげられる127, 136). c.  陰性U 波

陰性U 波は虚血発作時や運動負荷試験時にしばしば出現し,高度心筋虚血を示唆する特異度の高い心電図指標であり,その診断的意義は高い.陰性U 波は虚血部位に面した誘導で出現するとされ,V3-5 誘導を中心に出現する陰性U 波はLAD 病変を示唆する137).T 波に続く浅い小さな波であるため,虚血発作時には陰性U 波の出現を念頭に置き診断することが重要である.一方,陰性U 波は,血圧上昇時や大動脈弁閉鎖不全症などの病態でも認められるため,他の臨床所見などとあわせて総合的に心筋虚血を診断する.また,後壁虚血による陰性U 波は,12 誘導心電図には対側性変化として,V2-3 誘導を中心とした陽性U波の増高として反映される. d.  QRS 波

心筋虚血によってプルキンエ線維,プルキンエ・筋接合部,心室筋線維の刺激伝導速度は遅くなり,12 誘導心電図には QRS 幅の延長として反映される.QRS 幅の延長は, ST 変化よりも鋭敏な心筋虚血の指標とされており,左主幹部や多枝病変などの重症冠動脈病変の診断に有用であることが報告されている127, 138).

異常Q 波の存在は,心筋梗塞の診断に役立つ15).しかし,III 誘導の孤立性Q 波やV1 誘導のQS パターンは健常人でもみられるため15),病歴や臨床所見,他の検査結果

などとあわせて診断する必要がある. e. 鑑別診断

ST-T 変化は,冠攣縮性狭心症,急性大動脈解離,急性肺血栓塞栓症,たこつぼ症候群,劇症型心筋炎,急性心膜炎でも認められる15, 114-116, 127, 136, 139, 140).また,心電図のST-T 部分は,心肥大,心室内伝導障害,心筋疾患,電解質異常,ジギタリスなどの薬剤使用,自律神経緊張などさまざまな病態でも変化する.これらの変化と心筋虚血との鑑別はしばしば困難であり,病歴や臨床所見,他の検査結果などとあわせて総合的に診断する必要がある.

1.6 バイオマーカー

AMI の臨床診断で,心筋壊死を示すバイオマーカーの一過性上昇を認めることは必須であり,これに加え,虚血の存在を示唆する遷延性の胸痛や心電図所見のいずれかの存在が必要となる.しかし,発症早期には心筋バイオマーカーの上昇を捉えられないことも多い.心電図や症状からSTEMI と診断される患者では,一刻も早い再灌流療法の開始を優先し,診断確定のために心筋バイオマーカーの結果を待つことでその施行を遅らせてはならない(図3) 157).

従来からAMI ではクレアチンキナーゼ(CK),クレアチンキナーゼMB 分画(CK-MB),ミオグロビン,AST (GOT),LDH などの心筋逸脱酵素や心筋構造蛋白が血中に流出することが知られ,診断と重症度判定に広く用いられてきた.虚血から心筋壊死に至る過程では,まず心筋細胞膜が障害され,細胞質可溶性分画マーカー(CK,CK- MB,ミオグロビン,H-FABP)が循環血中に遊出する.さらに虚血が高度で長時間に及ぶと筋原線維が分解され,心

表6 ACS の診断におけるバイオマーカーの推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ACS が疑われる胸部症状を示す患者の早期リスクの層別化に,心筋トロポニン

*を測定する141–148) I Cすみやかに血液生化学検査を施行する148) I C発症時間が不明な患者では,来院時を発症時間として心筋トロポニン値を評価する143, 144, 149) I A心筋トロポニンが測定できる条件下では,ACS の診断にCK-MB やミオグロビンは推奨されない150–156) III No benefit A *トロポニンT,I