p.16 抽出テキスト
場した場合,STEMI 患者に対して医師による硝酸薬やアスピリンの投与が行われている.今後この成果をまとめ,救急隊がこれらの薬剤を使用できるようにする検討が必要と思われる.救急車内に12 誘導心電計が搭載されている場合は,12 誘導心電図の記録と搬送先の病院への通知が推奨される60).STEMI 患者で,プレホスピタル12 誘導心電図を記録して病院へ通知するほうが,医療従事者が接触してから再灌流までの時間および病院到着からカテーテル治療までの時間が短縮されることが示されている61–69).また,primary PCI を施行されたSTEMI 患者で,プレホスピタル12 誘導心電図が記録され病院へ通知された群は,通知されなかった群にくらべ30 日後の死亡率が32% 減少したことが報告されている60).救急隊による12 誘導心電図の記録は,患者の病院到着前の心臓カテーテル室の準備やカテーテルチームの早期招集,再灌流までの時間短縮を可能にし,予後を改善させることが期待される.本邦ではプレホスピタル12 誘導心電図記録がまだ十分に普及しているとはいえず,その活用・普及には,循環器医の地域メディカルコントロール参加などによる啓発が必要である. 4 救急医療体制 ACS の診療には迅速な診断・治療が求められる.ACS治療に関する系統的アプローチには,一次予防や患者の認識,救急隊,救急部,病院内におけるすみやかなPCI をはじめとする内科的治療や心臓外科的治療,リハビリテーション,および二次予防に関する地域の医療機関との協力体制などが含まれる. とくにSTEMI の治療では,発症から再灌流までの総虚血時間をいかに短くするかが重要である.STEMI 患者での治療目標は,発症から120 分以内の再灌流達成であり,血栓溶解療法では医療従事者との最初の接触(救急隊との接触も含まれる)から血栓溶解薬投与までの時間が30 分以内,PCI では医療従事者との最初の接触からカテーテル治療までの時間が少なくとも90 分以内が目標とされる.さらに,再灌流療法を実施できない施設にSTEMI 患者が受診した際には,施設の滞在時間(door-in-door-out time)を30 分以内とする目標が設けられている70).この目標達成のためには,普段から地域の医療行政部門,メディカルコントロール,消防組織による救急搬送体制,医師会および専門医療機関が協力して一体的なSTEMI 治療システムを構築しておくことが望まれる. なお,ACS 患者のプレホスピタルでの診療に関しては,日本蘇生協議会(JRC)の「JRC 蘇生ガイドライン2015」71) に詳細に記載されており,参照されたい.