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で,より適切な診断・治療法選択が可能になる. 1.2.3 家族歴 冠動脈疾患の家族歴(とくに若年発症の家族歴:男性55 歳未満,女性65 歳未満)は重要である. 1.2.4 冠危険因子 冠危険因子の存在についても可能なかぎり情報収集を行う.ACS を疑う症状に加えて,3 つ以上の危険因子(年齢,喫煙,脂質異常症,糖尿病,高血圧,家族歴,腎機能障害)がある場合は可能性が高くなる. 1.3 身体所見 身体所見の注意深い診察は,ACS の診断のみならず,合併症の有無や胸痛を引き起こす他の疾患との鑑別,治療法の選択,心臓カテーテル検査時の動脈アクセス部位の決定において重要である.とくにAMI の場合,症状の程度には個人差があり,症状が強い場合は苦悶様表情を呈し,痛みで動けずに耐えていることが多い.また,脳卒中の既往や認知症の有無を,簡潔な神経学的所見の診察から判断する.肺水腫の合併例では,呼吸困難や起座呼吸,咳嗽や泡沫状血痰が認められる.ショック例では,顔面蒼白,皮膚は冷たく湿潤で青いまだら状の斑点がみられ,口唇や爪床にはチアノーゼを伴う.心拍出量低下に起因する脳循環障害により,錯乱状態など意識レベルの低下を示すこともある.右室梗塞を合併した急性下壁梗塞では,頸静脈怒張,肝腫大,下腿浮腫などの右心不全徴候を伴う場合がある.また,頸動脈,腹部大動脈,大腿動脈での血管雑音,貧血,腹部大動脈瘤の有無などから,緊急心臓カテーテル検査のアプローチを含む再灌流療法に対し,妨げとなる所見がないか確認する. 1.3.1 バイタルサイン 合併症のない場合は正常血圧であることが多いが,不安感が強い場合や興奮状態では,交感神経の活性亢進により一過性に血圧上昇を示すことがある.一般的に,下壁梗塞ではBezold-Jarisch 反射による徐脈など副交感神経過緊張を示唆する所見が,前壁梗塞では頻脈など交感神経過緊張を反映する所見がみられる.30 分を超えて遷延する90 mmHg 以下の低血圧,または収縮期血圧で30 mmHg以上の基礎値からの低下は,ショック状態と判断する.心原性ショックに関する米国心臓協会(AHA)のscientific statement によれば90),心原性ショックは血管内容量(皮膚が湿潤しているか乾燥しているか:wet or dry)と末梢循環(皮膚が冷たいか暖かいか:cold or warm)の各々の組み合わせで4 群に分類することができる.AMI に関連した心原性ショックの2/3 は“cold and wet” の古典的な身体徴候を呈するが,SHOCK trial の結果,28% の症例は“cold and dry” に分類されることが報告されている91, 92).また,四肢の脈拍を触知することは,緊急心臓カテーテル検査施行時の動脈アクセスの確認のためにも重要である. 1.3.2 聴診所見 a. 心音,心雑音 聴診上のIII 音は左室充満圧上昇を伴った重症左室機能不全を反映しており,Killip 分類93)の評価に用いられる(表3).重症のACS の経過中に出現する収縮期雑音は,左室拡大や乳頭筋不全,腱索や乳頭筋断裂による僧帽弁逆流,心室中隔穿孔(VSP)の合併を示唆する.腱索や乳頭筋断裂による僧帽弁逆流は,心尖部に最強点を有し,ときに振戦(thrill)を伴う顕著な全収縮期雑音として聴取され,血行動態の悪化を伴う.VSP による収縮期雑音も同様の性状であるが,第4 肋間胸骨左縁で最強点を有することが多 表3 Killip 分類(身体所見に基づいた重症度分類) (Killip T 3rd, et al. 1967 93)をもとに作表) クラスIポンプ失調なし肺野にラ音なく,III 音を聴取しない クラスII軽度~中等度の心不全全肺野の50% 未満の範囲でラ音を聴取またはIII 音を聴取する クラスIII重症心不全,肺水腫全肺野の50% 以上の範囲でラ音を聴取する クラスIV心原性ショック血圧90 mmHg 未満,尿量減少,チアノーゼ,冷たく湿った皮膚,意識障害を伴う