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p.12 抽出テキスト

なかでとらえることができるが,冠動脈内の血栓形成により生じる不安定狭心症(UA)と急性心筋梗塞(AMI)および虚血に基づく心臓突然死は,労作性狭心症におけるプラークの進展過程とは一線を画したイベント(心事故)であり,ACS という一括した疾患概念として扱われる.

AMI は,急性期の診断・治療の進め方の違いからST 上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST 上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に分類される.UA とAMI は梗塞の有無,臨床的には多くの場合心筋バイオマーカーの上昇の有無によって区別されるが,初療時にUA とNSTEMI とを区別して扱うことはしばしば困難である.そのため,初療時の診断・治療においては両者をあわせて非ST 上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)として扱う(図1).

STEMI には,ACS のうち心電図で持続的なST 上昇または新規の左脚ブロックを示すものが含まれる.心電図のST 上昇は血栓性閉塞により冠動脈血流が途絶し,貫壁性虚血を生じていることを示唆する.冠血流が閉塞性血栓によって途絶すると,まず虚血に脆弱な灌流領域中央の心内膜側に心筋壊死が生じ,数時間で急速に心外膜側に向かって梗塞領域が拡大する6).再灌流療法は,このように梗塞が拡大する前に冠血流を再開させることにより,虚血に陥った心筋を救済する.AMI に対する血栓溶解療法については,Fletcher らやChazov らによる先駆的な試みがある7, 8).その後1979 年にRentrop らが,5 症例のSTEMIに対してニトログリセリンやストレプトキナーゼの冠動脈

内投与,ガイドワイヤーの機械的操作を行うことにより閉塞した冠動脈を再開通させたことを報告して以降9),1980年代後半にはGISSI 試験やISIS-2 試験において,ストレプトキナーゼ静注によるAMI の死亡率減少が示されるなど10, 11),AMI に対する再灌流療法の有用性が明らかとなった.現在ではステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による再灌流療法が普及し,AMI の院内予後は劇的に改善された.この再灌流療法は発症早期ほど効果が大きいため,STEMI の初療では発症から再灌流までの時間をいかに短くするかを最重視した治療戦略が求められる.

NSTE-ACS には,心電図で持続性または一過性のST下降やT 波異常,あるいは心電図変化のない病態までが含まれる.NSTE-ACS では,冠動脈の不完全閉塞または良好な側副血行路からの残存血流が存在するため,STEMIとは異なる治療戦略が必要となる.その病態は,心筋壊死が生じない病態から左主幹部病変により血行動態が破綻する病態まで多彩であり,適切な診断とリスク層別化,およびそれに基づく適切な治療戦略の選択が求められる. NSTEMI とUA を初療時に区別することはしばしば困難であるため,一括してNSTE-ACS として扱い,退院までに心筋バイオマーカー上昇の有無によって診断する12).

従来,心筋梗塞の診断にはクレアチンキナーゼ(CK)/ ク

図1 急性冠症候群の診断の流れ持続的ST 上昇あり上昇/ 下降

あり正常非ST 上昇型

心筋梗塞不安定狭心症ST 上昇型

心筋梗塞急性冠症候群

持続的ST 上昇なし

非ST 上昇型急性冠症候群ST 上昇型心筋梗塞

暫定診断

心電図

初期診断

心筋バイオマーカー*

最終診断

*  心筋トロポニンが望ましい