GL検索 v0.1.0
画像は 21 ページを描画したものです
page 21

p.21 抽出テキスト

1.4.3 その他

その他に心筋虚血を誘発する病態として,1酸素需要を増加させる疾患,2酸素供給を減少させる疾患などもあげられる.冠動脈疾患がなくてもこれらの病態に陥ると,狭心症と同様の症状が出現するため注意が必要である.また,安定狭心症がこれらの病態を合併することで不安定化する場合もある.

酸素需要を増加させる疾患として,高体温,甲状腺機能亢進症,管理不良の高血圧症,持続性頻脈性不整脈,酸素供給を減少させる疾患として,貧血,肺疾患,血液粘度の増加があげられる.

1.5 心電図

1.5.1 心電図検査の意義

ACS では発症早期の迅速かつ的確な診断が求められる.診断技術が進歩した現在でも,心電図は非侵襲的に簡便かつ迅速に行うことができる基本的な診断検査法である.また心電図は,その診断のみならず重症度評価や治療方針の決定において中心的な役割を担い,予後予測にも重要な情報を提供する.

胸部症状や他の症状からACS が疑われる患者では,ただちに(10 分以内に)12 誘導心電図を記録する101, 110). ACS の分類および治療方針の決定は心電図所見に基づいて行われる.ST 上昇の有無によりSTEMI とNSTE-ACS

に分類し,前者ではただちに再灌流療法の適用を,後者ではリスク評価に基づいた治療戦略を検討する.

初回心電図に異常が認められないという理由でACS を除外することはできない111).心電図は,記録時の胸部症状の有無や症状の推移も考慮して診断する必要がある.非発作時には心電図が正常な場合も少なくなく,また発症後早期にはまだ心電図変化が明らかでないこともある.このような場合でも,以前の記録や時間をあけて記録した心電図とくらべると変化が明らかになる例は少なくない102, 112). 1 回の記録だけで判断せず,比較することで診断精度は向上する110).

1.5.2 ST 上昇の診断基準

ST 上昇は,虚血責任冠動脈の完全閉塞による貫壁性虚血を示唆し15),再灌流療法の適用を決定する重要な所見である.ST 上昇は貫璧性虚血部位に面した誘導でみられるが,ST レベルの上昇は健常人でも正常心電図所見(早期再分極)として認められることがある.正常のST レベルは,年齢,性別,誘導によって異なり,一般的にV2-3誘導が最も高く,男性が女性よりも高い113).心筋梗塞のuniversal definition(普遍的な定義)

15)では,急性心筋虚

血の心電図所見として,ST 上昇を隣接する2 つ以上の誘導*で次のように定義している:V2-3 誘導では,40 歳以上の男性の場合は2.0 mm 以上のST 上昇,40 歳未満の男性の場合は2.5 mm 以上のST 上昇,女性の場合は年齢を問わず1.5 mm 以上のST 上昇,V2-3 誘導以外では1.0 mm 以上のST 上昇(この定義は左室肥大や左脚ブロックのない場合に適用され,ST レベルはJ 点で計測,10 mmは1.0 mV として記録).ただし,ST 上昇はSTEMI 以外の疾患や病態でも認められるため,診断は病歴や臨床所見,他の検査結果などとあわせて総合的に行う必要がある114–116). * 解剖学的に隣接する2 つ以上の誘導を意味する.前胸部誘導(V1-6 誘導)と異なり,肢誘導の配列順序(I,II,III,aVR, aVL,aVF 誘導)は心臓の解剖学的部位と関連がなく理解しにくい.Cabrera 配列は,肢誘導を対応する心臓の解剖学的部位に従い,左から右に向かって,左室上位側壁に面するaVL 誘導,下位側壁に面するI 誘導,心尖部寄りの左室下側壁に面する-aVR 誘導(aVR の波形を上下逆転させた波形),左下壁に面するII 誘導,aVF 誘導,右下壁に面するIII 誘導と並べ替えた配列である.Cabrera 配列で考えると,左室側壁に面するのがI,aVL 誘導,左室下壁に面するのがII,III, aVF 誘導であることが理解しやすい

15, 117).

表5 ACS の診断における心電図の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ACS が疑われる患者ではただちに(10分以内に)12 誘導心電図を記録する101) I C持続する症状からAMI が強く疑われる患者で,初回心電図では診断できない場合に,5~10 分ごとに12 誘導心電図を記録するI C ACS を否定できない患者で初回心電図では診断できない場合に,経時的に12誘導心電図を記録する102) I C STEMI 患者に対しすみやかに心電図モニタリングを行う103, 104) I B急性下壁梗塞患者では12 誘導に加え右側胸部誘導(V4R 誘導)を記録する105–

107) I B AMI が疑われる患者で初回心電図では診断できない場合に,12 誘導に加え背側部誘導(V7-9 誘導)の記録を考慮する

108, 109) IIa C