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第3章 初期診断,初期治療 1 初期診断 1.1 トリアージ ST 上昇型心筋梗塞(STEMI)に対する発症後早期の再灌流療法は予後を改善させる確立された治療法であり,早期診断,早期治療が重要である.あらかじめ定められた手順により,患者の病態を評価し,ただちに初期治療を開始する.患者到着後10 分以内72, 73)に,バイタルサインのチェック,連続心電図モニターを行い,簡潔かつ的確な病歴聴取とともに12 誘導心電図を記録し,臨床検査を行う. STEMI の場合,再灌流療法として血栓溶解療法を選択した場合には患者到着後30 分以内に血栓溶解薬を投与すること,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を選択した場合には最初の医療従事者の接触(first medical contact,救急隊を含む)から少なくとも90 分以内に初回バルーンを拡張することが目標とされる63, 73, 74).非ST 上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の場合は,中等度~高リスク症例には侵襲的治療を行うことが推奨されているが,その適切なタイミングについては明確にされていない. TIMI リスクスコア75, 76),GRACE リスクスコア77)などを使用してリスクを評価したうえで,適切なタイミングでの侵襲的治療を検討する(図2).8 つの臨床試験に登録された5,324 例を対象にしたメタ解析の結果,早期侵襲的治療は待機的侵襲的治療にくらべ死亡率および非致死性心筋梗塞の発生率を低下させなかったが,高リスク患者では死亡率を低下させる可能性が示唆された78). 1.2 病歴 病歴は急性冠症候群(ACS)の診断にきわめて重要な情報であり,診断によりその後の治療方針が異なることから,詳細な聴取を迅速に行う必要がある.胸痛の部位,性状,誘因,持続時間,経時的変化,随伴症状などに注意する. 並行して既往歴,冠危険因子や家族歴についての情報も得ることで,ACS とその他の疾患を極力すみやかに鑑別しなければならない79). 1.2.1 胸痛 ACS 患者の胸痛の性状は,前胸部や胸骨後部の重苦しさ,圧迫感,絞扼感,息がつまる感じ,焼け付くような感じと表現されることが多いが,単に不快感として訴えられることもある.顎,頸部,肩,心窩部,背部,腕への放散や,ときに胸部症状を伴わずこれらの部位にだけ症状が限局することもあるため,注意が必要である.刺されるような痛みやチクチクする痛み,触って痛む場合は狭心痛ではないことが多く,また呼吸や咳,体位変換の影響は受けない.一方,非定型的な症状や軽微な症状が重篤なACS の症状であることもまれではなく,症状の性状のみでACSを除外してはならない.非典型的な症状はとくに高齢者,糖尿病および女性の患者でしばしばみられる80–82).さらに高齢者では心筋虚血による症状として息切れを訴えることがあり83),全身倦怠感,食欲不振, 失神や意識レベルの低下などが唯一の症状のこともある. 心筋梗塞の症状は20 分以上で数時間に及ぶことが多い.塩酸モルヒネを必要とするような強い痛みは約半数の例で認められるが,症状の強さと重症度は必ずしも一致しない.また随伴症状として,男性では冷汗が,女性では嘔気,嘔吐,呼吸困難感が多いとされている80, 81).顎,頸部,肩,背部,腕への放散も女性で多く認められる80, 81, 84, 85).以下に症状の特徴と診断との関係をまとめた. 1 狭心症,不安定狭心症(UA)の胸痛の持続時間は数分 程度が多く,長くても15 ~20 分である.胸痛の持続が20 秒以下のときは狭心痛の可能性は低い.20 分以上持続する場合,その性状がACS に起因する場合には急性心筋梗塞(AMI)の可能性が高い. 2 胸痛は急ぎ足,昇段,重いものを持つ,運ぶなどの労作 時に誘引されるだけでなく,安静時にも出現する.精神的興奮や食事でも起こる.早朝は胸痛の閾値が低く,発作が出現しやすい.安静狭心症では夜間睡眠中や早朝