p.15 抽出テキスト
NSTEMI のほうが不良とする欧米からの報告が多くみられる47–49).本邦のPACIFIC 研究における退院2 年後までの全死亡率は,STEMI 7.1% に対してNSTEMI 5.1%であり,STEMI の予後が不良であった50).しかし,前述のJ-MINUTE 研究において,発症1 ヵ月以後3 年目までの予後を検討したランドマーク解析では,CK 上昇の有無に関わらずNSTEMI はSTEMI にくらべ長期予後が有意に不良であることが明確に示された14).この原因として, NSTEMI 患者のほうが冠危険因子をより多く有し,冠動脈硬化がより進展している例が多く認められることが関係していると考えられる41, 49). また,STEMI とNSTEMI の慢性期予後について,1995年から2015 年までの20 年間の経時的変遷を検討したフランスのナショナルレジストリー研究では,STEMI では現在に至るまで一貫した慢性期死亡率の改善が認められたが, NSTEMI では2010 年以降さらなる改善は認められず,横ばいに推移していることが示された51).今後,本邦でもACSを対象としたナショナルレジストリーが立ち上げられ,日本人におけるエビデンスが創出されることが期待される. 第2章 発症から来院まで 1 患者による救急車要請 急性冠症候群(ACS)が疑われる症状が出現した場合は,患者自身が医療機関を受診するのではなく,ただちに119 番通報して救急車を要請する必要がある52, 53).ACS,とくにST 上昇型心筋梗塞(STEMI)では,発症直後に突然死のリスクがあるため,胸痛などのACS が疑われる症状や,発症後早期の救急車要請の重要性について,市民や患者に啓発することが重要である(ACS の症状については「第3 章1.2.1 胸痛」を参照).ニトログリセリンを保有している患者では,症状が治まるまでニトログリセリンを3 ~5 分おきに合計3 回まで使用するが,ニトログリセリン1 錠舌下後または1 回噴霧後も症状が強く軽減しない場合は,ただちに救急車を要請する54). 2 初期医療現場における医師の対応 往診時または診療所などの医療機関で,ACS が疑われる患者に最初に対応する医師は,ただちにバイタルサイン,身体所見および12 誘導心電図を記録・評価し,初期治療 を開始するとともに(「第3 章2. 初期治療」を参照),迅速に119 番通報して救急車を要請する. コンピュータによるSTEMI 発症後早期の12 誘導心電図の判読は必ずしも正診率が高くなく,自動解析の結果だけでSTEMI を除外すべきではない55).医師はSTEMI が疑われた場合,患者をただちにprimary 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が施行可能な病院へ搬送する56–59).この際,搬送先の循環器医にバイタルサインや心電図所見などの臨床所見を報告する.また,STEMI 患者がprimary PCI を実施できない施設を受診した場合の血栓溶解療法の適応については,「第4 章2. 血栓溶解療法」を参照されたい. 3 救急隊による対応 救急隊員はACS が疑われる患者に対し,すみやかにバイタルサインのチェック,心電図モニタリングを行い,心停止に備える.パルスオキシメータの使用も推奨される.患者の血圧が維持されており,かつ患者が主治医より胸痛発作時の硝酸薬使用の指導を受けている場合は,救急隊員は患者から求められれば,胸痛持続時に硝酸薬の使用を補助してよい.現状では,ドクターカーやドクターヘリが出