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p.10 抽出テキスト

改訂にあたって

急性冠症候群(ACS)は,冠動脈粥腫(プラーク)の破綻とそれに伴う血栓形成により冠動脈の高度狭窄または閉塞をきたして急性心筋虚血を呈する病態で,不安定狭心症(UA),急性心筋梗塞(AMI),虚血による心臓突然死を包括した疾患概念である.以前は,冠動脈硬化を基盤とした心筋虚血による疾病群は,心筋壊死の有無により心筋梗塞,狭心症と分類されていた.しかし,この診断は心筋バイオマーカーの経時的な評価を行わないと確定できず,迅速な診断・治療方針の決定を必要とする救急現場にはそぐわなかった.また,狭心症のなかでも,冠動脈の器質的狭窄が原因となる安定狭心症と,その病態に冠動脈内血栓が関与するUA とでは予後は大きく異なる.1992 年にFuster らは,UA もAMI も冠動脈内血栓によって急性心筋虚血を呈する同一の病態であり,これらをACS として包括することを提唱した.発症時の病態を念頭に置いたACS という概念の導入によって,臨床現場での初期診断・治療方針の決定は大きく変わることになった.また近年,心筋特異性に優れ,クレアチンキナーゼ(CK)やクレアチンキナーゼMB 分画(CK-MB)では検出できない微小心筋傷害の診断が可能な心筋トロポニンの測定が臨床現場で普及した.心筋トロポニンの導入もACS の診断やリスク層別を大きく変えた.日本循環器学会ガイドラインのうち「ST 上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン」(木村一雄班長)の発行から5 年が経過し,「非ST 上昇型急性冠症候群の診療に関するガイドライン」(木村剛班長)と独立して改訂することは,現状に即していないと考えられた.さらに,ACS の短期予後は改善されたものの,長期予後に関しては予後を増悪させる心不全の関与が問題になっており,その改善策の重要性が増している.「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン」(小川久雄班長)の発行からは7 年が経過しており,二次予防の分野における進歩も目覚ましいものがある.そこで,「ST 上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン」,「非ST 上昇型急性冠症候群の診療に関するガイドライン」,「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン」の3 つのガイドラインを包括し,「急性冠症候群ガイドライン」として発行することにした.ACS を包括したガイドラインは,米国心臓病学会(ACC)/ 米国心臓協会(AHA)ガイドラインや欧州心臓病学会(ESC)ガイ

ドラインでも現時点では作成されていない.このため,項立ての作成段階から内容が不足・重複しないように配慮したものの,構成上一部に類似した記載が認められる箇所も生じている.また,本ガイドラインでは,推奨クラスとエビデンスレベルに関して,従来の日本循環器学会ガイドラインおよびACC/AHA ガイドライン,ESC ガイドラインと同様に記載した(表1,表2).なお,クラスIII に関しては臨床的有用性を考え,ACC/AHA のガイドラインに準じて有効性・有用性なし(no benefit)と有害(harm)に分

表1推奨クラス分類

クラス I手技・治療が有効・有用であるというエビデンスがある,または見解が広く一致しているクラス II手技・治療が有効・有用であるというエビデンスまたは見解が一致していないクラス IIaエビデンス・見解から,有効・有用である可能性が高いクラス IIbエビデンス・見解から,有効性・有用性がそれほど確立されていない

クラス III手技・治療が有効・有用でなく,ときに有害であるとのエビデンスがある,または見解が広く一致しているクラス III No benefit手技・治療が有効・有用でないとのエビデンスがある,または見解が広く一致しているクラス III

Harm手技・治療が,有害であるとのエビデンスがある,または見解が広く一致している

注)クラスIII は,表内の文章(~は推奨されない,~はすべきでない)そのものが推奨される記載となっている.例)

推奨クラスエビデンス

レベル

重篤な血液異常,アスピリン喘息や過敏症のある患者に対してアスピリンを投与すべきではないIII Harm C重篤な血液異常,アスピリン喘息や過敏症のある患者に対するアスピリン投与は有害であり,アスピリン投与はすべきでないことを推奨する.