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p.102 抽出テキスト

必要がある.二次予防においては,専門病院の循環器医または診療チームと,地域のプライマリケアシステムとの間の緊密な連携が課題であろう.現状では,地域連携パスまたは疾病管理プログラムの普及が鍵となる.しかし実際にはさまざまな形の二次予防プログラムが報告されており,また,全体での二次予防プログラムへの参加,アクセスは

必ずしも高率ではないことが推定されている1051, 1099).それらに対する本邦での検証は少なく,有用性の高い二次予防プログラム実践のために,検証から実践へと結びつける研究および活動が必要である1100).

第11章 今後の課題(欧米の診療ガイドラインとの相違を踏まえて)

現在,急性冠症候群(ACS)の診療においては,個々の患者のリスクを念頭においた治療ストラテジーの推奨が前面に出されるようになっている.その最もわかりやすい事例として,非ST 上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)患者に対する治療戦略の選択があげられる.欧米の多くの診療ガイドラインでは,短期的に低リスクの患者であれば保存的療法,高リスクの患者であれば経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による早期侵襲的治療戦略が推奨されている.しかし,本邦ではPCI を施行できる施設が際立って多いこともあり(2018 年現在,日本心血管インターベンション治療学会認定施設は600 以上),短期的に低リスクの患者であっても早期にPCI が行われる傾向にある1101).本ガイドライン(第5 章)では,「短期的なリスクが低いと判断されれば,負荷試験などを用いて長期予後に関するリスク評価を行い,必要に応じて冠血行再建を検討する」こと,「ACS の短期リスクの評価は一時点のみでは不十分で,経時的に連続して行うべきである」こと,「薬物に対する反応,初期数日の経過は予後予測に有用な情報を提供する」ことなどを強調した.また,早期侵襲的治療戦略のタイミングについては,欧米のガイドラインの考え方を踏襲し,即時(2 時間以内)・早期(24 時間以内)・後期(72 時間以内)に分けて示したが,時代とともに冠動脈造影・冠血行再建の施行時期に対する考え方は変化しており,今後も継続的な議論が必要であろう.

心筋トロポニンを用いたACS 患者に対する初期トリアージに関しても,欧米諸国と本邦では差異がみられる.欧米のガイドラインでは詳細な診断アルゴリズムが提唱され,その検証がなされている167, 1102).本ガイドラインでは,診断,リスク層別における心筋トロポニンの活用に関しては幅をもたせた記載とした(第3 章).たとえば心筋トロポニ

ン再検のタイミングについて,高感度心筋トロポニンの場合は1 ~3 時間,定性検査の場合は6 時間以降としている.医療リソースの適正配分の見地から,また医療政策全体の動向を注視しながら,システムに応じた診療パターンを今後構築していく必要がある.

本邦のACS 患者の背景は欧米とは異なることが指摘されている.本邦では高齢化が世界に先んじて進んでおり,日米のレジストリーデータの比較でも,本邦ではPCI を施行されるACS 患者の平均年齢は高くなっていることが知られている1103).そのため,一般に腎障害や糖尿病などの背景因子の寄与が小さい患者でも,年齢が影響しリスクがおのずと高くなることが多い.欧米ではこのような問題を臨床試験により検討する姿勢が打ち出されているが856),本邦でも患者背景の差異を踏まえてどのようにACS 患者の診療を行っていくかは継続的な課題である.新たな評価法の探索を積極的に行っていく必要があり,こうした観点からのエビデンスの構築はより一層重要性を増していくものと考えられる.

ACS の薬物治療に関しては,昨今,世界的に抗血小板薬や抗凝固薬の使用が大きく変わろうとしている.本邦でも,諸外国と同様この数年で複数の抗血小板薬が導入されているが,その承認に至った臨床試験の結果はさまざまであり,本邦独自の用量で認可されたものも存在する931).さらに抗血小板薬や抗凝固薬以外に,β遮断薬やスタチンに関しても同様の相違が存在する.とくにスタチンに関しては,世界的には高用量での使用が一般的になりつつあることを踏まえ,本ガイドラインでは「ストロング・スタチンを忍容可能な最大用量で投与する」(クラスI)ことを推奨