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Clinical Evidence for Complementary and Alternative Therapies in Cancer Patients edited by Japanese Society for Palliative Medicine ©2016 All right reserved. KANEHARA & Co., Ltd., Tokyo Japan Printed in Japan
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iii 緩和医療ガイドライン委員会委 員 長太田惠一朗日本医科大学消化器外科担当委員大野 智大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座外部委員中山 健夫京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野 補完代替療法ガイドライン改訂WPG(Working Practitioner Group) WPG 員長太田惠一朗日本医科大学消化器外科WPG 副員長大野 智大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座W P G 員井寺 奈美都立駒込病院乳腺外科伊藤 彰博藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座今津 嘉宏芝大門いまづクリニック上園 保仁国立研究開発法人国立がん研究センター研究所がん患者病態生理研究分野梅垣 敬三国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健康・栄養研究所情報 センター〔外部委員〕 遠藤 光史越川病院緩和ケア科,東京医科大学病院緩和医療部大坂 巌静岡県立静岡がんセンター緩和医療科大津 史子名城大学薬学部〔外部委員〕岡 孝和九州大学大学院医学研究院心身医学〔外部委員〕神里みどり沖縄県立看護大学・大学院看護学部儀賀 理暁埼玉医科大学総合医療センター緩和ケア推進室・呼吸器外科髙世 秀仁信愛報恩会信愛病院緩和ケア部平井みどり神戸大学医学部附属病院薬剤部舛本真理子武蔵野赤十字病院腫瘍内科宮内 貴子山口大学医学部附属病院緩和ケアセンター山口 佳之川崎医科大学臨床腫瘍学
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v 発刊にあたって 7 年前の2009 年2 月に日本緩和医療学会から,「がん補完代替医療ガイドライン第1 版」(Web版)が発行されました。このガイドラインは,「厚生労働省がん研究助成金:我が国におけるがんの代替療法に関する研究班」と「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究班」による「緩和医療ガイドライン作成委員会補完代替医療ガイドライン作業部会」によりまず作成され,その後2008 年に日本緩和医療学会理事会で承認されたものでした。以来,何度か改訂への動きはありましたが,補完代替療法の分野は一般的な科学研究の対象にはなりにくく,科学的エビデンスとして効果が示されることがほとんどありませんでした。このため,日本緩和医療学会の将来構想委員会,緩和医療ガイドライン委員会と理事会で何年にも亘って検討された結果,米国医学研究所で定義されているようなガイドライン,すなわち「診療ガイドラインとは,患者ケアの最適化を目的とする推奨を含む文書であり,エビデンスの系統的レビューと複数の治療選択肢の益と害の評価によって作成される」を踏襲できるようなガイドラインの作成は困難と判断されました。具体的には,「がんの補完代替療法」分野では,1無作為化比較試験の報告が少なすぎる,2ほとんどの補完代替療法は本邦では健康保険の適用にはなっていない,3補完代替療法を受けるか否かの判断が患者と家族の判断に委ねられ,医学的見地からというより好みや価値観で判断されることが多い,などの理由から,上記の定義を満たすことは不可能であり,画一的な推奨度を示さなければならない診療ガイドラインとして作成することは困難という結論に至ったということです。しかし,日本緩和医療学会としては,がん医療の現場で以前にも増して補完代替療法が施行されている事実もあり,この分野に対して何らかの見解を表明することが必要であるとの判断がなされました。このため,「がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス2016 年版」として上梓された本書は,推奨度を示す通常のガイドラインではなく,さまざまな補完代替療法に関する科学的エビデンスを取りまとめた“クリニカル・エビデンス;診療で生じる臨床疑問からトピックスを抽出し,系統的に情報を収集・吟味して,その有用性や安全性等に関するデータをコンパクトに提示するエビデンス集”として,作成されました。対象者は,医師・看護師・薬剤師などの医療者としています。本書の作成には,ガイドライン作成とはまた異なる多くのご苦労があったことと思います。この場を借りて「補完代替療法ガイドライン改訂Working Practitioner Group(WPG)」の皆様に対し感謝の意を表すとともに,この「がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス2016 年版」が緩和ケアの臨床現場で,がん患者さんとご家族のつらさの軽減に少しでも役立つことを祈念して,序文とさせていただきます。 2016 年5 月特定非営利活動法人 日本緩和医療学会理事長 細 川 豊 史
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vi 1 はじめに2 2 「クリニカル・エビデンス」作成経過3 1.背 景3 1 診療ガイドラインとは? 3 2 科学的根拠に基づく医療とは? 3 3 補完代替療法分野の現状と課題4 4 「クリニカル・エビデンス」の目的4 2.対象者/利用者4 3.作成者と利益相反4 4.作成手順6 1 対象となる補完代替療法の選択6 2 サマリーの作成6 3 臨床疑問の明確化6 4 文献検索の条件7 1 補完代替医療の概要10 1. 補完代替医療(complementary and alternative medicine)とは? 10 2.補完代替療法の利用実態11 3.医療者の認識12 1 健康食品14 サマリー14 1.健康食品の概要14 2.使用上の一般的な注意事項15 3.論文報告(エビデンス)における課題16 4. 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 16 5.文献検索の条件16 臨床疑問18臨床疑問1—1 健康食品は,がんに伴う身体 症状を軽減するか? 18 臨床疑問1—2 健康食品は,がんに伴う精神 症状を軽減するか? 19 臨床疑問1—3 健康食品は,全般的なQOL を 改善するか? 19 臨床疑問1—4 健康食品は,何らかの望まし くない有害事象を引き起こすか? 20 臨床疑問1—5 健康食品は,検査・治療等に 伴う有害事象を軽減するか? 20 臨床疑問1—6 健康食品は,予後を改善する か? 24 2 マッサージ27 サマリー27 1.マッサージの概要27 2.使用上の一般的な注意事項27 3.論文報告(エビデンス)における課題27 4. 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 28 5.文献検索の条件28 臨床疑問29臨床疑問2—1 マッサージは,がんに伴う身 体症状を軽減するか? 29 臨床疑問2—2 マッサージは,がんに伴う精 神症状を軽減するか? 31 臨床疑問2—3 マッサージは,全般的なQOL を改善するか? 32 臨床疑問2—4 マッサージは,何らかの望ま しくない有害事象を引き起こすか? 33 臨床疑問2—5 マッサージは,検査・治療等 I章 序 論 II章 総 論 III章 各 論:クリニカル・エビデンス 1 2 1 2目 次
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vii に伴う有害事象を軽減するか? 33 臨床疑問2—6 マッサージは,予後を改善す るか? 33 3 アロマテラピー・マッサージ34 サマリー34 1.アロマテラピー・マッサージの概要34 2.使用上の一般的な注意事項34 3.論文報告(エビデンス)における課題35 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 35 5.文献検索の条件35 臨床疑問37臨床疑問3—1 アロマテラピー・マッサージ は,がんに伴う身体症状を軽減するか? 37 臨床疑問3—2 アロマテラピー・マッサージ は,がんに伴う精神症状を軽減するか? 39 臨床疑問3—3 アロマテラピー・マッサージ は,全般的なQOL を改善するか? 40 臨床疑問3—4 アロマテラピー・マッサージ は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? 40 臨床疑問3—5 アロマテラピー・マッサージ は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? 41 臨床疑問3—6 アロマテラピー・マッサージ は,予後を改善するか? 42 4 運動療法43 サマリー43 1.運動療法の概要43 2.使用上の一般的な注意事項43 3.論文報告(エビデンス)における課題43 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 44 5.文献検索の条件44臨床疑問46 臨床疑問4—1 運動療法は,がんに伴う身体 症状を軽減するか? 46 臨床疑問4—2 運動療法は,がんに伴う精神 症状を軽減するか? 57 臨床疑問4—3 運動療法は,全般的なQOL を 改善するか? 59 臨床疑問4—4 運動療法は,何らかの望まし くない有害事象を引き起こすか? 64 臨床疑問4—5 運動療法は,検査・治療等に 伴う有害事象を軽減するか? 66 臨床疑問4—6 運動療法は,予後を改善する か? 67 5 ホメオパシー71 サマリー71 1.ホメオパシーの概要71 2.使用上の一般的な注意事項71 3.論文報告(エビデンス)における課題71 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 72 5.文献検索の条件72 臨床疑問74臨床疑問5—1 ホメオパシーは,がんに伴う 身体症状を軽減するか? 74 臨床疑問5—2 ホメオパシーは,がんに伴う 精神症状を軽減するか? 75 臨床疑問5—3 ホメオパシーは,全般的な QOL を改善するか? 75 臨床疑問5—4 ホメオパシーは,何らかの望 ましくない有害事象を引き起こすか? 75 臨床疑問5—5 ホメオパシーは,検査・治療 等に伴う有害事象を軽減するか? 75 臨床疑問5—6 ホメオパシーは,予後を改善 するか? 76 6 アニマルセラピー77 サマリー77 1.アニマルセラピーの概要77 1 2 1 1 2
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viii 2.使用上の一般的な注意事項77 3.論文報告(エビデンス)における課題77 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 77 5.文献検索の条件78 臨床疑問79臨床疑問6—1 アニマルセラピーは,がんに 伴う身体症状を軽減するか? 79 臨床疑問6—2 アニマルセラピーは,がんに 伴う精神症状を軽減するか? 79 臨床疑問6—3 アニマルセラピーは,全般的 なQOL を改善するか? 80 臨床疑問6—4 アニマルセラピーは,何らか の望ましくない有害事象を引き起こすか? 80 臨床疑問6—5 アニマルセラピーは,検査・ 治療等に伴う有害事象を軽減するか? 80 臨床疑問6—6 アニマルセラピーは,予後を 改善するか? 80 7 リラクセーション82 サマリー82 1.リラクセーションの概要82 2.使用上の一般的な注意事項83 3.論文報告(エビデンス)における課題83 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 84 5.文献検索の条件84 臨床疑問86臨床疑問7—1 リラクセーションは,がんに 伴う身体症状を軽減するか? 86 臨床疑問7—2 リラクセーションは,がんに 伴う精神症状を軽減するか? 88 臨床疑問7—3 リラクセーションは,全般的 なQOL を改善するか? 88 臨床疑問7—4 リラクセーションは,何らか の望ましくない有害事象を引き起こすか? 89臨床疑問7—5 リラクセーションは,検査・ 治療等に伴う有害事象を軽減するか? 89 臨床疑問7—6 リラクセーションは,予後を 改善するか? 90 8 音楽療法92 サマリー92 1.音楽療法の概要92 2.使用上の一般的な注意事項92 3.論文報告(エビデンス)における課題92 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 93 5.文献検索の条件93 臨床疑問95臨床疑問8—1 音楽療法は,がんに伴う身体 症状を軽減するか? 95 臨床疑問8—2 音楽療法は,がんに伴う精神 症状を軽減するか? 96 臨床疑問8—3 音楽療法は,全般的なQOL を 改善するか? 97 臨床疑問8—4 音楽療法は,何らかの望まし くない有害事象を引き起こすか? 97 臨床疑問8—5 音楽療法は,検査・治療等に 伴う有害事象を軽減するか? 97 臨床疑問8—6 音楽療法は,予後を改善する か? 97 9 鍼灸治療99 サマリー99 1.鍼灸治療の概要99 2.使用上の一般的な注意事項99 3.論文報告(エビデンス)における課題99 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 100 5.文献検索の条件100 臨床疑問102臨床疑問9—1 鍼灸治療は,がんに伴う身体 症状を軽減するか? 102 2 1 2 1 2 1
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ix 臨床疑問9—2 鍼灸治療は,がんに伴う精神 症状を軽減するか? 105 臨床疑問9—3 鍼灸治療は,全般的なQOL を 改善するか? 105 臨床疑問9—4 鍼灸治療は,何らかの望まし くない有害事象を引き起こすか? 105 臨床疑問9—5 鍼灸治療は,検査・治療等に 伴う有害事象を軽減するか? 106 臨床疑問9—6 鍼灸治療は,予後を改善する か? 109 10 ヨ ガ111 サマリー111 1.ヨガの概要111 2.使用上の一般的な注意事項111 3.論文報告(エビデンス)における課題111 4. 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 112 5.文献検索の条件112 臨床疑問114臨床疑問10—1 ヨガは,がんに伴う身体症状 を軽減するか? 114 臨床疑問10—2 ヨガは,がんに伴う精神症状 を軽減するか? 115 臨床疑問10—3 ヨガは,全般的なQOL を改善 するか? 116 臨床疑問10—4 ヨガは,何らかの望ましくな い有害事象を引き起こすか? 116 臨床疑問10—5 ヨガは,検査・治療等に伴う 有害事象を軽減するか? 116 臨床疑問10—6 ヨガは,予後を改善するか? 117 1 栄養療法,経腸栄養剤120 1.担がん患者の代謝変動120 1 エネルギー代謝異常120 2 糖代謝異常120 3 蛋白代謝異常121 4 脂質代謝異常121 2. わが国で用いられているがん患者に対する 栄養剤122 1 経口栄養補助剤:GFO 122 2 経口栄養補助剤:インナーパワー124 3 経口栄養補助剤:プロシュア127 4 胃瘻からの経腸栄養剤:ラコールNF 配合経腸用半固形剤128 5 経口補水液:OS—1 128 6 経口栄養補助剤:アバンド130 3. がん悪液質に対する栄養サポートと今後の 課題131 2 免疫療法133 1.わが国で実施されている免疫療法133 1 第1 世代133 2 第2 世代133 3 第3 世代133 4 第4 世代133 3 漢方薬136 1.漢方薬とは? 136 2.漢方薬を用いた臨床試験136 3.漢方薬の注意点136 4 高濃度ビタミンC 点滴療法138 1.ビタミンC に関する一般的事項138 2.ビタミンC とがん138 1 がん予防138 2 がん治療138 3.高濃度ビタミンC 点滴療法139 1 ビタミンC の抗腫瘍メカニズム139 2 単独投与139 3 併用療法139 4 副作用139 5 薬物相互作用139 6 その他の注意事項139 1 相互作用について142 1.薬物動態学的相互作用142 2.薬力学(薬理学)的相互作用142 3.その他の要因143 1 環境要因によるもの143 2 ポリファーマシーの危険性143 1 2 IV章 各 論:治療のトピックスV章 参考資料
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x 3 ハーブ,サプリメント,健康食品154 4.参考となる情報154 1 Web サイト154 2 書 籍154 2 患者・医療者間のコミュニケーションを 考える155 1.補完代替療法利用の現状と行動科学的考察155 2.補完代替療法と多元的医療システムの概念155 3.コミュニケーションの実際156 1 補完代替療法を利用する患者の心理156 2 医療者の介入157 3 患者の特性(文化,性別,年齢) 158 4 患者自身による意思決定158 3 補完代替療法に関する公的機関による情報 資料160 1.補完代替療法全般に関する情報160 2.健康被害等に関する情報160 3.消費者トラブルに関する情報160 付 録 エビデンス掲載ページ(主ながん種) 162 索 引163
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1 はじめに 2 「クリニカル・エビデンス」作成経過 I章 序 論
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2009 年2 月に日本緩和医療学会から「がん補完代替医療ガイドライン(第1 版)」(Web版)が発行され,すでに7 年以上が経過した。本ガイドラインは,厚生労働省がん研究助成金「我が国におけるがんの代替療法に関する研究」班および「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班による,「緩和医療ガイドライン作成委員会補完代替医療ガイドライン作業部会」が作成し,日本緩和医療学会理事会が2008 年10 月に承認したものである。なお,これは学会会員向けの出版物として公表されたものであり,現在は資料として日本緩和医療学会ホームページに掲載されている。本ガイドラインは,当初,3~5 年後をめどに,その見直しの必要性につき検討する予定であった。改訂にあたって,この分野は施術や療法によって差はあるが,なかなか科学的根拠となる報告が少なく,またその多くが保険外診療であり,いわゆる診療ガイドラインとしての改訂が可能かどうかという議論もなされた。しかし,がん医療の現場で以前にも増して補完代替療法が用いられているのは事実であり,本学会としてもこの分野に何らかの見解を示すことが必要だと思われた。今回,次項の作成経過で述べられているように,通常の診療ガイドラインにあるような「推奨度」を設定せず,新たに「クリニカル・エビデンス」として,がん診療現場の医療従事者の助けになるような形式にまとめ,出版することとした。 (太田惠一朗) 1 はじめに
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I章序論 1 診療ガイドラインとは? 米国医学研究所(Institute of Medicine)によると,「診療ガイドラインとは,患者ケアの最適化を目的とする推奨を含む文書である。診療ガイドラインはエビデンスの系統的レビューと,複数の治療選択肢の益と害の評価によって作成される(原文:Clinical practice guidelines are statements that include recommendations intended to optimize patient care. They are informed by a systematic review of evidence and an assessment of the benefits and harms of alternative care options.)1)」と定義されている。さらに,そのガイドラインに示される推奨の強さをグレーディングするためのアプローチ(GRADE system)が,GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)working group によって開発され,国際的に広く普及しつつある2)。なお,GRADE system では,推奨の方向が2 種類(推奨する,推奨しない),強さが2 種類(strong,weak)の4 段階の推奨度が設定される。 2 科学的根拠に基づく医療とは? 科学的根拠に基づく医療(evidence—based medicine;EBM)とは,「研究によって得られた科学的根拠=エビデンス(research evidence),患者の好み(価値観)・行動(patients’ preferences and actions),医療者の技術・経験を含む専門性(clinical expertise),患者の病状・周囲の環境(clinical state and circumstances)の4 つを考慮し,よ 1 背 景 2 「クリニカル・エビデンス」作成経過 患者の病状・周囲の環境(Clinical state & circumstances) 科学的根拠(Research evidence) 患者の好み(価値観)・ 行動(Patients’ preferences & actions) 医療者の技術・経験を含む専門性(Clinical expertise) 図 1 科学的根拠に基づいた医療(EBM) (HaynesRB,etal.BMJ2002;324:13503)より引用改変)
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りよい患者ケアのための意思決定を行うものである」とされている(図1)3)。誤解されがちであるが,「EBM を実践すること」は,「科学的根拠を患者に当てはめる(押しつける)こと」ではない。図1 に示すとおり,意思決定においては,科学的根拠のほかにも考慮すべき要因がある。また,エビデンスそのものについても誤解が多く,EBM を実践するにあたって,「無作為化比較試験の報告がなければエビデンスがない」ということも,「エビデンスがなければEBM が実践できない」ということもない。Haynes ら3)の論文においても,「治療方針の意思決定は,エビデンスではなく,患者と医療者によってなされるべきである(原文:Evidence does not make decisions, people do)」と,患者—医療者間のコミュニケーションの重要性が強調されている。 3 補完代替療法分野の現状と課題 施術・療法によっては,無作為化比較試験の報告が少ない。ほとんどの施術・療法は,保険診療の対象外となっている(経済的負担の問題)。利用にあたっての判断は,患者・家族の好みや価値観の影響が大きい。上記を踏まえ,補完代替療法分野において,画一的に「推奨度」を設定しなければならない診療ガイドラインを作成することは困難であり,逆に推奨度を設定することで臨床現場に混乱を招く可能性も危惧された。そのため,推奨を含むガイドラインではなく,各種補完代替療法注1)に関する科学的根拠を取りまとめたクリニカル・エビデンス注2)を作成することとした。 注1)補完代替療法:本クリニカル・エビデンスでは,さまざまな施術・療法を総称して補完代替療法とする。なお,補完代替療法を含む医学・医療体系全体を指すときは補完代替医療とする。注2)クリニカル・エビデンス:診療で生じる疑問(臨床疑問)からトピックスを抽出し,系統的に情報を収集・吟味して,有用性や安全性等に関するデータをコンパクトに提示するエビデンス集。 4 「クリニカル・エビデンス」の目的EBM を実践するうえで意思決定の要因の一つである「科学的根拠」について,臨床疑問別に整理したうえで提供することを目的とした。 がん診療に携わる医療者:医師,看護師,薬剤師など(患者・家族向けの資料は,今後作成予定とした)。 以下に,2016 年版の作成者と利益相反を示す。 2 対象者/利用者 3 作成者と利益相反
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I章序論 [利益相反開示事項]日本緩和医療学会の利益相反に関する指針,細則,報告事項,Q&A については学会ホームページ(http://www.jspm.ne.jp/rieki/)をご確認いただきたい。 [役員・委員等の利益相反開示事項(概要)] 1 報告対象企業等の職員,顧問職2 給与・報酬等100 万円以上3 特許権使用料100 万円以上4 講演料等50 万円以上5 原稿料等50 万円以上6 顧問料100 万円以上7 委受託研究費200 万円以上8 研究助成金(寄付金)等100 万円以上9 奨学(奨励)寄付金等100 万円以上10 寄付講座等500 万円以上11 株式等12 無関係な旅行,贈答品等5 万円以上13 自由診療 [開示期間] 2014 年4 月1 日~2015 年3 月31 日 [緩和医療ガイドライン委員会]利益相反委員長太田惠一朗日本医科大学消化器外科教授該当なし担当委員大野 智大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座准教授該当なし外部委員中山 健夫京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情 報学分野教授該当なし [補完代替療法ガイドライン改訂WPG]利益相反WPG 員長太田惠一朗日本医科大学消化器外科教授該当なしWPG 副員長大野 智大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座准教授該当なしWPG 員井寺 奈美都立駒込病院乳腺外科該当なし伊藤 彰博藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座准教授該当なし今津 嘉宏芝大門いまづクリニック院長講演料等:株式会社ツムラ上園 保仁国立研究開発法人国立がん研究センター研究所がん患 者病態生理研究分野長 講演料等:株式会社ツムラ,委受託研究費:株式会社ツムラ,第一三共株式会社,昭和薬品化工株式会社梅垣 敬三国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健 康・栄養研究所情報センター長〔外部委員〕該当なし
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1 対象となる補完代替療法の選択 「がん補完代替医療ガイドライン(第1 版)」(Web 版)を参考に,わが国で一般的に実施されている各種補完代替療法を原則としてWPG 員間で議論し決定した。なお,すでに医薬品として承認されているものや国内外で臨床研究が進められている療法などのうち,栄養療法・経腸栄養剤,免疫療法,漢方薬,高濃度ビタミンC 点滴療法については,クリニカル・エビデンス形式ではなく治療のトピックスとして取り上げ,各療法の現状と課題,保険診療と補完代替療法との区別などについて解説することとした。 2 サマリーの作成 対象となる補完代替療法について,「概要」「使用上の一般的な注意事項」「論文報告(エビデンス)における課題」「すでに一般的に知られている副作用や禁忌事項」をサマリーとしてまとめることとした。 3 臨床疑問の明確化 WPG 員間で議論し臨床疑問を抽出した後,下記のとおりに整理した。また,臨床疑問は,各施術・療法で共通とした。なお,文献報告数が多い施術・療法の場合,各臨床 4 作成手順 遠藤 光史越川病院緩和ケア科,東京医科大学病院緩和医療部兼 任講師該当なし 大坂 巌静岡県立静岡がんセンター緩和医療科部長講演料等:大鵬薬品工業株式会社,ヤンセンファーマ株式会社大津 史子名城大学薬学部教授〔外部委員〕該当なし岡 孝和九州大学大学院医学研究院心身医学准教授〔外部委員〕該当なし神里みどり沖縄県立看護大学・大学院看護学部教授該当なし儀賀 理暁埼玉医科大学総合医療センター緩和ケア推進室長・呼 吸器外科准教授該当なし 髙世 秀仁信愛報恩会信愛病院緩和ケア部長該当なし平井みどり神戸大学医学部附属病院教授・薬剤部長該当なし舛本真理子武蔵野赤十字病院腫瘍内科該当なし宮内 貴子山口大学医学部附属病院緩和ケアセンター副看護師長該当なし山口 佳之川崎医科大学臨床腫瘍学教授講演料等:中外製薬株式会社,小野薬品工業株式会社奨学(奨励)寄付金等:中外製薬株式会社,協和発酵キリン株式会社,小林製薬株式会社 (五十音順)
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I章序論 疑問にさらに小項目として詳細な臨床疑問を設定することも可能とした。なお,構造化抄録は本クリニカル・エビデンスには掲載しなかったが,臨床疑問の解説において個々の論文の概要がわかるように配慮して記載した。●臨床疑問1 がんに伴う身体症状を軽減するか? 1)痛 み2)消化器症状3)呼吸器症状4)泌尿器症状5)倦怠感6)睡眠障害7)その他●臨床疑問2 がんに伴う精神症状を軽減するか? 1)不 安2)抑うつ3)その他●臨床疑問3 全般的なQOL を改善するか? ●臨床疑問4 何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ●臨床疑問5 検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ●臨床疑問6 予後を改善するか? 1)全生存率(total mortality) 2)原因特異的死亡率(cause—specific mortality) 3) 無病生存率(disease—free survival),無増悪生存率(progression—free survival), 奏効率(tumor response rate) 4 文献検索の条件 米国国立医学図書館が運営するPubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed)を検索ツールとした。検索キーワードは,PubMed のMeSH の「Complementary Therapies」に掲載されている用語を原則として使用した。検索期間を2000 年1 月1 日~2014年12 月31 日に設定した。対象とする文献は,システマティックレビューおよび無作為化比較試験とした。なお,文献数が多く,質の高いシステマティックレビューがすでに存在している場合は,システマティックレビューのみを検索対象とした。各施術・療法の検索結果はサマリーに記載することとした。文献の検索,スクリーニング,採択の判断は担当WPG 員に任された。 (大野 智) 【文 献】1) Institute of Medicine. Clinical Practice Guidelines We Can Trust(March 23, 2011) https://iom.nationalacademies.org/Reports/2011/Clinical-Practice-Guidelines-We-Can-Trust.aspx 2) GRADE working group. http://www.gradeworkinggroup.org/index.htm 3) Haynes RB, Devereaux PJ, Guyatt GH. Physicians’ and patients’ choices in evidence based practice. BMJ 2002; 324: 1350
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1 補完代替医療の概要 II章 総 論
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西洋医学は,科学技術の発展と要素還元主義の方法論に基づき,さまざまな疾患について病因の分析や療法の開発に多大な貢献をもたらした。一方で,がん,アレルギー疾患,精神疾患のように,食事・運動などの生活習慣やストレスなどの社会環境など,さまざまな複合要因によって起こり得る疾患については,必ずしも容易に克服できていない状況が生じており,西洋医学だけではなく,健康食品,ヨガ,マッサージなどの各種民間療法が広く患者・国民に利用されているという実態がある。これら各種の施術・療法を含む医学・医療体系が「補完代替医療(ほかんだいたいいりょう)」と総称される。わが国においては,公的機関による補完代替医療の定義は,現時点(2016 年5 月)では存在しない。しかし,2010(平成22)年1 月29 日に鳩山内閣総理大臣(当時)が,施政方針演説において,健康寿命を延ばす観点から「統合医療」の積極的な推進について検討を進めることを掲げたことを受け,厚生労働省内に「統合医療プロジェクトチーム」が発足した。その第1 回会合(2010 年2 月5 日)の資料に以下のような記載がある1)。 1.統合医療とは○医療には,近代西洋医学以外に,伝統医学,自然療法,ホメオパチー,ハーブ (薬草),心身療法,芸術療法,音楽療法,温泉療法など多くのものがあり,これらを相補・代替医療(ComplementaryandAlternativeMedicine,CAM)とよんでいる。○これらの相補・代替医療を近代西洋医学に統合して,患者中心の医療を行うも のが統合医療である。 補足すると,英語表記の「complementaryandalternativemedicine」が,わが国では「相補・代替医療」「補完代替医療」などと訳され,日本語訳自体にばらつきがある。つまり,その混迷している状況そのものが,わが国の補完代替医療に対する取り組み姿勢の証左かもしれない。なお,本クリニカル・エビデンスにおいては,固有名詞など特に断りのない限り「補完代替医療」で統一する。また,各種施術・療法を指すときは「補完代替療法」とする。さらに,2012(平成24)年3 月26 日には,厚生労働省において『「統合医療」のあり方に関する検討会』が開催され,合計5 回の検討会で議論が行われた後,2013(平成25)年2 月22 日に「これまでの議論の整理」という資料が公表された2)。その資料に,西洋医学と組み合わせる療法の分類に関する一覧が掲載された(図2)。この資料によると,国家資格等,国の制度に組み込まれているものと,組み込まれていないものとを分類したうえで,各療法が列記されている。 1 補完代替医療(complementary and alternative medicine)とは? 1 補完代替医療の概要
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II章総論 がんの医療現場における補完代替療法の利用実態に関しては,2001 年に厚生労働省がん研究助成金による研究班が組織され,初めて全国規模の実態調査が行われた3)。その結果,以下のことが明らかとなった。・がん患者の約45%(1,382/3,100 人)が,1 種類以上の補完代替療法を利用している。・補完代替療法の利用にあたって,平均して月に5 万7 千円を出費している。・利用している内容は,健康食品・サプリメントが最も多く(96%),次いで気功(4%), 灸(4%),鍼(4%)となっている。・利用する主な目的は,がんの進行抑制(67%),治療(45%)となっている。・補完代替療法を利用している患者の5%が,副作用を経験したと回答している。・補完代替療法を利用している患者の57%は,十分な情報を得ていない。・補完代替療法を利用している患者の61%は,主治医に相談していない。・主治医から補完代替療法の利用について質問された患者は,16%しかいない。さらに,補完代替療法を利用していない患者であっても興味・関心をもっている患者は多く,利用している患者とあわせると8 割を超えることも報告されている4)。また, 2 補完代替療法の利用実態統合医療 療法の分類療法の例 国家資格等,国の制度に組み込まれているものその他 食や経口摂取に関するもの食事療法・サプリメントの一部(特別用途食品(特定保健用食品含む。),栄養機能食品)左記以外の食事療法・サプリメント・断食療法・ホメオパシー注)身体への物理的刺激を伴うものはり・きゅう(はり師,きゅう師)温熱療法,磁器療法手技的行為を伴うものマッサージの一部(あん摩マッサージ指圧師),骨つぎ・接骨(柔道整復師)左記以外のマッサージ,整体,カイロプラクティック感覚を通じて行うもの―アロマテラピー,音楽療法環境を利用するもの―温泉療法,森林セラピー身体の動作を伴うもの―ヨガ,気功動物や植物との関わりを利用するもの―アニマルセラピー,園芸療法伝統医学,民族療法漢方医学の一部(薬事承認されている漢方薬)左記以外の漢方医学,中国伝統医学,アーユルベーダ注)日本学術会議(平成22 年8 月24 日)において,「ホメオパシーの治療効果は科学的 に明確に否定されている」との会長談話が出されている。 近代西洋医学組合せ(補完・一部代替) 図2 近代西洋医学と組み合わせる療法の分類について上記は,平成22 年度厚生労働科学研究「統合医療の情報発信等の在り方に関する調査研究」で採り上げられた療法について,効果の有無を問わず整理したものである。 (厚生労働省.「統合医療」のあり方に関する検討会資料,2013 年2 月22 日2)より引用)
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患者が補完代替療法を利用するきっかけとしては,「家族・知人からの勧め」が最も多く3),患者だけではなく,その家族や知人に対しても,適切な情報提供が必要と考えられる。 同じく厚生労働省がん研究助成金による研究班によって,がん患者の診療にあたっている医師(n=751)の補完代替医療に関する意識調査も行われている5)。漢方,健康食品(サプリメント),鍼,カイロプラクティック,アロマテラピー,ホメオパシー,温泉療法,イメージ療法,ヨガ,タラソテラピー,催眠療法について,それぞれ「知識をもっているか」との問いに対して,漢方を除くその他種々の補完代替療法について,75~90%の医師が「知識はない」と回答している。補完代替療法を患者に実施・施行している医師も,漢方を除くと,0~1.5%とごくわずかであった。また82%が,がんで使用される健康食品類には有効性はないと考え,84%の臨床腫瘍医が抗がん剤との相互作用を危惧していると回答している。 (大野 智) 【文 献】 1) 厚生労働省.統合医療に対する厚生労働省の取組について(統合医療プロジェクトチーム第1 回会合資料),2010 年2 月5 日 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0205-17a.pdf 2) 厚生労働省.これまでの議論の整理(「統合医療」のあり方に関する検討会資料),2013 年2 月22 日 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002vsub-att/2r9852000002vsy2.pdf 3) HyodoI,AmanoN,EguchiK,etal.Nationwidesurveyoncomplementaryandalternativemedicine incancerpatientsinJapan.JClinOncol2005;23:2645-54 4) HiraiK,KomuraK,TokoroA,etal.Psychologicalandbehavioralmechanismsinfluencingtheuse ofcomplementaryandalternativemedicine(CAM)incancerpatients.AnnOncol2008;19:49-55 5) HyodoI,EguchiK,NishinaT,etal.Perceptionsandattitudesofclinicaloncologistsoncomplemen- taryandalternativemedicine:anationwidesurveyinJapan.Cancer2003;97:2861-8 3 医療者の認識
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1 健康食品 2 マッサージ 3 アロマテラピー・マッサージ 4 運動療法 5 ホメオパシー 6 アニマルセラピー 7 リラクセーション 8 音楽療法 9 鍼灸治療 ⓾ ヨ ガ III章 各 論:クリニカル・エビデンス
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健康食品とは,法律上の定義はなく,「広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されているもの全般」を指している。そのうち,国の制度としては,「保健機能食品制度」がある(図3)。[保健機能食品]・特定保健用食品(個別許可制)・栄養機能食品(自己認証制)・機能性表示食品(届出制) 健康食品は,医薬品のような疾病の治療・予防等を目的とする表示や,身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的とする表示,つまり効能効果に関する表示はできない。健康食品に関する詳しい情報は下記のホームページを参照。・厚生労働省:「健康食品」のホームページ http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/index.html 1 サマリー 1 健康食品の概要 1 健康食品 一般食品※機能性の表示ができない 栄養補助食品,健康補助食品,栄養調整食品といった表示で販売されている食品は一般食品です。・・・・ ※機能性の表示ができる・・・ 医薬部外品 医薬品食品 保健機能食品特定保健用食品 栄養機能食品 機能性表示食品 図 3 保健機能食品の分類 (消費者庁『「機能性表示食品」って何?』より引用,http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1442.pdf)
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III章各論:クリニカル・エビデンス ・東京都福祉保健局:健康食品ナビ http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/anzen/supply/・国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報 https://hfnet.nih.go.jp/・厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業:「統合医療」情報発信サイト http://www.ejim.ncgg.go.jp/・内閣府食品安全委員会:「健康食品」に関する情報 https://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.html ・市場に流通している健康食品は製品ごとの品質にばらつきがある。・健康食品に未承認医薬品が混入しているケースがある。・健康食品と医薬品との相互作用について注意を要する。・健康食品による副作用(消化器症状,アレルギー症状など)について注意を要する。・法外な金額で販売されている製品がある。 なお,2015(平成27)年12 月8 日に内閣府食品安全委員会が健康食品について,下記のメッセージを公表している。「食品」であっても安全とは限りません。・健康被害のリスクはあらゆる食品にあります。身近な「健康食品」にも健康被 害が報告されています。・「天然」「ナチュラル」「自然」のものが,安全であるとは限りません。これは食 品全般に言えることです。・栄養素や食品についての評価は,食生活の変化や科学の進展などにより変わる ことがあります。健康に良いとされていた成分や食品が,その後,別の面から健康を害するとわかることも少なくありません。多量に摂ると健康を害するリスクが高まります。・錠剤・カプセル・粉末・顆粒の形態のサプリメントは,通常の食品よりも容易 に多量を摂ってしまいやすいので注意が必要です。ビタミン・ミネラルをサプリメントで摂ると過剰摂取のリスクがあります。・現在の日本では,通常の食事をしていればビタミン・ミネラルの欠乏症が問題 となることはまれであり,ビタミン・ミネラルをサプリメントで補給する必要性を示すデータは今のところありません。健全な食生活が健康の基本です。・むしろサプリメントからの摂り過ぎが健康被害を起こすことがあります。特に セレン,鉄,ビタミンA,ビタミンD には要注意です。「健康食品」は医薬品ではありません。品質の管理は製造者任せです。・病気を治すものではないので,自己判断で医薬品から換えることは危険です。・品質が不均一,表示通りの成分が入っていない,成分が溶けないなど,問題あ る製品もあります。成分量が表示より多かったために健康被害を起こした例があります。 2 使用上の一般的な注意事項
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誰かにとって良い「健康食品」があなたにとっても良いとは限りません。・摂取する人の状態や摂取量・摂取期間によって,安全性や効果も変わります。・限られた条件での試験,動物や細胞を用いた実験のみでは効果の科学的な根拠 にはなりません。口コミや体験談,販売広告などの情報を鵜呑みにせず,信頼のできる情報※をもとに,今の自分とって,本当に安全なのか,役立つのかを考えてください。※食品安全委員会,国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報,厚生労働省のインター ネットサイトなど また,すでに利用しているあるいは今後利用する健康食品があれば,「摂取期間」「摂取量」をメモなどの形で記録することも健康被害との因果関係を確認するために重要となる。メモの例は下記を参照のこと。・厚生労働省医薬食品局食品安全部:健康食品の正しい利用法 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf ・システマティックレビューにおいて,無作為化比較試験以外にもコホート研究,症例 対照研究の論文を対象としているものがある。・文献的考察のみを行ったレビュー論文が多い。・メタアナリシスにて評価されている論文が少ない。・臨床試験ごとに健康食品の素材の原材料,投与方法,投与量,投与期間などに違いが あり,メタアナリシスを行ううえで異質性への問題になっている。 前述の「2.使用上の一般的な注意事項」を参照。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Dietarysupplements」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年6 月1 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:140 件 DietarysupplementsAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta—analysis[pt]ORmeta— analysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] 3 論文報告(エビデンス)における課題 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
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III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 21 件 PubMed:140 件 抄録を用いたスクリーニングで108 件除外・対象者ががん以外:106 件・健康食品単独以外:0 件・その他:2 件 本文を用いたスクリーニングで11 件除外・対象者ががん以外:3 件・健康食品単独以外:0 件・その他:8 件 32 件
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1 痛 み 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 5 倦怠感 現時点で,本臨床疑問に限定したシステマティックレビューの報告はない。悪液質に関連する内容については,後述の「7)その他」を参照。 6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 7 その他 1 )体重減少本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Baldwin ら1)によるシステマティックレビューでは,栄養指導などの介入による12 件の無作為化比較試験のメタアナリシスでmeandifference(MD):1.86kg〔95%信頼区間(CI):0.25~3.47〕と体重増加を認めたが異質性が高かったため(I2=76%),7 件の無作為化比較試験で再解析(I2=0%)した結果,MD:0.31(95%CI:-0.60~1.21)と統計学的有意差はなくなった。Meji ら2)によるシステマティックレビューでは,ω—3 脂肪酸を用いた7 件の無作為化比較試験のうち3 件において体重増加を認めたが,4 件においてはプラセボと比較して統計学的有意差を認めなかった。以上より,栄養学的介入およびω—3 脂肪酸が,がん患者における体重減少の改善に有用であるとは結論づけられない。 2 )悪液質本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ries ら3)によるシステマティックレビューでは,3 件のシステマティックレビュー,27件の臨床試験(無作為化比較試験 10 件,比較臨床試験/ケースシリーズ 11 件,用量設 2 臨床疑問 健康食品は,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問1‒1
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III章各論:クリニカル・エビデンス 定試験4 件,その他2 件)にて,主にω‒3 脂肪酸による悪液質への影響について文献的考察を行っている。その結果,小規模の無作為化比較試験や比較臨床試験/ケースシリーズなどでは有効性が示唆されたものの,大規模の無作為化比較試験では有効性が確認できなかったとしている。有害事象については,腹部不快感,魚臭の噯気(げっぷ),魚の後味,悪心,下痢などの報告があったとされるが,重篤なものはなかったとしている。また,当該報告はEuropean Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)による悪液質ガイドライン計画の一環として取り組まれており,そのため著者らは,結論としてω‒3 脂肪酸の悪液質に対する推奨度を“weak negative GRADE recommendation”としている。Colomer ら4)によるシステマティックレビューでは,18 件の臨床試験(無作為化比較試験 9 件,比較臨床試験 9 件)にて,主にω‒3 脂肪酸による悪液質への影響について文献的考察を行っている。その結果,1.5 g/日超のω‒3 脂肪酸〔エイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)〕投与は悪液質の病態,症状の改善に寄与する可能性があることを示唆している。しかしながら,いずれのシステマティックレビューもメタアナリシスは行われていない。以上より,ω‒3 脂肪酸が,がん患者の悪液質を改善するとは結論づけられない。 1 不 安 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 抑うつ 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Baldwin ら1)によるシステマティックレビューでは,栄養指導などの介入による9 件の無作為化比較試験のメタアナリシスで,European Organization for Research and Treatment of Cancer global quality of life scale を用いたQOL 評価においてMD:24.02 (95%CI:14.3~33.72)と改善を認めたが,異質性が高かったため(I2=98%),5 件の無作為化比較試験で再解析(I2=27%)した結果,MD:5.53(95%CI:0.73~10.33)とMDは小さくなったものの統計学的有意差が認められた。以上より,栄養指導などの介入は,がん患者の全般的なQOL を改善する可能性がある。 健康食品は,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問1‒2 健康食品は,全般的なQOL を改善するか? ▶ ▶臨床疑問1‒3
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本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Alsanad ら5)によるシステマティックレビューでは,健康食品と医薬品との相互作用について検討した5 件の論文から,がん患者806 例のうち433 例(53.7%)が健康食品と医薬品を併用しており,その相互作用のリスクについては可能性のあるものを含め60例(13.9%)において167 件であることが明らかとされた。健康食品としては,ニンニク,緑茶,ヤドリギ,中国ハーブ,鉄,セント・ジョーンズ・ワート,ショウガ,朝鮮人参などが医薬品との相互作用に注意すべき素材として挙げられた。以上より,日常診療において患者の健康食品の使用状況を積極的に聴取するとともに,医薬品との相互作用にも留意することが求められる。 1 消化器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが6 件ある。Touchefeu ら6)によるシステマティックレビューでは,7 件の無作為化比較試験にて,治療中(放射線治療5 件,化学療法2 件)の患者へのプロバイオティクス投与による下痢改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,5 件(放射線治療3 件,化学療法2 件)において下痢の頻度,重症度を改善することが示唆されている。Henson ら7)によるシステマティックレビューでは,4 件の無作為化比較試験にて,放射線治療中の患者への栄養学的介入(脂肪,ラクトース,食物繊維の調整)による下痢改善への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,下痢のリスクは0.66 (95%CI:0.51~0.87,n=413,I2=14%)と低減した。ただし,晩期症状への影響については検討がなされていない。Ben‒Arye ら8)によるシステマティックレビューでは,放射線治療,化学療法中の患者への栄養学的介入(グルタミン3 件,メラトニン1 件,プロバイオティクス2 件)による下痢改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタミンで1 件,メラトニンで0 件,プロバイオティクスで2 件であった。Wedlake ら9)によるシステマティックレビューでは,16 件の無作為化比較試験にて,放射線治療中の患者への栄養学的介入(食事成分の調整4 件,脂肪調整4 件,食物繊維調整2 件,ラクテート減量1 件,プロバイオティクス5 件)による消化器症状(IBDQ, CTC,Bristol Stool,RTOG にて評価)改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,食事成分の調整で1 件,脂肪調整で3 件,食物繊維調整で1 件,ラクテート減量で0 件,プロバイオティクスで4 件であった。Gibson ら10)によるシステマティックレビューでは,放射線治療,化学療法で誘発される消化管の粘膜障害改善への影響に関して,網羅的に文献検索を行い,251 件の臨床研究で29 種類の介入(医薬品も含む)について文献的考察を行っている。その結果,健康食品については,放射線治療,化学療法による下痢予防に関して乳酸菌などのプロバイ 健康食品は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶ ▶臨床疑問1‒4 健康食品は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問1‒5
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III章各論:クリニカル・エビデンス オティクスが有効であること,放射線治療による直腸炎予防に関して高圧酸素療法が有効であることが示唆されている。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,4 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン1 件,メラトニン1 件,N‒アセチルシステイン1 件,セレン1 件)による下痢改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,いずれの研究においても統計学的有意差は認められなかった。以上より,プロバイオティクスは,がん患者の放射線治療に伴う下痢を軽減する可能性がある。 2 末梢神経障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Ben‒Arye ら8)によるシステマティックレビューでは,化学療法中の患者への栄養学的介入(ビタミンE 5 件,グルタミン1 件,グルタチオン5 件,メラトニン1 件)による末梢神経障害予防への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,ビタミンE で4 件,グルタミンで0 件,グルタチオンで3件,メラトニンで1 件であった。Schloss ら12)によるシステマティックレビューでは,化学療法で誘発される末梢神経障害改善への影響に関して,23 件の臨床研究で9 種類の介入(Mg とCa,ビタミンE,リポ酸,N‒アセチルシステイン,グルタチオン,グルタミン,アセチル‒L‒カルニチン,ビタミンB6,ω‒3 脂肪酸)について文献的考察を行っている。その結果,化学療法で誘発される末梢神経障害改善を推奨するだけの確固たる根拠は得られなかったとしている。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,18 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン9 件,メラトニン5 件,ビタミンE 3 件,混合物1 件,N‒アセチルシステイン1 件)による末梢神経障害改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタチオンで6 件,メラトニンで4 件,ビタミンE で3 件,混合物で0 件,N‒アセチルシステインで1 件であったがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品が,がん患者の化学療法で誘発される末梢神経障害を軽減するとは結論づけられない。 3 体重減少 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが5 件ある。Kiss ら13)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への栄養学的介入(カロリーや栄養素について調整した食事指導)による体重減少改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,いずれの試験においても介入群と対照群で統計学的有意差は認められなかったとしている。また,同じKiss ら13)によるシステマティックレビューにおいて,1 件のヒストリカルコントロール研究にて,放射線治療中の患者への栄養学的介入による体重減少改善について効果を認めたとしている(介入群vs 対照群:-0.56 kg vs -3.9 kg,p=0.027)。Henson ら7)によるシステマティックレビューでは,2 件の無作為化比較試験にて,放射線治療中の患者への栄養学的介入による体重減少改善への影響についてメタアナリシ
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スを行っている。その結果,介入群と対照群との間でMD:-0.57 kg(95%CI:-1.22~ 0.09,n=235,I2=29%)と統計学的有意差を認めなかった。Langius ら14)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,放射線化学療法中の頭頸部腫瘍患者への栄養学的介入(個別栄養指導vs 指導なし)による体重減少改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は2 件であった。Garg ら15)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,放射線治療中の頭頸部腫瘍患者への栄養学的介入(サスタカル®,エンシュア®,栄養指導)による体重減少改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は2 件(エンシュア®,栄養指導)であった。しかし,3 件のシステマティックレビューいずれにおいても,いわゆる健康食品を用いた臨床試験は対象となっていない。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン1 件,メラトニン2 件)による体重減少改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,すべての報告において改善することが示唆されたがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品が,がん患者の放射線治療あるいは化学療法中における体重減少の改善に有用であるとは結論づけられない。 4 術後合併症 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Elia ら16)によるシステマティックレビューでは,がん治療を目的とした手術において非経口栄養と比較して経腸栄養が,入院期間(無作為化比較試験 8 件),術後合併症(無作為化比較試験 4 件),術後感染症(無作為化比較試験 12 件),敗血症(無作為化比較試験 2 件)へ与える影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,入院期間(1.72 日短縮,95%CI:0.90~2.54),術後合併症(オッズ比:0.62,95%CI:0.50~0.77),術後感染症(オッズ比:0.69,95%CI:0.57~0.85),敗血症(敗血症スコア2.21 減少, 95%CI:1.49~2.92)と改善を認めた。He ら17)によるシステマティックレビューでは,大腸がんに対する待機手術の周術期においてプロバイオティクスあるいはシンバイオティクス投与が,下痢(無作為化比較試験 2 件),腸閉塞症状(無作為化比較試験 2 件),入院期間(無作為化比較試験 2 件),術後感染症(無作為化比較試験 4 件),術後肺炎(無作為化比較試験 3 件),敗血症(無作為化比較試験 2 件),創部感染(無作為化比較試験 4 件)に与える影響についてメタアナリシスを行っている(対照群は,ネオマイシン+術前腸管処置,経腸栄養,マルトデキストリンなど文献によって異なる)。その結果,下痢(オッズ比:0.29,95%CI: 0.14~0.62),腸閉塞症状(オッズ比:0.39,95%CI:0.19~0.78),術後感染症(オッズ比:0.39,95%CI:0.22~0.58),術後肺炎(オッズ比:0.32,95%CI:0.11~0.93)で改善を認めたものの,入院期間(MD:-1.06,95%CI:-2.71~0.60),敗血症(オッズ比: 0.28,95%CI:0.03~2.74),創部感染(オッズ比:0.66,95%CI:0.30~1.19)では改善は認めなかった。しかし,いずれの試験においても,いわゆる健康食品を用いた臨床試験は対象となっていない。以上より,健康食品が,がん患者の術後合併症を軽減するとは結論づけられない。
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III章各論:クリニカル・エビデンス 5 QOL 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Kiss ら13)によるシステマティックレビューでは,2 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への栄養学的介入(カロリーや栄養素について調整した食事指導)によるQOL 改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,いずれの試験においても介入群と対照群で統計学的有意差は認められなかったとしている。また,同じKissら13)によるシステマティックレビューにおいて,1 件のケースシリーズにて,放射線治療中の患者への栄養学的介入によるQOL 改善について一部の患者において効果を認めたとしている。Langius ら14)によるシステマティックレビューでは,2 件の無作為化比較試験にて,放射線化学療法中の頭頸部腫瘍患者への栄養学的介入(個別栄養指導vs 指導なし)によるQOL〔European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire‒C30(EORTC QLQ‒C30)にて評価〕改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,2 件とも有効性が示唆された。しかし,いわゆる健康食品を用いた臨床試験は対象となっていない。以上より,健康食品が,治療中におけるがん患者のQOL 改善に有用であるとは結論づけられない。 6 口腔粘膜障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ben‒Arye ら8)によるシステマティックレビューでは,化学療法中の患者への栄養学的介入(ビタミンE 1 件,グルタミン 14 件)による口腔粘膜障害予防あるいは改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,ビタミンE で1 件,グルタミンで7 件であったがメタアナリシスは行われていない。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,4 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン1 件,メラトニン2 件,ビタミンE 1 件)による体重減少改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタチオンで1 件,メラトニンで1 件,ビタミンE で1 件であったがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品が,がん患者の化学療法による口腔粘膜障害の予防あるいは軽減に有用であるとは結論づけられない。 7 血球減少 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,4 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン1 件,メラトニン5 件,エラグ酸1 件,N‒アセチルシステイン1 件,セレン1 件)による血球減少改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタチオンで1 件,メラトニンで3 件,エラグ酸で1 件,N‒アセチルシステインで0 件(※介入群のほうが血球減少が多い傾向。統計学的有意差なし),セレンで1 件であったがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品が,がん患者の化学療法による血球減少の予防あるいは軽減に有
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用であるとは結論づけられない。 1 全生存率(total mortality) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Harris ら18)によるシステマティックレビューでは,5 件の無作為化比較試験にて,乳がん患者(診断後)へのビタミンC サプリメント投与による全生存率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡の相対リスクは0.81(95%CI:0.72~ 0.91,n=13,203)であった。Baldwin ら1)によるシステマティックレビューでは,がん患者への栄養指導などの介入による15 件の無作為化比較試験でメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡率のリスク比は,1.06(95%CI:0.92~1.22,I2=0%)と統計学的有意差を認めなかった。Buttigliero ら19)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,進行前立腺がん患者へのビタミンD サプリメント投与による全死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡率のリスク比は1.07(95%CI:0.93~ 1.23,異質性:高)であった。Davies ら20)によるシステマティックレビューでは,がん患者への健康的な食生活の指導(無作為化比較試験 7 件),抗酸化サプリメント投与(無作為化比較試験 7 件),レチノール投与(無作為化比較試験 4 件)による全死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡のオッズ比は,健康的な食生活の指導で0.90(95%CI: 0.46~1.77,I2=18.6%),抗酸化サプリメント投与で1.01(95%CI:0.88~1.15,I2=0.0%),レチノール投与で0.97(95%CI:0.83~1.13,I2=0.0%)であった。以上より,健康食品の一部(ビタミンC)が,がん患者の全生存率の改善に寄与する可能性が示唆されるものの,今後さらなる研究が求められる。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Harris ら18)によるシステマティックレビューでは,6 件の無作為化比較試験にて,乳がん患者(診断後)へのビタミンC サプリメント投与による乳がん特異的死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡の相対リスクは0.85(95% CI:0.74~0.99,n=13,423)であった。Davies ら20)によるシステマティックレビューでは,がん患者への健康的な食生活の指導(無作為化比較試験 3 件),抗酸化サプリメント投与(無作為化比較試験 2 件),レチノール投与(無作為化比較試験 3 件)によるがん特異的死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,がん特異的死亡率のオッズ比は,健康的な食生活の指導で0.53(95%CI:0.16~1.79,I2=0.0%),抗酸化サプリメント投与で0.81(95%CI: 0.39~1.71,I2=70.1%),レチノール投与で0.92(95%CI:0.65~1.31,I2=0.0%)であった。以上より,健康食品の一部(ビタミンC)が,がん患者の原因特異的死亡率の改善に寄与する可能性が示唆されるものの,今後さらなる研究が求められる。 健康食品は,予後を改善するか? ▶ ▶臨床疑問1‒6
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III章各論:クリニカル・エビデンス 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Posadzki ら21)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者を対象とした8件の無作為化比較試験にて,さまざまな栄養素(カルチトリオール,ゲニステイン・ダイゼイン,ビタミンB 群,ビタミンC,ビタミンE,コエンザイムQ10,セレン,緑茶抽出物,イソフラボン,リコピン,亜鉛など)による腫瘍マーカー(prostatespecific antigen;PSA)への影響について文献的考察を行っている。その結果,これらの健康食品がPSA を低下させることを支持するエビデンスはないと結論づけている。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,17 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント併用(グルタチオン7 件,メラトニン5 件,ビタミンE 1 件,混合物2 件,エラグ酸1 件,N—アセチルシステイン1 件)による奏効率への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタチオンで3 件,メラトニンで3 件,ビタミンE で0 件,混合物で0 件,エラグ酸で0 件,N—アセチルシステインで1 件であったがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品の一部が,がん患者の化学療法の奏効率改善に寄与する可能性が示唆されるものの,今後さらなる研究が求められる。 (大野 智) 【文 献】 1) BaldwinC,SpiroA,AhernR,etal.Oralnutritionalinterventionsinmalnourishedpatientswith cancer:asystematicreviewandmeta-analysis.JNatlCancerInst2012;104:371-85 2) vanderMeijBS,vanBokhorst-devanderSchuerenMA,LangiusJA,etal.n-3PUFAsincancer, surgery,andcriticalcare:asystematicreviewonclinicaleffects,incorporation,andwashoutof oralorenteralcomparedwithparenteralsupplementation.AmJClinNutr2011;94:1248-65 3) RiesA,TrottenbergP,ElsnerF,etal.Asystematicreviewontheroleoffishoilforthetreatment ofcachexiainadvancedcancer:anEPCRCcachexiaguidelinesproject.PalliatMed2012;26:294- 304 4) ColomerR,Moreno-NogueiraJM,García-LunaPP,etal.N-3fattyacids,cancerandcachexia:a systematicreviewoftheliterature.BrJNutr2007;97:823-31 5) AlsanadSM,WilliamsonEM,HowardRL.Cancerpatientsatriskofherb/foodsupplement-drug interactions:asystematicreview.PhytotherRes2014;28:1749-55 6) TouchefeuY,MontassierE,NiemanK,etal.Systematicreview:theroleofthegutmicrobiotain chemotherapy-orradiation-inducedgastrointestinalmucositis-currentevidenceandpotential clinicalapplications.AlimentPharmacolTher2014;40:409-21 7) HensonCC,BurdenS,DavidsonSE,etal.Nutritionalinterventionsforreducinggastrointestinal toxicityinadultsundergoingradicalpelvicradiotherapy.CochraneDatabaseSystRev2013;11: CD009896 8) Ben-AryeE,PolliackA,SchiffE,etal.Advisingpatientsontheuseofnon-herbalnutritionalsupplementsduringcancertherapy:aneedfordoctor-patientcommunication.JPainSymptomManage2013;46:887-96 9) WedlakeLJ,ShawC,WhelanK,etal.Systematicreview:theefficacyofnutritionalinterventions tocounteractacutegastrointestinaltoxicityduringtherapeuticpelvicradiotherapy.Aliment PharmacolTher2013;37:1046-56 10) GibsonRJ,KeefeDM,LallaRV,etal;MucositisStudyGroupoftheMultinationalAssociationof SupportiveCareinCancer/InternationalSocietyofOralOncology(MASCC/ISOO).Systematic
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reviewofagentsforthemanagementofgastrointestinalmucositisincancerpatients.Support CareCancer2013;21:313-26 11) BlockKI,KochAC,MeadMN,etal.Impactofantioxidantsupplementationonchemotherapeutic toxicity:asystematicreviewoftheevidencefromrandomizedcontrolledtrials.IntJCancer 2008;123:1227-39 12) SchlossJM,ColosimoM,AireyC,etal.Nutraceuticalsandchemotherapyinducedperipheralneuropathy(CIPN):asystematicreview.ClinNutr2013;32:888-93 13) KissNK,KrishnasamyM,IsenringEA.Theeffectofnutritioninterventioninlungcancerpatients undergoingchemotherapyand/orradiotherapy:asystematicreview.NutrCancer2014;66:47-56 14) LangiusJA,ZandbergenMC,EerensteinSE,etal.Effectofnutritionalinterventionsonnutritional status,qualityoflifeandmortalityinpatientswithheadandneckcancerreceiving(chemo) radiotherapy:asystematicreview.ClinNutr2013;32:671-8 15) GargS,YooJ,WinquistE.Nutritionalsupportforheadandneckcancerpatientsreceivingradiotherapy:asystematicreview.SupportCareCancer2010;18:667-77 16) EliaM,VanBokhorst-devanderSchuerenMA,GarveyJ,etal.Enteral(oralortubeadministration)nutritionalsupportandeicosapentaenoicacidinpatientswithcancer:asystematicreview. IntJOncol2006;28:5-23 17) HeD,WangHY,FengJY,etal.Useofpro-/synbioticsasprophylaxisinpatientsundergoing colorectalresectionforcancer:ameta-analysisofrandomizedcontrolledtrials.ClinResHepatol Gastroenterol2013;37:406-15 18) HarrisHR,OrsiniN,WolkA.VitaminCandsurvivalamongwomenwithbreastcancer:ametaanalysis.EurJCancer2014;50:1223-31 19) ButtiglieroC,MonaghedduC,PetroniP,etal.PrognosticroleofvitaminDstatusandefficacyof vitaminDsupplementationincancerpatients:asystematicreview.Oncologist2011;16:1215-27 20) DaviesAA,DaveySmithG,HarbordR,etal.Nutritionalinterventionsandoutcomeinpatients withcancerorpreinvasivelesions:systematicreview.JNatlCancerInst2006;98:961-73 21) PosadzkiP,LeeMS,OnakpoyaI,etal.Dietarysupplementsandprostatecancer:asystematic reviewofdouble-blind,placebo-controlledrandomisedclinicaltrials.Maturitas2013;75:125-30
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III章各論:クリニカル・エビデンス マッサージとは,主に手を用いて身体表面に「さする」「もむ」「圧する」などの物理的刺激を与え,生体の変調を整える方法である。ヨーロッパで発達したリフレクソロジー,日本の按摩や指圧,インドのヘッドマッサージなど,世界各地でさまざまな種類のマッサージが存在する。マッサージの手技として軽擦法,強擦法,揉捏法,振動法,叩打法,圧迫法などがある。マッサージの作用機序として,多くの仮説が提示されており,主に,1疼痛軽減のゲートコントロール理論,2副交感神経の活動の増加,3セロトニンとエンドルフィンの増加,4血流量の増加,5リンパ循環の改善,6信頼関係の構築,などが挙げられている。これらの仮説は十分に検証されていないが,マッサージはがん患者の痛みや不安などの苦痛症状を軽減するために,主に緩和ケア病棟などで活用されている。 ・通常のがん治療の代用として使用すべきでない。・熟練したセラピストが行えば,安全で最大の効果が得られる。・凝固障害,転移性骨腫瘍の場合は,軽い圧力(やさしくなでるなど)で行う。・炎症部位,出血傾向,開放創,放射線皮膚炎の場合は,その部位への直接的なマッサー ジを避ける。 ・サンプルサイズに限界があり,大規模の無作為化比較試験が少ない。・がん患者の背景が臨床試験ごとに異なる。・マッサージの部位,手技,強度,時間,頻度,期間など,介入方法が臨床試験ごとに 異なる。・長期的な介入が少なく短期的介入が多い。・比較対照の設定が臨床試験ごとに異なる。・評価方法(測定尺度など)が多様で臨床試験ごとに異なる。・マッサージの専門家による相違が検討されていない。・盲検化が困難である。 1 サマリー 1 マッサージの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 2 マッサージ
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マッサージによる副作用として,凝固障害時(血小板減少,ワルファリン,ヘパリン,アスピリン療法)の出血,転移性骨腫瘍時の骨折,開放創,放射線皮膚炎時の痛みの増加,感染が出現する可能性があるので留意する。その他,一般的に,急性炎症症状(筋肉や関節,皮膚疾患など)が現れている部位への手技,衰弱や消耗性の疾患,心臓疾患や動脈硬化症,静脈血栓症,骨折や靱帯などの損傷部位,その他伝染性の疾患に対しては禁忌である。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Massage」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年9 月11 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:24 件 MassageAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti]OR systematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件 4 件 PubMed:24 件 5 件抄録を用いたスクリーニングで19 件除外・対象者ががん以外:4 件・マッサージ単独以外:12 件・アロマテラピー・マッサージ:3 件 本文を用いたスクリーニングで1 件除外・アロマテラピー・マッサージ:1 件
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III章各論:クリニカル・エビデンス 1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,痛み(4 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Kim ら2)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(1 件は化学療法中)を対象としたリフレクソロジーの介入効果に関する無作為化比較試験(1 件)と比較臨床試験(3 件)の計4 件(281 例:範囲28~183 例)の文献的考察を行っている。その結果, 1 件の大規模な無作為化比較試験で,リフレクソロジー介入群は対照群と比較して,痛みの軽減に有効であった。リフレクソロジーの介入時間は1 回20~60 分,期間は1 回~ 8 週間であった。Lee ら3)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(化学療法,放射線治療中を含む)を対象に,マッサージの介入効果に関する6 件(250 例:範囲6~115 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,1 件のみ痛みの軽減に有効であったが,他の1 件は有効でなかった。大規模な無作為化比較試験(1 件)では身体症状の苦痛の軽減がみられた。マッサージの介入時間は10~30 分,期間は3 日~5 週間であった。マッサージ方法はスウェーデン式(3件)とエフルラージュ(2 件),バックストローク(1 件)であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージの介入効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,痛み(4 件)の軽減には有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者の痛みの軽減に有用かもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 2 消化器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,悪心(2 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間 2 臨床疑問 マッサージは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問2‒1
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は1 日~8 週間であった。Kim ら2)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(1 件は化学療法中)を対象としたリフレクソロジーの介入効果に関する無作為化比較試験(1 件)と比較臨床試験(3 件)の計4 件(281 例:範囲28~183 例)の文献的考察を行っている。その結果, 1 件の大規模な無作為化比較試験で,リフレクソロジー介入群は対照群と比較して,悪心・嘔吐の軽減に有効であった。リフレクソロジーの介入時間は1 回20~60 分,期間は1 日~8 週間であった。以上より,マッサージは,がん患者の悪心・嘔吐の軽減に有用かもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,倦怠感(1 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージ効果をみた18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,倦怠感(5 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるかもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 7 その他(コルチゾール) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージ効果をみた18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,コルチゾール(4 件)の改善には有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど
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III章各論:クリニカル・エビデンス 多様であった。以上より,マッサージは,がん患者のコルチゾールの改善に有用ではない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,不安(5 件),抑うつ(3 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Lee ら3)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(化学療法,放射線治療中を含む)を対象にマッサージの介入効果に関する6 件(250 例:範囲6~115 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,2 件が抑うつの軽減に効果があり,3 件は効果なしであった。不安の軽減効果として,1 件のみ短期間の不安の軽減がみられたが2 件は効果なしであった。マッサージの介入時間は1回10~30分,期間は3日~5週間であった。マッサージ方法はスウェーデン式(3 件)とエフルラージュ(2 件),バックストローク(1 件)であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージの介入効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,抑うつ(8 件),不安(8 件)の軽減に有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~ 6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者の不安や抑うつの軽減に有用であるかもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 2 その他(ストレス,怒り) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,ストレス(2 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージ効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,怒り(4 件)の軽減には有 マッサージは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問2‒2
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効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者のストレスの軽減に有用であるかもしれないが,怒りに関しては有用ではない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,QOL(1 件)の改善に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Kim ら2)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(1 件は化学療法中)を対象としたリフレクソロジーの介入効果に関する無作為化比較試験(1 件)と比較臨床試験(3 件)の計4 件(281 例:範囲28~183 例)の文献的考察を行っている。その結果, 1 件の大規模無作為化比較試験で,リフレクソロジー介入群は対照群と比較して,QOLの改善に有効であった。リフレクソロジーの介入時間は1 回20~60 分,期間は1 日~8週間であった。Lee ら3)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(化学療法,放射線治療中を含む)を対象にマッサージの介入効果に関する6 件(250 例:範囲6~115 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,QOL として,1 件は痛みや乳がん患者の症状緩和に効果があったが,残りの1 件は効果がなかった。マッサージの介入時間は10~30 分,期間は3 日~5 週間であった。マッサージ方法はスウェーデン式(3 件)とエフルラージュ(2 件),バックストローク(1 件)であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージの介入効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,QOL(3 件)の改善には有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者のQOL の改善に有用であるかもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 マッサージは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問2‒3
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III章各論:クリニカル・エビデンス 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージの介入効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,上肢リンパ浮腫(3件)の改善に有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者のリンパ浮腫の軽減に有用ではない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (神里みどり,宮内貴子) 【文 献】 1) ErnstE.Massagetherapyforcancerpalliationandsupportivecare:asystematicreviewofrandomisedclinicaltrials.SupportCareCancer2009;17:333-7 2) KimJI,LeeMS,KangJW,etal.Reflexologyforthesymptomatictreatmentofbreastcancer:a systematicreview.IntegrCancerTher2010;9:326-30 3) LeeMS,LeeEN,ErnstE.Massagetherapyforbreastcancerpatients:asystematicreview.Ann Oncol2011;22:1459-61 4) PanYQ,YangKH,WangYL.Massageinterventionsandtreatment-relatedsideeffectsofbreast cancer:asystematicreviewandmeta-analysis.IntJClinOncol2014;19:829-41 マッサージは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問2‒4 マッサージは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問2‒5 マッサージは,予後を改善するか? ▶臨床疑問2‒6
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アロマテラピー(アロマセラピー)は植物の花,葉,種子,果皮,樹脂などから抽出された精油(エッセンシャルオイル)を用いて,疾病の治療や予防,心身の健康やリラクセーション,ストレスの解消などを目的とする療法である。精油を使った医療は,アラビアや欧州で昔から行われている伝統医学・民間療法の一つである。植物療法あるいはハーブ医学から派生したもので,錬金術と深く関係して発展した。アロマテラピーという用語は,1930 年頃にフランスの調香師ルネ=モーリス・ガットフォセが,アロマ(芳香)とテラピー(療法)を組み合わせて作った造語である。アロマテラピーの利用方法として,アロマポットなどを使用し香りを楽しむ芳香浴,入浴や足浴時に精油を使用する沐浴法・吸入法,精油を植物油(キャリアオイル)などで希釈して行うマッサージ法などがある。アロマテラピーの資格は,公的資格ではなく各団体が独自の基準を設けて任意で与える民間資格である。また,日本において医薬品として日本薬局方に収載されている精油はハッカ油など少数のみで,多くの精油が雑貨扱いとなっている。近年,がん患者のアロマテラピー・マッサージの利用は増加しており,痛みや倦怠感などの身体的苦痛や,不安や抑うつといった精神的苦痛,生活の質(QOL)の改善などの効果が報告されているが,研究の質が低くアロマテラピー・マッサージの有用性が証明されているとはいえない。 ・精油は直接肌に塗布せず希釈して使用する。・パッチテストを行うことが望ましい。・光感作性のある精油(柑橘系など)を使用した場合は直射日光を避ける。・目には使用しない。・妊娠中(特に初期)は,ケトンやホルモン類似物質を含むものは避ける。・経口投与は専門医の指示のもとに行う。・禁忌(高血圧,てんかんなど)のある患者への使用は注意が必要。・同一の精油の連用を避ける。・精油の保管は高温多湿を避け冷暗所で行う。・アロマテラピー・マッサージは,局所の悪性腫瘍や炎症部位,放射線治療部位への施 行,出血傾向のある場合などは避ける。 1 サマリー 1 アロマテラピー・マッサージの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 アロマテラピー・マッサージ
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III章各論:クリニカル・エビデンス ・がん患者の背景が臨床試験ごとに異なる。・アウトカムの評価方法が臨床試験ごとに異なる。・大規模試験が少ない。・長期的な効果を調査した論文が少ない。・精油の品質,マッサージの部位や手技,時間など,アロマテラピー・マッサージの方 法が研究ごとに異なる。・アロマセラピストの教育が地域によって異なる。・盲検化が難しい。 前述の「2.使用上の一般的な注意事項」を参照。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Aromatherapy」「Massage」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年5 月19 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:5 件 AromatherapyANDMassageAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]OR meta-analysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ▶無作為化比較試験:10 件 AromatherapyANDMassageAND(RandomizedControlledTrial[pt]ORRandomizedControlled Trial[ti]ORRandomisedControlledTrial[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 3 論文報告(エビデンス)における課題 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件 3 件 PubMed:5 件 本文,抄録を用いたスクリーニングで2 件除外・マッサージのみ:1 件・重複論文:1 件
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●文献検索とスクリーニングのフローチャート(無作為化比較試験) 8 件 PubMed:10 件 本文を用いたスクリーニングで2 件除外・研究方法の検討:1 件・リフレクソロジーの評価:1 件
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III章各論:クリニカル・エビデンス 1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件,無作為化比較試験が3 件ある。Fellowes ら1),Wilkinson ら2)によるシステマティックレビューでは,短期的な疼痛緩和を示していたが,ほとんどの試験で研究の質が低いことが指摘されている。アロマテラピー・マッサージと精油を使用しないマッサージ,または通常の支持療法のみを比較する研究が多く,短期的な疼痛緩和のみの評価で,長期的な効果が明らかとなっていない。また,アロマテラピー・マッサージのグループだけでなくマッサージのグループでも症状の改善が認められ,アロマテラピーの上乗せ効果が示されない試験があり,すべてのレビューで質の高い長期的な効果を検証する大規模試験が必要であると結論している。Khiewkhern ら3)による無作為化比較試験では,化学療法中の大腸がん患者66 例を対象に,タイ式アロマテラピー・マッサージと通常の支持療法を1 週間実施し比較を行っている。支持療法に比較してアロマテラピー・マッサージ後で痛みの有意な改善(MD:-1.2,95%CI:-1.8~-0.9,p=0.001)がみられた。タイ式アロマテラピー・マッサージは大腸がんの化学療法中の痛みを軽減する可能性があるが,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Soden ら4)による無作為化比較試験では,緩和ケアを受けているがん患者42 例を対象に,週1 回30 分で4 週間の植物油(キャリアオイル)を使用したマッサージを受けるマッサージ群,ラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したマッサージを受けるアロマテラピー・マッサージ群,介入を行わない対照群での比較を行っている。マッサージ群,アロマテラピー・マッサージ群ともに2 回目の介入後に有意な改善がみられたが,最終的には統計学的有意差が認められず,長期的な痛みの改善は認められなかったと結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。痛みについて,アロマテラピー・マッサージ群と対照群との比較で統計学的有意差はみられなかったと結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の痛みを軽減させる可能性は示唆されるが,有用であるとは結論づけられない。 2 消化器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件,無作為化比較試験が2 件ある。Fellowes ら1),Wilkinson ら2)によるシステマティックレビューでは,短期的な悪心の緩和を示していたが,研究の質が低いことが指摘されており,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを 2 臨床疑問 アロマテラピー・マッサージは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問3‒1
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4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。悪心・嘔吐で,アロマテラピー・マッサージ群と対照群との比較で統計学的有意差はみられなかったと結論している。Lai ら6)による進行期がん患者の便秘に対するアロマテラピー・マッサージの有効性に対する無作為化比較試験では,進行期がん患者45 例を対象に,毎日15~20 分,5 日間の腹部アロマテラピー・マッサージ,毎日15~20 分5 日間の腹部マッサージ,介入を行わない対照群の3 群で比較を行っている。アロマテラピー・マッサージによりConstipation Assessment Scale(CAS),McGill quality of life for Hong Kong Chinese(MQOL— HK)得点を腹部マッサージ,対照群に比較して有意に低下させたが,少人数での検討であり大規模試験が必要であると結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の消化器症状の軽減に有用であるとは結論づけられない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはないが,無作為化比較試験が2 件ある。Khiewkhern ら3)による無作為化比較試験では,化学療法中の大腸がん患者66 例を対象に,タイ式アロマテラピー・マッサージと通常の支持療法を1 週間実施し比較を行っている。支持療法に比較してアロマテラピー・マッサージ後で倦怠感の有意な改善(MD:-1.3,95%CI:-1.9~-0.8,p=0.001)がみられた。タイ式アロマテラピー・マッサージは,大腸がんの化学療法中の倦怠感を軽減する可能性があるが,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。倦怠感で,アロマテラピー・マッサージ群と対照群との比較で統計学的有意差はみられなかったと結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論づけられない。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはないが,無作為化比較試験が1 件ある。Soden ら4)による無作為化比較試験では,緩和ケアを受けているがん患者42 例を対象に,週1 回30 分で,4 週間のキャリアオイルを使用したマッサージを受けるマッサージ
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III章各論:クリニカル・エビデンス 群,ラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したマッサージを受けるアロマテラピー・マッサージ群,介入を行わない対照群でThe Verran and Snyder—Halpern(VSH) sleep scale を用い比較を行っている。アロマテラピー・マッサージ群,マッサージ群で対照群に比較して有意な改善がみられたがアロマテラピーの効果は示されず,より大規模で質の高い試験が必要であると結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の睡眠障害を軽減させる根拠はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件,無作為化比較試験が4 件ある。Boehm ら7),Fellowes ら1),Wilkinson ら2)によるシステマティックレビューでは,短期的な不安・抑うつの緩和を示していたが,ほとんどの試験で研究の質が低いことが指摘されており,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Khiewkhern ら3)による無作為化比較試験では,化学療法中の大腸がん患者66 例を対象に,タイ式アロマテラピー・マッサージと通常の支持療法を1 週間実施し比較を行っている。支持療法に比較してアロマテラピー・マッサージ後でストレス・不安の有意な改善(MD:-0.4,95%CI:-1.2~-0.1,p=0.03)がみられた。タイ式アロマテラピー・マッサージは,大腸がんの化学療法中のストレス・不安を軽減する可能性があるが,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Serfaty ら8)による無作為化比較試験では,腫瘍科外来通院中のthe Hospital Anxiety and Depression scale(HADS) 8 点以上のがん患者39 例を対象に,週に1 回8 回の認知行動療法を行う認知行動療法群と,資格を有するアロマセラピストが実施する週に1 回8 回のアロマテラピー・マッサージを実施するアロマテラピー・マッサージ群で比較を行っている。the Profile of Mood States(POMS)のTotal Mood,depression,anxiety得点は両方の介入で有意に改善がみられたが,2 群間で差は認められなかったと結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。アロマテラピー・マッサージ群では,対照群との比較で6 週間後は不安・抑うつで統計学的に有意な改善(オッズ比:1.4,95%Cl:1.1~1.9,p=0.01)がみられたが,10 週間後では統計学的有意差(オッズ比:1.3,95%Cl:0.9~1.7,p=0.1)はみられず,アロマテラピー・マッサージの長期的な効果は示されなかったと結論している。Soden ら4)による無作為化比較試験では,緩和ケアを受けている進行期がん患者42 例を対象に,週1 回30 分,4 週間のキャリアオイルを使用したマッサージ群,ラベンダー アロマテラピー・マッサージは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問3‒2
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を加えたキャリアオイルを使用したアロマテラピー・マッサージ群,介入を行わない対照群での比較を行っているが,両群ともに不安の長期的な改善が認められなかった。抑うつはマッサージ群で有意な改善が認められ,アロマテラピーの上乗せ効果は示されなかったと結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の不安・抑うつの軽減に有用であるとは結論づけられない。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件,無作為化比較試験が3 件ある。Fellowes ら1)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験があり,マッサージ群がQOL を改善させた試験が1 件,アロマテラピー・マッサージ群で改善がみられたがマッサージ群との比較で統計学的有意差が認められなかった試験が1 件,変化がみられなかった試験が1 件であった。研究の質が低いことが指摘されており,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Wilcock ら9)による無作為化比較試験では,緩和ケアデイケアセンターに通院する患者46 例を対象に,通常のデイケアのみの対照群と,週に1 回30 分間,4 週間のアロマテラピー・マッサージ(スイートアーモンドオイルにラベンダー,カモミールを1%でブレンドしたオイルを使用し,背中,頸,肩,手を患者の希望によりマッサージ)を行うアロマテラピー・マッサージ群とを比較している。両群ともQOL の改善が認められたが2 群間で統計学的有意差は認められず,アロマテラピーの上乗せ効果は確認できなかったと結論している。Soden ら4)による無作為化比較試験では,緩和ケアを受けているがん患者42 例を対象に,週1 回30 分,4 週間のキャリアオイルを使用したマッサージ群,ラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したアロマテラピー・マッサージ群,介入を行わない対照群での比較を行っている。両群ともQOL の長期的な改善が認められなかったと結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。QOL でアロマテラピー・マッサージ群と対照群との比較で統計学的有意差はみられなかったと結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者のQOL の改善に有用であるとは結論づけられない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件,無作為化比較試験が2 件ある。 アロマテラピー・マッサージは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問3‒3 アロマテラピー・マッサージは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問3‒4
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III章各論:クリニカル・エビデンス Boehm ら7)によるシステマティックレビューでは,精油の使用による有害事象として接触皮膚炎や光毒性による皮膚反応,可逆性の女性化乳房を起こした報告が挙げられている。Wilcock ら9)による無作為化比較試験では,スイートアーモンドオイルにラベンダー,カモミールを1%でブレンドしたオイルを使用したアロマテラピー・マッサージ後の発疹が1 件報告されている。Barclay ら10)によるリンパ浮腫の苦痛に対するアロマテラピー・マッサージの有効性について検討した無作為化比較試験では,有害事象として皮膚反応が1 件報告されている。小麦胚芽油にフェンネル,ゼラニウム,ブラックペッパー,ジュニパーを使用したマッサージクリームを使用していたが,精油の希釈濃度や混合比については記載されていなかった。いずれも重篤な有害事象は報告されていない。以上より,アロマテラピー・マッサージによる有害事象は軽微であると考えられる。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはないが,無作為化比較試験が2 件ある。Stringer ら11)による無作為化比較試験では,隔離された血液がん患者39 例を対象に,アロマテラピー・マッサージ群,マッサージ群,休息群の3 群で,ストレスレベルの低下に対する比較検討を実施している。3 群ともベースラインに比較して30 分後にコルチゾール値(p=0.002)とプロラクチン値(p=0.0031)が有意に低下していた。アロマテラピー・マッサージ群とマッサージ群では,休息群に比較してコルチゾール値とプロラクチン値が有意に低下していたが,アロマテラピー・マッサージ群とマッサージ群間で統計学的有意差は認められなかった。European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire—C30(EORTC QLQ—C30)では,「休息が必要である」の項目でアロマテラピー・マッサージ群,マッサージ群は休息群に比較して有意に低下,半構造化面接でも介入群でリラックス気分が低下していた。この試験はパイロットスタディであり,隔離中の血液がん患者に対するマッサージは,コルチゾールを低下させ,心理的に良好な状態にする可能性が示唆されたと結論している。Khiewkhern ら3)による無作為化比較試験では,化学療法中の大腸がん患者66 例を対象に,週に1 回ごとに3 回のタイ式アロマテラピー・マッサージを行うアロマテラピー・マッサージ群と,通常の支持療法との比較を実施している。支持療法群に比較してアロマテラピー・マッサージ群で介入後のリンパ球値が有意に高かった(MD:218 cells/μL, 95%CI:20~575,p=0.04)。アロマテラピー・マッサージ群で痛み(MD:-1.2, 95%CI:-1.8~-0.9,p=0.001),倦怠感(MD:-1.3,95%CI:-1.9~-0.8,p= 0.001),ストレス・不安(MD:-0.4,95%CI:-1.2~-0.1,p=0.03)で有意な改善がみられたが,悪心と抑うつは統計学的有意差が認められなかった。タイ式のアロマテラピー・マッサージは,化学療法中の大腸がん患者のリンパ球を増やすことで免疫機能に有益であり,痛み,倦怠感,ストレス・不安を改善する可能性があるが,大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。 アロマテラピー・マッサージは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問3‒5
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以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の検査・治療等に伴う有害事象の軽減に有用であるとは結論づけられない。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 (宮内貴子) 【文 献】 1) FellowesD,BarnesK,WilkinsonSS.WITHDRAWN:Aromatherapyandmassageforsymptom reliefinpatientswithcancer.CochraneDatabaseSystRev2008;4:CD002287 2) WilkinsonS,BarnesK,StoreyL.Massageforsymptomreliefinpatientswithcancer:systematic review.JAdvNurs2008;63:430-9 3) KhiewkhernS,PromthetS,SukprasertA,etal.Effectivenessofaromatherapymassagewithlight Thaimassageforcellularimmunityimprovementincolorectalcancerpatientsreceivingchemotherapy.AsianPacJCancerPrev2013;14:3903-7 4) SodenK,VincentK,CraskeS,etal.Arandomizedcontrolledtrialofaromatherapymassagein hospicesetting.PalliatMed2004;18:87-92 5) WilkinsonS,LoveSB,WestcombeAM,etal.Effectivenessofaromatherapymassageinthemanagementofanxietyanddepressioninpatientswithcancer:amulticenterrandomizedcontrolled trial.JClinOncol2007;25:532-9 6) LaiTK,CheungMC,LoCK,etal.Effectivenessofaromamassageonadvancedcancerpatients withconstipation:apilotstudy.ComplementTherClinPract2011;17:37-43 7) BoehmK,BüssingA,OstermannT.Aromatherapyasanadjuvanttreatmentincancercare―a descriptivesystematicreview.AfrJTraditComplementAltemMed2012;9:503-18 8) SerfatyM,WilkinsonS,FreemanC,etal.TheToTstudy:helpingwithTouchorTalk(ToT):a pilotrandomisedcontrolledtrialtoexaminetheclinicaleffectivenessofaromatherapymassage versuscognitivebehaviourtherapyforemotionaldistressinpatientsincancer/palliativecare. Psychooncology2012;21:563-9 9) WilcockA,MandersonC,WellerR,etal.Doesaromatherapymassagebenefitpatientswithcancer attendingaspecialistpalliativecaredaycentre?PalliatMed2004;18:287-90 10) BarclayJ,VesteyJ,LambertA,etal.Reducingthesymptomsoflymphoedema:istherearolefor aromatherapy?EurJOncolNurs2006;10:140-9 11) StringerJ,SwindellR,DennisM.Massageinpatientsundergoingintensivechemotherapyreduces serumcortisolandprolactin.Psychooncology2008;17:1024-31 アロマテラピー・マッサージは,予後を改善するか? ▶臨床疑問3‒6
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III章各論:クリニカル・エビデンス 運動とは,体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施されるもので,継続性のある身体活動を指す。身体活動は,骨格筋の収縮によって生じる身体の動きで,エネルギー消費を増加させる。がん患者に対する運動療法の効果として,倦怠感などの苦痛症状の緩和,身体機能やQOL の向上などがある。既存のガイドラインでは,全身持久力の改善を目的とした有酸素運動,さらに四肢や体幹の筋力増強を目的とした抵抗運動の有効性が示されている。一般に成人(18~64 歳)に対して,中等度の身体活動を週150 分,高強度の有酸素運動を週75 分,中~高強度の抵抗運動を週2 回以上,行うことが推奨されている。65 歳以上の高齢者においても成人と同等の運動が推奨されている。 [がん患者の運動療法に関する主なガイドライン] 1) Schmitz KH, Courneya KS, Mattews C, et al;American College of Sports Medicine. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010;42:1409—26 2) Rock CL, Doyle C, Demark—Wahnefried, et al. Nutrition and physical activity guidelines for cancer survivors. CA Cancer J Clin 2012;62:243—74 3) 日本リハビリテーション医学会,がんのリハビリテーションガイドライン策定委員 会 編.がんのリハビリテーションガイドライン,金原出版,2013 4) 日本がんリハビリテーション研究会 編.がんのリハビリテーションベストプラク ティス,金原出版,2015 ・ 抗がん剤の点滴中や治療後24 時間以内は運動を避ける。・ がん治療による重篤な貧血がある場合は,改善してから行う。・ がん治療による白血球減少の場合は,感染予防のため公共施設での運動を避ける。・ 放射線治療中には,皮膚防護のためプール(塩素含む)の使用を避ける。・ 高齢者の場合,骨疾患(重篤な骨粗鬆症や骨転移など)に注意する。 ・ がん患者の背景が臨床試験ごとに異なる。・ がんの種類・病期,治療中・後によって,研究報告にばらつきがある。 1 サマリー 1 運動療法の概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 4 運動療法
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・ 運動の種類,強度,時間,頻度,期間など介入方法が多様である。・ 比較対照の設定が臨床試験ごとに異なる。・ アウトカムの評価方法が臨床試験ごとに異なる。・ 多様な評価指標が使用されている。・ 運動の専門家による指導と自主的運動の効果に相違がある。 [がん患者におけるリハビリテーションの中止基準]1,2) 1 血液所見:ヘモグロビン7.5 g/dL 以下,血小板50,000/μL 以下,白血球3,000/μL 以下2骨転移3有腔内臓(腸・膀胱・尿管),血管,脊髄の圧迫4 持続する痛み,呼吸困難,運動障害を伴う胸膜・心囊・後腹膜への浸出液貯留5中枢神経系の機能低下,意識障害,頭蓋内圧亢進6低・高カリウム血症,低ナトリウム血症,低・高カルシウム血症7起立性低血圧症8110 回/分以上の頻脈,心室性不整脈938.3°C以上の発熱 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Exercise」[検索期間]2012 年1 月1 日~2014 年12 月31 日(システマティックレビュー論文が多 数のため検索期間を限定) [検 索 日]2015 年6 月30 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:128 件 Exercise AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2012/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
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III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 【文 献】1) 日本体力医学会体力科学編集委員会 監訳.運動処方の指針―運動負荷試験と運動プログラム(原著第8 版),南江堂,2011 2) 日本がんリハビリテーション研究会 編.がんのリハビリテーションベストプラクティス,金原出版,2015 3) 日本リハビリテーション医学会,がんのリハビリテーションガイドライン策定委員会 編.がんのリハビリテーションガイドライン,金原出版,2013 4) Schmitz KH, Courneya KS, Mattews C, et al; American College of Sports Medicine. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010; 42: 1409-26 5) Rock CL, Doyle C, Demark-Wahnefried, et al. Nutrition and physical activity guidelines for cancer survivors. CA Cancer J Clin 2012; 62: 243-74 6) American College of Sports Medicine. ACSM’S Guidelines for Exercise Testing and Prescription, 9th ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2014 7) 伊藤壽記,上島悦子 監訳.がんの統合医療,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2010 8) 厚生労働省.健康づくりのための身体活動基準,2013 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple.html(アクセス日: 2015 年3 月) PubMed:128 件抄録を用いたスクリーニングで73 件除外・対象者ががん以外:37 件・運動療法以外:18 件・運動療法単独以外:18 件 55 件 本文を用いたスクリーニングで6 件除外・対象者ががん以外:2 件・運動療法以外:3 件・重複論文:1 件 49 件
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1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Carvalho ら1)によるコクランのシステマティックレビューでは,頭頸部がんの治療による肩の機能不全に対する運動の介入効果を比較した3 件の無作為化比較試験(104 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,2 件の研究においては漸進的抵抗運動が,肩の痛みや機能障害,関節可動域の改善に有効であった。Tatham ら2)によるシステマティックレビューでは,肩の痛みを有する乳がん治療中の患者を対象に,運動の介入効果を比較した文献的考察を行っている。内容は,4 件の無作為化比較試験(377 例)と2 件のケースシリーズ(87 例)であった。その結果,運動が乳がん治療による肩の痛みを軽減する可能性があると結論づけていた。運動の介入方法は多様であり,肩・腕・肩甲骨の抵抗運動,姿勢運動,全身運動や調整運動,肩回し運動,リンパ浮腫の予防運動が活用されていた。以上より,運動は,乳がんや頭頸部がん患者の治療に関連した肩の痛みの軽減に有用と考えられる。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,乳がん患者を対象とした痛みの緩和について,6 件の研究報告があった。いずれも有効である知見とそうでない知見が混在しており,エビデンスレベルは低い結果であった(C 評価)。ただし,運動を実施しても,症状の悪化は全くなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,頭頸部がん領域で肩関節機能障害に対して,一般的な関節可動域や筋力の評価に加えて疼痛評価がなされていた。しかし,評価方法に課題があり,適切な評価を行いながらリハビリテーションを行うように推奨されている(推奨グレードB)。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 既存のガイドラインとの整合性がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,主に乳がん患者を対象に,末梢血管細胞輸血前の高用量化学療法中の患者に,臥位でのエルゴメーターを30 分,入院中毎日実施し,顆粒球減少と下痢の程度を改善させた報告があった。さらに,ヨガで下痢やストレス症状(胃腸症状など)が改善した報告があった。よって,有酸素運動や抵抗運動は,下痢や貧血など治療の有害反応を軽減させるため,行うように推奨されている(推奨グレードB)。 2 臨床疑問 運動療法は,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問4‒1
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III章各論:クリニカル・エビデンス 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 4 泌尿器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Baumann ら5)によるシステマティックレビューでは,前立腺がんの治療中・後の患者を対象に,運動を実施した25 件の無作為化比較試験(2,590 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動の介入により尿失禁が改善し,指導下の運動はそうでない運動と比較してより効果的であった。主な運動は,ウォーキング,抵抗運動,耐久運動,指導下または在宅での骨盤筋抵抗運動などであった。介入期間は4 週間~1 年,週1~5 回, 1 日数回で,1 回15~90 分であった。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,前立腺がんを対象とした観察研究で,標準体重で運動していた患者は肥満・座位傾向の患者と比較して失禁が少なかった。しかし,研究数が少ないためエビデンスレベルの評価はなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,前立腺全摘出術後の患者に骨盤底筋体操を行うと尿失禁を改善するので,行うことが強く推奨されている(推奨グレードA)。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが20 件ある。研究対象の内訳は,がん一般(8 件),乳がん(3 件),肺がん(2 件),造血器腫瘍(悪性リンパ腫1 件,幹細胞移植3 件),大腸がん(1 件),前立腺がん(2 件)であった。 1 )がん一般:8 件Puetz ら6)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,前立腺がん,乳がんの治療中・後の患者を対象に,70 件の無作為化比較試験(4,881 例)のメタアナリシスを行っている。治療は化学療法,放射線治療,ホルモン療法であった。治療中(43 件, 3,235 例)と治療後(27 件,1,646 例)の運動介入群は対照群と比較して有意に倦怠感が軽減していた。運動介入群は指導下あるいは自宅で実施されており,介入期間は11.7~ 12.6 週間,週2.9~3.4 回,1 回42.3~49.6 分であった。Mishra ら7)によるコクランのシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍,その他のがんを含んだ治療中の患者を対象に,56 件の無作為化比較試験(4,826 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,中等度あるいは激しい運動は軽度の運動に比較して,倦怠感の軽減に有意な効果を示していた。運動は,ウォーキング単独,サイクリング,抵抗運動,耐久運動,ヨガ,気功などの併用であった。Cramp ら8)によるコクランのシステマティックレビューでは,がん治療中・後の患者を対象に,38 件の無作為化比較試験(2,648 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有意な効果があった。乳がんと前立腺がんにおいて倦怠感の軽減に運動は有効であったが,造血器腫瘍では有効でな
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かった。さらに,有酸素運動は倦怠感の軽減に有効であったが,抵抗運動や代替型運動では有効ではなかった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,がん治療中・後の患者(悪性リンパ腫1 件,乳がん12 件)を対象に,ヨガの効果を比較した13 件の無作為化比較試験(783 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,ヨガは倦怠感の軽減に有意な効果があった。介入期間は約7 週間(範囲:6 週間~6 カ月)で,1 回約30~120 分であった。Strasser ら10)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がんの治療中・後の患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,167 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,抵抗運動はがんによる倦怠感の軽減に有効であった。介入期間は12 週間(2 件),4~6 カ月(4 件),1 年(4 件)で,主に週2~3 回であった。Zeng ら11)によるシステマティックレビューでは,乳がん(8 件)やその他のがん(5件)を対象に,13 件の無作為化比較試験(592 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,太極拳(8 件)や気功(5 件)は,倦怠感の軽減に有効であった。介入期間は5~12 週間であった。Tomlinson ら12)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,固形がんの治療中・後の患者を対象に,72 件の無作為化比較試験(5,367 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有意な効果がみられた。運動は,有酸素運動(14 件),ウォーキング(19 件),ヨガ(9 件),抵抗運動(3件),混合運動(22 件),その他(5 件)であった。運動は,指導下(46 件)と在宅(26件)で行われていた。Meneses—Echávez ら13)によるシステマティックレビューでは,乳がん(6 件),前立腺がん(2 件),悪性リンパ腫(1 件),その他多様ながん(2 件)患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,530 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,指導下の有酸素運動と抵抗運動の混合,または指導下の有酸素運動,抵抗運動とストレッチングの混合運動は,倦怠感を有意に軽減させていた。介入期間は3~48 週間,週1~5 回,1 回20~120 分であった。 2 )乳がん:3 件Carayol ら14)によるシステマティックレビューでは,化学療法や放射線治療中の乳がん患者を対象に,17 件の無作為化比較試験(1,380 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群が対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効であった。特に,1 週間に90~120 分以上の比較的軽い運動(<12 MET h/week)*は激しい運動より倦怠感の軽減に有効であった。運動は,有酸素運動(16 件)と抵抗運動(7 件)の単独や併用,ヨガ(3 件)であった。介入期間の平均は17±8 週間(範囲:5~26 週間),1 週4±1 回(範囲:2~6 回),1 回39±10 分(範囲:23~60 分)であった。運動は,指導下(6 件)と在宅(10 件)で行われていた。*代謝当量単位(1 MET=3.5 mL/kg/分) Zou ら15)によるシステマティックレビューでは,化学療法中の乳がん患者を対象に, 12 件の無作為化比較試験(1,014 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動による運動介入群(522 例)が対照群(492 例)と比較して,修正版piper 倦怠感スケール(RPFS)による倦怠感得点が有意に軽減していた。ただし,慢性疾患倦怠感スケール(FACIT-F)による得点では統計学的有意差はなかった。
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III章各論:クリニカル・エビデンス Battaglini ら16)は,1989~2013 年までの25 年間の乳がんサバイバーに関する51 件の報告の文献的考察を行っている。その結果,乳がんサバイバーに対する運動介入は,倦怠感の軽減に有効であった。主な運動は有酸素運動と抵抗運動であった。 3 )肺がん:2 件Paramanandam ら17)によるシステマティックレビューでは,肺がん患者を対象にした10 件(192 例:症例報告1 件含む)の文献を分析し,そのうち7 件が倦怠感の軽減に運動が有効であった。運動で最も多かったのが有酸素運動で,その他にエルゴメーター,呼吸運動,リラクセーションなどであった。介入期間は6~14 週間,週2~5 回,1 日1~2 回,1 回5~45 分で,理学療法士による指導下での運動が9 件であった。Crandall ら18)によるシステマティックレビューでは,手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象に,20 件(575 例)の研究(無作為化比較試験8 件含む)で,メタアナリシスを含む文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感が有意に軽減していた。すべての研究で有酸素運動(主にウォーキングやサイクリング)が活用されており,その他に抵抗運動(1 件)や呼吸運動(9 件)があった。17 件が理学療法士や理学療法の専門医師,その他リハビリテーションチームなどの指導下による介入で,多くの研究で運動は週2 回,1 日2 回,1 回10~45 分行われていた。 4 )造血器腫瘍:4 件Van Haren ら19)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療前・中・後の造血器腫瘍患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(734 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効であった。運動は,耐久運動や抵抗運動,日常生活の身体活動,漸進的リラクセーションやストレッチングであった。介入期間は4 週間~6 カ月であった。Vermaete ら20)によるシステマティックレビューでは,悪性リンパ腫の治療前・中・後の患者に身体活動とフィジカルフィットネスの2 種類の介入を行った13 件(2,450 例)の文献的考察を行っている。結果として,21~29%の悪性リンパ腫の患者は,American College of Sports Medicine public health ガイドラインが推奨する運動基準を満たしていた。有酸素運動は実行可能で安全な介入であり,倦怠感の軽減に対して有効であった。しかし,低レベルの身体活動やフィジカルフィットネスは,倦怠感を助長させていた。Persoon ら21)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者を対象に,8 件の無作為化比較試験(介入群472 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効であった。主な運動は,有酸素運動や抵抗運動,混合運動で,運動強度は軽度・中等度であった。介入期間は4 週間~6 カ月,週2~10 回,1 回20~70 分であった。全体的に運動介入プログラムは幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者に対して安全であることが報告されていた。Bergenthal ら22)によるコクランのシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件含む)を対象に,有酸素運動の介入に関する9 件の無作為化比較試験(818 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効であった。主な有酸素運動はさまざまな歩行プログラムで,運動強度や介入期間は異なっていた。
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5 )大腸がん:1 件Cramer ら23)によるシステマティックレビューでは,大腸がん患者を対象とした5 件の無作為化比較試験(238 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感を軽減しなかった。運動は,中等度・高度の有酸素運動と抵抗運動であった。介入期間は2 週間(2 件),12 週間(2 件),16 週間(1 件),週2~ 5 回,1 日20~50 分であった。 6 )前立腺がん:2 件Keogh ら24)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者を対象に運動介入を行った12 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,運動介入は倦怠感の軽減に有効であった。運動効果は,自宅よりもグループでの効果が高く,特に抵抗運動を含んだ場合は顕著であった。運動は,主に有酸素運動や抵抗運動の単独や混合運動などで,介入期間は4~52 週,週2~5 回であった。Gardner ら25)によるシステマティックレビューでは,アンドロゲン除去療法中の前立腺がん患者を対象に,副作用症状の軽減に運動を介入した10 件(565 例)の無作為化比較試験(5 件)を含む文献的考察を行っている。その結果,運動介入は倦怠感の軽減に有効であった。運動は,有酸素運動,抵抗運動,ヨガ,ストレッチングなどであった。介入期間は12~24 週,週1~5 回,1 回15~60 分であった。以上より,運動は,大腸がんを除く,乳がんや肺がん,造血器腫瘍,さまざまながん一般の症例に対して,がん治療中・後の倦怠感の軽減に有用であると考える。ただし,運動の種類や強度,回数,運動実施の時期,期間,倦怠感の尺度などによって倦怠感に対する効果は異なると考える。また,主に有酸素運動や抵抗運動が活用されており,これらの運動は既存のガイドラインで推奨されている運動でもあり,今後臨床現場や研究での活用が期待できる。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,乳がん患者を対象とした無作為化比較試験の論文は多数報告されており,倦怠感の軽減に関する運動のエビデンスレベルはB 評価であった。その他,造血器腫瘍(B 評価),前立腺がん(A 評価),がん治療中・後(C 評価)に関してエビデンスレベルが示されていた。しかし,大腸がんや婦人科がんに関して,無作為化比較試験などの質の高い研究は少なく,エビデンスレベルの評価はなされていなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,頭頸部がん(推奨グレードB),乳がん(推奨グレードA),造血幹細胞移植後の造血器腫瘍(推奨グレードA),化学療法や放射線治療中・後(推奨グレードA),在宅における進行がん・末期がん(推奨グレードB)患者の倦怠感の軽減に運動療法を行うことが推奨されている。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが5 件ある。研究対象の内訳は,がん治療中・後の患者(3 件),進行がん(1 件),小児(1 件)であった。Albercht ら26)によるシステマティックレビューでは,進行がん患者を対象に16 件の無作為化比較試験や横断研究,ケースシリーズなど(患者816 例,家族169 例)の文献
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III章各論:クリニカル・エビデンス 的考察を行っている。その結果,運動介入は,睡眠障害や苦痛症状の改善に有効であった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,主に乳がんや悪性リンパ腫(1 件)などのがん治療中・後の患者を対象に,13 件の無作為化比較試験(128 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,睡眠に対するヨガの効果は少なからずみられたが,対照群との比較では統計学的有意差はなかった。ヨガの介入期間は約7 週間(範囲:6 週間~6 カ月),1 回約30 分であった。Baumann ら27)によるシステマティックレビューでは,急性リンパ白血病の小児がん治療中の患者を対象に,17 件(282 例)の無作為化比較試験(5 件)や比較対照試験(6件),ケースシリーズ(6 件)の文献的考察を行っている。その結果,1 件のみ,運動介入は睡眠の改善に有効であった。運動プログラムの種類は多様で,2 件を除きすべて指導下における在宅や病院内での教育プログラムであった。介入期間は6 週間~2 年,週1~5 回,1 回15~120 分であった。Tomlinson ら12)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,固形がんの治療中・後の患者を対象に,運動の効果を比較した72 件の無作為化比較試験(5,367 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,睡眠障害の改善に有効であった。運動は,有酸素運動,ウォーキング,ヨガ,抵抗運動,混合運動で,指導下(46 件)と在宅での自主トレーニング(26 件)で行われていた。Mustian28)によるシステマティックレビューでは,ヨガの睡眠障害の改善に関する臨床試験や無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,がん患者やがんサバイバーに対するヨガの介入は睡眠障害の改善や睡眠の質を改善させていた。パイロット臨床試験において,低・中等度のヨガで呼吸療法や瞑想などを含んだセッションを4~ 26 週間,週1~5 回,1 回50~120 分実施することで,睡眠障害や睡眠の質の改善に効果があるかもしれないと結論づけていた。以上より,運動は,睡眠障害の軽減に有用かもしれない。ただし,研究数が限られており,今後質の高い無作為化比較試験が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中の乳がん患者の睡眠障害の改善に運動は有効であった。しかし,成人の造血幹細胞移植治療中の睡眠障害の改善には有効ではなかった。研究数に限りがあり推奨には至っていなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,乳がん術後の化学療法や放射線治療中・後の患者に対して,有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うことは睡眠障害を改善させるため,行うよう強く推奨されている(推奨グレードA)。また,造血器腫瘍に対して造血幹細胞移植を実施した患者に,指導下もしくは在宅での自主トレーニングにてエルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動を実施することは,それらを行わない群と比較して,睡眠障害の改善がみられるため,行うよう推奨されている(推奨グレードB)。 7 その他(身体機能・筋力,心肺機能,免疫機能など) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが26 件ある。研究対象の内訳は,が
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ん一般(12 件),乳がん(3 件),造血器腫瘍(4 件),肺がん(2 件),前立腺がん(3件),小児がん(2 件)であった。 1 )がん一般:12 件Fong ら29)によるシステマティックレビューでは,がん治療後の患者を対象(乳がん65%)に,34 件の無作為化比較試験(7,882 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,治療後の乳がん患者に対する運動は身体機能に良い影響を及ぼしていた。乳がん患者以外のがん患者の運動効果として,BMI,体重減少,酸素消費量の改善がみられた。運動は,主に有酸素運動で,その他に抵抗運動や耐久運動があった。介入期間の平均は13 週(範囲:3~60 週)であった。Chan ら30)によるシステマティックレビューでは,がん患者を対象に気功の介入を行った無作為化比較試験(8 件)と比較臨床試験(15 件)の文献的考察を行っている。その結果,気功の介入による効果については,測定方法と結果が多様であったため結論づけることは困難であった。ただし,従来の治療法に加えて,気功による介入は,がん患者の免疫機能を改善する傾向がみられた。Albrecht ら26)によるシステマティックレビューでは,進行期のがん患者を対象に16件(患者816 例,家族169 例)の無作為化比較試験や横断研究,ケースシリーズの文献的考察を行っている。その結果,運動は,身体機能の低下を軽減する効果があった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,主に乳がんや悪性リンパ腫(1 件)のがん治療中・後の患者を対象に,13 件の無作為化比較試験(783 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,健康状態,身体機能に対するヨガの効果は少なからずみられたが,対照群との比較では統計学的有意差はなかった。ヨガの介入期間は約7 週間(範囲:6 週間~6 カ月),1 回約30~120 分であった。Singh ら31)によるシステマティックレビューでは,肺がん,前立腺がん,大腸がんの術前の患者を対象に,18 件の無作為化比較試験と比較臨床試験(966 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,ウォーキングの耐久力や心肺機能の改善に有意な効果がみられた。前立腺がんでは骨盤底筋体操を取り入れた運動(毎日),肺がんは有酸素運動(1 週間に5 回),消化器系がんは有酸素運動や抵抗運動(1週間2 回)などであった。1 回の運動時間は,15 分~3 時間程度であった。Strasser ら10)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がんの治療中・後の患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,167 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,抵抗運動は上下肢の筋力強化に大きな効果があり,かつ体脂肪や体組成へも中等度の効果があった。介入期間は12 週間,4~6 カ月,1 年で,主に週2~3 回であった。Stene ら32)によるシステマティックレビューでは,主に早期のステージにある乳がん,前立腺がん,消化器系がん,大腸がん,肺がんのがん治療中の患者を対象に,16 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,有酸素運動と抵抗運動による介入は通常のケアと比較して,上下肢の筋力が向上していた。介入期間は4~52 週間,週2~7 回,1 回10~45 分であった。Focht ら33)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がん,肺がんなどのがん治療中・後の患者を対象に,15 件の無作為化比較試験と比較臨床試験(1,077 例)の文献的考察を行っている。その結果,抵抗運動は,筋力や身体機能,体組
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III章各論:クリニカル・エビデンス 成の強化に有意な効果がみられた。運動は,1 件を除きすべて指導下で行われており,介入期間は10 週間~12 カ月であった。Kruijsen-Jaarsma ら34)によるシステマティックレビューでは,成人(18 件)と小児(3件)のがん患者を対象に,21 件の無作為化比較試験や比較臨床試験などの文献的考察を行っている。その結果,運動介入後,NK 細胞毒性,リンパ球増殖,顆粒球数の増加が認められた。運動は,有酸素運動(11 件),抵抗運動(1 件),有酸素運動と抵抗運動の混合(8 件)であった。介入期間は2~12 週間,頻度は毎日か週2~5 回,1 回15~90 分であった。Bourke ら35)によるコクランのシステマティックレビューでは,座位傾向のがん患者を対象に,14 件の無作為化比較試験(648 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,8~12 週間の運動介入群は対照群と比較して,運動耐性が改善していた。さらに,6カ月以上の介入についても同様の結果が得られた。運動は,有酸素運動と抵抗運動であった。Zeng ら11)によるシステマティックレビューでは,乳がん(8 件)やその他のがん(5件)を対象に,13 件の無作為化比較試験(592 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,太極拳(8 件)や気功(5 件)は,免疫機能,コルチゾールレベルを改善していた。12 週間の介入により,BMI や体組成はベースラインよりも減少していた。介入期間は5~12 週間であった。Grande ら36)によるコクランのシステマティックレビューでは,がん患者の悪液質に対する運動介入に関する16 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,3,154 件の文献からタイトルをもとに3,138 件を除外し,残り16 件の文献が分析されたが,選択基準に適合する研究はなかった。その理由は,がん悪液質の定義や評価が困難であり,効果を結論づける十分なエビデンスが得られなかったからであった。 2 )乳がん:3 件Chung ら37)によるシステマティックレビューでは,乳がん術後のリンパ浮腫患者を対象に,無作為化比較試験(8 件)と交差試験(3 件)の計11 件(728 例)の文献的考察を行っている。その結果,数日~13 週間の運動は,リンパ浮腫患者の上部の身体機能の改善(短期間),リンパ浮腫の改善(1 年間)に有意な効果があった。運動は,有酸素運動,水中リンパ療法,ダンス療法,理学療法,多機能運動,包括的リハビリテーション,ウエイト・リフティングの7 種類で,理学療法や多様な運動の組み合わせが多かった。医師や理学療法士の専門家の指導下による介入効果や運動のアドヒアランス率が有意に高かった。Paramanandam ら38)によるシステマティックレビューでは,リンパ浮腫あるいはそのリスクを伴っている乳がん患者を対象に,筋力トレーニングの介入効果に関する11件の無作為化比較試験(1,091 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,低・中等度の筋力トレーニングの介入は安全であり,対照群と比較して,腕の容積や乳がんに起因するリンパ浮腫の出現を悪化させることなく,上下肢の筋力を有意に強化させていた。筋力トレーニングの介入期間は5 週間~1 年間で,運動強度は主に低・中等度の運動であった。全患者は,指導下での圧迫包帯を活用していた。Battaglini ら16)によるシステマティックレビューでは,1989~2013 年までの25 年間の乳がんサバイバーに関する51 件の文献的考察を行っている。その結果,乳がんサバイ
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バーに対する運動介入は,心肺機能の改善,身体の強度や体組成の改善に効果的であった。主な運動は,有酸素運動と抵抗運動であった。 3 )造血器腫瘍:4 件Van Haren ら19)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療前・中・後の造血器腫瘍患者の運動効果に対する11 件の無作為化比較試験(734 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,退院を促進する効果があった。運動は,耐久運動や抵抗運動,日常生活の身体活動,漸進的リラクセーションやストレッチングであった。介入期間は3 週間~6 カ月であった。Vermaete ら39)によるシステマティックレビューでは,悪性リンパ腫の治療前・中・後の患者を対象に,身体活動とフィジカルフィットネスの2 種類の介入を行った13 件(2,450 例)の文献的考察を行っている。その結果,有酸素運動は実行可能で安全な介入であり,心肺機能や身体機能の改善に効果があった。Persoon ら21)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者を対象に,8 件の無作為化比較試験(介入群472 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群が対照群と比較して,心肺機能状態,下肢筋力に対する効果が大きかった。一方,上肢の筋力に対する効果は小さかった。主な運動は,有酸素運動や抵抗運動,混合運動で,運動強度は軽度・中等度であった。介入期間は4 週間~6 カ月,週2~10 回,1 回20~70 分であった。幹細胞移植治療中の患者に対して運動は安全であると報告されていた。Bergenthal ら22)によるコクランのシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件含む)を対象に,有酸素運動の介入に関する9 件の無作為化比較試験(818 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動の介入群は対照群と比較して,身体機能の向上に有効であった。主な有酸素運動はさまざまな歩行プログラムで,運動強度や介入期間は異なっていた。 4 )肺がん:2 件Cavalheri ら40,41)によるコクランのシステマティックレビューでは,肺切除後12 カ月以内の非小細胞性肺がん患者を対象に,3 件(178 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,6 分以上の歩行群と歩行なし群とでは,歩行群のほうの運動許容量が有意に増加していた。ただし,肺機能の改善に統計学的有意差はみられなかった。Crandall ら18)によるシステマティックレビューでは,手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象に,20 件(575 例)のメタアナリシスを含む(無作為化比較試験8 件)文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,心肺機能の運動能力や筋力の向上,術後合併症の軽減,入院期間の短縮がみられた。すべての研究に有酸素運動(主にウォーキングやサイクリング)が含まれており,その他に抵抗運動(1 件)や呼吸運動(9 件)があった。17 件が理学療法士や理学療法を専門とする医師,その他リハビリテーションチームなどの指導下による介入で,多くの研究が1 日2 回~1 週間2 回,1 回10~45 分の頻度で運動プログラムが実施されていた。
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III章各論:クリニカル・エビデンス 5 )前立腺がん:3 件Keogh ら24)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者を対象に12 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,運動は筋力持久力,有酸素持久力,身体機能,その他筋肉量,筋力の改善に有効であった。運動効果は,自宅よりもグループでの効果が高く,特に抵抗運動を含んだ場合は顕著であった。運動は,主に有酸素運動や抵抗運動の単独,混合運動などで,介入期間は4~52 週,週2~5 回であった。Baumann ら5)によるシステマティックレビューでは,前立腺がんの治療中・後の患者を対象に,運動を介入した25 件の無作為化比較試験(2,590 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動の介入により健康状態,体組成の改善に有効であった。指導下の運動はそうでない運動と比較してより効果的であった。主な運動は,ウォーキング,抵抗運動,耐久運動,指導下または在宅での骨盤筋抵抗運動などであった。介入期間は4週間~1 年,週1~5 回,1 日数回,1 回15~90 分であった。Gardner ら25)によるシステマティックレビューでは,アンドロゲン除去療法中の前立腺がん患者を対象に,副作用症状の軽減に運動を介入した10 件(565 例)の無作為化比較試験(5 件)を含む文献的考察を行っている。その結果,運動介入により筋力強化,心肺機能の強化,機能的タスクパフォーマンス,体組成の改善に効果がみられた。骨の健康状態,心代謝リスクマーカーについては明らかな結果は得られなかった。運動は,有酸素運動,抵抗運動,ヨガ,ストレッチングなどであった。介入期間は12~24 週,週1~5 回,1 回15~60 分であった。 6 )小児がん:2 件Braamら42)によるコクランのシステマティックレビューでは,19歳以下の急性リンパ性白血病などの小児・青年期のがん治療中・後の患者を対象に,4 件の無作為化比較試験(107 例)と1 件の臨床比較対照試験(24 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,骨密度や身体的健康状態(体組成,柔軟性,心肺機能)が有意に改善していた。ただし,BMI,筋力・耐性,身体活動レベルは改善しなかった。運動は,身体活動トレーニングでさまざまな運動を含んでいた。介入期間は10 週間~2年間,1 回15~60 分であった。Baumann ら27)によるシステマティックレビューでは,急性リンパ白血病の小児がん治療中の患者を対象に,運動効果に関する17 件(282 例)の無作為化比較試験(5 件)や比較対照試験(6 件),ケースシリーズ(6 件)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群の筋力強化に対して有意な効果が得られた。1 件の論文のみ,運動介入は免疫機能,活動量,身体機能の改善において有効であった。運動プログラムの種類は多様で,2 件を除きすべて指導下における在宅や病院内での教育プログラムであった。介入期間は6 週間~2 年,週1~5 回,1 回15~120 分であった。以上より,がん患者の治療中・後に,有酸素運動や抵抗運動などを行うことは,身体機能(BMI,体重,体組成,体脂肪,酸素消費量)や耐久力,心肺機能,上下肢の筋力,活動量,運動耐性,運動許容量,免疫機能,リンパ浮腫,骨密度の改善,退院促進などに有用であると考える。ただし,がんの種類やステージ,運動の種類や運動期間,頻度,強度,運動実施のタイミング,ならびに専門家による指導などは,運動の効果に影響があると考えられるので,それらを考慮した臨床への応用が必要である。
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既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,乳がん治療中の運動の効果として,有酸素容量の増加(A 評価),筋力強化(A 評価)や体重・体組成の改善(B 評価)が示されており,その他の効果として,化学療法や放射線治療の副作用症状の軽減,骨密度減少の抑制などであった。乳がん治療後についても同様に,運動の効果として,有酸素容量の増加(A 評価),筋力強化(A 評価)と柔軟性の強化(A 評価),身体機能の改善(A 評価),ボディイメージの改善(B 評価)であった。その他,免疫機能への影響などが報告されていたが推奨までには至っていなかった。前立腺がんでは,運動の効果として,有酸素容量(A 評価),筋力強化(A 評価)と体重・体組成(B 評価),身体機能(B 評価)の改善であった。その他,性機能,失禁への運動の影響に関する報告がみられたが推奨度までには至っていなかった。幹細胞移植治療前の造血器腫瘍では,運動効果として有酸素容量(B 評価),体組成,身体機能の改善があった。幹細胞移植治療中・後の造血器腫瘍では,運動の効果は有酸素容量(C 評価),筋力強化(C 評価)でエビデンスレベルは低かった。その他に,体組成,身体機能,免疫機能への効果がみられたが推奨度までには至っていなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,疾患別や治療による身体機能や筋力,体組成,免疫機能などの改善に関する運動の効果について次のように推奨している。・ 消化器がん初回治療後の患者に運動療法を行うことで免疫系が賦活される(推奨グ レードB)。・ 放射線治療中の頭頸部がん患者に全身運動プログラムの提供は好ましい結果をもたら す可能性がある(推奨グレードB)。・ 乳がん術後の化学療法や放射線治療中・後の患者に対して,有酸素運動や抵抗運動, それらを混合した運動を行うよう指導することは,身体活動を拡大し,心肺機能や筋力,体組成を改善させる(推奨グレードA)。・ 婦人科がんの術後化学療法・放射線治療中,もしくは治療後の患者に対して,有酸素 運動などの運動療法を行うよう指導することは,体組成を改善させる(推奨グレードB)。・ 造血幹細胞移植を実施した造血器腫瘍患者に,エルゴメーターやトレッドミルを用い た有酸素運動,ストレッチングや筋力トレーニング,また,それらを組み合わせた運動療法を実施することは,運動耐容能力や筋力などの身体機能を改善させる(推奨グレードA)。・ 化学療法や放射線治療後の乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍患者に,エルゴメーター やトレッドミルを用いた有酸素運動,ストレッチングや筋力トレーニング,また,それらを組み合わせた運動療法を実施することは,運動耐容能や筋力などの身体機能を改善させる(推奨グレードA)。・ 化学療法や放射線治療中・後のがん患者に,有酸素運動や筋力トレーニングを実施す ることは,免疫機能を改善させる(推奨グレードA)。・ 緩和ケア対象のがん患者に対するサーキットトレーニングを中心とした運動療法は, 身体機能(歩行距離,立ち上がり時間)を改善させる(推奨グレードB)。・ 転移がん患者に対する抵抗運動は,上下肢の筋力増強効果がある(推奨グレードB)。・ 転移のある乳がん患者に対する呼吸法・瞑想法などのヨガトレーニングは,自覚的活
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III章各論:クリニカル・エビデンス 力を改善させる(推奨グレードB)。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが12 件ある。研究対象の内訳は,がん一般(8 件),乳がん(2 件),造血器腫瘍(1 件),進行がん(1 件)であった。 1 不安・抑うつ 1 )がん一般:8 件Craft ら43)によるシステマティックレビューでは,がんサバイバーを対象に15 件の無作為化比較試験(7,042 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群が,在宅以外の場所で30 分間以上,指導下で運動を実施した場合,抑うつの軽減に対して最も効果が高かった。対象は,乳がん患者のサバイバーが最も多く(9 件,60%),運動の種類として全研究に有酸素運動が含まれており,その他に耐久運動があった。運動プログラムの方法は,指導下による運動と在宅での自主的な運動で,介入期間は主に14~52週間,週2~5 回,1 回約30 分であった。Chan ら30)によるシステマティックレビューでは,がん患者を対象に気功を介入した無作為化比較試験(8 件)と比較臨床試験(15 件)の文献的考察を行っている。その結果,気功の介入による精神的効果は,測定方法と結果が多様であったため結論づけることは困難であった。Brown ら44)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,白血病,悪性リンパ腫,大腸がん,多様ながんのタイプのがんサバイバーを対象に,37 件の無作為化比較試験(2,929 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は,対照群と比較して,抑うつ症状が軽減されていたが顕著な効果ではなかった。質の高い研究で,1 週間の有酸素運動で抑うつ症状が軽減していた。47~62 歳のがんサバイバーで,指導下における運動が最も抑うつ症状を軽減させていた。介入期間は13.2±11.7 週,週3.0±2.5 回,1 回49.1±27.1 分,運動強度は3.9±1.3 METs*であった。運動は,ウォーキング,サイクリング,ウェイトマシン,抵抗バンド,ヨガであった。*代謝当量単位(1 MET=3.5 mL/kg/分) Mishra ら7)によるコクランのシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍,その他のがんを含んだ治療中の患者を対象に,56 件の無作為化比較試験(4,826 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間以上の運動は,中等度あるいは激しい運動をしたほうが軽度の運動と比較して,不安の軽減に顕著な効果を示していた。乳がん患者は他のがん患者と比較して,運動による不安の軽減が有意に顕著であった。運動は,ウォーキング単独運動や他のサイクリング,抵抗運動,耐久運動,ヨガ,気功などの併用であった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,主に乳がん治療中・後の患者を対象に,13 件の無作為化比較試験(783 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,ヨガはストレスや不安,抑うつの軽減に大きな効果があった。ヨガの介入期間は平均7週間(範囲:6 週間~6 カ月),1 回約30 分であった。Zeng ら11)によるシステマティックレビューでは,乳がん(8 件)やその他のがん(5 件) 運動療法は,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問4‒2
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を対象に,13 件の無作為化比較試験(592 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,太極拳(8 件)や気功(5 件)は,抑うつ,不安の軽減に有効であった。介入期間は5~12 週間であった。Tomlinson ら12)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,固形がんの治療中・後の患者を対象に,72 件の無作為化比較試験(5,367 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,抑うつの軽減に有効であった。運動は,有酸素運動,ウォーキング,ヨガ,抵抗運動,混合運動で,指導下(46 件)と在宅(26 件)で行われていた。Mishra ら45)によるシステマティックレビューでは,主に乳がん(22 件)治療中・後の患者を対象に,40 件の無作為化比較試験(3,694 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間の運動介入は,HRQOL の下位尺度である感情的健康状態,不安の軽減に有効であった。運動は,耐久運動や抵抗運動,ウォーキング,サイクリング,ヨガ,気功,または混合運動で,有酸素運動は30 件であった。介入期間は3 週間~1 年,1 回20~90 分(最頻値30 分)で,30 件は専門家(運動療法士,スポーツトレーナー,ヨガインストラクターなど)による介入であった。 2 )乳がん:2 件Carayol ら14)によるシステマティックレビューでは,化学療法や放射線治療中の乳がん患者を対象に,17 件の無作為化比較試験(1,380 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群が対照群と比較して,抑うつの軽減に有効であった。運動は,有酸素運動(16 件)や抵抗運動(7 件)の単独や併用,ヨガ(3 件)であった。介入期間の平均は17±8 週間(範囲:5~26 週間),1 回の平均回数は4±1 回(範囲:2~6 回),平均運動時間数は39±10 分(範囲:23~60 分)であった。運動は,指導下(6 件)と在宅(10 件)で行われていた。Battaglini ら16)は,1989~2013 年までの25 年間の乳がんサバイバーに関する51 件の文献的考察を行っている。その結果,乳がんサバイバーに対する運動介入は,抑うつの軽減に有効であった。主な運動は,有酸素運動と抵抗運動であった。 3 )造血器腫瘍:1 件Bergenthal ら22)によるコクランのシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件含む)を対象に,有酸素運動の介入に関する9 件の無作為化比較試験(818 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動の介入群は対照群と比較して,不安の軽減には統計学的有意差はなかった。主な有酸素運動はさまざまな歩行プログラムで,運動強度や介入期間は異なっていた。 4 )進行がん:1 件Albrecht ら26)によるシステマティックレビューでは,進行がん患者を対象に16 件の無作為化比較試験や横断研究,ケースシリーズなどを含むさまざまな研究(患者816 例,家族169 例)の文献的考察を行っている。その結果,身体活動の介入は,不安,ストレス,抑うつなどの精神症状を改善するのに有効であった。以上より,造血器腫瘍を除くがん患者に運動療法(有酸素運動,抵抗運動,ヨガ,気功,太極拳など)を行うことは,不安,抑うつ,ストレス,感情的健康状態や情緒的健
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III章各論:クリニカル・エビデンス 康の改善に有用であると考える。ただし,対象者のリクルートの際に抑うつの程度が考慮されていない研究もあり,抑うつ傾向が低い患者が対象となっている可能性が高い。よって,抑うつレベルや精神的状態を考慮したうえでの臨床での適応が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中・後の乳がん患者に対する運動は,不安や抑うつの軽減に効果があった(B 評価)。造血器腫瘍である造血幹細胞移植や悪性リンパ腫患者に対して,運動が抑うつの軽減に有効であったが不安に関しては効果がなかった。卵巣がんサバイバーに対して,運動は不安や抑うつの軽減に有効であった。結論として,乳がん患者以外のがん患者を対象とした運動効果は,不安・抑うつなどの精神的側面に焦点を合わせた研究に限られていた。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,各疾患別・治療別による精神的側面に関する運動の効果について,次のように推奨している。・ 乳がん手術後の化学療法・放射線治療中もしくは治療後の患者に対して,有酸素運動 や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うことで,抑うつや不安感を改善させる(推奨グレードA)。・ 婦人科がん手術後の化学療法・放射線治療中,もしくは治療後の患者に対して,有酸 素運動などの運動療法を行うよう指導することは,抑うつ傾向や自己効力感を改善させる(推奨グレードB)。・ 造血器腫瘍に対して造血器幹細胞移植を実施した患者に,指導下もしくは在宅での自 主トレーニングにて,エルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動を実施することは,それらを行わない群と比較して,抑うつや不安などの精神症状を改善させる(推奨グレードB)。・ 化学療法や放射線治療中・後の乳がん,造血器腫瘍患者に,エルゴメーターやトレッ ドミルを用いた有酸素運動や筋力トレーニング,それらを組み合わせた運動療法,また,運動療法とカウンセリングの併用やリハビリテーションの実施は,それらを行わない群と比較して,精神的機能の側面,心理的側面を改善させる(推奨グレードA)。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが22 件ある。研究対象の内訳は,がん患者一般(8 件),乳がん(5 件),造血器腫瘍(4 件),肺がん(1 件),大腸がん(1 件),前立腺がん(2 件),小児がん(1 件)であった。主なQOL 尺度として,HRQOL(Health Related Quality of Life),FACT—G(Functional Assessement of Cancer Therapy—General),FACT—B(Functional Assessement of Cancer Therapy—Brest),EORTC QLQ—C30(European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire—C30),SF36(Short Form 運動療法は,全般的なQOL を改善するか? ▶ ▶臨床疑問4‒3
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Health Survey)などが使用されていた。 1 )がん一般:8 件Fong ら29)によるシステマティックレビューでは,がん治療後の患者(乳がん65%)を対象に,34 件の無作為化比較試験(7,882 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,治療後の乳がん患者に対する運動は身体機能,精神的側面,QOL の改善に良い影響を及ぼしていた。乳がん以外のがん患者の運動効果として,QOL の改善がみられた。運動は,主に有酸素運動,その他に抵抗運動や耐久運動であった。介入期間は平均13 週(範囲3~60 週)であった。Mishra ら46)によるコクランのシステマティックレビューでは,乳がん,大腸がん,頭頸部がん,悪性リンパ腫,その他のがんサバイバーを対象に,40 件の無作為化比較試験(3,694 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間以上かつ6 カ月の運動で,HRQOL の有意な改善がみられた。HRQOL の下位尺度で有意であったのは,ボディイメージ/セルフエフィカシー,情緒的健康,セクシャリティ,睡眠障害,社会的役割,不安,倦怠感,痛みであった。有意でなかったのが,認知機能,身体機能,全体的健康状態,役割機能,スピリチュアリティであった。運動は,筋力トレーニング,抵抗運動,ウォーキング,サイクリング,ヨガ,気功,太極拳であった。Mishra ら7)によるコクランのシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍,その他のがんを含んだ治療中の患者を対象に,56 件の無作為化比較試験(4,826 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間以上の運動は対照群と比較して,HRQOL を有意に向上させていた。特にHRQOL の下位尺度である,身体機能,役割機能,社会的機能,倦怠感に対する効果がみられた。運動強度において,中等度あるいは激しい運動が軽度の運動に比較して,HRQOL と身体機能の改善,不安,倦怠感,睡眠障害の軽減に顕著な効果を示していた。運動は,ウォーキング単独やサイクリング,抵抗運動,耐久運動,ヨガ,気功などの併用であった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,主に乳がん(1 件のみ悪性リンパ腫)のがん治療中・後の患者を対象に,13 件の無作為化比較試験(783 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,ヨガはQOL の改善に中等度の効果があった。ヨガの介入期間は約7 週間(範囲:6 週間~6 カ月),1 回当たり約30 分であった。対照群は,カウンセリングやコーピングなどの支持療法の教育的介入を受けていた。Strasser ら10)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がんの治療中・後の患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,167 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,QOL の改善に有意な効果がみられた。介入期間は12 週間(2 件),4~6 カ月(4 件),1 年(4 件)で,主に週2~3 回であった。Focht ら33)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がん,肺がん,その他のがんにおける治療中(6 件)・後(9 件)の患者を対象に,15 件(1,077例)の無作為化比較試験と比較臨床試験の文献的考察を行っている。その結果,抵抗運動はQOL の改善に有意な効果がみられた。運動は,1 件を除きすべて指導下で行われており,介入期間は10 週間~12 カ月であった。Zeng ら11)によるシステマティックレビューでは,乳がん(8 件)やその他のがん(5件)を対象に,13 件の無作為化比較試験(592 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,太極拳(8 件)や気功(5 件)は,QOL の向上に有効であった。介入期間は5~
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III章各論:クリニカル・エビデンス 12 週間であった。Mishra ら46)によるシステマティックレビューでは,主に乳がん(22 件)とその他のがんサバイバーを対象(がん治療中・後の10 件含む)に,40 件の無作為化比較試験(3,694 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間の運動介入は,全般的HRQOL,その下位尺度である感情的健康状態,社会的機能の改善,不安,倦怠感の軽減に有効であった。運動は,耐久運動や抵抗運動,ウォーキング,サイクリング,ヨガ,気功,または混合運動で,有酸素運動は30 件であった。介入期間は3 週間~1 年,1 回20~90 分で,30 件は専門家(運動療法士,スポーツトレーナー,ヨガインストラクターなど)による介入であった。 2 )乳がん:5 件Carayol ら14)によるシステマティックレビューでは,化学療法や放射線治療中の乳がん患者を対象に,17 件の無作為化比較試験(1,380 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL の向上に有意に有効であった。特に, 1 週間に90~120 分以上の比較的軽い運動(<12 MET h/week)*は激しい運動より倦怠感の軽減やQOL の向上に有効であった。運動は,有酸素運動や抵抗運動またはその併用,ヨガであった。介入期間の平均は17±8 週間(範囲:5~26 週間),1 回の平均回数は4±1 回(範囲:2~6 回),平均時間数は39±10 分(範囲:23~60 分)であった。運動は,指導下(6 件)と在宅(10 件)で行われていた。*代謝当量単位(1 MET=3.5 mL/kg/分) Lee ら47)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーを対象に4 件の無作為化比較試験(375 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL が有意に向上していた。介入期間は8 週間~6 カ月であった。Zeng ら48)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーを対象に19 件の無作為化比較試験(1,919 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,全般的なQOL 得点が高かった。運動は,有酸素運動,有酸素運動と無酸素運動の混合運動,ヨガ,太極拳,有酸素運動と耐久運動,有酸素運動と抵抗運動,抵抗運動であった。介入期間は4~52 週間で,そのうち15 件が8~12 週間と最も多く,週1~5 回,1 回15~90 分であった。Battaglini ら16)によるシステマティックレビューでは,1989~2013 年までの25 年間の乳がんサバイバーに関する51 件の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL の改善に有効であった。主な運動は,有酸素運動と抵抗運動であった。Paramanandam ら38)によるシステマティックレビューでは,リンパ浮腫あるいはそのリスクを伴っている乳がん患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,091 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,低・中等度の筋力トレーニングの介入は安全であり,対照群と比較して,QOL の特定な側面に関して有効であった。筋力トレーニングの介入期間は5 週間~1 年間で,運動強度は主に低・中等度であった。全患者は,指導下で圧迫包帯を活用していた。 3 )造血器腫瘍:4 件Van Haren ら19)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療前・中・後の
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造血器腫瘍患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(734 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL の向上に有効であった。運動は,耐久運動や抵抗運動,日常生活の身体活動,漸進的リラクセーションやストレッチングであった。介入期間は3 週間~6 カ月であった。Persoon ら21)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者を対象に,8 件の無作為化比較試験(介入群472 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,全般的なQOL,身体的,精神的,認知的な機能の改善に有意な効果があった。主な運動は,有酸素運動や抵抗運動,混合運動で,運動強度は軽度・中等度であった。介入期間は4 週間~6 カ月,週2~10 回,1 回20~70 分であった。Baumann ら27)によるシステマティックレビューでは,急性リンパ白血病の治療中の小児がん患者を対象に,17 件(282 例)の無作為化比較試験(5 件)や比較対照試験(6件),ケースシリーズ(6 件)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL の向上に有効であった。運動プログラムの方法は多様で,2 件を除きすべて指導下で在宅や病院内で実施されていた。介入期間は,6 週間~2 年,週1~5回,1 回15~120 分であった。Bergenthal ら22)によるコクランのシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件含む)を対象に,9 件の無作為化比較試験(818 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動の介入群は対照群と比較して,QOL の改善に有効であった。 4 )肺がん:1 件Cavalheri ら40)によるコクランのシステマティックレビューでは,肺切除後12 カ月以内の非小細胞性肺がん患者を対象に,3 件(178 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,6 分以上の歩行群と歩行なし群の比較で,HRQOL に統計学的有意差はみられなかった。 5 )大腸がん:1 件Cramer ら23)によるシステマティックレビューでは,大腸がん患者を対象に5 件の無作為化比較試験(238 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL に統計学的有意差はみられなかった。運動は,中等度・高度の有酸素運動,抵抗運動であった。介入期間は2 週間(2 件),12 週間(2 件)と16 週間(1件),週2~5 回,1 日20~50 分であった。 6 )前立腺がん:2 件Keogh ら24)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者を対象に12 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,運動介入によって全般的なQOL の改善がみられた。その他,筋肉量,筋力,身体機能,健康に関連する身体・社会的QOL の改善がみられた。運動効果は,在宅よりもグループでの効果が高く,特に抵抗運動を含んだ場合は顕著であった。運動は,主に有酸素運動や抵抗運動の単独や混合運動などで,介入期間は4~52 週,週2~5 回であった。Baumann ら5)によるシステマティックレビューでは,前立腺がんの治療中・後の患者
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III章各論:クリニカル・エビデンス を対象に,25 件の無作為化比較試験(2,590 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動の介入によりQOL の改善がみられた。指導下の運動はそうでない運動と比較してより効果的であった。主な運動は,ウォーキング,抵抗運動,耐久運動,指導下または在宅での骨盤筋抵抗運動などであった。介入期間は4 週間~1 年,週1~5 回,1 日数回, 1 回15~90 分であった。 7 )小児がん:1 件Braam ら(2013)42)によるコクランのシステマティックレビューでは,19 歳以下の急性リンパ性白血病などの小児・青年期のがん治療中・後の患者を対象に,4 件の無作為化比較試験(107 例)と1 件の臨床比較対照試験(24 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,HRQOL は改善しなかった。運動は,身体活動トレーニングでさまざまな運動を含んでいた。介入期間は10 週間~2 年間,1 回15~60 分であった。以上より,がん治療中・後を含め,がん一般,乳がん,造血器腫瘍の患者に運動療法を行うことは,全般的なQOL を改善すると考える。ただし,大腸がんや肺がん,小児がん患者に関して,研究数や方法論的に限界があるため運動療法によるQOL に対する効果は得られていない。研究の限界として,risk of bias(ROB)の存在,がんの種類別(主に乳がん患者が多い),がんの治療別,運動の種類や介入方法,多様なQOL 尺度の使用や下位尺度との相違,インストラクターの有無や在宅での介入方法の相違,長期的な効果,サンプルサイズなどの限界があり,これらを考慮した大規模な無作為化比較試験が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中・後の乳がん患者や前立腺がん患者に対する運動は,QOLの改善に有効であった(B 評価)。また,造血幹細胞移植中や治療後においても運動を実施することでQOL の向上に有効であることが示されていた(C 評価)。その他,婦人科がんである卵巣がんや子宮体がんの患者を対象に運動を実施した場合のQOL の改善に関する研究が4 件みられた。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,疾患別・治療別での運動療法によるQOL の改善に関して次のように推奨している。・ 筋力・持久力・QOL の向上や倦怠感の緩和のために,放射線治療やホルモン療法を施 行されている前立腺がん患者に運動療法を行うことが強く推奨されている(推奨グレードA)。・ 乳がんの術後化学療法・放射線治療中に,有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わ せた運動療法を行うことは,身体機能関連のQOL を改善させる(推奨グレードB)。・ 乳がん治療後の患者においては,運動療法単独,もしくは心理療法やヨガ,ダンスな どを組み合わせたリハビリテーションプログラムにより,全般的なQOL の改善が得られる(推奨グレードA)。・ 乳がん患者において,遠隔転移があるなど,進行した病期の患者においても,運動療 法を行うことは,QOL の低下を緩徐にする(推奨グレードB)。・ 化学療法や放射線治療中・後の乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍患者に,エルゴメー
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ターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動や筋力トレーニング,ストレッチングなどの運動療法を実施することは,それらを行わない群と比較してQOL が改善される(推奨グレードA)。 本臨床疑問に関連する臨床研究としては,システマティックレビューのなかで付随的に有害事象や安全性について記載されている研究が12件あるが,全体的に記載のない研究が多かった。有害事象や安全性が報告された対象は,がん一般(2 件),乳がん(2 件),造血器腫瘍(3 件),肺がん(2 件),頭頸部がん,大腸がん,進行がん各1 件であった。 1 )がん一般:2 件Tomlinson ら12)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,固形がんの治療中・後の患者を対象に,72 件の無作為化比較試験(5,367 例)のメタアナリシスを行っている。運動は,指導下(46 件)と在宅(26 件)で行われていた。考察のなかで,有害事象は,がんの種類や治療によるものであるが,最も多く報告されていたのが,心臓血管系に関する事象であった。American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,運動を実施する際には,運動の専門家やがん治療のチームのもとで実施することを推奨していた。Meneses—Echavez ら13)によるシステマティックレビューでは,さまざまながんの対象者に運動を介入した11 件の無作為化比較試験(1,530 例)で,3 件(27%)の有害事象を報告していた。1 件が乳がん患者に運動を介入した際の有害事象として,リンパ浮腫,婦人科系合併症,インフルエンザ,さらに対照群で足の骨折,気管支炎を報告していた。2 件目は,悪性リンパ腫の患者を対象とした研究で,1 例のみ有害事象の報告があり,運動介入群に背中,臀部,膝の痛みがあった。3 件目は,前立腺がん患者を対象とした研究で,抵抗運動を介入した際に,有酸素運動のトレッドミルエクササイズの前に失神のエピソード,また有酸素運動後に15 分間の心筋梗塞の発生があった。その後,これらのエピソードはすべて消失した。 2 )乳がん:2 件Zeng ら48)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーを対象に,運動を介入した19 件の無作為化比較試験(1,919 例)で,1 件の有害事象が報告されていた。治療後の乳がん患者に15 週間の有酸素運動の介入を,週に3 回,1 回15~35 分行った際に,運動介入群が対照群と比較して,リンパ浮腫の有害事象が高い割合で出現していた。しかし,身体活動によるものか明確でないため,さらなる検証が必要であるとしていた。Paramanandam ら38)によるシステマティックレビューでは,リンパ浮腫あるいはそのリスクを伴っている乳がん患者を対象に,筋力トレーニングの介入効果に関する11件の無作為化比較試験(1,091 例)において,低・中等度の筋力トレーニングの介入は安全であると結論づけていた。 運動療法は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶ ▶臨床疑問4‒4
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III章各論:クリニカル・エビデンス 3 )造血器腫瘍:3 件Vermaete ら20)によるシステマティックレビューでは,悪性リンパ腫の治療前・中・後の患者を対象に,身体活動とフィジカルフィットネスの2 種類の介入を行った13 件(2,450 例)の研究で,有酸素運動は実行可能で安全な介入であると結論づけていた。有酸素運動のトレーニングは,治療や治療後に影響はなかったと報告されていた。また,重篤な事象は起こらなかったが,1 件のみ運動関連の有害事象として,背中,腰,膝への影響があったとしていた。Persoon ら21)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者に有酸素運動や抵抗運動を介入した8 件の無作為化比較試験(介入群472 例)で,全体的に運動は安全であると結論づけていた。8 件の報告のうち,5 件で有害事象はなかったと報告されているが,その他の報告では記載がなかった。Bergenthal ら22)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件)を対象に,有酸素運動の介入に関する9 件の無作為化比較試験(818 例)で,3件の重篤な有害事象を報告していた。例えば,出血,発熱,肺炎,深部静脈血栓,感染などが出現していたが,有酸素運動の介入による統計学的有意差は認められなかった。したがって,介入によるものなのかは定かではないと報告されていた。 4 )肺がん:2 件Crandall ら18)によるシステマティックレビューでは,手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象にした20 件(575 例)の無作為化比較試験(8 件)を含む研究で,9 件の有害事象を報告していた。1 件の研究では,2 例の患者の収縮期血圧が急激に下がり(<20 mmHg),他の研究では,腰痛,肩の炎症の悪化,肩の痛みがみられた。7 件の研究では有害事象の報告はなかった。Paramanandam ら17)によるシステマティックレビューでは,肺がん患者に有酸素運動などの運動介入を行った10 件(192 例,症例報告1 件含む)のうち,7 件の研究で肺がん患者は困難な症状や身体可動性に制限があるが,運動は安全であると報告していた。ただし,NCCN(National Comprehemsive Cancer Network)ガイドラインでは,運動を行う際には貧血や痛みなどの既往歴や合併症などを定期的にアセスメントすることが必要であるとしていた。 5 )大腸がん:1 件Cramer ら23)によるシステマティックレビューでは,大腸がん患者に有酸素運動や抵抗運動などを介入した5 件の無作為化比較試験(238 例)で,1 件のみ免疫とDNA へのダメージに関する報告がなされていた。 6 )頭頸部がん:1 件Carvalho ら1)によるシステマティックレビューでは,頭頸部がんの治療による肩の機能不全に対して運動を介入した3 件の無作為化比較試験(104 例)で,運動介入群は対照群と比較して,2 件の重篤でない有害事象を報告していた。1 件目は,放射線治療中の最後に出現した悪心のケースで,原因として運動前の栄養摂取が少ないために出現したのではないかと報告されていた。2 件目は,肩甲骨に傷口があるため痛みが増強したケースであった。
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7 )進行がん:1 件Albrecht ら26)によるシステマティックレビューでは,進行期のがん患者を対象にした16 件の無作為化比較試験や横断研究,ケースシリーズなどを含むさまざまな研究(患者816 例,家族169 例)のすべてにおいて,安全性と運動の実施可能性について支持していた。以上より,がん患者に対する運動は,一般的に安全で重篤な有害事象は起こりにくいと考えるが,まれに有害事象が発生する場合がある。運動に関する有害事象の防止としてガイドラインで提示されている留意事項や禁忌事項等を参考にし,運動の専門家のコンサルテーションや指導下による運動を実施することが望ましいと考える。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中・後の乳がん患者や前立腺がん患者,成人の造血器幹細胞移植中・後の患者に対して,運動療法を実施することは安全であると報告していた(A評価)。その他,大腸がんや婦人科がんに関しては,研究数に限界があるため,安全性に関する記載がなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,化学療法中・後,さらに造血器幹細胞移植患者において運動療法は安全に実施できることが記載されている。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが5 件ある。研究対象の内訳は,がん一般(1 件),乳がん(2 件),肺がん(1 件),小児(1 件)であった。Strasser ら10)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がんの治療中・後の患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,167 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,抵抗運動は上下肢の筋力強化に大きな効果があり,腕のむくみやリンパ浮腫の軽減に対して有意な効果があった。介入期間は12 週間(2 件),4~ 6 カ月(4 件),1 年(4 件)で,週2~3 回であった。Chung ら37)によるシステマティックレビューでは,乳がん術後のリンパ浮腫患者を対象に,無作為化比較試験(8 件)と交差試験(3 件)の11 件(728 例)の文献的考察を行っている。その結果,数日~13 週間の運動は,リンパ浮腫の改善(1 年間)に有意な効果があった。運動は,有酸素運動,水中リンパ療法,ダンス療法,理学療法,多機能運動,包括的リハビリテーション,ウエイト・リフティングの7 種類で,理学療法や多様な運動の組み合わせが多かった。Paramanandam ら38)によるシステマティックレビューでは,リンパ浮腫あるいはそのリスクを伴っている乳がん患者を対象に,筋力トレーニングの介入効果に関する11件の無作為化比較試験(1,091 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,低・中等度の筋力トレーニングの介入は安全であり,対照群と比較して,腕の容積や乳がん起因によるリンパ浮腫の出現を悪化させることなく,上下肢の筋力を有意に強化させていた。筋力トレーニングの介入期間は5 週間~1 年間で,運動強度は主に低・中程度の運動であった。全患者は,指導下による圧迫包帯を活用していた。 運動療法は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問4‒5
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III章各論:クリニカル・エビデンス Crandall ら18)によるシステマティックレビューでは,手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象に,20 件(575 例)の報告(無作為化比較試験8 件含む)のメタアナリシスを含む文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,術後合併症の軽減,入院期間の短縮がみられた。運動の種類として,すべての研究に有酸素運動(主にウォーキングやサイクリング)が含まれており,その他に抵抗運動(1 件)や呼吸運動(9 件)があった。17 件が理学療法士や理学療法の専門医師,リハビリテーションチームなどの指導下による介入で,1 日2 回~1 週間2 回,1 回10~45 分の頻度で運動プログラムが実施されていた。Braam ら42)は,小児・青年期(19 歳以下)の急性リンパ性白血病などのがん治療中・後の患者を対象に,4 件の無作為化比較試験(107 例)と1 件の臨床比較対照試験(24例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,副作用症状の軽減に有効でなかった。運動は,身体活動トレーニングでさまざまな運動を含み,介入期間は10 週間~2 年間,頻度は1 回15~60 分であった。以上より,運動は,乳がん患者などの治療中・後のリンパ浮腫の軽減,肺がん患者の術後合併症の軽減,入院期間の短縮などに有用であると考える。しかし,小児がんの治療に伴う副作用症状に関しては有用ではなかった。検査・治療等に伴う有害事象に関する研究やサンプル数の限界があるため,今後さらなる質の高い研究が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中の乳がん患者に対する運動療法の効果として,副作用症状が軽減するかもしれないと報告しているが,研究数に限界がありエビデンスレベルの評価はなされていない。化学療法や放射線治療後の乳がん患者に対する運動療法の効果として,苦痛症状や有害事象の緩和に関して効果がある研究とそうでない研究があり,エビデンスレベルはC 評価であった。婦人科がんの治療による下肢のリンパ浮腫に対する運動療法の安全な効果に関する研究は全く行われていなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,乳がん,造血器腫瘍の化学療法や放射線治療中・後のがん患者に,有酸素運動や筋力トレーニングを実施することは,有害事象の軽減(悪心・嘔吐,貧血,下痢,痛みなど),倦怠感の改善,免疫機能の改善が認められるため,行うよう強く推奨されている(推奨グレードA)。 1 全生存率(total mortality),原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。研究対象の内訳は,がんサバイバー(1 件),乳がん(2 件),大腸がん(1 件)であった。Ballard—Barbash ら49)によるシステマティックレビューでは,がんサバイバーを対象に,運動と死亡率などの関連について45 件の無作為化比較試験(13 件)を含む研究について文献的考察を行っている。その結果,27 件の観察研究で,運動は乳がんと大腸がんのすべての疾患特異的死亡率や全死亡率の低下に関連していたという一貫したエビデンスが示されていた。他のがんに関しては,運動と死亡率との関連において十分なエ 運動療法は,予後を改善するか? ▶ ▶臨床疑問4‒6
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ビデンスは得られなかった。Löf ら50)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーを対象とした運動と生命予後に関する12 件の無作為化比較試験(9 件)を含む研究について文献的考察を行っている。その結果,乳がんサバイバーにおける運動が生命予後に影響するという十分な知見は得られなかった。Je ら51)によるシステマティックレビューでは,大腸がん患者を対象に,運動と死亡率の関連について7 件の前向きコホート研究(11,647 例)のメタアナリシスを行っている。なお,フォローアップ期間は3.8~11.9 年であった。その結果,診断前・後の運動は両群とも大腸がんの特異的死亡率と全死亡率の低下に関連していた。診断前の運動群と非運動群の比較で,運動群の死亡リスクは0.75 であった(大腸がん特異的死亡率)。診断前の高い運動群は低い運動群と比較して,死亡リスクは0.70 で,同様に診断後に何か運動をした群の死亡リスクは0.74,診断後の高い運動群の死亡リスクは0.65 であった。Zhong ら52)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象とした運動と死亡率の関連について16 件のコホート研究(42,602 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,乳がん診断前・後の運動が,乳がんの特異的死亡率と全死亡率の軽減に関連があると結論づけていた。診断前に運動を実施している群の死亡リスクは0.82 で,診断前の低・中等度の運動群の死亡リスクは,0.81,0.83 であった(乳がん特異的死亡率)。診断前の全死亡率も同様の結果であった。診断後の乳がん特異的死亡率と全死亡率も同様であった。BMI<25,≧25,あるいは更年期の状態で比較した場合,全群において運動によって有意に死亡率が低下していた。特に,運動の介入によって,肥満女性は標準体重の女性と比較して,有意に死亡率が低下していた。また,閉経後の女性は閉経前の女性と比較して,死亡率が有意に低下していた。以上より,運動は,乳がんおよび大腸がん患者の死亡率を低下させる可能性があると考える。しかし,研究数や研究方法の限界があり,予後を改善するかまでは結論づけられない。今後,長期的な観察研究や無作為化比較試験,メタアナリシスの可能性を含めた研究が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,大腸がん診断後の患者にレクレーション運動を行うことで,特異的死亡率と全死亡率を下げるかもしれないと報告されているがエビデンスレベルの評価には至っていない。 2無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (神里みどり)
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III章各論:クリニカル・エビデンス 【文 献】1) Carvalho AP, Vital FM, Soares BG. Exercise interventions for shoulder dysfunction in patients treated for head and neck cancer. Cochrane Database Syst Rev 2012; 4: CD008693 2) Tatham B, Smith J, Cheifetz O, et al. The efficacy of exercise therapy in reducing shoulder pain related to breast cancer: a systematic review. Physiother Can 2013; 65: 321-30 3) Schmitz KH, Courneya KS, Mattews C, et al; American College of Sports Medicine. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010; 42: 1409-26 4) 日本リハビリテーション医学会,がんのリハビリテーションガイドライン策定委員会 編.がんのリハビリテーションガイドライン,金原出版,2013 5) Baumann FT, Zopf EM, Bloch W. Clinical exercise interventions in prostate cancer patients―a systematic review of randomized controlled trials. Support Care Cancer 2012; 20: 221-33 6) Puetz TW, Herring MP. Differential effects of exercise on cancer-related fatigue during and following treatment: a meta-analysis. Am J Prev Med 2012; 43: e1-24 7) Mishra SI, Scherer RW, Snyder C, et al. Exercise interventions on health-related quality of life for people with cancer during active treatment. Cochrane Database Syst Rev 2012; 8: CD008465 8) Cramp F, Byron-Daniel J. Exercise for the management of cancer-related fatigue in adults. Cochrane Database Syst Rev 2012; 11: CD006145 9) Buffart LM, van Uffelen JG, RiphagenII, et al. Physical and psychosocial benefits of yoga in cancer patients and survivors, a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Cancer 2012; 12: 559 10) Strasser B, Steindorf K, Wiskemann J, et al. Impact of resistance training in cancer survivors: a meta-analysis. Med Sci Sports Exerc 2013; 45: 2080-90 11) Zeng Y, Luo T, Xie H, et al. Health benefits of qigong or tai chi for cancer patients: a systematic review and meta-analysis. Complement Ther Med 2014; 22: 173-86 12) Tomlinson D, Diorio C, Beyene J, et al. Effect of exercise on cancer-related fatigue: a meta-analysis. Am J Phys Med Rehabil 2014; 93: 675-86 13) Meneses-Echávez JF, González-Jiménez E, Ramírez-Vélez R. Supervised exercise reduces cancerrelated fatigue: a systematic review. J Physiother 2015; 61: 3-9 14) Carayol M, Bernard P, Boiché J, et al. Psychological effect of exercise in women with breast cancer receiving adjuvant therapy: what is the optimal dose needed? Ann Oncol 2013; 24: 291-300 15) Zou LY, Yang L, He XL, et al. Effects of aerobic exercise on cancer-related fatigue in breast cancer patients receiving chemotherapy: a meta-analysis. Tumour Biol 2014; 35: 5659-67 16) Battaglini CL, Mills RC, Phillips BL, et al. Twenty-five years of research on the effects of exercise training in breast cancer survivors: A systematic review of the literature. World J Clin Oncol 2014; 5: 177-90 17) Paramanandam VS, Dunn V. Exercise for the management of cancer-related fatigue in lung cancer: a systematic review. Eur J Cancer Care 2015; 24: 4-14 18) Crandall K, Maguire R, Campbell A, et al. Exercise intervention for patients surgically treated for Non-Small Cell Lung Cancer(NSCLC): a systematic review. Surg Oncol 2014; 23: 17-30 19) Van Haren IE, Timmerman H, Potting CM, et al. Physical exercise for patients undergoing hematopoietic stem cell transplantation: systematic review and meta-analyses of randomized controlled trials. Phys Ther 2013; 93: 514-28 20) Vermaete N, Wolter P, Verhoef G, et al. Physical activity, physical fitness and the effect of exercise training interventions in lymphoma patients:a systematic review. Ann Hematol 2013;92:1007—21 21) Persoon S, Kersten MJ, van der Weiden K, et al. Effects of exercise in patients treated with stem cell transplantation for a hematologic malignancy:a systematic review and meta—analysis. Cancer Treat Rev 2013;39:682—90 22) Bergenthal N, Will A, Streckmann F, et al. Aerobic physical exercise for adult patients with haematological malignancies. Cochrane Database Syst Rev 2014;11:CD009075 23) Cramer H, Lauche R, Klose P, et al. A systematic review and meta-analysis of exercise interventions for colorectal cancer patients. Eur J Cancer Care(Engl)2014; 23: 3-14 24) Keogh JW, MacLeod RD. Body composition, physical fitness, functional performance, quality of life, and fatigue benefits of exercise for prostate cancer patients: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2012; 43: 96-110 25) Gardner JR, Livingston PM, Fraser SF. Effects of exercise on treatment-related adverse effects for patients with prostate cancer receiving androgen-deprivation therapy: a systematic review. J Clin Oncol 2014; 32: 335-46
p.78
26) Albrecht TA, Taylor AG. Physical activity in patients with advanced-stage cancer: a systematic review of the literature. Clin J Oncol Nurs 2012; 16: 293-300 27) Baumann FT, Bloch W, Beulertz J. Clinical exercise interventions in pediatric oncology: a systematic review. Pediatr Res 2013; 74: 366-74 28) Mustian KM. Yoga as treatment for insomnia among cancer patients and survivors: a systematic review. Eur Med J Oncol 2013; 1: 106-15 29) Fong DY, Ho JW, Hui BP, et al. Physical activity for cancer survivors: meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2012; 344: e70 30) Chan CL, Wang CW, Ho RT. A systematic review of the effectiveness of qigong exercise in supportive cancer care. Support Care Cancer 2012; 20: 1121-33 31) Singh F, Newton RU, Galvão DA, et al. A systematic review of pre-surgical exercise intervention studies with cancer patients. Surg Oncol 2013; 22: 92-104 32) Stene GB, Helbostad JL, Balstad TR, et al. Effect of physical exercise on muscle mass and strength in cancer patients during treatment―a systematic review. Crit Rev Oncol Hematol 2013; 88: 573- 93 33) Focht BC, Clinton SK, Devor ST, et al. Resistance exercise interventions during and following cancer treatment: a systematic review. J Support Oncol 2013; 11: 45-60 34) Kruijsen-Jaarsma M, Révész D, Bierings MB, et al. Effects of exercise on immune function in patients with cancer: a systematic review. Exerc Immunol Rev 2013; 19: 120-43 35) Bourke L, Homer KE, Thaha MA, et al. Interventions to improve exercise behaviour in sedentary people living with and beyond cancer: a systematic review. Br J Cancer 2014; 110; 831-41 36) Grande AJ, Silva V, Riera R, et al. Exercise for cancer cachexia in adults. Cochrane Database Syst Rev 2014; 11: CD010804 37) Chung C, Lee S, Hwang S, et al. Systematic review of exercise effects on health outcomes in women with breast cancer. Asian Nurs Res 2013; 7: 149-59 38) Paramanandam VS, Roberts D. Weight training is not harmful for women with breast cancerrelated lymphoedema: a systematic review. J Physiother 2014; 60: 136-43 39) Vermaete N, Wolter P, Verhoef G, et al. Physical activity, physical fitness and the effect of exercise training interventions in lymphoma patients: a systematic review. Ann Hematol 2013; 92: 1007-21 40) Cavalheri V, Tahirah F, Nonoyama M, et al. Exercise training undertaken by people within 12 months of lung resection for non-small cell lung cancer. Cochrane Database Syst Rev 2013; 7: CD009955 41) Cavalheri V, Tahirah F, Nonoyama M, et al. Exercise training for people following lung resection for non-small cell lung cancer―a Cochrane systematic review. Cancer Treat Rev 2014; 40: 585-94 42) Braam KI, van der Torre P, Takken T, et al. Physical exercise training interventions for children and young adults during and after treatment for childhood cancer. Cochrane Database Syst Rev 2013; 4: CD008796 43) Craft LL, Vaniterson EH, Helenowski IB, et al. Exercise effects on depressive symptoms in cancer survivors: a systematic review and meta-analysis. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2012; 21: 3-19 44) Brown JC, Huedo-Medina TB, Pescatello LS, et al. The efficacy of exercise in reducing depressive symptoms among cancer survivors: a meta-analysis. PLoS One 2012; 7: e30955 45) Mishra SI, Scherer RW, Snyder C, et al. Are exercise programs effective for improving healthrelated quality of life among cancer survivors? A systematic review and meta-analysis. Oncol Nurs Forum 2014; 41: e326-42 46) Mishra SI, Scherer RW, Geigle PM, et al. Exercise interventions on health-related quality of life for cancer survivors. Cochrane Database Syst Rev 2012; 8: CD007566 47) Lee JE, Loh SY. Physical activity and quality of life of cancer survivors: a lack of focus for lifestyle redesign. Asian Pac J Cancer Prev 2013; 14: 2551-5 48) Zeng Y, Huang M, Cheng AS, et al. Meta-analysis of the effects of exercise intervention on quality of life in breast cancer survivors. Breast Cancer 2014; 21: 262-74 49) Ballard-Barbash R, Friedenreich CM, Courneya KS, et al. Physical activity, biomarkers, and disease outcomes in cancer survivors: a systematic review. J Natl Cancer Inst 2012; 104: 815-40 50) Löf M, Bergström K, Weiderpass E. Physical activity and biomarkers in breast cancer survivors: a systematic review. Maturitas 2012; 73: 134-42 51) Je Y, Jeon JY, Giovannucci EL, et al. Association between physical activity and mortality in colorectal cancer: a meta-analysis of prospective cohort studies. Int J Cancer 2013; 133: 1905-13 52) Zhong S, Jiang T, Ma T, et al. Association between physical activity and mortality in breast cancer: a meta-analysis of cohort studies. Eur J Epidemiol 2014; 29: 391-404
p.79
III章各論:クリニカル・エビデンス ホメオパシーは,約200 年前にドイツ人の医師サミュエル・ハーネマンが体系化した医療であり,2 つの基本原則がある。1類似の原則:ある症状で苦しんでいる人に,健康な人に与えた場合に同じような症状を引き起こす物質〔ホメオパシー薬(レメディ)〕を投与すること。2最小限で効果的な投与を行うこと:ある原料をレメディにする過程で非常に高い希釈率で薄め,心身に悪影響を及ぼさず,自然治癒力に働きかける作用のみを得るようにして,患者の治療を行うこと。このようにして,ホメオパシーは,体に備わっている自然治癒力に働きかけ,患者が全体のバランスを取り戻しながら回復すると考えられている。レメディは3,000 種以上あるが,なぜ効くのかはいまだ解明されておらず,世界で170以上の無作為化比較試験や,多くの研究論文が報告されている1)。ホメオパシーは,現在世界の80 カ国以上で用いられ,特に欧州では約30%の人がセルフケアとして利用し,欧米人の75%がホメオパシーを認知している。ホメオパシーを行う治療者は,フランス,オーストリア,ハンガリー,ロシアなど,法的規制のもとに医師のみが行う国と,英国など法的規制のない国や,ドイツのように独自の形態を取っている国がある。日本では,なんら規制がないのが現状である。 疾患に対する医学的知識や臨床経験をもっている治療者から投与されたホメオパシーのレメディ自体は安全であることが多い。しかし,レメディを誤って使用し,新生児が死亡した症例も報告されている2,3)。こうした事例を受けて日本学術会議は,2010 年に会長談話として,『ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です』と発表している。また,2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日のPubMed での検索結果では,ホメオパシーが,がんの縮小や生存率向上に寄与したとする論文はなかった。こうしたことを踏まえ,ホメオパシーは慎重に行わなければならない。 ・患者背景が臨床試験ごとに異なる。・対照群の設定が研究ごとに異なる。・ほとんどの報告が小規模な試験である。・アウトカムの評価方法が臨床試験ごとに異なる。 1 サマリー 1 ホメオパシーの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 5 ホメオパシー
p.80
・長期的な効果の調査が不十分である。・今後,ホメオパシーのエビデンスを示すためには,さらなる研究が必要である。 ホメオパシーでの副作用的反応では,アグラベーションとプルービングに注意が必要である。アグラベーションは,病状が回復する前に一時的に悪化するという状態に使われる。これは全体の10%程度でしか起こらない。本来,アグラベーションが起こらずに回復するのが望ましく,これが起きたらホメオパシーをいったん中止すべきである。もし回復中の一時的な悪化でなければ病状の悪化であり,そのままホメオパシーを続ければ,前述のような最悪の事態を招く可能性がある。次にプルービングは,本来,「試験」という意味である。ハーネマンは,健康な人にレメディを投与して,引き起こされた症状を記録し,薬効を決めた。現在でも,レメディを服用することで,それが持つ像(症状)が引き起こされる可能性がある。健康な人がレメディを服用したり,誤ったレメディを飲めば,新たな症状(レメディが持つ症状)の出現の可能性があり危険である1)。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Homeopathy」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年1 月12 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:11 件 Homeopathy AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] ▶ 無作為化比較試験:5 件 Homeopathy AND(Randomized Controlled Trial[pt] OR Randomized Controlled Trial[ti] OR Randomised Controlled Trial[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件 PubMed:11 件 抄録を用いたスクリーニングで9 件除外・対象者ががん以外:6 件・ホメオパシー単独以外:3 件 2 件
p.81
III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(無作為化比較試験) 【文 献】1) 日本ホメオパシー医学会ホームページ.http://www.jpsh.jp/ 2) 河上 早,金涌佳雅,原田一樹,他.ホメオパシー治療下で,下痢・嘔吐の放置による脱水・低体重で死亡したアトピー性皮膚炎罹患児の一剖検例.防衛医大誌2014; 39: 122-6 3) 下村麻衣子,松重武志,井上裕文,他.ホメオパシーに起因したビタミンK 欠乏性頭蓋内出血の1 例.小児科臨床2011;64:1699—1702 PubMed:5 件 抄録,本文を用いたスクリーニングで0 件除外 5 件
p.82
1 痛 み 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 5 倦怠感 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 7 その他 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはないが,無作為化比較試験が2 件ある。Jacobs ら1)による無作為化比較試験では,手術,抗がん剤,放射線治療を完了した乳がんの女性のホットフラッシュに対して,プラセボと比較して,ホメオパシーが有用であったことを示す確証はないと結論している。しかし,全体的健康感の指標は改善する可能性があると述べている。Thompsonら2)による無作為化比較試験では,乳がんサバイバーにおけるエストロゲン減少の症状に対して,プラセボと比較して,ホメオパシーが有用であったことを示す確証はないと結論している。以上より,乳がん患者に対して,ホメオパシーによるホットフラッシュを含めたエストロゲン減少の症状を改善させる効果に対する根拠はない。 2 臨床疑問 ホメオパシーは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問5‒1
p.83
III章各論:クリニカル・エビデンス 1 不 安 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 抑うつ 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Milazzoら3)によるシステマティックレビューでは,ホメオパシーにはがん治療における効果(がんと闘うための体力増強,身体的・精神的な健康の改善,病気や治療の結果起こる痛みの緩和)を示す十分な確証はないと結論している。以上より,がん患者に対してホメオパシーは,従来の治療のみを行った群と比較して,全般的なQOL のうち,がんと闘うための体力増強,身体的・精神的な健康の改善,病気や治療の結果起こる痛みを改善させる根拠はない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1件,無作為化比較試験が3件ある。Kassab ら4)によるシステマティックレビューでは,ホメオパシー薬(Calendula)が放射線治療中の急性皮膚炎を予防する可能性があると結論している。また,化学療法による口内炎がホメオパシー薬(Traumeel S)により改善する可能性があると述べている。Pérol ら5)による無作為化比較試験では,標準的な悪心予防に複合ホメオパシー薬(Cocculine)を追加することは,早期乳がん患者における抗がん剤による悪心・嘔吐の予防には効果がないと結論している。 ホメオパシーは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問5‒2 ホメオパシーは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問5‒3 ホメオパシーは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問5‒4 ホメオパシーは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問5‒5
p.84
Oberbaum ら6)による無作為化比較試験では,ホメオパシー薬(Traumeel S)が骨髄移植を受けた小児の口内炎の苦痛と病悩期間を改善する可能性があると述べている。Balzarini ら7)による無作為化比較試験では,放射線治療における皮膚炎において,皮膚の熱感に対しては,ホメオパシー薬(Belladonna, X-ray)によって改善する可能性があると述べている。以上より,がん患者に対してホメオパシーは,プラセボと比較して,口内炎や放射線治療における皮膚炎を軽減させる可能性があると考えられる。一方で,抗がん剤による悪心・嘔吐の予防を軽減させる根拠はない。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 (遠藤光史) 【文 献】1) Jacobs J, Herman P, Heron K, et al. Homeopathy for menopausal symptoms in breast cancer survivors: a preliminary randomized controlled trial. J Altern Complement Med 2005; 11: 21-7 2) Thompson EA, Montgomery A, Douglas D, et al. A pilot, randomized, double-blinded, placebocontrolled trial of individualized homeopathy for symptoms of estrogen withdrawal in breast-cancer survivors. J Altern Complement Med 2005; 11: 13-20 3) Milazzo S, Russell N, Ernst E. Efficacy of homeopathic therapy in cancer treatment. Eur J Cancer. 2006; 42: 282-9 4) Kassab S, Cummings M, Berkovitz S, et al. Homeopathic medicines for adverse effects of cancer treatments. Cochrane Database Syst Rev 2009; 15; CD004845 5) Pérol D, Provençal J, Hardy-Bessard AC, et al. Can treatment with Cocculine improve the control of chemotherapy-induced emesis in early breast cancer patients? A randomized, multi-centered, double-blind, placebo-controlled Phase III trial. BMC Cancer 2012; 12: 603 6) Oberbaum M, Yaniv I, Ben-Gal Y, et al. A randomized, controlled clinical trial of the homeopathic medication TRAUMEEL S in the treatment of chemotherapy-induced stomatitis in children undergoing stem cell transplantation. Cancer 2001; 92: 684-90 7) Balzarini A, Felisi E, Martini A, et al. Efficacy of homeopathic treatment of skin reactions during radiotherapy for breast cancer: a randomised, double-blind clinical trial. Br Homeopath J 2000; 89: 8-12 ホメオパシーは,予後を改善するか? ▶臨床疑問5‒6
p.85
III章各論:クリニカル・エビデンス アニマルセラピー(animal thrapy),動物介在療法(animal assisted therapy)は,動物と人との交流がもたらす健康,自立,生活の質の改善を目的に,補助療法・非薬物療法あるいはケアの一環として臨床で行われている活動である。アニマルセラピーの対象者は,うつ病や統合失調症,心的外傷後ストレス障害などの精神疾患の患者,情緒障害や学習障害を伴う子どもである。アニマルセラピーの利点として,生理的利点・心理的利点・社会的利点の3 点が挙げられる。その人に内在するストレスを軽減させたり,あるいは当人に自信をもたせたりといったことを通じて,情緒的安定,自主性や意欲の向上,社会性の改善,患者の自立と適応を高めることを目的としている。 ・ 介入方法が異なる可能性がある。・ 施術者による効果の違いがある可能性がある。・ 動物の訓練状態が異なる可能性がある ・ 症例数が少ない,試験のデザインが不明などのエビデンスが低い論文が多い。・ 無作為化比較試験が少なく,システマティックレビューがない。・ 方法,介入方法が統一されていない。・ アウトカムの評価が統一されていない。 ・ 人畜共通感染症・ 動物による外傷,咬傷・ 禁忌事項1開放創がある患者,皮膚疾患をもつ患者2動物に対するアレルギーを有する患者 1 サマリー 1 アニマルセラピーの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 6 アニマルセラピー
p.86
[検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Animal therapy」「Animal assisted therapy」「Animal assisted」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年5 月28 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:0 件 Animal therapy OR Animal assisted therapy OR Animal assisted AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] ▶ 無作為化比較試験:1 件 Animal therapy OR Animal assisted therapy OR Animal assisted AND(Randomized Controlled Trial[pt] OR Randomized Controlled Trial[ti] OR Randomised Controlled Trial[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(無作為化比較試験) 5 文献検索の条件 1 件 PubMed:1 件 抄録,本文を用いたスクリーニングで0 件除外
p.87
III章各論:クリニカル・エビデンス 1 痛 み 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 5 倦怠感 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 1 不 安 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 抑うつ 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 臨床疑問 アニマルセラピーは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問6‒1 アニマルセラピーは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問6‒2
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3 その他 本臨床疑問に関連する無作為化比較試験が1 件ある。Johnson ら1)による無作為化比較試験では,気分,主観的健康感,一体感について調査されていたが,対照群と比較して統計学的有意差を認めなかった。以上より,アニマルセラピーは,がん患者の精神症状を軽減するかもしれないが,根拠は十分ではなく,有用であるとは結論づけられない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 (髙世秀仁) アニマルセラピーは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問6‒3 アニマルセラピーは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問6‒4 アニマルセラピーは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問6‒5 アニマルセラピーは,予後を改善するか? ▶臨床疑問6‒6
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III章各論:クリニカル・エビデンス 【文 献】1) Johnson RA, Meadows RL, Haubner JS, et al. Animal-assisted activity among patients with cancer: effects on mood, fatigue, self-perceived health, and sense of coherence. Oncol Nurs Forum 2008; 35: 225-32
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リラクセーションとは,『広辞苑』によると,「心身の緊張をときほぐすこと,リラックスすること」とされている1)。医学的には,「ストレス反応として交感神経が興奮するのに対し,副交感神経の働きを優位にすること」と捉えることが多い。そのような状態をもたらす方法を「リラクセーション」としてここで扱う。リラクセーションには種々の方法があるが,いずれも意図的に心身の本来の調整力に働きかけて,内面からのリラックス状態を導くという共通点が指摘されている2)。リラクセーションを「筋肉の緊張状態を体系的に弛緩させる方法」と狭義に捉えて,漸進的筋弛緩法などを挙げることも可能だが,一般にはヨガ,アロマテラピー,音楽療法なども含めて広くリラクセーションとする場合が多い。また,いくつかの方法論を組み合わせたり,さまざまな心理療法や他の補完代替療法の構成要素とすることも多く,リラクセーションのバリエーションは豊富である。ストレス社会といわれる現代においてリラクセーションは日常語となっているが,何がリラクセーションに相当するかは「個人の主観的体験に負うところが多く,生活状況の変化とともに変わっていく」とも指摘されている3)。代表的な医学用語辞典にもリラクセーションの記載はなく,学術論文でも定義されずに使用される場合が少なくない。あいまいな定義ながらもPubMed で検索した「Relaxation therapy」の文献数は年々増加している。瞑想によるリラクセーションも報告例が増えているが,マインドフルネスストレス低減法注1)など確立された方法も出現し,今後もさらに研究が進むことが予想される。 注1)マインドフルネスストレス低減法(mindfulness-based stress reduction;MBSR):マインドフルネスは,南伝系の仏教におけるヴィパッサナー瞑想をもとに,ベトナムの禅宗仏教僧のティク・ナット・ハンが創始したもので,瞑想の一種と認識されることが多い。日本マインドフルネス学会では,マインドフルネスを,「今,この瞬間の体験に意図的に意識を向け,評価をせずに,とらわれのない状態で,ただ観ること」と定義している4)。このような意識状態にあることで,今を生きているというリアリティの自覚が高まり,心に深い落ち着きと存在感をもたらされるとする。マインドフルネスストレス低減法は,ストレスに対する介入法あるいは健康教育訓練法として,1970年代にKabat-Zinn が開発したヨガや瞑想で構成された8 週間のプログラムである。身体的ストレス,特に痛みの緩和に焦点をあわせているが,事象をあるがままに観照するマインドフルネスを基礎としているため,何らかの成果を目指して行うものではない。つまりリラクセーションを目指して行うことはなく,結果としてリラクセーションがもたらされ,医学的な効果が現れることもあるという立場をとる5)。 1 サマリー 1 リラクセーションの概要 7 リラクセーション
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III章各論:クリニカル・エビデンス ・ 飲酒,飲食直後,極端な空腹状態は避ける。・ 入眠・脱力などによる転倒に備え,安全な場所で行う。・ 血圧の低下が予想されるため,低血圧の患者には留意する。・ 術後・化学療法後,発熱や強い痛みなど,身体症状が強いときは避ける。・ 著しい気分の落ち込みや不安など,強い精神症状があるときは避ける。・ リラクセーション後は簡単なストレッチングを行い,抑制されていた交感神経活動を 高める(消去動作)必要がある。・ てんかんなどの精神疾患をもつ人,心的外傷の既往のある人には発作の出現や症状の 悪化の可能性がある。・ 気管支喘息の発作が誘発される可能性がある。・ 漸進的筋弛緩法注2)では,体力低下や疲労が著明な人は,より症状が強くなる可能性が あり,特に循環器疾患,精神疾患,がんなどの患者では注意を要する。・ 自律訓練法注3)では,呼吸・循環器に疾患のある人は,その器官の公式を唱えることで 症状の悪化を来す可能性が示唆されている。 注2) 漸進的筋弛緩法:全身の筋肉を系統的に緊張・弛緩させる方法。筋肉の緊張した状態と弛緩した状態の違いに注意を向けながら,緊張状態を自分の意志で弛緩状態にコントロールしていくことを目指す。注3) 自律訓練法:催眠研究に基づいて創案されたセルフコントロールによる心身弛緩法。背景公式と6 つの公式からなる標準練習が基本となる。ぼんやりと公式に心を向けて(受動的意識集中),公式が示す身体部位に暗示どおりの反応が生じてくるのを待ち,味わうことを繰り返して練習する。公式は以下のとおり(文言は一例)。1背景公式(安静練習):「気持ちが落ち着いている」2第1 公式(重感練習):「腕が重たい」3第2 公式(温感練習):「腕が温かい」4第3 公式(心臓調整練習):「心臓が規則正しく脈打っている」5第4 公式(呼吸調整練習):「呼吸が落ち着いている」6第5 公式(腹部温感練習):「お腹が温かい」7第6 公式(額涼感練習):「額が心地よく涼しい」 ・ 介入方法が研究ごとに異なる。例えば「Relaxation—based intervention」という同じ 名称であってもプログラムの内容は研究ごとに異なる。複数の技法の組み合わせが多く,施行期間・回数などバリエーションは豊富である。・「システマティックレビュー」で検索したが,内容は「総説」でエビデンスレベルの高 い研究はない。・ 患者背景が研究ごとに異なる。特に乳がん患者を対象としたものが多く,結果として 女性の比率が高くなっている。・ 対照群の設定が研究ごとに異なる。・ 盲検化が難しい。 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題
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・ アウトカムの評価方法が研究ごとに異なる。・ 治療期間が比較的短期間であり,長期的効果は不明なことが多い 前述の「2.使用上の一般的な注意事項」を参照。 PubMed のMeSH「Complementary Therapies」に記載されているリラクセーション関連用語「Relaxation therapy」を検索語とした。1995 年に「Relaxation therapy」から独立した「Meditation」も検索対象に含めた。本書の第1 版(2008 年,Web 版)で検索対象とした自律訓練法(Autogenic training)・漸進的筋弛緩法(Progressive muscle relaxation)は「Relaxation therapy」ではなく,「Hypnosis」に含まれるが,第1 版との連続性を確保するために検索対象とした。「アロマテラピー・マッサージ」「鍼灸」「ヨガ」など,他項で扱われている補完代替療法を除外したところ,看護指導やカウンセリング,催眠療法などの雑多な方法論のみが残る結果となった。本項は,一般的なリラクセーションの概念とは乖離した「リラクセーション」となったため,「アロマテラピー・マッサージ」「鍼灸」「ヨガ」など他項を参照しつつ,補足的なリラクセーションの項目と捉えていただきたい。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Relaxation therapy」「Meditation」「Autogenic training」「Progres- sive muscle relaxation」 [検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年6 月6 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:40 件・Relaxation therapy:31 件 Relaxation therapy AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR metaanalysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp] : 2014/12/31[dp]・Meditation:8 件 Meditation AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp] : 2014/12/31[dp]・Autogenic training:0 件 Autogenic training AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR metaanalysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp] : 2014/12/31[dp]・Progressive muscle relaxation:1 件 Progressive muscle relaxation AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp] : 2014/12/31[dp] 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
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III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 【参考文献】1) 新村 出 編.広辞苑,第6 版,岩波書店,2008 2) 小板橋喜久代,荒川唱子 編著.リラクセーション法入門―セルフケアから臨床実践へとつなげるホリスティックナーシング,日本看護協会出版会,2013 3) 中北充子.「リラクセーション」の概念分析: 産後早期の女性を対象としたケアへの適用の検討. KEIO SFC JOURNAL 2010; 10: 57—69 4) 日本マインドフルネス学会ホームページ(http://mindfulness.jp.net/) 5) 春木 豊,石川利江,河野梨香,他.「マインドフルネスに基づくストレス低減プログラム」の健康 心理学への応用.The Japanese Journal of Health Psychology 2008; 21(2): 57—67 抄録,本文を用いたスクリーニングで23 件除外・他項で扱われているもの:10 件運動療法:1 件音楽療法:1 件鍼灸治療:2 件ヨガ:6 件・対象者ががん以外:1 件・小児を対象としたもの:1 件・重複論文:3 件・補完代替療法に含まれないもの:8 件 保険診療の認知行動療法,補完代替療法の費用分析など17 件 PubMed:40 件
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1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Johannsen ら1)によるシステマティックレビューでは,乳がん治療後の患者の痛みに対する,心理社会的介入の効果を26 件(うち無作為化比較試験は16 件)から評価している。個々の研究では有効性が示唆されるものもあるが,介入方法(患者教育,支持的グループ療法,誘導イメージ療法・ヨガ・瞑想などを構成要素とするリラクセーション),評価方法などが多様で結論に至れず,予備的な研究と位置づけている。Sheinfeld Gorin ら2)によるシステマティックレビューでは,37 件の無作為化比較試験から心理社会的介入は痛みの強さ,痛みによる日常生活動作制限に対し中等度の効果をもたらすと結論づけている。しかし,心理社会的介入としてあげられているのは,スキル訓練(認知行動療法含む),患者教育,支持的—表現的精神療法で,一般的なリラクセーションの概念との乖離がみられる。Bardia ら3)は,補完代替療法によるがん疼痛の緩和をレビューしている。さまざまの補完代替療法のうち,リラクセーションに関連するものでは,サポートグループ(2 件),催眠療法(1 件),リラクセーション/イメージ療法(2 件)で有意な効果を認めた。しかし,個々の無作為化比較試験を再評価したのみに留まり,有望としながらもリラクセーションによるがん疼痛の緩和は根拠不十分としている。Devine4)によるシステマティックレビューでは,痛みに対する心理教育的介入注4)を有望な補助的手段になり得るとしている。ここでいう心理教育的介入とは,リラクセーション(筋弛緩法,誘導イメージ療法,自己催眠など)を基本とした認知行動的介入,鎮痛薬使用方法についての患者教育,支持的カウンセリングなどである。Pan ら5)によるシステマティックレビューでは,前終末期の患者の諸症状(痛みのほか,呼吸困難,悪心・嘔吐など)に補完代替療法が有効かを検討しているが,無作為化比較試験は少なく,質の高い研究は得られていない。支持的グループ療法が乳がん患者の痛みを軽減し,さらに催眠療法を併用することにより効果が高まること,骨髄移植患者の口内炎の痛みがリラクセーション(筋弛緩法,イメージ療法,認知行動療法を含む)で改善することが示唆されている。終末期患者の痛みの軽減にリラクセーションが有効とする研究もあるが,効果の評価があいまいで介入も個別化されているため,結果の解釈は慎重にすべきである。以上より,リラクセーションが,がん患者の痛みを軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 注4)心理教育:「心理教育を中心とした心理社会援助プログラムガイドライン」6) (2004)によると,心理教育は「精神障害やエイズなど受容しにくい問題を持つ人たちに,正しい知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝え,病気や障害の結果もたらされる諸問題・諸困難に対する対処方法を習得してもらうことによって,主体的な療養生活を営めるよう援助する技法」と定義されている。心理教育は単なる「情報提供の場」ではなく,問題や困難への対処や工夫をともに考える「対処につ 2 臨床疑問 リラクセーションは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問7‒1
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III章各論:クリニカル・エビデンス いて相談できる場」である。さらに,こうした場におけるコミュニケーションが,当事者や家族の「心を支える場」になっていることが示されている7)。当初は,精神医療の分野で実施されていたが,エビデンスの蓄積とともに対象・実施スタイルが多様化している。がんを含むさまざまな身体疾患にも応用され,患者本人を対象とする1 対1 の心理教育もあれば,グループで行うもの,さらには家族を対象とするものまで,目的に応じて実施されている。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3 呼吸器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Pan ら5)によるシステマティックレビューでは,前終末期の患者の諸症状(呼吸困難のほか,痛み,悪心・嘔吐など)に補完代替療法が有効かを検討しているが,呼吸訓練とともに漸進的筋弛緩法を行うことで呼吸困難が改善する可能性を示唆している。Zhao ら8)によるシステマティックレビューでは,肺がん患者の呼吸困難に対する非薬物的介入の有効性を示している。介入方法は研究ごとに異なるが(呼吸トレーニング,リラクセーション,心理社会的サポートなどの複合が多い),看護師による個別指導とサポートが介入の効果を増している可能性を示唆している。しかし,無作為化比較試験5件と研究数が少なく,今後の研究の集積が待たれる。以上より,リラクセーションが,がん患者の呼吸器症状を軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Finnegan—John ら9)によるシステマティックレビューは,15 件の無作為化比較試験を含むが,ヨガ,鍼灸,健康食品など幅広い補完代替療法を対象に含み,リラクセーションに該当する研究は3 件(うち1 件は鍼との併用)のみである。研究の質は低く,リラクセーションががん患者の倦怠感に有効であるかどうかは結論できないと述べている。以上より,リラクセーションが,がん患者の倦怠感を軽減する根拠はない。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ledesma ら10)によるシステマティックレビューでは,10 件(うち無作為化比較試験は4 件)の検討により,マインドフルネスストレス低減法(ヨガと瞑想で構成されたプログラム;P82,注1 参照)が,がん患者のメンタルヘルスに有用であることを示し,このなかで睡眠障害にも有用であることを言及している。Smithら11)によるシステマティックレビューでは,研究の質による制限はあるものの,マインドフルネスストレス低減法で睡眠の質やストレスの軽減などに有意な効果が認められ,さらに瞑想の実践の期間と効果に相関が認められたと報告している。
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以上より,リラクセーションが,がん患者の睡眠障害を軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Faller ら12)によるシステマティックレビューでは,198 件の研究から,精神的苦痛・不安・うつに対するリエゾン的介入(psycho-oncologic intervention,心理療法,リラクセーション,情報提供など)の効果を検討している。心理療法と心理教育で有意な効果が介入直後にみられ,減弱するものの効果は中期間(6 カ月以下)継続し,さらにグループ療法では長期間(6 カ月以上)持続した。リラクセーション(イメージ療法など)は有効であるが,効果は持続しないことが示された。精神的苦痛が大きい群では介入の効果が高く,介入期間が長いほど効果が持続することが示された。しかし,質の低い研究も含まれていることから,結果の解釈には注意する必要があるとしている。Ledesma ら10)によるシステマティックレビューでは,10 件(うち無作為化比較試験は4 件)の検討により,マインドフルネスストレス低減法がさまざまな精神症状(不安,ストレス過剰,疲労感,気分障害など)の緩和に有効としている。Rodin ら13)は,がん患者のうつ症状の治療に関してレビューしている。11 件の無作為化比較試験のうち,4 件が非薬物的介入であり,看護指導と情報提供で有意なうつ症状の改善が認められたが,心理療法(2 件)では有意な結果が得られなかった。しかし研究の質が低く,結論は保留としている。Ott ら14)らによるシステマティックレビュー(9 件:うち無作為化比較試験は3 件)でも,マインドフルネス瞑想が精神的苦痛とストレス軽減に有用である可能性が示されている。以上より,リラクセーションが,がん患者の精神症状を軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Faller ら12)によるシステマティックレビューでは,198 件の研究から,QOL に対するリエゾン的介入(心理療法,心理教育,リラクセーション,情報提供など)の効果を検討している。心理療法と心理教育で有意なQOL の改善がみられ,心理療法(個人)で リラクセーションは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問7‒2 リラクセーションは,全般的なQOL を改善するか? ▶ ▶臨床疑問7‒3
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III章各論:クリニカル・エビデンス は長期間(6 カ月以上)効果が持続するが,グループ療法では効果が持続しないことが示された。介入期間が長いほど効果が持続する傾向が把握されたが,質の低い研究も含まれていることから,結果の解釈には注意する必要がある。Shneerson ら15)によるシステマティックレビューでは,13 件の研究から補完代替療法によるQOL の改善を検討している。このうちリラクセーションは3 件(うち2 件がマインドフルネスストレス低減法)で,いずれの研究でも精神的QOL に有意な改善がみられた。しかし,3 件ともrisk of bias(ROB)が高く,結果の解釈には注意が必要であるとしている。以上より,リラクセーションが,がん患者の全般的なQOL を改善する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 1 化学療法による悪心・嘔吐 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューは1 件のみである。Lotfi—Jamら16)によるシステマティックレビューでは,77件の無作為化比較試験から,化学療法に関連する有害事象の非薬物的対策についてまとめている。このうちリラクセーション(イメージ療法,漸進的筋弛緩法を含む)の悪心・嘔吐に対する軽減効果を検討したものは13 件で,有望とはしながらも質の高い研究は少なく,有用性について結論を導き出すのは困難としている。以上より,リラクセーションが,化学療法による悪心・嘔吐を軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 2 ホットフラッシュ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Rada ら17)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーのホットフラッシュに対する,ホルモン補充療法以外の方法の効果を検討している。16 件の無作為化比較試験のうち,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など薬物療法が9 件を占め,リラクセーションは同一著者による2 件のみであった(いずれも呼吸療法,筋弛緩法,イメージ療法などを構成要素とする方法)。このうち1 件(症例数を増やした再調査)で,ホットフラッシュの頻度・重症度が有意に減少したが,介入終了3 カ月で効果は消失している。Tremblay ら18)によるシステマティックレビューでは,14 件の研究からリラクセーションを含む心理教育的介入のホットフラッシュに対する改善効果を検討しているが,乳がん患者を対象とした研究は3 件(うち無作為化比較試験は2 件,一般閉経後女性を一部含む)のみである。リラクセーション(呼吸法,心理教育など)のホットフラッシュ リラクセーションは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶ ▶臨床疑問7‒4 リラクセーションは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問7‒5
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への効果を示唆する研究もあるが,薬物療法やほかの補完代替療法の併用症例も含まれており,研究の質も低いことから,結果の解釈には留意すべきであるとしている。以上より,リラクセーションが,がん患者のホットフラッシュを改善させる可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 3 その他 Luebbert ら19)によるシステマティックレビューでは,手術以外のさまざまながん治療(化学療法,放射線治療,骨髄移植,温熱療法)に伴う治療関連症状の改善に,リラクセーション(漸進的筋弛緩法,イメージ療法,その組み合わせが多くを占める)による介入を試みた15 件の報告をまとめている。がん治療の種類による差は認めず,悪心,痛み,心拍数,血圧に介入による効果を認めたほか,うつ,不安,敵対心などの精神状態にも改善を認め,リラクセーションは有効な手段と結論づけている。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (井寺奈美) 【文 献】1) Johannsen M, Farver I, Beck N, et al. The efficacy of psychosocial intervention for pain in breast cancer patients and survivors: a systematic review and meta-analysis. Breast Cancer Res Treat 2013; 138: 675-90 2) Sheinfeld Gorin S, Krebs P, Badr H, et al. Meta-analysis of psychosocial interventions to reduce pain in patients with cancer. J Clin Oncol 2012; 30: 539-47 3) Bardia A, Barton DL, Prokop LJ, et al. Efficacy of complementary and alternative medicine therapies in relieving cancer pain: a systematic review. J Clin Oncol 2006; 24: 5457-64 4) Devine EC. Meta-analysis of the effect of psychoeducational interventions on pain in adults with cancer. Oncol Nurs Forum 2003; 30: 75-89 5) Pan CX, Morrison RS, Ness J, et al. Complementary and alternative medicine in the management of pain, dyspnea, and nausea and vomiting near the end of life. A systematic review. J Pain Symptom Manage 2000; 20: 374-87 6) 厚生労働省精神・神経疾患研究委託費統合失調症の治療およびリハビリテーションのガイドライン作成とその実証的研究.心理教育を中心とした心理社会援助プログラムガイドライン,2004 7) 苅山和生.リカバリー志向による双方向心理教育の展開.保健医療技術学部論集2008; 2: 23-31 8) Zhao I, Yates P. Non-pharmacological interventions for breathlessness management in patients リラクセーションは,予後を改善するか? ▶ ▶臨床疑問7‒6
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III章各論:クリニカル・エビデンス with lung cancer: a systematic review. Palliat Med 2008; 22: 693-701 9) Finnegan-John J, Molassiotis A, Richardson A, et al. A systematic review of complementary and alternative medicine interventions for the management of cancer-related fatigue. Integr Cancer Ther 2013; 12: 276-90 10) Ledesma D, Kumano H. Mindfulness-based stress reduction and cancer: a meta-analysis. Psychooncology 2009; 18: 571-9 11) Smith JE, Richardson J, Hoffman C, et al. Mindfulness-Based Stress Reduction as supportive therapy in cancer care: systematic review. J Adv Nurs 2005; 52: 315-27 12) Faller H, Schuler M, Richard M, et al. Effects of psycho-oncologic interventions on emotional distress and quality of life in adult patients with cancer: systematic review and meta-analysis. J Clin Oncol 2013; 31: 782-93 13) Rodin G, Lloyd N, Katz M, et al. The treatment of depression in cancer patients: a systematic review. Support Care Cancer 2007; 15: 123-36 14) Ott MJ, Norris RL, Bauer-Wu SM. Mindfulness meditation for oncology patients: a discussion and critical review. Integr Cancer Ther 2006; 5: 98-108 15) Shneerson C, Taskila T, Gale N, et al. The effect of complementary and alternative medicine on the quality of life of cancer survivors: a systematic review and meta-analyses. Complement Ther Med 2013; 21: 417-29 16) Lotfi-Jam K, Carey M, Jefford M, et al. Nonpharmacologic strategies for managing common chemotherapy adverse effects: a systematic review. J Clin Oncol 2008; 26: 5618-29 17) Rada G, Capurro D, Pantoja T, et al. Non-hormonal interventions for hot flushes in women with a history of breast cancer. Cochrane Database Syst Rev 2010; 9: CD004923 18) Tremblay A, Sheeran L, Aranda SK. Psychoeducational interventions to alleviate hot flashes: a systematic review. Menopause 2008; 15: 193-202 19) Luebbert K, Dahme B, Hasenbring M. The effectiveness of relaxation training in reducing treat- ment-related symptoms and improving emotional adjustment in acute non-surgical cancer treatment: a meta-analytical review. Psychooncology 2001; 10: 490-502
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日本音楽療法学会は,音楽療法を「音楽のもつ生理的,心理的,社会的働きを用いて,心身の障害の回復,機能の維持改善,生活の質の向上,行動の変容などに向けて,音楽を意図的,計画的に使用すること」と定義しており,米国のNational Center for Complementary and Integrative Health(NCCIH)によれば,音楽療法は補完代替療法のなかのmind—body interventions(心身医療的システム)に分類される。その対象と場は多岐にわたり,発達障害,身体障害,精神障害,不登校,引きこもりなどの児童・青年・成人期に対しては,学校,施設,作業所,病院,精神病院,自宅などが,認知症をはじめとするさまざまな慢性疾患や身体障害,精神障害などを抱える高齢者に対しては,病院,精神病院,老人保健施設,通所(入所)高齢者施設,自宅などが実践の場となり得る。また近年は,ホスピスや緩和ケア病棟における終末期医療,緩和ケア領域で果たし得る役割にも注目が集まっている。しかし,医学的な観点から音楽療法を捉えた場合,わが国では音楽療法士が医療職ではないことが問題となる。すなわち,音楽療法士が治療を目的としたtherapy を単独で行うことは法的に許容されない。この問題に対処すべく,医師の指示の下に自由診療として行う場合や作業療法のなかに組み込む場合があるが,ホスピスや緩和ケア病棟などの入院患者を対象とした音楽療法の多くは,内容が優れていてもtherapy ではなくservice として位置づけられているのが現状である。今回検索したPubMed,あるいはThe Cochrane Library に掲載されている論文やUp To Date の提言のほとんどは海外由来であり,わが国において質の高い音楽療法がtherapy として展開される環境が整うまでには依然課題が多いといわざるを得ない。 ・ 明確な意思表示ができない,あるいは移動能力の乏しい対象者は音から逃げられない。・ 聴力障害(老人性難聴・各種疾患による聴力障害)の存在。・ 聴覚過敏(自閉症などによる)の存在。・ 反応性てんかん発作の可能性。・ 身体的,心理的負荷増大の可能性。・ 保険適用がない。 ・ 患者背景が臨床試験ごとに異なる。 1 サマリー 1 音楽療法の概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 8 音楽療法
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III章各論:クリニカル・エビデンス ・ 被験者数が少ない。・ 効果が小さく,またその評価方法が臨床試験ごとに異なる。・ 対照群の設定が困難。・ 盲検化が難しい。・ 長期的な効果の調査が不十分。・ 施術者個々の能力,適応や方法に差がある。 患者に「2.使用上の一般的な注意事項」で述べたような身体的制限がなく,本人と家族の希望があれば,あるいは拒否がなければ,音楽療法の適応に絶対的な禁忌はない。また,展開される場にも制限はない。しかし,がん患者の心身の状態は日または時間の単位で変化し得るため,適応の有無,施術時間,内容についてその都度慎重な検討が必要となる。また,免疫機能の低下により感染症罹患のリスクが高い場合があり,施術者自身や楽器が感染源とならないような衛生面の管理が必要である。さらに,死に向かうプロセスにおける音楽(療法)は,対象者とその家族のみならず施術者からもコントロールの難しい心理反応を引き出す可能性があり,それが思わぬ成果をもたらす場合もあれば,陰性感情となって後の経過に取り返しのつかない影響を及ぼす場合もある。音楽療法を依頼する医療者や施術者がこのことを理解し,適切に対処する能力を養うと同時に,関係者が密に連携し得る環境を構築することが極めて重要である。 本項では,システマティックレビューのなかに予後に関する報告がなかったため, 1件の無作為化比較試験を参照した。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Music therapy」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年6 月9 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:15 件 Music therapy AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
p.102
●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 抄録を用いたスクリーニングで2 件除外・対象者ががん以外:2 件 本文を用いたスクリーニングで3 件除外・対象者ががん以外:1 件・音楽療法以外:2 件 10 件 13 件 PubMed:15 件
p.103
III章各論:クリニカル・エビデンス 1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが5 件ある。そのうち2 件は検査時に関する報告である。Poder ら1)によるシステマティックレビューでは,小児がん領域における3 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行っている。音楽療法は不安,つらさ,ストレス,痛みなどを軽減することにより患児の良好な状態に寄与し得るが,全般的には強い根拠があるとはいいきれないとまとめている。Coleら2)によるシステマティックレビューでは,Cochrane Library,Cinahl,Medline, Natural Standerd,Scopus を検索し,7 件の手術患者,3 件の薬物療法患者,1 件の手術・薬物療法患者,4 件の集中治療患者,2 件の妊婦について文献的考察を行っている。すなわち,悪性疾患以外の対象者も含まれているが,これによれば,音楽療法は疼痛治療の補助療法として有用であり,安全かつ看護の一環としても利用可能であるとされている。Bardia ら3)によるシステマティックレビューでは,3 件の非盲検試験のうち1 件で音楽療法が痛みの軽減に有用であったが,いずれの試験も被験者数が少なく,短期的な効果のみが測定されている点に問題があると指摘している。以上より,音楽療法は,がん患者の痛みを軽減し得るが,有用性が確立されているとは結論づけられない。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Bradt ら4)によるシステマティックレビューでは,音楽療法は不安,気分,QOL を改善し,心拍数,呼吸数,血圧,痛みをやや軽減し得るが,倦怠感や全身状態を改善し得る根拠はないと述べている。Zhangら5)によるシステマティックレビューでは,2件の無作為化比較試験において音楽療法により倦怠感が悪化していた。以上より,音楽療法は,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論づけられない。 2 臨床疑問 音楽療法は,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問8‒1
p.104
6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが6 件ある。Archer ら6)によるシステマティックレビューでは,アート,音楽,ダンスなど種々のcreative psychological interventions(CPIs)の効果について文献的考察を行っている。そのうち音楽療法に関する報告は3 件あった。各試験の結果,CPIs は全体として不安,うつ,QOL,コーピング,ストレス,怒り,気分を改善したが,身体症状の改善に対する寄与は少なく,各療法による効果の違いは明らかではなかった。Poder ら1)によるシステマティックレビューでは,小児がん領域における3 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行い,音楽療法は,不安,痛みを改善し,ゲームへの参加,コミュニケーションなどを促進し,患児の良好な状態に寄与し得るが,全般的には強い根拠があるとはいいきれないとまとめている。Boehm ら7)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者に対する芸術療法に関する11 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行っている。そのうち音楽療法に関する報告は3 件あった。各試験の結果,音楽療法も含めた芸術療法は全体として不安を改善したが,うつとQOL の改善に対する寄与は認められなかった。Nightingale ら8)によるシステマティックレビューでは,13 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽療法は11 件で不安を改善し,2 件では不安の改善に寄与しなかったと述べている。一方,対象がさまざまであり,試験デザインや音楽療法そのものにも違いあるという問題点も指摘している。Bradt ら4)によるシステマティックレビューでは,30 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽療法は不安と気分の改善には寄与し得るが,うつへの効果は支持されないと報告している。Zhang ら5)によるシステマティックレビューでは,32 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽療法は17 件で不安を軽減し,7 件でうつを改善したと報告している。以上より,音楽療法は,がん患者の不安を軽減し得るが,うつの軽減には必ずしも有用であるとは結論づけられない。また,現時点で,上記以外の精神症状に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 音楽療法は,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問8‒2
p.105
III章各論:クリニカル・エビデンス 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Archer ら6)によるシステマティックレビューでは,アート,音楽,ダンスなど種々のcreative psychological interventions(CPIs)の効果について文献的考察を行っている。そのうち音楽療法に関する報告は3 件あった。各試験の結果,CPIs は全体として精神症状や気分障害とともにQOL を改善するが,各療法による効果の違いは明らかではなかった。Boehm ら7)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者に対する芸術療法に関する11 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行っている。そのうち音楽療法に関する報告は3 件あった。各試験の結果,音楽療法も含めた芸術療法はQOL の改善に寄与しなかった。以上より,音楽療法は,QOL の改善に必ずしも有用であるとは結論づけられない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はないが,Zhang ら5)によるシステマティックレビューのなかに,2 件で音楽療法により倦怠感が悪化したという記載がある。しかし,その他の試験結果も含めて重篤な有害事象は報告されてない。以上より,音楽療法による有害事象は軽微であると考えられる。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Thrane ら9)によるシステマティックレビューでは,音楽療法は,白血病の小児に対して腰椎穿刺を施行する際の痛みと不安を軽減し得た。Galaal ら10)によるシステマティックレビューでは,6 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,コルポスコピーを施行する際の音楽は被験者の不安と痛みを軽減すると報告している。以上より,音楽療法は,検査・治療等の有害事象を軽減し得ると考えられるが,限られた範囲での報告である。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。Hilliard ら11)によれば,終末期がん患者に対する1 件の臨床試験11)で,生命予後の延長には寄与しなかったことが報告されている。 音楽療法は,全般的なQOL を改善するか? ▶ ▶臨床疑問8‒3 音楽療法は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶ ▶臨床疑問8‒4 音楽療法は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問8‒5 音楽療法は,予後を改善するか? ▶ ▶臨床疑問8‒6
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2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (儀賀理暁) 【文 献】1) Poder TG, Lemieux R. How effective are spiritual care and body manipulation therapies in pediatric oncology? A systematic review of the literature. Glob J Health Sci. 2013; 6: 112-27 2) Cole LC, LoBiondo-Wood G. Music as an adjuvant therapy in control of pain and symptoms in hospitalized adults: a systematic review. Pain Manag Nurs 2014; 15: 406-25 3) Bardia A, Barton DL, Prokop LJ, et al. Efficacy of complementary and alternative medicine therapies in relieving cancer pain: a systematic review. J Clin Oncol 2006; 24: 5457-64 4) Bradt J, Dileo C, Grocke D, et al. Music interventions for improving psychological and physical outcomes in cancer patients. Cochrane Database Syst Rev 2011; 8: CD006911 5) Zhang JM, Wang P, Yao JX, et al. Music interventions for psychological and physical outcomes in cancer: a systematic review and meta-analysis. Support Care Cancer 2012; 20: 3043-53 6) Archer S, Buxton S, Sheffield D. The effect of creative psychological interventions on psychological outcomes for adult cancer patients: a systematic review of randomised controlled trials. Psychooncology 2015; 24: 1-10 7) Boehm K, Cramer H, Staroszynski T, et al. Arts therapies for anxiety, depression, and quality of life in breast cancer patients: a systematic review and meta-analysis. Evid Based Complement Alternat Med 2014; 2014: 103297 8) Nightingale CL, Rodriguez C, Carnaby G. The impact of music interventions on anxiety for adult cancer patients: a meta-analysis and systematic review. Integr Cancer Ther 2013; 12: 393-403 9) Thrane S. Effectiveness of integrative modalities for pain and anxiety in children and adolescents with cancer: a systematic review. J Pediatr Oncol Nurs 2013; 30: 320-32 10) Galaal K, Bryant A, Deane KH, et al. Interventions for reducing anxiety in women undergoing colposcopy. Cochrane Database Syst Rev 2011; 12: CD006013 11) Hilliard RE. The effects of music therapy on the quality and length of life of people diagnosed with terminal cancer. J Music Ther 2003; 40: 113-37
p.107
III章各論:クリニカル・エビデンス 鍼灸治療は,わが国においては補完代替療法として位置づけられているが,中医学においては漢方と同様に確立された標準治療である。理論体系は西洋医学とは大きく異なり,陰陽五行理論と経絡経穴学説に基づいている。鍼灸治療は,中医学的診断に基づき経穴に対して鍼,艾,指圧などで何らかの刺激を与える治療法である。1989 年には,世界保健機関(WHO)が経穴名を361 に統一し,2006 年には経穴の部位が国際的に統一された。一方,生理学に基づいた西洋医学的な鍼治療も行われており,欧米での研究報告の多くはこのアプローチを採択している。筋筋膜疼痛症候群のトリガーポイントを利用した疼痛コントロールなどもその一つである。鍼灸治療は,数ある補完代替療法のなかで,最も臨床研究が盛んに行われている治療の一つである。近年,がん患者を対象とした研究報告も増加してきている。特に,抗がん治療による有害事象の軽減すなわち支持療法的な治療として,米国のがん専門病院において鍼治療は積極的な取り組みが試みられている。その成果は,がん治療関連の主要な英文雑誌にも報告されている。 ・施術者によって経穴の選定や治療方法が異なる。・治療に際して,中医学的診断が必ずしも行われているわけではない。・中医学的治療と西洋学的治療は根本的に異なる。 ・患者背景が臨床試験ごとに異なる。・経穴を刺激する方法として,鍼の穿刺,電気刺激,経皮的通電刺激,指圧,薬物注射, 灸など介入方法が異なる。・対照群として,標準的な治療やケア,偽鍼,電極のみの貼付,経穴以外の部位への鍼 など臨床試験ごとに設定が異なる。・偽鍼治療は,得気(刺鍼部位の特有な感覚)がない治療,正しい経穴ではない部位へ の治療,皮下に刺入しない治療,電極はつけても電流を流さない治療など,さまざまである。・盲検化が難しい。・アウトカムの評価方法が臨床試験ごとに異なる。・治療期間が比較的短期間であり,長期的な効果は不明なことが多い。 1 サマリー 1 鍼灸治療の概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 9 鍼灸治療
p.108
・標治(表面化した症状のみに対する治療)が主である。 ・瞑眩(倦怠感の一つ)・眠気など全身性・刺鍼時痛・皮下出血・禁忌事項1腫瘍,潰瘍や浮腫などがある局所には治療を行わない。2胸部や背部など,気胸を来す可能性がある部位には行わない。3凝固異常のある患者は避ける。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Acupuncturetherapy」「Acupuncture,Ear」「Electroacupuncture」 「Meridians」「Moxibustion」 [検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年5 月28 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:79 件・Acupuncturetherapy:51 件 AcupuncturetherapyAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmetaanalysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp]・Acupuncture,Ear:3 件 Acupuncture,EarAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti] ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp]・Electroacupuncture:10 件 ElectroacupunctureAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmetaanalysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp]・Meridians:7 件 MeridiansAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti]OR systematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp]・Moxibustion:8 件 MoxibustionAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti]OR systematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
p.109
III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 抄録を用いたスクリーニングで41 件除外・対象者ががん以外:11 件・鍼灸治療以外:4 件・重複論文:26 件 本文を用いたスクリーニングで11 件除外・対象者ががん以外:3 件・鍼灸治療以外:5 件・その他:非英語文献1 件, letter など2 件 1 件追加38 件 PubMed:79 件 27 件 28 件
p.110
1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが8件ある。鍼灸治療の方法として,鍼治療,耳介鍼治療,経皮的通電刺激,電気鍼治療など,複数の治療が実施されており,対照群は通常の治療・ケア,偽鍼治療,薬物療法などを行った患者が設定されていた。Lee ら1)によるシステマティックレビューでは,がんによる痛みを有する患者に対して, 1 件の無作為化比較試験,2 件の非盲検化比較試験と4 件の非対照研究の文献的考察を行っている。その結果,耳介鍼治療を用いた無作為化比較試験は質が高く,プラセボに比較して有意に痛みを軽減させた。しかし,ほかの研究においてはデザインや結果が不十分であり,サンプルサイズが小さく,結果が過大評価されていた。その結果,がん患者に対して,鍼治療は十分な鎮痛効果があるとは結論できないとしている。Paley ら2)によるシステマティックレビューでは,18 歳以上のがん患者を対象にがんに直接関連する痛みに対して,鍼治療に関する3 件の無作為化比較試験(204 例)の文献的考察を行っている。その結果,耳介鍼治療による1 件の無作為化比較試験は質の高い試験であり,鍼治療による鎮痛効果を示していた。しかし,その他の2 件の試験においては,方法,サンプルサイズ,解析方法の点で不十分であった。その結果,成人がん患者における痛みに対して,鍼治療の有効性を判定するには十分なエビデンスはないと結論づけている。Choi ら3)によるシステマティックレビューでは,がん疼痛を有する患者を対象に鍼治療を行った15 件の無作為化比較試験についてrisk of bias (ROB)を用いて評価している。その結果,すべての試験はROB が高く,相対リスク1.12(95%CI:0.98~1.28, n=886)であり,鍼治療は薬物療法と比較して優れた鎮痛効果を示さなかった。薬物療法に鍼治療を加えることは薬物療法単独に比較して,相対リスク1.36(95%CI:1.13~ 1.64,n=437)と有意に鎮痛効果を示した。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の症状緩和を目的に鍼治療を実施した無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,痛みに関する11件の無作為化比較試験が抽出されたが,いずれもROB が高くがん疼痛に対する鍼治療の有効性は不明であると結論づけている。Bardia ら5)によるシステマティックレビューでは,がん患者を対象にがん関連痛に対して鍼治療を実施した3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,耳介鍼治療による1 件の無作為化比較試験は質の高い試験であり,鍼治療の鎮痛効果を示していた。その他の2 件の試験は,治療直後あるいは短期間の鎮痛効果のみを示していた。Hurlow ら6)によるシステマティックレビューでは,経皮的通電刺激によるがん疼痛治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,2 件の無作為化比較試験では対照群と比較して,鎮痛効果が認められなかった。1 件の無作為化比較試験は骨転移の体動時痛に対する効果を検討していたが,フィジビリティスタディであった。 2 臨床疑問 鍼灸治療は,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問9‒1
p.111
III章各論:クリニカル・エビデンス Cheon ら7)によるシステマティックレビューでは,がん患者に対して経穴への薬物注射(pharmacopuncture)による種々の症状に関する22 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,がん疼痛の鎮痛効果においては有効ではないと結論づけている。Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,緩和ケアの対象となるようながん患者を対象として,種々の症状に対する鍼治療や電気鍼治療の効果に関する無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,痛みに関しては6 件の無作為化比較試験が抽出されたが,5 件において鍼治療はがん疼痛の緩和に有効であると結論づけている。以上より,耳介鍼治療は,がん患者の痛みの軽減に有用であると考えられる。その他の鍼治療は試験デザイン,サンプルサイズ,解析方法などに限界があるため,さらに質の高い研究が必要である。 2 消化器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Choi ら9)によるシステマティックレビューでは,がん患者の吃逆に対する鍼治療の効果に関して5 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,いずれの試験もROB は高かったものの,鍼治療は対照群と比較して,がん患者の吃逆の改善に有効であった。また,鍼治療と薬物療法(筋肉注射)とを比較するためにメタアナリシスを行っているが,その結果,相対リスクは1.87(95%CI:1.26~2.78,I2=37%,n=162)であり,鍼治療は薬物療法と比較して,がん患者の吃逆の軽減に有効であると結論づけている。Cheon ら7)によるシステマティックレビューでは,がん患者の吃逆に対する経穴への薬物注射(pharmacopuncture)による効果に関する2 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。1 件の試験では,pharmacopuncture は対照群と比較して統計学的に有意に吃逆を改善させたが,ほかの試験では統計学的有意差は認められなかった。その結果,pharmacopuncture は,がん患者の吃逆の改善に有効であるとはいえないと結論づけている。以上より,鍼治療は,がん患者の吃逆の軽減に有用であるとは結論づけられない。 3 呼吸器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Bausewein ら10)によるシステマティックレビューでは,進行がんおよび非がん疾患(慢性閉塞性肺疾患,間質性肺疾患,心不全,運動ニューロン疾患)による呼吸困難に対する鍼治療の効果に関する47 件の無作為化比較試験および比較臨床試験の文献的考察を行っている。その結果,呼吸困難に対して鍼治療は推奨されないと結論づけている。Ben‒Aharon ら11)によるシステマティックレビューでは,終末期がん患者の呼吸困難に対する鍼治療の効果に関する18件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,呼吸困難に対して鍼治療は推奨されないと結論づけている。以上より,鍼治療は,がん患者の呼吸困難を軽減させる根拠はない。 4 泌尿器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。
p.112
Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,がん患者の術後尿閉に対する鍼治療または電気鍼治療の効果に関する4 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,3 件の試験において鍼治療群は対照群と比較して残尿量が減少しており,術後尿閉を改善する可能性があると結論づけている。以上より,鍼治療は,がん患者の術後尿閉の軽減に有用であると考えられる。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。He ら12)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する鍼治療や灸治療の効果に関する7 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,鍼治療は指圧療法と比較して倦怠感を改善させた。また,標準的ケアに灸治療を併用することは標準的ケアのみに比較して,European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire‒C30 (EORTC QLQ‒C30)における倦怠感を改善させた(SMD:-1.01, 95%CI:-1.31~-0.72)。これらの結果から,鍼灸治療はがん患者の倦怠感を改善させると結論づけている。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,1 件のみ有効であったが,ほかの2 件では有効性は確認されず,鍼治療による倦怠感の改善は不明であると結論づけている。Posadzki ら13)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する鍼治療の効果に関する7 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,4 件において鍼治療は偽鍼治療や通常のケアと比較して倦怠感を軽減させたが,3 件では偽鍼治療と比較して有効性は認められず,がん患者に対する鍼治療は倦怠感を改善させるとは結論づけられないと述べている。Lee ら14)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する灸治療の効果に関する4 件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,いずれの試験も中等度から高度のROB であり,相対リスクは1.73(95%CI:1.26~2.78,I2= 37%,n=162)であった。これらの結果から,がん患者の倦怠感に対する灸治療の有効性は結論づけられないと述べている。以上より,鍼灸治療は,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論づけられない。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の不眠に対する鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,いずれの試験も盲検化が行われておらず,ROB は高く,鍼治療の不眠に対する効果は不明であると結論している。以上より,鍼治療は,がん患者の睡眠障害を軽減させる根拠はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。
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III章各論:クリニカル・エビデンス 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の不安・抑うつに対する鍼治療の効果に関する6 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。すべての試験は不安・抑うつを主要評価項目として実施した試験ではなく,ROB は高いため鍼治療によるがん患者の不安・抑うつに対する効果は不明であると結論づけている。以上より,鍼治療は,がん患者の不安・抑うつを軽減させる根拠はない。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。He ら12)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する鍼灸治療の効果に関する7 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。そのなかで,2 件は灸治療によるQOL を評価しており,メタアナリシスを実施している。その結果,灸治療を通常のケアに加えることは通常のケアのみに比較して,EORTC‒QLQ‒C30 におけるemotional function(SMD :0.97,95%CI:0.72~1.22),global health status(SMD: 0.81,95%CI:0.20~1.43)の改善が認められた。がん患者に対して通常のケアに加えて灸治療を併用することで,QOL が改善する可能性があると述べている。Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,鍼治療および電気鍼治療によるがん患者のQOL 改善を評価した2 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,鍼治療および電気鍼治療は対照群と比較して,がん患者のQOL 向上に有効であると結論している。Chen ら15)によるシステマティックレビューでは,肺がん患者への経穴刺激によるQOL の改善に関する2 件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,経穴刺激は対照群と比較してEORTC‒QLQ‒C30 におけるtotal score(SMD:0.47, 95%CI:0.04~0.90,n=85)の改善が認められた。経穴刺激は鍼治療,置鍼治療,灸治療,経穴への薬物注射などが行われていた。以上より,鍼灸治療は,がん患者のQOL を改善させると考えられる。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Ernst ら16)によるシステマティックレビューでは,鍼治療の痛み(1~45%),倦怠感(2~41%),出血(0.03~38%),気の遠くなる感じや失神(0~0.3%)などの軽微な有害 鍼灸治療は,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問9‒2 鍼灸治療は,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問9‒3 鍼灸治療は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問9‒4
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事象が挙げられているが,重篤な有害事象は稀であると結論づけている。Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,33 件の無作為化比較試験のうち25件は有害事象の記載がなく,6 件は有害事象が認められず,2 件において穿刺部に微量の出血が報告されていたため,鍼治療の有害事象は軽度であると結論づけている。He ら12)によるシステマティックレビューでは,1 件の無作為化比較試験において,90例のうち出血2 例,傷1 例,悪心1 例があったが重篤な有害事象は認められず,鍼治療は適切に実施される場合には比較的安全であると結論づけている。以上より,鍼治療による有害事象は低頻度かつ軽微であると考えられる。 1 化学療法による悪心・嘔吐 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが6 件ある。Ezzo ら17)によるシステマティックレビューでは,化学療法後のがん患者の悪心・嘔吐に対して,経穴刺激による軽減効果に関する11件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,介入群は対照群と比較して,化学療法に伴う急性の嘔吐の頻度を減少させた(リスク比 :0.82,95%CI:0.69~0.99)。しかし,急性および遅発性の悪心の重症度は対照群と比較して統計学的有意差が認められなかった。電気鍼治療を行った患者群は対照群と比較して,急性の嘔吐を示す患者の割合を減少させた(リスク比: 0.76,95%CI:0.60~0.97)。指圧療法は急性の悪心の重症度を低下させた(SMD:-0.19, 95%CI:-0.37~-0.01)。これらの結果から,電気鍼治療は化学療法による急性期の嘔吐を改善する可能性があると結論づけている。Chao ら18)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者に対して特定の経穴(内関PC6)への刺激を行うことで化学療法に伴う悪心の軽減に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,乳がん患者におけるPC6 への刺激は,化学療法に伴う悪心・嘔吐を軽減させると述べている。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐に対して,鍼治療による効果に関する1 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,ROB は低く,がん患者に対して鍼治療は化学療法に伴う悪心・嘔吐を軽減させると結論づけている。Lee ら19)によるシステマティックレビューでは,灸治療によるがん患者の化学療法による悪心・嘔吐の改善に関する5 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,2 件の無作為化比較試験において,介入群は対照群と比較して化学療法による悪心・嘔吐の頻度を低下させた(リスク比:0.38,95%CI:0.22~0.65,I2=0%,n=80)。これらの結果から,灸治療はがん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐の軽減に有効である可能性はあるが,結論を導くには十分なエビデンスとはいえないと結論づけている。Cheon ら7)によるシステマティックレビューでは,経穴への薬物注射(pharmacopuncture)によるがん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐の改善に関する5 件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,3 件の無作為化比較試験において,介入群は対照群と比較して,化学療法に伴う悪心・嘔吐の重症度を軽減させた(相対リスク:1.28,95%CI:1.14~1.44)。また,2 件の無作為化比較試験において,悪心・嘔吐の 鍼灸治療は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問9‒5
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III章各論:クリニカル・エビデンス 頻度が減少した(相対リスク:2.47,95%CI:2.12~2.89)。しかし,試験デザインの不均一性とROB が高いことなどから,その有効性は結論づけられないと述べている。Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,鍼治療によるがん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐の軽減効果に関する13件の無作為化比較試験について文献的考察を行っている。その結果,鍼治療は対照群と比較して,がん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐の軽減に有効であると結論づけている。以上より,鍼治療は,化学療法による悪心・嘔吐を軽減させると考えられる。 2 ホットフラッシュ ホットフラッシュは,乳がん患者,前立腺がん患者においてホルモン療法が実施された際に生じることがあり,血管運動症状の一つであるとされている。本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Lee ら20)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者のホットフラッシュに対する鍼治療あるいは電気鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察とメタアナリシスを行っている。その結果,1 件の無作為化比較試験において,介入群は対照群(偽鍼治療)に比較してホットフラッシュの頻度が低下していた。メタアナリシスでは,介入群は対照群(偽鍼治療)に比較してホットフラッシュを軽減させていた(weighted mean difference:3.09,95%CI:-0.04~6.23,n=189)が,異質性が高い(I2=76%)ことから,鍼治療は乳がん患者のホットフラッシュに有効であるとはいえないと結論づけている。Lee ら21)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者のホットフラッシュに対する鍼治療および電気鍼治療の効果に関する1 件の無作為化比較試験と5 件の対照群のない観察研究の文献的考察を行っている。その結果,前立腺がん患者に対する鍼治療は,ホットフラッシュの軽減に有効であるとはいえないと結論づけている。Frisk22)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者のホットフラッシュに対する鍼治療の効果に関する4 件の臨床試験の文献的考察を行っている。その結果,前立腺がん患者に対する鍼治療は,ホットフラッシュの軽減に有効であるとはいえないと結論づけている。以上より,鍼治療は,乳がんおよび前立腺がん患者のホットフラッシュを軽減させる根拠はない。 3 放射線性口腔乾燥 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Zhuang ら23)によるシステマティックレビューでは,頭頸部がん患者における放射線性口腔乾燥症に対して鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,1 件の試験では鍼治療による放射線性口腔乾燥症の予防的効果が認められた。2 件の試験では,唾液分泌量(salivary flow rate)の改善を認めたものの,介入群と対照群とでは統計学的有意差は認められなかった。O’Sullivan ら24)によるシステマティックレビューでは,頭頸部がん患者における放射線性口腔乾燥症に対して鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,2 件は中間のROB,1 件は高いROB であった。対照群としては2 件が偽鍼治療,1 件が標準治療であった。2 件では唾液分泌量(salivary flow rate)の
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改善が認められ,3 件すべてにおいて主観的な改善が認められていた。これらの結果から,頭頸部がん患者における鍼治療は,放射線性口腔乾燥症をある程度軽減させるが,十分なエビデンスはないと結論づけている。Lovelace ら25)によるシステマティックレビューでは,頭頸部がん患者における放射線性口腔乾燥症に対して鍼治療の効果に関する2 件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,介入群は対照群(偽鍼治療群)と比較して刺激全唾液量のSMD:-0.459(95%CI:-2.109~1.192)であり,鍼治療の効果は認められなかった。以上より,鍼治療は,頭頸部がん患者の放射線性口腔乾燥の軽減に有用であるとは結論づけられない。 4 骨髄抑制・免疫抑制 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Lu ら26)によるシステマティックレビューでは,がん患者の化学療法に伴う白血球減少に対する鍼治療の効果に関する11 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,鍼治療により白血球増多が認められたものの,研究の質は低く出版バイアスがあるために治療の効果が十分にあるとはいえないと結論づけている。Choi ら27)によるシステマティックレビューでは,がん患者の化学療法に伴う白血球減少に対する灸治療の効果に関する6 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,すべての試験においてROB は高かったが,2 件の試験では標準治療に灸治療を併用することは標準治療のみに比較して白血球増多が認められ,4 件の試験では灸治療は標準治療と比較して白血球増多を示していた。これらの結果から,エビデンスレベルは低いが,灸治療はがん患者の化学療法に伴う白血球減少を改善させる可能性があると結論づけている。Chen ら15)によるシステマティックレビューでは,がん治療中の肺がん患者に対する経穴刺激による免疫修飾効果に関する31 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,肺がん患者において経穴刺激は対照群と比較して,IL‒2,T 細胞サブタイプ(CD3+・CD4+),NK 細胞の増加や骨髄抑制の改善が認められた。これらの結果から,肺がん患者に対する経穴刺激は免疫修飾効果や骨髄抑制の改善に有効であると結論づけている。以上より,鍼治療は,がん治療に伴う骨髄抑制の軽減に有用であるとは結論づけられないが,灸治療は骨髄抑制を軽減させると考えられる。 5 化学療法後末梢神経障害性疼痛 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Franconi ら28)によるシステマティックレビューでは,がん患者の化学療法後末梢神経障害性疼痛に対する鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,がん患者に対する鍼治療は,化学療法後末梢神経障害性疼痛の軽減に有効である可能性が示唆されるものの,さらなる研究が求められると述べている。以上より,鍼治療は,がん患者における化学療法後の末梢神経障害性疼痛の軽減に有用であるとは結論づけられない。
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III章各論:クリニカル・エビデンス 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (大坂 巌) 【文 献】 1) LeeH,SchmidtK,ErnstE.Acupunctureforthereliefofcancer‒relatedpain―asystematic review.EurJPain2005;9:437‒44 2) PaleyCA,JohnsonMI,TashaniOA,etal.Acupunctureforcancerpaininadults.CochraneDatabaseSystRev2011;1:CD007753 3) ChoiTY,LeeMS,KimTH,etal.Acupunctureforthetreatmentofcancerpain:asystematic reviewofrandomisedclinicaltrials.SupportCareCancer2012;20:1147‒58 4) GarciaMK,McQuadeJ,HaddadR,etal.Systematicreviewofacupunctureincancercare:asynthesisoftheevidence.JClinOncol2013;31:952-60 5) BardiaA,BartonDL,ProkopLJ,etal.Efficacyofcomplementaryandalternativemedicinetherapiesinrelievingcancerpain:asystematicreview.JClinOncol2006;24:5457-64 6) HurlowA,BennettMI,RobbKA,etal.Transcutaneouselectricnervestimulation(TENS)for cancerpaininadults.CochraneDatabaseSystRev2012;3:CD006276 7) CheonS,ZhangX,LeeIS,etal.Pharmacopunctureforcancercare:asystematicreview.Evid BasedComplementAlternatMed2014;2014:804746 8) LianWL,PanMQ,ZhouDH,etal.Effectivenessofacupunctureforpalliativecareincancer patients:asystematicreview.ChinJIntegrMed2014;20:136-47 9) ChoiTY,LeeMS,ErnstE.Acupunctureforcancerpatientssufferingfromhiccups:asystematic reviewandmeta-analysis.ComplementTherMed2012;20:447-55 10) BauseweinC,BoothS,GyselsM,etal.Non-pharmacologicalinterventionsforbreathlessnessin advancedstagesofmalignantandnon-malignantdiseases.CochraneDatabaseSystRev2008;2: CD005623 11) Ben-AharonI,Gafter-GviliA,PaulM,etal.Interventionsforalleviatingcancer-relateddyspnea:a systematicreview.JClinOncol2008;26:2396-404 12) HeXR,WangQ,LiPP.Acupunctureandmoxibustionforcancer-relatedfatigue:asystematic reviewandmeta-analysis.AsianPacJCancerPrev2013;14:3067-74 13) PosadzkiP,MoonTW,ChoiTY,etal.Acupunctureforcancer-relatedfatigue:asystematicreview ofrandomizedclinicaltrials.SupportCareCancer2013;21:2067-73 14) LeeS,JerngUM,LiuY,etal.Theeffectivenessandsafetyofmoxibustionfortreatingcancerrelatedfatigue:asystematicreviewandmeta-analyses.SupportCareCancer2014;22:1429-40 15) ChenHY,LiSG,ChoWC,etal.Theroleofacupointstimulationasanadjuncttherapyforlung cancer:asystematicreviewandmeta-analysis.BMCComplementAlternMed2013;13:362 16) ErnstE,WhiteAR.Prospectivestudiesofthesafetyofacupuncture:asystematicreview.AmJ Med2001;110:481-5 鍼灸治療は,予後を改善するか? ▶臨床疑問9‒6
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17) EzzoJM,RichardsonMA,VickersA,etal.Acupuncture-pointstimulationforchemotherapyinducednauseaorvomiting.CochraneDatabaseSystRev2006;2:CD002285 18) ChaoLF,ZhangAL,LiuHE,etal.Theefficacyofacupointstimulationforthemanagementof therapy-relatedadverseeventsinpatientswithbreastcancer:asystematicreview.BreastCancerResTreat2009;118:255-67 19) LeeMS,ChoiTY,ParkJE,etal.Moxibustionforcancercare:asystematicreviewandmetaanalysis.BMCCancer2010;10:130 20) LeeMS,KimKH,ChoiSM,etal.Acupuncturefortreatinghotflashesinbreastcancerpatients:a systematicreview.BreastCancerResTreat2009;115:497-503 21) LeeMS,KimKH,ShinBC,etal.Acupuncturefortreatinghotflushesinmenwithprostatecancer: asystematicreview.SupportCareCancer2009;17:763-70 22) FriskJ.Managinghotflushesinmenafterprostatecancer―asystematicreview.Maturitas2010; 65:15-22 23) ZhuangL,YangZ,ZengX,etal.Thepreventiveandtherapeuticeffectofacupunctureforradiation-inducedxerostomiainpatientswithheadandneckcancer:asystematicreview.IntegrCancerTher2013;12:197-205 24) O’SullivanEM,HigginsonIJ.Clinicaleffectivenessandsafetyofacupunctureinthetreatmentof irradiation-inducedxerostomiainpatientswithheadandneckcancer:asystematicreview.AcupunctMed2010;28:191-9. 25) LovelaceTL,FoxNF,SoodAJ,etal.Managementofradiotherapy-inducedsalivaryhypofunction andconsequentxerostomiainpatientswithoralorheadandneckcancer:meta-analysisandliteraturereview.OralSurgOralMedOralPatholOralRadiol2014;117:595-607 26) LuW,HuD,Dean-ClowerE,etal.Acupunctureforchemotherapy-inducedleukopenia:exploratory meta-analysisofrandomizedcontrolledtrials.JSocIntegrOncol2007;5:1-10 27) ChoiTY,LeeMS,ErnstE.Moxibustionforthetreatmentofchemotherapy-inducedleukopenia:a systematicreviewofrandomizedclinicaltrials.SupportCareCancer2015;23:1819-26 28) FranconiG,ManniL,SchröderS,etal.Asystematicreviewofexperimentalandclinicalacupunc- tureinchemotherapy-inducedperipheralneuropathy.EvidBasedComplementAlternatMed 2013;2013:516916
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III章各論:クリニカル・エビデンス ヨガの教典である『ヨーガ・スートラ』によると,ヨガとは心の作用の止滅(制御)である。それは解脱を達成するためのものであり,具体的な方法として8 つの要素(8支則)が説かれている。このなかのどの要素を強調するか,どのようなポーズを,どのような強度で行うか,誰が始めたやり方かなどによって,ハタヨガ,アシュタンガヨガ,レストーラティブヨガ,アイアンガーヨガなど,さまざまな呼称がついている。医療に応用されているヨガは,8 つの要素のうち,主にアーサナ(体位法,ポーズ),プラナヤーマ(呼吸法),瞑想法の3 つ,もしくはそれらを組み合わせたものが多い。特に緩和医療の分野では,穏やかで,ローインパクトのポーズで構成されるプログラムが用いられている。ヨガは,1ゆっくりとした動き(もしくは一定の姿勢の保持)に,2呼吸(多くの場合,通常より長い呼気)をあわせ,3そこで生じる身体感覚に意識を向けることによって,運動の要素だけではなく,心の安定・平静を導く瞑想の要素をあわせもつ点(瞑想的運動療法)が特徴である。 ・動機づけが大切。ヨガの効果は定期的に練習することで得られ,練習頻度に相関する。・疾患に応じて行わないほうがよいポーズ(高血圧,緑内障患者では頭を下にするポー ズなど)がある。・体調や併存疾患(気分障害,不安障害)にあったポーズの内容,運動強度,練習時間 から始めるべきである。そのため,少なくとも最初は経験豊かなインストラクターの指導のもとで練習することが望ましい。 ・がん患者用に国際的に統一されたヨガプログラムがあるわけではない。現在,がん患 者に対するヨガのエビデンスのほとんどは,女性,乳がん患者および乳がんサバイバーに対して,それぞれの医療施設で採用,開発したプログラムの効果を検討したものである。そのため,ここに示すエビデンスが乳がん以外のがん患者,男性患者,すべてのヨガプログラム(患者がアクセスしやすいヨガ教室のヨガ,特に運動強度の強いパワーヨガやホットヨガなど)に一般化して適応できるかどうかは不明である。・効果判定のための介入期間や,患者にヨガを指導する人(インストラクターの経験) が一定ではない。・ドロップアウトする患者が一定の割合で存在する。 1 サマリー 1 ヨガの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 10 ヨ ガ
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・よくみられる有害事象は筋肉痛,関節痛,めまい,咳き込み,しびれ感である。・高血圧,緑内障患者では,頭を低くするポーズは避けることが望ましい。・骨転移が疑われる,ステロイドによる治療を受けているなど,病的骨折の危険性があ る場合は,強度の屈曲,伸展,捻転を伴うポーズは避けることが望ましい。・めまい,ふらつき,倦怠感が強い場合は,バランスをとるポーズ,立位のポーズは慎 重に行う。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Yoga」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年8 月15 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:20 件 YogaAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ▶無作為化比較試験:49 件 YogaAND(RandomizedControlledTrial[pt]ORRandomizedControlledTrial[ti]ORRandomised ControlledTrial[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件 7 件 PubMed:20 件 本文を用いたスクリーニングで13 件除外・運動療法,補完代替療法全体でのレビューであるため,ヨガ単独の評価が困難,controlledtrial でない研究を含んでいる:12 件・書誌学的解析論文:1 件
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III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(無作為化比較試験) 抄録,本文を用いたスクリーニングで13 件除外・対象者ががん以外:7 件・ヨガ単独以外:2 件・無作為化比較試験以外:4 件 36 件 PubMed:49 件
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1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Buffart ら1)によるシステマティックレビューでは,ヨガの身体的および精神的効果を調べた16 件のうち,4 件で痛みが評価された。乳がん患者を対象とした2 件では,ヨガの疼痛軽減効果の効果量は大であった〔standardized mean difference(SMD):-0.64, 95%CI:-0.98~-0.31〕。特にCarson ら2)は,乳がん患者の関節痛に対するヨガの有効性を報告した。以上より,ヨガは,乳がん患者の痛みを軽減する可能性がある。しかしながら,研究論文の数が少なく,この結論は慎重に解釈されるべきである。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。無作為化比較試験が2 件ある。Raghavendra ら3)による無作為化比較試験では,乳がん患者が毎日1 時間,週6 回のヨガ実習を行うと,対照群に比較して化学療法による悪心の強度と頻度を抑制したと報告した。しかし,Vadiraja ら4)による無作為化比較試験では,対照群との間に差はみられなかったとした。以上より,結論を下すには研究の数が少なく,現時点で,ヨガががん患者の悪心・嘔吐を軽減するとは結論づけられない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある5—7)。そのうち最も多くの無作為化比較試験を検討したSadja ら5)によるシステマティックレビューでは,ヨガ介入期間前後で倦怠感の変化を調べた10 件のうち,ヨガによって倦怠感が著明に改善したとする報告が4 件あった。そのうち3 件は,ヨガクラスへの参加頻度が多いほど,より倦怠感の改善がみられたとしている2,8,9)。ただし,10 件のうち9 件は乳がん患者,乳がんサバイバーでの研究であり,参加者のほとんどが女性であった。Cramer ら7)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者に限定してヨガの倦怠感に及ぼす影響を調べた6 件を検討し,ヨガ群は対照群に比較して有意に倦怠感を改善 2 臨床疑問 ヨガは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問10‒1
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III章各論:クリニカル・エビデンス することを見出している(SMD:0.33,95%CI:0.01~0.65)。以上より,ヨガは,女性乳がん患者および乳がんサバイバーの倦怠感を軽減させるための有用な方法といえるであろう。しかしながらこの結論は,これまでの研究の不均一性に注意して,慎重に解釈されるべきである。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Mustian10)によるシステマティックレビューでは,9 件の無作為化比較試験を検討し,睡眠の改善が得られたとする論文が6 件,効果なしとする論文が3 件であった。睡眠を改善したとする論文では,睡眠潜時,睡眠時間,睡眠の質が改善したことを報告しており,そのうち2 件で睡眠薬の使用量を減量させることができたとしていた11,12)。以上より,ヨガは,がん患者の睡眠障害を軽減する可能性がある。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 1 不 安 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Buffart ら1),Lin ら13),Cramer ら14)による,いずれのシステマティックレビューでも,ヨガはがん患者(乳がん患者がほとんど)の不安を軽減した。ただし,サブグループ解析を行ったCramer ら14)によるシステマティックレビューでは,ヨガの不安改善効果(SMD:-1.51,95%CI:-2.47~-0.55)は,がん治療中には認められたが,治療終了後では対照群との間に差はみられなかった。以上より,ヨガは,治療中のがん患者の不安を軽減する可能性がある。 2 抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Buffart ら1),Lin ら13),Cramer ら14)によるいずれのシステマティックレビューでも,ヨガはがん患者(ほとんどは乳がん患者)の抑うつを軽減した。ただし,サブグループ解析を行ったCramer ら14)によるシステマティックレビューでは,ヨガの抑うつ改善効果(SMD:-1.59,95%CI:-2.68~-0.51)は,がん治療中には認められたが,治療終了後では対照群との間に差はみられなかった。以上より,ヨガは,治療中のがん患者の抑うつ状態を軽減する可能性がある。 3 その他 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Buffart ら1),Lin ら13),Cramer ら14)によるシステマティックレビューでは,ヨガはがん患者の心理的落胆(SMD:-0.86,95%CI:-1.50~-0.22)を改善した。また,Lin ヨガは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問10‒2
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ら13),Cramer ら14)によるシステマティックレビューでは,ヨガはがん患者の自覚ストレス(SMD:-1.14,95%CI:-2.16~-0.12)を改善した。以上より,ヨガは,治療中のがん患者の心理的落胆や自覚ストレスを軽減する可能性がある。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Buffart ら1),Lin ら13),Cramer ら14)によるいずれのシステマティックレビューでも,ヨガはがん患者(乳がん患者がほとんど)の全般的QOL を有意に改善1,14),もしくは改善する傾向がある13)とした。最も多くの研究を検討したCramer ら14)によるシステマティックレビューでは,8 件の報告を検討し,ヨガは,治療中の乳がん患者の全般的QOL を中等度に改善する(SMD: 0.62,95%CI:0.04~1.21)とした。以上より,ヨガは,治療中の乳がん患者の全般的QOL を改善する可能性がある。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはない。がん患者に対するヨガの効果を検討した無作為化比較試験が35 件あり,7 件で有害事象に言及していた11,12,15—18)。そのうち4 件では有害事象はみられなかった。有害事象を報告した3 件の内訳は以下のとおりである。Kiecolt—Glaser ら17)の報告では,ヨガを行った100 例中2 例で腰部,肩の症状の再発がみられた。Mustian ら11)の報告では,206 例中1 例で介入期間中に,おそらくヨガとは直接関係ない上室性頻拍がみられた。また,Bower ら18)の報告は,16 例中1 例で一過性の背筋のけいれんがみられたというものであった。健常人でよくみられる有害事象は,筋肉痛,関節痛,めまい,咳き込み,しびれ感,筋肉のけいれんである19)。35 件の無作為化比較試験のなかでは,がん患者に特有,もしくは特に注意しなければならない有害事象はみられなかった。以上より,がん患者がヨガを行っても,その有害事象は低頻度かつ軽微であると考えられる。しかしながらこの結論は,これまでの研究の大半が乳がん患者,乳がんサバイバーを対象としたものであることを念頭に置いて,慎重に考えられるべきである。 1 化学療法による悪心・嘔吐 臨床疑問10—1 の「2)消化器症状」の項で記載したとおり,本臨床疑問に関連する無作為化比較試験が2 件ある。しかしながら,ヨガががん患者の化学療法による悪心・嘔吐を緩和させるかどうかは結論づけられない。 ヨガは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問10‒3 ヨガは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問10‒4 ヨガは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問10‒5
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III章各論:クリニカル・エビデンス 2 ホットフラッシュ 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はないが,無作為化比較試験が1 件ある。Carson ら2)による無作為化比較試験では,乳がん患者において,ヨガを練習した患者(n=17)は対照群(n=20)に比較して,ホットフラッシュの頻度,重症度ともに有意に改善したと報告した。以上より,ヨガは,乳がん患者のホットフラッシュを軽減することが示唆される。しかしながら,この結論は複数の大規模な研究で確認される必要がある。 3 リンパ浮腫 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はないが,無作為化比較試験が1 件ある。Loudon ら16)による無作為化比較試験では,乳がん関連続発性上肢リンパ浮腫(ステージI)に対するヨガの効果を調べ,ヨガ群では介入期間中,患側上肢の組織硬化が改善したが,浮腫体積は対照群との間に差はなかったことを観察した。以上より,ヨガは,乳がん患者のリンパ浮腫に対して有用であるとは結論づけられない。 4 創傷治癒 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はないが,無作為化比較試験が1 件ある。Rao ら20)による無作為化比較試験では,乳がん患者が手術前後にヨガを毎日練習すると,対照群に比較して術後のドレーン装着日数,抜糸までの期間,入院日数が短縮でき,合併症の発症を抑制できた。対照群では,手術後に血中TNFαが増加したのに対して,ヨガ練習群では低下したことから,ヨガの創傷治癒促進効果に炎症性サイトカインの抑制効果が関連している可能性がある。しかしながら,すべてのがん手術において同様な効果が得られるかについては,今後さらなる検討が必用である。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験 ヨガは,予後を改善するか? ▶臨床疑問10‒6
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の報告はない。 (岡 孝和) 【文 献】 1) BuffartLM,vanUffelenJG,RiphagenII,etal.Physicalandpsychosocialbenefitsofyogaincancer patientsandsurvivors,asystematicreviewandmeta-analysisofrandomizedcontrolledtrials. BMCCancer2012;12:559 2) CarsonJW,CarsonKM,PorterLS,etal.YogaofAwarenessprogramformenopausalsymptoms inbreastcancersurvivors:resultsfromarandomizedtrial.SupportCareCancer2009;17:1301-9 3) RaghavendraRM,NagarathnaR,NagendraHR,etal.Effectsofanintegratedyogaprogrammeon chemotherapy-inducednauseaandemesisinbreastcancerpatients.EurJCancerCare(Engl) 2007;16:462-74 4) VadirajaSH,RaoMR,NagendraRH,etal.Effectsofyogaonsymptommanagementinbreast cancerpatients:Arandomizedcontrolledtrial.IntJYoga2009;2:73-9 5) SadjaJ,MillsPJ.Effectsofyogainterventionsonfatigueincancerpatientsandsurvivors:asystematicreviewofrandomizedcontrolledtrials.Explore(NY)2013;9:232-43 6) BoehmK,OstermannT,MilazzoS,etal.Effectsofyogainterventionsonfatigue:ameta-analysis. EvidBasedComplementAlternatMed2012;2012:124703 7) CramerH,LangeS,KloseP,etal.Canyogaimprovefatigueinbreastcancerpatients?Asystematicreview.ActaOncol2012;51:559-60 8) MoadelAB,ShahC,Wylie-RosettJ,etal.Randomizedcontrolledtrialofyogaamongamultiethnic sampleofbreastcancerpatients:effectsonqualityoflife.JClinOncol2007;25:4387-95 9) LittmanAJ,BertramLC,CeballosR,etal.Randomizedcontrolledpilottrialofyogainoverweight andobesebreastcancersurvivors:effectsonqualityoflifeandanthropometricmeasures.SupportCareCancer2012;20:267-77 10) MustianKM.YogaasTreatmentforinsomniaamongcancerpatientsandsurvivors:asystematic review.EurMedJOncol2013;1:106-15 11) MustianKM,SprodLK,JanelsinsM,etal.Multicenter,randomizedcontrolledtrialofyogafor sleepqualityamongcancersurvivors.JClinOncol2013;31:3233-41 12) CohenL,WarnekeC,FouladiRT,etal.PsychologicaladjustmentandsleepqualityinarandomizedtrialoftheeffectsofaTibetanyogainterventioninpatientswithlymphoma.Cancer2004; 100:2253-60 13) LinKY,HuYT,ChangKJ,etal.Effectsofyogaonpsychologicalhealth,qualityoflife,andphysicalhealthofpatientswithcancer:ameta-analysis.EvidBasedComplementAlternatMed2011; 2011:659876 14) CramerH,LangeS,KloseP,etal.Yogaforbreastcancerpatientsandsurvivors:asystematic reviewandmeta-analysis.BMCCancer2012;12:412 15) DanhauerSC,MihalkoSL,RussellGB,etal.Restorativeyogaforwomenwithbreastcancer:findingsfromarandomizedpilotstudy.Psychooncology2009;18:360-8 16) LoudonA,BarnettT,PillerN,etal.Yogamanagementofbreastcancer-relatedlymphoedema:a randomisedcontrolledpilot-trial.BMCComplementAlternMed2014;14:214 17) Kiecolt-GlaserJK,BennettJM,AndridgeR,etal.Yoga’simpactoninflammation,mood,andfatigue inbreastcancersurvivors:arandomizedcontrolledtrial.JClinOncol2014;32:1040-9 18) BowerJE,GaretD,SternliebB,etal.Yogaforpersistentfatigueinbreastcancersurvivors:a randomizedcontrolledtrial.Cancer2012;118:3766-75 19) MatsushitaT,OkaT.Alarge-scalesurveyofadverseeventsexperiencedinyogaclasses.BiopsychosocMed2015;9:9 20) RaoRM,NagendraHR,RaghuramN,etal.Influenceofyogaonpostoperativeoutcomesand woundhealinginearlyoperablebreastcancerpatientsundergoingsurgery.IntJYoga2008;1: 33-41
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1 栄養療法,経腸栄養剤 2 免疫療法 3 漢方薬 4 高濃度ビタミンC点滴療法 IV章 各 論:治療のトピックス
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栄養管理はすべての疾患治療のうえで共通する基本的医療の一つである。栄養管理を疎かにすると,いかなる治療法も効力を失ってしまうことは,今や周知の事実となっている。特に,化学療法,放射線治療,手術治療など,高度多様化するがん治療を効果的に行い,なおかつ患者のQOL を良好に維持するためには,栄養サポートチーム(NST)を中心とした適切な栄養管理を行うことが肝要となる。加えて,担がん患者,特に進行,再発がん患者が陥る悪液質は,さまざまな代謝・栄養障害をもたらし,さらに,それらの障害因子が複雑に関連することで,特有の症状を発現する症候群として知られている。病状の進行とともに出現するがん悪液質状態は,容易に食欲不振,体重減少,全身衰弱,倦怠感などを来す。このようながん悪液質患者に対して,適切な栄養管理を行うことは,QOL の維持,改善はもちろんのこと,余命にまで影響を及ぼすといっても過言ではない。そこで本項では,がん患者に適切な栄養療法を行うために用いる栄養剤などを中心に概説する。 1 エネルギー代謝異常 従来,がん患者のエネルギー消費量は常に増大しているとされていたが,近年これは,がんによる慢性炎症に加え,免疫力低下に伴う肺炎などの感染兆候を容易に併発するために起こるのではないかと考えられている。以前のDempsey1)らの消化管がん患者の安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure;REE)の検討では,22%が高REE状態,36%が低REE 状態,42%が正常状態であったと報告され,腫瘍進展度,栄養状態,罹病期間などとの関係性は認めなかったと報告されている。一方,感染兆候がない担がん患者に対する臨床研究では,適切な栄養管理が行われている場合は,エネルギー消費量が高値であった。しかし,最終的に生体は不可逆的な代謝動態に陥り,その結果,エネルギー消費が逆に抑制されることが明らかになってきた(図4)2)。また,がんの原発部位によりREE の亢進は異なり,胃がん,大腸がん,直腸がんなどでは,予測値と変わらないが,膵がん,肺がんなどでは亢進するとの報告もあり,今後のさらなる詳細な研究が期待される3,4)。 2 糖代謝異常 担がん状態での糖代謝異常として,1腫瘍細胞のグルコース消費亢進によるグルコース代謝回転の増大,2Cori 回路の活性亢進,3アミノ酸からの糖新生の亢進,4インスリン感受性の低下などが挙げられる。すなわち,担がん状態においては,腫瘍そのものの糖消費増大により,がん組織が嫌気性解糖系を中心にグルコースをエネルギー源として消費し,乳酸を産生する結果,肝でのCori 回路の活性亢進を招き,乳酸からの糖新生が亢進することとなる。Cori 回路の異常な活性化が,低栄養のがん患者に認められており,この亢進した活性は,約300 kcal/日の喪失に相当するといわれている3)。アミノ酸 1 担がん患者の代謝変動 1 栄養療法,経腸栄養剤
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IV章各論:治療のトピックス からの糖新生の立場から,がん悪液質患者では,血清アラニン,グリシン,グルタミン濃度が低下していることがある。これは,肝において糖新生のためにこれらのアミノ酸の利用が亢進していることに関係していると考えられている。 3 蛋白代謝異常 担がん状態での蛋白代謝異常として,1骨格筋蛋白の分解亢進,2骨格筋蛋白の合成低下,3がん細胞における蛋白合成の増加,4全身での蛋白代謝亢進,肝での蛋白合成亢進などが挙げられる。すなわち,担がん患者における全身の蛋白・アミノ酸の代謝亢進は,骨格筋蛋白の分解亢進,合成低下(異化)に伴って,肝における蛋白合成亢進により引き起こされる。このため,がん患者の多くが負の窒素バランスとなるとともに,急激な除脂肪体重(lean body mass;LBM)の減少を誘発し,サルコペニアに陥ってしまう。さらに最近では,がん細胞自身から放出される蛋白質分解誘導因子PIF(proteolysis—inducing factor)が,骨格筋の蛋白異化を起こす主要な経路であるATP—ユビキチン依存経路の活性化に関与していることも明らかになってきた3)。 4 脂質代謝異常 担がん状態での脂質代謝異常として,1脂質分解の亢進,2脂質合成の低下,3全身の脂肪量の低下,4LPL(lipoprotein lipase)の活性低下,5血中トリグリセライドの上昇などが挙げられる5)。すなわち,がん悪液質患者の多くは,相当量の脂肪組織が喪失する。この喪失は,脂肪合成の低下よりも分解の亢進によるものが大半である。脂肪分解亢進には,摂食不良,インスリン抵抗性,がん細胞自身から放出される脂肪動員因子LMF(lipid mobilizing factor)などが関与している3)。さらに,LPL の活性低下,脂質合成の低下は,TNF,IL—1,IFN—γなどのサイトカインが関与していると考えられて エネルギー補給REE/BEE(%) 120 110 100 90 80 93.4±9.7 (n=43) 飢餓飢餓+担がん担がん いわゆる悪液質(高サイトカイン血症)の進展 悪液質(臨床的不可逆状態) 栄養管理の変更(ギアチェンジ) 102.3±9.6 (n=17) 113.6±11.9 (n=12) 86.9±7.6 (n=8) 図 4 エネルギー消費量とがんの進展REE/BEE:1 日当たりの安静時エネルギー消費量(間接熱量計による)/基礎代謝エネルギー消費量(ハリス・ベネディクトの式による) 〔東口髙志,他.外科治療2007;96:934—412)より引用改変〕
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いる。また,がん患者に認められる高トリグリセライド血症は,LPL の活性低下,あるいは脂肪合成に影響を及ぼすサイトカインが関与している5)。 現在,がん患者に対して用いられている栄養剤は多岐にわたっている。しかし,いずれも明らかなエビデンスが得られていないのが現状である。そこで,本項では,比較的エビデンスが明瞭であり,汎用されている栄養剤の特徴,成分組成,がん患者に対する有効性を一部紹介する。 1 経口栄養補助剤:GFO® 1 )GFO® の特徴Glutamine—Fiber—Oligosaccharide(GFO®)は,少量の投与で腸管の絨毛上皮の増殖を維持・促進し,腸管免疫能を賦活化するなど,本来腸管が有する機能を最大源に活かすために開発された経口・経腸栄養剤である。GFO® は,消化管術後患者においても早期から吻合部に負担をかけずに経口・経腸投与が可能であり,手術侵襲,絶食(多くは中心静脈栄養を併用,total parenteral nutrition;TPN)によって生じる腸粘膜の萎縮を抑制し,腸管機能を良好に維持することが可能である。また,腸管の蠕動運動を賦活化するとともに,腸管由来の免疫能を促進することにより,腸管由来の感染症をはじめ種々の術後合併症の発生を抑制する働きもあるとされている6)。 2 )GFO® の成分組成(表1) GFO® は,1 包中にグルタミン(G)3.0 g,水溶性ファイバー(F)5.0 g,オリゴ糖(O)2.5 g を含有しており,これらを約30~45 mL の少量の水に溶解して1 日3 回投与する。グルタミンは,小腸絨毛上皮細胞の主なエネルギー基質としてよく知られているが,水溶液中で加熱すると容易に分解されるため,現状では経静脈栄養用アミノ酸としては用いられていない。さらに,小腸絨毛上皮細胞へのエネルギー供給経路は大半が経腸管的であることがわかっているため,効率的なグルタミンの供給のためには経静脈的投与よりもむしろ経腸的な投与が有効である。グルタミンは免疫賦活栄養法(immunonutri- 2 わが国で用いられているがん患者に対する栄養剤 表 1 GFO® の成分組成 成 分含 量(1 包15 g 当たり)熱 量36 kcal糖 質6.0 gタンパク質(グルタミン) 3.6 g(3.0 g) 脂 質0 g食物繊維5.0 gナトリウム0.5 mgラクトスクロース1.45 g
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IV章各論:治療のトピックス tion)として,消化器外科領域の周術期管理を中心に幅広く利用されており,腸管バリア機能の維持,bacterial translocation の防止,免疫能の増強,蛋白代謝改善,腸サイトカイン環境の維持など種々の生態防御改善効果が認められている7)。水溶性ファイバーやオリゴ糖は,Lactobacillus やBifidobacterium などの腸内有用菌によってその一部が選択的に代謝され,代謝産物として短鎖脂肪酸(short—chain fatty acid;SCFA)が産生される。SCFA は,大腸を中心とした腸管粘膜細胞の主要なエネルギー源として利用されるとともに,腸管内pH を低下させる効果を有することにより腸内有用菌を増加させ,逆にClostridiumu などの有害菌を減少させて腸管免疫系の賦活に寄与していることが報告されている6) (図5)8)。 3 )がん患者に対する有効性がん患者の栄養障害は,1高度がん進展に伴う病態(がん悪液質や消化管機能障害など)に基づくもの,2栄養管理自体に問題があり栄養障害を来しているもの(医原性栄養障害を含む)に大別され,特に終末期がん患者においては,これらが複雑に組み合わさり栄養障害が形成されている。いずれの場合にせよ,可能な限り経口摂取を行い,絶食期間を作らないことが重要であり,代謝制御,症状コントロールに有用な栄養剤を十分に利用する必要がある。GFO® は放射線性口腔粘膜炎に対する有効性が報告されており9),また,経口摂取の低下した終末期がん患者にGFO を用いた場合,唾液分泌の促進による口腔内の清浄化,それに伴う食欲の回復,誤嚥性肺炎の再燃予防,腸管の蠕動運動の正常化による便秘の改善などの種々の効果を得ることが可能であると考えられる。特に,終末期がん患者は Bacterial translocationの予防 結腸,小腸絨毛増殖作用,DAO活性上昇 エンテログルカン分泌増加(神経ペプチド分泌増加) ビフィズス菌,乳酸菌などの選択的資化( 優位の腸内細菌を誘導) 短鎖脂肪酸(SCFA:酪酸,酢酸,プロピオン酸)の増量・腸上皮細胞のエネルギー源・管腔内のpHの低下→ などの増殖抑制・胃運動および小腸通過時間の抑制 Clostridium Biffidobacyerium 2高発酵性高粘度水溶性植物線維,3オリゴ糖類 栄養基質:1グルタミン 50~60%ケトン体 15~20%糖 5~7%腸管絨毛 図 5 腸管粘膜の栄養基質となるGFO® 〔東口髙志 編著.重症患者と栄養管理Q & A,総合医学社,2010,p758)より引用〕
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疼痛緩和を目的にオピオイドを使用している場合が多く,その副作用として必発する便秘への対策が重要となる。GFO はオピオイド製剤投与患者の便秘予防に有用であり,薬剤に頼らない,もしくは従来よりも少量の薬剤による排便コントロールが可能である。 2 経口栄養補助剤:インナーパワー® 1 )終末期がん患者に対する症状・機能改善補助食品として開発悪液質の病態解析をはじめとする担がん患者の代謝・栄養学的研究はいまだ十分とはいえず,病態や病状に応じた対策法の開発はほとんど行われていない。このような状況のなか,担がん患者の腫瘍進展に伴う全身体の代謝学的変動に着目し,悪液質における代謝動態の制御を行いつつ,症状発現の抑制や身体機能の回復に有益な栄養剤あるいはメディカルサプリメントとしてインナーパワー® が開発10)され,多数の臨床報告が蓄積されてきた。著者らも終末期がん患者を対象にした臨床検討を行い,終末期がん患者に特有の臨床症状発現を抑制すること,機能回復効果によりQOL の維持・向上が可能なことなどを報告している2—5)。 2 )インナーパワー® の成分組成(表2)インナーパワー® は,1 袋125 g 中に炭水化物33 g,タンパク質1.7 g を含有し,エネルギーとしては139 kcal である。主要成分は,分岐鎖アミノ酸(BCAA),コエンザイムQ10,L—カルニチン,亜鉛,クエン酸であり,進展するがん細胞に直接効果を及ぼすものではなく,むしろがん自体や,生体侵襲を伴う各種がん治療によって障害されているがん以外の組織の機能を回復・改善そして向上させる目的で開発された,これまでの概念にない新しい栄養食品といえる(表2)。また,終末期だけに留まらず外科手術の周術期や化学療法,放射線治療などの治療中,治療後の症例であっても合併症や副作用の予防,全身状態の回復・維持に効果があるとされている。これら治療の直接的侵襲や副作用などによって十分な経口摂取ができない患者や必要摂取量が苦痛を伴っている患者にも配慮し,組成内容をいずれも高濃度に調整し,かつ味や風味も考慮して,少量の摂取で効果が得られやすいように工夫されてい 表 2 インナーパワー® の成分組成 成 分含 量(1 袋125 g 当たり)熱 量139 kcal炭水化物33 gコエンザイムQ10 39 mg BCAA 2,500 mg L—カルニチン50 mgビタミンE 10 mgビタミンB 群5 mg 亜 鉛3 mg 銅0.3 mgクエン酸1,000 mg
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IV章各論:治療のトピックス る。インナーパワー®に含有される各栄養組成の特徴は,以下のとおりである。BCAAは,腫瘍進行に伴う骨格筋の蛋白崩壊を抑制するとともに蛋白合成を促進する。また,骨格筋でのエネルギー代謝を改善して乳酸の貯留を軽減し,筋の疲労回復にも効果がある。コエンザイムQ10 は,電子伝達系に働きTCA 回路を円滑に回す補酵素の一つである。また,優れた抗酸化力は,宿主担がん状態において有効に働くものと考えられている。L—カルニチンは,担がん状態,特にがん悪液質での脂肪酸利用能の低下した状態において脂肪酸のβ酸化を促進させ高脂血症の改善とともにエネルギー代謝効率の向上が期待できると考えられる。重要な微量栄養素である亜鉛も抗酸化作用を有し,味覚障害の改善や免疫能の促進,そして創傷治癒促進作用などが知られている。クエン酸は糖代謝におけるエネルギー代謝の中心的な役割を担っており,嫌気的解糖系の活性を抑制し,乳酸産生抑制作用が期待される。また,血液,体液レベルでの緩衝作用を有することから,侵襲や高サイトカイン血症時におけるpH 制御に関与し,生態環境の正常化に働くと考えられる。これらインナーパワー® に含有される種々の栄養素の相乗効果は,それぞれが単独でも多くの代謝制御効果や臨床効果を有しているが,これらを同時に投与することによって相加相乗的に働き,合理的なエネルギー産生を促進し,代謝異常の予防に働くことものと考えられる。 3 )がん患者に対する有効性終末期がん患者に対してインナーパワー® 1 袋を4 週間経口投与し,非投与の対照群と比較した臨床研究がある。痛み,倦怠感,呼吸困難感,気分の落ち込み,食欲不振,不眠,吐気,便秘,口渇の9 項目についてface scale を用いて0~5 の6 段階(0:症状なし→増悪→5:高度異常)で評価し,さらにこれら9 項目の評価点数を加算した「臨床症状加算式総合評価」では,インナーパワー® 投与群の有用性が示唆された(図6)。特に,倦怠感の推移では,インナーパワー® が筋蛋白の維持効果に加え,乳酸の抑制効果を示唆したことが大きな要因と考えられた(図7,8)。 30 25 20 15 10 5 0 p<0.001 ** ** p<0.01 インナーパワー投与群 (n=16)対照群(n=16)投与前2週後4週後 p<0.01 図 6 臨床症状加算式総合評価の推移values are means±SD vs 対照群(Wilcoxon test) **:p<0.01 〔東口髙志,他.外科と代謝・栄養2010;44:157—6910)より引用〕
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また,血液・生化学的指標においては,総蛋白,アルブミンの経時的推移よりインナーパワー群において蛋白代謝および薬剤代謝の恒常性の維持と循環動態の回復が認められた11)。以上より,インナーパワー® の終末期がん患者に対する投与は,1全身の蛋白合成の促進,2骨格筋の萎縮・崩壊の抑制,3健常部位・組織の抗酸化作用抑制(抗がん剤や放射線治療あるいは外科治療などの侵襲からの回復促進),4組織修復能の促進,5骨格筋および各種臓器内の乳酸排出および代謝の促進などの効果を有することが明らかとなっている12—14)。4.5 2.5 3.0 3.5 4.0 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 インナーパワー投与群 (n=16)対照群(n=16)投与前2週後4週後 p<0.05 p<0.01 p<0.01 * ** 図 7 倦怠感の推移values are means±SD vs 対照群(Wilcoxon test) *:p<0.05,**:p<0.01 〔東口髙志,他.外科と代謝・栄養2010;44:157—6910)より引用〕 45.0 (mg/dL) 25.0 30.0 35.0 40.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 p<0.01 p<0.001 インナーパワー投与群 (n=16)対照群(n=16)投与前2週後4週後 基準値:3.0~17.0 mg/dL * 図 8 血清乳酸値の推移values are means±SD vs 対照群(t—test) *:p<0.05 〔東口髙志,他.外科と代謝・栄養2010;44:157—6910)より引用〕
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IV章各論:治療のトピックス 3 経口栄養補助剤:プロシュア® 1 )悪液質患者に対する栄養機能食品として開発がんに伴う低栄養は,がん関連性体重減少(cancer—associated weight loss;CAWL)とがん誘発性体重減少(cancer—induced weight loss;CIWL)に分類される。CAWLは,消化管閉塞,治療による食欲不振,告知による精神的ストレスなどを背景とした摂食不良が原因のため,十分なエネルギー補給により改善可能である。一方,CIWL は,がんに起因する代謝異常で起こる体重減少であり,通常の栄養管理では改善することが困難である。がんに対する免疫応答により炎症性サイトカインが過剰分泌されることに加え,がん細胞から分泌される蛋白質分解誘導因子PIF が増加し,体重減少,炎症反応,脂肪喪失,筋蛋白消失を伴う悪液質により臨床転帰が不良となる。プロシュア® は,がん悪液質に対応するために開発された栄養機能食品であり,国内の栄養剤では最も多くのエイコサペンタエン酸(EPA)を含有している。ω—3 脂肪酸に属するEPA は,免疫栄養素の代表であり,がん悪液質に関与する炎症性サイトカインの働きを抑制,さらにPIF の活性低下により蛋白分解を抑制する働きがある。海外においては,「体重減少抑制」「QOL 改善」などの報告がなされている15)。 2 )プロシュア® の成分組成(表3)プロシュア® は,1 パック240 mL 中に炭水化物49 g,タンパク質16 g,脂質6.1 g のほか,ビタミン,ミネラルなど栄養素をバランスよく含有し,エネルギーとしては300 kcal である。悪液質に対応するため,蛋白強化とともに,1.25 kcal/mL と濃縮タイプの 表 3 プロシュア® の成分組成 成 分含 量(1 パック240 mL 当たり)熱 量300 kcal Na 360 mg炭水化物49 g K 480 mgタンパク質16 g Cl 365 mg 脂 質6.1 g Ca 355 mg L—カルニチン24 mg P 252 mgビタミンA 324μgRE* Mg 101 mg βカロテン168μgRE* Zn 6.0 mgビタミンD 4.1μgビタミンE 48 mgα—TE**ビタミンC 103 mgビタミンB 群0.95 mg 葉 酸406μgナイアシン3.8 mgパントテン酸2.6 mg ビオチン12μg *RE:レチノール当量**α—TE:αトコフェロール当量
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ため効率良く高エネルギーを補給することが可能である。ω—3 脂肪酸のうちEPA やドコサヘキサエン酸(DHA)は,がん悪液質に関与するIL— 6 などの炎症性サイトカインの産生を強力に制御するが,プロシュア® は,1 パック中にEPA を約1.1 g,DHA を約0.5 g 含んでいるため,髙抗炎症作用が期待できる。さらに,化学療法などの副作用である味覚異常を考慮し,亜鉛も豊富に含まれている。その他,便性状を整える食物繊維,オリゴ糖なども含有されている。 3 )がん患者に対する有効性プロシュア® をはじめとするEPA 添加栄養食品は,多くの固形がんにおけるCIWL 抑制目的に使用され,体重減少抑制,除脂肪体重維持,炎症反応抑制,QOL 改善などの有用性が報告されている15)。 4 胃瘻からの経腸栄養剤:ラコール® NF 配合経腸用半固形剤 1 )ラコール® 半固形剤の特徴わが国で汎用されている半消化態栄養剤であるが,日本初の半固形剤として開発された経腸栄養剤である。脂肪源として,ω—3 脂肪酸であるα—リノレン酸を豊富に含むシソ油が多く配合されている。主に,ω—3 脂肪酸による免疫賦活作用のほか,抗炎症作用,抗腫瘍効果化学療法感受性増強作用なども報告されている16)。特に,頭頸部がんなどで経口摂取が不可能となり,胃瘻造設を施行された患者に対して投与される。液剤の経腸栄養剤を半固形化し,通常の食事に近い形状で投与することにより,胃が本来有している生理的な運動を引き起こすことが期待されている。液体栄養剤をそのまま用いた際の副作用である,1下痢,2胃食道逆流,3胃瘻からの栄養剤の漏れなどの回避はもちろんのこと,栄養剤投与にかかる患者の拘束時間短縮に有用であると考えられる。 2 )ラコール® の成分組成(表4)ラコール® は,1 パック300 g 中に炭水化物47 g,タンパク質13 g,脂質6.7 g のほか,ビタミン,ミネラルなど栄養素をバランスよく含有し,エネルギーとしては300 kcalである。微褐白色のゲル状で,粘度は6,500~12,500 mPas に調整されている。ω—3 脂肪酸とω—6 脂肪酸の含有比が1:3 に調整されている。さらに,消化吸収に優れている中鎖脂肪酸(MCT)が多く配合されている。 3 )がん患者に対する有効性消化器がん患者に対する,周術期投与などの栄養支持療法の有用性は報告されている。また,がん悪液質患者にラコール® を投与すると摂食促進作用を有する消化管ホルモンであるグレリンの産生が増加し,体重も増加することも報告されている17)。胃瘻からの半固形化栄養剤投与薬剤としてはわが国で唯一の栄養剤であり,患者のQOL からも極めて有用であると考えられる。 5 経口補水液:OS‒1® 1 )OS‒1® の特徴OS—1® は,消費者庁の特別用途食品・個別評価型・病者用食品表示許可を取得している水分・糖類・電解質含有経口補水液である。OS—1® は,WHO の提唱する経口補水療
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IV章各論:治療のトピックス 法の考えに基づいた飲料で,その組成は,経口補水療法を発展させた米国小児学会の指針に基づいている。経口補水療法は,1生理的な方法で水・電解質補給が可能である, 2特殊な器具や技術を必要としない,3在宅においても実施可能などの利点があると考えられている。 2 )OS‒1® の成分組成(表5) OS—1® は,ナトリウムイオン濃度,クロールイオン濃度が50 mEq/L,カリウムイオン濃度が20 mEq/L,ブドウ糖濃度が1.8%の組成で,浸透圧が270 mOsm/L で構成されている。 表 4 ラコール® の成分組成 成 分含 量(1 パック300 g 当たり)熱 量300 kcal Na 221.4 mg炭水化物46.9 g K 414 mgタンパク質13.1 g Cl 351 mg 脂 質6.7 g Ca 132 mg乳カゼイン10.2 g P 132 mg大豆タンパク質5.0 g Mg 57.9 mg 中鎖脂肪酸2.3 g Zn 1.9 mg αリノレン酸0.45 gリノール酸1.35 gビタミンC 84.3 mgビタミンE 1.95 mgビタミンK 18.75μgパントテン酸2.9 mg 葉 酸113μgビオチン12μg 表 5 OS—1® の成分組成 成 分濃 度Na+ 50 mEq/L K+ 20 mEq/L Cl- 50 mEq/L Mg2+ 2 mEq/Lリン2 mmol/L乳酸イオン31 mEq/L炭水化物2.5% (ブドウ糖1.8%)
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3 )がん患者に対する有効性高度な脱水状態には,輸液で対応することが有効であるが,軽度から中等度の脱水症への処置としてはOS—1® が適していると考えられている。一般的に,感染性腸炎,感冒による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態,過度の発汗による脱水状態に適している。すなわち,輸液療法と同等の水分・電解質補給効果があること,術前患者の不安感・口渇感・空腹感を緩和させることが報告されている。がん患者に対しては,周術期の体液管理への応用,抗がん治療後の水分負荷などはもちろんのこと,特に在宅療養を希望しているがん患者に対しても,体液管理および日常の脱水治療に加え,終末期においては水分・電解質補給の方法として活用されることが期待される。 6 経口栄養補助剤:アバンド® 1 )アバンド® の特徴本来,アバンド® は,褥瘡などの創傷治癒過程における組織の増殖・再生において蛋白,なかでもコラーゲン合成が重要な役割を果たす栄養剤として開発されている。褥瘡の発生に伴い,生体内の蛋白異化の亢進が起こり,これが改善されないと,創傷治癒の遅延,さらには免疫能の低下につながるため,体蛋白の分解を抑制することは極めて重要な事項となる。その治癒過程において重要な役割を果たすのが,アミノ酸である。グルタミン,アルギニン,β—ヒドロキシ—βメチル酪酸(HMB)を配合したアバンド® は,除脂肪蛋白喪失抑制や体重増加などが確認されている。 2 )アバンド® の成分組成(表6)アバンド® に配合されるHMB は,必須アミノ酸であるBCAA のなかでも最も強い蛋白合成促進と分解抑制効果を有するロイシンの代謝産物である。ロイシンは代謝され,そのわずか5%がHMB として作用する。HMBの働きは,1蛋白の合成促進:細胞分裂や成長,細胞構成に関与しているmTOR (mammalian target of rapamycin)経路を経て,蛋白合成を促進することが報告されている,2体蛋白の分解抑制:細胞膜の構成成分であるコレステロールに代謝され筋鞘を安定化させる可能性が考えられている。また,細胞内蛋白分解経路であるユビキチン—プ 表 6 アバンド® の成分組成 成 分含 量(1 袋24 g 当たり)熱 量79 kcal炭水化物7.9 gタンパク質0 g 脂 質0 gカルシウム200 mgアミノ酸L—グルタミン7 g L—アルギニン7 g カルシウムHMB 1.5 g (HMB 1.2 g を含む)
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IV章各論:治療のトピックス ロテアソーム系を抑制することから,体蛋白分解を抑制すると考えられている,3過剰な炎症反応の調整:慢性炎症反応の発生に深く関与している転写因子NF—κB の発現を制御するため,慢性創傷などによる長期の炎症反応の改善が期待される,などである。HMB のほかに,グルタミン(蛋白合成の促進,コラーゲンの合成促進,免疫賦活作用,消化管粘膜構造の維持),アルギニン(蛋白合成の促進,コラーゲンの合成促進,免疫賦活作用),3 成分が配合されている。 3 )がん患者に対する有効性アバンド® は,褥瘡などの創傷治癒に関する有用性は数多く報告されている。がん悪液質患者,進行がん患者に対しては,筋肉喪失からの回復,除脂肪体重の増加が報告されている18)。 がん細胞は,複雑な代謝経路により,どのような環境下でも生存を維持する能力が高いといわれている。がん細胞が,Cori 回路などのエネルギー産生効率が悪い解糖系を選択する背景には,腫瘍細胞自身が増殖するために必要となるRNA・DNA,アミノ酸,脂質などの産生を獲得するためとの仮説が提唱されている6)。このように,がんの進展によってもたらされる代謝障害は,次第に不可逆的な悪液質状態に陥るとされるが,この代謝異常はがん種により,また個々の症例において障害の程度やその内容,進行のスピードは異なり,通常の栄養管理では改善が困難である。このため,がんと診断された時点より,今後の治療方針を決定することと同様に,栄養管理も積極的に行うことが重要である。すなわち,がん患者が最期までADL を落とすことなくQOL を維持し,感染症を起こすことなく,命を全うするためには,栄養療法はがん治療の要と言っても過言ではない。 (伊藤彰博) 【文 献】1) Demsey DT, Feurer ID, Knox LS, et al. Energy expenditure in malnourished gastrointestinal cancer patients. Cancer 1984; 53: 1265-73 2) 東口髙志,森居 純,伊藤彰博,他.全身症状に対する緩和ケア.外科治療2007; 96: 934-41 3) Tisdale MJ. Cachexia in cancer patients. Nat Rev Cancer 2002; 2: 862-71 4) Guirao X. Impact of the inflammatory reaction on intermediary metabolism and nutrition status. Nutrition 2002; 18: 949-52 5) Argilés JM, López-Soriano FJ. New mediators in cancer cachexia. Nestle Nutr Workshop Ser Clin Perform Programme 2000; 4: 147-62, discussion 163-5 6) 東口髙志,伊藤彰博,二村昭彦,他.Glutamine-Fiber-Oligosaccharide(GFO) enteral formula の経静脈栄養実施時における腸粘膜の形態的・機能的変化に対する効果の実験的研究.外科と代謝・栄養2009; 43: 51-60 7) 原 博.プレバイオティクスから大腸で生産される短鎖脂肪酸の生理効果.腸内細菌雑誌2002; 16: 35-42 8) 東口高志 編著.GFO 療法はなぜ効くの?.重症患者と栄養管理Q&A.総合医学社.2010,p75 9) 飛田尚慶,吉富泉,朝比奈泉,他.頭頸部がん放射線治療時に発生する口腔粘膜炎による有害事象 に対するグルタミンリッチの栄養剤: GFO® の有用性についての検討.静脈経腸栄養2010; 25: 951-6 3 がん悪液質に対する栄養サポートと今後の課題
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10) 東口髙志,二村昭彦,伊藤彰博.終末期がん患者に対する症状・機能改善補助食品の開発とその効果; 比較臨床試験.外科と代謝・栄養2010; 44: 157-69 11) 二村昭彦,東口髙志,伊藤彰博,他.終末期がん患者の代謝動態改善を目指した新しい栄養剤・インナーパワーの効果.静脈経腸栄養2010; 25: 241 12) 大川貴正,東口髙志,伊藤彰博,他.新しい栄養剤インナーパワーの運動負荷即時効果に関する基礎的臨床研究.静脈経腸栄養2010; 25: 242 13) 河村早紀,菊池暢之,松尾真紀,他.栄養機能食品「インナーパワー」使用により代謝改善効果のあった一例.静脈経腸栄養2010; 25: 242 14) 山本春美,清水加那,早川信子,他.HCC 患者に対する栄養機能食品インナーパワーの効果.静脈経腸栄養2010; 25: 845 15) Fearon KC, Von Meyenfeldt MF, Moses AG, et al. Effect of a protein and energy dense N-3 fatty acid enriched oral supplement on loss of weight and lean tissue in cancer cachexia: a randomised double blind trial. Gut 2003; 52: 1479-86 16) Mitsugi K, Nakamura T, Kashiwabara N, et al. Protection against methotrexate toxicity by a soybean protein- and omega-3 fatty acid-containing diet: comparative study with a casein-containing diet. Oncol Rep 2004; 12: 41-4 17) Ashitani J, Matsumoto N, Nakazato M. Effect of octanoic acid-rich formula on plasma ghrelin levels in cachectic patients with chronic respiratory disease. Nutr J 2009; 8: 25 18) May PE, Barber A, D’Olimpio JT, et al. Reversal of cancer-related wasting using oral supplementa- tion with a combination of β-hydroxy-β-methylbutyrate, arginine, and glutamine. Am J Surg 2002; 183: 471-9
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IV章各論:治療のトピックス がんに対する免疫療法が,現在,世界的に注目されている。近年,一部のがんに対して標準治療として確立され,急速に市民権を得た治療となっている。一方で,それら以外の免疫療法については,保険承認されているが標準治療としては認められていないもの,先進医療,治験あるいは研究治療,自費診療(代替医療)と,いろいろな設定で実施されているのが現状である。患者にはこのことをよく説明する必要がある。 2016 年3 月現在,わが国で実施されている免疫療法のうち,保険承認されているものと先進医療について適応疾患とともに表7 に示す1)。便宜的に第1~4 世代に分類した。 1 第1 世代 第1 世代は,天然物やその加工・抽出物,類似化合物である。主に手術後や抗がん剤との併用で有効性が示されているものの,標準治療として認知されているものは表在性膀胱がんに対する乾燥BCG のみである。その他は,保険承認されているが標準治療として認められていないことから,主治医によって選択頻度が異なっているのが現状である。 2 第2 世代 第2 世代は,免疫関連細胞が産生するサイトカインとよばれる蛋白で,各種インターフェロンとインターロイキン2 である。がん細胞を直接傷害したり,免疫細胞を活性化して効果を発揮する。腎がんや脳腫瘍,血管肉腫などに保険承認されているが,第一選択の薬剤がほかに存在し,その後に使用されることが多い。 3 第3 世代 第3 世代は,先進医療であり,各種活性化自己リンパ球移入療法や樹状細胞ワクチン,ペプチドワクチンがある。先進医療は国が認めた研究過程の治療であり,効果が検証されたものではない。主に患者の実費負担を得て実施され,もって効果の評価を受ける段階の治療である。先進医療の部分に公的保険は無効なので注意が必要であるが,一般的な自費診療と異なり,先進医療以外の医療費は保険診療が可能であり,保険診療と併用可能な自費診療といえる。なお,先進医療特約のある民間保険に加入していればそれでまかなわれる。 4 第4 世代 第4 世代は,免疫チェックポイント阻害薬で,免疫細胞ががん細胞を傷害する過程の妨げとなっている,いわば抵抗分子を阻害して,免疫細胞ががん細胞を傷害できるようにする薬剤である。いわば,がんに伴う免疫抑制を薬剤で抑制する,「抑制の抑制」という新規作用機序の薬剤で,免疫研究の進歩によって近年急速に登場し,世界的に注目さ 1 わが国で実施されている免疫療法 2 免疫療法
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れている。抗体製剤のニボルマブが皮膚がんメラノーマに保険承認され(2014 年9 月世界初),さらに,切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんにも適応が拡大され(2015 年12 月),標準治療となっている。現在,その他のがんに対しても世界的に研究が進んでおり,有効性が報告されている。適応が拡大されていくことは確実と目されている(日本での次の保険承認は腎がんの見込み)。上記第1~4世代以外の免疫療法は,治験あるいは研究治療として企業や医師が開発中のものや,医師の裁量で提供される自費診療,いわゆる代替医療である。患者にはこのことをよく説明する必要がある。 (山口佳之) 表 7 がんに対する免疫療法の保険適用と先進医療 免疫療法適応疾患 第1 世代PSK(クレスチン®)胃がん手術例,結腸・直腸がん手術例,小細胞肺がん(化学療法併用) OK—432(ピシバニール®)胃がん手術例,原発性肺がん(化学療法併用),頭頸部がん,甲状腺がん,消化器・肺がん性胸水・腹水レンチナン(レンチナン®)手術不能・再発胃がん(化学療法併用)ウベニメクス(ベスタチン®)成人急性非リンパ性白血病(化学療法併用)乾燥BCG(イムノブラダー®)表在性膀胱がん第2 世代インターフェロン—α(イントロンA® など)腎がん,多発性骨髄腫,CML,ヘアリー細胞白血病,B・C 型慢性活動性肝炎インターフェロン—β(フエロン® など)膠芽腫,髄芽腫,星細胞腫,悪性黒色腫,B・C 型慢性活動性肝炎インターフェロン—γ(イムノマックスγ® など)腎がんインターロイキン—2(イムネース® など)腎がん,血管肉腫第3 世代・先進医療A*自己腫瘍・組織及び樹状細胞を用いた活性化自己 リンパ球移入療法がん性の胸水,腹水または進行がん樹状細胞及び腫瘍抗原ペプチドを用いたがんワク チン療法抗原陽性食道がん,胃がん,大腸がん,進行 再発乳がんまたは原発性・転移性肺がん・先進医療B 12 種類の腫瘍抗原ペプチドによるテーラーメイ ドのがんワクチン療法HLA—A24 陽性のホルモン不応性再燃前立腺 がんピロリン酸モノエステル誘導γδ型T 細胞サイトカイン不応性の転移性または再発の腎細胞がんNKT 細胞を用いた免疫療法肺がん(術後および進行再発例),頭頸部扁平上皮がんゾレドロン酸誘導γδT 細胞を用いた免疫療法非小細胞肺がん第4 世代ニボルマブ(オプジーボ®) イピリムマブ(ヤーボイ®)根治切除不能な悪性黒色腫,切除不能な進 行・再発の非小細胞肺がん根治切除不能な悪性黒色腫 *2017 年3 月31 日までに先進医療B への変更申請が求められている。 〔山口佳之,他.Biotherapy201125;785—90 を一部省略・追加〕
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IV章各論:治療のトピックス 【文 献】1) 山口佳之,山村真弘,弘中克治,他.バイオセラピィの息吹―カワラタケが拓いた世界.Biotherapy 2011; 25: 785-90
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1874(明治7)年,日本政府は国として医療制度を普及させるために医制を布告し,医師,歯科医師などを資格制とした。その後,日本の医療は西洋の医学を取り入れ,世界的に発展し現在に到っている。そのなかにあって,紆余曲折こそあったが,日本の伝統医学である漢方医学は,現在すべての大学の医学部で授業カリキュラムが組まれ,漢方教育が行われている。漢方医学の治療で用いられる漢方薬は,植物,動物,鉱物などの生薬を組み合わせた合剤である。漢方薬には,医師が処方する医療用漢方製剤と,薬局で購入できる一般用漢方製剤がある。日本の漢方薬の特徴の一つは,医療用漢方製剤に保険適用が認められているということである。医療用漢方製剤はすべて,厚生労働省によって承認された原材料をもとに作られている。さらに,製品の安全性や品質管理は製造・販売会社によって厳しく保証されている。一方で,一般用漢方製剤は保険適用とはなっていない。しかし,一般用漢方製剤も厚生労働省によって承認された原材料を用い,製品の安全性や品質管理は製造・販売会社によって厳しく保証されたものであることには変わりはない。この他,漢方薬の原材料として使われている薬草,鉱物などを使い「漢方」と称し販売されている健康食品,サプリメントの類があるが,これらは漢方薬ではない。効果の有無については,購入した個人の自己判断に委ねられているのが現状である。同様に,インターネットや並行輸入で入手した海外の「漢方」(実は漢方薬といえるものは日本の製品のみであり,「中国の漢方薬」というものはない)は,安全性や品質管理が保証されているものではない。 医師は,例えばがん診療においては,抗がん剤の副作用軽減を目的として,さらに患者の生活の質(QOL)の向上を目的として,漢方薬を使用している。現在の傾向として,漢方薬は,言い伝えや経験による使用方法に加え,基礎研究やエビデンスに則った,漢方薬の作用機序を理解したうえでの処方および使用が増えてきている。がん患者が,安全に安心して漢方薬を使用できるように,毎年,多くのエビデンスに基づいた漢方薬の研究結果が発表されている。特に漢方薬は,西洋医学では治療方法がない場合の補完ということで,西洋薬では効果が得られない部分を補っていることが多い。実際,表8のように多くのがん治療の現場で漢方薬が用いられている。 漢方薬は自然のものでできているので副作用はないという誤解が多く見受けられる。 1 漢方薬とは? 2 漢方薬を用いた臨床試験 3 漢方薬の注意点 3 漢方薬
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IV章各論:治療のトピックス 漢方薬も薬効を有する生薬でできているため当然副作用もあり,さらに,他の薬との相互作用も認められる。表9 に代表的な生薬および漢方薬の副作用を示す。以上のように,漢方薬は近年エビデンスも認められ,西洋薬では対応できない症状の改善に用いられてきている。作用機序や副作用を考えたうえでの漢方薬の使用は,これからも重要なポイントとなると考えられる。 (今津嘉宏,上園保仁) 【文 献】1) 日本東洋医学会.漢方治療エビデンスレポート2013―402 のRCT(EKAT 2013). http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/index.html 2) 北島政樹 監,今津嘉宏 編.がん漢方,南山堂,2012,pp176-184 表 8 がん治療時に用いられる漢方薬 漢方薬愁訴・合併症など 大建中湯(だいけんちゅうとう)腸閉塞,術後腸管運動麻痺牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)リンパ浮腫六君子湯(りっくんしとう)胃がん術後の逆流性食道炎半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)抗がん剤(イリノテカン塩酸塩)による下痢芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)抗がん剤(パクリタキセル)による筋肉痛・関節痛十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)進行乳がんの化学療法+ホルモン療法における併用による生存率改善補中益気湯(ほっちゅうえっきとう)胃がんと大腸がんの手術侵襲の軽減 〔日本東洋医学会.漢方治療エビデンスレポート20131)より作成〕 表 9 代表的な生薬および漢方薬の副作用等 生 薬副作用 大黄(だいおう),芒硝(ぼうしょう)腹痛,下痢など麻黄(まおう)動悸,血圧上昇など甘草(かんぞう)浮腫,血圧上昇など附子(ぶし)動悸,血圧上昇など 生 薬相互作用 石膏(せっこう),牡蠣(ぼれい),竜骨(りゅうこつ)ニューキノロン系抗菌薬大黄(だいおう),牡丹皮(ぼたんぴ),芍薬(しゃくやく),桂皮(けいひ)鉄剤,酵素剤 生薬および漢方薬併用禁忌 甘草(かんぞう)アルドステロン症の患者ミオパシーがある患者低カリウム血症のある患者小柴胡湯(しょうさいことう)インターフェロン製剤を投与中の患者肝硬変,肝がんの患者慢性肝炎における肝機能障害で血小板数が10 万/mm3以下の患者 〔北島政樹 監,今津嘉宏 編.がん漢方,南山堂,2012,pp176-1842)より作成〕
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ビタミンC は,酸化還元機能を有する必須栄養素である。生体内で酵素反応における補因子として機能しており,コラーゲン合成にも重要な役割を担っている1)。ヒトでは,ビタミンC を内因的に合成することができないため,食品(特に果物と野菜)あるいはサプリメント(アスコルビン酸,アスコルビン酸Na,アスコルビン酸Ca など)として摂取する必要がある。日本人の食事摂取基準(厚生労働省,2015 年版)によると,成人のビタミンC 推奨量は100 mg/日である。なお,心臓血管系の疾病予防効果ならびに抗酸化作用効果から算定された推定平均必要量は85 mg/日とされている。 1 がん予防 疫学研究から,果物や野菜を多く摂取することにより,発がんリスクが低下することが報告されている。その理由の一つとして,食品に含まれるビタミンC の関与が考えられ,症例対照研究では,それを裏づけるような結果が得られている2)。しかし,前向きコホート研究では結果が一致しておらず,また無作為化比較試験においてはビタミンC補充が発がんリスクに影響を及ぼさないとする結果が報告されている。これらの研究の限界点として,生体内においてビタミンC の血漿中濃度は厳密にコントロールされており,もともと十分量摂取している被験者に,多量のビタミンC を摂取させても濃度はほとんど上昇しないことが影響している可能性がある。 2 がん治療 1970 年代に,高用量のビタミンC(10 g/日を経口あるいは静脈投与)が進行がん患者のQOL と生存期間に有益な効果をもたらすことが示唆された3,4)。しかし,追試として実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(10 g/日を経口投与のみ)では,これらの知見を支持する結果は得られなかった5,6)。その後の研究で,ビタミンC の投与経路(経口または静脈投与)の違いによって結果の矛盾が説明されることが示唆された。ビタミンC を経口投与した場合,血漿中ビタミンC 濃度は最大でも300μmol/L 以下に厳密にコントロールされている一方で,静脈投与では血漿中濃度が20,000μmol/L 以上まで上昇する7,8)。このレベルの濃度になると, in vitro でがん細胞株に対して選択的に細胞傷害性を示すことも明らかとなった9)。2000 年代には,高濃度ビタミンC 点滴療法による症例報告が相次ぎ,米国国立がん研究所(NCI)のBest Case Series Program10)のサポートも受け,安全性と有効性を検証する臨床試験が実施されるに至っている。 1 ビタミンC に関する一般的事項 2 ビタミンC とがん 4 高濃度ビタミンC 点滴療法
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IV章各論:治療のトピックス 1 ビタミンC の抗腫瘍メカニズム 現時点で,ビタミンC の抗腫瘍メカニズムとして考えられているものを以下に列記する。・ ビタミンC による過酸化水素産生による直接的な細胞傷害作用11)・ 細胞増殖に関わる遺伝子発現の抑制12)・ オートファジー経路の活性化13) 2 単独投与 現時点では,症例報告・ケースシリーズの報告14,15)のみであり,無作為化比較試験の報告はない。これらの報告によると,患者のQOL 改善効果,化学療法に関連する副作用症状の改善効果の可能性が示唆されている。 3 併用療法 抗がん剤との併用による安全性および有効性を検証する臨床試験の報告16—18)が複数ある。併用に伴う重篤な有害事象は起きておらず,一方で抗がん剤の副作用を軽減する可能性が示唆されている。[補 足] なお,米国において実施されている「高濃度ビタミンC 点滴療法」の臨床試験は,ClinicalTrials. gov19)にて検索可能である。2016 年1 月22 日現在,Conditions を「Cancer」,Interventions を「Ascorbic acid」として検索すると67 件の臨床試験がヒットする。 4 副作用 これまでの臨床研究の結果から,高濃度ビタミンC 点滴療法はがん患者にとって忍容性の高い治療法であることが報告されている。しかし,腎機能障害のある患者が高濃度ビタミンC 点滴療法を受けた際に腎不全を来したという報告がある20)。また,グルコース—6—リン酸脱水素酵素欠損症の患者では,溶血を来すリスクがあるため禁忌とされる21)。 5 薬物相互作用 まだ不明な点が多いが,高濃度ビタミンC 点滴療法と一部の抗がん剤との併用療法の臨床試験において重篤な有害事象は報告されていない16—18)。しかし,化学療法は多岐にわたることを踏まえ,今後も臨床試験などで慎重に評価されていくことが望まれる。 6 その他の注意事項 高濃度ビタミンC 点滴療法は,日本では一部の臨床試験を除き自由診療にて行われている。そのため保険適用はなく,治療にかかる費用は全額自己負担となる。経済的負担も考慮したうえで,可能性のあるリスクとベネフィット,現実的に期待できる点について患者は十分に知らされるべきであり,医療者は,そのための情報提供に努めていただきたい。 (大野 智) 3 高濃度ビタミンC 点滴療法
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【文 献】1) Naidu KA. Vitamin C in human health and disease is still a mystery? An overview. Nutr J 2003; 2: 7 2) Carr AC, Frei B. Toward a new recommended dietary allowance for vitamin C based on antioxi- dant and health effects in humans. Am J Clin Nutr 1999; 69: 1086-107 3) Cameron E, Campbell A. The orthomolecular treatment of cancer. II. Clinical trial of high-dose ascorbic acid supplements in advanced human cancer. Chem Biol Interact 1974; 9: 285-315 4) Cameron E, Pauling L. Supplemental ascorbate in the supportive treatment of cancer: Prolongation of survival times in terminal human cancer. Proc Natl Acad Sci U S A 1976; 73: 3685-9 5) Creagan ET, Moertel CG, O’Fallon JR, et al. Failure of high-dose vitamin C(ascorbic acid) therapy to benefit patients with advanced cancer. A controlled trial. N Engl J Med 1979; 301: 687-90 6) Moertel CG, Fleming TR, Creagan ET, et al. High-dose vitamin C versus placebo in the treatment of patients with advanced cancer who have had no prior chemotherapy. A randomized doubleblind comparison. N Engl J Med 1985; 312: 137-41 7) Padayatty SJ, Sun H, Wang Y, et al. Vitamin C pharmacokinetics: implications for oral and intravenous use. Ann Intern Med 2004; 140: 533-7 8) Hoffer LJ, Levine M, Assouline S, et al. PhaseI clinical trial of i. v. ascorbic acid in advanced malignancy. Ann Oncol 2008; 19: 1969-74 9) Verrax J, Calderon PB. Pharmacologic concentrations of ascorbate are achieved by parenteral administration and exhibit antitumoral effects. Free Radic Biol Med 2009; 47: 32-40 10) National Cancer Institute(U. S. A.) Best Case Series Program http://cam.cancer.gov/best_case_series_program.html 11) Chen Q, Espey MG, Krishna MC, et al. Pharmacologic ascorbic acid concentrations selectively kill cancer cells: action as a pro-drug to deliver hydrogen peroxide to tissues. Proc Natl Acad Sci U S A 2005; 102: 13604-9 12) Pathi SS, Lei P, Sreevalsan S, et al. Pharmacologic doses of ascorbic acid repress specificity protein (Sp)transcription factors and Sp-regulated genes in colon cancer cells. Nutr Cancer 2011; 63: 1133-42 13) Chen P, Yu J, Chalmers B, et al. Pharmacological ascorbate induces cytotoxicity in prostate cancer cells through ATP depletion and induction of autophagy. Anticancer Drugs 2012; 23: 437-44 14) Vollbracht C, Schneider B, Leendert V, et al. Intravenous vitamin C administration improves quality of life in breast cancer patients during chemo-/radiotherapy and aftercare: results of a retrospective, multicentre, epidemiological cohort study in Germany. In Vivo 2011; 25: 983-90 15) Yeom CH, Jung GC, Song KJ. Changes of terminal cancer patients’ health-related quality of life after high dose vitamin C administration. J Korean Med Sci 2007; 22: 7-11 16) Monti DA, Mitchell E, Bazzan AJ, et al. PhaseI evaluation of intravenous ascorbic acid in combination with gemcitabine and erlotinib in patients with metastatic pancreatic cancer. PLoS One 2012; 7: e29794 17) Welsh JL, Wagner BA, van’t Erve TJ, et al. Pharmacological ascorbate with gemcitabine for the control of metastatic and node-positive pancreatic cancer(PACMAN): results from a phaseI clinical trial. Cancer Chemother Pharmacol 2013; 71: 765-75 18) Ma Y, Chapman J, Levine M, et al. High-dose parenteral ascorbate enhanced chemosensitivity of ovarian cancer and reduced toxicity of chemotherapy. Sci Transl Med 2014; 6: 222ra18 19) ClinicalTrials. gov https://www.clinicaltrials.gov/ct2/home 20) Padayatty SJ, Sun AY, Chen Q, et al. Vitamin C: intravenous use by complementary and alternative medicine practitioners and adverse effects. PLoS One. 2010; 5: e11414 21) Campbell GD Jr, Steinberg MH, Bower JD. Letter: Ascorbic acid-induced hemolysis in G-6-PD defi- ciency. Ann Intern Med 1975; 82: 810
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1 相互作用について 2 患者・医療者間のコミュニケーションを考える 3 補完代替療法に関する公的機関による情報資料 V章 参考資料
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複数の薬剤が同時に用いられるとき,効果が増強あるいは減弱したり,予期せぬ反応が出現することがある。このような現象は薬物相互作用によるものとされ,医薬品同士だけでなく,医薬品と食品においても同様の現象が認められることが知られている。一般に,医薬品などの成分が複数存在して生じる相互作用のメカニズムには,大きく分けて2 種類ある。すなわち,1薬物動態学的相互作用,2薬力学(薬理学)的相互作用である。 複数の薬を用いたときに,作用が強まる,あるいは副作用が出現するのは,薬物血中濃度が高まったときにみられる現象である。逆に作用が弱まるのは,薬物血中濃度が低下していると考えられる。経口的に摂取した薬物は,「吸収(absorption)」の過程を経て血中に入り,体内に「分布(distribution/disposition)」し,臓器や組織で変化「代謝(metabolism)」して,「排泄(excretion/elimination)」の機能によって体外に捨てられる。このような薬物の体内での動きをそれぞれの頭文字をとって「ADME(アドメ)」と呼び習わしているのだが,薬物同士や薬物と食物の相互作用は,これらのどの過程においても生じ得る。健康食品と医薬品の相互作用による健康被害報告について表10 にまとめた。一般に,薬物相互作用は代謝過程での相互作用が最も多いとされている。食品成分でも,薬物代謝酵素,特にCYP で代謝されるものは,抗がん剤との相互作用が予測される。また,B 細胞リンパ腫の化学療法を受けている患者が,コーラの飲み過ぎのため尿が酸性化して,使用した高用量メトトレキサートの排泄が遅延し,その毒性によって腎障害を発生したという報告がある1)。悪性腫瘍の治療中,あるいは疼痛緩和のために複数の薬剤を使用している場合には,相互作用の可能性も高まるうえに,肝機能・腎機能が低下している可能性も高いので,より相互作用や有害作用が出現しやすくなることが予想される。 薬物の血中濃度あるいは組織での濃度が変わらなくても,細胞の反応性が変化することで薬に対する反応が異なる現象を,薬力学(薬理学)的相互作用とよんでいる。よく知られている例として,抗凝固薬のワルファリンカリウムは,肝臓におけるビタミンK依存的な凝固因子の合成を阻害することによって抗凝固作用を示すのだが,緑黄色野菜や納豆を摂取するとそれらに含まれるビタミンK がワルファリンカリウムの作用を打ち消して凝固因子が減らなくなってしまう。また,抗けいれん薬のカルバマゼピンは,メラトニンやアルコールによって副作用が増強し,一方,カフェインの存在によって抗けいれん作用が抑制される。中枢作用を示 1 薬物動態学的相互作用 2 薬力学(薬理学)的相互作用 1 相互作用について
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V章参考資料 す薬は,アルコールやカフェインと併用すべきでないことはよく知られているが,栄養ドリンク剤にはアルコール・カフェインを含むものがあり,薬の服用時には避けるように注意せねばならない。がん化学療法に関していえば,実際に報告があるわけではないが,食品成分で女性ホルモン様の作用をもつ大豆イソフラボンなどは,乳がん治療に用いる抗エストロゲン作用を示す薬の効果を減弱させる可能性があり,ホルモン療法を行う場合には注意が必要となる。 1 環境要因によるもの 近年,腸内環境が身体に及ぼす影響について関心が高まっている。肥満や精神疾患,認知症などと腸内細菌の関連性についても議論されており,薬の服用や食事の変化によって疾患の症状が変化するなどの現象は十分予想できる。健康食品のなかには腸内細菌叢に直接作用するプロバイオティクス(人体にとって有益な微生物)やプレバイオティクス(有益な微生物の増殖促進が期待される食品成分)が含まれており,それらと医薬品が直接相互作用することはなかったとしても,腸内細菌叢が変化することで医薬品の吸収や代謝が変化する可能性がある。腸内細菌が産生する酵素によって,医薬品あるいは食品成分が変化すると,吸収あるいは代謝に変化が生じ,想定外の事象が起こるかもしれない。腸内細菌叢が治療薬の体内動態や受容体作用に与える影響については今後も検討が必要であろう。 2 ポリファーマシーの危険性 ポリファーマシーとは,薬の種類が多い状態を意味する。では何剤からがポリファーマシーかといえば,厳密な定義はないものの,一般的に5 剤を超える場合はその薬の必要性について見直すことが勧められている。ただ,処方薬の種類が多いものがすべて問題あり,というわけではなく,複雑な病態や多疾患が併存する場合には,エビデンスに基づいて適切な薬剤を選択した結果,薬の種類が多くなることはあり得る。多剤併用は,がん化学療法では一般的であり,その理由はいくつかあるが,副作用を軽減するためであったり,耐性の出現を遅らせること,がん細胞の多様性に対応するための方策であったりと,利点は広く喧伝されている。しかし,高齢者の場合は基礎疾患をもつことが多く,それらの治療薬をあわせると薬の種類は膨大になる。そこに例えばハーブやサプリメントが加わった場合にどうなるか。葉酸サプリメントがメソトレキサートの作用を減弱させる,といった個別的な情報はあるが,全体として致命的な相互作用が問題になった例は少ない。しかしながら,相互作用を全く気に留めずに,薬を増やしていけばよいというものではない。がんという疾患の性格上治療が優先されるのは必定で,また多くの治療計画は多種類の薬を使用してエビデンスを構築しており,多剤併用は今後もがん化学療法では一般的に行われるだろう。このような状況では,がん化学療法施行時には,ハーブやサプリメントの使用は控えたほうが安全である。 3 その他の要因
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No相互作用による副作用 発現機序長期,多量など原因サプリメント, 健康食品併用医薬品副作用診断名年 齢性 別原疾患 1 吸収阻害 1 年 亜鉛含有サプリメ ント経腸栄養剤銅欠乏性貧血3 歳女性重症心身障害 2 代謝阻害 ― グレープフルーツ ジュースシクロスポリン医療薬の血中濃度上昇11 歳女性ネフローゼ症候群,腎移植 3 代謝阻害 ― グレープフルーツ ジュースシクロスポリン医療薬の血中濃度上昇29 歳男性腎移植 4 代謝阻害 1 カ月 グレープフルーツ ジュースカルバマゼピン医療薬の血中濃度上昇,複視58 歳男性うつ病,てんかん 5 副作用の重複 多量摂取 カリウム含有健康 食品スピロノラクトン, ACE阻害剤高カリウム血症,心房停止,徐脈性不整脈68 歳男性慢性心不全,心房細動 6 副作用の重複 多量摂取 カルシウム含有サ プリメント利尿薬,一般用医薬品の下剤高カルシウム血症,高リン酸血症31 歳女性尿路結石,尿路感染症,肛門脱 7 副作用の重複 長期摂取 クロロフィル含有 健康食品,スルピ リナ,酵素,玄米焙 煎食品漢方製剤高カリウム血症67 歳女性肺がん このリストでは,サプリメントや健康食品と医薬品を併用していて起こった副作用事例の代表的な症例をまとめた。 表10 サプリメント・健康食品と医薬品の相互作用による副作用事例
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V章参考資料 重 篤転 帰概 要 重篤軽快3 歳女児。重症心身障害。半消化態栄養剤を摂取。皮膚炎に対し,亜鉛欠乏を疑い,硫酸亜鉛を含むサプリメントを投与。1 年後に貧血と無顆粒球症が出現。急性白血病を疑い,精査の結果,セルロプラスミン2.3 mg/dL であり,銅欠乏による造血障害と判断した。亜鉛の投与により銅の吸収が競合阻害されて起こったと考えられる。その他軽快11 歳女児。原病先天性ネフローゼ症候群にて父親をドナーとした生体腎移植を施行した。術後経過は良好で5 年目よりステロイドを中止した。シクロスポリン180 mg(7 mg/kg)の内服にてトラフレベルは130 ng/dL と安定していたが毎回100 mL のグレープフルーツジュースとともに服用したところ146 ng/dL と上昇した。シクロスポリンとグレープフルーツジュースの相互作用によりシクロスポリンの薬効が増加したと考えられる。その他軽快29 歳男性。生体腎移植施行後,シクロスポリン+メチルプレドニン+アザチオプリンによる免疫抑制療法を受けていた。シクロスポリンは2 年半で300 mg(4.7 mg/kg),トラフレベルは80~ 90 ng/mL 台であった。低K 血症にて果物摂取を勧められ,グレープフルーツジュースを毎日飲んだところ,シクロスポリンのトラフレベルは160 ng/mL まで上昇した。ジュースの飲用を中止し,シクロスポリンの減量にて血中濃度は安定した。重篤軽快58 歳男性。再発性の抑うつ状態とてんかんのため,カルバマゼピン(1,000 mg/日),ミアンセリン(60 mg/日),ノルジアセパム(15 mg/日),リチウム(800 mg/日)による治療が5 カ月間続いており,併用による問題もなく,良好な臨床的改善がみられていた。ところが,複視を伴った視覚障害が出現した。このとき,カルバマゼピンの血漿中濃度は11μg/mL であり中毒領域と治療域の境界値であった(治療域は4~10μg/mL)。これ以前のカルバマゼピンの血漿中濃度は治療域であった。血漿中リチウム濃度は0.8 nmol/L であった。カルバマゼピンの投与量は800 mg/日に減量された。その結果,視覚障害は消失し,血漿中濃度は5.1μg/mL に落ち着いた。この過程で,併用薬には変化はなかったが,食生活の変化として,ここ1 カ月グレープフルーツジュースを摂取していたことが明らかとなった。グレープフルーツジュース飲用によるカルバマゼピンの代謝阻害が起こり,血中濃度上昇による複視出現と考えられた。重篤軽快68 歳男性。家族歴不明,既往歴は僧帽弁狭窄症・大動脈弁狭窄症術後,慢性心不全・慢性心房細動。利尿薬(フロセミド,スピロノラクトン),ACE 阻害薬を内服中であった。高度徐脈にて緊急搬送された。心電図にて心房停止,心拍数19 回/分の心室固有調律を認め,一時ペーシングを留置した。K 7.2 mEq/L,Cr 2.1 mg/dL を認め,高K 血症に対する治療を開始した。翌日にはK 4.9 mEq/L に改善し心房細動の出現に伴い徐脈も改善した。K を豊富に含んだ健康食品を多量に摂取していたことが判明。服用薬のスピロノラクトンおよびACE 阻害剤の併用もあり,高K 血症にて高度徐脈を来したと考えられる。その他軽快31 歳女性。尿路結石と尿路感染症にて近医受診した際,血清Ca 11.4 mg/dL,intact—PTH 100 pg/mL と高値を認め,原発性甲状腺機能亢進症を疑われて入院した。しかし,頸部エコーとMIBIシンチでは副甲状腺腫は検出されず,Ca 13.5 mg/dL と上昇時にはintact—PTH 10 pg/mL と低下し,P 6.4 mg/dL と高値であった。FECa は0.0059 と低値。以上より,高Ca 血症,高P 血症と診断した。詳しい問診にて3,000~5,000/日のCa の大量摂取と利尿薬,下剤の内服を確認。Ca 摂取量と利尿薬を適量とし,長年病んでいた脱肛手術後は下剤の濫用も止め,血清Ca 値と尿中Ca 排泄量は正常値となった。その他軽快67 歳女性。家族歴,既往歴不明。肺がん。入院時血清K 5.7 mEq/L,血清Cr 0.6 mg/dL であった。持参薬管理を行ったところ,クロロフィル,スピルリナ,ペースト状酵素,玄米焙煎食品を使用していることが判明。また,漢方製剤(田七,杜中,霊芝)も服用していた。入院後摂取を中止。プロクロルペラジン錠,マグネシウム製剤,ポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリー,ステロイド製剤にて加療。入院8 日目に血清K は減少した。服用健康食品および漢方製剤には, K が豊富に含まれており,この重なりにより,高K 血症が起こったと考えられる。 (つづく)
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No相互作用による副作用 発現機序長期,多量など原因サプリメント, 健康食品併用医薬品副作用診断名年 齢性 別原疾患 8 副作用の重複 長期摂取 甘草含有漢方 (OTC)フロセミド偽アルドステロン症86 歳女性咳 9 副作用の重複 大量摂取 果実濃縮エキス, アボガドオイルファドロゾール膵炎,脂質異常症,高トリグリセライド血症,脂肪肝62 歳女性脂質異常症 10 副作用の重複 ― 鉄を含む健康食品 クロピドグ レル光線過敏症,骨髄性プロトポルフィリン症疑い72 歳男性なし 11 副作用の重複 半年 ギムネマ茶 ゲファルナ ート味覚異常不明不明高血圧 12 免疫機序 2 カ月 クロレラ メフェナム 酸肝不全,ライ症候群9 歳男性上気道感染症,発熱 (表10 つづき)
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V章参考資料 重 篤転 帰概 要 重篤軽快86 歳女性。咳嗽に対し麦門冬湯7.5 g(甘草2 g)を開始。転倒後の腰痛と両下肢のしびれに対し芍薬甘草湯2.5 g(甘草2 g)を追加し,浮腫が出現。これに対しフロセミド10 mg が投与された。浮腫はむしろ増悪し,徐々に筋力低下,歩行困難となり車椅子生活となった。画像所見にて腰部脊柱管狭窄症を指摘され入院。術前検査にて血清K 1.9 mEq/L を認め,徐脈傾向であり受診。入院時現症では下肢に圧痕を伴う浮腫,手指振戦および膝蓋腱・アキレス腱反射の低下を認め,四肢脱力が著明。動脈血ガス分析ではpH7.513,PCO 261.0 Torr,HCO 347.9 Torr と代謝性アルカローシスを呈していた。PRA<0.1 ng/mL/時,PAC 12.1 pg/mL といずれも抑制されており,心電図はT 波の減高とST—T 下降およびU 波を認めた。高度の低K 血症にもかかわらず尿中K 排泄の抑制を認めずPRA およびPAC の低下を認めており,浮腫,脱力と筋力低下を来した4 年以上前より2 剤の漢方薬の服用歴があること,フロセミドの投与で悪化したことより偽アルドステロン症を考えた。漢方薬2 剤とフロセミドを中止し,K 製剤とスピロノラクトンを投与。数日で血清K は正常化し,入院8 日目には歩行可能となり,独歩で退院した。その他一部軽快62 歳女性。既往歴は胃潰瘍,高血圧,不整脈,左乳がん手術。57 歳より脂質異常症を指摘されていたが未治療であった。左乳がん手術後,塩酸ファドロゾール(アフェマ)を服用していたが高脂血症の増悪は認めなかった。1 年後,体調不良を理由に健康食品(乾燥果実濃縮エキス,アボガドオイル食品,蛋白補助食品)摂取。初期は常用量を摂取していたが,最終的に常用量の3倍程度(1,033 kcal/日,脂質30.8 g/日)を摂取していた。1 年後,脂質異常症増悪(血中TG 1,660 mg/dL)を指摘されたが健康食品は継続。さらに1 年後,上腹部痛,背部痛が出現し当科受診。体温38.3°C,白血球11,400/μL,CRP 27.0 mg/dL,血中総アミラーゼ369 U/L,膵アミラーゼ369 U/L,リパーゼ106 U/L,トリプシン900 ng/mL,尿素窒素24.0 mg/dL,LDH 469 U/L と上昇し,Ca は8.5 mg/dL と低下した。血中総Cho 779 mg/dL,TG 5,936 mg/dL と著明に上昇し,乳糜血清を呈していた。リポ蛋白電気泳動では,カイロミクロンによる原点残渣,テーリングを認めた。以上よりV型高脂血症と判定した。腹部US,腹部CT の異常所見も含めて,高脂血症を伴った急性膵炎と診断した。ナファドロゾールにもコレステロール上昇の副作用があり,両者によると思われる。その他軽快72 歳男性。頭部に水疱出現,抗アレルギー薬で定量を行うも,手背,体幹に瘙痒を伴う紅斑が出現した。光線過敏症を疑い,光パッチテストを行ったところ,健康食品とクロピドグレルに陽性となった。同時にプロトポルフィリン値が高く,鉄剤が骨髄性プロトポルフィリン症発症の契機になった可能性もある。その他軽快年齢,性別不明。既往歴は緑内障,高血圧,ペニシリン過敏症,近医よりジルチアゼム内服中。ギムネマ茶を6 杯/日で飲用していた。半年後,他医にてゲファルナートの投与を受けたところ,翌日から,何を食べても苦く感じることに気づく。味覚異常が改善しないため受診。電気味覚計にて右鼓索神経領域スケールアウト。右舌咽神経領域は10 db だが,他の領域は20 db と域値上昇を認めた。右スケールアウト。左で甘味3,塩味2,酸味3,苦味3 であった。ギムネマ茶の飲用を禁止したところ,1 週間で味覚障害(苦み)は改善した。ギムネマ茶の主成分のギムネマ酸は,急性に味蕾の味細胞のレセプターを特異的にブロックする物質として有名であり,ゲファルナートも味覚障害の副作用がある。本症例は,習慣的飲用で味覚異常が起こっていたところにゲファルナートの併用で,発現した可能性がある。重篤軽快9 歳男児。既往歴に熱性けいれんがある。グロスミン9 錠/日を急性肝不全を発症する2 カ月前から常用していた。上気道感染と考えられる38°Cの発熱があり,解熱薬であるメフェナム酸200 mg を1 回のみ内服した。その2 時間後に全身けいれんがみられ,1 分ほど続き,入院し,ジアゼパム坐薬6 mg が投与された。第3 病日(発熱を1 病日とする)にはAST 6,400 IU/L,ALT 5,500 IU/L となり,急性肝炎を疑われ当科へ転院した。意識混濁によるせん妄状態であったが,黄疸や肝萎縮はなかった。しかしHPT は40.4%と低下し,脳波でも徐波・低電位がみられた。以上から急性肝不全と診断した。血漿交換とメチル酸ガベキサート,プロスタグランジンE1 などの投与により第6 病日には意識レベル,肝機能検査値は軽快した。第4 病日の肝生検では,小葉中心の壊死・炎症,細胞核分裂や再生像,肝細胞に小脂肪滴が認められ,臨床的ライ症候群と診断した。クロレラは非特異的にリンパ球幼若化作用があることが明らかとなった。 (つづく)
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No相互作用による副作用 発現機序長期,多量など原因サプリメント, 健康食品併用医薬品副作用診断名年 齢性 別原疾患 13 免疫機序 長期摂取 ウコン 結合型エス トロゲンアレルギー性肝炎,自己免疫性肝炎誘発18 歳女性自己免疫性肝炎,子宮出血 14 免疫機序 長期摂取 クロレラ プロピルチ オウラシル糸球体腎炎,貧血,急性腎不全(腎性),性間質性腎炎39 歳女性バセドウ病 15 薬理作用の 重複2 年エゾウコギドキシフルリジン完全房室ブロック61 歳女性乳がん 16 薬理拮抗 数週間 クロレラ ワルファリ ン医療薬の効果減弱75 歳男性脳梗塞後遺症 17 薬理拮抗 2.5 週間 マルチビタミン(ビ タミンK 含有)ワルファリン医療薬の効果減弱77 歳男性末梢血管障害 18 薬理拮抗 15 日 クマザサ ワルファリ ン医療薬の効果減弱55 歳女性僧帽弁狭窄,心房細動 (表10 つづき)
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V章参考資料 重 篤転 帰概 要 重篤軽快せず18 歳女性。既往歴なし。生来健康だったが,家族の勧めでウコンを1 日通常量の小さじ(詳細不明)1 杯を内服。不正出血のため近医産婦人科にて約3 週間,結合型エストロゲン0.625 mg(プレマリン)/日とノルゲステル0.5 mg/エチニルエストラジオール0.05 mg(プラノバール)/日を内服。その後,6 月からウコンを小さじ3 杯程度,通常量の3 倍に増量して内服。8 月下旬より眼球黄染を指摘されるが,ウコン内服は継続。9 月上旬に不正出血のためプレマリン,プラノバールを1 週間のみ内服した。9 月中旬より全身倦怠感,微熱が出現。近医受診したところ,黄疸,トランスアミナーゼ高値のため入院。入院時,体温36.9°C,意識清明。眼球結膜に黄染確認。検査所見では,総ビリルビン16.5 mg/dL,直接ビリルビン12.2 mg/dL,TTT 17.4 M,ZTT 35.9 K,AST 367 IU/L,ALT 434 IU/L であり,IgG 2,962 mg/dL と高IgG 血症かつ抗核抗体は高力価を示した。HLA—DR はDR9,DR15(2)を示した。腹部CT,内視鏡検査,肝生検より,慢性肝障害と診断。精査したところ,背景として自己免疫性肝炎(AIH)を疑った。ステロイドにて沈静化された。急性肝障害の原因としては,ウコンのアレルギー性肝障害とホルモン剤によるAIHの急性増悪の可能性が考えられた。その他一部軽快39 歳女性。バセドウ病の診断でPTU 内服開始。3 年後頃よりクロレラ常用。2 年後,貧血(Hb 8.2 g/dL 減少)の精査目的で受診。腎機能障害(Cr 1.9 mg/dL 上昇)を認め,入院。ANA 上昇(2,560 倍),RF 上昇(64 IU/mL),AMA 上昇(320 倍以上)(M2 抗体陰性),MPO—ANCA 上 昇(542 EU)と多彩な自己抗体を認め,腎生検では半月体形成性腎炎と間質性腎炎の所見であった。PTU,クロレラを中止しPSL,ワルファリンで治療開始。ANA 低下(20 倍)したが,MPO— ANCA 高値(389 EU)が続いている。 重篤軽快61 歳女性。乳がんにて左乳房部分摘出術施行。術後の化学療法としてドキシフルリジン内服していた。汎血球減少症のため中止。その後,自己判断でエゾウコギの抽出物を服用。血球数が回復したため,ドキシフルリジンが再開された。2 カ月して動悸,胸部苦を感じたため受診。完全房室ブロックと診断された。エゾウコギ,ドキシフルリジンのいずれにも,陰性の変力作用があり,両者の併用で起こった可能性がある。その他軽快75 歳男性。既往歴は心房細動,肥大型心筋症。1986 年11 月に右中大脳動脈領域の脳塞栓症が発症し,ワルファリン治療を受けていた。ワルファリンのコントロール後の再発はなく,月1 回の外来診察を受けていた。ワルファリン3 mg/日でトロンボテスト(TT)値は10~20%と安定していた。しかし,急にTT 値が58%と急上昇した。食餌内容の問診では,数週間前よりクロレラ(6 g/日)を飲んでいるとのことで,ワルファリンを3.5~4 mg/日に増量することでTT 値20%前後で安定した。その後,クロレラを摂取するとTT 値が上昇したため,ワルファリン2.5 mg/日でクロレラを中止したところ,TT 値は7 月9 日には15%と治療域内に入った。ワルファリンの内服し忘れやビタミンK 製剤,納豆の摂取はなく,フェニトイン(225 mg/日)の投与を受けていたが用量の変更はなかったため,クロレラのワルファリン拮抗作用であると考えた。その他軽快77 歳男性。9 年間ワルファリン治療を受けていた。重篤な末梢血管疾患のため動脈—両大腿バイパス術が施行された。35~37.5 mg/週のワルファリン投与により安定したINR 値(平均2.81; 2.34~3.30)が維持された。その後,ビタミンK1 25μg 含有マルチビタミン剤の連日摂取により,2.5 週間以内にINR 値は1.7 に低下した。マルチビタミン剤の摂取中止後,37.5 mg/週のワルファリン投与により安定したINR 値を維持できた。しかし,その後無断で再びマルチビタミン剤の連日摂取を始めたため,4 週間後に動脈—両大腿バイパスグラフトの急性塞栓を起こし(INR値は1.1),緊急手術が行われた。その後,マルチビタミン剤を中止し,37.5 mg/週のワルファリン治療を再開したところ,INR 値は安定した。その他軽快55 歳女性。既往歴は混合性結合組織病。僧帽弁狭窄症と診断され,手術を受けた。その後,心房細動となり,ワルファリン4 mg とジゴキシン0.125 mg の投与を開始し,TT 値は25%前後で安定していた。感冒に罹患し感冒薬を使用し,また食事摂取も不十分となった。その後,突然右下肢の冷感,疼痛を訴えて救急受診した。血栓除去術を行い,術後管理でワルファリン3 mg,ブコローム300 mg の投与によりTT は速やかに10~25%と改善した。その後,ワルファリンの服用はきちんと続けていたが,発症15 日前から食欲増進の目的でクマザサの抽出成分を含有する「ササロン」と海藻含有健康食品「アルカロン」を毎日4 g ずつ摂取していたことが判明した。ササロンには大量のビタミンK(15.6μg/g),アルカロンにもその1/4 量が含まれている。 (つづく)
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No相互作用による副作用 発現機序長期,多量など原因サプリメント, 健康食品併用医薬品副作用診断名年 齢性 別原疾患 19 薬理拮抗 1 カ月 青汁 ワルファリ ン医療薬の効果減弱61 歳男性心房細動 20 薬理作用増強 長期摂取 栄養剤常用(ビタミ ンD 含有)カルシウム高カルシウム血症睾丸萎縮陰茎萎縮,臭覚異常61 歳男性性機能不全 1 )松田信作,青木 剛,大塚友美.経管栄養管理中に亜鉛サプリメントの長期摂取が誘因となり,銅欠乏性貧血をきたした1 2 ) 波多野智己,長谷川昭,本山 治.ビタミンC ドロップ等にてCYA トラフレベルが影響された腎移植2 症例.移植1996; 31: 468 3 )犬塚 周,錦戸雅春,古賀成彦,他.飲食物にてシクロスポリン血中濃度が変動した腎移植症例.臨床と研究1999; 76: 792 4 )澤田康文,大谷壽一,山田安彦,他.臨床医のための薬の相互作用とそのマネージメント.治療2002; 84: 2061—3 5 )平井雅之,井川 修,足立正光,他.健康食品によるK の多量摂取が高度の徐脈を誘発した1 例.Circ J(suppl 2) 2008; 6 )加藤佳幸,佐藤幹二,佐田 晶,他.大量のCa サプリメント(リン酸Ca)摂取により高Ca 血症を生じ,原発性副甲状腺7 )岩田佳之,渡邉美佳,田中方士.健康食品により高カリウム血症が疑われた1 症例.日本緩和医療学会総会プログラム・抄8 )鳥本桂一,岡田洋右,西田啓子,他.高度の低カリウム血症により歩行困難となった高齢者の1 例.内科2011; 107: 743—5 9 )中江康之,井本正巳,濱島英司,他.健康食品過剰摂取による高脂血症膵炎の1 例.膵臓2004; 19: 63—7 10) 西田絵美,金子夏美,森田明理.鉄剤を含む健康食品摂取を契機に骨髄性プロトポルフィリン症が疑われた一例.日本光医11)石丸 正,高柳春実,三輪高喜,他.ギムネマ茶習慣的飲用者に見られた味覚異常の1 例.耳鼻咽喉科臨床(補冊)1996; 12)藤澤知雄,堀内勝行,乾あやの,他.クロレラによるリンパ球刺激試験の反応―クロレラが起因薬剤として疑われた急性肝13)銭谷 平,髙木 優,荒木 崇,他.ウコンの内服を契機に発見された若年女性肝硬変の1 症例.肝臓2006; 47: 310—5 14) 浜井啓子,小松田啓子,大谷 浩.PTU 内服中に発症したMPO—ANCA 陽性半月体形成性腎炎の一例.日本腎臓会誌1997; 39: 644 15)木島 基,本田 肇,早川拓治,他.ドキシフルリジンと健康食品リンパザイム® の併用で完全房室ブロックをきたした1 16)大川慎吾,米田行宏,大角幸雄,他.ワルファリン療法と健康食品クロレラ.臨床神経学(第59 回日本神経学会近畿地方17)藤野知美,木苗直秀,山田静雄.健康食品・サプリメントと医薬品との相互作用(2)―脂溶性ビタミンとの相互作用. 18)松井健一,五艘有紀子,中川圭子,他.症例:健康食品摂取後にwarfarin の作用が弱まり大腿動脈塞栓症を発症した僧帽弁狭19)中東真紀,石倉紀男.「大麦若葉」と「ワーファリン」の併用により高度の生化学異常を来たした1 例.名古屋経済大学自然20)中園 誠,工藤幹彦.ビタミンD 中毒により高Ca 血症を呈したと考えられるKallmann 症候群の1 例.日本内分泌会誌(第 (表10 つづき)
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V章参考資料 重 篤転 帰概 要 その他軽快61 歳男性。心房細動のため,脳梗塞予防の目的でワルファリン2.5 mg/日を服用し,TT 値40%前後にコントロールされていた。また,心房細動の薬のジゴキシン0.25 mg/日,安定剤のブロマゼパム5 mg×3 回/日,トフィソパム50 mg×3 回/日を服用中であった。ビタミン補充目的でサプリメント「大麦若葉」の服用を開始。定期検査時,TT 値150%以上と著明な上昇とAST 52 IU/L,LDH 258 IU/L,CPK 1,042 IU/L と筋肉由来酵素の上昇を認めた。心エコーなどで急性心筋梗塞を除外,大麦若葉の副作用と考え服用を中止,1 週間後の検査ではTT 値35%と復帰し,酵素も正常化した。患者は大麦若葉にビタミンK が含まれていると全く知らず服用していた。大麦若葉粉末3 g にはビタミンK が99.6μg 含まれている。その他軽快61 歳男性。若いときから栄養剤を常用。この5 年間でビタミンD2服用量は75 万単位に達する。最近はCa 製剤も服用。悪心,胃部不快,体重減少を訴え受診し,高Ca 血症を認めたため入院。類宦官様の体形で,皮膚の乾燥,粗ぞうあり。腋毛,恥毛を欠き,睾丸・陰茎は萎縮。嗅覚試験で軽度障害あり。血中Ca 値12.8 mg/dL,P 値2.5 mg/dL,尿中Ca 値 0.3 g/日で,intact—PTH値10 pg/mL 以下,1.25(OH2)—VD 値74 pg/mL であった。血中ACE は軽度増加。血中テストステロン,LH,FSH の低下と,LH—RH の連続負荷でLH,FSH の反応を認めた。血中Ca 値は入院後約2 カ月高値を持続。プレドニゾロン30 mg/日の投与によりCa 値は速やかに低下。高Ca 血症の原因として,ビタミンD2中毒が考えられた。hypogonadism 患者が栄養剤を常用することはあり得る。例.ヒューマンニュートリション2011; 3: 9—13 72: 955機能亢進症が疑われた一症例.日本内分泌会誌2004; 80: 160録集2012;17:517 学・光生物学会2010; 32: 47 89: 79不全の1 例の経験から.医学のあゆみ1997; 183: 295—6 例.心臓2011; 43: 1096—101会)1995; 35: 806—7 Functional Food 2008; 2: 203—8窄症の1 例.心臓(第178 回日本内科学会北陸地方会) 2001; 33: 525—8科学研究会会誌2006; 40: 1—6 64 回日本内分泌学会秋季学術大会) 1991; 67: 1015
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表11 サプリメント・健康食品の副作用ががん治療に影響を及ぼしたと考えられる事例No機 序がん治療への 影響原因サプリメント, 健康食品副作用診断名年 齢性 別原疾患重 篤 1 薬理作用(エス トロゲン作用)がんの再発に関与した可能性ローヤルゼリー,プロポリスがん再発60 歳女性子宮体がんその他 2 アレルギー性 肝障害惹起がん治療遅延→死亡アガリクス薬剤性肝炎29 歳女性乳がん死亡 3 アレルギー性 肝障害惹起がん治療遅延アガリクス薬剤性肝炎52 歳男性胃がんその他 4 アレルギー性 肺障害惹起がん治療遅延メシマコブ間質性肺炎70 歳男性胃がんその他 5 アレルギー性 肺障害惹起不明アガリクス間質性肺炎68 歳男性肝がんその他 1 )田部 宏,清川貴子,高倉 聡,他.骨盤子宮内膜症より発生した明細胞腺癌の1 例.日本産科婦人科学会東京地方部会会2 )谷口正益,水野聡朗,北野滋久,他.代替治療が原因と考えられる肝障害のため化学療法導入が困難となった再発乳癌の1 3 )春日照彦,生方英幸,本橋 行,他.健康食品アガリクスによると思われる肝機能障害を呈した胃癌術後患者の1 例.日本4 )高橋 剛,堤 謙二,宇田川晴司,他.切除不能の進行胃癌に対する化学療法中の健康食品による間質性肺炎が疑われた1 5 )本多宣裕,沖本二郎,桜井 恵,他.アガリクスによる薬剤性肺炎の1 例.日本胸部臨床2003; 62: 1027—31このリストでは,サプリメントや健康食品の副作用ががん治療に影響をおよぼしたと考えられる代表的な症例をまとめた。
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V章参考資料 転 帰概 要 軽快60 歳女性。子宮体がんにて広汎性子宮全摘出術,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を施行,術後病理診断では類内膜腺がんFIGOIa 期G1 であったため,外来にてメドロキシプロゲステロンアセテート200 mg/日,連日5 年間投与のうえ,経過観察をしていた。術後5 年目の定期検査の際に膣断端右側の腫瘤を認めたため精査となった。精査の結果,クラスV類内膜腺がんであったため子宮体がんの再発を疑い手術となる。術後経過は順調であり補助化学療法として,シスプラチン80 mg/回,イリノテカン塩酸塩80 mg×3/回の併用化学療法を開始した。現在,化学療法4 クールを終了したところで再発所見は認めず, CA125 も8 U/mL と正常範囲内である。本症例はエストロゲン投与は行っていないが,再手術後のエストロゲン値が15 と軽度上昇していた。問診にて健康食品として市販されているロイヤルゼリーとプロポリスを初回術後より飲用していたたことが判明した。その後,中止としたところ1 カ月後にはエストロゲン値は10 以下となった。軽快せず29 歳女性。近医で右乳がんにて非定型乳房切除術を施行。予後因子はステージIIIB(T4N2M0),scirrhous carcinoma,ER(-),PgR(-),HER2 1+。当科へ紹介入院し,4 月17 日よりアドリアマイシン/エンドキサン併用療法(ADM 60 mg/m2,CPA 600 mg/m2)4 コース実施後,局所放射線治療を50 Gy 実施。その後,血液検査で肝障害(AST158,ALT154)を認め精査入院。画像上,肺,皮下に転移を認めたが肝には認めなかった。肝障害の原因として1 月中旬から飲み始めた青汁,アガリクスが疑われた。肝障害が改善しない2 月中旬骨髄浸潤を認めたため,Weekly パクリタキセル40 mg/m2を開始したが奏効せず,脳転移,がん性髄膜炎を併発し死亡された。代替療法が原因と考えられる肝障害のため,化学療法導入が困難となり急速に病状が進行した1 例である。軽快52 歳男性。嗜好は毎日ビール1 L 飲酒。胃がんの診断にて当科で幽門側胃切除術施行。胃体中部後壁の2C 型早期胃がん,T1,N0,P0,H0,M0,Stage 1,D2 郭清,根治度A,深部度M であった。HBsAg (-),HCVAb(-)であった。退院後,外来にて経過観察中,AST 341,ALT 554 となった。3 週間前よ りアガリスクを服用していたとのことで中止させたところAST 78,ALT 91 まで改善した。しかし再びAST 290,ALT 408 まで悪化した。2 週間前に再び1 週間アガリスクを服用したとのことであった。他検査では異常なく,アガリスクによる肝機能障害であると考え,厳重に服用中止を指示した。軽快70 歳男性。既往歴はなし。喫煙歴は63 歳まで20 本/日。腹膜転移,肺転移,4 型進行胃がんと診断された。S—1(100 mg/日,2 週投薬1 週休薬を1 クールとする)を投与開始し,S—1 投与開始1 週間後よりメシマコブの投与開始。3 クール施行後12 月9 日CT にて腫瘍はPR であったが,右肺上葉に間質性陰影が出現。S—1 を中止し,プレドニゾロン(PSL)30 mg/日開始,間質性陰影は速やかに消失した。S—1 による間質性肺炎(IP)と考えた。タキソテール80 mg/body 投与。このときPSL 10 mg 内服中。1 週間後CT にて左肺優位の両下肺野に間質性陰影が出現。発熱,低酸素血症を認め,PSL 30 mg に増量にて速やかに改善。ここでメシマコブによる影響を考え,服用中止。その後外来にてCPT—11 を3 回投与するも腫瘍はNC。メシマコブ併用によるIP を疑い,PSL 内服下S—1 単独投与を開始したところCT 上間質性陰影の出現はない。軽快68 歳男性。既往歴は慢性C 型肝炎(60 歳),肝臓がん(68 歳),慢性甲状腺炎(60 歳)。喫煙歴は40 本/日×50 年。肝臓がんの治療中,家人に勧められたアガリクスを内服したところ,内服約2 週間後呼吸困難が出現した。近医の胸部単純X線写真で肺炎と診断され抗菌薬を投与されたが改善なく当科入院となった。胸部聴診で両側にfine crackles を聴取,胸部単純X 線で浸潤影,胸部CT ですりガラス影,小葉内網状影を認める。ESR 41 mm/hr,CRP 1.44 mg/dL と軽度の炎症所見,AST 64 U/L,LDH 271 U/L,HLA—DR (+),CD3(+)18.6%,KL—6 3,040 U/L とそれぞれ高値を示した。肺機能検査では拘束性喚起障害は認 められなかったが,%DLco は40.2%と低値を示した。以上の所見と,TBLB にて肺胞上皮の腫大,肺胞壁の肥厚より薬剤性肺炎と診断した。DLST の結果,アガリクスが409%と陽性を示し,原因薬剤はアガリクスと考えられた。アガリクスを中止しても改善は認められなかったがメチルプレドニゾロンによるパルス療法を行ったところ速やかに軽快した。 誌(第302 回日本産科婦人科学会東京地方部会) 1997; 46: 308—11例.日本癌治療学会誌(第41 回日本癌治療学会総会) 2003; 38: 683臨床外科医学会誌(第788 回外科集談会) 2003; 64: 1802例.日本臨床外科医学会誌(第67 回日本臨床外科医学会総会) 2005; 66(suppl): 735
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3 ハーブ,サプリメント,健康食品 抗がん剤とハーブやサプリメントの相互作用については,実際に健康被害の報告はないが,ハーブやサプリメント,健康食品ががんの治療中に健康被害を生じた報告はある(表11)。例えば,間質性肺炎を生じたメシマコブの例が挙がっているが,分子標的治療薬で間質性肺炎を高頻度に起こすものがあり,そのような薬剤とメシマコブを併用した場合に,呼吸器に対する有害作用が増強する可能性は高まるであろう。そういった意味では,有害作用の報告があるハーブやサプリメント,健康食品と抗がん剤の使用は慎重にならざるを得ないと考えられる。 1 Web サイト 1国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報各健康食品成分の有効性・安全性情報とともに,医薬品との相互作用情報の報告の要 約が閲覧可能。https://hfnet.nih.go.jp/ 2一般社団法人愛知県薬剤師会:医薬品との併用に注意のいる健康食品健康食品素材と主な医薬品の相互作用の一覧などが閲覧可能。 http://www.apha.jp/medicine_room/entry—3755.html 2 書 籍 1一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター:ナチュラルメディシン・データベース―健康食品・サプリメント(成分)のすべて(同文書院,2015)各成分の概要,効き目,安全性とともに,医薬品との相互作用について解説あり。2澤田康文:薬と食の相互作用,上・下巻(医薬ジャーナル社,2005)各医薬品と食事との関連で研究報告のあるものを中心に紹介している。 (大津史子,平井みどり) 【文 献】 1) SantucciR,LevêqueD,HerbrechtR.Colabeverageanddelayedeliminationofmethotrexate.BrJ ClinPharmacol2010;70:762-4 4 参考となる情報
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V章参考資料 昨今,がん医療におけるコミュニケーション・スキルの重要性は各所で強調されているが,補完代替療法に関する医療者・患者間のコミュニケーションにもまた検討すべき課題が多い。2001 年の調査によれば,日本のがん患者で何らかの補完代替療法を利用している割合は45%に上る。また,利用を主治医に知らせていないものが使用者の過半数であり1),多くの医師が見積もっているよりも高率である。医師に申告しない理由としては,担当医が尋ねなかったため,とする回答が多く,これは海外の調査でも同様の傾向がみられる2)。2000 年代の米国のがん専門施設での調査によると,新規抗がん剤の第一相試験に参加した進行がん患者の67~88%が何らかの補完代替療法を利用していたということである。正確な推定は難しいが,外国と比較しても健康食品への関心・支出が高いといわれるわが国のがん患者も,少なくとも同程度の割合で補完代替療法を利用していることが予想される。近年の,がん患者の補完代替療法の利用に関する種々の先行研究の要旨として,その背景には次のような予測因子が挙げられている。例えば,文化的背景,人種などの社会的要因を筆頭に,性別,高学歴,化学療法歴,健康状態,飲酒,喫煙などの疾病関連行動,低い社会的支援など,個人の特性や性格,行動に関する要因である。また,精神的苦痛(不安,抑うつ),経過へのコントロール感,高いファイティング・スピリットなどの心理的要因も補完代替療法の利用を促す大きな要因と考えられている。さらに,がんの発症をきっかけに補完代替療法の利用を始める患者のなかには,心身の癒しや免疫系の活性化など,その効果に対する期待も,受療理由として多く聞かれた。さまざまな研究が利用の理由を挙げ,その内容は多種多様であるが,いずれも補完代替療法の利用を説明するのに十分決定的なものではない。以上のことから,本領域における参考的考察として,1補完代替療法を利用することは,複雑多様な要因が推測されるが,決定的要因は不明である。2がん医療における補完代替療法の効果,安全性に関する科学的根拠の創出が急がれる。3補完代替療法に関する適切な情報基盤の整備,充実の必要性が挙げられる。4補完代替療法の利用について,医療者と患者,双方向のオープンなコミュニケーションの向上が期待される。 米国の医療人類学者アーサー・クラインマンによる多元的医療システムの図(辻内による改訳3)を示す(図9,10)。ここでは各人に固有の社会・経済・文化的背景があることを前提に,病に対する対処行動としての「医療」が3 つのセクターに分類されている。本クリニカル・エビデンスで扱う補完代替療法は,このモデルでいう「民俗セクター」と「民間セクター」の一部を含む概念といえる。 1 補完代替療法利用の現状と行動科学的考察 2 補完代替療法と多元的医療システムの概念 2 患者・医療者間の コミュニケーションを考える
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日本の保険診療を行う施設に属する医療者はほぼ「専門職セクター」に属することになるが,こうした医療者の多くにとって,彼らが提供する医療,すなわち「近代西洋医学を基礎とし,公的医療保険制度でも認められている医療」の優位性は,解釈モデル(病気の個別的なケースについて,それぞれの仕方で説明する際に使う諸観念)として強固なものである。しかし,がん患者自身にとっての病の解釈モデルは必ずしもそれと同一ではなく,あいまいで多元的・多義的・融通的であるとされる。すなわち,医療者にとって自明のものである近代西洋医学の優位性は患者にとってはより不安定であり,病院で「専門職セクター」の治療を受けながら,部分的に「民俗セクター」「民間セクター」の治療を併用したり,行き来したりすることは,患者にとっては,医療者が考えるより自然な行動である。他のセクターの治療法を受けている・受けていたことを医療者に開示することを患者がためらうのは,疾病や医療に関する解釈モデルの隔たりに,暗に気づいているから,という見方もできるかもしれない。 1 補完代替療法を利用する患者の心理 それでは,医療機関で提供される医療と補完代替療法が併用されたとき,具体的に実臨床上の問題となり得るのはどのような状況であろうか。特に,生物学的な活性をもつような補完代替療法のモダリティ(健康食品,ハーブ,サプリメントなど)では,抗がん剤や支持療法薬と並行して摂取した場合に未知の相互作用が生じる懸念がある。その結果として,意図された治療の効果を減弱したり,逆に副作用を増強したりというリスクが考えられる。抗がん剤を含む薬剤との明らかな相互作用が知られているものとして 3 コミュニケーションの実際 専門職セクターprofessional sector 制度としての医療近代西洋医療(病院・診療所など) 民間セクターpopular sector自己治療家族・知人のアドバイス(健康食品・サプリメント・民間薬・市販工業医薬品など) 社会・経済・文化・環境的背景 民俗セクターfolk sector民族医療・伝統医療宗教的医療(漢方・鍼灸・気功按摩・マッサージなど) 図 9 多元的医療システム 〔辻内琢也,他.心身医学2005;45:53—623)より引用〕民俗セクターA’ A C D B B’ 併診 専門職セクター 民間セクター 図 10 多元的医療システムにおける受療行動パ ターン〔辻内琢也,他.心身医学2005;45:53—623)より引用〕
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V章参考資料 は,セント・ジョーンズ・ワート,カテキン,イチョウ葉エキスなどがあるが,それ以外の物質についても,抗がん剤や支持療法薬と併用した場合の安全が確立されているわけではなく,データがないため何ともいえないというのが現状である。また,「がん治療の副作用軽減のため」として補完代替療法を使用している患者も多い。医療者への遠慮などから,患者がオープンに副作用について医療者に訴え,対策を話し合うことができていないために,自己判断で補完代替療法を用いている可能性も考慮される。オープンに話し合うことができれば,より状況にあった対処を提案し,危険を避けることができる場合も考え得るため,医療者の側から積極的に副作用について状況を確認すべきである。また,進行がんの患者は「1%でも治癒の見込みがあるなら毒性の強い治療を受け入れるが,ある程度確実な延命効果のためであれば同じ治療を受けない傾向がある」という質的調査結果もあるように4,5),心の一方では治癒の可能性は低いと理解し現実をみつめ,医療機関や医療者に対する感謝や信頼ももちながらも,また一方では「末期がんで標準治療から見放された私がこれで治癒した」といった誇張された風評や広告に,「もしかしたら......」「ダメでもともと......」と心を動かされやすい,という不安定な心理状況がある。こうした心情に理解を示しその波を受けとめたうえで,安易な自己責任論ではなく,患者にとってできる限りよい選択ができるようにサポートする姿勢が医療者には望まれる。 2 医療者の介入 昨今,患者の利用する補完代替療法(多くは健康食品)の種類は多様化し,複数の成分が組み合わされるなどしており,多くの場合ただ商品名を聞いただけでは含有成分が不明である。また,含有成分が判明している場合でも,耳慣れない成分であれば「安全性について情報不足であり,すぐにはコメントできない」ことを率直に患者に伝え,できれば成分を確認し,信頼できるリソース(PubMed などで検索可能で,批判的に吟味することが可能な科学的論文や,厚生労働省「健康食品」のホームページなど)を参考に調べたうえで,患者に情報を還元できれば理想的である。時間の制約などでそこまでの対応ができないことも多いが,そういった場合でも,「相互作用や潜在的な危険性が不明」である健康食品を用いることそのものにリスクがあることは,最低限伝えておきたい。生物学的な活性をもつ健康食品と食品の境界はときに曖昧であり,嗜好品・ぜいたく品の範疇とも重なるので,その使用について医療者がどこまで介入すべきかの判断は難しいところである。しかし,明らかな虚偽・誇大広告など悪質と判断されるものや,経済的に患者に不相応な負荷をかけていると見受けられるものなどについては,少なくともその利益・不利益を整理したうえで,患者に冷静な判断を促す努力をしたいものである。患者が医療者に対し補完代替療法の使用を明らかにしないこと(non—disclosure)の直接の理由としては,前述したように「尋ねられなかったから」とする回答が多いが,掘り下げれば「医師が反対するのではないか」「言ってもしょうがない」「今の治療と折り合わないのではないか」など,複雑な心理的背景があることも,いくつかの質的研究において指摘されている。その一方で,患者は補完代替療法についてもっと医師と話したいと考えている,とい
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う調査結果がある。ハーブやサプリメントについての米国の腫瘍内科医を対象とした調査では,「ハーブやサプリメントの利用について話し合いをもつことが,医師患者関係にプラスの影響を与える」と考える医師が40%で,「マイナスの影響を与える」と考える医師(3%)よりも明らかに多かった6)。多くの医療者も,補完代替療法についてオープンに話し合うことの有用性を認めているものと思われる。 3 患者の特性(文化,性別,年齢) また,日本の臨床現場においては,背景として医療におけるコミュニケ―ションそのものの文化的な特徴があることも示唆されている。例えば,悪い知らせを伝えるコミュニケーションにおいて,海外の患者と比較して日本の患者の意向は,1因子構造が複雑で,2「質問を促してそれに回答してほしい」傾向がある,という特徴が抽出され,さらに情緒的サポートを重視する傾向がみられるという7)。補完代替療法に関するコミュニケーションにおいても,自分から使用について口火を切ることのハードルが高いと感じており,医療者の側から質問を促されることを暗に望んでいる患者は多いと考えられる。また,早期乳がん患者を対象とした調査では,「心理的負荷が大きく」「(全般的な) QOL が低い」患者ほど補完代替療法の利用が有意に多い8)と報告されている。すべての患者において,補完代替療法について積極的に話し合いの場をもとうとすることは,潜在的に支援を必要としている患者をスクリーニングし,必要なケアを提供するきっかけになり得るという意味で,有用である。現代の患者は,がんの診断・告知という大きな心理的負荷を受けたあとも,引き続き病状について,治療と予想されるメリット・デメリットについて,といった医療者からの情報,また患者本人または家族や友人,患者仲間などによりインターネットや口コミで収集された情報など,次々と膨大な量の情報にさらされ続けている。前述のように若年,高学歴といった情報リテラシーが高いと想像される特徴をもつ患者ほど,補完代替療法の利用頻度が高いといわれる1)。 4 患者自身による意思決定 こうした補完代替療法の利用が,患者自ら主体的に選んだ療法を利用することで,症状の自己コントロール感が高まるなど,全体としてプラスの影響を患者にもたらしているのか,それとも病名や病状に対する焦り,不安や混乱の結果として補完代替療法にすがることは心理的な不安定さの反映であり,疑念を抱えたまま複数の治療を受けることのストレスなど,デメリットのほうが大きいのか,おそらくどちらの側面も事実であり,先行研究結果から一概に語ることは難しい。がん患者とその家族は,特に告知前後や病状進行といった「悪い知らせ」のフェイズにおいて動揺しており,心理的に不安定であることも多い9)。日本のがん患者の調査では,病期にかかわらず約半数に適応障害やうつ病といった精神疾患の診断基準にあてはまる状態が認められている10)。だからこそ,がん患者が補完代替療法の話題を持ち出したときには積極的に耳を傾け,患者にとってそれ(補完代替療法)が非常に重要な問題であることをまず認め,共感を示すことに大きな意味がある。そのうえで,医療者としては専門的立場から,押しつけることなく中立的に,しかし率直に意見を述べるべきである。責任の所在も対象もあいまいな多方面からの情報により,自らの病状や治療内容について偏った見解や誤解をもっているために,最初から標準治療に消極的な患者もいる。補完代替療法を,また標準治療をどのように捉えているかといった話を中立的に聞
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V章参考資料 きとるなかで,そうした誤解が解けていくこともよく経験する。ときに,ある治療法で高率に治癒を望める悪性腫瘍や,または根治不能ながんであっても効果的な標準治療により長期の生存・QOL の改善を期待できる場合においても,がん治療の手段としての補完代替療法を優先し,保険適用の標準治療を受けないという選択をする患者も少ないながらいる。治療について最終的な決定権をもち,治癒・延命の機会の喪失や相互作用,その他の起こり得るリスクも含めて結果を引き受けるのは最終的には患者本人である。しかし,そうした重要な意思決定が,十分な説明を受け熟慮したうえでの決断であること,加えて,患者の決定とそこに至った経緯について家族も納得していることは大事である。患者が極端な選択を急ごうとしているように思われるときは,家族(キーパーソン)同席のうえで,考える時間を差しはさみながら複数回の話し合いを行うことを考慮したい。また,医療者側も多職種カンファランスの場で症例を共有し意見を出し合うなどしながら,風通しのよい医療者患者関係のなかで,患者が納得して治療方針の決定に至ることができるよう,努力する必要がある。 (舛本真理子) 【文 献】1) Hyodo I, Amano N, Eguchi K, et al. Nationwide survey on complementary and alternative medicine in cancer patients in Japan. J Clin Oncol 2005; 23: 2645-54 2) Davis EL, Oh B, Butow PN, et al. Cancer patient disclosure and patient-doctor communication of complementary and alternative medicine use: a systematic review. Oncologist 2012; 17: 1475-81 3) 辻内琢也,鈴木勝己,辻内優子,他.民俗セクター医療を利用する患者の社会文化的背景: 医療人類学的視点による質的研究.心身医学2005; 45: 53-62 4) Slevin ML, Stubbs L, Plant HJ, et al. Attitudes to chemotherapy: comparing views of patients with cancer with those of doctors, nurses, and general public. BMJ 1990; 300: 1458-60 5) McQuellon RP, Muss HB, Hoffman SL, et al. Patient preferences for treatment of metastatic breast cancer: a study of women with early-stage breast cancer. J Clin Oncol 1995; 13: 858-68 6) Lee RT, Barbo A, Lopez G, et al. National survey of US oncologists’ knowledge, attitudes, and practice patterns regarding herb and supplement use by patients with cancer. J Clin Oncol 2014; 32: 4095-101 7) 内富庸介,藤森麻衣子 編.がん医療におけるコミュニケーション・スキル―悪い知らせをどう伝えるか,医学書院,2007 8) Burstein HJ, Gelber S, Guadagnoli E, et al. Use of alternative medicine by women with early-stage breast cancer. N Engl J Med 1999; 340: 1733-9 9) Mehnert A, Brähler E, Faller H, et al. Four-week prevalence of mental disorders in patients with cancer across major tumor entities. J Clin Oncol 2014; 32: 3540-6 10) 大谷恭平,内富庸介.がん患者の心理と心のケア.日本耳鼻咽喉科学会会報2010; 113: 45-52
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補完代替療法に関して,さらに詳細な情報を入手したい場合は,以下のサイトを参考にしていただきたい。●国立がん研究センターがん対策情報センター:がん情報サービス・補完代替療法を考える(http://ganjoho.jp/hikkei/chapter3—1/03—01—11.html)・代替療法(健康食品やサプリメント)(http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/ alternative_medicine.html) ●厚生労働省がん研究開発費:がんの代替医療の科学的検証に関する研究班(http://www.shikoku—cc.go.jp/hospital/guide/useful/newest/cam/index.html) ●国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(https://hfnet.nih.go.jp/) ●厚生労働省:「統合医療」情報発信サイト(http://www.ejim.ncgg.go.jp/) 健康食品や健康器具などの安全性に関する情報は,関連省庁,都道府県,保健所などが監視活動を行っており,健康被害等の事例が生じた場合にはインターネット上にて情報が発信されている。そのため,患者から補完代替療法の利用に関して相談を受けた際には,以下のサイトを参考に安全性についての情報収集にも努めていただきたい。●国民生活センター(http://www.kokusen.go.jp/) ●食品安全委員会(http://www.fsc.go.jp/) ● 消費者庁:安全・安心のために注意していただきたいこと(http://www.caa.go.jp/ action/need.html) ● 厚生労働省:健康被害情報・無承認無許可医薬品情報(http://www.mhlw.go.jp/ kinkyu/diet/musyounin.html) ● 東京都福祉保健局:注意が必要な健康食品(http://www.fukushihoken.metro.tokyo. jp/anzen/supply/news.html) ● 国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報:安全情報・被害関連情報(https://hfnet.nih.go.jp/contents/index1.html) 補完代替療法は患者個人が自己判断で行っており,ときにトラブルに巻き込まれているケースもある。そのような事態を避けるためにも,悪質商法やインターネット上のトラブルなどの事例についても患者への情報提供に努めていただきたい。また,もしトラブルに巻き込まれ,被害にあっている場合の相談窓口についても以下のサイトを参考にしていただきたい。 1 補完代替療法全般に関する情報 2 健康被害等に関する情報 3 消費者トラブルに関する情報 3 補完代替療法に関する 公的機関による情報資料
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V章参考資料 ●消費者庁:被害にあったら(http://www.caa.go.jp/globalnavi/damage_a.html) ●消費者庁:被害にあわないために(http://www.caa.go.jp/globalnavi/damage_b.html) ● 消費者庁:悪質商法などから身を守るために(http://www.caa.go.jp/consumers/pro- tect/) (大野 智)
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付 録 ●エビデンス掲載ページ(主ながん種) がん種療 法ページ大腸がん健康食品22 アロマテラピー・マッサージ37,38,39,41運動療法50,52,57,60,62,65,67,68栄養療法,経腸栄養剤120免疫療法134漢方薬137 乳がん健康食品24 マッサージ29,30,31,32,33運動療法46,47,48,49,51,52,53,57,58,60,61,64,66,67,68,69ホメオパシー74,75リラクセーション86,89音楽療法96,97鍼灸治療106,107ヨガ114,115,116,117免疫療法134漢方薬137 肺がん運動療法49,52,54,60,62,65,66 リラクセーション87鍼灸治療105,108栄養療法,経腸栄養剤120免疫療法134 胃がん栄養療法,経腸栄養剤120 免疫療法134漢方薬137 肝がん漢方薬137造血器腫瘍運動療法47,48,49,51,52,54,57,58,60,61,64,65前立腺がん健康食品24,25 運動療法47,48,50,52,55,57,60,62,64,67鍼灸治療107免疫療法134 小児がん運動療法51,53,55,62,63,67 音楽療法95,96,97
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◆和文◆あ亜鉛 25, 124悪液質 120, 125, 127アグラベーション 72アセチル—L—カルニチン 21アニマルセラピー 77アバンド 130アルギニン 131アロマテラピー 34アロマテラピー・マッサージ 34 いイソフラボン 25インナーパワー 124 うウエイト・リフティング 53, 66ウォーキング 47, 48, 51, 52, 57, 58, 60, 61, 67運動療法 43 えエイコサペンタエン酸 127, 128栄養療法 120エネルギー代謝異常 120エラグ酸 23, 25エンシュア 22 お嘔吐 89, 106, 116悪心 89, 106, 116オリゴ糖 122音楽療法 92音楽療法士 92 か科学的根拠に基づく医療 3活性化自己リンパ球移入療法 133合併症予防 124カモミール 40, 41 カルシウム 21カルチトリオール 25カルニチン 124乾燥BCG 133漢方薬 136漢方薬の副作用 137 き気功 47, 48, 57, 58, 60, 61急性皮膚炎 75 くクエン酸 124クリニカル・エビデンス 4グルタチオン 21, 23, 25グルタミン 20, 21, 23, 122, 131 け経口栄養補助剤 122経腸栄養剤 22, 120血球減少 23ゲニステイン 25健康食品 14, 154健康食品の相互作用 20健康被害 15, 142, 160倦怠感 125 こ口腔乾燥 107口腔粘膜炎 123口腔粘膜障害 23抗酸化サプリメント 24口内炎 75高濃度ビタミンC 点滴療法 138コエンザイムQ10 25, 124骨髄抑制 108骨盤筋抵抗運動 55骨盤底筋体操 47, 52コミュニケーション 155索 引 (太字は主要ページ)
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さサイクリング 47, 57, 58, 60, 61, 67サイトカイン 133サスタカル 22サプリメント 154 し脂質代謝異常 121姿勢運動 46手術 124樹状細胞ワクチン 133術後合併症 22, 67, 122ジュニパー 41消化管粘膜障害 20消費者トラブル 160自律訓練法 83鍼灸 99シンバイオティクス 22心理教育 86診療ガイドライン 3 すスイートアーモンド 40, 41水中リンパ療法 53, 66水溶性ファイバー 122ストレッチング 49, 50, 62 せゼラニウム 41セレン 21, 23, 25全身運動 46漸進的筋弛緩法 83漸進的抵抗運動 46 そ相互作用 20, 142創傷治癒 117, 125, 130 た耐久運動 47, 49, 52, 57, 60太極拳 48, 58, 60代謝異常 120体重減少 21, 128大豆イソフラボン 143ダイゼイン 25多機能運動 53, 66脱水症 130ダンス療法 53, 66 蛋白代謝異常 121 ち・て調整運動 46抵抗運動 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 57, 58, 60, 61, 62, 66 と統合医療 10糖代謝異常 120ドコサヘキサエン酸 128 はハーブ 154 ひビタミンB 25ビタミンB6 21ビタミンC 24, 25ビタミンD 24ビタミンE 21, 23, 25 ふフェンネル 41副作用予防 124ブラックペッパー 41プルービング 72プレバイオティクス 143プロシュア 127プロバイオティクス 20, 21, 22, 143分岐鎖アミノ酸 124 へペプチドワクチン 133 ほ包括的リハビリテーション 53, 66放射線性口腔乾燥 107放射線性口腔粘膜炎 123補完代替医療 10補完代替療法 4, 10保健機能食品制度 14ホットフラッシュ 74, 89, 107, 117ホメオパシー 71ポリファーマシー 143
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まマインドフルネスストレス低減法 82, 88マインドフルネス瞑想 88マグネシウム 21マッサージ 27末梢神経障害 21, 108 み味覚障害 125 めメラトニン 20, 21, 23, 25免疫チェックポイント阻害薬 133免疫療法 133免疫療法の保険適用 134 や薬物動態学的相互作用 142薬力学的相互作用 142 ゆ有酸素運動 46, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 57, 58, 60, 61, 62, 66 よヨガ 46, 47, 48, 50, 51, 52, 57, 58, 60, 61, 111 らラコールNF 128ラベンダー 37, 38, 40, 41 り理学療法 53, 66リコピン 25リフレクソロジー 29, 30, 32リポ酸 21緑茶抽出物 25リラクセーション 82リンパ浮腫 33, 66, 117 れレチノール 24レメディ 71 わ悪い知らせ 158 ◆欧文◆ A autogenic training 84 B BCAA 124 C Ca 21 complementary therapies 7 D DHA 19, 128 E EPA 19, 127, 128 evidence—based medicine(EBM) 3 G GFO 122 GRADE system 3 L L—カルニチン 124 M MeSH 7 Mg 21 N N—アセチルシステイン 21, 23, 25 O OS—1 128 P progressive muscle relaxation 84 PubMed 7 R relaxation therapy 82, 84 ◆記号◆ ω—3 脂肪酸 18, 19, 21, 128
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がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス2016 年版定価(本体2,400 円+税) 2016 年6 月 20 日 第1 版第1 刷発行 編 集 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 発行者 福村 直樹発行所 金原出版株式会社 〒113-8687 東京都文京区湯島 2-31-14電話 編集 (03)3811-7162営業 (03)3811-7184 FAX (03)3813-0288振替口座 00120-4-151494 http://www.kanehara-shuppan.co.jp/ © 2016 検印省略Printed in Japan ISBN 978-4-307-10180-6印刷・製本/三報社印刷(株) <(社)出版者著作権管理機構 委託出版物>本書の無断複製は著作権法上での例外を除き禁じられています。複製される場合は,そのつど事前に,(社)出版者著作権管理機構(電話 03-3513-6969,FAX 03-3513- 6979,e-mail : info@jcopy.or.jp)の許諾を得てください。小社は捺印または貼付紙をもって定価を変更致しません。乱丁,落丁のものはお買い上げ書店または小社にてお取り替え致します。
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vi 1 はじめに2 2 「クリニカル・エビデンス」作成経過3 1.背 景3 1 診療ガイドラインとは? 3 2 科学的根拠に基づく医療とは? 3 3 補完代替療法分野の現状と課題4 4 「クリニカル・エビデンス」の目的4 2.対象者/利用者4 3.作成者と利益相反4 4.作成手順6 1 対象となる補完代替療法の選択6 2 サマリーの作成6 3 臨床疑問の明確化6 4 文献検索の条件7 1 補完代替医療の概要10 1. 補完代替医療(complementary and alternative medicine)とは? 10 2.補完代替療法の利用実態11 3.医療者の認識12 1 健康食品14 サマリー14 1.健康食品の概要14 2.使用上の一般的な注意事項15 3.論文報告(エビデンス)における課題16 4. 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 16 5.文献検索の条件16 臨床疑問18臨床疑問1—1 健康食品は,がんに伴う身体 症状を軽減するか? 18 臨床疑問1—2 健康食品は,がんに伴う精神 症状を軽減するか? 19 臨床疑問1—3 健康食品は,全般的なQOL を 改善するか? 19 臨床疑問1—4 健康食品は,何らかの望まし くない有害事象を引き起こすか? 20 臨床疑問1—5 健康食品は,検査・治療等に 伴う有害事象を軽減するか? 20 臨床疑問1—6 健康食品は,予後を改善する か? 24 2 マッサージ27 サマリー27 1.マッサージの概要27 2.使用上の一般的な注意事項27 3.論文報告(エビデンス)における課題27 4. 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 28 5.文献検索の条件28 臨床疑問29臨床疑問2—1 マッサージは,がんに伴う身 体症状を軽減するか? 29 臨床疑問2—2 マッサージは,がんに伴う精 神症状を軽減するか? 31 臨床疑問2—3 マッサージは,全般的なQOL を改善するか? 32 臨床疑問2—4 マッサージは,何らかの望ま しくない有害事象を引き起こすか? 33 臨床疑問2—5 マッサージは,検査・治療等 I章 序 論 II章 総 論 III章 各 論:クリニカル・エビデンス 1 2 1 2目 次
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vii に伴う有害事象を軽減するか? 33 臨床疑問2—6 マッサージは,予後を改善す るか? 33 3 アロマテラピー・マッサージ34 サマリー34 1.アロマテラピー・マッサージの概要34 2.使用上の一般的な注意事項34 3.論文報告(エビデンス)における課題35 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 35 5.文献検索の条件35 臨床疑問37臨床疑問3—1 アロマテラピー・マッサージ は,がんに伴う身体症状を軽減するか? 37 臨床疑問3—2 アロマテラピー・マッサージ は,がんに伴う精神症状を軽減するか? 39 臨床疑問3—3 アロマテラピー・マッサージ は,全般的なQOL を改善するか? 40 臨床疑問3—4 アロマテラピー・マッサージ は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? 40 臨床疑問3—5 アロマテラピー・マッサージ は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? 41 臨床疑問3—6 アロマテラピー・マッサージ は,予後を改善するか? 42 4 運動療法43 サマリー43 1.運動療法の概要43 2.使用上の一般的な注意事項43 3.論文報告(エビデンス)における課題43 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 44 5.文献検索の条件44臨床疑問46 臨床疑問4—1 運動療法は,がんに伴う身体 症状を軽減するか? 46 臨床疑問4—2 運動療法は,がんに伴う精神 症状を軽減するか? 57 臨床疑問4—3 運動療法は,全般的なQOL を 改善するか? 59 臨床疑問4—4 運動療法は,何らかの望まし くない有害事象を引き起こすか? 64 臨床疑問4—5 運動療法は,検査・治療等に 伴う有害事象を軽減するか? 66 臨床疑問4—6 運動療法は,予後を改善する か? 67 5 ホメオパシー71 サマリー71 1.ホメオパシーの概要71 2.使用上の一般的な注意事項71 3.論文報告(エビデンス)における課題71 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 72 5.文献検索の条件72 臨床疑問74臨床疑問5—1 ホメオパシーは,がんに伴う 身体症状を軽減するか? 74 臨床疑問5—2 ホメオパシーは,がんに伴う 精神症状を軽減するか? 75 臨床疑問5—3 ホメオパシーは,全般的な QOL を改善するか? 75 臨床疑問5—4 ホメオパシーは,何らかの望 ましくない有害事象を引き起こすか? 75 臨床疑問5—5 ホメオパシーは,検査・治療 等に伴う有害事象を軽減するか? 75 臨床疑問5—6 ホメオパシーは,予後を改善 するか? 76 6 アニマルセラピー77 サマリー77 1.アニマルセラピーの概要77 1 2 1 1 2
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viii 2.使用上の一般的な注意事項77 3.論文報告(エビデンス)における課題77 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 77 5.文献検索の条件78 臨床疑問79臨床疑問6—1 アニマルセラピーは,がんに 伴う身体症状を軽減するか? 79 臨床疑問6—2 アニマルセラピーは,がんに 伴う精神症状を軽減するか? 79 臨床疑問6—3 アニマルセラピーは,全般的 なQOL を改善するか? 80 臨床疑問6—4 アニマルセラピーは,何らか の望ましくない有害事象を引き起こすか? 80 臨床疑問6—5 アニマルセラピーは,検査・ 治療等に伴う有害事象を軽減するか? 80 臨床疑問6—6 アニマルセラピーは,予後を 改善するか? 80 7 リラクセーション82 サマリー82 1.リラクセーションの概要82 2.使用上の一般的な注意事項83 3.論文報告(エビデンス)における課題83 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 84 5.文献検索の条件84 臨床疑問86臨床疑問7—1 リラクセーションは,がんに 伴う身体症状を軽減するか? 86 臨床疑問7—2 リラクセーションは,がんに 伴う精神症状を軽減するか? 88 臨床疑問7—3 リラクセーションは,全般的 なQOL を改善するか? 88 臨床疑問7—4 リラクセーションは,何らか の望ましくない有害事象を引き起こすか? 89臨床疑問7—5 リラクセーションは,検査・ 治療等に伴う有害事象を軽減するか? 89 臨床疑問7—6 リラクセーションは,予後を 改善するか? 90 8 音楽療法92 サマリー92 1.音楽療法の概要92 2.使用上の一般的な注意事項92 3.論文報告(エビデンス)における課題92 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 93 5.文献検索の条件93 臨床疑問95臨床疑問8—1 音楽療法は,がんに伴う身体 症状を軽減するか? 95 臨床疑問8—2 音楽療法は,がんに伴う精神 症状を軽減するか? 96 臨床疑問8—3 音楽療法は,全般的なQOL を 改善するか? 97 臨床疑問8—4 音楽療法は,何らかの望まし くない有害事象を引き起こすか? 97 臨床疑問8—5 音楽療法は,検査・治療等に 伴う有害事象を軽減するか? 97 臨床疑問8—6 音楽療法は,予後を改善する か? 97 9 鍼灸治療99 サマリー99 1.鍼灸治療の概要99 2.使用上の一般的な注意事項99 3.論文報告(エビデンス)における課題99 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 100 5.文献検索の条件100 臨床疑問102臨床疑問9—1 鍼灸治療は,がんに伴う身体 症状を軽減するか? 102 2 1 2 1 2 1
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ix 臨床疑問9—2 鍼灸治療は,がんに伴う精神 症状を軽減するか? 105 臨床疑問9—3 鍼灸治療は,全般的なQOL を 改善するか? 105 臨床疑問9—4 鍼灸治療は,何らかの望まし くない有害事象を引き起こすか? 105 臨床疑問9—5 鍼灸治療は,検査・治療等に 伴う有害事象を軽減するか? 106 臨床疑問9—6 鍼灸治療は,予後を改善する か? 109 10 ヨ ガ111 サマリー111 1.ヨガの概要111 2.使用上の一般的な注意事項111 3.論文報告(エビデンス)における課題111 4. 論文報告としてはないものの,「教科書に記 載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 112 5.文献検索の条件112 臨床疑問114臨床疑問10—1 ヨガは,がんに伴う身体症状 を軽減するか? 114 臨床疑問10—2 ヨガは,がんに伴う精神症状 を軽減するか? 115 臨床疑問10—3 ヨガは,全般的なQOL を改善 するか? 116 臨床疑問10—4 ヨガは,何らかの望ましくな い有害事象を引き起こすか? 116 臨床疑問10—5 ヨガは,検査・治療等に伴う 有害事象を軽減するか? 116 臨床疑問10—6 ヨガは,予後を改善するか? 117 1 栄養療法,経腸栄養剤120 1.担がん患者の代謝変動120 1 エネルギー代謝異常120 2 糖代謝異常120 3 蛋白代謝異常121 4 脂質代謝異常121 2. わが国で用いられているがん患者に対する 栄養剤122 1 経口栄養補助剤:GFO 122 2 経口栄養補助剤:インナーパワー124 3 経口栄養補助剤:プロシュア127 4 胃瘻からの経腸栄養剤:ラコールNF 配合経腸用半固形剤128 5 経口補水液:OS—1 128 6 経口栄養補助剤:アバンド130 3. がん悪液質に対する栄養サポートと今後の 課題131 2 免疫療法133 1.わが国で実施されている免疫療法133 1 第1 世代133 2 第2 世代133 3 第3 世代133 4 第4 世代133 3 漢方薬136 1.漢方薬とは? 136 2.漢方薬を用いた臨床試験136 3.漢方薬の注意点136 4 高濃度ビタミンC 点滴療法138 1.ビタミンC に関する一般的事項138 2.ビタミンC とがん138 1 がん予防138 2 がん治療138 3.高濃度ビタミンC 点滴療法139 1 ビタミンC の抗腫瘍メカニズム139 2 単独投与139 3 併用療法139 4 副作用139 5 薬物相互作用139 6 その他の注意事項139 1 相互作用について142 1.薬物動態学的相互作用142 2.薬力学(薬理学)的相互作用142 3.その他の要因143 1 環境要因によるもの143 2 ポリファーマシーの危険性143 1 2 IV章 各 論:治療のトピックスV章 参考資料
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x 3 ハーブ,サプリメント,健康食品154 4.参考となる情報154 1 Web サイト154 2 書 籍154 2 患者・医療者間のコミュニケーションを 考える155 1.補完代替療法利用の現状と行動科学的考察155 2.補完代替療法と多元的医療システムの概念155 3.コミュニケーションの実際156 1 補完代替療法を利用する患者の心理156 2 医療者の介入157 3 患者の特性(文化,性別,年齢) 158 4 患者自身による意思決定158 3 補完代替療法に関する公的機関による情報 資料160 1.補完代替療法全般に関する情報160 2.健康被害等に関する情報160 3.消費者トラブルに関する情報160 付 録 エビデンス掲載ページ(主ながん種) 162 索 引163
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2009 年2 月に日本緩和医療学会から「がん補完代替医療ガイドライン(第1 版)」(Web版)が発行され,すでに7 年以上が経過した。本ガイドラインは,厚生労働省がん研究助成金「我が国におけるがんの代替療法に関する研究」班および「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班による,「緩和医療ガイドライン作成委員会補完代替医療ガイドライン作業部会」が作成し,日本緩和医療学会理事会が2008 年10 月に承認したものである。なお,これは学会会員向けの出版物として公表されたものであり,現在は資料として日本緩和医療学会ホームページに掲載されている。本ガイドラインは,当初,3~5 年後をめどに,その見直しの必要性につき検討する予定であった。改訂にあたって,この分野は施術や療法によって差はあるが,なかなか科学的根拠となる報告が少なく,またその多くが保険外診療であり,いわゆる診療ガイドラインとしての改訂が可能かどうかという議論もなされた。しかし,がん医療の現場で以前にも増して補完代替療法が用いられているのは事実であり,本学会としてもこの分野に何らかの見解を示すことが必要だと思われた。今回,次項の作成経過で述べられているように,通常の診療ガイドラインにあるような「推奨度」を設定せず,新たに「クリニカル・エビデンス」として,がん診療現場の医療従事者の助けになるような形式にまとめ,出版することとした。 (太田惠一朗) 1 はじめに
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I章序論 1 診療ガイドラインとは? 米国医学研究所(Institute of Medicine)によると,「診療ガイドラインとは,患者ケアの最適化を目的とする推奨を含む文書である。診療ガイドラインはエビデンスの系統的レビューと,複数の治療選択肢の益と害の評価によって作成される(原文:Clinical practice guidelines are statements that include recommendations intended to optimize patient care. They are informed by a systematic review of evidence and an assessment of the benefits and harms of alternative care options.)1)」と定義されている。さらに,そのガイドラインに示される推奨の強さをグレーディングするためのアプローチ(GRADE system)が,GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)working group によって開発され,国際的に広く普及しつつある2)。なお,GRADE system では,推奨の方向が2 種類(推奨する,推奨しない),強さが2 種類(strong,weak)の4 段階の推奨度が設定される。 2 科学的根拠に基づく医療とは? 科学的根拠に基づく医療(evidence—based medicine;EBM)とは,「研究によって得られた科学的根拠=エビデンス(research evidence),患者の好み(価値観)・行動(patients’ preferences and actions),医療者の技術・経験を含む専門性(clinical expertise),患者の病状・周囲の環境(clinical state and circumstances)の4 つを考慮し,よ 1 背 景 2 「クリニカル・エビデンス」作成経過 患者の病状・周囲の環境(Clinical state & circumstances) 科学的根拠(Research evidence) 患者の好み(価値観)・ 行動(Patients’ preferences & actions) 医療者の技術・経験を含む専門性(Clinical expertise) 図 1 科学的根拠に基づいた医療(EBM) (HaynesRB,etal.BMJ2002;324:13503)より引用改変)
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りよい患者ケアのための意思決定を行うものである」とされている(図1)3)。誤解されがちであるが,「EBM を実践すること」は,「科学的根拠を患者に当てはめる(押しつける)こと」ではない。図1 に示すとおり,意思決定においては,科学的根拠のほかにも考慮すべき要因がある。また,エビデンスそのものについても誤解が多く,EBM を実践するにあたって,「無作為化比較試験の報告がなければエビデンスがない」ということも,「エビデンスがなければEBM が実践できない」ということもない。Haynes ら3)の論文においても,「治療方針の意思決定は,エビデンスではなく,患者と医療者によってなされるべきである(原文:Evidence does not make decisions, people do)」と,患者—医療者間のコミュニケーションの重要性が強調されている。 3 補完代替療法分野の現状と課題 施術・療法によっては,無作為化比較試験の報告が少ない。ほとんどの施術・療法は,保険診療の対象外となっている(経済的負担の問題)。利用にあたっての判断は,患者・家族の好みや価値観の影響が大きい。上記を踏まえ,補完代替療法分野において,画一的に「推奨度」を設定しなければならない診療ガイドラインを作成することは困難であり,逆に推奨度を設定することで臨床現場に混乱を招く可能性も危惧された。そのため,推奨を含むガイドラインではなく,各種補完代替療法注1)に関する科学的根拠を取りまとめたクリニカル・エビデンス注2)を作成することとした。 注1)補完代替療法:本クリニカル・エビデンスでは,さまざまな施術・療法を総称して補完代替療法とする。なお,補完代替療法を含む医学・医療体系全体を指すときは補完代替医療とする。注2)クリニカル・エビデンス:診療で生じる疑問(臨床疑問)からトピックスを抽出し,系統的に情報を収集・吟味して,有用性や安全性等に関するデータをコンパクトに提示するエビデンス集。 4 「クリニカル・エビデンス」の目的EBM を実践するうえで意思決定の要因の一つである「科学的根拠」について,臨床疑問別に整理したうえで提供することを目的とした。 がん診療に携わる医療者:医師,看護師,薬剤師など(患者・家族向けの資料は,今後作成予定とした)。 以下に,2016 年版の作成者と利益相反を示す。 2 対象者/利用者 3 作成者と利益相反
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I章序論 [利益相反開示事項]日本緩和医療学会の利益相反に関する指針,細則,報告事項,Q&A については学会ホームページ(http://www.jspm.ne.jp/rieki/)をご確認いただきたい。 [役員・委員等の利益相反開示事項(概要)] 1 報告対象企業等の職員,顧問職2 給与・報酬等100 万円以上3 特許権使用料100 万円以上4 講演料等50 万円以上5 原稿料等50 万円以上6 顧問料100 万円以上7 委受託研究費200 万円以上8 研究助成金(寄付金)等100 万円以上9 奨学(奨励)寄付金等100 万円以上10 寄付講座等500 万円以上11 株式等12 無関係な旅行,贈答品等5 万円以上13 自由診療 [開示期間] 2014 年4 月1 日~2015 年3 月31 日 [緩和医療ガイドライン委員会]利益相反委員長太田惠一朗日本医科大学消化器外科教授該当なし担当委員大野 智大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座准教授該当なし外部委員中山 健夫京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情 報学分野教授該当なし [補完代替療法ガイドライン改訂WPG]利益相反WPG 員長太田惠一朗日本医科大学消化器外科教授該当なしWPG 副員長大野 智大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座准教授該当なしWPG 員井寺 奈美都立駒込病院乳腺外科該当なし伊藤 彰博藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座准教授該当なし今津 嘉宏芝大門いまづクリニック院長講演料等:株式会社ツムラ上園 保仁国立研究開発法人国立がん研究センター研究所がん患 者病態生理研究分野長 講演料等:株式会社ツムラ,委受託研究費:株式会社ツムラ,第一三共株式会社,昭和薬品化工株式会社梅垣 敬三国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健 康・栄養研究所情報センター長〔外部委員〕該当なし
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1 対象となる補完代替療法の選択 「がん補完代替医療ガイドライン(第1 版)」(Web 版)を参考に,わが国で一般的に実施されている各種補完代替療法を原則としてWPG 員間で議論し決定した。なお,すでに医薬品として承認されているものや国内外で臨床研究が進められている療法などのうち,栄養療法・経腸栄養剤,免疫療法,漢方薬,高濃度ビタミンC 点滴療法については,クリニカル・エビデンス形式ではなく治療のトピックスとして取り上げ,各療法の現状と課題,保険診療と補完代替療法との区別などについて解説することとした。 2 サマリーの作成 対象となる補完代替療法について,「概要」「使用上の一般的な注意事項」「論文報告(エビデンス)における課題」「すでに一般的に知られている副作用や禁忌事項」をサマリーとしてまとめることとした。 3 臨床疑問の明確化 WPG 員間で議論し臨床疑問を抽出した後,下記のとおりに整理した。また,臨床疑問は,各施術・療法で共通とした。なお,文献報告数が多い施術・療法の場合,各臨床 4 作成手順 遠藤 光史越川病院緩和ケア科,東京医科大学病院緩和医療部兼 任講師該当なし 大坂 巌静岡県立静岡がんセンター緩和医療科部長講演料等:大鵬薬品工業株式会社,ヤンセンファーマ株式会社大津 史子名城大学薬学部教授〔外部委員〕該当なし岡 孝和九州大学大学院医学研究院心身医学准教授〔外部委員〕該当なし神里みどり沖縄県立看護大学・大学院看護学部教授該当なし儀賀 理暁埼玉医科大学総合医療センター緩和ケア推進室長・呼 吸器外科准教授該当なし 髙世 秀仁信愛報恩会信愛病院緩和ケア部長該当なし平井みどり神戸大学医学部附属病院教授・薬剤部長該当なし舛本真理子武蔵野赤十字病院腫瘍内科該当なし宮内 貴子山口大学医学部附属病院緩和ケアセンター副看護師長該当なし山口 佳之川崎医科大学臨床腫瘍学教授講演料等:中外製薬株式会社,小野薬品工業株式会社奨学(奨励)寄付金等:中外製薬株式会社,協和発酵キリン株式会社,小林製薬株式会社 (五十音順)
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I章序論 疑問にさらに小項目として詳細な臨床疑問を設定することも可能とした。なお,構造化抄録は本クリニカル・エビデンスには掲載しなかったが,臨床疑問の解説において個々の論文の概要がわかるように配慮して記載した。●臨床疑問1 がんに伴う身体症状を軽減するか? 1)痛 み2)消化器症状3)呼吸器症状4)泌尿器症状5)倦怠感6)睡眠障害7)その他●臨床疑問2 がんに伴う精神症状を軽減するか? 1)不 安2)抑うつ3)その他●臨床疑問3 全般的なQOL を改善するか? ●臨床疑問4 何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ●臨床疑問5 検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ●臨床疑問6 予後を改善するか? 1)全生存率(total mortality) 2)原因特異的死亡率(cause—specific mortality) 3) 無病生存率(disease—free survival),無増悪生存率(progression—free survival), 奏効率(tumor response rate) 4 文献検索の条件 米国国立医学図書館が運営するPubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed)を検索ツールとした。検索キーワードは,PubMed のMeSH の「Complementary Therapies」に掲載されている用語を原則として使用した。検索期間を2000 年1 月1 日~2014年12 月31 日に設定した。対象とする文献は,システマティックレビューおよび無作為化比較試験とした。なお,文献数が多く,質の高いシステマティックレビューがすでに存在している場合は,システマティックレビューのみを検索対象とした。各施術・療法の検索結果はサマリーに記載することとした。文献の検索,スクリーニング,採択の判断は担当WPG 員に任された。 (大野 智) 【文 献】1) Institute of Medicine. Clinical Practice Guidelines We Can Trust(March 23, 2011) https://iom.nationalacademies.org/Reports/2011/Clinical-Practice-Guidelines-We-Can-Trust.aspx 2) GRADE working group. http://www.gradeworkinggroup.org/index.htm 3) Haynes RB, Devereaux PJ, Guyatt GH. Physicians’ and patients’ choices in evidence based practice. BMJ 2002; 324: 1350
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西洋医学は,科学技術の発展と要素還元主義の方法論に基づき,さまざまな疾患について病因の分析や療法の開発に多大な貢献をもたらした。一方で,がん,アレルギー疾患,精神疾患のように,食事・運動などの生活習慣やストレスなどの社会環境など,さまざまな複合要因によって起こり得る疾患については,必ずしも容易に克服できていない状況が生じており,西洋医学だけではなく,健康食品,ヨガ,マッサージなどの各種民間療法が広く患者・国民に利用されているという実態がある。これら各種の施術・療法を含む医学・医療体系が「補完代替医療(ほかんだいたいいりょう)」と総称される。わが国においては,公的機関による補完代替医療の定義は,現時点(2016 年5 月)では存在しない。しかし,2010(平成22)年1 月29 日に鳩山内閣総理大臣(当時)が,施政方針演説において,健康寿命を延ばす観点から「統合医療」の積極的な推進について検討を進めることを掲げたことを受け,厚生労働省内に「統合医療プロジェクトチーム」が発足した。その第1 回会合(2010 年2 月5 日)の資料に以下のような記載がある1)。 1.統合医療とは○医療には,近代西洋医学以外に,伝統医学,自然療法,ホメオパチー,ハーブ (薬草),心身療法,芸術療法,音楽療法,温泉療法など多くのものがあり,これらを相補・代替医療(ComplementaryandAlternativeMedicine,CAM)とよんでいる。○これらの相補・代替医療を近代西洋医学に統合して,患者中心の医療を行うも のが統合医療である。 補足すると,英語表記の「complementaryandalternativemedicine」が,わが国では「相補・代替医療」「補完代替医療」などと訳され,日本語訳自体にばらつきがある。つまり,その混迷している状況そのものが,わが国の補完代替医療に対する取り組み姿勢の証左かもしれない。なお,本クリニカル・エビデンスにおいては,固有名詞など特に断りのない限り「補完代替医療」で統一する。また,各種施術・療法を指すときは「補完代替療法」とする。さらに,2012(平成24)年3 月26 日には,厚生労働省において『「統合医療」のあり方に関する検討会』が開催され,合計5 回の検討会で議論が行われた後,2013(平成25)年2 月22 日に「これまでの議論の整理」という資料が公表された2)。その資料に,西洋医学と組み合わせる療法の分類に関する一覧が掲載された(図2)。この資料によると,国家資格等,国の制度に組み込まれているものと,組み込まれていないものとを分類したうえで,各療法が列記されている。 1 補完代替医療(complementary and alternative medicine)とは? 1 補完代替医療の概要
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II章総論 がんの医療現場における補完代替療法の利用実態に関しては,2001 年に厚生労働省がん研究助成金による研究班が組織され,初めて全国規模の実態調査が行われた3)。その結果,以下のことが明らかとなった。・がん患者の約45%(1,382/3,100 人)が,1 種類以上の補完代替療法を利用している。・補完代替療法の利用にあたって,平均して月に5 万7 千円を出費している。・利用している内容は,健康食品・サプリメントが最も多く(96%),次いで気功(4%), 灸(4%),鍼(4%)となっている。・利用する主な目的は,がんの進行抑制(67%),治療(45%)となっている。・補完代替療法を利用している患者の5%が,副作用を経験したと回答している。・補完代替療法を利用している患者の57%は,十分な情報を得ていない。・補完代替療法を利用している患者の61%は,主治医に相談していない。・主治医から補完代替療法の利用について質問された患者は,16%しかいない。さらに,補完代替療法を利用していない患者であっても興味・関心をもっている患者は多く,利用している患者とあわせると8 割を超えることも報告されている4)。また, 2 補完代替療法の利用実態統合医療 療法の分類療法の例 国家資格等,国の制度に組み込まれているものその他 食や経口摂取に関するもの食事療法・サプリメントの一部(特別用途食品(特定保健用食品含む。),栄養機能食品)左記以外の食事療法・サプリメント・断食療法・ホメオパシー注)身体への物理的刺激を伴うものはり・きゅう(はり師,きゅう師)温熱療法,磁器療法手技的行為を伴うものマッサージの一部(あん摩マッサージ指圧師),骨つぎ・接骨(柔道整復師)左記以外のマッサージ,整体,カイロプラクティック感覚を通じて行うもの―アロマテラピー,音楽療法環境を利用するもの―温泉療法,森林セラピー身体の動作を伴うもの―ヨガ,気功動物や植物との関わりを利用するもの―アニマルセラピー,園芸療法伝統医学,民族療法漢方医学の一部(薬事承認されている漢方薬)左記以外の漢方医学,中国伝統医学,アーユルベーダ注)日本学術会議(平成22 年8 月24 日)において,「ホメオパシーの治療効果は科学的 に明確に否定されている」との会長談話が出されている。 近代西洋医学組合せ(補完・一部代替) 図2 近代西洋医学と組み合わせる療法の分類について上記は,平成22 年度厚生労働科学研究「統合医療の情報発信等の在り方に関する調査研究」で採り上げられた療法について,効果の有無を問わず整理したものである。 (厚生労働省.「統合医療」のあり方に関する検討会資料,2013 年2 月22 日2)より引用)
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患者が補完代替療法を利用するきっかけとしては,「家族・知人からの勧め」が最も多く3),患者だけではなく,その家族や知人に対しても,適切な情報提供が必要と考えられる。 同じく厚生労働省がん研究助成金による研究班によって,がん患者の診療にあたっている医師(n=751)の補完代替医療に関する意識調査も行われている5)。漢方,健康食品(サプリメント),鍼,カイロプラクティック,アロマテラピー,ホメオパシー,温泉療法,イメージ療法,ヨガ,タラソテラピー,催眠療法について,それぞれ「知識をもっているか」との問いに対して,漢方を除くその他種々の補完代替療法について,75~90%の医師が「知識はない」と回答している。補完代替療法を患者に実施・施行している医師も,漢方を除くと,0~1.5%とごくわずかであった。また82%が,がんで使用される健康食品類には有効性はないと考え,84%の臨床腫瘍医が抗がん剤との相互作用を危惧していると回答している。 (大野 智) 【文 献】 1) 厚生労働省.統合医療に対する厚生労働省の取組について(統合医療プロジェクトチーム第1 回会合資料),2010 年2 月5 日 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0205-17a.pdf 2) 厚生労働省.これまでの議論の整理(「統合医療」のあり方に関する検討会資料),2013 年2 月22 日 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002vsub-att/2r9852000002vsy2.pdf 3) HyodoI,AmanoN,EguchiK,etal.Nationwidesurveyoncomplementaryandalternativemedicine incancerpatientsinJapan.JClinOncol2005;23:2645-54 4) HiraiK,KomuraK,TokoroA,etal.Psychologicalandbehavioralmechanismsinfluencingtheuse ofcomplementaryandalternativemedicine(CAM)incancerpatients.AnnOncol2008;19:49-55 5) HyodoI,EguchiK,NishinaT,etal.Perceptionsandattitudesofclinicaloncologistsoncomplemen- taryandalternativemedicine:anationwidesurveyinJapan.Cancer2003;97:2861-8 3 医療者の認識
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健康食品とは,法律上の定義はなく,「広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されているもの全般」を指している。そのうち,国の制度としては,「保健機能食品制度」がある(図3)。[保健機能食品]・特定保健用食品(個別許可制)・栄養機能食品(自己認証制)・機能性表示食品(届出制) 健康食品は,医薬品のような疾病の治療・予防等を目的とする表示や,身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的とする表示,つまり効能効果に関する表示はできない。健康食品に関する詳しい情報は下記のホームページを参照。・厚生労働省:「健康食品」のホームページ http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/index.html 1 サマリー 1 健康食品の概要 1 健康食品 一般食品※機能性の表示ができない 栄養補助食品,健康補助食品,栄養調整食品といった表示で販売されている食品は一般食品です。・・・・ ※機能性の表示ができる・・・ 医薬部外品 医薬品食品 保健機能食品特定保健用食品 栄養機能食品 機能性表示食品 図 3 保健機能食品の分類 (消費者庁『「機能性表示食品」って何?』より引用,http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1442.pdf)
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III章各論:クリニカル・エビデンス ・東京都福祉保健局:健康食品ナビ http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/anzen/supply/・国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報 https://hfnet.nih.go.jp/・厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業:「統合医療」情報発信サイト http://www.ejim.ncgg.go.jp/・内閣府食品安全委員会:「健康食品」に関する情報 https://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.html ・市場に流通している健康食品は製品ごとの品質にばらつきがある。・健康食品に未承認医薬品が混入しているケースがある。・健康食品と医薬品との相互作用について注意を要する。・健康食品による副作用(消化器症状,アレルギー症状など)について注意を要する。・法外な金額で販売されている製品がある。 なお,2015(平成27)年12 月8 日に内閣府食品安全委員会が健康食品について,下記のメッセージを公表している。「食品」であっても安全とは限りません。・健康被害のリスクはあらゆる食品にあります。身近な「健康食品」にも健康被 害が報告されています。・「天然」「ナチュラル」「自然」のものが,安全であるとは限りません。これは食 品全般に言えることです。・栄養素や食品についての評価は,食生活の変化や科学の進展などにより変わる ことがあります。健康に良いとされていた成分や食品が,その後,別の面から健康を害するとわかることも少なくありません。多量に摂ると健康を害するリスクが高まります。・錠剤・カプセル・粉末・顆粒の形態のサプリメントは,通常の食品よりも容易 に多量を摂ってしまいやすいので注意が必要です。ビタミン・ミネラルをサプリメントで摂ると過剰摂取のリスクがあります。・現在の日本では,通常の食事をしていればビタミン・ミネラルの欠乏症が問題 となることはまれであり,ビタミン・ミネラルをサプリメントで補給する必要性を示すデータは今のところありません。健全な食生活が健康の基本です。・むしろサプリメントからの摂り過ぎが健康被害を起こすことがあります。特に セレン,鉄,ビタミンA,ビタミンD には要注意です。「健康食品」は医薬品ではありません。品質の管理は製造者任せです。・病気を治すものではないので,自己判断で医薬品から換えることは危険です。・品質が不均一,表示通りの成分が入っていない,成分が溶けないなど,問題あ る製品もあります。成分量が表示より多かったために健康被害を起こした例があります。 2 使用上の一般的な注意事項
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誰かにとって良い「健康食品」があなたにとっても良いとは限りません。・摂取する人の状態や摂取量・摂取期間によって,安全性や効果も変わります。・限られた条件での試験,動物や細胞を用いた実験のみでは効果の科学的な根拠 にはなりません。口コミや体験談,販売広告などの情報を鵜呑みにせず,信頼のできる情報※をもとに,今の自分とって,本当に安全なのか,役立つのかを考えてください。※食品安全委員会,国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報,厚生労働省のインター ネットサイトなど また,すでに利用しているあるいは今後利用する健康食品があれば,「摂取期間」「摂取量」をメモなどの形で記録することも健康被害との因果関係を確認するために重要となる。メモの例は下記を参照のこと。・厚生労働省医薬食品局食品安全部:健康食品の正しい利用法 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf ・システマティックレビューにおいて,無作為化比較試験以外にもコホート研究,症例 対照研究の論文を対象としているものがある。・文献的考察のみを行ったレビュー論文が多い。・メタアナリシスにて評価されている論文が少ない。・臨床試験ごとに健康食品の素材の原材料,投与方法,投与量,投与期間などに違いが あり,メタアナリシスを行ううえで異質性への問題になっている。 前述の「2.使用上の一般的な注意事項」を参照。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Dietarysupplements」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年6 月1 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:140 件 DietarysupplementsAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta—analysis[pt]ORmeta— analysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] 3 論文報告(エビデンス)における課題 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
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III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 21 件 PubMed:140 件 抄録を用いたスクリーニングで108 件除外・対象者ががん以外:106 件・健康食品単独以外:0 件・その他:2 件 本文を用いたスクリーニングで11 件除外・対象者ががん以外:3 件・健康食品単独以外:0 件・その他:8 件 32 件
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1 痛 み 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 5 倦怠感 現時点で,本臨床疑問に限定したシステマティックレビューの報告はない。悪液質に関連する内容については,後述の「7)その他」を参照。 6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 7 その他 1 )体重減少本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Baldwin ら1)によるシステマティックレビューでは,栄養指導などの介入による12 件の無作為化比較試験のメタアナリシスでmeandifference(MD):1.86kg〔95%信頼区間(CI):0.25~3.47〕と体重増加を認めたが異質性が高かったため(I2=76%),7 件の無作為化比較試験で再解析(I2=0%)した結果,MD:0.31(95%CI:-0.60~1.21)と統計学的有意差はなくなった。Meji ら2)によるシステマティックレビューでは,ω—3 脂肪酸を用いた7 件の無作為化比較試験のうち3 件において体重増加を認めたが,4 件においてはプラセボと比較して統計学的有意差を認めなかった。以上より,栄養学的介入およびω—3 脂肪酸が,がん患者における体重減少の改善に有用であるとは結論づけられない。 2 )悪液質本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ries ら3)によるシステマティックレビューでは,3 件のシステマティックレビュー,27件の臨床試験(無作為化比較試験 10 件,比較臨床試験/ケースシリーズ 11 件,用量設 2 臨床疑問 健康食品は,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問1‒1
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III章各論:クリニカル・エビデンス 定試験4 件,その他2 件)にて,主にω‒3 脂肪酸による悪液質への影響について文献的考察を行っている。その結果,小規模の無作為化比較試験や比較臨床試験/ケースシリーズなどでは有効性が示唆されたものの,大規模の無作為化比較試験では有効性が確認できなかったとしている。有害事象については,腹部不快感,魚臭の噯気(げっぷ),魚の後味,悪心,下痢などの報告があったとされるが,重篤なものはなかったとしている。また,当該報告はEuropean Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)による悪液質ガイドライン計画の一環として取り組まれており,そのため著者らは,結論としてω‒3 脂肪酸の悪液質に対する推奨度を“weak negative GRADE recommendation”としている。Colomer ら4)によるシステマティックレビューでは,18 件の臨床試験(無作為化比較試験 9 件,比較臨床試験 9 件)にて,主にω‒3 脂肪酸による悪液質への影響について文献的考察を行っている。その結果,1.5 g/日超のω‒3 脂肪酸〔エイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)〕投与は悪液質の病態,症状の改善に寄与する可能性があることを示唆している。しかしながら,いずれのシステマティックレビューもメタアナリシスは行われていない。以上より,ω‒3 脂肪酸が,がん患者の悪液質を改善するとは結論づけられない。 1 不 安 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 抑うつ 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Baldwin ら1)によるシステマティックレビューでは,栄養指導などの介入による9 件の無作為化比較試験のメタアナリシスで,European Organization for Research and Treatment of Cancer global quality of life scale を用いたQOL 評価においてMD:24.02 (95%CI:14.3~33.72)と改善を認めたが,異質性が高かったため(I2=98%),5 件の無作為化比較試験で再解析(I2=27%)した結果,MD:5.53(95%CI:0.73~10.33)とMDは小さくなったものの統計学的有意差が認められた。以上より,栄養指導などの介入は,がん患者の全般的なQOL を改善する可能性がある。 健康食品は,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問1‒2 健康食品は,全般的なQOL を改善するか? ▶ ▶臨床疑問1‒3
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本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Alsanad ら5)によるシステマティックレビューでは,健康食品と医薬品との相互作用について検討した5 件の論文から,がん患者806 例のうち433 例(53.7%)が健康食品と医薬品を併用しており,その相互作用のリスクについては可能性のあるものを含め60例(13.9%)において167 件であることが明らかとされた。健康食品としては,ニンニク,緑茶,ヤドリギ,中国ハーブ,鉄,セント・ジョーンズ・ワート,ショウガ,朝鮮人参などが医薬品との相互作用に注意すべき素材として挙げられた。以上より,日常診療において患者の健康食品の使用状況を積極的に聴取するとともに,医薬品との相互作用にも留意することが求められる。 1 消化器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが6 件ある。Touchefeu ら6)によるシステマティックレビューでは,7 件の無作為化比較試験にて,治療中(放射線治療5 件,化学療法2 件)の患者へのプロバイオティクス投与による下痢改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,5 件(放射線治療3 件,化学療法2 件)において下痢の頻度,重症度を改善することが示唆されている。Henson ら7)によるシステマティックレビューでは,4 件の無作為化比較試験にて,放射線治療中の患者への栄養学的介入(脂肪,ラクトース,食物繊維の調整)による下痢改善への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,下痢のリスクは0.66 (95%CI:0.51~0.87,n=413,I2=14%)と低減した。ただし,晩期症状への影響については検討がなされていない。Ben‒Arye ら8)によるシステマティックレビューでは,放射線治療,化学療法中の患者への栄養学的介入(グルタミン3 件,メラトニン1 件,プロバイオティクス2 件)による下痢改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタミンで1 件,メラトニンで0 件,プロバイオティクスで2 件であった。Wedlake ら9)によるシステマティックレビューでは,16 件の無作為化比較試験にて,放射線治療中の患者への栄養学的介入(食事成分の調整4 件,脂肪調整4 件,食物繊維調整2 件,ラクテート減量1 件,プロバイオティクス5 件)による消化器症状(IBDQ, CTC,Bristol Stool,RTOG にて評価)改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,食事成分の調整で1 件,脂肪調整で3 件,食物繊維調整で1 件,ラクテート減量で0 件,プロバイオティクスで4 件であった。Gibson ら10)によるシステマティックレビューでは,放射線治療,化学療法で誘発される消化管の粘膜障害改善への影響に関して,網羅的に文献検索を行い,251 件の臨床研究で29 種類の介入(医薬品も含む)について文献的考察を行っている。その結果,健康食品については,放射線治療,化学療法による下痢予防に関して乳酸菌などのプロバイ 健康食品は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶ ▶臨床疑問1‒4 健康食品は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問1‒5
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III章各論:クリニカル・エビデンス オティクスが有効であること,放射線治療による直腸炎予防に関して高圧酸素療法が有効であることが示唆されている。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,4 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン1 件,メラトニン1 件,N‒アセチルシステイン1 件,セレン1 件)による下痢改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,いずれの研究においても統計学的有意差は認められなかった。以上より,プロバイオティクスは,がん患者の放射線治療に伴う下痢を軽減する可能性がある。 2 末梢神経障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Ben‒Arye ら8)によるシステマティックレビューでは,化学療法中の患者への栄養学的介入(ビタミンE 5 件,グルタミン1 件,グルタチオン5 件,メラトニン1 件)による末梢神経障害予防への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,ビタミンE で4 件,グルタミンで0 件,グルタチオンで3件,メラトニンで1 件であった。Schloss ら12)によるシステマティックレビューでは,化学療法で誘発される末梢神経障害改善への影響に関して,23 件の臨床研究で9 種類の介入(Mg とCa,ビタミンE,リポ酸,N‒アセチルシステイン,グルタチオン,グルタミン,アセチル‒L‒カルニチン,ビタミンB6,ω‒3 脂肪酸)について文献的考察を行っている。その結果,化学療法で誘発される末梢神経障害改善を推奨するだけの確固たる根拠は得られなかったとしている。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,18 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン9 件,メラトニン5 件,ビタミンE 3 件,混合物1 件,N‒アセチルシステイン1 件)による末梢神経障害改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタチオンで6 件,メラトニンで4 件,ビタミンE で3 件,混合物で0 件,N‒アセチルシステインで1 件であったがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品が,がん患者の化学療法で誘発される末梢神経障害を軽減するとは結論づけられない。 3 体重減少 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが5 件ある。Kiss ら13)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への栄養学的介入(カロリーや栄養素について調整した食事指導)による体重減少改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,いずれの試験においても介入群と対照群で統計学的有意差は認められなかったとしている。また,同じKiss ら13)によるシステマティックレビューにおいて,1 件のヒストリカルコントロール研究にて,放射線治療中の患者への栄養学的介入による体重減少改善について効果を認めたとしている(介入群vs 対照群:-0.56 kg vs -3.9 kg,p=0.027)。Henson ら7)によるシステマティックレビューでは,2 件の無作為化比較試験にて,放射線治療中の患者への栄養学的介入による体重減少改善への影響についてメタアナリシ
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スを行っている。その結果,介入群と対照群との間でMD:-0.57 kg(95%CI:-1.22~ 0.09,n=235,I2=29%)と統計学的有意差を認めなかった。Langius ら14)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,放射線化学療法中の頭頸部腫瘍患者への栄養学的介入(個別栄養指導vs 指導なし)による体重減少改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は2 件であった。Garg ら15)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,放射線治療中の頭頸部腫瘍患者への栄養学的介入(サスタカル®,エンシュア®,栄養指導)による体重減少改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は2 件(エンシュア®,栄養指導)であった。しかし,3 件のシステマティックレビューいずれにおいても,いわゆる健康食品を用いた臨床試験は対象となっていない。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン1 件,メラトニン2 件)による体重減少改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,すべての報告において改善することが示唆されたがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品が,がん患者の放射線治療あるいは化学療法中における体重減少の改善に有用であるとは結論づけられない。 4 術後合併症 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Elia ら16)によるシステマティックレビューでは,がん治療を目的とした手術において非経口栄養と比較して経腸栄養が,入院期間(無作為化比較試験 8 件),術後合併症(無作為化比較試験 4 件),術後感染症(無作為化比較試験 12 件),敗血症(無作為化比較試験 2 件)へ与える影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,入院期間(1.72 日短縮,95%CI:0.90~2.54),術後合併症(オッズ比:0.62,95%CI:0.50~0.77),術後感染症(オッズ比:0.69,95%CI:0.57~0.85),敗血症(敗血症スコア2.21 減少, 95%CI:1.49~2.92)と改善を認めた。He ら17)によるシステマティックレビューでは,大腸がんに対する待機手術の周術期においてプロバイオティクスあるいはシンバイオティクス投与が,下痢(無作為化比較試験 2 件),腸閉塞症状(無作為化比較試験 2 件),入院期間(無作為化比較試験 2 件),術後感染症(無作為化比較試験 4 件),術後肺炎(無作為化比較試験 3 件),敗血症(無作為化比較試験 2 件),創部感染(無作為化比較試験 4 件)に与える影響についてメタアナリシスを行っている(対照群は,ネオマイシン+術前腸管処置,経腸栄養,マルトデキストリンなど文献によって異なる)。その結果,下痢(オッズ比:0.29,95%CI: 0.14~0.62),腸閉塞症状(オッズ比:0.39,95%CI:0.19~0.78),術後感染症(オッズ比:0.39,95%CI:0.22~0.58),術後肺炎(オッズ比:0.32,95%CI:0.11~0.93)で改善を認めたものの,入院期間(MD:-1.06,95%CI:-2.71~0.60),敗血症(オッズ比: 0.28,95%CI:0.03~2.74),創部感染(オッズ比:0.66,95%CI:0.30~1.19)では改善は認めなかった。しかし,いずれの試験においても,いわゆる健康食品を用いた臨床試験は対象となっていない。以上より,健康食品が,がん患者の術後合併症を軽減するとは結論づけられない。
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III章各論:クリニカル・エビデンス 5 QOL 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Kiss ら13)によるシステマティックレビューでは,2 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への栄養学的介入(カロリーや栄養素について調整した食事指導)によるQOL 改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,いずれの試験においても介入群と対照群で統計学的有意差は認められなかったとしている。また,同じKissら13)によるシステマティックレビューにおいて,1 件のケースシリーズにて,放射線治療中の患者への栄養学的介入によるQOL 改善について一部の患者において効果を認めたとしている。Langius ら14)によるシステマティックレビューでは,2 件の無作為化比較試験にて,放射線化学療法中の頭頸部腫瘍患者への栄養学的介入(個別栄養指導vs 指導なし)によるQOL〔European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire‒C30(EORTC QLQ‒C30)にて評価〕改善への影響について,文献的考察を行っている。その結果,2 件とも有効性が示唆された。しかし,いわゆる健康食品を用いた臨床試験は対象となっていない。以上より,健康食品が,治療中におけるがん患者のQOL 改善に有用であるとは結論づけられない。 6 口腔粘膜障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ben‒Arye ら8)によるシステマティックレビューでは,化学療法中の患者への栄養学的介入(ビタミンE 1 件,グルタミン 14 件)による口腔粘膜障害予防あるいは改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,ビタミンE で1 件,グルタミンで7 件であったがメタアナリシスは行われていない。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,4 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン1 件,メラトニン2 件,ビタミンE 1 件)による体重減少改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタチオンで1 件,メラトニンで1 件,ビタミンE で1 件であったがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品が,がん患者の化学療法による口腔粘膜障害の予防あるいは軽減に有用であるとは結論づけられない。 7 血球減少 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,4 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント投与(グルタチオン1 件,メラトニン5 件,エラグ酸1 件,N‒アセチルシステイン1 件,セレン1 件)による血球減少改善への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタチオンで1 件,メラトニンで3 件,エラグ酸で1 件,N‒アセチルシステインで0 件(※介入群のほうが血球減少が多い傾向。統計学的有意差なし),セレンで1 件であったがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品が,がん患者の化学療法による血球減少の予防あるいは軽減に有
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用であるとは結論づけられない。 1 全生存率(total mortality) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Harris ら18)によるシステマティックレビューでは,5 件の無作為化比較試験にて,乳がん患者(診断後)へのビタミンC サプリメント投与による全生存率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡の相対リスクは0.81(95%CI:0.72~ 0.91,n=13,203)であった。Baldwin ら1)によるシステマティックレビューでは,がん患者への栄養指導などの介入による15 件の無作為化比較試験でメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡率のリスク比は,1.06(95%CI:0.92~1.22,I2=0%)と統計学的有意差を認めなかった。Buttigliero ら19)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験にて,進行前立腺がん患者へのビタミンD サプリメント投与による全死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡率のリスク比は1.07(95%CI:0.93~ 1.23,異質性:高)であった。Davies ら20)によるシステマティックレビューでは,がん患者への健康的な食生活の指導(無作為化比較試験 7 件),抗酸化サプリメント投与(無作為化比較試験 7 件),レチノール投与(無作為化比較試験 4 件)による全死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡のオッズ比は,健康的な食生活の指導で0.90(95%CI: 0.46~1.77,I2=18.6%),抗酸化サプリメント投与で1.01(95%CI:0.88~1.15,I2=0.0%),レチノール投与で0.97(95%CI:0.83~1.13,I2=0.0%)であった。以上より,健康食品の一部(ビタミンC)が,がん患者の全生存率の改善に寄与する可能性が示唆されるものの,今後さらなる研究が求められる。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Harris ら18)によるシステマティックレビューでは,6 件の無作為化比較試験にて,乳がん患者(診断後)へのビタミンC サプリメント投与による乳がん特異的死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡の相対リスクは0.85(95% CI:0.74~0.99,n=13,423)であった。Davies ら20)によるシステマティックレビューでは,がん患者への健康的な食生活の指導(無作為化比較試験 3 件),抗酸化サプリメント投与(無作為化比較試験 2 件),レチノール投与(無作為化比較試験 3 件)によるがん特異的死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,がん特異的死亡率のオッズ比は,健康的な食生活の指導で0.53(95%CI:0.16~1.79,I2=0.0%),抗酸化サプリメント投与で0.81(95%CI: 0.39~1.71,I2=70.1%),レチノール投与で0.92(95%CI:0.65~1.31,I2=0.0%)であった。以上より,健康食品の一部(ビタミンC)が,がん患者の原因特異的死亡率の改善に寄与する可能性が示唆されるものの,今後さらなる研究が求められる。 健康食品は,予後を改善するか? ▶ ▶臨床疑問1‒6
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III章各論:クリニカル・エビデンス 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Posadzki ら21)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者を対象とした8件の無作為化比較試験にて,さまざまな栄養素(カルチトリオール,ゲニステイン・ダイゼイン,ビタミンB 群,ビタミンC,ビタミンE,コエンザイムQ10,セレン,緑茶抽出物,イソフラボン,リコピン,亜鉛など)による腫瘍マーカー(prostatespecific antigen;PSA)への影響について文献的考察を行っている。その結果,これらの健康食品がPSA を低下させることを支持するエビデンスはないと結論づけている。Block ら11)によるシステマティックレビューでは,17 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント併用(グルタチオン7 件,メラトニン5 件,ビタミンE 1 件,混合物2 件,エラグ酸1 件,N—アセチルシステイン1 件)による奏効率への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタチオンで3 件,メラトニンで3 件,ビタミンE で0 件,混合物で0 件,エラグ酸で0 件,N—アセチルシステインで1 件であったがメタアナリシスは行われていない。以上より,健康食品の一部が,がん患者の化学療法の奏効率改善に寄与する可能性が示唆されるものの,今後さらなる研究が求められる。 (大野 智) 【文 献】 1) BaldwinC,SpiroA,AhernR,etal.Oralnutritionalinterventionsinmalnourishedpatientswith cancer:asystematicreviewandmeta-analysis.JNatlCancerInst2012;104:371-85 2) vanderMeijBS,vanBokhorst-devanderSchuerenMA,LangiusJA,etal.n-3PUFAsincancer, surgery,andcriticalcare:asystematicreviewonclinicaleffects,incorporation,andwashoutof oralorenteralcomparedwithparenteralsupplementation.AmJClinNutr2011;94:1248-65 3) RiesA,TrottenbergP,ElsnerF,etal.Asystematicreviewontheroleoffishoilforthetreatment ofcachexiainadvancedcancer:anEPCRCcachexiaguidelinesproject.PalliatMed2012;26:294- 304 4) ColomerR,Moreno-NogueiraJM,García-LunaPP,etal.N-3fattyacids,cancerandcachexia:a systematicreviewoftheliterature.BrJNutr2007;97:823-31 5) AlsanadSM,WilliamsonEM,HowardRL.Cancerpatientsatriskofherb/foodsupplement-drug interactions:asystematicreview.PhytotherRes2014;28:1749-55 6) TouchefeuY,MontassierE,NiemanK,etal.Systematicreview:theroleofthegutmicrobiotain chemotherapy-orradiation-inducedgastrointestinalmucositis-currentevidenceandpotential clinicalapplications.AlimentPharmacolTher2014;40:409-21 7) HensonCC,BurdenS,DavidsonSE,etal.Nutritionalinterventionsforreducinggastrointestinal toxicityinadultsundergoingradicalpelvicradiotherapy.CochraneDatabaseSystRev2013;11: CD009896 8) Ben-AryeE,PolliackA,SchiffE,etal.Advisingpatientsontheuseofnon-herbalnutritionalsupplementsduringcancertherapy:aneedfordoctor-patientcommunication.JPainSymptomManage2013;46:887-96 9) WedlakeLJ,ShawC,WhelanK,etal.Systematicreview:theefficacyofnutritionalinterventions tocounteractacutegastrointestinaltoxicityduringtherapeuticpelvicradiotherapy.Aliment PharmacolTher2013;37:1046-56 10) GibsonRJ,KeefeDM,LallaRV,etal;MucositisStudyGroupoftheMultinationalAssociationof SupportiveCareinCancer/InternationalSocietyofOralOncology(MASCC/ISOO).Systematic
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reviewofagentsforthemanagementofgastrointestinalmucositisincancerpatients.Support CareCancer2013;21:313-26 11) BlockKI,KochAC,MeadMN,etal.Impactofantioxidantsupplementationonchemotherapeutic toxicity:asystematicreviewoftheevidencefromrandomizedcontrolledtrials.IntJCancer 2008;123:1227-39 12) SchlossJM,ColosimoM,AireyC,etal.Nutraceuticalsandchemotherapyinducedperipheralneuropathy(CIPN):asystematicreview.ClinNutr2013;32:888-93 13) KissNK,KrishnasamyM,IsenringEA.Theeffectofnutritioninterventioninlungcancerpatients undergoingchemotherapyand/orradiotherapy:asystematicreview.NutrCancer2014;66:47-56 14) LangiusJA,ZandbergenMC,EerensteinSE,etal.Effectofnutritionalinterventionsonnutritional status,qualityoflifeandmortalityinpatientswithheadandneckcancerreceiving(chemo) radiotherapy:asystematicreview.ClinNutr2013;32:671-8 15) GargS,YooJ,WinquistE.Nutritionalsupportforheadandneckcancerpatientsreceivingradiotherapy:asystematicreview.SupportCareCancer2010;18:667-77 16) EliaM,VanBokhorst-devanderSchuerenMA,GarveyJ,etal.Enteral(oralortubeadministration)nutritionalsupportandeicosapentaenoicacidinpatientswithcancer:asystematicreview. IntJOncol2006;28:5-23 17) HeD,WangHY,FengJY,etal.Useofpro-/synbioticsasprophylaxisinpatientsundergoing colorectalresectionforcancer:ameta-analysisofrandomizedcontrolledtrials.ClinResHepatol Gastroenterol2013;37:406-15 18) HarrisHR,OrsiniN,WolkA.VitaminCandsurvivalamongwomenwithbreastcancer:ametaanalysis.EurJCancer2014;50:1223-31 19) ButtiglieroC,MonaghedduC,PetroniP,etal.PrognosticroleofvitaminDstatusandefficacyof vitaminDsupplementationincancerpatients:asystematicreview.Oncologist2011;16:1215-27 20) DaviesAA,DaveySmithG,HarbordR,etal.Nutritionalinterventionsandoutcomeinpatients withcancerorpreinvasivelesions:systematicreview.JNatlCancerInst2006;98:961-73 21) PosadzkiP,LeeMS,OnakpoyaI,etal.Dietarysupplementsandprostatecancer:asystematic reviewofdouble-blind,placebo-controlledrandomisedclinicaltrials.Maturitas2013;75:125-30
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III章各論:クリニカル・エビデンス マッサージとは,主に手を用いて身体表面に「さする」「もむ」「圧する」などの物理的刺激を与え,生体の変調を整える方法である。ヨーロッパで発達したリフレクソロジー,日本の按摩や指圧,インドのヘッドマッサージなど,世界各地でさまざまな種類のマッサージが存在する。マッサージの手技として軽擦法,強擦法,揉捏法,振動法,叩打法,圧迫法などがある。マッサージの作用機序として,多くの仮説が提示されており,主に,1疼痛軽減のゲートコントロール理論,2副交感神経の活動の増加,3セロトニンとエンドルフィンの増加,4血流量の増加,5リンパ循環の改善,6信頼関係の構築,などが挙げられている。これらの仮説は十分に検証されていないが,マッサージはがん患者の痛みや不安などの苦痛症状を軽減するために,主に緩和ケア病棟などで活用されている。 ・通常のがん治療の代用として使用すべきでない。・熟練したセラピストが行えば,安全で最大の効果が得られる。・凝固障害,転移性骨腫瘍の場合は,軽い圧力(やさしくなでるなど)で行う。・炎症部位,出血傾向,開放創,放射線皮膚炎の場合は,その部位への直接的なマッサー ジを避ける。 ・サンプルサイズに限界があり,大規模の無作為化比較試験が少ない。・がん患者の背景が臨床試験ごとに異なる。・マッサージの部位,手技,強度,時間,頻度,期間など,介入方法が臨床試験ごとに 異なる。・長期的な介入が少なく短期的介入が多い。・比較対照の設定が臨床試験ごとに異なる。・評価方法(測定尺度など)が多様で臨床試験ごとに異なる。・マッサージの専門家による相違が検討されていない。・盲検化が困難である。 1 サマリー 1 マッサージの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 2 マッサージ
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マッサージによる副作用として,凝固障害時(血小板減少,ワルファリン,ヘパリン,アスピリン療法)の出血,転移性骨腫瘍時の骨折,開放創,放射線皮膚炎時の痛みの増加,感染が出現する可能性があるので留意する。その他,一般的に,急性炎症症状(筋肉や関節,皮膚疾患など)が現れている部位への手技,衰弱や消耗性の疾患,心臓疾患や動脈硬化症,静脈血栓症,骨折や靱帯などの損傷部位,その他伝染性の疾患に対しては禁忌である。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Massage」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年9 月11 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:24 件 MassageAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti]OR systematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件 4 件 PubMed:24 件 5 件抄録を用いたスクリーニングで19 件除外・対象者ががん以外:4 件・マッサージ単独以外:12 件・アロマテラピー・マッサージ:3 件 本文を用いたスクリーニングで1 件除外・アロマテラピー・マッサージ:1 件
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III章各論:クリニカル・エビデンス 1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,痛み(4 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Kim ら2)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(1 件は化学療法中)を対象としたリフレクソロジーの介入効果に関する無作為化比較試験(1 件)と比較臨床試験(3 件)の計4 件(281 例:範囲28~183 例)の文献的考察を行っている。その結果, 1 件の大規模な無作為化比較試験で,リフレクソロジー介入群は対照群と比較して,痛みの軽減に有効であった。リフレクソロジーの介入時間は1 回20~60 分,期間は1 回~ 8 週間であった。Lee ら3)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(化学療法,放射線治療中を含む)を対象に,マッサージの介入効果に関する6 件(250 例:範囲6~115 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,1 件のみ痛みの軽減に有効であったが,他の1 件は有効でなかった。大規模な無作為化比較試験(1 件)では身体症状の苦痛の軽減がみられた。マッサージの介入時間は10~30 分,期間は3 日~5 週間であった。マッサージ方法はスウェーデン式(3件)とエフルラージュ(2 件),バックストローク(1 件)であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージの介入効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,痛み(4 件)の軽減には有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者の痛みの軽減に有用かもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 2 消化器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,悪心(2 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間 2 臨床疑問 マッサージは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問2‒1
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は1 日~8 週間であった。Kim ら2)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(1 件は化学療法中)を対象としたリフレクソロジーの介入効果に関する無作為化比較試験(1 件)と比較臨床試験(3 件)の計4 件(281 例:範囲28~183 例)の文献的考察を行っている。その結果, 1 件の大規模な無作為化比較試験で,リフレクソロジー介入群は対照群と比較して,悪心・嘔吐の軽減に有効であった。リフレクソロジーの介入時間は1 回20~60 分,期間は1 日~8 週間であった。以上より,マッサージは,がん患者の悪心・嘔吐の軽減に有用かもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,倦怠感(1 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージ効果をみた18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,倦怠感(5 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるかもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 7 その他(コルチゾール) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージ効果をみた18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,コルチゾール(4 件)の改善には有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど
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III章各論:クリニカル・エビデンス 多様であった。以上より,マッサージは,がん患者のコルチゾールの改善に有用ではない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,不安(5 件),抑うつ(3 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Lee ら3)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(化学療法,放射線治療中を含む)を対象にマッサージの介入効果に関する6 件(250 例:範囲6~115 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,2 件が抑うつの軽減に効果があり,3 件は効果なしであった。不安の軽減効果として,1 件のみ短期間の不安の軽減がみられたが2 件は効果なしであった。マッサージの介入時間は1回10~30分,期間は3日~5週間であった。マッサージ方法はスウェーデン式(3 件)とエフルラージュ(2 件),バックストローク(1 件)であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージの介入効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,抑うつ(8 件),不安(8 件)の軽減に有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~ 6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者の不安や抑うつの軽減に有用であるかもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 2 その他(ストレス,怒り) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,ストレス(2 件)の軽減に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージ効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,怒り(4 件)の軽減には有 マッサージは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問2‒2
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効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者のストレスの軽減に有用であるかもしれないが,怒りに関しては有用ではない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Ernst1)によるシステマティックレビューでは,さまざまながん患者(化学療法,放射線治療,骨髄移植中を含む)を対象としたマッサージの介入効果(アロマテラピー・マッサージやリフレクソロジーは除く)に関する14 件(1,123 例:範囲6~380 例)の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,QOL(1 件)の改善に有効であった。マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間は1 日~8 週間であった。Kim ら2)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(1 件は化学療法中)を対象としたリフレクソロジーの介入効果に関する無作為化比較試験(1 件)と比較臨床試験(3 件)の計4 件(281 例:範囲28~183 例)の文献的考察を行っている。その結果, 1 件の大規模無作為化比較試験で,リフレクソロジー介入群は対照群と比較して,QOLの改善に有効であった。リフレクソロジーの介入時間は1 回20~60 分,期間は1 日~8週間であった。Lee ら3)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者(化学療法,放射線治療中を含む)を対象にマッサージの介入効果に関する6 件(250 例:範囲6~115 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,QOL として,1 件は痛みや乳がん患者の症状緩和に効果があったが,残りの1 件は効果がなかった。マッサージの介入時間は10~30 分,期間は3 日~5 週間であった。マッサージ方法はスウェーデン式(3 件)とエフルラージュ(2 件),バックストローク(1 件)であった。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージの介入効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,QOL(3 件)の改善には有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者のQOL の改善に有用であるかもしれない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 マッサージは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問2‒3
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III章各論:クリニカル・エビデンス 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Pan ら4)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象にマッサージの介入効果に関する18 件の無作為化比較試験(950 例:範囲14~134 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,マッサージ介入群は対照群と比較して,上肢リンパ浮腫(3件)の改善に有効でなかった。マッサージの介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6カ月であった。マッサージ方法はスウェーデン式,リフレクソロジー,リンパマッサージなど多様であった。以上より,マッサージは,がん患者のリンパ浮腫の軽減に有用ではない。しかし,研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできない。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (神里みどり,宮内貴子) 【文 献】 1) ErnstE.Massagetherapyforcancerpalliationandsupportivecare:asystematicreviewofrandomisedclinicaltrials.SupportCareCancer2009;17:333-7 2) KimJI,LeeMS,KangJW,etal.Reflexologyforthesymptomatictreatmentofbreastcancer:a systematicreview.IntegrCancerTher2010;9:326-30 3) LeeMS,LeeEN,ErnstE.Massagetherapyforbreastcancerpatients:asystematicreview.Ann Oncol2011;22:1459-61 4) PanYQ,YangKH,WangYL.Massageinterventionsandtreatment-relatedsideeffectsofbreast cancer:asystematicreviewandmeta-analysis.IntJClinOncol2014;19:829-41 マッサージは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問2‒4 マッサージは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問2‒5 マッサージは,予後を改善するか? ▶臨床疑問2‒6
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アロマテラピー(アロマセラピー)は植物の花,葉,種子,果皮,樹脂などから抽出された精油(エッセンシャルオイル)を用いて,疾病の治療や予防,心身の健康やリラクセーション,ストレスの解消などを目的とする療法である。精油を使った医療は,アラビアや欧州で昔から行われている伝統医学・民間療法の一つである。植物療法あるいはハーブ医学から派生したもので,錬金術と深く関係して発展した。アロマテラピーという用語は,1930 年頃にフランスの調香師ルネ=モーリス・ガットフォセが,アロマ(芳香)とテラピー(療法)を組み合わせて作った造語である。アロマテラピーの利用方法として,アロマポットなどを使用し香りを楽しむ芳香浴,入浴や足浴時に精油を使用する沐浴法・吸入法,精油を植物油(キャリアオイル)などで希釈して行うマッサージ法などがある。アロマテラピーの資格は,公的資格ではなく各団体が独自の基準を設けて任意で与える民間資格である。また,日本において医薬品として日本薬局方に収載されている精油はハッカ油など少数のみで,多くの精油が雑貨扱いとなっている。近年,がん患者のアロマテラピー・マッサージの利用は増加しており,痛みや倦怠感などの身体的苦痛や,不安や抑うつといった精神的苦痛,生活の質(QOL)の改善などの効果が報告されているが,研究の質が低くアロマテラピー・マッサージの有用性が証明されているとはいえない。 ・精油は直接肌に塗布せず希釈して使用する。・パッチテストを行うことが望ましい。・光感作性のある精油(柑橘系など)を使用した場合は直射日光を避ける。・目には使用しない。・妊娠中(特に初期)は,ケトンやホルモン類似物質を含むものは避ける。・経口投与は専門医の指示のもとに行う。・禁忌(高血圧,てんかんなど)のある患者への使用は注意が必要。・同一の精油の連用を避ける。・精油の保管は高温多湿を避け冷暗所で行う。・アロマテラピー・マッサージは,局所の悪性腫瘍や炎症部位,放射線治療部位への施 行,出血傾向のある場合などは避ける。 1 サマリー 1 アロマテラピー・マッサージの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 アロマテラピー・マッサージ
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III章各論:クリニカル・エビデンス ・がん患者の背景が臨床試験ごとに異なる。・アウトカムの評価方法が臨床試験ごとに異なる。・大規模試験が少ない。・長期的な効果を調査した論文が少ない。・精油の品質,マッサージの部位や手技,時間など,アロマテラピー・マッサージの方 法が研究ごとに異なる。・アロマセラピストの教育が地域によって異なる。・盲検化が難しい。 前述の「2.使用上の一般的な注意事項」を参照。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Aromatherapy」「Massage」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年5 月19 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:5 件 AromatherapyANDMassageAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]OR meta-analysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ▶無作為化比較試験:10 件 AromatherapyANDMassageAND(RandomizedControlledTrial[pt]ORRandomizedControlled Trial[ti]ORRandomisedControlledTrial[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 3 論文報告(エビデンス)における課題 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件 3 件 PubMed:5 件 本文,抄録を用いたスクリーニングで2 件除外・マッサージのみ:1 件・重複論文:1 件
p.211
●文献検索とスクリーニングのフローチャート(無作為化比較試験) 8 件 PubMed:10 件 本文を用いたスクリーニングで2 件除外・研究方法の検討:1 件・リフレクソロジーの評価:1 件
p.212
III章各論:クリニカル・エビデンス 1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件,無作為化比較試験が3 件ある。Fellowes ら1),Wilkinson ら2)によるシステマティックレビューでは,短期的な疼痛緩和を示していたが,ほとんどの試験で研究の質が低いことが指摘されている。アロマテラピー・マッサージと精油を使用しないマッサージ,または通常の支持療法のみを比較する研究が多く,短期的な疼痛緩和のみの評価で,長期的な効果が明らかとなっていない。また,アロマテラピー・マッサージのグループだけでなくマッサージのグループでも症状の改善が認められ,アロマテラピーの上乗せ効果が示されない試験があり,すべてのレビューで質の高い長期的な効果を検証する大規模試験が必要であると結論している。Khiewkhern ら3)による無作為化比較試験では,化学療法中の大腸がん患者66 例を対象に,タイ式アロマテラピー・マッサージと通常の支持療法を1 週間実施し比較を行っている。支持療法に比較してアロマテラピー・マッサージ後で痛みの有意な改善(MD:-1.2,95%CI:-1.8~-0.9,p=0.001)がみられた。タイ式アロマテラピー・マッサージは大腸がんの化学療法中の痛みを軽減する可能性があるが,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Soden ら4)による無作為化比較試験では,緩和ケアを受けているがん患者42 例を対象に,週1 回30 分で4 週間の植物油(キャリアオイル)を使用したマッサージを受けるマッサージ群,ラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したマッサージを受けるアロマテラピー・マッサージ群,介入を行わない対照群での比較を行っている。マッサージ群,アロマテラピー・マッサージ群ともに2 回目の介入後に有意な改善がみられたが,最終的には統計学的有意差が認められず,長期的な痛みの改善は認められなかったと結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。痛みについて,アロマテラピー・マッサージ群と対照群との比較で統計学的有意差はみられなかったと結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の痛みを軽減させる可能性は示唆されるが,有用であるとは結論づけられない。 2 消化器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件,無作為化比較試験が2 件ある。Fellowes ら1),Wilkinson ら2)によるシステマティックレビューでは,短期的な悪心の緩和を示していたが,研究の質が低いことが指摘されており,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを 2 臨床疑問 アロマテラピー・マッサージは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問3‒1
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4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。悪心・嘔吐で,アロマテラピー・マッサージ群と対照群との比較で統計学的有意差はみられなかったと結論している。Lai ら6)による進行期がん患者の便秘に対するアロマテラピー・マッサージの有効性に対する無作為化比較試験では,進行期がん患者45 例を対象に,毎日15~20 分,5 日間の腹部アロマテラピー・マッサージ,毎日15~20 分5 日間の腹部マッサージ,介入を行わない対照群の3 群で比較を行っている。アロマテラピー・マッサージによりConstipation Assessment Scale(CAS),McGill quality of life for Hong Kong Chinese(MQOL— HK)得点を腹部マッサージ,対照群に比較して有意に低下させたが,少人数での検討であり大規模試験が必要であると結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の消化器症状の軽減に有用であるとは結論づけられない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはないが,無作為化比較試験が2 件ある。Khiewkhern ら3)による無作為化比較試験では,化学療法中の大腸がん患者66 例を対象に,タイ式アロマテラピー・マッサージと通常の支持療法を1 週間実施し比較を行っている。支持療法に比較してアロマテラピー・マッサージ後で倦怠感の有意な改善(MD:-1.3,95%CI:-1.9~-0.8,p=0.001)がみられた。タイ式アロマテラピー・マッサージは,大腸がんの化学療法中の倦怠感を軽減する可能性があるが,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。倦怠感で,アロマテラピー・マッサージ群と対照群との比較で統計学的有意差はみられなかったと結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論づけられない。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはないが,無作為化比較試験が1 件ある。Soden ら4)による無作為化比較試験では,緩和ケアを受けているがん患者42 例を対象に,週1 回30 分で,4 週間のキャリアオイルを使用したマッサージを受けるマッサージ
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III章各論:クリニカル・エビデンス 群,ラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したマッサージを受けるアロマテラピー・マッサージ群,介入を行わない対照群でThe Verran and Snyder—Halpern(VSH) sleep scale を用い比較を行っている。アロマテラピー・マッサージ群,マッサージ群で対照群に比較して有意な改善がみられたがアロマテラピーの効果は示されず,より大規模で質の高い試験が必要であると結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の睡眠障害を軽減させる根拠はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件,無作為化比較試験が4 件ある。Boehm ら7),Fellowes ら1),Wilkinson ら2)によるシステマティックレビューでは,短期的な不安・抑うつの緩和を示していたが,ほとんどの試験で研究の質が低いことが指摘されており,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Khiewkhern ら3)による無作為化比較試験では,化学療法中の大腸がん患者66 例を対象に,タイ式アロマテラピー・マッサージと通常の支持療法を1 週間実施し比較を行っている。支持療法に比較してアロマテラピー・マッサージ後でストレス・不安の有意な改善(MD:-0.4,95%CI:-1.2~-0.1,p=0.03)がみられた。タイ式アロマテラピー・マッサージは,大腸がんの化学療法中のストレス・不安を軽減する可能性があるが,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Serfaty ら8)による無作為化比較試験では,腫瘍科外来通院中のthe Hospital Anxiety and Depression scale(HADS) 8 点以上のがん患者39 例を対象に,週に1 回8 回の認知行動療法を行う認知行動療法群と,資格を有するアロマセラピストが実施する週に1 回8 回のアロマテラピー・マッサージを実施するアロマテラピー・マッサージ群で比較を行っている。the Profile of Mood States(POMS)のTotal Mood,depression,anxiety得点は両方の介入で有意に改善がみられたが,2 群間で差は認められなかったと結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。アロマテラピー・マッサージ群では,対照群との比較で6 週間後は不安・抑うつで統計学的に有意な改善(オッズ比:1.4,95%Cl:1.1~1.9,p=0.01)がみられたが,10 週間後では統計学的有意差(オッズ比:1.3,95%Cl:0.9~1.7,p=0.1)はみられず,アロマテラピー・マッサージの長期的な効果は示されなかったと結論している。Soden ら4)による無作為化比較試験では,緩和ケアを受けている進行期がん患者42 例を対象に,週1 回30 分,4 週間のキャリアオイルを使用したマッサージ群,ラベンダー アロマテラピー・マッサージは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問3‒2
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を加えたキャリアオイルを使用したアロマテラピー・マッサージ群,介入を行わない対照群での比較を行っているが,両群ともに不安の長期的な改善が認められなかった。抑うつはマッサージ群で有意な改善が認められ,アロマテラピーの上乗せ効果は示されなかったと結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の不安・抑うつの軽減に有用であるとは結論づけられない。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件,無作為化比較試験が3 件ある。Fellowes ら1)によるシステマティックレビューでは,3 件の無作為化比較試験があり,マッサージ群がQOL を改善させた試験が1 件,アロマテラピー・マッサージ群で改善がみられたがマッサージ群との比較で統計学的有意差が認められなかった試験が1 件,変化がみられなかった試験が1 件であった。研究の質が低いことが指摘されており,より大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。Wilcock ら9)による無作為化比較試験では,緩和ケアデイケアセンターに通院する患者46 例を対象に,通常のデイケアのみの対照群と,週に1 回30 分間,4 週間のアロマテラピー・マッサージ(スイートアーモンドオイルにラベンダー,カモミールを1%でブレンドしたオイルを使用し,背中,頸,肩,手を患者の希望によりマッサージ)を行うアロマテラピー・マッサージ群とを比較している。両群ともQOL の改善が認められたが2 群間で統計学的有意差は認められず,アロマテラピーの上乗せ効果は確認できなかったと結論している。Soden ら4)による無作為化比較試験では,緩和ケアを受けているがん患者42 例を対象に,週1 回30 分,4 週間のキャリアオイルを使用したマッサージ群,ラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したアロマテラピー・マッサージ群,介入を行わない対照群での比較を行っている。両群ともQOL の長期的な改善が認められなかったと結論している。Wilkinson ら5)による無作為化比較試験では,がん患者288 例を対象に,通常の支持療法のみ行う対照群と,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを4 週間行うアロマテラピー・マッサージ群との比較を行っている。QOL でアロマテラピー・マッサージ群と対照群との比較で統計学的有意差はみられなかったと結論している。以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者のQOL の改善に有用であるとは結論づけられない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件,無作為化比較試験が2 件ある。 アロマテラピー・マッサージは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問3‒3 アロマテラピー・マッサージは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問3‒4
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III章各論:クリニカル・エビデンス Boehm ら7)によるシステマティックレビューでは,精油の使用による有害事象として接触皮膚炎や光毒性による皮膚反応,可逆性の女性化乳房を起こした報告が挙げられている。Wilcock ら9)による無作為化比較試験では,スイートアーモンドオイルにラベンダー,カモミールを1%でブレンドしたオイルを使用したアロマテラピー・マッサージ後の発疹が1 件報告されている。Barclay ら10)によるリンパ浮腫の苦痛に対するアロマテラピー・マッサージの有効性について検討した無作為化比較試験では,有害事象として皮膚反応が1 件報告されている。小麦胚芽油にフェンネル,ゼラニウム,ブラックペッパー,ジュニパーを使用したマッサージクリームを使用していたが,精油の希釈濃度や混合比については記載されていなかった。いずれも重篤な有害事象は報告されていない。以上より,アロマテラピー・マッサージによる有害事象は軽微であると考えられる。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはないが,無作為化比較試験が2 件ある。Stringer ら11)による無作為化比較試験では,隔離された血液がん患者39 例を対象に,アロマテラピー・マッサージ群,マッサージ群,休息群の3 群で,ストレスレベルの低下に対する比較検討を実施している。3 群ともベースラインに比較して30 分後にコルチゾール値(p=0.002)とプロラクチン値(p=0.0031)が有意に低下していた。アロマテラピー・マッサージ群とマッサージ群では,休息群に比較してコルチゾール値とプロラクチン値が有意に低下していたが,アロマテラピー・マッサージ群とマッサージ群間で統計学的有意差は認められなかった。European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire—C30(EORTC QLQ—C30)では,「休息が必要である」の項目でアロマテラピー・マッサージ群,マッサージ群は休息群に比較して有意に低下,半構造化面接でも介入群でリラックス気分が低下していた。この試験はパイロットスタディであり,隔離中の血液がん患者に対するマッサージは,コルチゾールを低下させ,心理的に良好な状態にする可能性が示唆されたと結論している。Khiewkhern ら3)による無作為化比較試験では,化学療法中の大腸がん患者66 例を対象に,週に1 回ごとに3 回のタイ式アロマテラピー・マッサージを行うアロマテラピー・マッサージ群と,通常の支持療法との比較を実施している。支持療法群に比較してアロマテラピー・マッサージ群で介入後のリンパ球値が有意に高かった(MD:218 cells/μL, 95%CI:20~575,p=0.04)。アロマテラピー・マッサージ群で痛み(MD:-1.2, 95%CI:-1.8~-0.9,p=0.001),倦怠感(MD:-1.3,95%CI:-1.9~-0.8,p= 0.001),ストレス・不安(MD:-0.4,95%CI:-1.2~-0.1,p=0.03)で有意な改善がみられたが,悪心と抑うつは統計学的有意差が認められなかった。タイ式のアロマテラピー・マッサージは,化学療法中の大腸がん患者のリンパ球を増やすことで免疫機能に有益であり,痛み,倦怠感,ストレス・不安を改善する可能性があるが,大規模で長期的な効果を検証する試験が必要であると結論している。 アロマテラピー・マッサージは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問3‒5
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以上より,アロマテラピー・マッサージは,がん患者の検査・治療等に伴う有害事象の軽減に有用であるとは結論づけられない。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 (宮内貴子) 【文 献】 1) FellowesD,BarnesK,WilkinsonSS.WITHDRAWN:Aromatherapyandmassageforsymptom reliefinpatientswithcancer.CochraneDatabaseSystRev2008;4:CD002287 2) WilkinsonS,BarnesK,StoreyL.Massageforsymptomreliefinpatientswithcancer:systematic review.JAdvNurs2008;63:430-9 3) KhiewkhernS,PromthetS,SukprasertA,etal.Effectivenessofaromatherapymassagewithlight Thaimassageforcellularimmunityimprovementincolorectalcancerpatientsreceivingchemotherapy.AsianPacJCancerPrev2013;14:3903-7 4) SodenK,VincentK,CraskeS,etal.Arandomizedcontrolledtrialofaromatherapymassagein hospicesetting.PalliatMed2004;18:87-92 5) WilkinsonS,LoveSB,WestcombeAM,etal.Effectivenessofaromatherapymassageinthemanagementofanxietyanddepressioninpatientswithcancer:amulticenterrandomizedcontrolled trial.JClinOncol2007;25:532-9 6) LaiTK,CheungMC,LoCK,etal.Effectivenessofaromamassageonadvancedcancerpatients withconstipation:apilotstudy.ComplementTherClinPract2011;17:37-43 7) BoehmK,BüssingA,OstermannT.Aromatherapyasanadjuvanttreatmentincancercare―a descriptivesystematicreview.AfrJTraditComplementAltemMed2012;9:503-18 8) SerfatyM,WilkinsonS,FreemanC,etal.TheToTstudy:helpingwithTouchorTalk(ToT):a pilotrandomisedcontrolledtrialtoexaminetheclinicaleffectivenessofaromatherapymassage versuscognitivebehaviourtherapyforemotionaldistressinpatientsincancer/palliativecare. Psychooncology2012;21:563-9 9) WilcockA,MandersonC,WellerR,etal.Doesaromatherapymassagebenefitpatientswithcancer attendingaspecialistpalliativecaredaycentre?PalliatMed2004;18:287-90 10) BarclayJ,VesteyJ,LambertA,etal.Reducingthesymptomsoflymphoedema:istherearolefor aromatherapy?EurJOncolNurs2006;10:140-9 11) StringerJ,SwindellR,DennisM.Massageinpatientsundergoingintensivechemotherapyreduces serumcortisolandprolactin.Psychooncology2008;17:1024-31 アロマテラピー・マッサージは,予後を改善するか? ▶臨床疑問3‒6
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III章各論:クリニカル・エビデンス 運動とは,体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施されるもので,継続性のある身体活動を指す。身体活動は,骨格筋の収縮によって生じる身体の動きで,エネルギー消費を増加させる。がん患者に対する運動療法の効果として,倦怠感などの苦痛症状の緩和,身体機能やQOL の向上などがある。既存のガイドラインでは,全身持久力の改善を目的とした有酸素運動,さらに四肢や体幹の筋力増強を目的とした抵抗運動の有効性が示されている。一般に成人(18~64 歳)に対して,中等度の身体活動を週150 分,高強度の有酸素運動を週75 分,中~高強度の抵抗運動を週2 回以上,行うことが推奨されている。65 歳以上の高齢者においても成人と同等の運動が推奨されている。 [がん患者の運動療法に関する主なガイドライン] 1) Schmitz KH, Courneya KS, Mattews C, et al;American College of Sports Medicine. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010;42:1409—26 2) Rock CL, Doyle C, Demark—Wahnefried, et al. Nutrition and physical activity guidelines for cancer survivors. CA Cancer J Clin 2012;62:243—74 3) 日本リハビリテーション医学会,がんのリハビリテーションガイドライン策定委員 会 編.がんのリハビリテーションガイドライン,金原出版,2013 4) 日本がんリハビリテーション研究会 編.がんのリハビリテーションベストプラク ティス,金原出版,2015 ・ 抗がん剤の点滴中や治療後24 時間以内は運動を避ける。・ がん治療による重篤な貧血がある場合は,改善してから行う。・ がん治療による白血球減少の場合は,感染予防のため公共施設での運動を避ける。・ 放射線治療中には,皮膚防護のためプール(塩素含む)の使用を避ける。・ 高齢者の場合,骨疾患(重篤な骨粗鬆症や骨転移など)に注意する。 ・ がん患者の背景が臨床試験ごとに異なる。・ がんの種類・病期,治療中・後によって,研究報告にばらつきがある。 1 サマリー 1 運動療法の概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 4 運動療法
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・ 運動の種類,強度,時間,頻度,期間など介入方法が多様である。・ 比較対照の設定が臨床試験ごとに異なる。・ アウトカムの評価方法が臨床試験ごとに異なる。・ 多様な評価指標が使用されている。・ 運動の専門家による指導と自主的運動の効果に相違がある。 [がん患者におけるリハビリテーションの中止基準]1,2) 1 血液所見:ヘモグロビン7.5 g/dL 以下,血小板50,000/μL 以下,白血球3,000/μL 以下2骨転移3有腔内臓(腸・膀胱・尿管),血管,脊髄の圧迫4 持続する痛み,呼吸困難,運動障害を伴う胸膜・心囊・後腹膜への浸出液貯留5中枢神経系の機能低下,意識障害,頭蓋内圧亢進6低・高カリウム血症,低ナトリウム血症,低・高カルシウム血症7起立性低血圧症8110 回/分以上の頻脈,心室性不整脈938.3°C以上の発熱 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Exercise」[検索期間]2012 年1 月1 日~2014 年12 月31 日(システマティックレビュー論文が多 数のため検索期間を限定) [検 索 日]2015 年6 月30 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:128 件 Exercise AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2012/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
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III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 【文 献】1) 日本体力医学会体力科学編集委員会 監訳.運動処方の指針―運動負荷試験と運動プログラム(原著第8 版),南江堂,2011 2) 日本がんリハビリテーション研究会 編.がんのリハビリテーションベストプラクティス,金原出版,2015 3) 日本リハビリテーション医学会,がんのリハビリテーションガイドライン策定委員会 編.がんのリハビリテーションガイドライン,金原出版,2013 4) Schmitz KH, Courneya KS, Mattews C, et al; American College of Sports Medicine. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010; 42: 1409-26 5) Rock CL, Doyle C, Demark-Wahnefried, et al. Nutrition and physical activity guidelines for cancer survivors. CA Cancer J Clin 2012; 62: 243-74 6) American College of Sports Medicine. ACSM’S Guidelines for Exercise Testing and Prescription, 9th ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2014 7) 伊藤壽記,上島悦子 監訳.がんの統合医療,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2010 8) 厚生労働省.健康づくりのための身体活動基準,2013 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple.html(アクセス日: 2015 年3 月) PubMed:128 件抄録を用いたスクリーニングで73 件除外・対象者ががん以外:37 件・運動療法以外:18 件・運動療法単独以外:18 件 55 件 本文を用いたスクリーニングで6 件除外・対象者ががん以外:2 件・運動療法以外:3 件・重複論文:1 件 49 件
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1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Carvalho ら1)によるコクランのシステマティックレビューでは,頭頸部がんの治療による肩の機能不全に対する運動の介入効果を比較した3 件の無作為化比較試験(104 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,2 件の研究においては漸進的抵抗運動が,肩の痛みや機能障害,関節可動域の改善に有効であった。Tatham ら2)によるシステマティックレビューでは,肩の痛みを有する乳がん治療中の患者を対象に,運動の介入効果を比較した文献的考察を行っている。内容は,4 件の無作為化比較試験(377 例)と2 件のケースシリーズ(87 例)であった。その結果,運動が乳がん治療による肩の痛みを軽減する可能性があると結論づけていた。運動の介入方法は多様であり,肩・腕・肩甲骨の抵抗運動,姿勢運動,全身運動や調整運動,肩回し運動,リンパ浮腫の予防運動が活用されていた。以上より,運動は,乳がんや頭頸部がん患者の治療に関連した肩の痛みの軽減に有用と考えられる。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,乳がん患者を対象とした痛みの緩和について,6 件の研究報告があった。いずれも有効である知見とそうでない知見が混在しており,エビデンスレベルは低い結果であった(C 評価)。ただし,運動を実施しても,症状の悪化は全くなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,頭頸部がん領域で肩関節機能障害に対して,一般的な関節可動域や筋力の評価に加えて疼痛評価がなされていた。しかし,評価方法に課題があり,適切な評価を行いながらリハビリテーションを行うように推奨されている(推奨グレードB)。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 既存のガイドラインとの整合性がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,主に乳がん患者を対象に,末梢血管細胞輸血前の高用量化学療法中の患者に,臥位でのエルゴメーターを30 分,入院中毎日実施し,顆粒球減少と下痢の程度を改善させた報告があった。さらに,ヨガで下痢やストレス症状(胃腸症状など)が改善した報告があった。よって,有酸素運動や抵抗運動は,下痢や貧血など治療の有害反応を軽減させるため,行うように推奨されている(推奨グレードB)。 2 臨床疑問 運動療法は,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問4‒1
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III章各論:クリニカル・エビデンス 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 4 泌尿器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Baumann ら5)によるシステマティックレビューでは,前立腺がんの治療中・後の患者を対象に,運動を実施した25 件の無作為化比較試験(2,590 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動の介入により尿失禁が改善し,指導下の運動はそうでない運動と比較してより効果的であった。主な運動は,ウォーキング,抵抗運動,耐久運動,指導下または在宅での骨盤筋抵抗運動などであった。介入期間は4 週間~1 年,週1~5 回, 1 日数回で,1 回15~90 分であった。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,前立腺がんを対象とした観察研究で,標準体重で運動していた患者は肥満・座位傾向の患者と比較して失禁が少なかった。しかし,研究数が少ないためエビデンスレベルの評価はなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,前立腺全摘出術後の患者に骨盤底筋体操を行うと尿失禁を改善するので,行うことが強く推奨されている(推奨グレードA)。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが20 件ある。研究対象の内訳は,がん一般(8 件),乳がん(3 件),肺がん(2 件),造血器腫瘍(悪性リンパ腫1 件,幹細胞移植3 件),大腸がん(1 件),前立腺がん(2 件)であった。 1 )がん一般:8 件Puetz ら6)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,前立腺がん,乳がんの治療中・後の患者を対象に,70 件の無作為化比較試験(4,881 例)のメタアナリシスを行っている。治療は化学療法,放射線治療,ホルモン療法であった。治療中(43 件, 3,235 例)と治療後(27 件,1,646 例)の運動介入群は対照群と比較して有意に倦怠感が軽減していた。運動介入群は指導下あるいは自宅で実施されており,介入期間は11.7~ 12.6 週間,週2.9~3.4 回,1 回42.3~49.6 分であった。Mishra ら7)によるコクランのシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍,その他のがんを含んだ治療中の患者を対象に,56 件の無作為化比較試験(4,826 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,中等度あるいは激しい運動は軽度の運動に比較して,倦怠感の軽減に有意な効果を示していた。運動は,ウォーキング単独,サイクリング,抵抗運動,耐久運動,ヨガ,気功などの併用であった。Cramp ら8)によるコクランのシステマティックレビューでは,がん治療中・後の患者を対象に,38 件の無作為化比較試験(2,648 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有意な効果があった。乳がんと前立腺がんにおいて倦怠感の軽減に運動は有効であったが,造血器腫瘍では有効でな
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かった。さらに,有酸素運動は倦怠感の軽減に有効であったが,抵抗運動や代替型運動では有効ではなかった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,がん治療中・後の患者(悪性リンパ腫1 件,乳がん12 件)を対象に,ヨガの効果を比較した13 件の無作為化比較試験(783 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,ヨガは倦怠感の軽減に有意な効果があった。介入期間は約7 週間(範囲:6 週間~6 カ月)で,1 回約30~120 分であった。Strasser ら10)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がんの治療中・後の患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,167 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,抵抗運動はがんによる倦怠感の軽減に有効であった。介入期間は12 週間(2 件),4~6 カ月(4 件),1 年(4 件)で,主に週2~3 回であった。Zeng ら11)によるシステマティックレビューでは,乳がん(8 件)やその他のがん(5件)を対象に,13 件の無作為化比較試験(592 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,太極拳(8 件)や気功(5 件)は,倦怠感の軽減に有効であった。介入期間は5~12 週間であった。Tomlinson ら12)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,固形がんの治療中・後の患者を対象に,72 件の無作為化比較試験(5,367 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有意な効果がみられた。運動は,有酸素運動(14 件),ウォーキング(19 件),ヨガ(9 件),抵抗運動(3件),混合運動(22 件),その他(5 件)であった。運動は,指導下(46 件)と在宅(26件)で行われていた。Meneses—Echávez ら13)によるシステマティックレビューでは,乳がん(6 件),前立腺がん(2 件),悪性リンパ腫(1 件),その他多様ながん(2 件)患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,530 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,指導下の有酸素運動と抵抗運動の混合,または指導下の有酸素運動,抵抗運動とストレッチングの混合運動は,倦怠感を有意に軽減させていた。介入期間は3~48 週間,週1~5 回,1 回20~120 分であった。 2 )乳がん:3 件Carayol ら14)によるシステマティックレビューでは,化学療法や放射線治療中の乳がん患者を対象に,17 件の無作為化比較試験(1,380 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群が対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効であった。特に,1 週間に90~120 分以上の比較的軽い運動(<12 MET h/week)*は激しい運動より倦怠感の軽減に有効であった。運動は,有酸素運動(16 件)と抵抗運動(7 件)の単独や併用,ヨガ(3 件)であった。介入期間の平均は17±8 週間(範囲:5~26 週間),1 週4±1 回(範囲:2~6 回),1 回39±10 分(範囲:23~60 分)であった。運動は,指導下(6 件)と在宅(10 件)で行われていた。*代謝当量単位(1 MET=3.5 mL/kg/分) Zou ら15)によるシステマティックレビューでは,化学療法中の乳がん患者を対象に, 12 件の無作為化比較試験(1,014 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動による運動介入群(522 例)が対照群(492 例)と比較して,修正版piper 倦怠感スケール(RPFS)による倦怠感得点が有意に軽減していた。ただし,慢性疾患倦怠感スケール(FACIT-F)による得点では統計学的有意差はなかった。
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III章各論:クリニカル・エビデンス Battaglini ら16)は,1989~2013 年までの25 年間の乳がんサバイバーに関する51 件の報告の文献的考察を行っている。その結果,乳がんサバイバーに対する運動介入は,倦怠感の軽減に有効であった。主な運動は有酸素運動と抵抗運動であった。 3 )肺がん:2 件Paramanandam ら17)によるシステマティックレビューでは,肺がん患者を対象にした10 件(192 例:症例報告1 件含む)の文献を分析し,そのうち7 件が倦怠感の軽減に運動が有効であった。運動で最も多かったのが有酸素運動で,その他にエルゴメーター,呼吸運動,リラクセーションなどであった。介入期間は6~14 週間,週2~5 回,1 日1~2 回,1 回5~45 分で,理学療法士による指導下での運動が9 件であった。Crandall ら18)によるシステマティックレビューでは,手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象に,20 件(575 例)の研究(無作為化比較試験8 件含む)で,メタアナリシスを含む文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感が有意に軽減していた。すべての研究で有酸素運動(主にウォーキングやサイクリング)が活用されており,その他に抵抗運動(1 件)や呼吸運動(9 件)があった。17 件が理学療法士や理学療法の専門医師,その他リハビリテーションチームなどの指導下による介入で,多くの研究で運動は週2 回,1 日2 回,1 回10~45 分行われていた。 4 )造血器腫瘍:4 件Van Haren ら19)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療前・中・後の造血器腫瘍患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(734 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効であった。運動は,耐久運動や抵抗運動,日常生活の身体活動,漸進的リラクセーションやストレッチングであった。介入期間は4 週間~6 カ月であった。Vermaete ら20)によるシステマティックレビューでは,悪性リンパ腫の治療前・中・後の患者に身体活動とフィジカルフィットネスの2 種類の介入を行った13 件(2,450 例)の文献的考察を行っている。結果として,21~29%の悪性リンパ腫の患者は,American College of Sports Medicine public health ガイドラインが推奨する運動基準を満たしていた。有酸素運動は実行可能で安全な介入であり,倦怠感の軽減に対して有効であった。しかし,低レベルの身体活動やフィジカルフィットネスは,倦怠感を助長させていた。Persoon ら21)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者を対象に,8 件の無作為化比較試験(介入群472 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効であった。主な運動は,有酸素運動や抵抗運動,混合運動で,運動強度は軽度・中等度であった。介入期間は4 週間~6 カ月,週2~10 回,1 回20~70 分であった。全体的に運動介入プログラムは幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者に対して安全であることが報告されていた。Bergenthal ら22)によるコクランのシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件含む)を対象に,有酸素運動の介入に関する9 件の無作為化比較試験(818 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効であった。主な有酸素運動はさまざまな歩行プログラムで,運動強度や介入期間は異なっていた。
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5 )大腸がん:1 件Cramer ら23)によるシステマティックレビューでは,大腸がん患者を対象とした5 件の無作為化比較試験(238 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感を軽減しなかった。運動は,中等度・高度の有酸素運動と抵抗運動であった。介入期間は2 週間(2 件),12 週間(2 件),16 週間(1 件),週2~ 5 回,1 日20~50 分であった。 6 )前立腺がん:2 件Keogh ら24)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者を対象に運動介入を行った12 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,運動介入は倦怠感の軽減に有効であった。運動効果は,自宅よりもグループでの効果が高く,特に抵抗運動を含んだ場合は顕著であった。運動は,主に有酸素運動や抵抗運動の単独や混合運動などで,介入期間は4~52 週,週2~5 回であった。Gardner ら25)によるシステマティックレビューでは,アンドロゲン除去療法中の前立腺がん患者を対象に,副作用症状の軽減に運動を介入した10 件(565 例)の無作為化比較試験(5 件)を含む文献的考察を行っている。その結果,運動介入は倦怠感の軽減に有効であった。運動は,有酸素運動,抵抗運動,ヨガ,ストレッチングなどであった。介入期間は12~24 週,週1~5 回,1 回15~60 分であった。以上より,運動は,大腸がんを除く,乳がんや肺がん,造血器腫瘍,さまざまながん一般の症例に対して,がん治療中・後の倦怠感の軽減に有用であると考える。ただし,運動の種類や強度,回数,運動実施の時期,期間,倦怠感の尺度などによって倦怠感に対する効果は異なると考える。また,主に有酸素運動や抵抗運動が活用されており,これらの運動は既存のガイドラインで推奨されている運動でもあり,今後臨床現場や研究での活用が期待できる。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,乳がん患者を対象とした無作為化比較試験の論文は多数報告されており,倦怠感の軽減に関する運動のエビデンスレベルはB 評価であった。その他,造血器腫瘍(B 評価),前立腺がん(A 評価),がん治療中・後(C 評価)に関してエビデンスレベルが示されていた。しかし,大腸がんや婦人科がんに関して,無作為化比較試験などの質の高い研究は少なく,エビデンスレベルの評価はなされていなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,頭頸部がん(推奨グレードB),乳がん(推奨グレードA),造血幹細胞移植後の造血器腫瘍(推奨グレードA),化学療法や放射線治療中・後(推奨グレードA),在宅における進行がん・末期がん(推奨グレードB)患者の倦怠感の軽減に運動療法を行うことが推奨されている。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが5 件ある。研究対象の内訳は,がん治療中・後の患者(3 件),進行がん(1 件),小児(1 件)であった。Albercht ら26)によるシステマティックレビューでは,進行がん患者を対象に16 件の無作為化比較試験や横断研究,ケースシリーズなど(患者816 例,家族169 例)の文献
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III章各論:クリニカル・エビデンス 的考察を行っている。その結果,運動介入は,睡眠障害や苦痛症状の改善に有効であった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,主に乳がんや悪性リンパ腫(1 件)などのがん治療中・後の患者を対象に,13 件の無作為化比較試験(128 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,睡眠に対するヨガの効果は少なからずみられたが,対照群との比較では統計学的有意差はなかった。ヨガの介入期間は約7 週間(範囲:6 週間~6 カ月),1 回約30 分であった。Baumann ら27)によるシステマティックレビューでは,急性リンパ白血病の小児がん治療中の患者を対象に,17 件(282 例)の無作為化比較試験(5 件)や比較対照試験(6件),ケースシリーズ(6 件)の文献的考察を行っている。その結果,1 件のみ,運動介入は睡眠の改善に有効であった。運動プログラムの種類は多様で,2 件を除きすべて指導下における在宅や病院内での教育プログラムであった。介入期間は6 週間~2 年,週1~5 回,1 回15~120 分であった。Tomlinson ら12)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,固形がんの治療中・後の患者を対象に,運動の効果を比較した72 件の無作為化比較試験(5,367 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,睡眠障害の改善に有効であった。運動は,有酸素運動,ウォーキング,ヨガ,抵抗運動,混合運動で,指導下(46 件)と在宅での自主トレーニング(26 件)で行われていた。Mustian28)によるシステマティックレビューでは,ヨガの睡眠障害の改善に関する臨床試験や無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,がん患者やがんサバイバーに対するヨガの介入は睡眠障害の改善や睡眠の質を改善させていた。パイロット臨床試験において,低・中等度のヨガで呼吸療法や瞑想などを含んだセッションを4~ 26 週間,週1~5 回,1 回50~120 分実施することで,睡眠障害や睡眠の質の改善に効果があるかもしれないと結論づけていた。以上より,運動は,睡眠障害の軽減に有用かもしれない。ただし,研究数が限られており,今後質の高い無作為化比較試験が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中の乳がん患者の睡眠障害の改善に運動は有効であった。しかし,成人の造血幹細胞移植治療中の睡眠障害の改善には有効ではなかった。研究数に限りがあり推奨には至っていなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,乳がん術後の化学療法や放射線治療中・後の患者に対して,有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うことは睡眠障害を改善させるため,行うよう強く推奨されている(推奨グレードA)。また,造血器腫瘍に対して造血幹細胞移植を実施した患者に,指導下もしくは在宅での自主トレーニングにてエルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動を実施することは,それらを行わない群と比較して,睡眠障害の改善がみられるため,行うよう推奨されている(推奨グレードB)。 7 その他(身体機能・筋力,心肺機能,免疫機能など) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが26 件ある。研究対象の内訳は,が
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ん一般(12 件),乳がん(3 件),造血器腫瘍(4 件),肺がん(2 件),前立腺がん(3件),小児がん(2 件)であった。 1 )がん一般:12 件Fong ら29)によるシステマティックレビューでは,がん治療後の患者を対象(乳がん65%)に,34 件の無作為化比較試験(7,882 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,治療後の乳がん患者に対する運動は身体機能に良い影響を及ぼしていた。乳がん患者以外のがん患者の運動効果として,BMI,体重減少,酸素消費量の改善がみられた。運動は,主に有酸素運動で,その他に抵抗運動や耐久運動があった。介入期間の平均は13 週(範囲:3~60 週)であった。Chan ら30)によるシステマティックレビューでは,がん患者を対象に気功の介入を行った無作為化比較試験(8 件)と比較臨床試験(15 件)の文献的考察を行っている。その結果,気功の介入による効果については,測定方法と結果が多様であったため結論づけることは困難であった。ただし,従来の治療法に加えて,気功による介入は,がん患者の免疫機能を改善する傾向がみられた。Albrecht ら26)によるシステマティックレビューでは,進行期のがん患者を対象に16件(患者816 例,家族169 例)の無作為化比較試験や横断研究,ケースシリーズの文献的考察を行っている。その結果,運動は,身体機能の低下を軽減する効果があった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,主に乳がんや悪性リンパ腫(1 件)のがん治療中・後の患者を対象に,13 件の無作為化比較試験(783 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,健康状態,身体機能に対するヨガの効果は少なからずみられたが,対照群との比較では統計学的有意差はなかった。ヨガの介入期間は約7 週間(範囲:6 週間~6 カ月),1 回約30~120 分であった。Singh ら31)によるシステマティックレビューでは,肺がん,前立腺がん,大腸がんの術前の患者を対象に,18 件の無作為化比較試験と比較臨床試験(966 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,ウォーキングの耐久力や心肺機能の改善に有意な効果がみられた。前立腺がんでは骨盤底筋体操を取り入れた運動(毎日),肺がんは有酸素運動(1 週間に5 回),消化器系がんは有酸素運動や抵抗運動(1週間2 回)などであった。1 回の運動時間は,15 分~3 時間程度であった。Strasser ら10)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がんの治療中・後の患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,167 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,抵抗運動は上下肢の筋力強化に大きな効果があり,かつ体脂肪や体組成へも中等度の効果があった。介入期間は12 週間,4~6 カ月,1 年で,主に週2~3 回であった。Stene ら32)によるシステマティックレビューでは,主に早期のステージにある乳がん,前立腺がん,消化器系がん,大腸がん,肺がんのがん治療中の患者を対象に,16 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,有酸素運動と抵抗運動による介入は通常のケアと比較して,上下肢の筋力が向上していた。介入期間は4~52 週間,週2~7 回,1 回10~45 分であった。Focht ら33)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がん,肺がんなどのがん治療中・後の患者を対象に,15 件の無作為化比較試験と比較臨床試験(1,077 例)の文献的考察を行っている。その結果,抵抗運動は,筋力や身体機能,体組
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III章各論:クリニカル・エビデンス 成の強化に有意な効果がみられた。運動は,1 件を除きすべて指導下で行われており,介入期間は10 週間~12 カ月であった。Kruijsen-Jaarsma ら34)によるシステマティックレビューでは,成人(18 件)と小児(3件)のがん患者を対象に,21 件の無作為化比較試験や比較臨床試験などの文献的考察を行っている。その結果,運動介入後,NK 細胞毒性,リンパ球増殖,顆粒球数の増加が認められた。運動は,有酸素運動(11 件),抵抗運動(1 件),有酸素運動と抵抗運動の混合(8 件)であった。介入期間は2~12 週間,頻度は毎日か週2~5 回,1 回15~90 分であった。Bourke ら35)によるコクランのシステマティックレビューでは,座位傾向のがん患者を対象に,14 件の無作為化比較試験(648 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,8~12 週間の運動介入群は対照群と比較して,運動耐性が改善していた。さらに,6カ月以上の介入についても同様の結果が得られた。運動は,有酸素運動と抵抗運動であった。Zeng ら11)によるシステマティックレビューでは,乳がん(8 件)やその他のがん(5件)を対象に,13 件の無作為化比較試験(592 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,太極拳(8 件)や気功(5 件)は,免疫機能,コルチゾールレベルを改善していた。12 週間の介入により,BMI や体組成はベースラインよりも減少していた。介入期間は5~12 週間であった。Grande ら36)によるコクランのシステマティックレビューでは,がん患者の悪液質に対する運動介入に関する16 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,3,154 件の文献からタイトルをもとに3,138 件を除外し,残り16 件の文献が分析されたが,選択基準に適合する研究はなかった。その理由は,がん悪液質の定義や評価が困難であり,効果を結論づける十分なエビデンスが得られなかったからであった。 2 )乳がん:3 件Chung ら37)によるシステマティックレビューでは,乳がん術後のリンパ浮腫患者を対象に,無作為化比較試験(8 件)と交差試験(3 件)の計11 件(728 例)の文献的考察を行っている。その結果,数日~13 週間の運動は,リンパ浮腫患者の上部の身体機能の改善(短期間),リンパ浮腫の改善(1 年間)に有意な効果があった。運動は,有酸素運動,水中リンパ療法,ダンス療法,理学療法,多機能運動,包括的リハビリテーション,ウエイト・リフティングの7 種類で,理学療法や多様な運動の組み合わせが多かった。医師や理学療法士の専門家の指導下による介入効果や運動のアドヒアランス率が有意に高かった。Paramanandam ら38)によるシステマティックレビューでは,リンパ浮腫あるいはそのリスクを伴っている乳がん患者を対象に,筋力トレーニングの介入効果に関する11件の無作為化比較試験(1,091 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,低・中等度の筋力トレーニングの介入は安全であり,対照群と比較して,腕の容積や乳がんに起因するリンパ浮腫の出現を悪化させることなく,上下肢の筋力を有意に強化させていた。筋力トレーニングの介入期間は5 週間~1 年間で,運動強度は主に低・中等度の運動であった。全患者は,指導下での圧迫包帯を活用していた。Battaglini ら16)によるシステマティックレビューでは,1989~2013 年までの25 年間の乳がんサバイバーに関する51 件の文献的考察を行っている。その結果,乳がんサバイ
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バーに対する運動介入は,心肺機能の改善,身体の強度や体組成の改善に効果的であった。主な運動は,有酸素運動と抵抗運動であった。 3 )造血器腫瘍:4 件Van Haren ら19)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療前・中・後の造血器腫瘍患者の運動効果に対する11 件の無作為化比較試験(734 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,退院を促進する効果があった。運動は,耐久運動や抵抗運動,日常生活の身体活動,漸進的リラクセーションやストレッチングであった。介入期間は3 週間~6 カ月であった。Vermaete ら39)によるシステマティックレビューでは,悪性リンパ腫の治療前・中・後の患者を対象に,身体活動とフィジカルフィットネスの2 種類の介入を行った13 件(2,450 例)の文献的考察を行っている。その結果,有酸素運動は実行可能で安全な介入であり,心肺機能や身体機能の改善に効果があった。Persoon ら21)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者を対象に,8 件の無作為化比較試験(介入群472 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群が対照群と比較して,心肺機能状態,下肢筋力に対する効果が大きかった。一方,上肢の筋力に対する効果は小さかった。主な運動は,有酸素運動や抵抗運動,混合運動で,運動強度は軽度・中等度であった。介入期間は4 週間~6 カ月,週2~10 回,1 回20~70 分であった。幹細胞移植治療中の患者に対して運動は安全であると報告されていた。Bergenthal ら22)によるコクランのシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件含む)を対象に,有酸素運動の介入に関する9 件の無作為化比較試験(818 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動の介入群は対照群と比較して,身体機能の向上に有効であった。主な有酸素運動はさまざまな歩行プログラムで,運動強度や介入期間は異なっていた。 4 )肺がん:2 件Cavalheri ら40,41)によるコクランのシステマティックレビューでは,肺切除後12 カ月以内の非小細胞性肺がん患者を対象に,3 件(178 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,6 分以上の歩行群と歩行なし群とでは,歩行群のほうの運動許容量が有意に増加していた。ただし,肺機能の改善に統計学的有意差はみられなかった。Crandall ら18)によるシステマティックレビューでは,手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象に,20 件(575 例)のメタアナリシスを含む(無作為化比較試験8 件)文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,心肺機能の運動能力や筋力の向上,術後合併症の軽減,入院期間の短縮がみられた。すべての研究に有酸素運動(主にウォーキングやサイクリング)が含まれており,その他に抵抗運動(1 件)や呼吸運動(9 件)があった。17 件が理学療法士や理学療法を専門とする医師,その他リハビリテーションチームなどの指導下による介入で,多くの研究が1 日2 回~1 週間2 回,1 回10~45 分の頻度で運動プログラムが実施されていた。
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III章各論:クリニカル・エビデンス 5 )前立腺がん:3 件Keogh ら24)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者を対象に12 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,運動は筋力持久力,有酸素持久力,身体機能,その他筋肉量,筋力の改善に有効であった。運動効果は,自宅よりもグループでの効果が高く,特に抵抗運動を含んだ場合は顕著であった。運動は,主に有酸素運動や抵抗運動の単独,混合運動などで,介入期間は4~52 週,週2~5 回であった。Baumann ら5)によるシステマティックレビューでは,前立腺がんの治療中・後の患者を対象に,運動を介入した25 件の無作為化比較試験(2,590 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動の介入により健康状態,体組成の改善に有効であった。指導下の運動はそうでない運動と比較してより効果的であった。主な運動は,ウォーキング,抵抗運動,耐久運動,指導下または在宅での骨盤筋抵抗運動などであった。介入期間は4週間~1 年,週1~5 回,1 日数回,1 回15~90 分であった。Gardner ら25)によるシステマティックレビューでは,アンドロゲン除去療法中の前立腺がん患者を対象に,副作用症状の軽減に運動を介入した10 件(565 例)の無作為化比較試験(5 件)を含む文献的考察を行っている。その結果,運動介入により筋力強化,心肺機能の強化,機能的タスクパフォーマンス,体組成の改善に効果がみられた。骨の健康状態,心代謝リスクマーカーについては明らかな結果は得られなかった。運動は,有酸素運動,抵抗運動,ヨガ,ストレッチングなどであった。介入期間は12~24 週,週1~5 回,1 回15~60 分であった。 6 )小児がん:2 件Braamら42)によるコクランのシステマティックレビューでは,19歳以下の急性リンパ性白血病などの小児・青年期のがん治療中・後の患者を対象に,4 件の無作為化比較試験(107 例)と1 件の臨床比較対照試験(24 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,骨密度や身体的健康状態(体組成,柔軟性,心肺機能)が有意に改善していた。ただし,BMI,筋力・耐性,身体活動レベルは改善しなかった。運動は,身体活動トレーニングでさまざまな運動を含んでいた。介入期間は10 週間~2年間,1 回15~60 分であった。Baumann ら27)によるシステマティックレビューでは,急性リンパ白血病の小児がん治療中の患者を対象に,運動効果に関する17 件(282 例)の無作為化比較試験(5 件)や比較対照試験(6 件),ケースシリーズ(6 件)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群の筋力強化に対して有意な効果が得られた。1 件の論文のみ,運動介入は免疫機能,活動量,身体機能の改善において有効であった。運動プログラムの種類は多様で,2 件を除きすべて指導下における在宅や病院内での教育プログラムであった。介入期間は6 週間~2 年,週1~5 回,1 回15~120 分であった。以上より,がん患者の治療中・後に,有酸素運動や抵抗運動などを行うことは,身体機能(BMI,体重,体組成,体脂肪,酸素消費量)や耐久力,心肺機能,上下肢の筋力,活動量,運動耐性,運動許容量,免疫機能,リンパ浮腫,骨密度の改善,退院促進などに有用であると考える。ただし,がんの種類やステージ,運動の種類や運動期間,頻度,強度,運動実施のタイミング,ならびに専門家による指導などは,運動の効果に影響があると考えられるので,それらを考慮した臨床への応用が必要である。
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既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,乳がん治療中の運動の効果として,有酸素容量の増加(A 評価),筋力強化(A 評価)や体重・体組成の改善(B 評価)が示されており,その他の効果として,化学療法や放射線治療の副作用症状の軽減,骨密度減少の抑制などであった。乳がん治療後についても同様に,運動の効果として,有酸素容量の増加(A 評価),筋力強化(A 評価)と柔軟性の強化(A 評価),身体機能の改善(A 評価),ボディイメージの改善(B 評価)であった。その他,免疫機能への影響などが報告されていたが推奨までには至っていなかった。前立腺がんでは,運動の効果として,有酸素容量(A 評価),筋力強化(A 評価)と体重・体組成(B 評価),身体機能(B 評価)の改善であった。その他,性機能,失禁への運動の影響に関する報告がみられたが推奨度までには至っていなかった。幹細胞移植治療前の造血器腫瘍では,運動効果として有酸素容量(B 評価),体組成,身体機能の改善があった。幹細胞移植治療中・後の造血器腫瘍では,運動の効果は有酸素容量(C 評価),筋力強化(C 評価)でエビデンスレベルは低かった。その他に,体組成,身体機能,免疫機能への効果がみられたが推奨度までには至っていなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,疾患別や治療による身体機能や筋力,体組成,免疫機能などの改善に関する運動の効果について次のように推奨している。・ 消化器がん初回治療後の患者に運動療法を行うことで免疫系が賦活される(推奨グ レードB)。・ 放射線治療中の頭頸部がん患者に全身運動プログラムの提供は好ましい結果をもたら す可能性がある(推奨グレードB)。・ 乳がん術後の化学療法や放射線治療中・後の患者に対して,有酸素運動や抵抗運動, それらを混合した運動を行うよう指導することは,身体活動を拡大し,心肺機能や筋力,体組成を改善させる(推奨グレードA)。・ 婦人科がんの術後化学療法・放射線治療中,もしくは治療後の患者に対して,有酸素 運動などの運動療法を行うよう指導することは,体組成を改善させる(推奨グレードB)。・ 造血幹細胞移植を実施した造血器腫瘍患者に,エルゴメーターやトレッドミルを用い た有酸素運動,ストレッチングや筋力トレーニング,また,それらを組み合わせた運動療法を実施することは,運動耐容能力や筋力などの身体機能を改善させる(推奨グレードA)。・ 化学療法や放射線治療後の乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍患者に,エルゴメーター やトレッドミルを用いた有酸素運動,ストレッチングや筋力トレーニング,また,それらを組み合わせた運動療法を実施することは,運動耐容能や筋力などの身体機能を改善させる(推奨グレードA)。・ 化学療法や放射線治療中・後のがん患者に,有酸素運動や筋力トレーニングを実施す ることは,免疫機能を改善させる(推奨グレードA)。・ 緩和ケア対象のがん患者に対するサーキットトレーニングを中心とした運動療法は, 身体機能(歩行距離,立ち上がり時間)を改善させる(推奨グレードB)。・ 転移がん患者に対する抵抗運動は,上下肢の筋力増強効果がある(推奨グレードB)。・ 転移のある乳がん患者に対する呼吸法・瞑想法などのヨガトレーニングは,自覚的活
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III章各論:クリニカル・エビデンス 力を改善させる(推奨グレードB)。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが12 件ある。研究対象の内訳は,がん一般(8 件),乳がん(2 件),造血器腫瘍(1 件),進行がん(1 件)であった。 1 不安・抑うつ 1 )がん一般:8 件Craft ら43)によるシステマティックレビューでは,がんサバイバーを対象に15 件の無作為化比較試験(7,042 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群が,在宅以外の場所で30 分間以上,指導下で運動を実施した場合,抑うつの軽減に対して最も効果が高かった。対象は,乳がん患者のサバイバーが最も多く(9 件,60%),運動の種類として全研究に有酸素運動が含まれており,その他に耐久運動があった。運動プログラムの方法は,指導下による運動と在宅での自主的な運動で,介入期間は主に14~52週間,週2~5 回,1 回約30 分であった。Chan ら30)によるシステマティックレビューでは,がん患者を対象に気功を介入した無作為化比較試験(8 件)と比較臨床試験(15 件)の文献的考察を行っている。その結果,気功の介入による精神的効果は,測定方法と結果が多様であったため結論づけることは困難であった。Brown ら44)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,白血病,悪性リンパ腫,大腸がん,多様ながんのタイプのがんサバイバーを対象に,37 件の無作為化比較試験(2,929 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は,対照群と比較して,抑うつ症状が軽減されていたが顕著な効果ではなかった。質の高い研究で,1 週間の有酸素運動で抑うつ症状が軽減していた。47~62 歳のがんサバイバーで,指導下における運動が最も抑うつ症状を軽減させていた。介入期間は13.2±11.7 週,週3.0±2.5 回,1 回49.1±27.1 分,運動強度は3.9±1.3 METs*であった。運動は,ウォーキング,サイクリング,ウェイトマシン,抵抗バンド,ヨガであった。*代謝当量単位(1 MET=3.5 mL/kg/分) Mishra ら7)によるコクランのシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍,その他のがんを含んだ治療中の患者を対象に,56 件の無作為化比較試験(4,826 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間以上の運動は,中等度あるいは激しい運動をしたほうが軽度の運動と比較して,不安の軽減に顕著な効果を示していた。乳がん患者は他のがん患者と比較して,運動による不安の軽減が有意に顕著であった。運動は,ウォーキング単独運動や他のサイクリング,抵抗運動,耐久運動,ヨガ,気功などの併用であった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,主に乳がん治療中・後の患者を対象に,13 件の無作為化比較試験(783 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,ヨガはストレスや不安,抑うつの軽減に大きな効果があった。ヨガの介入期間は平均7週間(範囲:6 週間~6 カ月),1 回約30 分であった。Zeng ら11)によるシステマティックレビューでは,乳がん(8 件)やその他のがん(5 件) 運動療法は,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問4‒2
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を対象に,13 件の無作為化比較試験(592 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,太極拳(8 件)や気功(5 件)は,抑うつ,不安の軽減に有効であった。介入期間は5~12 週間であった。Tomlinson ら12)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,固形がんの治療中・後の患者を対象に,72 件の無作為化比較試験(5,367 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,抑うつの軽減に有効であった。運動は,有酸素運動,ウォーキング,ヨガ,抵抗運動,混合運動で,指導下(46 件)と在宅(26 件)で行われていた。Mishra ら45)によるシステマティックレビューでは,主に乳がん(22 件)治療中・後の患者を対象に,40 件の無作為化比較試験(3,694 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間の運動介入は,HRQOL の下位尺度である感情的健康状態,不安の軽減に有効であった。運動は,耐久運動や抵抗運動,ウォーキング,サイクリング,ヨガ,気功,または混合運動で,有酸素運動は30 件であった。介入期間は3 週間~1 年,1 回20~90 分(最頻値30 分)で,30 件は専門家(運動療法士,スポーツトレーナー,ヨガインストラクターなど)による介入であった。 2 )乳がん:2 件Carayol ら14)によるシステマティックレビューでは,化学療法や放射線治療中の乳がん患者を対象に,17 件の無作為化比較試験(1,380 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群が対照群と比較して,抑うつの軽減に有効であった。運動は,有酸素運動(16 件)や抵抗運動(7 件)の単独や併用,ヨガ(3 件)であった。介入期間の平均は17±8 週間(範囲:5~26 週間),1 回の平均回数は4±1 回(範囲:2~6 回),平均運動時間数は39±10 分(範囲:23~60 分)であった。運動は,指導下(6 件)と在宅(10 件)で行われていた。Battaglini ら16)は,1989~2013 年までの25 年間の乳がんサバイバーに関する51 件の文献的考察を行っている。その結果,乳がんサバイバーに対する運動介入は,抑うつの軽減に有効であった。主な運動は,有酸素運動と抵抗運動であった。 3 )造血器腫瘍:1 件Bergenthal ら22)によるコクランのシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件含む)を対象に,有酸素運動の介入に関する9 件の無作為化比較試験(818 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動の介入群は対照群と比較して,不安の軽減には統計学的有意差はなかった。主な有酸素運動はさまざまな歩行プログラムで,運動強度や介入期間は異なっていた。 4 )進行がん:1 件Albrecht ら26)によるシステマティックレビューでは,進行がん患者を対象に16 件の無作為化比較試験や横断研究,ケースシリーズなどを含むさまざまな研究(患者816 例,家族169 例)の文献的考察を行っている。その結果,身体活動の介入は,不安,ストレス,抑うつなどの精神症状を改善するのに有効であった。以上より,造血器腫瘍を除くがん患者に運動療法(有酸素運動,抵抗運動,ヨガ,気功,太極拳など)を行うことは,不安,抑うつ,ストレス,感情的健康状態や情緒的健
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III章各論:クリニカル・エビデンス 康の改善に有用であると考える。ただし,対象者のリクルートの際に抑うつの程度が考慮されていない研究もあり,抑うつ傾向が低い患者が対象となっている可能性が高い。よって,抑うつレベルや精神的状態を考慮したうえでの臨床での適応が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中・後の乳がん患者に対する運動は,不安や抑うつの軽減に効果があった(B 評価)。造血器腫瘍である造血幹細胞移植や悪性リンパ腫患者に対して,運動が抑うつの軽減に有効であったが不安に関しては効果がなかった。卵巣がんサバイバーに対して,運動は不安や抑うつの軽減に有効であった。結論として,乳がん患者以外のがん患者を対象とした運動効果は,不安・抑うつなどの精神的側面に焦点を合わせた研究に限られていた。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,各疾患別・治療別による精神的側面に関する運動の効果について,次のように推奨している。・ 乳がん手術後の化学療法・放射線治療中もしくは治療後の患者に対して,有酸素運動 や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うことで,抑うつや不安感を改善させる(推奨グレードA)。・ 婦人科がん手術後の化学療法・放射線治療中,もしくは治療後の患者に対して,有酸 素運動などの運動療法を行うよう指導することは,抑うつ傾向や自己効力感を改善させる(推奨グレードB)。・ 造血器腫瘍に対して造血器幹細胞移植を実施した患者に,指導下もしくは在宅での自 主トレーニングにて,エルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動を実施することは,それらを行わない群と比較して,抑うつや不安などの精神症状を改善させる(推奨グレードB)。・ 化学療法や放射線治療中・後の乳がん,造血器腫瘍患者に,エルゴメーターやトレッ ドミルを用いた有酸素運動や筋力トレーニング,それらを組み合わせた運動療法,また,運動療法とカウンセリングの併用やリハビリテーションの実施は,それらを行わない群と比較して,精神的機能の側面,心理的側面を改善させる(推奨グレードA)。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが22 件ある。研究対象の内訳は,がん患者一般(8 件),乳がん(5 件),造血器腫瘍(4 件),肺がん(1 件),大腸がん(1 件),前立腺がん(2 件),小児がん(1 件)であった。主なQOL 尺度として,HRQOL(Health Related Quality of Life),FACT—G(Functional Assessement of Cancer Therapy—General),FACT—B(Functional Assessement of Cancer Therapy—Brest),EORTC QLQ—C30(European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire—C30),SF36(Short Form 運動療法は,全般的なQOL を改善するか? ▶ ▶臨床疑問4‒3
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Health Survey)などが使用されていた。 1 )がん一般:8 件Fong ら29)によるシステマティックレビューでは,がん治療後の患者(乳がん65%)を対象に,34 件の無作為化比較試験(7,882 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,治療後の乳がん患者に対する運動は身体機能,精神的側面,QOL の改善に良い影響を及ぼしていた。乳がん以外のがん患者の運動効果として,QOL の改善がみられた。運動は,主に有酸素運動,その他に抵抗運動や耐久運動であった。介入期間は平均13 週(範囲3~60 週)であった。Mishra ら46)によるコクランのシステマティックレビューでは,乳がん,大腸がん,頭頸部がん,悪性リンパ腫,その他のがんサバイバーを対象に,40 件の無作為化比較試験(3,694 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間以上かつ6 カ月の運動で,HRQOL の有意な改善がみられた。HRQOL の下位尺度で有意であったのは,ボディイメージ/セルフエフィカシー,情緒的健康,セクシャリティ,睡眠障害,社会的役割,不安,倦怠感,痛みであった。有意でなかったのが,認知機能,身体機能,全体的健康状態,役割機能,スピリチュアリティであった。運動は,筋力トレーニング,抵抗運動,ウォーキング,サイクリング,ヨガ,気功,太極拳であった。Mishra ら7)によるコクランのシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍,その他のがんを含んだ治療中の患者を対象に,56 件の無作為化比較試験(4,826 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間以上の運動は対照群と比較して,HRQOL を有意に向上させていた。特にHRQOL の下位尺度である,身体機能,役割機能,社会的機能,倦怠感に対する効果がみられた。運動強度において,中等度あるいは激しい運動が軽度の運動に比較して,HRQOL と身体機能の改善,不安,倦怠感,睡眠障害の軽減に顕著な効果を示していた。運動は,ウォーキング単独やサイクリング,抵抗運動,耐久運動,ヨガ,気功などの併用であった。Buffart ら9)によるシステマティックレビューでは,主に乳がん(1 件のみ悪性リンパ腫)のがん治療中・後の患者を対象に,13 件の無作為化比較試験(783 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,ヨガはQOL の改善に中等度の効果があった。ヨガの介入期間は約7 週間(範囲:6 週間~6 カ月),1 回当たり約30 分であった。対照群は,カウンセリングやコーピングなどの支持療法の教育的介入を受けていた。Strasser ら10)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がんの治療中・後の患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,167 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,QOL の改善に有意な効果がみられた。介入期間は12 週間(2 件),4~6 カ月(4 件),1 年(4 件)で,主に週2~3 回であった。Focht ら33)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がん,肺がん,その他のがんにおける治療中(6 件)・後(9 件)の患者を対象に,15 件(1,077例)の無作為化比較試験と比較臨床試験の文献的考察を行っている。その結果,抵抗運動はQOL の改善に有意な効果がみられた。運動は,1 件を除きすべて指導下で行われており,介入期間は10 週間~12 カ月であった。Zeng ら11)によるシステマティックレビューでは,乳がん(8 件)やその他のがん(5件)を対象に,13 件の無作為化比較試験(592 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,太極拳(8 件)や気功(5 件)は,QOL の向上に有効であった。介入期間は5~
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III章各論:クリニカル・エビデンス 12 週間であった。Mishra ら46)によるシステマティックレビューでは,主に乳がん(22 件)とその他のがんサバイバーを対象(がん治療中・後の10 件含む)に,40 件の無作為化比較試験(3,694 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,12 週間の運動介入は,全般的HRQOL,その下位尺度である感情的健康状態,社会的機能の改善,不安,倦怠感の軽減に有効であった。運動は,耐久運動や抵抗運動,ウォーキング,サイクリング,ヨガ,気功,または混合運動で,有酸素運動は30 件であった。介入期間は3 週間~1 年,1 回20~90 分で,30 件は専門家(運動療法士,スポーツトレーナー,ヨガインストラクターなど)による介入であった。 2 )乳がん:5 件Carayol ら14)によるシステマティックレビューでは,化学療法や放射線治療中の乳がん患者を対象に,17 件の無作為化比較試験(1,380 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL の向上に有意に有効であった。特に, 1 週間に90~120 分以上の比較的軽い運動(<12 MET h/week)*は激しい運動より倦怠感の軽減やQOL の向上に有効であった。運動は,有酸素運動や抵抗運動またはその併用,ヨガであった。介入期間の平均は17±8 週間(範囲:5~26 週間),1 回の平均回数は4±1 回(範囲:2~6 回),平均時間数は39±10 分(範囲:23~60 分)であった。運動は,指導下(6 件)と在宅(10 件)で行われていた。*代謝当量単位(1 MET=3.5 mL/kg/分) Lee ら47)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーを対象に4 件の無作為化比較試験(375 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL が有意に向上していた。介入期間は8 週間~6 カ月であった。Zeng ら48)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーを対象に19 件の無作為化比較試験(1,919 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,全般的なQOL 得点が高かった。運動は,有酸素運動,有酸素運動と無酸素運動の混合運動,ヨガ,太極拳,有酸素運動と耐久運動,有酸素運動と抵抗運動,抵抗運動であった。介入期間は4~52 週間で,そのうち15 件が8~12 週間と最も多く,週1~5 回,1 回15~90 分であった。Battaglini ら16)によるシステマティックレビューでは,1989~2013 年までの25 年間の乳がんサバイバーに関する51 件の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL の改善に有効であった。主な運動は,有酸素運動と抵抗運動であった。Paramanandam ら38)によるシステマティックレビューでは,リンパ浮腫あるいはそのリスクを伴っている乳がん患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,091 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,低・中等度の筋力トレーニングの介入は安全であり,対照群と比較して,QOL の特定な側面に関して有効であった。筋力トレーニングの介入期間は5 週間~1 年間で,運動強度は主に低・中等度であった。全患者は,指導下で圧迫包帯を活用していた。 3 )造血器腫瘍:4 件Van Haren ら19)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療前・中・後の
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造血器腫瘍患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(734 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL の向上に有効であった。運動は,耐久運動や抵抗運動,日常生活の身体活動,漸進的リラクセーションやストレッチングであった。介入期間は3 週間~6 カ月であった。Persoon ら21)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者を対象に,8 件の無作為化比較試験(介入群472 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,全般的なQOL,身体的,精神的,認知的な機能の改善に有意な効果があった。主な運動は,有酸素運動や抵抗運動,混合運動で,運動強度は軽度・中等度であった。介入期間は4 週間~6 カ月,週2~10 回,1 回20~70 分であった。Baumann ら27)によるシステマティックレビューでは,急性リンパ白血病の治療中の小児がん患者を対象に,17 件(282 例)の無作為化比較試験(5 件)や比較対照試験(6件),ケースシリーズ(6 件)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL の向上に有効であった。運動プログラムの方法は多様で,2 件を除きすべて指導下で在宅や病院内で実施されていた。介入期間は,6 週間~2 年,週1~5回,1 回15~120 分であった。Bergenthal ら22)によるコクランのシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件含む)を対象に,9 件の無作為化比較試験(818 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,有酸素運動の介入群は対照群と比較して,QOL の改善に有効であった。 4 )肺がん:1 件Cavalheri ら40)によるコクランのシステマティックレビューでは,肺切除後12 カ月以内の非小細胞性肺がん患者を対象に,3 件(178 例)の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,6 分以上の歩行群と歩行なし群の比較で,HRQOL に統計学的有意差はみられなかった。 5 )大腸がん:1 件Cramer ら23)によるシステマティックレビューでは,大腸がん患者を対象に5 件の無作為化比較試験(238 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,QOL に統計学的有意差はみられなかった。運動は,中等度・高度の有酸素運動,抵抗運動であった。介入期間は2 週間(2 件),12 週間(2 件)と16 週間(1件),週2~5 回,1 日20~50 分であった。 6 )前立腺がん:2 件Keogh ら24)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者を対象に12 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,運動介入によって全般的なQOL の改善がみられた。その他,筋肉量,筋力,身体機能,健康に関連する身体・社会的QOL の改善がみられた。運動効果は,在宅よりもグループでの効果が高く,特に抵抗運動を含んだ場合は顕著であった。運動は,主に有酸素運動や抵抗運動の単独や混合運動などで,介入期間は4~52 週,週2~5 回であった。Baumann ら5)によるシステマティックレビューでは,前立腺がんの治療中・後の患者
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III章各論:クリニカル・エビデンス を対象に,25 件の無作為化比較試験(2,590 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動の介入によりQOL の改善がみられた。指導下の運動はそうでない運動と比較してより効果的であった。主な運動は,ウォーキング,抵抗運動,耐久運動,指導下または在宅での骨盤筋抵抗運動などであった。介入期間は4 週間~1 年,週1~5 回,1 日数回, 1 回15~90 分であった。 7 )小児がん:1 件Braam ら(2013)42)によるコクランのシステマティックレビューでは,19 歳以下の急性リンパ性白血病などの小児・青年期のがん治療中・後の患者を対象に,4 件の無作為化比較試験(107 例)と1 件の臨床比較対照試験(24 例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,HRQOL は改善しなかった。運動は,身体活動トレーニングでさまざまな運動を含んでいた。介入期間は10 週間~2 年間,1 回15~60 分であった。以上より,がん治療中・後を含め,がん一般,乳がん,造血器腫瘍の患者に運動療法を行うことは,全般的なQOL を改善すると考える。ただし,大腸がんや肺がん,小児がん患者に関して,研究数や方法論的に限界があるため運動療法によるQOL に対する効果は得られていない。研究の限界として,risk of bias(ROB)の存在,がんの種類別(主に乳がん患者が多い),がんの治療別,運動の種類や介入方法,多様なQOL 尺度の使用や下位尺度との相違,インストラクターの有無や在宅での介入方法の相違,長期的な効果,サンプルサイズなどの限界があり,これらを考慮した大規模な無作為化比較試験が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中・後の乳がん患者や前立腺がん患者に対する運動は,QOLの改善に有効であった(B 評価)。また,造血幹細胞移植中や治療後においても運動を実施することでQOL の向上に有効であることが示されていた(C 評価)。その他,婦人科がんである卵巣がんや子宮体がんの患者を対象に運動を実施した場合のQOL の改善に関する研究が4 件みられた。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,疾患別・治療別での運動療法によるQOL の改善に関して次のように推奨している。・ 筋力・持久力・QOL の向上や倦怠感の緩和のために,放射線治療やホルモン療法を施 行されている前立腺がん患者に運動療法を行うことが強く推奨されている(推奨グレードA)。・ 乳がんの術後化学療法・放射線治療中に,有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わ せた運動療法を行うことは,身体機能関連のQOL を改善させる(推奨グレードB)。・ 乳がん治療後の患者においては,運動療法単独,もしくは心理療法やヨガ,ダンスな どを組み合わせたリハビリテーションプログラムにより,全般的なQOL の改善が得られる(推奨グレードA)。・ 乳がん患者において,遠隔転移があるなど,進行した病期の患者においても,運動療 法を行うことは,QOL の低下を緩徐にする(推奨グレードB)。・ 化学療法や放射線治療中・後の乳がん,前立腺がん,造血器腫瘍患者に,エルゴメー
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ターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動や筋力トレーニング,ストレッチングなどの運動療法を実施することは,それらを行わない群と比較してQOL が改善される(推奨グレードA)。 本臨床疑問に関連する臨床研究としては,システマティックレビューのなかで付随的に有害事象や安全性について記載されている研究が12件あるが,全体的に記載のない研究が多かった。有害事象や安全性が報告された対象は,がん一般(2 件),乳がん(2 件),造血器腫瘍(3 件),肺がん(2 件),頭頸部がん,大腸がん,進行がん各1 件であった。 1 )がん一般:2 件Tomlinson ら12)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍,固形がんの治療中・後の患者を対象に,72 件の無作為化比較試験(5,367 例)のメタアナリシスを行っている。運動は,指導下(46 件)と在宅(26 件)で行われていた。考察のなかで,有害事象は,がんの種類や治療によるものであるが,最も多く報告されていたのが,心臓血管系に関する事象であった。American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,運動を実施する際には,運動の専門家やがん治療のチームのもとで実施することを推奨していた。Meneses—Echavez ら13)によるシステマティックレビューでは,さまざまながんの対象者に運動を介入した11 件の無作為化比較試験(1,530 例)で,3 件(27%)の有害事象を報告していた。1 件が乳がん患者に運動を介入した際の有害事象として,リンパ浮腫,婦人科系合併症,インフルエンザ,さらに対照群で足の骨折,気管支炎を報告していた。2 件目は,悪性リンパ腫の患者を対象とした研究で,1 例のみ有害事象の報告があり,運動介入群に背中,臀部,膝の痛みがあった。3 件目は,前立腺がん患者を対象とした研究で,抵抗運動を介入した際に,有酸素運動のトレッドミルエクササイズの前に失神のエピソード,また有酸素運動後に15 分間の心筋梗塞の発生があった。その後,これらのエピソードはすべて消失した。 2 )乳がん:2 件Zeng ら48)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーを対象に,運動を介入した19 件の無作為化比較試験(1,919 例)で,1 件の有害事象が報告されていた。治療後の乳がん患者に15 週間の有酸素運動の介入を,週に3 回,1 回15~35 分行った際に,運動介入群が対照群と比較して,リンパ浮腫の有害事象が高い割合で出現していた。しかし,身体活動によるものか明確でないため,さらなる検証が必要であるとしていた。Paramanandam ら38)によるシステマティックレビューでは,リンパ浮腫あるいはそのリスクを伴っている乳がん患者を対象に,筋力トレーニングの介入効果に関する11件の無作為化比較試験(1,091 例)において,低・中等度の筋力トレーニングの介入は安全であると結論づけていた。 運動療法は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶ ▶臨床疑問4‒4
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III章各論:クリニカル・エビデンス 3 )造血器腫瘍:3 件Vermaete ら20)によるシステマティックレビューでは,悪性リンパ腫の治療前・中・後の患者を対象に,身体活動とフィジカルフィットネスの2 種類の介入を行った13 件(2,450 例)の研究で,有酸素運動は実行可能で安全な介入であると結論づけていた。有酸素運動のトレーニングは,治療や治療後に影響はなかったと報告されていた。また,重篤な事象は起こらなかったが,1 件のみ運動関連の有害事象として,背中,腰,膝への影響があったとしていた。Persoon ら21)によるシステマティックレビューでは,幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者に有酸素運動や抵抗運動を介入した8 件の無作為化比較試験(介入群472 例)で,全体的に運動は安全であると結論づけていた。8 件の報告のうち,5 件で有害事象はなかったと報告されているが,その他の報告では記載がなかった。Bergenthal ら22)によるシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者(幹細胞移植中6 件)を対象に,有酸素運動の介入に関する9 件の無作為化比較試験(818 例)で,3件の重篤な有害事象を報告していた。例えば,出血,発熱,肺炎,深部静脈血栓,感染などが出現していたが,有酸素運動の介入による統計学的有意差は認められなかった。したがって,介入によるものなのかは定かではないと報告されていた。 4 )肺がん:2 件Crandall ら18)によるシステマティックレビューでは,手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象にした20 件(575 例)の無作為化比較試験(8 件)を含む研究で,9 件の有害事象を報告していた。1 件の研究では,2 例の患者の収縮期血圧が急激に下がり(<20 mmHg),他の研究では,腰痛,肩の炎症の悪化,肩の痛みがみられた。7 件の研究では有害事象の報告はなかった。Paramanandam ら17)によるシステマティックレビューでは,肺がん患者に有酸素運動などの運動介入を行った10 件(192 例,症例報告1 件含む)のうち,7 件の研究で肺がん患者は困難な症状や身体可動性に制限があるが,運動は安全であると報告していた。ただし,NCCN(National Comprehemsive Cancer Network)ガイドラインでは,運動を行う際には貧血や痛みなどの既往歴や合併症などを定期的にアセスメントすることが必要であるとしていた。 5 )大腸がん:1 件Cramer ら23)によるシステマティックレビューでは,大腸がん患者に有酸素運動や抵抗運動などを介入した5 件の無作為化比較試験(238 例)で,1 件のみ免疫とDNA へのダメージに関する報告がなされていた。 6 )頭頸部がん:1 件Carvalho ら1)によるシステマティックレビューでは,頭頸部がんの治療による肩の機能不全に対して運動を介入した3 件の無作為化比較試験(104 例)で,運動介入群は対照群と比較して,2 件の重篤でない有害事象を報告していた。1 件目は,放射線治療中の最後に出現した悪心のケースで,原因として運動前の栄養摂取が少ないために出現したのではないかと報告されていた。2 件目は,肩甲骨に傷口があるため痛みが増強したケースであった。
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7 )進行がん:1 件Albrecht ら26)によるシステマティックレビューでは,進行期のがん患者を対象にした16 件の無作為化比較試験や横断研究,ケースシリーズなどを含むさまざまな研究(患者816 例,家族169 例)のすべてにおいて,安全性と運動の実施可能性について支持していた。以上より,がん患者に対する運動は,一般的に安全で重篤な有害事象は起こりにくいと考えるが,まれに有害事象が発生する場合がある。運動に関する有害事象の防止としてガイドラインで提示されている留意事項や禁忌事項等を参考にし,運動の専門家のコンサルテーションや指導下による運動を実施することが望ましいと考える。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中・後の乳がん患者や前立腺がん患者,成人の造血器幹細胞移植中・後の患者に対して,運動療法を実施することは安全であると報告していた(A評価)。その他,大腸がんや婦人科がんに関しては,研究数に限界があるため,安全性に関する記載がなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,化学療法中・後,さらに造血器幹細胞移植患者において運動療法は安全に実施できることが記載されている。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが5 件ある。研究対象の内訳は,がん一般(1 件),乳がん(2 件),肺がん(1 件),小児(1 件)であった。Strasser ら10)によるシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん,頭頸部がんの治療中・後の患者を対象に,11 件の無作為化比較試験(1,167 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,抵抗運動は上下肢の筋力強化に大きな効果があり,腕のむくみやリンパ浮腫の軽減に対して有意な効果があった。介入期間は12 週間(2 件),4~ 6 カ月(4 件),1 年(4 件)で,週2~3 回であった。Chung ら37)によるシステマティックレビューでは,乳がん術後のリンパ浮腫患者を対象に,無作為化比較試験(8 件)と交差試験(3 件)の11 件(728 例)の文献的考察を行っている。その結果,数日~13 週間の運動は,リンパ浮腫の改善(1 年間)に有意な効果があった。運動は,有酸素運動,水中リンパ療法,ダンス療法,理学療法,多機能運動,包括的リハビリテーション,ウエイト・リフティングの7 種類で,理学療法や多様な運動の組み合わせが多かった。Paramanandam ら38)によるシステマティックレビューでは,リンパ浮腫あるいはそのリスクを伴っている乳がん患者を対象に,筋力トレーニングの介入効果に関する11件の無作為化比較試験(1,091 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,低・中等度の筋力トレーニングの介入は安全であり,対照群と比較して,腕の容積や乳がん起因によるリンパ浮腫の出現を悪化させることなく,上下肢の筋力を有意に強化させていた。筋力トレーニングの介入期間は5 週間~1 年間で,運動強度は主に低・中程度の運動であった。全患者は,指導下による圧迫包帯を活用していた。 運動療法は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問4‒5
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III章各論:クリニカル・エビデンス Crandall ら18)によるシステマティックレビューでは,手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象に,20 件(575 例)の報告(無作為化比較試験8 件含む)のメタアナリシスを含む文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,術後合併症の軽減,入院期間の短縮がみられた。運動の種類として,すべての研究に有酸素運動(主にウォーキングやサイクリング)が含まれており,その他に抵抗運動(1 件)や呼吸運動(9 件)があった。17 件が理学療法士や理学療法の専門医師,リハビリテーションチームなどの指導下による介入で,1 日2 回~1 週間2 回,1 回10~45 分の頻度で運動プログラムが実施されていた。Braam ら42)は,小児・青年期(19 歳以下)の急性リンパ性白血病などのがん治療中・後の患者を対象に,4 件の無作為化比較試験(107 例)と1 件の臨床比較対照試験(24例)の文献的考察を行っている。その結果,運動介入群は対照群と比較して,副作用症状の軽減に有効でなかった。運動は,身体活動トレーニングでさまざまな運動を含み,介入期間は10 週間~2 年間,頻度は1 回15~60 分であった。以上より,運動は,乳がん患者などの治療中・後のリンパ浮腫の軽減,肺がん患者の術後合併症の軽減,入院期間の短縮などに有用であると考える。しかし,小児がんの治療に伴う副作用症状に関しては有用ではなかった。検査・治療等に伴う有害事象に関する研究やサンプル数の限界があるため,今後さらなる質の高い研究が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,化学療法や放射線治療中の乳がん患者に対する運動療法の効果として,副作用症状が軽減するかもしれないと報告しているが,研究数に限界がありエビデンスレベルの評価はなされていない。化学療法や放射線治療後の乳がん患者に対する運動療法の効果として,苦痛症状や有害事象の緩和に関して効果がある研究とそうでない研究があり,エビデンスレベルはC 評価であった。婦人科がんの治療による下肢のリンパ浮腫に対する運動療法の安全な効果に関する研究は全く行われていなかった。がんのリハビリテーションガイドライン(2013)4)では,乳がん,造血器腫瘍の化学療法や放射線治療中・後のがん患者に,有酸素運動や筋力トレーニングを実施することは,有害事象の軽減(悪心・嘔吐,貧血,下痢,痛みなど),倦怠感の改善,免疫機能の改善が認められるため,行うよう強く推奨されている(推奨グレードA)。 1 全生存率(total mortality),原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。研究対象の内訳は,がんサバイバー(1 件),乳がん(2 件),大腸がん(1 件)であった。Ballard—Barbash ら49)によるシステマティックレビューでは,がんサバイバーを対象に,運動と死亡率などの関連について45 件の無作為化比較試験(13 件)を含む研究について文献的考察を行っている。その結果,27 件の観察研究で,運動は乳がんと大腸がんのすべての疾患特異的死亡率や全死亡率の低下に関連していたという一貫したエビデンスが示されていた。他のがんに関しては,運動と死亡率との関連において十分なエ 運動療法は,予後を改善するか? ▶ ▶臨床疑問4‒6
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ビデンスは得られなかった。Löf ら50)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーを対象とした運動と生命予後に関する12 件の無作為化比較試験(9 件)を含む研究について文献的考察を行っている。その結果,乳がんサバイバーにおける運動が生命予後に影響するという十分な知見は得られなかった。Je ら51)によるシステマティックレビューでは,大腸がん患者を対象に,運動と死亡率の関連について7 件の前向きコホート研究(11,647 例)のメタアナリシスを行っている。なお,フォローアップ期間は3.8~11.9 年であった。その結果,診断前・後の運動は両群とも大腸がんの特異的死亡率と全死亡率の低下に関連していた。診断前の運動群と非運動群の比較で,運動群の死亡リスクは0.75 であった(大腸がん特異的死亡率)。診断前の高い運動群は低い運動群と比較して,死亡リスクは0.70 で,同様に診断後に何か運動をした群の死亡リスクは0.74,診断後の高い運動群の死亡リスクは0.65 であった。Zhong ら52)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者を対象とした運動と死亡率の関連について16 件のコホート研究(42,602 例)のメタアナリシスを行っている。その結果,乳がん診断前・後の運動が,乳がんの特異的死亡率と全死亡率の軽減に関連があると結論づけていた。診断前に運動を実施している群の死亡リスクは0.82 で,診断前の低・中等度の運動群の死亡リスクは,0.81,0.83 であった(乳がん特異的死亡率)。診断前の全死亡率も同様の結果であった。診断後の乳がん特異的死亡率と全死亡率も同様であった。BMI<25,≧25,あるいは更年期の状態で比較した場合,全群において運動によって有意に死亡率が低下していた。特に,運動の介入によって,肥満女性は標準体重の女性と比較して,有意に死亡率が低下していた。また,閉経後の女性は閉経前の女性と比較して,死亡率が有意に低下していた。以上より,運動は,乳がんおよび大腸がん患者の死亡率を低下させる可能性があると考える。しかし,研究数や研究方法の限界があり,予後を改善するかまでは結論づけられない。今後,長期的な観察研究や無作為化比較試験,メタアナリシスの可能性を含めた研究が必要である。 既存のガイドラインとの整合性American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)3)では,大腸がん診断後の患者にレクレーション運動を行うことで,特異的死亡率と全死亡率を下げるかもしれないと報告されているがエビデンスレベルの評価には至っていない。 2無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (神里みどり)
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III章各論:クリニカル・エビデンス 【文 献】1) Carvalho AP, Vital FM, Soares BG. Exercise interventions for shoulder dysfunction in patients treated for head and neck cancer. Cochrane Database Syst Rev 2012; 4: CD008693 2) Tatham B, Smith J, Cheifetz O, et al. The efficacy of exercise therapy in reducing shoulder pain related to breast cancer: a systematic review. Physiother Can 2013; 65: 321-30 3) Schmitz KH, Courneya KS, Mattews C, et al; American College of Sports Medicine. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010; 42: 1409-26 4) 日本リハビリテーション医学会,がんのリハビリテーションガイドライン策定委員会 編.がんのリハビリテーションガイドライン,金原出版,2013 5) Baumann FT, Zopf EM, Bloch W. Clinical exercise interventions in prostate cancer patients―a systematic review of randomized controlled trials. Support Care Cancer 2012; 20: 221-33 6) Puetz TW, Herring MP. Differential effects of exercise on cancer-related fatigue during and following treatment: a meta-analysis. Am J Prev Med 2012; 43: e1-24 7) Mishra SI, Scherer RW, Snyder C, et al. Exercise interventions on health-related quality of life for people with cancer during active treatment. Cochrane Database Syst Rev 2012; 8: CD008465 8) Cramp F, Byron-Daniel J. Exercise for the management of cancer-related fatigue in adults. Cochrane Database Syst Rev 2012; 11: CD006145 9) Buffart LM, van Uffelen JG, RiphagenII, et al. Physical and psychosocial benefits of yoga in cancer patients and survivors, a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Cancer 2012; 12: 559 10) Strasser B, Steindorf K, Wiskemann J, et al. Impact of resistance training in cancer survivors: a meta-analysis. Med Sci Sports Exerc 2013; 45: 2080-90 11) Zeng Y, Luo T, Xie H, et al. Health benefits of qigong or tai chi for cancer patients: a systematic review and meta-analysis. Complement Ther Med 2014; 22: 173-86 12) Tomlinson D, Diorio C, Beyene J, et al. Effect of exercise on cancer-related fatigue: a meta-analysis. Am J Phys Med Rehabil 2014; 93: 675-86 13) Meneses-Echávez JF, González-Jiménez E, Ramírez-Vélez R. Supervised exercise reduces cancerrelated fatigue: a systematic review. J Physiother 2015; 61: 3-9 14) Carayol M, Bernard P, Boiché J, et al. Psychological effect of exercise in women with breast cancer receiving adjuvant therapy: what is the optimal dose needed? Ann Oncol 2013; 24: 291-300 15) Zou LY, Yang L, He XL, et al. Effects of aerobic exercise on cancer-related fatigue in breast cancer patients receiving chemotherapy: a meta-analysis. Tumour Biol 2014; 35: 5659-67 16) Battaglini CL, Mills RC, Phillips BL, et al. Twenty-five years of research on the effects of exercise training in breast cancer survivors: A systematic review of the literature. World J Clin Oncol 2014; 5: 177-90 17) Paramanandam VS, Dunn V. Exercise for the management of cancer-related fatigue in lung cancer: a systematic review. Eur J Cancer Care 2015; 24: 4-14 18) Crandall K, Maguire R, Campbell A, et al. Exercise intervention for patients surgically treated for Non-Small Cell Lung Cancer(NSCLC): a systematic review. Surg Oncol 2014; 23: 17-30 19) Van Haren IE, Timmerman H, Potting CM, et al. Physical exercise for patients undergoing hematopoietic stem cell transplantation: systematic review and meta-analyses of randomized controlled trials. Phys Ther 2013; 93: 514-28 20) Vermaete N, Wolter P, Verhoef G, et al. Physical activity, physical fitness and the effect of exercise training interventions in lymphoma patients:a systematic review. Ann Hematol 2013;92:1007—21 21) Persoon S, Kersten MJ, van der Weiden K, et al. Effects of exercise in patients treated with stem cell transplantation for a hematologic malignancy:a systematic review and meta—analysis. Cancer Treat Rev 2013;39:682—90 22) Bergenthal N, Will A, Streckmann F, et al. Aerobic physical exercise for adult patients with haematological malignancies. Cochrane Database Syst Rev 2014;11:CD009075 23) Cramer H, Lauche R, Klose P, et al. A systematic review and meta-analysis of exercise interventions for colorectal cancer patients. Eur J Cancer Care(Engl)2014; 23: 3-14 24) Keogh JW, MacLeod RD. Body composition, physical fitness, functional performance, quality of life, and fatigue benefits of exercise for prostate cancer patients: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2012; 43: 96-110 25) Gardner JR, Livingston PM, Fraser SF. Effects of exercise on treatment-related adverse effects for patients with prostate cancer receiving androgen-deprivation therapy: a systematic review. J Clin Oncol 2014; 32: 335-46
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26) Albrecht TA, Taylor AG. Physical activity in patients with advanced-stage cancer: a systematic review of the literature. Clin J Oncol Nurs 2012; 16: 293-300 27) Baumann FT, Bloch W, Beulertz J. Clinical exercise interventions in pediatric oncology: a systematic review. Pediatr Res 2013; 74: 366-74 28) Mustian KM. Yoga as treatment for insomnia among cancer patients and survivors: a systematic review. Eur Med J Oncol 2013; 1: 106-15 29) Fong DY, Ho JW, Hui BP, et al. Physical activity for cancer survivors: meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2012; 344: e70 30) Chan CL, Wang CW, Ho RT. A systematic review of the effectiveness of qigong exercise in supportive cancer care. Support Care Cancer 2012; 20: 1121-33 31) Singh F, Newton RU, Galvão DA, et al. A systematic review of pre-surgical exercise intervention studies with cancer patients. Surg Oncol 2013; 22: 92-104 32) Stene GB, Helbostad JL, Balstad TR, et al. Effect of physical exercise on muscle mass and strength in cancer patients during treatment―a systematic review. Crit Rev Oncol Hematol 2013; 88: 573- 93 33) Focht BC, Clinton SK, Devor ST, et al. Resistance exercise interventions during and following cancer treatment: a systematic review. J Support Oncol 2013; 11: 45-60 34) Kruijsen-Jaarsma M, Révész D, Bierings MB, et al. Effects of exercise on immune function in patients with cancer: a systematic review. Exerc Immunol Rev 2013; 19: 120-43 35) Bourke L, Homer KE, Thaha MA, et al. Interventions to improve exercise behaviour in sedentary people living with and beyond cancer: a systematic review. Br J Cancer 2014; 110; 831-41 36) Grande AJ, Silva V, Riera R, et al. Exercise for cancer cachexia in adults. Cochrane Database Syst Rev 2014; 11: CD010804 37) Chung C, Lee S, Hwang S, et al. Systematic review of exercise effects on health outcomes in women with breast cancer. Asian Nurs Res 2013; 7: 149-59 38) Paramanandam VS, Roberts D. Weight training is not harmful for women with breast cancerrelated lymphoedema: a systematic review. J Physiother 2014; 60: 136-43 39) Vermaete N, Wolter P, Verhoef G, et al. Physical activity, physical fitness and the effect of exercise training interventions in lymphoma patients: a systematic review. Ann Hematol 2013; 92: 1007-21 40) Cavalheri V, Tahirah F, Nonoyama M, et al. Exercise training undertaken by people within 12 months of lung resection for non-small cell lung cancer. Cochrane Database Syst Rev 2013; 7: CD009955 41) Cavalheri V, Tahirah F, Nonoyama M, et al. Exercise training for people following lung resection for non-small cell lung cancer―a Cochrane systematic review. Cancer Treat Rev 2014; 40: 585-94 42) Braam KI, van der Torre P, Takken T, et al. Physical exercise training interventions for children and young adults during and after treatment for childhood cancer. Cochrane Database Syst Rev 2013; 4: CD008796 43) Craft LL, Vaniterson EH, Helenowski IB, et al. Exercise effects on depressive symptoms in cancer survivors: a systematic review and meta-analysis. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2012; 21: 3-19 44) Brown JC, Huedo-Medina TB, Pescatello LS, et al. The efficacy of exercise in reducing depressive symptoms among cancer survivors: a meta-analysis. PLoS One 2012; 7: e30955 45) Mishra SI, Scherer RW, Snyder C, et al. Are exercise programs effective for improving healthrelated quality of life among cancer survivors? A systematic review and meta-analysis. Oncol Nurs Forum 2014; 41: e326-42 46) Mishra SI, Scherer RW, Geigle PM, et al. Exercise interventions on health-related quality of life for cancer survivors. Cochrane Database Syst Rev 2012; 8: CD007566 47) Lee JE, Loh SY. Physical activity and quality of life of cancer survivors: a lack of focus for lifestyle redesign. Asian Pac J Cancer Prev 2013; 14: 2551-5 48) Zeng Y, Huang M, Cheng AS, et al. Meta-analysis of the effects of exercise intervention on quality of life in breast cancer survivors. Breast Cancer 2014; 21: 262-74 49) Ballard-Barbash R, Friedenreich CM, Courneya KS, et al. Physical activity, biomarkers, and disease outcomes in cancer survivors: a systematic review. J Natl Cancer Inst 2012; 104: 815-40 50) Löf M, Bergström K, Weiderpass E. Physical activity and biomarkers in breast cancer survivors: a systematic review. Maturitas 2012; 73: 134-42 51) Je Y, Jeon JY, Giovannucci EL, et al. Association between physical activity and mortality in colorectal cancer: a meta-analysis of prospective cohort studies. Int J Cancer 2013; 133: 1905-13 52) Zhong S, Jiang T, Ma T, et al. Association between physical activity and mortality in breast cancer: a meta-analysis of cohort studies. Eur J Epidemiol 2014; 29: 391-404
p.246
III章各論:クリニカル・エビデンス ホメオパシーは,約200 年前にドイツ人の医師サミュエル・ハーネマンが体系化した医療であり,2 つの基本原則がある。1類似の原則:ある症状で苦しんでいる人に,健康な人に与えた場合に同じような症状を引き起こす物質〔ホメオパシー薬(レメディ)〕を投与すること。2最小限で効果的な投与を行うこと:ある原料をレメディにする過程で非常に高い希釈率で薄め,心身に悪影響を及ぼさず,自然治癒力に働きかける作用のみを得るようにして,患者の治療を行うこと。このようにして,ホメオパシーは,体に備わっている自然治癒力に働きかけ,患者が全体のバランスを取り戻しながら回復すると考えられている。レメディは3,000 種以上あるが,なぜ効くのかはいまだ解明されておらず,世界で170以上の無作為化比較試験や,多くの研究論文が報告されている1)。ホメオパシーは,現在世界の80 カ国以上で用いられ,特に欧州では約30%の人がセルフケアとして利用し,欧米人の75%がホメオパシーを認知している。ホメオパシーを行う治療者は,フランス,オーストリア,ハンガリー,ロシアなど,法的規制のもとに医師のみが行う国と,英国など法的規制のない国や,ドイツのように独自の形態を取っている国がある。日本では,なんら規制がないのが現状である。 疾患に対する医学的知識や臨床経験をもっている治療者から投与されたホメオパシーのレメディ自体は安全であることが多い。しかし,レメディを誤って使用し,新生児が死亡した症例も報告されている2,3)。こうした事例を受けて日本学術会議は,2010 年に会長談話として,『ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です』と発表している。また,2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日のPubMed での検索結果では,ホメオパシーが,がんの縮小や生存率向上に寄与したとする論文はなかった。こうしたことを踏まえ,ホメオパシーは慎重に行わなければならない。 ・患者背景が臨床試験ごとに異なる。・対照群の設定が研究ごとに異なる。・ほとんどの報告が小規模な試験である。・アウトカムの評価方法が臨床試験ごとに異なる。 1 サマリー 1 ホメオパシーの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 5 ホメオパシー
p.247
・長期的な効果の調査が不十分である。・今後,ホメオパシーのエビデンスを示すためには,さらなる研究が必要である。 ホメオパシーでの副作用的反応では,アグラベーションとプルービングに注意が必要である。アグラベーションは,病状が回復する前に一時的に悪化するという状態に使われる。これは全体の10%程度でしか起こらない。本来,アグラベーションが起こらずに回復するのが望ましく,これが起きたらホメオパシーをいったん中止すべきである。もし回復中の一時的な悪化でなければ病状の悪化であり,そのままホメオパシーを続ければ,前述のような最悪の事態を招く可能性がある。次にプルービングは,本来,「試験」という意味である。ハーネマンは,健康な人にレメディを投与して,引き起こされた症状を記録し,薬効を決めた。現在でも,レメディを服用することで,それが持つ像(症状)が引き起こされる可能性がある。健康な人がレメディを服用したり,誤ったレメディを飲めば,新たな症状(レメディが持つ症状)の出現の可能性があり危険である1)。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Homeopathy」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年1 月12 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:11 件 Homeopathy AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] ▶ 無作為化比較試験:5 件 Homeopathy AND(Randomized Controlled Trial[pt] OR Randomized Controlled Trial[ti] OR Randomised Controlled Trial[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件 PubMed:11 件 抄録を用いたスクリーニングで9 件除外・対象者ががん以外:6 件・ホメオパシー単独以外:3 件 2 件
p.248
III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(無作為化比較試験) 【文 献】1) 日本ホメオパシー医学会ホームページ.http://www.jpsh.jp/ 2) 河上 早,金涌佳雅,原田一樹,他.ホメオパシー治療下で,下痢・嘔吐の放置による脱水・低体重で死亡したアトピー性皮膚炎罹患児の一剖検例.防衛医大誌2014; 39: 122-6 3) 下村麻衣子,松重武志,井上裕文,他.ホメオパシーに起因したビタミンK 欠乏性頭蓋内出血の1 例.小児科臨床2011;64:1699—1702 PubMed:5 件 抄録,本文を用いたスクリーニングで0 件除外 5 件
p.249
1 痛 み 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 5 倦怠感 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 7 その他 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはないが,無作為化比較試験が2 件ある。Jacobs ら1)による無作為化比較試験では,手術,抗がん剤,放射線治療を完了した乳がんの女性のホットフラッシュに対して,プラセボと比較して,ホメオパシーが有用であったことを示す確証はないと結論している。しかし,全体的健康感の指標は改善する可能性があると述べている。Thompsonら2)による無作為化比較試験では,乳がんサバイバーにおけるエストロゲン減少の症状に対して,プラセボと比較して,ホメオパシーが有用であったことを示す確証はないと結論している。以上より,乳がん患者に対して,ホメオパシーによるホットフラッシュを含めたエストロゲン減少の症状を改善させる効果に対する根拠はない。 2 臨床疑問 ホメオパシーは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問5‒1
p.250
III章各論:クリニカル・エビデンス 1 不 安 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 抑うつ 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Milazzoら3)によるシステマティックレビューでは,ホメオパシーにはがん治療における効果(がんと闘うための体力増強,身体的・精神的な健康の改善,病気や治療の結果起こる痛みの緩和)を示す十分な確証はないと結論している。以上より,がん患者に対してホメオパシーは,従来の治療のみを行った群と比較して,全般的なQOL のうち,がんと闘うための体力増強,身体的・精神的な健康の改善,病気や治療の結果起こる痛みを改善させる根拠はない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1件,無作為化比較試験が3件ある。Kassab ら4)によるシステマティックレビューでは,ホメオパシー薬(Calendula)が放射線治療中の急性皮膚炎を予防する可能性があると結論している。また,化学療法による口内炎がホメオパシー薬(Traumeel S)により改善する可能性があると述べている。Pérol ら5)による無作為化比較試験では,標準的な悪心予防に複合ホメオパシー薬(Cocculine)を追加することは,早期乳がん患者における抗がん剤による悪心・嘔吐の予防には効果がないと結論している。 ホメオパシーは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問5‒2 ホメオパシーは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問5‒3 ホメオパシーは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問5‒4 ホメオパシーは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問5‒5
p.251
Oberbaum ら6)による無作為化比較試験では,ホメオパシー薬(Traumeel S)が骨髄移植を受けた小児の口内炎の苦痛と病悩期間を改善する可能性があると述べている。Balzarini ら7)による無作為化比較試験では,放射線治療における皮膚炎において,皮膚の熱感に対しては,ホメオパシー薬(Belladonna, X-ray)によって改善する可能性があると述べている。以上より,がん患者に対してホメオパシーは,プラセボと比較して,口内炎や放射線治療における皮膚炎を軽減させる可能性があると考えられる。一方で,抗がん剤による悪心・嘔吐の予防を軽減させる根拠はない。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 (遠藤光史) 【文 献】1) Jacobs J, Herman P, Heron K, et al. Homeopathy for menopausal symptoms in breast cancer survivors: a preliminary randomized controlled trial. J Altern Complement Med 2005; 11: 21-7 2) Thompson EA, Montgomery A, Douglas D, et al. A pilot, randomized, double-blinded, placebocontrolled trial of individualized homeopathy for symptoms of estrogen withdrawal in breast-cancer survivors. J Altern Complement Med 2005; 11: 13-20 3) Milazzo S, Russell N, Ernst E. Efficacy of homeopathic therapy in cancer treatment. Eur J Cancer. 2006; 42: 282-9 4) Kassab S, Cummings M, Berkovitz S, et al. Homeopathic medicines for adverse effects of cancer treatments. Cochrane Database Syst Rev 2009; 15; CD004845 5) Pérol D, Provençal J, Hardy-Bessard AC, et al. Can treatment with Cocculine improve the control of chemotherapy-induced emesis in early breast cancer patients? A randomized, multi-centered, double-blind, placebo-controlled Phase III trial. BMC Cancer 2012; 12: 603 6) Oberbaum M, Yaniv I, Ben-Gal Y, et al. A randomized, controlled clinical trial of the homeopathic medication TRAUMEEL S in the treatment of chemotherapy-induced stomatitis in children undergoing stem cell transplantation. Cancer 2001; 92: 684-90 7) Balzarini A, Felisi E, Martini A, et al. Efficacy of homeopathic treatment of skin reactions during radiotherapy for breast cancer: a randomised, double-blind clinical trial. Br Homeopath J 2000; 89: 8-12 ホメオパシーは,予後を改善するか? ▶臨床疑問5‒6
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III章各論:クリニカル・エビデンス アニマルセラピー(animal thrapy),動物介在療法(animal assisted therapy)は,動物と人との交流がもたらす健康,自立,生活の質の改善を目的に,補助療法・非薬物療法あるいはケアの一環として臨床で行われている活動である。アニマルセラピーの対象者は,うつ病や統合失調症,心的外傷後ストレス障害などの精神疾患の患者,情緒障害や学習障害を伴う子どもである。アニマルセラピーの利点として,生理的利点・心理的利点・社会的利点の3 点が挙げられる。その人に内在するストレスを軽減させたり,あるいは当人に自信をもたせたりといったことを通じて,情緒的安定,自主性や意欲の向上,社会性の改善,患者の自立と適応を高めることを目的としている。 ・ 介入方法が異なる可能性がある。・ 施術者による効果の違いがある可能性がある。・ 動物の訓練状態が異なる可能性がある ・ 症例数が少ない,試験のデザインが不明などのエビデンスが低い論文が多い。・ 無作為化比較試験が少なく,システマティックレビューがない。・ 方法,介入方法が統一されていない。・ アウトカムの評価が統一されていない。 ・ 人畜共通感染症・ 動物による外傷,咬傷・ 禁忌事項1開放創がある患者,皮膚疾患をもつ患者2動物に対するアレルギーを有する患者 1 サマリー 1 アニマルセラピーの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 6 アニマルセラピー
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[検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Animal therapy」「Animal assisted therapy」「Animal assisted」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年5 月28 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:0 件 Animal therapy OR Animal assisted therapy OR Animal assisted AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] ▶ 無作為化比較試験:1 件 Animal therapy OR Animal assisted therapy OR Animal assisted AND(Randomized Controlled Trial[pt] OR Randomized Controlled Trial[ti] OR Randomised Controlled Trial[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(無作為化比較試験) 5 文献検索の条件 1 件 PubMed:1 件 抄録,本文を用いたスクリーニングで0 件除外
p.254
III章各論:クリニカル・エビデンス 1 痛 み 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 5 倦怠感 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 1 不 安 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 抑うつ 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 臨床疑問 アニマルセラピーは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問6‒1 アニマルセラピーは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問6‒2
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3 その他 本臨床疑問に関連する無作為化比較試験が1 件ある。Johnson ら1)による無作為化比較試験では,気分,主観的健康感,一体感について調査されていたが,対照群と比較して統計学的有意差を認めなかった。以上より,アニマルセラピーは,がん患者の精神症状を軽減するかもしれないが,根拠は十分ではなく,有用であるとは結論づけられない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 (髙世秀仁) アニマルセラピーは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問6‒3 アニマルセラピーは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問6‒4 アニマルセラピーは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問6‒5 アニマルセラピーは,予後を改善するか? ▶臨床疑問6‒6
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III章各論:クリニカル・エビデンス 【文 献】1) Johnson RA, Meadows RL, Haubner JS, et al. Animal-assisted activity among patients with cancer: effects on mood, fatigue, self-perceived health, and sense of coherence. Oncol Nurs Forum 2008; 35: 225-32
p.257
リラクセーションとは,『広辞苑』によると,「心身の緊張をときほぐすこと,リラックスすること」とされている1)。医学的には,「ストレス反応として交感神経が興奮するのに対し,副交感神経の働きを優位にすること」と捉えることが多い。そのような状態をもたらす方法を「リラクセーション」としてここで扱う。リラクセーションには種々の方法があるが,いずれも意図的に心身の本来の調整力に働きかけて,内面からのリラックス状態を導くという共通点が指摘されている2)。リラクセーションを「筋肉の緊張状態を体系的に弛緩させる方法」と狭義に捉えて,漸進的筋弛緩法などを挙げることも可能だが,一般にはヨガ,アロマテラピー,音楽療法なども含めて広くリラクセーションとする場合が多い。また,いくつかの方法論を組み合わせたり,さまざまな心理療法や他の補完代替療法の構成要素とすることも多く,リラクセーションのバリエーションは豊富である。ストレス社会といわれる現代においてリラクセーションは日常語となっているが,何がリラクセーションに相当するかは「個人の主観的体験に負うところが多く,生活状況の変化とともに変わっていく」とも指摘されている3)。代表的な医学用語辞典にもリラクセーションの記載はなく,学術論文でも定義されずに使用される場合が少なくない。あいまいな定義ながらもPubMed で検索した「Relaxation therapy」の文献数は年々増加している。瞑想によるリラクセーションも報告例が増えているが,マインドフルネスストレス低減法注1)など確立された方法も出現し,今後もさらに研究が進むことが予想される。 注1)マインドフルネスストレス低減法(mindfulness-based stress reduction;MBSR):マインドフルネスは,南伝系の仏教におけるヴィパッサナー瞑想をもとに,ベトナムの禅宗仏教僧のティク・ナット・ハンが創始したもので,瞑想の一種と認識されることが多い。日本マインドフルネス学会では,マインドフルネスを,「今,この瞬間の体験に意図的に意識を向け,評価をせずに,とらわれのない状態で,ただ観ること」と定義している4)。このような意識状態にあることで,今を生きているというリアリティの自覚が高まり,心に深い落ち着きと存在感をもたらされるとする。マインドフルネスストレス低減法は,ストレスに対する介入法あるいは健康教育訓練法として,1970年代にKabat-Zinn が開発したヨガや瞑想で構成された8 週間のプログラムである。身体的ストレス,特に痛みの緩和に焦点をあわせているが,事象をあるがままに観照するマインドフルネスを基礎としているため,何らかの成果を目指して行うものではない。つまりリラクセーションを目指して行うことはなく,結果としてリラクセーションがもたらされ,医学的な効果が現れることもあるという立場をとる5)。 1 サマリー 1 リラクセーションの概要 7 リラクセーション
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III章各論:クリニカル・エビデンス ・ 飲酒,飲食直後,極端な空腹状態は避ける。・ 入眠・脱力などによる転倒に備え,安全な場所で行う。・ 血圧の低下が予想されるため,低血圧の患者には留意する。・ 術後・化学療法後,発熱や強い痛みなど,身体症状が強いときは避ける。・ 著しい気分の落ち込みや不安など,強い精神症状があるときは避ける。・ リラクセーション後は簡単なストレッチングを行い,抑制されていた交感神経活動を 高める(消去動作)必要がある。・ てんかんなどの精神疾患をもつ人,心的外傷の既往のある人には発作の出現や症状の 悪化の可能性がある。・ 気管支喘息の発作が誘発される可能性がある。・ 漸進的筋弛緩法注2)では,体力低下や疲労が著明な人は,より症状が強くなる可能性が あり,特に循環器疾患,精神疾患,がんなどの患者では注意を要する。・ 自律訓練法注3)では,呼吸・循環器に疾患のある人は,その器官の公式を唱えることで 症状の悪化を来す可能性が示唆されている。 注2) 漸進的筋弛緩法:全身の筋肉を系統的に緊張・弛緩させる方法。筋肉の緊張した状態と弛緩した状態の違いに注意を向けながら,緊張状態を自分の意志で弛緩状態にコントロールしていくことを目指す。注3) 自律訓練法:催眠研究に基づいて創案されたセルフコントロールによる心身弛緩法。背景公式と6 つの公式からなる標準練習が基本となる。ぼんやりと公式に心を向けて(受動的意識集中),公式が示す身体部位に暗示どおりの反応が生じてくるのを待ち,味わうことを繰り返して練習する。公式は以下のとおり(文言は一例)。1背景公式(安静練習):「気持ちが落ち着いている」2第1 公式(重感練習):「腕が重たい」3第2 公式(温感練習):「腕が温かい」4第3 公式(心臓調整練習):「心臓が規則正しく脈打っている」5第4 公式(呼吸調整練習):「呼吸が落ち着いている」6第5 公式(腹部温感練習):「お腹が温かい」7第6 公式(額涼感練習):「額が心地よく涼しい」 ・ 介入方法が研究ごとに異なる。例えば「Relaxation—based intervention」という同じ 名称であってもプログラムの内容は研究ごとに異なる。複数の技法の組み合わせが多く,施行期間・回数などバリエーションは豊富である。・「システマティックレビュー」で検索したが,内容は「総説」でエビデンスレベルの高 い研究はない。・ 患者背景が研究ごとに異なる。特に乳がん患者を対象としたものが多く,結果として 女性の比率が高くなっている。・ 対照群の設定が研究ごとに異なる。・ 盲検化が難しい。 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題
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・ アウトカムの評価方法が研究ごとに異なる。・ 治療期間が比較的短期間であり,長期的効果は不明なことが多い 前述の「2.使用上の一般的な注意事項」を参照。 PubMed のMeSH「Complementary Therapies」に記載されているリラクセーション関連用語「Relaxation therapy」を検索語とした。1995 年に「Relaxation therapy」から独立した「Meditation」も検索対象に含めた。本書の第1 版(2008 年,Web 版)で検索対象とした自律訓練法(Autogenic training)・漸進的筋弛緩法(Progressive muscle relaxation)は「Relaxation therapy」ではなく,「Hypnosis」に含まれるが,第1 版との連続性を確保するために検索対象とした。「アロマテラピー・マッサージ」「鍼灸」「ヨガ」など,他項で扱われている補完代替療法を除外したところ,看護指導やカウンセリング,催眠療法などの雑多な方法論のみが残る結果となった。本項は,一般的なリラクセーションの概念とは乖離した「リラクセーション」となったため,「アロマテラピー・マッサージ」「鍼灸」「ヨガ」など他項を参照しつつ,補足的なリラクセーションの項目と捉えていただきたい。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Relaxation therapy」「Meditation」「Autogenic training」「Progres- sive muscle relaxation」 [検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年6 月6 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:40 件・Relaxation therapy:31 件 Relaxation therapy AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR metaanalysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp] : 2014/12/31[dp]・Meditation:8 件 Meditation AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp] : 2014/12/31[dp]・Autogenic training:0 件 Autogenic training AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR metaanalysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp] : 2014/12/31[dp]・Progressive muscle relaxation:1 件 Progressive muscle relaxation AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp] : 2014/12/31[dp] 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
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III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 【参考文献】1) 新村 出 編.広辞苑,第6 版,岩波書店,2008 2) 小板橋喜久代,荒川唱子 編著.リラクセーション法入門―セルフケアから臨床実践へとつなげるホリスティックナーシング,日本看護協会出版会,2013 3) 中北充子.「リラクセーション」の概念分析: 産後早期の女性を対象としたケアへの適用の検討. KEIO SFC JOURNAL 2010; 10: 57—69 4) 日本マインドフルネス学会ホームページ(http://mindfulness.jp.net/) 5) 春木 豊,石川利江,河野梨香,他.「マインドフルネスに基づくストレス低減プログラム」の健康 心理学への応用.The Japanese Journal of Health Psychology 2008; 21(2): 57—67 抄録,本文を用いたスクリーニングで23 件除外・他項で扱われているもの:10 件運動療法:1 件音楽療法:1 件鍼灸治療:2 件ヨガ:6 件・対象者ががん以外:1 件・小児を対象としたもの:1 件・重複論文:3 件・補完代替療法に含まれないもの:8 件 保険診療の認知行動療法,補完代替療法の費用分析など17 件 PubMed:40 件
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1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Johannsen ら1)によるシステマティックレビューでは,乳がん治療後の患者の痛みに対する,心理社会的介入の効果を26 件(うち無作為化比較試験は16 件)から評価している。個々の研究では有効性が示唆されるものもあるが,介入方法(患者教育,支持的グループ療法,誘導イメージ療法・ヨガ・瞑想などを構成要素とするリラクセーション),評価方法などが多様で結論に至れず,予備的な研究と位置づけている。Sheinfeld Gorin ら2)によるシステマティックレビューでは,37 件の無作為化比較試験から心理社会的介入は痛みの強さ,痛みによる日常生活動作制限に対し中等度の効果をもたらすと結論づけている。しかし,心理社会的介入としてあげられているのは,スキル訓練(認知行動療法含む),患者教育,支持的—表現的精神療法で,一般的なリラクセーションの概念との乖離がみられる。Bardia ら3)は,補完代替療法によるがん疼痛の緩和をレビューしている。さまざまの補完代替療法のうち,リラクセーションに関連するものでは,サポートグループ(2 件),催眠療法(1 件),リラクセーション/イメージ療法(2 件)で有意な効果を認めた。しかし,個々の無作為化比較試験を再評価したのみに留まり,有望としながらもリラクセーションによるがん疼痛の緩和は根拠不十分としている。Devine4)によるシステマティックレビューでは,痛みに対する心理教育的介入注4)を有望な補助的手段になり得るとしている。ここでいう心理教育的介入とは,リラクセーション(筋弛緩法,誘導イメージ療法,自己催眠など)を基本とした認知行動的介入,鎮痛薬使用方法についての患者教育,支持的カウンセリングなどである。Pan ら5)によるシステマティックレビューでは,前終末期の患者の諸症状(痛みのほか,呼吸困難,悪心・嘔吐など)に補完代替療法が有効かを検討しているが,無作為化比較試験は少なく,質の高い研究は得られていない。支持的グループ療法が乳がん患者の痛みを軽減し,さらに催眠療法を併用することにより効果が高まること,骨髄移植患者の口内炎の痛みがリラクセーション(筋弛緩法,イメージ療法,認知行動療法を含む)で改善することが示唆されている。終末期患者の痛みの軽減にリラクセーションが有効とする研究もあるが,効果の評価があいまいで介入も個別化されているため,結果の解釈は慎重にすべきである。以上より,リラクセーションが,がん患者の痛みを軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 注4)心理教育:「心理教育を中心とした心理社会援助プログラムガイドライン」6) (2004)によると,心理教育は「精神障害やエイズなど受容しにくい問題を持つ人たちに,正しい知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝え,病気や障害の結果もたらされる諸問題・諸困難に対する対処方法を習得してもらうことによって,主体的な療養生活を営めるよう援助する技法」と定義されている。心理教育は単なる「情報提供の場」ではなく,問題や困難への対処や工夫をともに考える「対処につ 2 臨床疑問 リラクセーションは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問7‒1
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III章各論:クリニカル・エビデンス いて相談できる場」である。さらに,こうした場におけるコミュニケーションが,当事者や家族の「心を支える場」になっていることが示されている7)。当初は,精神医療の分野で実施されていたが,エビデンスの蓄積とともに対象・実施スタイルが多様化している。がんを含むさまざまな身体疾患にも応用され,患者本人を対象とする1 対1 の心理教育もあれば,グループで行うもの,さらには家族を対象とするものまで,目的に応じて実施されている。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3 呼吸器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Pan ら5)によるシステマティックレビューでは,前終末期の患者の諸症状(呼吸困難のほか,痛み,悪心・嘔吐など)に補完代替療法が有効かを検討しているが,呼吸訓練とともに漸進的筋弛緩法を行うことで呼吸困難が改善する可能性を示唆している。Zhao ら8)によるシステマティックレビューでは,肺がん患者の呼吸困難に対する非薬物的介入の有効性を示している。介入方法は研究ごとに異なるが(呼吸トレーニング,リラクセーション,心理社会的サポートなどの複合が多い),看護師による個別指導とサポートが介入の効果を増している可能性を示唆している。しかし,無作為化比較試験5件と研究数が少なく,今後の研究の集積が待たれる。以上より,リラクセーションが,がん患者の呼吸器症状を軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Finnegan—John ら9)によるシステマティックレビューは,15 件の無作為化比較試験を含むが,ヨガ,鍼灸,健康食品など幅広い補完代替療法を対象に含み,リラクセーションに該当する研究は3 件(うち1 件は鍼との併用)のみである。研究の質は低く,リラクセーションががん患者の倦怠感に有効であるかどうかは結論できないと述べている。以上より,リラクセーションが,がん患者の倦怠感を軽減する根拠はない。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Ledesma ら10)によるシステマティックレビューでは,10 件(うち無作為化比較試験は4 件)の検討により,マインドフルネスストレス低減法(ヨガと瞑想で構成されたプログラム;P82,注1 参照)が,がん患者のメンタルヘルスに有用であることを示し,このなかで睡眠障害にも有用であることを言及している。Smithら11)によるシステマティックレビューでは,研究の質による制限はあるものの,マインドフルネスストレス低減法で睡眠の質やストレスの軽減などに有意な効果が認められ,さらに瞑想の実践の期間と効果に相関が認められたと報告している。
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以上より,リラクセーションが,がん患者の睡眠障害を軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。Faller ら12)によるシステマティックレビューでは,198 件の研究から,精神的苦痛・不安・うつに対するリエゾン的介入(psycho-oncologic intervention,心理療法,リラクセーション,情報提供など)の効果を検討している。心理療法と心理教育で有意な効果が介入直後にみられ,減弱するものの効果は中期間(6 カ月以下)継続し,さらにグループ療法では長期間(6 カ月以上)持続した。リラクセーション(イメージ療法など)は有効であるが,効果は持続しないことが示された。精神的苦痛が大きい群では介入の効果が高く,介入期間が長いほど効果が持続することが示された。しかし,質の低い研究も含まれていることから,結果の解釈には注意する必要があるとしている。Ledesma ら10)によるシステマティックレビューでは,10 件(うち無作為化比較試験は4 件)の検討により,マインドフルネスストレス低減法がさまざまな精神症状(不安,ストレス過剰,疲労感,気分障害など)の緩和に有効としている。Rodin ら13)は,がん患者のうつ症状の治療に関してレビューしている。11 件の無作為化比較試験のうち,4 件が非薬物的介入であり,看護指導と情報提供で有意なうつ症状の改善が認められたが,心理療法(2 件)では有意な結果が得られなかった。しかし研究の質が低く,結論は保留としている。Ott ら14)らによるシステマティックレビュー(9 件:うち無作為化比較試験は3 件)でも,マインドフルネス瞑想が精神的苦痛とストレス軽減に有用である可能性が示されている。以上より,リラクセーションが,がん患者の精神症状を軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Faller ら12)によるシステマティックレビューでは,198 件の研究から,QOL に対するリエゾン的介入(心理療法,心理教育,リラクセーション,情報提供など)の効果を検討している。心理療法と心理教育で有意なQOL の改善がみられ,心理療法(個人)で リラクセーションは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問7‒2 リラクセーションは,全般的なQOL を改善するか? ▶ ▶臨床疑問7‒3
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III章各論:クリニカル・エビデンス は長期間(6 カ月以上)効果が持続するが,グループ療法では効果が持続しないことが示された。介入期間が長いほど効果が持続する傾向が把握されたが,質の低い研究も含まれていることから,結果の解釈には注意する必要がある。Shneerson ら15)によるシステマティックレビューでは,13 件の研究から補完代替療法によるQOL の改善を検討している。このうちリラクセーションは3 件(うち2 件がマインドフルネスストレス低減法)で,いずれの研究でも精神的QOL に有意な改善がみられた。しかし,3 件ともrisk of bias(ROB)が高く,結果の解釈には注意が必要であるとしている。以上より,リラクセーションが,がん患者の全般的なQOL を改善する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 1 化学療法による悪心・嘔吐 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューは1 件のみである。Lotfi—Jamら16)によるシステマティックレビューでは,77件の無作為化比較試験から,化学療法に関連する有害事象の非薬物的対策についてまとめている。このうちリラクセーション(イメージ療法,漸進的筋弛緩法を含む)の悪心・嘔吐に対する軽減効果を検討したものは13 件で,有望とはしながらも質の高い研究は少なく,有用性について結論を導き出すのは困難としている。以上より,リラクセーションが,化学療法による悪心・嘔吐を軽減する可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 2 ホットフラッシュ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Rada ら17)によるシステマティックレビューでは,乳がんサバイバーのホットフラッシュに対する,ホルモン補充療法以外の方法の効果を検討している。16 件の無作為化比較試験のうち,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など薬物療法が9 件を占め,リラクセーションは同一著者による2 件のみであった(いずれも呼吸療法,筋弛緩法,イメージ療法などを構成要素とする方法)。このうち1 件(症例数を増やした再調査)で,ホットフラッシュの頻度・重症度が有意に減少したが,介入終了3 カ月で効果は消失している。Tremblay ら18)によるシステマティックレビューでは,14 件の研究からリラクセーションを含む心理教育的介入のホットフラッシュに対する改善効果を検討しているが,乳がん患者を対象とした研究は3 件(うち無作為化比較試験は2 件,一般閉経後女性を一部含む)のみである。リラクセーション(呼吸法,心理教育など)のホットフラッシュ リラクセーションは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶ ▶臨床疑問7‒4 リラクセーションは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問7‒5
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への効果を示唆する研究もあるが,薬物療法やほかの補完代替療法の併用症例も含まれており,研究の質も低いことから,結果の解釈には留意すべきであるとしている。以上より,リラクセーションが,がん患者のホットフラッシュを改善させる可能性は示唆されるが十分な根拠はない。 3 その他 Luebbert ら19)によるシステマティックレビューでは,手術以外のさまざまながん治療(化学療法,放射線治療,骨髄移植,温熱療法)に伴う治療関連症状の改善に,リラクセーション(漸進的筋弛緩法,イメージ療法,その組み合わせが多くを占める)による介入を試みた15 件の報告をまとめている。がん治療の種類による差は認めず,悪心,痛み,心拍数,血圧に介入による効果を認めたほか,うつ,不安,敵対心などの精神状態にも改善を認め,リラクセーションは有効な手段と結論づけている。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (井寺奈美) 【文 献】1) Johannsen M, Farver I, Beck N, et al. The efficacy of psychosocial intervention for pain in breast cancer patients and survivors: a systematic review and meta-analysis. Breast Cancer Res Treat 2013; 138: 675-90 2) Sheinfeld Gorin S, Krebs P, Badr H, et al. Meta-analysis of psychosocial interventions to reduce pain in patients with cancer. J Clin Oncol 2012; 30: 539-47 3) Bardia A, Barton DL, Prokop LJ, et al. Efficacy of complementary and alternative medicine therapies in relieving cancer pain: a systematic review. J Clin Oncol 2006; 24: 5457-64 4) Devine EC. Meta-analysis of the effect of psychoeducational interventions on pain in adults with cancer. Oncol Nurs Forum 2003; 30: 75-89 5) Pan CX, Morrison RS, Ness J, et al. Complementary and alternative medicine in the management of pain, dyspnea, and nausea and vomiting near the end of life. A systematic review. J Pain Symptom Manage 2000; 20: 374-87 6) 厚生労働省精神・神経疾患研究委託費統合失調症の治療およびリハビリテーションのガイドライン作成とその実証的研究.心理教育を中心とした心理社会援助プログラムガイドライン,2004 7) 苅山和生.リカバリー志向による双方向心理教育の展開.保健医療技術学部論集2008; 2: 23-31 8) Zhao I, Yates P. Non-pharmacological interventions for breathlessness management in patients リラクセーションは,予後を改善するか? ▶ ▶臨床疑問7‒6
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III章各論:クリニカル・エビデンス with lung cancer: a systematic review. Palliat Med 2008; 22: 693-701 9) Finnegan-John J, Molassiotis A, Richardson A, et al. A systematic review of complementary and alternative medicine interventions for the management of cancer-related fatigue. Integr Cancer Ther 2013; 12: 276-90 10) Ledesma D, Kumano H. Mindfulness-based stress reduction and cancer: a meta-analysis. Psychooncology 2009; 18: 571-9 11) Smith JE, Richardson J, Hoffman C, et al. Mindfulness-Based Stress Reduction as supportive therapy in cancer care: systematic review. J Adv Nurs 2005; 52: 315-27 12) Faller H, Schuler M, Richard M, et al. Effects of psycho-oncologic interventions on emotional distress and quality of life in adult patients with cancer: systematic review and meta-analysis. J Clin Oncol 2013; 31: 782-93 13) Rodin G, Lloyd N, Katz M, et al. The treatment of depression in cancer patients: a systematic review. Support Care Cancer 2007; 15: 123-36 14) Ott MJ, Norris RL, Bauer-Wu SM. Mindfulness meditation for oncology patients: a discussion and critical review. Integr Cancer Ther 2006; 5: 98-108 15) Shneerson C, Taskila T, Gale N, et al. The effect of complementary and alternative medicine on the quality of life of cancer survivors: a systematic review and meta-analyses. Complement Ther Med 2013; 21: 417-29 16) Lotfi-Jam K, Carey M, Jefford M, et al. Nonpharmacologic strategies for managing common chemotherapy adverse effects: a systematic review. J Clin Oncol 2008; 26: 5618-29 17) Rada G, Capurro D, Pantoja T, et al. Non-hormonal interventions for hot flushes in women with a history of breast cancer. Cochrane Database Syst Rev 2010; 9: CD004923 18) Tremblay A, Sheeran L, Aranda SK. Psychoeducational interventions to alleviate hot flashes: a systematic review. Menopause 2008; 15: 193-202 19) Luebbert K, Dahme B, Hasenbring M. The effectiveness of relaxation training in reducing treat- ment-related symptoms and improving emotional adjustment in acute non-surgical cancer treatment: a meta-analytical review. Psychooncology 2001; 10: 490-502
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日本音楽療法学会は,音楽療法を「音楽のもつ生理的,心理的,社会的働きを用いて,心身の障害の回復,機能の維持改善,生活の質の向上,行動の変容などに向けて,音楽を意図的,計画的に使用すること」と定義しており,米国のNational Center for Complementary and Integrative Health(NCCIH)によれば,音楽療法は補完代替療法のなかのmind—body interventions(心身医療的システム)に分類される。その対象と場は多岐にわたり,発達障害,身体障害,精神障害,不登校,引きこもりなどの児童・青年・成人期に対しては,学校,施設,作業所,病院,精神病院,自宅などが,認知症をはじめとするさまざまな慢性疾患や身体障害,精神障害などを抱える高齢者に対しては,病院,精神病院,老人保健施設,通所(入所)高齢者施設,自宅などが実践の場となり得る。また近年は,ホスピスや緩和ケア病棟における終末期医療,緩和ケア領域で果たし得る役割にも注目が集まっている。しかし,医学的な観点から音楽療法を捉えた場合,わが国では音楽療法士が医療職ではないことが問題となる。すなわち,音楽療法士が治療を目的としたtherapy を単独で行うことは法的に許容されない。この問題に対処すべく,医師の指示の下に自由診療として行う場合や作業療法のなかに組み込む場合があるが,ホスピスや緩和ケア病棟などの入院患者を対象とした音楽療法の多くは,内容が優れていてもtherapy ではなくservice として位置づけられているのが現状である。今回検索したPubMed,あるいはThe Cochrane Library に掲載されている論文やUp To Date の提言のほとんどは海外由来であり,わが国において質の高い音楽療法がtherapy として展開される環境が整うまでには依然課題が多いといわざるを得ない。 ・ 明確な意思表示ができない,あるいは移動能力の乏しい対象者は音から逃げられない。・ 聴力障害(老人性難聴・各種疾患による聴力障害)の存在。・ 聴覚過敏(自閉症などによる)の存在。・ 反応性てんかん発作の可能性。・ 身体的,心理的負荷増大の可能性。・ 保険適用がない。 ・ 患者背景が臨床試験ごとに異なる。 1 サマリー 1 音楽療法の概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 8 音楽療法
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III章各論:クリニカル・エビデンス ・ 被験者数が少ない。・ 効果が小さく,またその評価方法が臨床試験ごとに異なる。・ 対照群の設定が困難。・ 盲検化が難しい。・ 長期的な効果の調査が不十分。・ 施術者個々の能力,適応や方法に差がある。 患者に「2.使用上の一般的な注意事項」で述べたような身体的制限がなく,本人と家族の希望があれば,あるいは拒否がなければ,音楽療法の適応に絶対的な禁忌はない。また,展開される場にも制限はない。しかし,がん患者の心身の状態は日または時間の単位で変化し得るため,適応の有無,施術時間,内容についてその都度慎重な検討が必要となる。また,免疫機能の低下により感染症罹患のリスクが高い場合があり,施術者自身や楽器が感染源とならないような衛生面の管理が必要である。さらに,死に向かうプロセスにおける音楽(療法)は,対象者とその家族のみならず施術者からもコントロールの難しい心理反応を引き出す可能性があり,それが思わぬ成果をもたらす場合もあれば,陰性感情となって後の経過に取り返しのつかない影響を及ぼす場合もある。音楽療法を依頼する医療者や施術者がこのことを理解し,適切に対処する能力を養うと同時に,関係者が密に連携し得る環境を構築することが極めて重要である。 本項では,システマティックレビューのなかに予後に関する報告がなかったため, 1件の無作為化比較試験を参照した。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Music therapy」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年6 月9 日[検 索 式] ▶ システマティックレビュー:15 件 Music therapy AND(cochrane database syst rev[ta] OR meta-analysis[pt] OR meta-analysis[ti] OR systematic review[ti])AND Cancer AND 2000/01/01[dp]: 2014/12/31[dp] 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
p.269
●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 抄録を用いたスクリーニングで2 件除外・対象者ががん以外:2 件 本文を用いたスクリーニングで3 件除外・対象者ががん以外:1 件・音楽療法以外:2 件 10 件 13 件 PubMed:15 件
p.270
III章各論:クリニカル・エビデンス 1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが5 件ある。そのうち2 件は検査時に関する報告である。Poder ら1)によるシステマティックレビューでは,小児がん領域における3 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行っている。音楽療法は不安,つらさ,ストレス,痛みなどを軽減することにより患児の良好な状態に寄与し得るが,全般的には強い根拠があるとはいいきれないとまとめている。Coleら2)によるシステマティックレビューでは,Cochrane Library,Cinahl,Medline, Natural Standerd,Scopus を検索し,7 件の手術患者,3 件の薬物療法患者,1 件の手術・薬物療法患者,4 件の集中治療患者,2 件の妊婦について文献的考察を行っている。すなわち,悪性疾患以外の対象者も含まれているが,これによれば,音楽療法は疼痛治療の補助療法として有用であり,安全かつ看護の一環としても利用可能であるとされている。Bardia ら3)によるシステマティックレビューでは,3 件の非盲検試験のうち1 件で音楽療法が痛みの軽減に有用であったが,いずれの試験も被験者数が少なく,短期的な効果のみが測定されている点に問題があると指摘している。以上より,音楽療法は,がん患者の痛みを軽減し得るが,有用性が確立されているとは結論づけられない。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Bradt ら4)によるシステマティックレビューでは,音楽療法は不安,気分,QOL を改善し,心拍数,呼吸数,血圧,痛みをやや軽減し得るが,倦怠感や全身状態を改善し得る根拠はないと述べている。Zhangら5)によるシステマティックレビューでは,2件の無作為化比較試験において音楽療法により倦怠感が悪化していた。以上より,音楽療法は,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論づけられない。 2 臨床疑問 音楽療法は,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問8‒1
p.271
6 睡眠障害 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが6 件ある。Archer ら6)によるシステマティックレビューでは,アート,音楽,ダンスなど種々のcreative psychological interventions(CPIs)の効果について文献的考察を行っている。そのうち音楽療法に関する報告は3 件あった。各試験の結果,CPIs は全体として不安,うつ,QOL,コーピング,ストレス,怒り,気分を改善したが,身体症状の改善に対する寄与は少なく,各療法による効果の違いは明らかではなかった。Poder ら1)によるシステマティックレビューでは,小児がん領域における3 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行い,音楽療法は,不安,痛みを改善し,ゲームへの参加,コミュニケーションなどを促進し,患児の良好な状態に寄与し得るが,全般的には強い根拠があるとはいいきれないとまとめている。Boehm ら7)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者に対する芸術療法に関する11 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行っている。そのうち音楽療法に関する報告は3 件あった。各試験の結果,音楽療法も含めた芸術療法は全体として不安を改善したが,うつとQOL の改善に対する寄与は認められなかった。Nightingale ら8)によるシステマティックレビューでは,13 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽療法は11 件で不安を改善し,2 件では不安の改善に寄与しなかったと述べている。一方,対象がさまざまであり,試験デザインや音楽療法そのものにも違いあるという問題点も指摘している。Bradt ら4)によるシステマティックレビューでは,30 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽療法は不安と気分の改善には寄与し得るが,うつへの効果は支持されないと報告している。Zhang ら5)によるシステマティックレビューでは,32 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽療法は17 件で不安を軽減し,7 件でうつを改善したと報告している。以上より,音楽療法は,がん患者の不安を軽減し得るが,うつの軽減には必ずしも有用であるとは結論づけられない。また,現時点で,上記以外の精神症状に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 音楽療法は,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問8‒2
p.272
III章各論:クリニカル・エビデンス 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Archer ら6)によるシステマティックレビューでは,アート,音楽,ダンスなど種々のcreative psychological interventions(CPIs)の効果について文献的考察を行っている。そのうち音楽療法に関する報告は3 件あった。各試験の結果,CPIs は全体として精神症状や気分障害とともにQOL を改善するが,各療法による効果の違いは明らかではなかった。Boehm ら7)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者に対する芸術療法に関する11 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行っている。そのうち音楽療法に関する報告は3 件あった。各試験の結果,音楽療法も含めた芸術療法はQOL の改善に寄与しなかった。以上より,音楽療法は,QOL の改善に必ずしも有用であるとは結論づけられない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はないが,Zhang ら5)によるシステマティックレビューのなかに,2 件で音楽療法により倦怠感が悪化したという記載がある。しかし,その他の試験結果も含めて重篤な有害事象は報告されてない。以上より,音楽療法による有害事象は軽微であると考えられる。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Thrane ら9)によるシステマティックレビューでは,音楽療法は,白血病の小児に対して腰椎穿刺を施行する際の痛みと不安を軽減し得た。Galaal ら10)によるシステマティックレビューでは,6 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,コルポスコピーを施行する際の音楽は被験者の不安と痛みを軽減すると報告している。以上より,音楽療法は,検査・治療等の有害事象を軽減し得ると考えられるが,限られた範囲での報告である。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。Hilliard ら11)によれば,終末期がん患者に対する1 件の臨床試験11)で,生命予後の延長には寄与しなかったことが報告されている。 音楽療法は,全般的なQOL を改善するか? ▶ ▶臨床疑問8‒3 音楽療法は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶ ▶臨床疑問8‒4 音楽療法は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶ ▶臨床疑問8‒5 音楽療法は,予後を改善するか? ▶ ▶臨床疑問8‒6
p.273
2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (儀賀理暁) 【文 献】1) Poder TG, Lemieux R. How effective are spiritual care and body manipulation therapies in pediatric oncology? A systematic review of the literature. Glob J Health Sci. 2013; 6: 112-27 2) Cole LC, LoBiondo-Wood G. Music as an adjuvant therapy in control of pain and symptoms in hospitalized adults: a systematic review. Pain Manag Nurs 2014; 15: 406-25 3) Bardia A, Barton DL, Prokop LJ, et al. Efficacy of complementary and alternative medicine therapies in relieving cancer pain: a systematic review. J Clin Oncol 2006; 24: 5457-64 4) Bradt J, Dileo C, Grocke D, et al. Music interventions for improving psychological and physical outcomes in cancer patients. Cochrane Database Syst Rev 2011; 8: CD006911 5) Zhang JM, Wang P, Yao JX, et al. Music interventions for psychological and physical outcomes in cancer: a systematic review and meta-analysis. Support Care Cancer 2012; 20: 3043-53 6) Archer S, Buxton S, Sheffield D. The effect of creative psychological interventions on psychological outcomes for adult cancer patients: a systematic review of randomised controlled trials. Psychooncology 2015; 24: 1-10 7) Boehm K, Cramer H, Staroszynski T, et al. Arts therapies for anxiety, depression, and quality of life in breast cancer patients: a systematic review and meta-analysis. Evid Based Complement Alternat Med 2014; 2014: 103297 8) Nightingale CL, Rodriguez C, Carnaby G. The impact of music interventions on anxiety for adult cancer patients: a meta-analysis and systematic review. Integr Cancer Ther 2013; 12: 393-403 9) Thrane S. Effectiveness of integrative modalities for pain and anxiety in children and adolescents with cancer: a systematic review. J Pediatr Oncol Nurs 2013; 30: 320-32 10) Galaal K, Bryant A, Deane KH, et al. Interventions for reducing anxiety in women undergoing colposcopy. Cochrane Database Syst Rev 2011; 12: CD006013 11) Hilliard RE. The effects of music therapy on the quality and length of life of people diagnosed with terminal cancer. J Music Ther 2003; 40: 113-37
p.274
III章各論:クリニカル・エビデンス 鍼灸治療は,わが国においては補完代替療法として位置づけられているが,中医学においては漢方と同様に確立された標準治療である。理論体系は西洋医学とは大きく異なり,陰陽五行理論と経絡経穴学説に基づいている。鍼灸治療は,中医学的診断に基づき経穴に対して鍼,艾,指圧などで何らかの刺激を与える治療法である。1989 年には,世界保健機関(WHO)が経穴名を361 に統一し,2006 年には経穴の部位が国際的に統一された。一方,生理学に基づいた西洋医学的な鍼治療も行われており,欧米での研究報告の多くはこのアプローチを採択している。筋筋膜疼痛症候群のトリガーポイントを利用した疼痛コントロールなどもその一つである。鍼灸治療は,数ある補完代替療法のなかで,最も臨床研究が盛んに行われている治療の一つである。近年,がん患者を対象とした研究報告も増加してきている。特に,抗がん治療による有害事象の軽減すなわち支持療法的な治療として,米国のがん専門病院において鍼治療は積極的な取り組みが試みられている。その成果は,がん治療関連の主要な英文雑誌にも報告されている。 ・施術者によって経穴の選定や治療方法が異なる。・治療に際して,中医学的診断が必ずしも行われているわけではない。・中医学的治療と西洋学的治療は根本的に異なる。 ・患者背景が臨床試験ごとに異なる。・経穴を刺激する方法として,鍼の穿刺,電気刺激,経皮的通電刺激,指圧,薬物注射, 灸など介入方法が異なる。・対照群として,標準的な治療やケア,偽鍼,電極のみの貼付,経穴以外の部位への鍼 など臨床試験ごとに設定が異なる。・偽鍼治療は,得気(刺鍼部位の特有な感覚)がない治療,正しい経穴ではない部位へ の治療,皮下に刺入しない治療,電極はつけても電流を流さない治療など,さまざまである。・盲検化が難しい。・アウトカムの評価方法が臨床試験ごとに異なる。・治療期間が比較的短期間であり,長期的な効果は不明なことが多い。 1 サマリー 1 鍼灸治療の概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 9 鍼灸治療
p.275
・標治(表面化した症状のみに対する治療)が主である。 ・瞑眩(倦怠感の一つ)・眠気など全身性・刺鍼時痛・皮下出血・禁忌事項1腫瘍,潰瘍や浮腫などがある局所には治療を行わない。2胸部や背部など,気胸を来す可能性がある部位には行わない。3凝固異常のある患者は避ける。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Acupuncturetherapy」「Acupuncture,Ear」「Electroacupuncture」 「Meridians」「Moxibustion」 [検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年5 月28 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:79 件・Acupuncturetherapy:51 件 AcupuncturetherapyAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmetaanalysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp]・Acupuncture,Ear:3 件 Acupuncture,EarAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti] ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp]・Electroacupuncture:10 件 ElectroacupunctureAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmetaanalysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp]・Meridians:7 件 MeridiansAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti]OR systematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp]・Moxibustion:8 件 MoxibustionAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti]OR systematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件
p.276
III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 抄録を用いたスクリーニングで41 件除外・対象者ががん以外:11 件・鍼灸治療以外:4 件・重複論文:26 件 本文を用いたスクリーニングで11 件除外・対象者ががん以外:3 件・鍼灸治療以外:5 件・その他:非英語文献1 件, letter など2 件 1 件追加38 件 PubMed:79 件 27 件 28 件
p.277
1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが8件ある。鍼灸治療の方法として,鍼治療,耳介鍼治療,経皮的通電刺激,電気鍼治療など,複数の治療が実施されており,対照群は通常の治療・ケア,偽鍼治療,薬物療法などを行った患者が設定されていた。Lee ら1)によるシステマティックレビューでは,がんによる痛みを有する患者に対して, 1 件の無作為化比較試験,2 件の非盲検化比較試験と4 件の非対照研究の文献的考察を行っている。その結果,耳介鍼治療を用いた無作為化比較試験は質が高く,プラセボに比較して有意に痛みを軽減させた。しかし,ほかの研究においてはデザインや結果が不十分であり,サンプルサイズが小さく,結果が過大評価されていた。その結果,がん患者に対して,鍼治療は十分な鎮痛効果があるとは結論できないとしている。Paley ら2)によるシステマティックレビューでは,18 歳以上のがん患者を対象にがんに直接関連する痛みに対して,鍼治療に関する3 件の無作為化比較試験(204 例)の文献的考察を行っている。その結果,耳介鍼治療による1 件の無作為化比較試験は質の高い試験であり,鍼治療による鎮痛効果を示していた。しかし,その他の2 件の試験においては,方法,サンプルサイズ,解析方法の点で不十分であった。その結果,成人がん患者における痛みに対して,鍼治療の有効性を判定するには十分なエビデンスはないと結論づけている。Choi ら3)によるシステマティックレビューでは,がん疼痛を有する患者を対象に鍼治療を行った15 件の無作為化比較試験についてrisk of bias (ROB)を用いて評価している。その結果,すべての試験はROB が高く,相対リスク1.12(95%CI:0.98~1.28, n=886)であり,鍼治療は薬物療法と比較して優れた鎮痛効果を示さなかった。薬物療法に鍼治療を加えることは薬物療法単独に比較して,相対リスク1.36(95%CI:1.13~ 1.64,n=437)と有意に鎮痛効果を示した。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の症状緩和を目的に鍼治療を実施した無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,痛みに関する11件の無作為化比較試験が抽出されたが,いずれもROB が高くがん疼痛に対する鍼治療の有効性は不明であると結論づけている。Bardia ら5)によるシステマティックレビューでは,がん患者を対象にがん関連痛に対して鍼治療を実施した3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,耳介鍼治療による1 件の無作為化比較試験は質の高い試験であり,鍼治療の鎮痛効果を示していた。その他の2 件の試験は,治療直後あるいは短期間の鎮痛効果のみを示していた。Hurlow ら6)によるシステマティックレビューでは,経皮的通電刺激によるがん疼痛治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,2 件の無作為化比較試験では対照群と比較して,鎮痛効果が認められなかった。1 件の無作為化比較試験は骨転移の体動時痛に対する効果を検討していたが,フィジビリティスタディであった。 2 臨床疑問 鍼灸治療は,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問9‒1
p.278
III章各論:クリニカル・エビデンス Cheon ら7)によるシステマティックレビューでは,がん患者に対して経穴への薬物注射(pharmacopuncture)による種々の症状に関する22 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,がん疼痛の鎮痛効果においては有効ではないと結論づけている。Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,緩和ケアの対象となるようながん患者を対象として,種々の症状に対する鍼治療や電気鍼治療の効果に関する無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,痛みに関しては6 件の無作為化比較試験が抽出されたが,5 件において鍼治療はがん疼痛の緩和に有効であると結論づけている。以上より,耳介鍼治療は,がん患者の痛みの軽減に有用であると考えられる。その他の鍼治療は試験デザイン,サンプルサイズ,解析方法などに限界があるため,さらに質の高い研究が必要である。 2 消化器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Choi ら9)によるシステマティックレビューでは,がん患者の吃逆に対する鍼治療の効果に関して5 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,いずれの試験もROB は高かったものの,鍼治療は対照群と比較して,がん患者の吃逆の改善に有効であった。また,鍼治療と薬物療法(筋肉注射)とを比較するためにメタアナリシスを行っているが,その結果,相対リスクは1.87(95%CI:1.26~2.78,I2=37%,n=162)であり,鍼治療は薬物療法と比較して,がん患者の吃逆の軽減に有効であると結論づけている。Cheon ら7)によるシステマティックレビューでは,がん患者の吃逆に対する経穴への薬物注射(pharmacopuncture)による効果に関する2 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。1 件の試験では,pharmacopuncture は対照群と比較して統計学的に有意に吃逆を改善させたが,ほかの試験では統計学的有意差は認められなかった。その結果,pharmacopuncture は,がん患者の吃逆の改善に有効であるとはいえないと結論づけている。以上より,鍼治療は,がん患者の吃逆の軽減に有用であるとは結論づけられない。 3 呼吸器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが2 件ある。Bausewein ら10)によるシステマティックレビューでは,進行がんおよび非がん疾患(慢性閉塞性肺疾患,間質性肺疾患,心不全,運動ニューロン疾患)による呼吸困難に対する鍼治療の効果に関する47 件の無作為化比較試験および比較臨床試験の文献的考察を行っている。その結果,呼吸困難に対して鍼治療は推奨されないと結論づけている。Ben‒Aharon ら11)によるシステマティックレビューでは,終末期がん患者の呼吸困難に対する鍼治療の効果に関する18件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,呼吸困難に対して鍼治療は推奨されないと結論づけている。以上より,鍼治療は,がん患者の呼吸困難を軽減させる根拠はない。 4 泌尿器症状 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。
p.279
Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,がん患者の術後尿閉に対する鍼治療または電気鍼治療の効果に関する4 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,3 件の試験において鍼治療群は対照群と比較して残尿量が減少しており,術後尿閉を改善する可能性があると結論づけている。以上より,鍼治療は,がん患者の術後尿閉の軽減に有用であると考えられる。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが4 件ある。He ら12)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する鍼治療や灸治療の効果に関する7 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,鍼治療は指圧療法と比較して倦怠感を改善させた。また,標準的ケアに灸治療を併用することは標準的ケアのみに比較して,European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire‒C30 (EORTC QLQ‒C30)における倦怠感を改善させた(SMD:-1.01, 95%CI:-1.31~-0.72)。これらの結果から,鍼灸治療はがん患者の倦怠感を改善させると結論づけている。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,1 件のみ有効であったが,ほかの2 件では有効性は確認されず,鍼治療による倦怠感の改善は不明であると結論づけている。Posadzki ら13)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する鍼治療の効果に関する7 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,4 件において鍼治療は偽鍼治療や通常のケアと比較して倦怠感を軽減させたが,3 件では偽鍼治療と比較して有効性は認められず,がん患者に対する鍼治療は倦怠感を改善させるとは結論づけられないと述べている。Lee ら14)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する灸治療の効果に関する4 件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,いずれの試験も中等度から高度のROB であり,相対リスクは1.73(95%CI:1.26~2.78,I2= 37%,n=162)であった。これらの結果から,がん患者の倦怠感に対する灸治療の有効性は結論づけられないと述べている。以上より,鍼灸治療は,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論づけられない。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の不眠に対する鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,いずれの試験も盲検化が行われておらず,ROB は高く,鍼治療の不眠に対する効果は不明であると結論している。以上より,鍼治療は,がん患者の睡眠障害を軽減させる根拠はない。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。
p.280
III章各論:クリニカル・エビデンス 1 不安・抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の不安・抑うつに対する鍼治療の効果に関する6 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。すべての試験は不安・抑うつを主要評価項目として実施した試験ではなく,ROB は高いため鍼治療によるがん患者の不安・抑うつに対する効果は不明であると結論づけている。以上より,鍼治療は,がん患者の不安・抑うつを軽減させる根拠はない。 2 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。He ら12)によるシステマティックレビューでは,がん患者の倦怠感に対する鍼灸治療の効果に関する7 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。そのなかで,2 件は灸治療によるQOL を評価しており,メタアナリシスを実施している。その結果,灸治療を通常のケアに加えることは通常のケアのみに比較して,EORTC‒QLQ‒C30 におけるemotional function(SMD :0.97,95%CI:0.72~1.22),global health status(SMD: 0.81,95%CI:0.20~1.43)の改善が認められた。がん患者に対して通常のケアに加えて灸治療を併用することで,QOL が改善する可能性があると述べている。Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,鍼治療および電気鍼治療によるがん患者のQOL 改善を評価した2 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,鍼治療および電気鍼治療は対照群と比較して,がん患者のQOL 向上に有効であると結論している。Chen ら15)によるシステマティックレビューでは,肺がん患者への経穴刺激によるQOL の改善に関する2 件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,経穴刺激は対照群と比較してEORTC‒QLQ‒C30 におけるtotal score(SMD:0.47, 95%CI:0.04~0.90,n=85)の改善が認められた。経穴刺激は鍼治療,置鍼治療,灸治療,経穴への薬物注射などが行われていた。以上より,鍼灸治療は,がん患者のQOL を改善させると考えられる。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Ernst ら16)によるシステマティックレビューでは,鍼治療の痛み(1~45%),倦怠感(2~41%),出血(0.03~38%),気の遠くなる感じや失神(0~0.3%)などの軽微な有害 鍼灸治療は,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問9‒2 鍼灸治療は,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問9‒3 鍼灸治療は,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問9‒4
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事象が挙げられているが,重篤な有害事象は稀であると結論づけている。Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,33 件の無作為化比較試験のうち25件は有害事象の記載がなく,6 件は有害事象が認められず,2 件において穿刺部に微量の出血が報告されていたため,鍼治療の有害事象は軽度であると結論づけている。He ら12)によるシステマティックレビューでは,1 件の無作為化比較試験において,90例のうち出血2 例,傷1 例,悪心1 例があったが重篤な有害事象は認められず,鍼治療は適切に実施される場合には比較的安全であると結論づけている。以上より,鍼治療による有害事象は低頻度かつ軽微であると考えられる。 1 化学療法による悪心・嘔吐 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが6 件ある。Ezzo ら17)によるシステマティックレビューでは,化学療法後のがん患者の悪心・嘔吐に対して,経穴刺激による軽減効果に関する11件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,介入群は対照群と比較して,化学療法に伴う急性の嘔吐の頻度を減少させた(リスク比 :0.82,95%CI:0.69~0.99)。しかし,急性および遅発性の悪心の重症度は対照群と比較して統計学的有意差が認められなかった。電気鍼治療を行った患者群は対照群と比較して,急性の嘔吐を示す患者の割合を減少させた(リスク比: 0.76,95%CI:0.60~0.97)。指圧療法は急性の悪心の重症度を低下させた(SMD:-0.19, 95%CI:-0.37~-0.01)。これらの結果から,電気鍼治療は化学療法による急性期の嘔吐を改善する可能性があると結論づけている。Chao ら18)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者に対して特定の経穴(内関PC6)への刺激を行うことで化学療法に伴う悪心の軽減に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,乳がん患者におけるPC6 への刺激は,化学療法に伴う悪心・嘔吐を軽減させると述べている。Garcia ら4)によるシステマティックレビューでは,がん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐に対して,鍼治療による効果に関する1 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,ROB は低く,がん患者に対して鍼治療は化学療法に伴う悪心・嘔吐を軽減させると結論づけている。Lee ら19)によるシステマティックレビューでは,灸治療によるがん患者の化学療法による悪心・嘔吐の改善に関する5 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,2 件の無作為化比較試験において,介入群は対照群と比較して化学療法による悪心・嘔吐の頻度を低下させた(リスク比:0.38,95%CI:0.22~0.65,I2=0%,n=80)。これらの結果から,灸治療はがん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐の軽減に有効である可能性はあるが,結論を導くには十分なエビデンスとはいえないと結論づけている。Cheon ら7)によるシステマティックレビューでは,経穴への薬物注射(pharmacopuncture)によるがん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐の改善に関する5 件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,3 件の無作為化比較試験において,介入群は対照群と比較して,化学療法に伴う悪心・嘔吐の重症度を軽減させた(相対リスク:1.28,95%CI:1.14~1.44)。また,2 件の無作為化比較試験において,悪心・嘔吐の 鍼灸治療は,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問9‒5
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III章各論:クリニカル・エビデンス 頻度が減少した(相対リスク:2.47,95%CI:2.12~2.89)。しかし,試験デザインの不均一性とROB が高いことなどから,その有効性は結論づけられないと述べている。Lian ら8)によるシステマティックレビューでは,鍼治療によるがん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐の軽減効果に関する13件の無作為化比較試験について文献的考察を行っている。その結果,鍼治療は対照群と比較して,がん患者の化学療法に伴う悪心・嘔吐の軽減に有効であると結論づけている。以上より,鍼治療は,化学療法による悪心・嘔吐を軽減させると考えられる。 2 ホットフラッシュ ホットフラッシュは,乳がん患者,前立腺がん患者においてホルモン療法が実施された際に生じることがあり,血管運動症状の一つであるとされている。本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Lee ら20)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者のホットフラッシュに対する鍼治療あるいは電気鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察とメタアナリシスを行っている。その結果,1 件の無作為化比較試験において,介入群は対照群(偽鍼治療)に比較してホットフラッシュの頻度が低下していた。メタアナリシスでは,介入群は対照群(偽鍼治療)に比較してホットフラッシュを軽減させていた(weighted mean difference:3.09,95%CI:-0.04~6.23,n=189)が,異質性が高い(I2=76%)ことから,鍼治療は乳がん患者のホットフラッシュに有効であるとはいえないと結論づけている。Lee ら21)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者のホットフラッシュに対する鍼治療および電気鍼治療の効果に関する1 件の無作為化比較試験と5 件の対照群のない観察研究の文献的考察を行っている。その結果,前立腺がん患者に対する鍼治療は,ホットフラッシュの軽減に有効であるとはいえないと結論づけている。Frisk22)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者のホットフラッシュに対する鍼治療の効果に関する4 件の臨床試験の文献的考察を行っている。その結果,前立腺がん患者に対する鍼治療は,ホットフラッシュの軽減に有効であるとはいえないと結論づけている。以上より,鍼治療は,乳がんおよび前立腺がん患者のホットフラッシュを軽減させる根拠はない。 3 放射線性口腔乾燥 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Zhuang ら23)によるシステマティックレビューでは,頭頸部がん患者における放射線性口腔乾燥症に対して鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,1 件の試験では鍼治療による放射線性口腔乾燥症の予防的効果が認められた。2 件の試験では,唾液分泌量(salivary flow rate)の改善を認めたものの,介入群と対照群とでは統計学的有意差は認められなかった。O’Sullivan ら24)によるシステマティックレビューでは,頭頸部がん患者における放射線性口腔乾燥症に対して鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,2 件は中間のROB,1 件は高いROB であった。対照群としては2 件が偽鍼治療,1 件が標準治療であった。2 件では唾液分泌量(salivary flow rate)の
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改善が認められ,3 件すべてにおいて主観的な改善が認められていた。これらの結果から,頭頸部がん患者における鍼治療は,放射線性口腔乾燥症をある程度軽減させるが,十分なエビデンスはないと結論づけている。Lovelace ら25)によるシステマティックレビューでは,頭頸部がん患者における放射線性口腔乾燥症に対して鍼治療の効果に関する2 件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行っている。その結果,介入群は対照群(偽鍼治療群)と比較して刺激全唾液量のSMD:-0.459(95%CI:-2.109~1.192)であり,鍼治療の効果は認められなかった。以上より,鍼治療は,頭頸部がん患者の放射線性口腔乾燥の軽減に有用であるとは結論づけられない。 4 骨髄抑制・免疫抑制 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Lu ら26)によるシステマティックレビューでは,がん患者の化学療法に伴う白血球減少に対する鍼治療の効果に関する11 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,鍼治療により白血球増多が認められたものの,研究の質は低く出版バイアスがあるために治療の効果が十分にあるとはいえないと結論づけている。Choi ら27)によるシステマティックレビューでは,がん患者の化学療法に伴う白血球減少に対する灸治療の効果に関する6 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,すべての試験においてROB は高かったが,2 件の試験では標準治療に灸治療を併用することは標準治療のみに比較して白血球増多が認められ,4 件の試験では灸治療は標準治療と比較して白血球増多を示していた。これらの結果から,エビデンスレベルは低いが,灸治療はがん患者の化学療法に伴う白血球減少を改善させる可能性があると結論づけている。Chen ら15)によるシステマティックレビューでは,がん治療中の肺がん患者に対する経穴刺激による免疫修飾効果に関する31 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,肺がん患者において経穴刺激は対照群と比較して,IL‒2,T 細胞サブタイプ(CD3+・CD4+),NK 細胞の増加や骨髄抑制の改善が認められた。これらの結果から,肺がん患者に対する経穴刺激は免疫修飾効果や骨髄抑制の改善に有効であると結論づけている。以上より,鍼治療は,がん治療に伴う骨髄抑制の軽減に有用であるとは結論づけられないが,灸治療は骨髄抑制を軽減させると考えられる。 5 化学療法後末梢神経障害性疼痛 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Franconi ら28)によるシステマティックレビューでは,がん患者の化学療法後末梢神経障害性疼痛に対する鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っている。その結果,がん患者に対する鍼治療は,化学療法後末梢神経障害性疼痛の軽減に有効である可能性が示唆されるものの,さらなる研究が求められると述べている。以上より,鍼治療は,がん患者における化学療法後の末梢神経障害性疼痛の軽減に有用であるとは結論づけられない。
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III章各論:クリニカル・エビデンス 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。 (大坂 巌) 【文 献】 1) LeeH,SchmidtK,ErnstE.Acupunctureforthereliefofcancer‒relatedpain―asystematic review.EurJPain2005;9:437‒44 2) PaleyCA,JohnsonMI,TashaniOA,etal.Acupunctureforcancerpaininadults.CochraneDatabaseSystRev2011;1:CD007753 3) ChoiTY,LeeMS,KimTH,etal.Acupunctureforthetreatmentofcancerpain:asystematic reviewofrandomisedclinicaltrials.SupportCareCancer2012;20:1147‒58 4) GarciaMK,McQuadeJ,HaddadR,etal.Systematicreviewofacupunctureincancercare:asynthesisoftheevidence.JClinOncol2013;31:952-60 5) BardiaA,BartonDL,ProkopLJ,etal.Efficacyofcomplementaryandalternativemedicinetherapiesinrelievingcancerpain:asystematicreview.JClinOncol2006;24:5457-64 6) HurlowA,BennettMI,RobbKA,etal.Transcutaneouselectricnervestimulation(TENS)for cancerpaininadults.CochraneDatabaseSystRev2012;3:CD006276 7) CheonS,ZhangX,LeeIS,etal.Pharmacopunctureforcancercare:asystematicreview.Evid BasedComplementAlternatMed2014;2014:804746 8) LianWL,PanMQ,ZhouDH,etal.Effectivenessofacupunctureforpalliativecareincancer patients:asystematicreview.ChinJIntegrMed2014;20:136-47 9) ChoiTY,LeeMS,ErnstE.Acupunctureforcancerpatientssufferingfromhiccups:asystematic reviewandmeta-analysis.ComplementTherMed2012;20:447-55 10) BauseweinC,BoothS,GyselsM,etal.Non-pharmacologicalinterventionsforbreathlessnessin advancedstagesofmalignantandnon-malignantdiseases.CochraneDatabaseSystRev2008;2: CD005623 11) Ben-AharonI,Gafter-GviliA,PaulM,etal.Interventionsforalleviatingcancer-relateddyspnea:a systematicreview.JClinOncol2008;26:2396-404 12) HeXR,WangQ,LiPP.Acupunctureandmoxibustionforcancer-relatedfatigue:asystematic reviewandmeta-analysis.AsianPacJCancerPrev2013;14:3067-74 13) PosadzkiP,MoonTW,ChoiTY,etal.Acupunctureforcancer-relatedfatigue:asystematicreview ofrandomizedclinicaltrials.SupportCareCancer2013;21:2067-73 14) LeeS,JerngUM,LiuY,etal.Theeffectivenessandsafetyofmoxibustionfortreatingcancerrelatedfatigue:asystematicreviewandmeta-analyses.SupportCareCancer2014;22:1429-40 15) ChenHY,LiSG,ChoWC,etal.Theroleofacupointstimulationasanadjuncttherapyforlung cancer:asystematicreviewandmeta-analysis.BMCComplementAlternMed2013;13:362 16) ErnstE,WhiteAR.Prospectivestudiesofthesafetyofacupuncture:asystematicreview.AmJ Med2001;110:481-5 鍼灸治療は,予後を改善するか? ▶臨床疑問9‒6
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17) EzzoJM,RichardsonMA,VickersA,etal.Acupuncture-pointstimulationforchemotherapyinducednauseaorvomiting.CochraneDatabaseSystRev2006;2:CD002285 18) ChaoLF,ZhangAL,LiuHE,etal.Theefficacyofacupointstimulationforthemanagementof therapy-relatedadverseeventsinpatientswithbreastcancer:asystematicreview.BreastCancerResTreat2009;118:255-67 19) LeeMS,ChoiTY,ParkJE,etal.Moxibustionforcancercare:asystematicreviewandmetaanalysis.BMCCancer2010;10:130 20) LeeMS,KimKH,ChoiSM,etal.Acupuncturefortreatinghotflashesinbreastcancerpatients:a systematicreview.BreastCancerResTreat2009;115:497-503 21) LeeMS,KimKH,ShinBC,etal.Acupuncturefortreatinghotflushesinmenwithprostatecancer: asystematicreview.SupportCareCancer2009;17:763-70 22) FriskJ.Managinghotflushesinmenafterprostatecancer―asystematicreview.Maturitas2010; 65:15-22 23) ZhuangL,YangZ,ZengX,etal.Thepreventiveandtherapeuticeffectofacupunctureforradiation-inducedxerostomiainpatientswithheadandneckcancer:asystematicreview.IntegrCancerTher2013;12:197-205 24) O’SullivanEM,HigginsonIJ.Clinicaleffectivenessandsafetyofacupunctureinthetreatmentof irradiation-inducedxerostomiainpatientswithheadandneckcancer:asystematicreview.AcupunctMed2010;28:191-9. 25) LovelaceTL,FoxNF,SoodAJ,etal.Managementofradiotherapy-inducedsalivaryhypofunction andconsequentxerostomiainpatientswithoralorheadandneckcancer:meta-analysisandliteraturereview.OralSurgOralMedOralPatholOralRadiol2014;117:595-607 26) LuW,HuD,Dean-ClowerE,etal.Acupunctureforchemotherapy-inducedleukopenia:exploratory meta-analysisofrandomizedcontrolledtrials.JSocIntegrOncol2007;5:1-10 27) ChoiTY,LeeMS,ErnstE.Moxibustionforthetreatmentofchemotherapy-inducedleukopenia:a systematicreviewofrandomizedclinicaltrials.SupportCareCancer2015;23:1819-26 28) FranconiG,ManniL,SchröderS,etal.Asystematicreviewofexperimentalandclinicalacupunc- tureinchemotherapy-inducedperipheralneuropathy.EvidBasedComplementAlternatMed 2013;2013:516916
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III章各論:クリニカル・エビデンス ヨガの教典である『ヨーガ・スートラ』によると,ヨガとは心の作用の止滅(制御)である。それは解脱を達成するためのものであり,具体的な方法として8 つの要素(8支則)が説かれている。このなかのどの要素を強調するか,どのようなポーズを,どのような強度で行うか,誰が始めたやり方かなどによって,ハタヨガ,アシュタンガヨガ,レストーラティブヨガ,アイアンガーヨガなど,さまざまな呼称がついている。医療に応用されているヨガは,8 つの要素のうち,主にアーサナ(体位法,ポーズ),プラナヤーマ(呼吸法),瞑想法の3 つ,もしくはそれらを組み合わせたものが多い。特に緩和医療の分野では,穏やかで,ローインパクトのポーズで構成されるプログラムが用いられている。ヨガは,1ゆっくりとした動き(もしくは一定の姿勢の保持)に,2呼吸(多くの場合,通常より長い呼気)をあわせ,3そこで生じる身体感覚に意識を向けることによって,運動の要素だけではなく,心の安定・平静を導く瞑想の要素をあわせもつ点(瞑想的運動療法)が特徴である。 ・動機づけが大切。ヨガの効果は定期的に練習することで得られ,練習頻度に相関する。・疾患に応じて行わないほうがよいポーズ(高血圧,緑内障患者では頭を下にするポー ズなど)がある。・体調や併存疾患(気分障害,不安障害)にあったポーズの内容,運動強度,練習時間 から始めるべきである。そのため,少なくとも最初は経験豊かなインストラクターの指導のもとで練習することが望ましい。 ・がん患者用に国際的に統一されたヨガプログラムがあるわけではない。現在,がん患 者に対するヨガのエビデンスのほとんどは,女性,乳がん患者および乳がんサバイバーに対して,それぞれの医療施設で採用,開発したプログラムの効果を検討したものである。そのため,ここに示すエビデンスが乳がん以外のがん患者,男性患者,すべてのヨガプログラム(患者がアクセスしやすいヨガ教室のヨガ,特に運動強度の強いパワーヨガやホットヨガなど)に一般化して適応できるかどうかは不明である。・効果判定のための介入期間や,患者にヨガを指導する人(インストラクターの経験) が一定ではない。・ドロップアウトする患者が一定の割合で存在する。 1 サマリー 1 ヨガの概要 2 使用上の一般的な注意事項 3 論文報告(エビデンス)における課題 10 ヨ ガ
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・よくみられる有害事象は筋肉痛,関節痛,めまい,咳き込み,しびれ感である。・高血圧,緑内障患者では,頭を低くするポーズは避けることが望ましい。・骨転移が疑われる,ステロイドによる治療を受けているなど,病的骨折の危険性があ る場合は,強度の屈曲,伸展,捻転を伴うポーズは避けることが望ましい。・めまい,ふらつき,倦怠感が強い場合は,バランスをとるポーズ,立位のポーズは慎 重に行う。 [検索データベース]PubMed [検索キーワード]「Yoga」[検索期間]2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日[検 索 日]2015 年8 月15 日[検 索 式] ▶システマティックレビュー:20 件 YogaAND(cochranedatabasesystrev[ta]ORmeta-analysis[pt]ORmeta-analysis[ti]ORsystematicreview[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ▶無作為化比較試験:49 件 YogaAND(RandomizedControlledTrial[pt]ORRandomizedControlledTrial[ti]ORRandomised ControlledTrial[ti])ANDCancerAND2000/01/01[dp]:2014/12/31[dp] ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(システマティックレビュー) 4 論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知ら れている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP) 5 文献検索の条件 7 件 PubMed:20 件 本文を用いたスクリーニングで13 件除外・運動療法,補完代替療法全体でのレビューであるため,ヨガ単独の評価が困難,controlledtrial でない研究を含んでいる:12 件・書誌学的解析論文:1 件
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III章各論:クリニカル・エビデンス ●文献検索とスクリーニングのフローチャート(無作為化比較試験) 抄録,本文を用いたスクリーニングで13 件除外・対象者ががん以外:7 件・ヨガ単独以外:2 件・無作為化比較試験以外:4 件 36 件 PubMed:49 件
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1 痛 み 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Buffart ら1)によるシステマティックレビューでは,ヨガの身体的および精神的効果を調べた16 件のうち,4 件で痛みが評価された。乳がん患者を対象とした2 件では,ヨガの疼痛軽減効果の効果量は大であった〔standardized mean difference(SMD):-0.64, 95%CI:-0.98~-0.31〕。特にCarson ら2)は,乳がん患者の関節痛に対するヨガの有効性を報告した。以上より,ヨガは,乳がん患者の痛みを軽減する可能性がある。しかしながら,研究論文の数が少なく,この結論は慎重に解釈されるべきである。 2 消化器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。無作為化比較試験が2 件ある。Raghavendra ら3)による無作為化比較試験では,乳がん患者が毎日1 時間,週6 回のヨガ実習を行うと,対照群に比較して化学療法による悪心の強度と頻度を抑制したと報告した。しかし,Vadiraja ら4)による無作為化比較試験では,対照群との間に差はみられなかったとした。以上より,結論を下すには研究の数が少なく,現時点で,ヨガががん患者の悪心・嘔吐を軽減するとは結論づけられない。 3 呼吸器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 4 泌尿器症状 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 5 倦怠感 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある5—7)。そのうち最も多くの無作為化比較試験を検討したSadja ら5)によるシステマティックレビューでは,ヨガ介入期間前後で倦怠感の変化を調べた10 件のうち,ヨガによって倦怠感が著明に改善したとする報告が4 件あった。そのうち3 件は,ヨガクラスへの参加頻度が多いほど,より倦怠感の改善がみられたとしている2,8,9)。ただし,10 件のうち9 件は乳がん患者,乳がんサバイバーでの研究であり,参加者のほとんどが女性であった。Cramer ら7)によるシステマティックレビューでは,乳がん患者に限定してヨガの倦怠感に及ぼす影響を調べた6 件を検討し,ヨガ群は対照群に比較して有意に倦怠感を改善 2 臨床疑問 ヨガは,がんに伴う身体症状を軽減するか? ▶臨床疑問10‒1
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III章各論:クリニカル・エビデンス することを見出している(SMD:0.33,95%CI:0.01~0.65)。以上より,ヨガは,女性乳がん患者および乳がんサバイバーの倦怠感を軽減させるための有用な方法といえるであろう。しかしながらこの結論は,これまでの研究の不均一性に注意して,慎重に解釈されるべきである。 6 睡眠障害 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが1 件ある。Mustian10)によるシステマティックレビューでは,9 件の無作為化比較試験を検討し,睡眠の改善が得られたとする論文が6 件,効果なしとする論文が3 件であった。睡眠を改善したとする論文では,睡眠潜時,睡眠時間,睡眠の質が改善したことを報告しており,そのうち2 件で睡眠薬の使用量を減量させることができたとしていた11,12)。以上より,ヨガは,がん患者の睡眠障害を軽減する可能性がある。 7 その他 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 1 不 安 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Buffart ら1),Lin ら13),Cramer ら14)による,いずれのシステマティックレビューでも,ヨガはがん患者(乳がん患者がほとんど)の不安を軽減した。ただし,サブグループ解析を行ったCramer ら14)によるシステマティックレビューでは,ヨガの不安改善効果(SMD:-1.51,95%CI:-2.47~-0.55)は,がん治療中には認められたが,治療終了後では対照群との間に差はみられなかった。以上より,ヨガは,治療中のがん患者の不安を軽減する可能性がある。 2 抑うつ 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Buffart ら1),Lin ら13),Cramer ら14)によるいずれのシステマティックレビューでも,ヨガはがん患者(ほとんどは乳がん患者)の抑うつを軽減した。ただし,サブグループ解析を行ったCramer ら14)によるシステマティックレビューでは,ヨガの抑うつ改善効果(SMD:-1.59,95%CI:-2.68~-0.51)は,がん治療中には認められたが,治療終了後では対照群との間に差はみられなかった。以上より,ヨガは,治療中のがん患者の抑うつ状態を軽減する可能性がある。 3 その他 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Buffart ら1),Lin ら13),Cramer ら14)によるシステマティックレビューでは,ヨガはがん患者の心理的落胆(SMD:-0.86,95%CI:-1.50~-0.22)を改善した。また,Lin ヨガは,がんに伴う精神症状を軽減するか? ▶臨床疑問10‒2
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ら13),Cramer ら14)によるシステマティックレビューでは,ヨガはがん患者の自覚ストレス(SMD:-1.14,95%CI:-2.16~-0.12)を改善した。以上より,ヨガは,治療中のがん患者の心理的落胆や自覚ストレスを軽減する可能性がある。 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが3 件ある。Buffart ら1),Lin ら13),Cramer ら14)によるいずれのシステマティックレビューでも,ヨガはがん患者(乳がん患者がほとんど)の全般的QOL を有意に改善1,14),もしくは改善する傾向がある13)とした。最も多くの研究を検討したCramer ら14)によるシステマティックレビューでは,8 件の報告を検討し,ヨガは,治療中の乳がん患者の全般的QOL を中等度に改善する(SMD: 0.62,95%CI:0.04~1.21)とした。以上より,ヨガは,治療中の乳がん患者の全般的QOL を改善する可能性がある。 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューはない。がん患者に対するヨガの効果を検討した無作為化比較試験が35 件あり,7 件で有害事象に言及していた11,12,15—18)。そのうち4 件では有害事象はみられなかった。有害事象を報告した3 件の内訳は以下のとおりである。Kiecolt—Glaser ら17)の報告では,ヨガを行った100 例中2 例で腰部,肩の症状の再発がみられた。Mustian ら11)の報告では,206 例中1 例で介入期間中に,おそらくヨガとは直接関係ない上室性頻拍がみられた。また,Bower ら18)の報告は,16 例中1 例で一過性の背筋のけいれんがみられたというものであった。健常人でよくみられる有害事象は,筋肉痛,関節痛,めまい,咳き込み,しびれ感,筋肉のけいれんである19)。35 件の無作為化比較試験のなかでは,がん患者に特有,もしくは特に注意しなければならない有害事象はみられなかった。以上より,がん患者がヨガを行っても,その有害事象は低頻度かつ軽微であると考えられる。しかしながらこの結論は,これまでの研究の大半が乳がん患者,乳がんサバイバーを対象としたものであることを念頭に置いて,慎重に考えられるべきである。 1 化学療法による悪心・嘔吐 臨床疑問10—1 の「2)消化器症状」の項で記載したとおり,本臨床疑問に関連する無作為化比較試験が2 件ある。しかしながら,ヨガががん患者の化学療法による悪心・嘔吐を緩和させるかどうかは結論づけられない。 ヨガは,全般的なQOL を改善するか? ▶臨床疑問10‒3 ヨガは,何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか? ▶臨床疑問10‒4 ヨガは,検査・治療等に伴う有害事象を軽減するか? ▶臨床疑問10‒5
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III章各論:クリニカル・エビデンス 2 ホットフラッシュ 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はないが,無作為化比較試験が1 件ある。Carson ら2)による無作為化比較試験では,乳がん患者において,ヨガを練習した患者(n=17)は対照群(n=20)に比較して,ホットフラッシュの頻度,重症度ともに有意に改善したと報告した。以上より,ヨガは,乳がん患者のホットフラッシュを軽減することが示唆される。しかしながら,この結論は複数の大規模な研究で確認される必要がある。 3 リンパ浮腫 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はないが,無作為化比較試験が1 件ある。Loudon ら16)による無作為化比較試験では,乳がん関連続発性上肢リンパ浮腫(ステージI)に対するヨガの効果を調べ,ヨガ群では介入期間中,患側上肢の組織硬化が改善したが,浮腫体積は対照群との間に差はなかったことを観察した。以上より,ヨガは,乳がん患者のリンパ浮腫に対して有用であるとは結論づけられない。 4 創傷治癒 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はないが,無作為化比較試験が1 件ある。Rao ら20)による無作為化比較試験では,乳がん患者が手術前後にヨガを毎日練習すると,対照群に比較して術後のドレーン装着日数,抜糸までの期間,入院日数が短縮でき,合併症の発症を抑制できた。対照群では,手術後に血中TNFαが増加したのに対して,ヨガ練習群では低下したことから,ヨガの創傷治癒促進効果に炎症性サイトカインの抑制効果が関連している可能性がある。しかしながら,すべてのがん手術において同様な効果が得られるかについては,今後さらなる検討が必用である。 1 全生存率(total mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality) 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験の報告はない。 3無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival), 奏効率(tumor response rate)現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューおよび無作為化比較試験 ヨガは,予後を改善するか? ▶臨床疑問10‒6
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の報告はない。 (岡 孝和) 【文 献】 1) BuffartLM,vanUffelenJG,RiphagenII,etal.Physicalandpsychosocialbenefitsofyogaincancer patientsandsurvivors,asystematicreviewandmeta-analysisofrandomizedcontrolledtrials. BMCCancer2012;12:559 2) CarsonJW,CarsonKM,PorterLS,etal.YogaofAwarenessprogramformenopausalsymptoms inbreastcancersurvivors:resultsfromarandomizedtrial.SupportCareCancer2009;17:1301-9 3) RaghavendraRM,NagarathnaR,NagendraHR,etal.Effectsofanintegratedyogaprogrammeon chemotherapy-inducednauseaandemesisinbreastcancerpatients.EurJCancerCare(Engl) 2007;16:462-74 4) VadirajaSH,RaoMR,NagendraRH,etal.Effectsofyogaonsymptommanagementinbreast cancerpatients:Arandomizedcontrolledtrial.IntJYoga2009;2:73-9 5) SadjaJ,MillsPJ.Effectsofyogainterventionsonfatigueincancerpatientsandsurvivors:asystematicreviewofrandomizedcontrolledtrials.Explore(NY)2013;9:232-43 6) BoehmK,OstermannT,MilazzoS,etal.Effectsofyogainterventionsonfatigue:ameta-analysis. EvidBasedComplementAlternatMed2012;2012:124703 7) CramerH,LangeS,KloseP,etal.Canyogaimprovefatigueinbreastcancerpatients?Asystematicreview.ActaOncol2012;51:559-60 8) MoadelAB,ShahC,Wylie-RosettJ,etal.Randomizedcontrolledtrialofyogaamongamultiethnic sampleofbreastcancerpatients:effectsonqualityoflife.JClinOncol2007;25:4387-95 9) LittmanAJ,BertramLC,CeballosR,etal.Randomizedcontrolledpilottrialofyogainoverweight andobesebreastcancersurvivors:effectsonqualityoflifeandanthropometricmeasures.SupportCareCancer2012;20:267-77 10) MustianKM.YogaasTreatmentforinsomniaamongcancerpatientsandsurvivors:asystematic review.EurMedJOncol2013;1:106-15 11) MustianKM,SprodLK,JanelsinsM,etal.Multicenter,randomizedcontrolledtrialofyogafor sleepqualityamongcancersurvivors.JClinOncol2013;31:3233-41 12) CohenL,WarnekeC,FouladiRT,etal.PsychologicaladjustmentandsleepqualityinarandomizedtrialoftheeffectsofaTibetanyogainterventioninpatientswithlymphoma.Cancer2004; 100:2253-60 13) LinKY,HuYT,ChangKJ,etal.Effectsofyogaonpsychologicalhealth,qualityoflife,andphysicalhealthofpatientswithcancer:ameta-analysis.EvidBasedComplementAlternatMed2011; 2011:659876 14) CramerH,LangeS,KloseP,etal.Yogaforbreastcancerpatientsandsurvivors:asystematic reviewandmeta-analysis.BMCCancer2012;12:412 15) DanhauerSC,MihalkoSL,RussellGB,etal.Restorativeyogaforwomenwithbreastcancer:findingsfromarandomizedpilotstudy.Psychooncology2009;18:360-8 16) LoudonA,BarnettT,PillerN,etal.Yogamanagementofbreastcancer-relatedlymphoedema:a randomisedcontrolledpilot-trial.BMCComplementAlternMed2014;14:214 17) Kiecolt-GlaserJK,BennettJM,AndridgeR,etal.Yoga’simpactoninflammation,mood,andfatigue inbreastcancersurvivors:arandomizedcontrolledtrial.JClinOncol2014;32:1040-9 18) BowerJE,GaretD,SternliebB,etal.Yogaforpersistentfatigueinbreastcancersurvivors:a randomizedcontrolledtrial.Cancer2012;118:3766-75 19) MatsushitaT,OkaT.Alarge-scalesurveyofadverseeventsexperiencedinyogaclasses.BiopsychosocMed2015;9:9 20) RaoRM,NagendraHR,RaghuramN,etal.Influenceofyogaonpostoperativeoutcomesand woundhealinginearlyoperablebreastcancerpatientsundergoingsurgery.IntJYoga2008;1: 33-41
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栄養管理はすべての疾患治療のうえで共通する基本的医療の一つである。栄養管理を疎かにすると,いかなる治療法も効力を失ってしまうことは,今や周知の事実となっている。特に,化学療法,放射線治療,手術治療など,高度多様化するがん治療を効果的に行い,なおかつ患者のQOL を良好に維持するためには,栄養サポートチーム(NST)を中心とした適切な栄養管理を行うことが肝要となる。加えて,担がん患者,特に進行,再発がん患者が陥る悪液質は,さまざまな代謝・栄養障害をもたらし,さらに,それらの障害因子が複雑に関連することで,特有の症状を発現する症候群として知られている。病状の進行とともに出現するがん悪液質状態は,容易に食欲不振,体重減少,全身衰弱,倦怠感などを来す。このようながん悪液質患者に対して,適切な栄養管理を行うことは,QOL の維持,改善はもちろんのこと,余命にまで影響を及ぼすといっても過言ではない。そこで本項では,がん患者に適切な栄養療法を行うために用いる栄養剤などを中心に概説する。 1 エネルギー代謝異常 従来,がん患者のエネルギー消費量は常に増大しているとされていたが,近年これは,がんによる慢性炎症に加え,免疫力低下に伴う肺炎などの感染兆候を容易に併発するために起こるのではないかと考えられている。以前のDempsey1)らの消化管がん患者の安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure;REE)の検討では,22%が高REE状態,36%が低REE 状態,42%が正常状態であったと報告され,腫瘍進展度,栄養状態,罹病期間などとの関係性は認めなかったと報告されている。一方,感染兆候がない担がん患者に対する臨床研究では,適切な栄養管理が行われている場合は,エネルギー消費量が高値であった。しかし,最終的に生体は不可逆的な代謝動態に陥り,その結果,エネルギー消費が逆に抑制されることが明らかになってきた(図4)2)。また,がんの原発部位によりREE の亢進は異なり,胃がん,大腸がん,直腸がんなどでは,予測値と変わらないが,膵がん,肺がんなどでは亢進するとの報告もあり,今後のさらなる詳細な研究が期待される3,4)。 2 糖代謝異常 担がん状態での糖代謝異常として,1腫瘍細胞のグルコース消費亢進によるグルコース代謝回転の増大,2Cori 回路の活性亢進,3アミノ酸からの糖新生の亢進,4インスリン感受性の低下などが挙げられる。すなわち,担がん状態においては,腫瘍そのものの糖消費増大により,がん組織が嫌気性解糖系を中心にグルコースをエネルギー源として消費し,乳酸を産生する結果,肝でのCori 回路の活性亢進を招き,乳酸からの糖新生が亢進することとなる。Cori 回路の異常な活性化が,低栄養のがん患者に認められており,この亢進した活性は,約300 kcal/日の喪失に相当するといわれている3)。アミノ酸 1 担がん患者の代謝変動 1 栄養療法,経腸栄養剤
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IV章各論:治療のトピックス からの糖新生の立場から,がん悪液質患者では,血清アラニン,グリシン,グルタミン濃度が低下していることがある。これは,肝において糖新生のためにこれらのアミノ酸の利用が亢進していることに関係していると考えられている。 3 蛋白代謝異常 担がん状態での蛋白代謝異常として,1骨格筋蛋白の分解亢進,2骨格筋蛋白の合成低下,3がん細胞における蛋白合成の増加,4全身での蛋白代謝亢進,肝での蛋白合成亢進などが挙げられる。すなわち,担がん患者における全身の蛋白・アミノ酸の代謝亢進は,骨格筋蛋白の分解亢進,合成低下(異化)に伴って,肝における蛋白合成亢進により引き起こされる。このため,がん患者の多くが負の窒素バランスとなるとともに,急激な除脂肪体重(lean body mass;LBM)の減少を誘発し,サルコペニアに陥ってしまう。さらに最近では,がん細胞自身から放出される蛋白質分解誘導因子PIF(proteolysis—inducing factor)が,骨格筋の蛋白異化を起こす主要な経路であるATP—ユビキチン依存経路の活性化に関与していることも明らかになってきた3)。 4 脂質代謝異常 担がん状態での脂質代謝異常として,1脂質分解の亢進,2脂質合成の低下,3全身の脂肪量の低下,4LPL(lipoprotein lipase)の活性低下,5血中トリグリセライドの上昇などが挙げられる5)。すなわち,がん悪液質患者の多くは,相当量の脂肪組織が喪失する。この喪失は,脂肪合成の低下よりも分解の亢進によるものが大半である。脂肪分解亢進には,摂食不良,インスリン抵抗性,がん細胞自身から放出される脂肪動員因子LMF(lipid mobilizing factor)などが関与している3)。さらに,LPL の活性低下,脂質合成の低下は,TNF,IL—1,IFN—γなどのサイトカインが関与していると考えられて エネルギー補給REE/BEE(%) 120 110 100 90 80 93.4±9.7 (n=43) 飢餓飢餓+担がん担がん いわゆる悪液質(高サイトカイン血症)の進展 悪液質(臨床的不可逆状態) 栄養管理の変更(ギアチェンジ) 102.3±9.6 (n=17) 113.6±11.9 (n=12) 86.9±7.6 (n=8) 図 4 エネルギー消費量とがんの進展REE/BEE:1 日当たりの安静時エネルギー消費量(間接熱量計による)/基礎代謝エネルギー消費量(ハリス・ベネディクトの式による) 〔東口髙志,他.外科治療2007;96:934—412)より引用改変〕
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いる。また,がん患者に認められる高トリグリセライド血症は,LPL の活性低下,あるいは脂肪合成に影響を及ぼすサイトカインが関与している5)。 現在,がん患者に対して用いられている栄養剤は多岐にわたっている。しかし,いずれも明らかなエビデンスが得られていないのが現状である。そこで,本項では,比較的エビデンスが明瞭であり,汎用されている栄養剤の特徴,成分組成,がん患者に対する有効性を一部紹介する。 1 経口栄養補助剤:GFO® 1 )GFO® の特徴Glutamine—Fiber—Oligosaccharide(GFO®)は,少量の投与で腸管の絨毛上皮の増殖を維持・促進し,腸管免疫能を賦活化するなど,本来腸管が有する機能を最大源に活かすために開発された経口・経腸栄養剤である。GFO® は,消化管術後患者においても早期から吻合部に負担をかけずに経口・経腸投与が可能であり,手術侵襲,絶食(多くは中心静脈栄養を併用,total parenteral nutrition;TPN)によって生じる腸粘膜の萎縮を抑制し,腸管機能を良好に維持することが可能である。また,腸管の蠕動運動を賦活化するとともに,腸管由来の免疫能を促進することにより,腸管由来の感染症をはじめ種々の術後合併症の発生を抑制する働きもあるとされている6)。 2 )GFO® の成分組成(表1) GFO® は,1 包中にグルタミン(G)3.0 g,水溶性ファイバー(F)5.0 g,オリゴ糖(O)2.5 g を含有しており,これらを約30~45 mL の少量の水に溶解して1 日3 回投与する。グルタミンは,小腸絨毛上皮細胞の主なエネルギー基質としてよく知られているが,水溶液中で加熱すると容易に分解されるため,現状では経静脈栄養用アミノ酸としては用いられていない。さらに,小腸絨毛上皮細胞へのエネルギー供給経路は大半が経腸管的であることがわかっているため,効率的なグルタミンの供給のためには経静脈的投与よりもむしろ経腸的な投与が有効である。グルタミンは免疫賦活栄養法(immunonutri- 2 わが国で用いられているがん患者に対する栄養剤 表 1 GFO® の成分組成 成 分含 量(1 包15 g 当たり)熱 量36 kcal糖 質6.0 gタンパク質(グルタミン) 3.6 g(3.0 g) 脂 質0 g食物繊維5.0 gナトリウム0.5 mgラクトスクロース1.45 g
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IV章各論:治療のトピックス tion)として,消化器外科領域の周術期管理を中心に幅広く利用されており,腸管バリア機能の維持,bacterial translocation の防止,免疫能の増強,蛋白代謝改善,腸サイトカイン環境の維持など種々の生態防御改善効果が認められている7)。水溶性ファイバーやオリゴ糖は,Lactobacillus やBifidobacterium などの腸内有用菌によってその一部が選択的に代謝され,代謝産物として短鎖脂肪酸(short—chain fatty acid;SCFA)が産生される。SCFA は,大腸を中心とした腸管粘膜細胞の主要なエネルギー源として利用されるとともに,腸管内pH を低下させる効果を有することにより腸内有用菌を増加させ,逆にClostridiumu などの有害菌を減少させて腸管免疫系の賦活に寄与していることが報告されている6) (図5)8)。 3 )がん患者に対する有効性がん患者の栄養障害は,1高度がん進展に伴う病態(がん悪液質や消化管機能障害など)に基づくもの,2栄養管理自体に問題があり栄養障害を来しているもの(医原性栄養障害を含む)に大別され,特に終末期がん患者においては,これらが複雑に組み合わさり栄養障害が形成されている。いずれの場合にせよ,可能な限り経口摂取を行い,絶食期間を作らないことが重要であり,代謝制御,症状コントロールに有用な栄養剤を十分に利用する必要がある。GFO® は放射線性口腔粘膜炎に対する有効性が報告されており9),また,経口摂取の低下した終末期がん患者にGFO を用いた場合,唾液分泌の促進による口腔内の清浄化,それに伴う食欲の回復,誤嚥性肺炎の再燃予防,腸管の蠕動運動の正常化による便秘の改善などの種々の効果を得ることが可能であると考えられる。特に,終末期がん患者は Bacterial translocationの予防 結腸,小腸絨毛増殖作用,DAO活性上昇 エンテログルカン分泌増加(神経ペプチド分泌増加) ビフィズス菌,乳酸菌などの選択的資化( 優位の腸内細菌を誘導) 短鎖脂肪酸(SCFA:酪酸,酢酸,プロピオン酸)の増量・腸上皮細胞のエネルギー源・管腔内のpHの低下→ などの増殖抑制・胃運動および小腸通過時間の抑制 Clostridium Biffidobacyerium 2高発酵性高粘度水溶性植物線維,3オリゴ糖類 栄養基質:1グルタミン 50~60%ケトン体 15~20%糖 5~7%腸管絨毛 図 5 腸管粘膜の栄養基質となるGFO® 〔東口髙志 編著.重症患者と栄養管理Q & A,総合医学社,2010,p758)より引用〕
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疼痛緩和を目的にオピオイドを使用している場合が多く,その副作用として必発する便秘への対策が重要となる。GFO はオピオイド製剤投与患者の便秘予防に有用であり,薬剤に頼らない,もしくは従来よりも少量の薬剤による排便コントロールが可能である。 2 経口栄養補助剤:インナーパワー® 1 )終末期がん患者に対する症状・機能改善補助食品として開発悪液質の病態解析をはじめとする担がん患者の代謝・栄養学的研究はいまだ十分とはいえず,病態や病状に応じた対策法の開発はほとんど行われていない。このような状況のなか,担がん患者の腫瘍進展に伴う全身体の代謝学的変動に着目し,悪液質における代謝動態の制御を行いつつ,症状発現の抑制や身体機能の回復に有益な栄養剤あるいはメディカルサプリメントとしてインナーパワー® が開発10)され,多数の臨床報告が蓄積されてきた。著者らも終末期がん患者を対象にした臨床検討を行い,終末期がん患者に特有の臨床症状発現を抑制すること,機能回復効果によりQOL の維持・向上が可能なことなどを報告している2—5)。 2 )インナーパワー® の成分組成(表2)インナーパワー® は,1 袋125 g 中に炭水化物33 g,タンパク質1.7 g を含有し,エネルギーとしては139 kcal である。主要成分は,分岐鎖アミノ酸(BCAA),コエンザイムQ10,L—カルニチン,亜鉛,クエン酸であり,進展するがん細胞に直接効果を及ぼすものではなく,むしろがん自体や,生体侵襲を伴う各種がん治療によって障害されているがん以外の組織の機能を回復・改善そして向上させる目的で開発された,これまでの概念にない新しい栄養食品といえる(表2)。また,終末期だけに留まらず外科手術の周術期や化学療法,放射線治療などの治療中,治療後の症例であっても合併症や副作用の予防,全身状態の回復・維持に効果があるとされている。これら治療の直接的侵襲や副作用などによって十分な経口摂取ができない患者や必要摂取量が苦痛を伴っている患者にも配慮し,組成内容をいずれも高濃度に調整し,かつ味や風味も考慮して,少量の摂取で効果が得られやすいように工夫されてい 表 2 インナーパワー® の成分組成 成 分含 量(1 袋125 g 当たり)熱 量139 kcal炭水化物33 gコエンザイムQ10 39 mg BCAA 2,500 mg L—カルニチン50 mgビタミンE 10 mgビタミンB 群5 mg 亜 鉛3 mg 銅0.3 mgクエン酸1,000 mg
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IV章各論:治療のトピックス る。インナーパワー®に含有される各栄養組成の特徴は,以下のとおりである。BCAAは,腫瘍進行に伴う骨格筋の蛋白崩壊を抑制するとともに蛋白合成を促進する。また,骨格筋でのエネルギー代謝を改善して乳酸の貯留を軽減し,筋の疲労回復にも効果がある。コエンザイムQ10 は,電子伝達系に働きTCA 回路を円滑に回す補酵素の一つである。また,優れた抗酸化力は,宿主担がん状態において有効に働くものと考えられている。L—カルニチンは,担がん状態,特にがん悪液質での脂肪酸利用能の低下した状態において脂肪酸のβ酸化を促進させ高脂血症の改善とともにエネルギー代謝効率の向上が期待できると考えられる。重要な微量栄養素である亜鉛も抗酸化作用を有し,味覚障害の改善や免疫能の促進,そして創傷治癒促進作用などが知られている。クエン酸は糖代謝におけるエネルギー代謝の中心的な役割を担っており,嫌気的解糖系の活性を抑制し,乳酸産生抑制作用が期待される。また,血液,体液レベルでの緩衝作用を有することから,侵襲や高サイトカイン血症時におけるpH 制御に関与し,生態環境の正常化に働くと考えられる。これらインナーパワー® に含有される種々の栄養素の相乗効果は,それぞれが単独でも多くの代謝制御効果や臨床効果を有しているが,これらを同時に投与することによって相加相乗的に働き,合理的なエネルギー産生を促進し,代謝異常の予防に働くことものと考えられる。 3 )がん患者に対する有効性終末期がん患者に対してインナーパワー® 1 袋を4 週間経口投与し,非投与の対照群と比較した臨床研究がある。痛み,倦怠感,呼吸困難感,気分の落ち込み,食欲不振,不眠,吐気,便秘,口渇の9 項目についてface scale を用いて0~5 の6 段階(0:症状なし→増悪→5:高度異常)で評価し,さらにこれら9 項目の評価点数を加算した「臨床症状加算式総合評価」では,インナーパワー® 投与群の有用性が示唆された(図6)。特に,倦怠感の推移では,インナーパワー® が筋蛋白の維持効果に加え,乳酸の抑制効果を示唆したことが大きな要因と考えられた(図7,8)。 30 25 20 15 10 5 0 p<0.001 ** ** p<0.01 インナーパワー投与群 (n=16)対照群(n=16)投与前2週後4週後 p<0.01 図 6 臨床症状加算式総合評価の推移values are means±SD vs 対照群(Wilcoxon test) **:p<0.01 〔東口髙志,他.外科と代謝・栄養2010;44:157—6910)より引用〕
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また,血液・生化学的指標においては,総蛋白,アルブミンの経時的推移よりインナーパワー群において蛋白代謝および薬剤代謝の恒常性の維持と循環動態の回復が認められた11)。以上より,インナーパワー® の終末期がん患者に対する投与は,1全身の蛋白合成の促進,2骨格筋の萎縮・崩壊の抑制,3健常部位・組織の抗酸化作用抑制(抗がん剤や放射線治療あるいは外科治療などの侵襲からの回復促進),4組織修復能の促進,5骨格筋および各種臓器内の乳酸排出および代謝の促進などの効果を有することが明らかとなっている12—14)。4.5 2.5 3.0 3.5 4.0 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 インナーパワー投与群 (n=16)対照群(n=16)投与前2週後4週後 p<0.05 p<0.01 p<0.01 * ** 図 7 倦怠感の推移values are means±SD vs 対照群(Wilcoxon test) *:p<0.05,**:p<0.01 〔東口髙志,他.外科と代謝・栄養2010;44:157—6910)より引用〕 45.0 (mg/dL) 25.0 30.0 35.0 40.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 p<0.01 p<0.001 インナーパワー投与群 (n=16)対照群(n=16)投与前2週後4週後 基準値:3.0~17.0 mg/dL * 図 8 血清乳酸値の推移values are means±SD vs 対照群(t—test) *:p<0.05 〔東口髙志,他.外科と代謝・栄養2010;44:157—6910)より引用〕
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IV章各論:治療のトピックス 3 経口栄養補助剤:プロシュア® 1 )悪液質患者に対する栄養機能食品として開発がんに伴う低栄養は,がん関連性体重減少(cancer—associated weight loss;CAWL)とがん誘発性体重減少(cancer—induced weight loss;CIWL)に分類される。CAWLは,消化管閉塞,治療による食欲不振,告知による精神的ストレスなどを背景とした摂食不良が原因のため,十分なエネルギー補給により改善可能である。一方,CIWL は,がんに起因する代謝異常で起こる体重減少であり,通常の栄養管理では改善することが困難である。がんに対する免疫応答により炎症性サイトカインが過剰分泌されることに加え,がん細胞から分泌される蛋白質分解誘導因子PIF が増加し,体重減少,炎症反応,脂肪喪失,筋蛋白消失を伴う悪液質により臨床転帰が不良となる。プロシュア® は,がん悪液質に対応するために開発された栄養機能食品であり,国内の栄養剤では最も多くのエイコサペンタエン酸(EPA)を含有している。ω—3 脂肪酸に属するEPA は,免疫栄養素の代表であり,がん悪液質に関与する炎症性サイトカインの働きを抑制,さらにPIF の活性低下により蛋白分解を抑制する働きがある。海外においては,「体重減少抑制」「QOL 改善」などの報告がなされている15)。 2 )プロシュア® の成分組成(表3)プロシュア® は,1 パック240 mL 中に炭水化物49 g,タンパク質16 g,脂質6.1 g のほか,ビタミン,ミネラルなど栄養素をバランスよく含有し,エネルギーとしては300 kcal である。悪液質に対応するため,蛋白強化とともに,1.25 kcal/mL と濃縮タイプの 表 3 プロシュア® の成分組成 成 分含 量(1 パック240 mL 当たり)熱 量300 kcal Na 360 mg炭水化物49 g K 480 mgタンパク質16 g Cl 365 mg 脂 質6.1 g Ca 355 mg L—カルニチン24 mg P 252 mgビタミンA 324μgRE* Mg 101 mg βカロテン168μgRE* Zn 6.0 mgビタミンD 4.1μgビタミンE 48 mgα—TE**ビタミンC 103 mgビタミンB 群0.95 mg 葉 酸406μgナイアシン3.8 mgパントテン酸2.6 mg ビオチン12μg *RE:レチノール当量**α—TE:αトコフェロール当量
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ため効率良く高エネルギーを補給することが可能である。ω—3 脂肪酸のうちEPA やドコサヘキサエン酸(DHA)は,がん悪液質に関与するIL— 6 などの炎症性サイトカインの産生を強力に制御するが,プロシュア® は,1 パック中にEPA を約1.1 g,DHA を約0.5 g 含んでいるため,髙抗炎症作用が期待できる。さらに,化学療法などの副作用である味覚異常を考慮し,亜鉛も豊富に含まれている。その他,便性状を整える食物繊維,オリゴ糖なども含有されている。 3 )がん患者に対する有効性プロシュア® をはじめとするEPA 添加栄養食品は,多くの固形がんにおけるCIWL 抑制目的に使用され,体重減少抑制,除脂肪体重維持,炎症反応抑制,QOL 改善などの有用性が報告されている15)。 4 胃瘻からの経腸栄養剤:ラコール® NF 配合経腸用半固形剤 1 )ラコール® 半固形剤の特徴わが国で汎用されている半消化態栄養剤であるが,日本初の半固形剤として開発された経腸栄養剤である。脂肪源として,ω—3 脂肪酸であるα—リノレン酸を豊富に含むシソ油が多く配合されている。主に,ω—3 脂肪酸による免疫賦活作用のほか,抗炎症作用,抗腫瘍効果化学療法感受性増強作用なども報告されている16)。特に,頭頸部がんなどで経口摂取が不可能となり,胃瘻造設を施行された患者に対して投与される。液剤の経腸栄養剤を半固形化し,通常の食事に近い形状で投与することにより,胃が本来有している生理的な運動を引き起こすことが期待されている。液体栄養剤をそのまま用いた際の副作用である,1下痢,2胃食道逆流,3胃瘻からの栄養剤の漏れなどの回避はもちろんのこと,栄養剤投与にかかる患者の拘束時間短縮に有用であると考えられる。 2 )ラコール® の成分組成(表4)ラコール® は,1 パック300 g 中に炭水化物47 g,タンパク質13 g,脂質6.7 g のほか,ビタミン,ミネラルなど栄養素をバランスよく含有し,エネルギーとしては300 kcalである。微褐白色のゲル状で,粘度は6,500~12,500 mPas に調整されている。ω—3 脂肪酸とω—6 脂肪酸の含有比が1:3 に調整されている。さらに,消化吸収に優れている中鎖脂肪酸(MCT)が多く配合されている。 3 )がん患者に対する有効性消化器がん患者に対する,周術期投与などの栄養支持療法の有用性は報告されている。また,がん悪液質患者にラコール® を投与すると摂食促進作用を有する消化管ホルモンであるグレリンの産生が増加し,体重も増加することも報告されている17)。胃瘻からの半固形化栄養剤投与薬剤としてはわが国で唯一の栄養剤であり,患者のQOL からも極めて有用であると考えられる。 5 経口補水液:OS‒1® 1 )OS‒1® の特徴OS—1® は,消費者庁の特別用途食品・個別評価型・病者用食品表示許可を取得している水分・糖類・電解質含有経口補水液である。OS—1® は,WHO の提唱する経口補水療
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IV章各論:治療のトピックス 法の考えに基づいた飲料で,その組成は,経口補水療法を発展させた米国小児学会の指針に基づいている。経口補水療法は,1生理的な方法で水・電解質補給が可能である, 2特殊な器具や技術を必要としない,3在宅においても実施可能などの利点があると考えられている。 2 )OS‒1® の成分組成(表5) OS—1® は,ナトリウムイオン濃度,クロールイオン濃度が50 mEq/L,カリウムイオン濃度が20 mEq/L,ブドウ糖濃度が1.8%の組成で,浸透圧が270 mOsm/L で構成されている。 表 4 ラコール® の成分組成 成 分含 量(1 パック300 g 当たり)熱 量300 kcal Na 221.4 mg炭水化物46.9 g K 414 mgタンパク質13.1 g Cl 351 mg 脂 質6.7 g Ca 132 mg乳カゼイン10.2 g P 132 mg大豆タンパク質5.0 g Mg 57.9 mg 中鎖脂肪酸2.3 g Zn 1.9 mg αリノレン酸0.45 gリノール酸1.35 gビタミンC 84.3 mgビタミンE 1.95 mgビタミンK 18.75μgパントテン酸2.9 mg 葉 酸113μgビオチン12μg 表 5 OS—1® の成分組成 成 分濃 度Na+ 50 mEq/L K+ 20 mEq/L Cl- 50 mEq/L Mg2+ 2 mEq/Lリン2 mmol/L乳酸イオン31 mEq/L炭水化物2.5% (ブドウ糖1.8%)
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3 )がん患者に対する有効性高度な脱水状態には,輸液で対応することが有効であるが,軽度から中等度の脱水症への処置としてはOS—1® が適していると考えられている。一般的に,感染性腸炎,感冒による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態,過度の発汗による脱水状態に適している。すなわち,輸液療法と同等の水分・電解質補給効果があること,術前患者の不安感・口渇感・空腹感を緩和させることが報告されている。がん患者に対しては,周術期の体液管理への応用,抗がん治療後の水分負荷などはもちろんのこと,特に在宅療養を希望しているがん患者に対しても,体液管理および日常の脱水治療に加え,終末期においては水分・電解質補給の方法として活用されることが期待される。 6 経口栄養補助剤:アバンド® 1 )アバンド® の特徴本来,アバンド® は,褥瘡などの創傷治癒過程における組織の増殖・再生において蛋白,なかでもコラーゲン合成が重要な役割を果たす栄養剤として開発されている。褥瘡の発生に伴い,生体内の蛋白異化の亢進が起こり,これが改善されないと,創傷治癒の遅延,さらには免疫能の低下につながるため,体蛋白の分解を抑制することは極めて重要な事項となる。その治癒過程において重要な役割を果たすのが,アミノ酸である。グルタミン,アルギニン,β—ヒドロキシ—βメチル酪酸(HMB)を配合したアバンド® は,除脂肪蛋白喪失抑制や体重増加などが確認されている。 2 )アバンド® の成分組成(表6)アバンド® に配合されるHMB は,必須アミノ酸であるBCAA のなかでも最も強い蛋白合成促進と分解抑制効果を有するロイシンの代謝産物である。ロイシンは代謝され,そのわずか5%がHMB として作用する。HMBの働きは,1蛋白の合成促進:細胞分裂や成長,細胞構成に関与しているmTOR (mammalian target of rapamycin)経路を経て,蛋白合成を促進することが報告されている,2体蛋白の分解抑制:細胞膜の構成成分であるコレステロールに代謝され筋鞘を安定化させる可能性が考えられている。また,細胞内蛋白分解経路であるユビキチン—プ 表 6 アバンド® の成分組成 成 分含 量(1 袋24 g 当たり)熱 量79 kcal炭水化物7.9 gタンパク質0 g 脂 質0 gカルシウム200 mgアミノ酸L—グルタミン7 g L—アルギニン7 g カルシウムHMB 1.5 g (HMB 1.2 g を含む)
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IV章各論:治療のトピックス ロテアソーム系を抑制することから,体蛋白分解を抑制すると考えられている,3過剰な炎症反応の調整:慢性炎症反応の発生に深く関与している転写因子NF—κB の発現を制御するため,慢性創傷などによる長期の炎症反応の改善が期待される,などである。HMB のほかに,グルタミン(蛋白合成の促進,コラーゲンの合成促進,免疫賦活作用,消化管粘膜構造の維持),アルギニン(蛋白合成の促進,コラーゲンの合成促進,免疫賦活作用),3 成分が配合されている。 3 )がん患者に対する有効性アバンド® は,褥瘡などの創傷治癒に関する有用性は数多く報告されている。がん悪液質患者,進行がん患者に対しては,筋肉喪失からの回復,除脂肪体重の増加が報告されている18)。 がん細胞は,複雑な代謝経路により,どのような環境下でも生存を維持する能力が高いといわれている。がん細胞が,Cori 回路などのエネルギー産生効率が悪い解糖系を選択する背景には,腫瘍細胞自身が増殖するために必要となるRNA・DNA,アミノ酸,脂質などの産生を獲得するためとの仮説が提唱されている6)。このように,がんの進展によってもたらされる代謝障害は,次第に不可逆的な悪液質状態に陥るとされるが,この代謝異常はがん種により,また個々の症例において障害の程度やその内容,進行のスピードは異なり,通常の栄養管理では改善が困難である。このため,がんと診断された時点より,今後の治療方針を決定することと同様に,栄養管理も積極的に行うことが重要である。すなわち,がん患者が最期までADL を落とすことなくQOL を維持し,感染症を起こすことなく,命を全うするためには,栄養療法はがん治療の要と言っても過言ではない。 (伊藤彰博) 【文 献】1) Demsey DT, Feurer ID, Knox LS, et al. Energy expenditure in malnourished gastrointestinal cancer patients. Cancer 1984; 53: 1265-73 2) 東口髙志,森居 純,伊藤彰博,他.全身症状に対する緩和ケア.外科治療2007; 96: 934-41 3) Tisdale MJ. Cachexia in cancer patients. Nat Rev Cancer 2002; 2: 862-71 4) Guirao X. Impact of the inflammatory reaction on intermediary metabolism and nutrition status. Nutrition 2002; 18: 949-52 5) Argilés JM, López-Soriano FJ. New mediators in cancer cachexia. Nestle Nutr Workshop Ser Clin Perform Programme 2000; 4: 147-62, discussion 163-5 6) 東口髙志,伊藤彰博,二村昭彦,他.Glutamine-Fiber-Oligosaccharide(GFO) enteral formula の経静脈栄養実施時における腸粘膜の形態的・機能的変化に対する効果の実験的研究.外科と代謝・栄養2009; 43: 51-60 7) 原 博.プレバイオティクスから大腸で生産される短鎖脂肪酸の生理効果.腸内細菌雑誌2002; 16: 35-42 8) 東口高志 編著.GFO 療法はなぜ効くの?.重症患者と栄養管理Q&A.総合医学社.2010,p75 9) 飛田尚慶,吉富泉,朝比奈泉,他.頭頸部がん放射線治療時に発生する口腔粘膜炎による有害事象 に対するグルタミンリッチの栄養剤: GFO® の有用性についての検討.静脈経腸栄養2010; 25: 951-6 3 がん悪液質に対する栄養サポートと今後の課題
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10) 東口髙志,二村昭彦,伊藤彰博.終末期がん患者に対する症状・機能改善補助食品の開発とその効果; 比較臨床試験.外科と代謝・栄養2010; 44: 157-69 11) 二村昭彦,東口髙志,伊藤彰博,他.終末期がん患者の代謝動態改善を目指した新しい栄養剤・インナーパワーの効果.静脈経腸栄養2010; 25: 241 12) 大川貴正,東口髙志,伊藤彰博,他.新しい栄養剤インナーパワーの運動負荷即時効果に関する基礎的臨床研究.静脈経腸栄養2010; 25: 242 13) 河村早紀,菊池暢之,松尾真紀,他.栄養機能食品「インナーパワー」使用により代謝改善効果のあった一例.静脈経腸栄養2010; 25: 242 14) 山本春美,清水加那,早川信子,他.HCC 患者に対する栄養機能食品インナーパワーの効果.静脈経腸栄養2010; 25: 845 15) Fearon KC, Von Meyenfeldt MF, Moses AG, et al. Effect of a protein and energy dense N-3 fatty acid enriched oral supplement on loss of weight and lean tissue in cancer cachexia: a randomised double blind trial. Gut 2003; 52: 1479-86 16) Mitsugi K, Nakamura T, Kashiwabara N, et al. Protection against methotrexate toxicity by a soybean protein- and omega-3 fatty acid-containing diet: comparative study with a casein-containing diet. Oncol Rep 2004; 12: 41-4 17) Ashitani J, Matsumoto N, Nakazato M. Effect of octanoic acid-rich formula on plasma ghrelin levels in cachectic patients with chronic respiratory disease. Nutr J 2009; 8: 25 18) May PE, Barber A, D’Olimpio JT, et al. Reversal of cancer-related wasting using oral supplementa- tion with a combination of β-hydroxy-β-methylbutyrate, arginine, and glutamine. Am J Surg 2002; 183: 471-9
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IV章各論:治療のトピックス がんに対する免疫療法が,現在,世界的に注目されている。近年,一部のがんに対して標準治療として確立され,急速に市民権を得た治療となっている。一方で,それら以外の免疫療法については,保険承認されているが標準治療としては認められていないもの,先進医療,治験あるいは研究治療,自費診療(代替医療)と,いろいろな設定で実施されているのが現状である。患者にはこのことをよく説明する必要がある。 2016 年3 月現在,わが国で実施されている免疫療法のうち,保険承認されているものと先進医療について適応疾患とともに表7 に示す1)。便宜的に第1~4 世代に分類した。 1 第1 世代 第1 世代は,天然物やその加工・抽出物,類似化合物である。主に手術後や抗がん剤との併用で有効性が示されているものの,標準治療として認知されているものは表在性膀胱がんに対する乾燥BCG のみである。その他は,保険承認されているが標準治療として認められていないことから,主治医によって選択頻度が異なっているのが現状である。 2 第2 世代 第2 世代は,免疫関連細胞が産生するサイトカインとよばれる蛋白で,各種インターフェロンとインターロイキン2 である。がん細胞を直接傷害したり,免疫細胞を活性化して効果を発揮する。腎がんや脳腫瘍,血管肉腫などに保険承認されているが,第一選択の薬剤がほかに存在し,その後に使用されることが多い。 3 第3 世代 第3 世代は,先進医療であり,各種活性化自己リンパ球移入療法や樹状細胞ワクチン,ペプチドワクチンがある。先進医療は国が認めた研究過程の治療であり,効果が検証されたものではない。主に患者の実費負担を得て実施され,もって効果の評価を受ける段階の治療である。先進医療の部分に公的保険は無効なので注意が必要であるが,一般的な自費診療と異なり,先進医療以外の医療費は保険診療が可能であり,保険診療と併用可能な自費診療といえる。なお,先進医療特約のある民間保険に加入していればそれでまかなわれる。 4 第4 世代 第4 世代は,免疫チェックポイント阻害薬で,免疫細胞ががん細胞を傷害する過程の妨げとなっている,いわば抵抗分子を阻害して,免疫細胞ががん細胞を傷害できるようにする薬剤である。いわば,がんに伴う免疫抑制を薬剤で抑制する,「抑制の抑制」という新規作用機序の薬剤で,免疫研究の進歩によって近年急速に登場し,世界的に注目さ 1 わが国で実施されている免疫療法 2 免疫療法
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れている。抗体製剤のニボルマブが皮膚がんメラノーマに保険承認され(2014 年9 月世界初),さらに,切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんにも適応が拡大され(2015 年12 月),標準治療となっている。現在,その他のがんに対しても世界的に研究が進んでおり,有効性が報告されている。適応が拡大されていくことは確実と目されている(日本での次の保険承認は腎がんの見込み)。上記第1~4世代以外の免疫療法は,治験あるいは研究治療として企業や医師が開発中のものや,医師の裁量で提供される自費診療,いわゆる代替医療である。患者にはこのことをよく説明する必要がある。 (山口佳之) 表 7 がんに対する免疫療法の保険適用と先進医療 免疫療法適応疾患 第1 世代PSK(クレスチン®)胃がん手術例,結腸・直腸がん手術例,小細胞肺がん(化学療法併用) OK—432(ピシバニール®)胃がん手術例,原発性肺がん(化学療法併用),頭頸部がん,甲状腺がん,消化器・肺がん性胸水・腹水レンチナン(レンチナン®)手術不能・再発胃がん(化学療法併用)ウベニメクス(ベスタチン®)成人急性非リンパ性白血病(化学療法併用)乾燥BCG(イムノブラダー®)表在性膀胱がん第2 世代インターフェロン—α(イントロンA® など)腎がん,多発性骨髄腫,CML,ヘアリー細胞白血病,B・C 型慢性活動性肝炎インターフェロン—β(フエロン® など)膠芽腫,髄芽腫,星細胞腫,悪性黒色腫,B・C 型慢性活動性肝炎インターフェロン—γ(イムノマックスγ® など)腎がんインターロイキン—2(イムネース® など)腎がん,血管肉腫第3 世代・先進医療A*自己腫瘍・組織及び樹状細胞を用いた活性化自己 リンパ球移入療法がん性の胸水,腹水または進行がん樹状細胞及び腫瘍抗原ペプチドを用いたがんワク チン療法抗原陽性食道がん,胃がん,大腸がん,進行 再発乳がんまたは原発性・転移性肺がん・先進医療B 12 種類の腫瘍抗原ペプチドによるテーラーメイ ドのがんワクチン療法HLA—A24 陽性のホルモン不応性再燃前立腺 がんピロリン酸モノエステル誘導γδ型T 細胞サイトカイン不応性の転移性または再発の腎細胞がんNKT 細胞を用いた免疫療法肺がん(術後および進行再発例),頭頸部扁平上皮がんゾレドロン酸誘導γδT 細胞を用いた免疫療法非小細胞肺がん第4 世代ニボルマブ(オプジーボ®) イピリムマブ(ヤーボイ®)根治切除不能な悪性黒色腫,切除不能な進 行・再発の非小細胞肺がん根治切除不能な悪性黒色腫 *2017 年3 月31 日までに先進医療B への変更申請が求められている。 〔山口佳之,他.Biotherapy201125;785—90 を一部省略・追加〕
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IV章各論:治療のトピックス 【文 献】1) 山口佳之,山村真弘,弘中克治,他.バイオセラピィの息吹―カワラタケが拓いた世界.Biotherapy 2011; 25: 785-90
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1874(明治7)年,日本政府は国として医療制度を普及させるために医制を布告し,医師,歯科医師などを資格制とした。その後,日本の医療は西洋の医学を取り入れ,世界的に発展し現在に到っている。そのなかにあって,紆余曲折こそあったが,日本の伝統医学である漢方医学は,現在すべての大学の医学部で授業カリキュラムが組まれ,漢方教育が行われている。漢方医学の治療で用いられる漢方薬は,植物,動物,鉱物などの生薬を組み合わせた合剤である。漢方薬には,医師が処方する医療用漢方製剤と,薬局で購入できる一般用漢方製剤がある。日本の漢方薬の特徴の一つは,医療用漢方製剤に保険適用が認められているということである。医療用漢方製剤はすべて,厚生労働省によって承認された原材料をもとに作られている。さらに,製品の安全性や品質管理は製造・販売会社によって厳しく保証されている。一方で,一般用漢方製剤は保険適用とはなっていない。しかし,一般用漢方製剤も厚生労働省によって承認された原材料を用い,製品の安全性や品質管理は製造・販売会社によって厳しく保証されたものであることには変わりはない。この他,漢方薬の原材料として使われている薬草,鉱物などを使い「漢方」と称し販売されている健康食品,サプリメントの類があるが,これらは漢方薬ではない。効果の有無については,購入した個人の自己判断に委ねられているのが現状である。同様に,インターネットや並行輸入で入手した海外の「漢方」(実は漢方薬といえるものは日本の製品のみであり,「中国の漢方薬」というものはない)は,安全性や品質管理が保証されているものではない。 医師は,例えばがん診療においては,抗がん剤の副作用軽減を目的として,さらに患者の生活の質(QOL)の向上を目的として,漢方薬を使用している。現在の傾向として,漢方薬は,言い伝えや経験による使用方法に加え,基礎研究やエビデンスに則った,漢方薬の作用機序を理解したうえでの処方および使用が増えてきている。がん患者が,安全に安心して漢方薬を使用できるように,毎年,多くのエビデンスに基づいた漢方薬の研究結果が発表されている。特に漢方薬は,西洋医学では治療方法がない場合の補完ということで,西洋薬では効果が得られない部分を補っていることが多い。実際,表8のように多くのがん治療の現場で漢方薬が用いられている。 漢方薬は自然のものでできているので副作用はないという誤解が多く見受けられる。 1 漢方薬とは? 2 漢方薬を用いた臨床試験 3 漢方薬の注意点 3 漢方薬
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IV章各論:治療のトピックス 漢方薬も薬効を有する生薬でできているため当然副作用もあり,さらに,他の薬との相互作用も認められる。表9 に代表的な生薬および漢方薬の副作用を示す。以上のように,漢方薬は近年エビデンスも認められ,西洋薬では対応できない症状の改善に用いられてきている。作用機序や副作用を考えたうえでの漢方薬の使用は,これからも重要なポイントとなると考えられる。 (今津嘉宏,上園保仁) 【文 献】1) 日本東洋医学会.漢方治療エビデンスレポート2013―402 のRCT(EKAT 2013). http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/index.html 2) 北島政樹 監,今津嘉宏 編.がん漢方,南山堂,2012,pp176-184 表 8 がん治療時に用いられる漢方薬 漢方薬愁訴・合併症など 大建中湯(だいけんちゅうとう)腸閉塞,術後腸管運動麻痺牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)リンパ浮腫六君子湯(りっくんしとう)胃がん術後の逆流性食道炎半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)抗がん剤(イリノテカン塩酸塩)による下痢芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)抗がん剤(パクリタキセル)による筋肉痛・関節痛十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)進行乳がんの化学療法+ホルモン療法における併用による生存率改善補中益気湯(ほっちゅうえっきとう)胃がんと大腸がんの手術侵襲の軽減 〔日本東洋医学会.漢方治療エビデンスレポート20131)より作成〕 表 9 代表的な生薬および漢方薬の副作用等 生 薬副作用 大黄(だいおう),芒硝(ぼうしょう)腹痛,下痢など麻黄(まおう)動悸,血圧上昇など甘草(かんぞう)浮腫,血圧上昇など附子(ぶし)動悸,血圧上昇など 生 薬相互作用 石膏(せっこう),牡蠣(ぼれい),竜骨(りゅうこつ)ニューキノロン系抗菌薬大黄(だいおう),牡丹皮(ぼたんぴ),芍薬(しゃくやく),桂皮(けいひ)鉄剤,酵素剤 生薬および漢方薬併用禁忌 甘草(かんぞう)アルドステロン症の患者ミオパシーがある患者低カリウム血症のある患者小柴胡湯(しょうさいことう)インターフェロン製剤を投与中の患者肝硬変,肝がんの患者慢性肝炎における肝機能障害で血小板数が10 万/mm3以下の患者 〔北島政樹 監,今津嘉宏 編.がん漢方,南山堂,2012,pp176-1842)より作成〕
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ビタミンC は,酸化還元機能を有する必須栄養素である。生体内で酵素反応における補因子として機能しており,コラーゲン合成にも重要な役割を担っている1)。ヒトでは,ビタミンC を内因的に合成することができないため,食品(特に果物と野菜)あるいはサプリメント(アスコルビン酸,アスコルビン酸Na,アスコルビン酸Ca など)として摂取する必要がある。日本人の食事摂取基準(厚生労働省,2015 年版)によると,成人のビタミンC 推奨量は100 mg/日である。なお,心臓血管系の疾病予防効果ならびに抗酸化作用効果から算定された推定平均必要量は85 mg/日とされている。 1 がん予防 疫学研究から,果物や野菜を多く摂取することにより,発がんリスクが低下することが報告されている。その理由の一つとして,食品に含まれるビタミンC の関与が考えられ,症例対照研究では,それを裏づけるような結果が得られている2)。しかし,前向きコホート研究では結果が一致しておらず,また無作為化比較試験においてはビタミンC補充が発がんリスクに影響を及ぼさないとする結果が報告されている。これらの研究の限界点として,生体内においてビタミンC の血漿中濃度は厳密にコントロールされており,もともと十分量摂取している被験者に,多量のビタミンC を摂取させても濃度はほとんど上昇しないことが影響している可能性がある。 2 がん治療 1970 年代に,高用量のビタミンC(10 g/日を経口あるいは静脈投与)が進行がん患者のQOL と生存期間に有益な効果をもたらすことが示唆された3,4)。しかし,追試として実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(10 g/日を経口投与のみ)では,これらの知見を支持する結果は得られなかった5,6)。その後の研究で,ビタミンC の投与経路(経口または静脈投与)の違いによって結果の矛盾が説明されることが示唆された。ビタミンC を経口投与した場合,血漿中ビタミンC 濃度は最大でも300μmol/L 以下に厳密にコントロールされている一方で,静脈投与では血漿中濃度が20,000μmol/L 以上まで上昇する7,8)。このレベルの濃度になると, in vitro でがん細胞株に対して選択的に細胞傷害性を示すことも明らかとなった9)。2000 年代には,高濃度ビタミンC 点滴療法による症例報告が相次ぎ,米国国立がん研究所(NCI)のBest Case Series Program10)のサポートも受け,安全性と有効性を検証する臨床試験が実施されるに至っている。 1 ビタミンC に関する一般的事項 2 ビタミンC とがん 4 高濃度ビタミンC 点滴療法
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IV章各論:治療のトピックス 1 ビタミンC の抗腫瘍メカニズム 現時点で,ビタミンC の抗腫瘍メカニズムとして考えられているものを以下に列記する。・ ビタミンC による過酸化水素産生による直接的な細胞傷害作用11)・ 細胞増殖に関わる遺伝子発現の抑制12)・ オートファジー経路の活性化13) 2 単独投与 現時点では,症例報告・ケースシリーズの報告14,15)のみであり,無作為化比較試験の報告はない。これらの報告によると,患者のQOL 改善効果,化学療法に関連する副作用症状の改善効果の可能性が示唆されている。 3 併用療法 抗がん剤との併用による安全性および有効性を検証する臨床試験の報告16—18)が複数ある。併用に伴う重篤な有害事象は起きておらず,一方で抗がん剤の副作用を軽減する可能性が示唆されている。[補 足] なお,米国において実施されている「高濃度ビタミンC 点滴療法」の臨床試験は,ClinicalTrials. gov19)にて検索可能である。2016 年1 月22 日現在,Conditions を「Cancer」,Interventions を「Ascorbic acid」として検索すると67 件の臨床試験がヒットする。 4 副作用 これまでの臨床研究の結果から,高濃度ビタミンC 点滴療法はがん患者にとって忍容性の高い治療法であることが報告されている。しかし,腎機能障害のある患者が高濃度ビタミンC 点滴療法を受けた際に腎不全を来したという報告がある20)。また,グルコース—6—リン酸脱水素酵素欠損症の患者では,溶血を来すリスクがあるため禁忌とされる21)。 5 薬物相互作用 まだ不明な点が多いが,高濃度ビタミンC 点滴療法と一部の抗がん剤との併用療法の臨床試験において重篤な有害事象は報告されていない16—18)。しかし,化学療法は多岐にわたることを踏まえ,今後も臨床試験などで慎重に評価されていくことが望まれる。 6 その他の注意事項 高濃度ビタミンC 点滴療法は,日本では一部の臨床試験を除き自由診療にて行われている。そのため保険適用はなく,治療にかかる費用は全額自己負担となる。経済的負担も考慮したうえで,可能性のあるリスクとベネフィット,現実的に期待できる点について患者は十分に知らされるべきであり,医療者は,そのための情報提供に努めていただきたい。 (大野 智) 3 高濃度ビタミンC 点滴療法
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複数の薬剤が同時に用いられるとき,効果が増強あるいは減弱したり,予期せぬ反応が出現することがある。このような現象は薬物相互作用によるものとされ,医薬品同士だけでなく,医薬品と食品においても同様の現象が認められることが知られている。一般に,医薬品などの成分が複数存在して生じる相互作用のメカニズムには,大きく分けて2 種類ある。すなわち,1薬物動態学的相互作用,2薬力学(薬理学)的相互作用である。 複数の薬を用いたときに,作用が強まる,あるいは副作用が出現するのは,薬物血中濃度が高まったときにみられる現象である。逆に作用が弱まるのは,薬物血中濃度が低下していると考えられる。経口的に摂取した薬物は,「吸収(absorption)」の過程を経て血中に入り,体内に「分布(distribution/disposition)」し,臓器や組織で変化「代謝(metabolism)」して,「排泄(excretion/elimination)」の機能によって体外に捨てられる。このような薬物の体内での動きをそれぞれの頭文字をとって「ADME(アドメ)」と呼び習わしているのだが,薬物同士や薬物と食物の相互作用は,これらのどの過程においても生じ得る。健康食品と医薬品の相互作用による健康被害報告について表10 にまとめた。一般に,薬物相互作用は代謝過程での相互作用が最も多いとされている。食品成分でも,薬物代謝酵素,特にCYP で代謝されるものは,抗がん剤との相互作用が予測される。また,B 細胞リンパ腫の化学療法を受けている患者が,コーラの飲み過ぎのため尿が酸性化して,使用した高用量メトトレキサートの排泄が遅延し,その毒性によって腎障害を発生したという報告がある1)。悪性腫瘍の治療中,あるいは疼痛緩和のために複数の薬剤を使用している場合には,相互作用の可能性も高まるうえに,肝機能・腎機能が低下している可能性も高いので,より相互作用や有害作用が出現しやすくなることが予想される。 薬物の血中濃度あるいは組織での濃度が変わらなくても,細胞の反応性が変化することで薬に対する反応が異なる現象を,薬力学(薬理学)的相互作用とよんでいる。よく知られている例として,抗凝固薬のワルファリンカリウムは,肝臓におけるビタミンK依存的な凝固因子の合成を阻害することによって抗凝固作用を示すのだが,緑黄色野菜や納豆を摂取するとそれらに含まれるビタミンK がワルファリンカリウムの作用を打ち消して凝固因子が減らなくなってしまう。また,抗けいれん薬のカルバマゼピンは,メラトニンやアルコールによって副作用が増強し,一方,カフェインの存在によって抗けいれん作用が抑制される。中枢作用を示 1 薬物動態学的相互作用 2 薬力学(薬理学)的相互作用 1 相互作用について
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V章参考資料 す薬は,アルコールやカフェインと併用すべきでないことはよく知られているが,栄養ドリンク剤にはアルコール・カフェインを含むものがあり,薬の服用時には避けるように注意せねばならない。がん化学療法に関していえば,実際に報告があるわけではないが,食品成分で女性ホルモン様の作用をもつ大豆イソフラボンなどは,乳がん治療に用いる抗エストロゲン作用を示す薬の効果を減弱させる可能性があり,ホルモン療法を行う場合には注意が必要となる。 1 環境要因によるもの 近年,腸内環境が身体に及ぼす影響について関心が高まっている。肥満や精神疾患,認知症などと腸内細菌の関連性についても議論されており,薬の服用や食事の変化によって疾患の症状が変化するなどの現象は十分予想できる。健康食品のなかには腸内細菌叢に直接作用するプロバイオティクス(人体にとって有益な微生物)やプレバイオティクス(有益な微生物の増殖促進が期待される食品成分)が含まれており,それらと医薬品が直接相互作用することはなかったとしても,腸内細菌叢が変化することで医薬品の吸収や代謝が変化する可能性がある。腸内細菌が産生する酵素によって,医薬品あるいは食品成分が変化すると,吸収あるいは代謝に変化が生じ,想定外の事象が起こるかもしれない。腸内細菌叢が治療薬の体内動態や受容体作用に与える影響については今後も検討が必要であろう。 2 ポリファーマシーの危険性 ポリファーマシーとは,薬の種類が多い状態を意味する。では何剤からがポリファーマシーかといえば,厳密な定義はないものの,一般的に5 剤を超える場合はその薬の必要性について見直すことが勧められている。ただ,処方薬の種類が多いものがすべて問題あり,というわけではなく,複雑な病態や多疾患が併存する場合には,エビデンスに基づいて適切な薬剤を選択した結果,薬の種類が多くなることはあり得る。多剤併用は,がん化学療法では一般的であり,その理由はいくつかあるが,副作用を軽減するためであったり,耐性の出現を遅らせること,がん細胞の多様性に対応するための方策であったりと,利点は広く喧伝されている。しかし,高齢者の場合は基礎疾患をもつことが多く,それらの治療薬をあわせると薬の種類は膨大になる。そこに例えばハーブやサプリメントが加わった場合にどうなるか。葉酸サプリメントがメソトレキサートの作用を減弱させる,といった個別的な情報はあるが,全体として致命的な相互作用が問題になった例は少ない。しかしながら,相互作用を全く気に留めずに,薬を増やしていけばよいというものではない。がんという疾患の性格上治療が優先されるのは必定で,また多くの治療計画は多種類の薬を使用してエビデンスを構築しており,多剤併用は今後もがん化学療法では一般的に行われるだろう。このような状況では,がん化学療法施行時には,ハーブやサプリメントの使用は控えたほうが安全である。 3 その他の要因
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No相互作用による副作用 発現機序長期,多量など原因サプリメント, 健康食品併用医薬品副作用診断名年 齢性 別原疾患 1 吸収阻害 1 年 亜鉛含有サプリメ ント経腸栄養剤銅欠乏性貧血3 歳女性重症心身障害 2 代謝阻害 ― グレープフルーツ ジュースシクロスポリン医療薬の血中濃度上昇11 歳女性ネフローゼ症候群,腎移植 3 代謝阻害 ― グレープフルーツ ジュースシクロスポリン医療薬の血中濃度上昇29 歳男性腎移植 4 代謝阻害 1 カ月 グレープフルーツ ジュースカルバマゼピン医療薬の血中濃度上昇,複視58 歳男性うつ病,てんかん 5 副作用の重複 多量摂取 カリウム含有健康 食品スピロノラクトン, ACE阻害剤高カリウム血症,心房停止,徐脈性不整脈68 歳男性慢性心不全,心房細動 6 副作用の重複 多量摂取 カルシウム含有サ プリメント利尿薬,一般用医薬品の下剤高カルシウム血症,高リン酸血症31 歳女性尿路結石,尿路感染症,肛門脱 7 副作用の重複 長期摂取 クロロフィル含有 健康食品,スルピ リナ,酵素,玄米焙 煎食品漢方製剤高カリウム血症67 歳女性肺がん このリストでは,サプリメントや健康食品と医薬品を併用していて起こった副作用事例の代表的な症例をまとめた。 表10 サプリメント・健康食品と医薬品の相互作用による副作用事例
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V章参考資料 重 篤転 帰概 要 重篤軽快3 歳女児。重症心身障害。半消化態栄養剤を摂取。皮膚炎に対し,亜鉛欠乏を疑い,硫酸亜鉛を含むサプリメントを投与。1 年後に貧血と無顆粒球症が出現。急性白血病を疑い,精査の結果,セルロプラスミン2.3 mg/dL であり,銅欠乏による造血障害と判断した。亜鉛の投与により銅の吸収が競合阻害されて起こったと考えられる。その他軽快11 歳女児。原病先天性ネフローゼ症候群にて父親をドナーとした生体腎移植を施行した。術後経過は良好で5 年目よりステロイドを中止した。シクロスポリン180 mg(7 mg/kg)の内服にてトラフレベルは130 ng/dL と安定していたが毎回100 mL のグレープフルーツジュースとともに服用したところ146 ng/dL と上昇した。シクロスポリンとグレープフルーツジュースの相互作用によりシクロスポリンの薬効が増加したと考えられる。その他軽快29 歳男性。生体腎移植施行後,シクロスポリン+メチルプレドニン+アザチオプリンによる免疫抑制療法を受けていた。シクロスポリンは2 年半で300 mg(4.7 mg/kg),トラフレベルは80~ 90 ng/mL 台であった。低K 血症にて果物摂取を勧められ,グレープフルーツジュースを毎日飲んだところ,シクロスポリンのトラフレベルは160 ng/mL まで上昇した。ジュースの飲用を中止し,シクロスポリンの減量にて血中濃度は安定した。重篤軽快58 歳男性。再発性の抑うつ状態とてんかんのため,カルバマゼピン(1,000 mg/日),ミアンセリン(60 mg/日),ノルジアセパム(15 mg/日),リチウム(800 mg/日)による治療が5 カ月間続いており,併用による問題もなく,良好な臨床的改善がみられていた。ところが,複視を伴った視覚障害が出現した。このとき,カルバマゼピンの血漿中濃度は11μg/mL であり中毒領域と治療域の境界値であった(治療域は4~10μg/mL)。これ以前のカルバマゼピンの血漿中濃度は治療域であった。血漿中リチウム濃度は0.8 nmol/L であった。カルバマゼピンの投与量は800 mg/日に減量された。その結果,視覚障害は消失し,血漿中濃度は5.1μg/mL に落ち着いた。この過程で,併用薬には変化はなかったが,食生活の変化として,ここ1 カ月グレープフルーツジュースを摂取していたことが明らかとなった。グレープフルーツジュース飲用によるカルバマゼピンの代謝阻害が起こり,血中濃度上昇による複視出現と考えられた。重篤軽快68 歳男性。家族歴不明,既往歴は僧帽弁狭窄症・大動脈弁狭窄症術後,慢性心不全・慢性心房細動。利尿薬(フロセミド,スピロノラクトン),ACE 阻害薬を内服中であった。高度徐脈にて緊急搬送された。心電図にて心房停止,心拍数19 回/分の心室固有調律を認め,一時ペーシングを留置した。K 7.2 mEq/L,Cr 2.1 mg/dL を認め,高K 血症に対する治療を開始した。翌日にはK 4.9 mEq/L に改善し心房細動の出現に伴い徐脈も改善した。K を豊富に含んだ健康食品を多量に摂取していたことが判明。服用薬のスピロノラクトンおよびACE 阻害剤の併用もあり,高K 血症にて高度徐脈を来したと考えられる。その他軽快31 歳女性。尿路結石と尿路感染症にて近医受診した際,血清Ca 11.4 mg/dL,intact—PTH 100 pg/mL と高値を認め,原発性甲状腺機能亢進症を疑われて入院した。しかし,頸部エコーとMIBIシンチでは副甲状腺腫は検出されず,Ca 13.5 mg/dL と上昇時にはintact—PTH 10 pg/mL と低下し,P 6.4 mg/dL と高値であった。FECa は0.0059 と低値。以上より,高Ca 血症,高P 血症と診断した。詳しい問診にて3,000~5,000/日のCa の大量摂取と利尿薬,下剤の内服を確認。Ca 摂取量と利尿薬を適量とし,長年病んでいた脱肛手術後は下剤の濫用も止め,血清Ca 値と尿中Ca 排泄量は正常値となった。その他軽快67 歳女性。家族歴,既往歴不明。肺がん。入院時血清K 5.7 mEq/L,血清Cr 0.6 mg/dL であった。持参薬管理を行ったところ,クロロフィル,スピルリナ,ペースト状酵素,玄米焙煎食品を使用していることが判明。また,漢方製剤(田七,杜中,霊芝)も服用していた。入院後摂取を中止。プロクロルペラジン錠,マグネシウム製剤,ポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリー,ステロイド製剤にて加療。入院8 日目に血清K は減少した。服用健康食品および漢方製剤には, K が豊富に含まれており,この重なりにより,高K 血症が起こったと考えられる。 (つづく)
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No相互作用による副作用 発現機序長期,多量など原因サプリメント, 健康食品併用医薬品副作用診断名年 齢性 別原疾患 8 副作用の重複 長期摂取 甘草含有漢方 (OTC)フロセミド偽アルドステロン症86 歳女性咳 9 副作用の重複 大量摂取 果実濃縮エキス, アボガドオイルファドロゾール膵炎,脂質異常症,高トリグリセライド血症,脂肪肝62 歳女性脂質異常症 10 副作用の重複 ― 鉄を含む健康食品 クロピドグ レル光線過敏症,骨髄性プロトポルフィリン症疑い72 歳男性なし 11 副作用の重複 半年 ギムネマ茶 ゲファルナ ート味覚異常不明不明高血圧 12 免疫機序 2 カ月 クロレラ メフェナム 酸肝不全,ライ症候群9 歳男性上気道感染症,発熱 (表10 つづき)
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V章参考資料 重 篤転 帰概 要 重篤軽快86 歳女性。咳嗽に対し麦門冬湯7.5 g(甘草2 g)を開始。転倒後の腰痛と両下肢のしびれに対し芍薬甘草湯2.5 g(甘草2 g)を追加し,浮腫が出現。これに対しフロセミド10 mg が投与された。浮腫はむしろ増悪し,徐々に筋力低下,歩行困難となり車椅子生活となった。画像所見にて腰部脊柱管狭窄症を指摘され入院。術前検査にて血清K 1.9 mEq/L を認め,徐脈傾向であり受診。入院時現症では下肢に圧痕を伴う浮腫,手指振戦および膝蓋腱・アキレス腱反射の低下を認め,四肢脱力が著明。動脈血ガス分析ではpH7.513,PCO 261.0 Torr,HCO 347.9 Torr と代謝性アルカローシスを呈していた。PRA<0.1 ng/mL/時,PAC 12.1 pg/mL といずれも抑制されており,心電図はT 波の減高とST—T 下降およびU 波を認めた。高度の低K 血症にもかかわらず尿中K 排泄の抑制を認めずPRA およびPAC の低下を認めており,浮腫,脱力と筋力低下を来した4 年以上前より2 剤の漢方薬の服用歴があること,フロセミドの投与で悪化したことより偽アルドステロン症を考えた。漢方薬2 剤とフロセミドを中止し,K 製剤とスピロノラクトンを投与。数日で血清K は正常化し,入院8 日目には歩行可能となり,独歩で退院した。その他一部軽快62 歳女性。既往歴は胃潰瘍,高血圧,不整脈,左乳がん手術。57 歳より脂質異常症を指摘されていたが未治療であった。左乳がん手術後,塩酸ファドロゾール(アフェマ)を服用していたが高脂血症の増悪は認めなかった。1 年後,体調不良を理由に健康食品(乾燥果実濃縮エキス,アボガドオイル食品,蛋白補助食品)摂取。初期は常用量を摂取していたが,最終的に常用量の3倍程度(1,033 kcal/日,脂質30.8 g/日)を摂取していた。1 年後,脂質異常症増悪(血中TG 1,660 mg/dL)を指摘されたが健康食品は継続。さらに1 年後,上腹部痛,背部痛が出現し当科受診。体温38.3°C,白血球11,400/μL,CRP 27.0 mg/dL,血中総アミラーゼ369 U/L,膵アミラーゼ369 U/L,リパーゼ106 U/L,トリプシン900 ng/mL,尿素窒素24.0 mg/dL,LDH 469 U/L と上昇し,Ca は8.5 mg/dL と低下した。血中総Cho 779 mg/dL,TG 5,936 mg/dL と著明に上昇し,乳糜血清を呈していた。リポ蛋白電気泳動では,カイロミクロンによる原点残渣,テーリングを認めた。以上よりV型高脂血症と判定した。腹部US,腹部CT の異常所見も含めて,高脂血症を伴った急性膵炎と診断した。ナファドロゾールにもコレステロール上昇の副作用があり,両者によると思われる。その他軽快72 歳男性。頭部に水疱出現,抗アレルギー薬で定量を行うも,手背,体幹に瘙痒を伴う紅斑が出現した。光線過敏症を疑い,光パッチテストを行ったところ,健康食品とクロピドグレルに陽性となった。同時にプロトポルフィリン値が高く,鉄剤が骨髄性プロトポルフィリン症発症の契機になった可能性もある。その他軽快年齢,性別不明。既往歴は緑内障,高血圧,ペニシリン過敏症,近医よりジルチアゼム内服中。ギムネマ茶を6 杯/日で飲用していた。半年後,他医にてゲファルナートの投与を受けたところ,翌日から,何を食べても苦く感じることに気づく。味覚異常が改善しないため受診。電気味覚計にて右鼓索神経領域スケールアウト。右舌咽神経領域は10 db だが,他の領域は20 db と域値上昇を認めた。右スケールアウト。左で甘味3,塩味2,酸味3,苦味3 であった。ギムネマ茶の飲用を禁止したところ,1 週間で味覚障害(苦み)は改善した。ギムネマ茶の主成分のギムネマ酸は,急性に味蕾の味細胞のレセプターを特異的にブロックする物質として有名であり,ゲファルナートも味覚障害の副作用がある。本症例は,習慣的飲用で味覚異常が起こっていたところにゲファルナートの併用で,発現した可能性がある。重篤軽快9 歳男児。既往歴に熱性けいれんがある。グロスミン9 錠/日を急性肝不全を発症する2 カ月前から常用していた。上気道感染と考えられる38°Cの発熱があり,解熱薬であるメフェナム酸200 mg を1 回のみ内服した。その2 時間後に全身けいれんがみられ,1 分ほど続き,入院し,ジアゼパム坐薬6 mg が投与された。第3 病日(発熱を1 病日とする)にはAST 6,400 IU/L,ALT 5,500 IU/L となり,急性肝炎を疑われ当科へ転院した。意識混濁によるせん妄状態であったが,黄疸や肝萎縮はなかった。しかしHPT は40.4%と低下し,脳波でも徐波・低電位がみられた。以上から急性肝不全と診断した。血漿交換とメチル酸ガベキサート,プロスタグランジンE1 などの投与により第6 病日には意識レベル,肝機能検査値は軽快した。第4 病日の肝生検では,小葉中心の壊死・炎症,細胞核分裂や再生像,肝細胞に小脂肪滴が認められ,臨床的ライ症候群と診断した。クロレラは非特異的にリンパ球幼若化作用があることが明らかとなった。 (つづく)
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No相互作用による副作用 発現機序長期,多量など原因サプリメント, 健康食品併用医薬品副作用診断名年 齢性 別原疾患 13 免疫機序 長期摂取 ウコン 結合型エス トロゲンアレルギー性肝炎,自己免疫性肝炎誘発18 歳女性自己免疫性肝炎,子宮出血 14 免疫機序 長期摂取 クロレラ プロピルチ オウラシル糸球体腎炎,貧血,急性腎不全(腎性),性間質性腎炎39 歳女性バセドウ病 15 薬理作用の 重複2 年エゾウコギドキシフルリジン完全房室ブロック61 歳女性乳がん 16 薬理拮抗 数週間 クロレラ ワルファリ ン医療薬の効果減弱75 歳男性脳梗塞後遺症 17 薬理拮抗 2.5 週間 マルチビタミン(ビ タミンK 含有)ワルファリン医療薬の効果減弱77 歳男性末梢血管障害 18 薬理拮抗 15 日 クマザサ ワルファリ ン医療薬の効果減弱55 歳女性僧帽弁狭窄,心房細動 (表10 つづき)
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V章参考資料 重 篤転 帰概 要 重篤軽快せず18 歳女性。既往歴なし。生来健康だったが,家族の勧めでウコンを1 日通常量の小さじ(詳細不明)1 杯を内服。不正出血のため近医産婦人科にて約3 週間,結合型エストロゲン0.625 mg(プレマリン)/日とノルゲステル0.5 mg/エチニルエストラジオール0.05 mg(プラノバール)/日を内服。その後,6 月からウコンを小さじ3 杯程度,通常量の3 倍に増量して内服。8 月下旬より眼球黄染を指摘されるが,ウコン内服は継続。9 月上旬に不正出血のためプレマリン,プラノバールを1 週間のみ内服した。9 月中旬より全身倦怠感,微熱が出現。近医受診したところ,黄疸,トランスアミナーゼ高値のため入院。入院時,体温36.9°C,意識清明。眼球結膜に黄染確認。検査所見では,総ビリルビン16.5 mg/dL,直接ビリルビン12.2 mg/dL,TTT 17.4 M,ZTT 35.9 K,AST 367 IU/L,ALT 434 IU/L であり,IgG 2,962 mg/dL と高IgG 血症かつ抗核抗体は高力価を示した。HLA—DR はDR9,DR15(2)を示した。腹部CT,内視鏡検査,肝生検より,慢性肝障害と診断。精査したところ,背景として自己免疫性肝炎(AIH)を疑った。ステロイドにて沈静化された。急性肝障害の原因としては,ウコンのアレルギー性肝障害とホルモン剤によるAIHの急性増悪の可能性が考えられた。その他一部軽快39 歳女性。バセドウ病の診断でPTU 内服開始。3 年後頃よりクロレラ常用。2 年後,貧血(Hb 8.2 g/dL 減少)の精査目的で受診。腎機能障害(Cr 1.9 mg/dL 上昇)を認め,入院。ANA 上昇(2,560 倍),RF 上昇(64 IU/mL),AMA 上昇(320 倍以上)(M2 抗体陰性),MPO—ANCA 上 昇(542 EU)と多彩な自己抗体を認め,腎生検では半月体形成性腎炎と間質性腎炎の所見であった。PTU,クロレラを中止しPSL,ワルファリンで治療開始。ANA 低下(20 倍)したが,MPO— ANCA 高値(389 EU)が続いている。 重篤軽快61 歳女性。乳がんにて左乳房部分摘出術施行。術後の化学療法としてドキシフルリジン内服していた。汎血球減少症のため中止。その後,自己判断でエゾウコギの抽出物を服用。血球数が回復したため,ドキシフルリジンが再開された。2 カ月して動悸,胸部苦を感じたため受診。完全房室ブロックと診断された。エゾウコギ,ドキシフルリジンのいずれにも,陰性の変力作用があり,両者の併用で起こった可能性がある。その他軽快75 歳男性。既往歴は心房細動,肥大型心筋症。1986 年11 月に右中大脳動脈領域の脳塞栓症が発症し,ワルファリン治療を受けていた。ワルファリンのコントロール後の再発はなく,月1 回の外来診察を受けていた。ワルファリン3 mg/日でトロンボテスト(TT)値は10~20%と安定していた。しかし,急にTT 値が58%と急上昇した。食餌内容の問診では,数週間前よりクロレラ(6 g/日)を飲んでいるとのことで,ワルファリンを3.5~4 mg/日に増量することでTT 値20%前後で安定した。その後,クロレラを摂取するとTT 値が上昇したため,ワルファリン2.5 mg/日でクロレラを中止したところ,TT 値は7 月9 日には15%と治療域内に入った。ワルファリンの内服し忘れやビタミンK 製剤,納豆の摂取はなく,フェニトイン(225 mg/日)の投与を受けていたが用量の変更はなかったため,クロレラのワルファリン拮抗作用であると考えた。その他軽快77 歳男性。9 年間ワルファリン治療を受けていた。重篤な末梢血管疾患のため動脈—両大腿バイパス術が施行された。35~37.5 mg/週のワルファリン投与により安定したINR 値(平均2.81; 2.34~3.30)が維持された。その後,ビタミンK1 25μg 含有マルチビタミン剤の連日摂取により,2.5 週間以内にINR 値は1.7 に低下した。マルチビタミン剤の摂取中止後,37.5 mg/週のワルファリン投与により安定したINR 値を維持できた。しかし,その後無断で再びマルチビタミン剤の連日摂取を始めたため,4 週間後に動脈—両大腿バイパスグラフトの急性塞栓を起こし(INR値は1.1),緊急手術が行われた。その後,マルチビタミン剤を中止し,37.5 mg/週のワルファリン治療を再開したところ,INR 値は安定した。その他軽快55 歳女性。既往歴は混合性結合組織病。僧帽弁狭窄症と診断され,手術を受けた。その後,心房細動となり,ワルファリン4 mg とジゴキシン0.125 mg の投与を開始し,TT 値は25%前後で安定していた。感冒に罹患し感冒薬を使用し,また食事摂取も不十分となった。その後,突然右下肢の冷感,疼痛を訴えて救急受診した。血栓除去術を行い,術後管理でワルファリン3 mg,ブコローム300 mg の投与によりTT は速やかに10~25%と改善した。その後,ワルファリンの服用はきちんと続けていたが,発症15 日前から食欲増進の目的でクマザサの抽出成分を含有する「ササロン」と海藻含有健康食品「アルカロン」を毎日4 g ずつ摂取していたことが判明した。ササロンには大量のビタミンK(15.6μg/g),アルカロンにもその1/4 量が含まれている。 (つづく)
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No相互作用による副作用 発現機序長期,多量など原因サプリメント, 健康食品併用医薬品副作用診断名年 齢性 別原疾患 19 薬理拮抗 1 カ月 青汁 ワルファリ ン医療薬の効果減弱61 歳男性心房細動 20 薬理作用増強 長期摂取 栄養剤常用(ビタミ ンD 含有)カルシウム高カルシウム血症睾丸萎縮陰茎萎縮,臭覚異常61 歳男性性機能不全 1 )松田信作,青木 剛,大塚友美.経管栄養管理中に亜鉛サプリメントの長期摂取が誘因となり,銅欠乏性貧血をきたした1 2 ) 波多野智己,長谷川昭,本山 治.ビタミンC ドロップ等にてCYA トラフレベルが影響された腎移植2 症例.移植1996; 31: 468 3 )犬塚 周,錦戸雅春,古賀成彦,他.飲食物にてシクロスポリン血中濃度が変動した腎移植症例.臨床と研究1999; 76: 792 4 )澤田康文,大谷壽一,山田安彦,他.臨床医のための薬の相互作用とそのマネージメント.治療2002; 84: 2061—3 5 )平井雅之,井川 修,足立正光,他.健康食品によるK の多量摂取が高度の徐脈を誘発した1 例.Circ J(suppl 2) 2008; 6 )加藤佳幸,佐藤幹二,佐田 晶,他.大量のCa サプリメント(リン酸Ca)摂取により高Ca 血症を生じ,原発性副甲状腺7 )岩田佳之,渡邉美佳,田中方士.健康食品により高カリウム血症が疑われた1 症例.日本緩和医療学会総会プログラム・抄8 )鳥本桂一,岡田洋右,西田啓子,他.高度の低カリウム血症により歩行困難となった高齢者の1 例.内科2011; 107: 743—5 9 )中江康之,井本正巳,濱島英司,他.健康食品過剰摂取による高脂血症膵炎の1 例.膵臓2004; 19: 63—7 10) 西田絵美,金子夏美,森田明理.鉄剤を含む健康食品摂取を契機に骨髄性プロトポルフィリン症が疑われた一例.日本光医11)石丸 正,高柳春実,三輪高喜,他.ギムネマ茶習慣的飲用者に見られた味覚異常の1 例.耳鼻咽喉科臨床(補冊)1996; 12)藤澤知雄,堀内勝行,乾あやの,他.クロレラによるリンパ球刺激試験の反応―クロレラが起因薬剤として疑われた急性肝13)銭谷 平,髙木 優,荒木 崇,他.ウコンの内服を契機に発見された若年女性肝硬変の1 症例.肝臓2006; 47: 310—5 14) 浜井啓子,小松田啓子,大谷 浩.PTU 内服中に発症したMPO—ANCA 陽性半月体形成性腎炎の一例.日本腎臓会誌1997; 39: 644 15)木島 基,本田 肇,早川拓治,他.ドキシフルリジンと健康食品リンパザイム® の併用で完全房室ブロックをきたした1 16)大川慎吾,米田行宏,大角幸雄,他.ワルファリン療法と健康食品クロレラ.臨床神経学(第59 回日本神経学会近畿地方17)藤野知美,木苗直秀,山田静雄.健康食品・サプリメントと医薬品との相互作用(2)―脂溶性ビタミンとの相互作用. 18)松井健一,五艘有紀子,中川圭子,他.症例:健康食品摂取後にwarfarin の作用が弱まり大腿動脈塞栓症を発症した僧帽弁狭19)中東真紀,石倉紀男.「大麦若葉」と「ワーファリン」の併用により高度の生化学異常を来たした1 例.名古屋経済大学自然20)中園 誠,工藤幹彦.ビタミンD 中毒により高Ca 血症を呈したと考えられるKallmann 症候群の1 例.日本内分泌会誌(第 (表10 つづき)
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V章参考資料 重 篤転 帰概 要 その他軽快61 歳男性。心房細動のため,脳梗塞予防の目的でワルファリン2.5 mg/日を服用し,TT 値40%前後にコントロールされていた。また,心房細動の薬のジゴキシン0.25 mg/日,安定剤のブロマゼパム5 mg×3 回/日,トフィソパム50 mg×3 回/日を服用中であった。ビタミン補充目的でサプリメント「大麦若葉」の服用を開始。定期検査時,TT 値150%以上と著明な上昇とAST 52 IU/L,LDH 258 IU/L,CPK 1,042 IU/L と筋肉由来酵素の上昇を認めた。心エコーなどで急性心筋梗塞を除外,大麦若葉の副作用と考え服用を中止,1 週間後の検査ではTT 値35%と復帰し,酵素も正常化した。患者は大麦若葉にビタミンK が含まれていると全く知らず服用していた。大麦若葉粉末3 g にはビタミンK が99.6μg 含まれている。その他軽快61 歳男性。若いときから栄養剤を常用。この5 年間でビタミンD2服用量は75 万単位に達する。最近はCa 製剤も服用。悪心,胃部不快,体重減少を訴え受診し,高Ca 血症を認めたため入院。類宦官様の体形で,皮膚の乾燥,粗ぞうあり。腋毛,恥毛を欠き,睾丸・陰茎は萎縮。嗅覚試験で軽度障害あり。血中Ca 値12.8 mg/dL,P 値2.5 mg/dL,尿中Ca 値 0.3 g/日で,intact—PTH値10 pg/mL 以下,1.25(OH2)—VD 値74 pg/mL であった。血中ACE は軽度増加。血中テストステロン,LH,FSH の低下と,LH—RH の連続負荷でLH,FSH の反応を認めた。血中Ca 値は入院後約2 カ月高値を持続。プレドニゾロン30 mg/日の投与によりCa 値は速やかに低下。高Ca 血症の原因として,ビタミンD2中毒が考えられた。hypogonadism 患者が栄養剤を常用することはあり得る。例.ヒューマンニュートリション2011; 3: 9—13 72: 955機能亢進症が疑われた一症例.日本内分泌会誌2004; 80: 160録集2012;17:517 学・光生物学会2010; 32: 47 89: 79不全の1 例の経験から.医学のあゆみ1997; 183: 295—6 例.心臓2011; 43: 1096—101会)1995; 35: 806—7 Functional Food 2008; 2: 203—8窄症の1 例.心臓(第178 回日本内科学会北陸地方会) 2001; 33: 525—8科学研究会会誌2006; 40: 1—6 64 回日本内分泌学会秋季学術大会) 1991; 67: 1015
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表11 サプリメント・健康食品の副作用ががん治療に影響を及ぼしたと考えられる事例No機 序がん治療への 影響原因サプリメント, 健康食品副作用診断名年 齢性 別原疾患重 篤 1 薬理作用(エス トロゲン作用)がんの再発に関与した可能性ローヤルゼリー,プロポリスがん再発60 歳女性子宮体がんその他 2 アレルギー性 肝障害惹起がん治療遅延→死亡アガリクス薬剤性肝炎29 歳女性乳がん死亡 3 アレルギー性 肝障害惹起がん治療遅延アガリクス薬剤性肝炎52 歳男性胃がんその他 4 アレルギー性 肺障害惹起がん治療遅延メシマコブ間質性肺炎70 歳男性胃がんその他 5 アレルギー性 肺障害惹起不明アガリクス間質性肺炎68 歳男性肝がんその他 1 )田部 宏,清川貴子,高倉 聡,他.骨盤子宮内膜症より発生した明細胞腺癌の1 例.日本産科婦人科学会東京地方部会会2 )谷口正益,水野聡朗,北野滋久,他.代替治療が原因と考えられる肝障害のため化学療法導入が困難となった再発乳癌の1 3 )春日照彦,生方英幸,本橋 行,他.健康食品アガリクスによると思われる肝機能障害を呈した胃癌術後患者の1 例.日本4 )高橋 剛,堤 謙二,宇田川晴司,他.切除不能の進行胃癌に対する化学療法中の健康食品による間質性肺炎が疑われた1 5 )本多宣裕,沖本二郎,桜井 恵,他.アガリクスによる薬剤性肺炎の1 例.日本胸部臨床2003; 62: 1027—31このリストでは,サプリメントや健康食品の副作用ががん治療に影響をおよぼしたと考えられる代表的な症例をまとめた。
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V章参考資料 転 帰概 要 軽快60 歳女性。子宮体がんにて広汎性子宮全摘出術,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を施行,術後病理診断では類内膜腺がんFIGOIa 期G1 であったため,外来にてメドロキシプロゲステロンアセテート200 mg/日,連日5 年間投与のうえ,経過観察をしていた。術後5 年目の定期検査の際に膣断端右側の腫瘤を認めたため精査となった。精査の結果,クラスV類内膜腺がんであったため子宮体がんの再発を疑い手術となる。術後経過は順調であり補助化学療法として,シスプラチン80 mg/回,イリノテカン塩酸塩80 mg×3/回の併用化学療法を開始した。現在,化学療法4 クールを終了したところで再発所見は認めず, CA125 も8 U/mL と正常範囲内である。本症例はエストロゲン投与は行っていないが,再手術後のエストロゲン値が15 と軽度上昇していた。問診にて健康食品として市販されているロイヤルゼリーとプロポリスを初回術後より飲用していたたことが判明した。その後,中止としたところ1 カ月後にはエストロゲン値は10 以下となった。軽快せず29 歳女性。近医で右乳がんにて非定型乳房切除術を施行。予後因子はステージIIIB(T4N2M0),scirrhous carcinoma,ER(-),PgR(-),HER2 1+。当科へ紹介入院し,4 月17 日よりアドリアマイシン/エンドキサン併用療法(ADM 60 mg/m2,CPA 600 mg/m2)4 コース実施後,局所放射線治療を50 Gy 実施。その後,血液検査で肝障害(AST158,ALT154)を認め精査入院。画像上,肺,皮下に転移を認めたが肝には認めなかった。肝障害の原因として1 月中旬から飲み始めた青汁,アガリクスが疑われた。肝障害が改善しない2 月中旬骨髄浸潤を認めたため,Weekly パクリタキセル40 mg/m2を開始したが奏効せず,脳転移,がん性髄膜炎を併発し死亡された。代替療法が原因と考えられる肝障害のため,化学療法導入が困難となり急速に病状が進行した1 例である。軽快52 歳男性。嗜好は毎日ビール1 L 飲酒。胃がんの診断にて当科で幽門側胃切除術施行。胃体中部後壁の2C 型早期胃がん,T1,N0,P0,H0,M0,Stage 1,D2 郭清,根治度A,深部度M であった。HBsAg (-),HCVAb(-)であった。退院後,外来にて経過観察中,AST 341,ALT 554 となった。3 週間前よ りアガリスクを服用していたとのことで中止させたところAST 78,ALT 91 まで改善した。しかし再びAST 290,ALT 408 まで悪化した。2 週間前に再び1 週間アガリスクを服用したとのことであった。他検査では異常なく,アガリスクによる肝機能障害であると考え,厳重に服用中止を指示した。軽快70 歳男性。既往歴はなし。喫煙歴は63 歳まで20 本/日。腹膜転移,肺転移,4 型進行胃がんと診断された。S—1(100 mg/日,2 週投薬1 週休薬を1 クールとする)を投与開始し,S—1 投与開始1 週間後よりメシマコブの投与開始。3 クール施行後12 月9 日CT にて腫瘍はPR であったが,右肺上葉に間質性陰影が出現。S—1 を中止し,プレドニゾロン(PSL)30 mg/日開始,間質性陰影は速やかに消失した。S—1 による間質性肺炎(IP)と考えた。タキソテール80 mg/body 投与。このときPSL 10 mg 内服中。1 週間後CT にて左肺優位の両下肺野に間質性陰影が出現。発熱,低酸素血症を認め,PSL 30 mg に増量にて速やかに改善。ここでメシマコブによる影響を考え,服用中止。その後外来にてCPT—11 を3 回投与するも腫瘍はNC。メシマコブ併用によるIP を疑い,PSL 内服下S—1 単独投与を開始したところCT 上間質性陰影の出現はない。軽快68 歳男性。既往歴は慢性C 型肝炎(60 歳),肝臓がん(68 歳),慢性甲状腺炎(60 歳)。喫煙歴は40 本/日×50 年。肝臓がんの治療中,家人に勧められたアガリクスを内服したところ,内服約2 週間後呼吸困難が出現した。近医の胸部単純X線写真で肺炎と診断され抗菌薬を投与されたが改善なく当科入院となった。胸部聴診で両側にfine crackles を聴取,胸部単純X 線で浸潤影,胸部CT ですりガラス影,小葉内網状影を認める。ESR 41 mm/hr,CRP 1.44 mg/dL と軽度の炎症所見,AST 64 U/L,LDH 271 U/L,HLA—DR (+),CD3(+)18.6%,KL—6 3,040 U/L とそれぞれ高値を示した。肺機能検査では拘束性喚起障害は認 められなかったが,%DLco は40.2%と低値を示した。以上の所見と,TBLB にて肺胞上皮の腫大,肺胞壁の肥厚より薬剤性肺炎と診断した。DLST の結果,アガリクスが409%と陽性を示し,原因薬剤はアガリクスと考えられた。アガリクスを中止しても改善は認められなかったがメチルプレドニゾロンによるパルス療法を行ったところ速やかに軽快した。 誌(第302 回日本産科婦人科学会東京地方部会) 1997; 46: 308—11例.日本癌治療学会誌(第41 回日本癌治療学会総会) 2003; 38: 683臨床外科医学会誌(第788 回外科集談会) 2003; 64: 1802例.日本臨床外科医学会誌(第67 回日本臨床外科医学会総会) 2005; 66(suppl): 735
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3 ハーブ,サプリメント,健康食品 抗がん剤とハーブやサプリメントの相互作用については,実際に健康被害の報告はないが,ハーブやサプリメント,健康食品ががんの治療中に健康被害を生じた報告はある(表11)。例えば,間質性肺炎を生じたメシマコブの例が挙がっているが,分子標的治療薬で間質性肺炎を高頻度に起こすものがあり,そのような薬剤とメシマコブを併用した場合に,呼吸器に対する有害作用が増強する可能性は高まるであろう。そういった意味では,有害作用の報告があるハーブやサプリメント,健康食品と抗がん剤の使用は慎重にならざるを得ないと考えられる。 1 Web サイト 1国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報各健康食品成分の有効性・安全性情報とともに,医薬品との相互作用情報の報告の要 約が閲覧可能。https://hfnet.nih.go.jp/ 2一般社団法人愛知県薬剤師会:医薬品との併用に注意のいる健康食品健康食品素材と主な医薬品の相互作用の一覧などが閲覧可能。 http://www.apha.jp/medicine_room/entry—3755.html 2 書 籍 1一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター:ナチュラルメディシン・データベース―健康食品・サプリメント(成分)のすべて(同文書院,2015)各成分の概要,効き目,安全性とともに,医薬品との相互作用について解説あり。2澤田康文:薬と食の相互作用,上・下巻(医薬ジャーナル社,2005)各医薬品と食事との関連で研究報告のあるものを中心に紹介している。 (大津史子,平井みどり) 【文 献】 1) SantucciR,LevêqueD,HerbrechtR.Colabeverageanddelayedeliminationofmethotrexate.BrJ ClinPharmacol2010;70:762-4 4 参考となる情報
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V章参考資料 昨今,がん医療におけるコミュニケーション・スキルの重要性は各所で強調されているが,補完代替療法に関する医療者・患者間のコミュニケーションにもまた検討すべき課題が多い。2001 年の調査によれば,日本のがん患者で何らかの補完代替療法を利用している割合は45%に上る。また,利用を主治医に知らせていないものが使用者の過半数であり1),多くの医師が見積もっているよりも高率である。医師に申告しない理由としては,担当医が尋ねなかったため,とする回答が多く,これは海外の調査でも同様の傾向がみられる2)。2000 年代の米国のがん専門施設での調査によると,新規抗がん剤の第一相試験に参加した進行がん患者の67~88%が何らかの補完代替療法を利用していたということである。正確な推定は難しいが,外国と比較しても健康食品への関心・支出が高いといわれるわが国のがん患者も,少なくとも同程度の割合で補完代替療法を利用していることが予想される。近年の,がん患者の補完代替療法の利用に関する種々の先行研究の要旨として,その背景には次のような予測因子が挙げられている。例えば,文化的背景,人種などの社会的要因を筆頭に,性別,高学歴,化学療法歴,健康状態,飲酒,喫煙などの疾病関連行動,低い社会的支援など,個人の特性や性格,行動に関する要因である。また,精神的苦痛(不安,抑うつ),経過へのコントロール感,高いファイティング・スピリットなどの心理的要因も補完代替療法の利用を促す大きな要因と考えられている。さらに,がんの発症をきっかけに補完代替療法の利用を始める患者のなかには,心身の癒しや免疫系の活性化など,その効果に対する期待も,受療理由として多く聞かれた。さまざまな研究が利用の理由を挙げ,その内容は多種多様であるが,いずれも補完代替療法の利用を説明するのに十分決定的なものではない。以上のことから,本領域における参考的考察として,1補完代替療法を利用することは,複雑多様な要因が推測されるが,決定的要因は不明である。2がん医療における補完代替療法の効果,安全性に関する科学的根拠の創出が急がれる。3補完代替療法に関する適切な情報基盤の整備,充実の必要性が挙げられる。4補完代替療法の利用について,医療者と患者,双方向のオープンなコミュニケーションの向上が期待される。 米国の医療人類学者アーサー・クラインマンによる多元的医療システムの図(辻内による改訳3)を示す(図9,10)。ここでは各人に固有の社会・経済・文化的背景があることを前提に,病に対する対処行動としての「医療」が3 つのセクターに分類されている。本クリニカル・エビデンスで扱う補完代替療法は,このモデルでいう「民俗セクター」と「民間セクター」の一部を含む概念といえる。 1 補完代替療法利用の現状と行動科学的考察 2 補完代替療法と多元的医療システムの概念 2 患者・医療者間の コミュニケーションを考える
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日本の保険診療を行う施設に属する医療者はほぼ「専門職セクター」に属することになるが,こうした医療者の多くにとって,彼らが提供する医療,すなわち「近代西洋医学を基礎とし,公的医療保険制度でも認められている医療」の優位性は,解釈モデル(病気の個別的なケースについて,それぞれの仕方で説明する際に使う諸観念)として強固なものである。しかし,がん患者自身にとっての病の解釈モデルは必ずしもそれと同一ではなく,あいまいで多元的・多義的・融通的であるとされる。すなわち,医療者にとって自明のものである近代西洋医学の優位性は患者にとってはより不安定であり,病院で「専門職セクター」の治療を受けながら,部分的に「民俗セクター」「民間セクター」の治療を併用したり,行き来したりすることは,患者にとっては,医療者が考えるより自然な行動である。他のセクターの治療法を受けている・受けていたことを医療者に開示することを患者がためらうのは,疾病や医療に関する解釈モデルの隔たりに,暗に気づいているから,という見方もできるかもしれない。 1 補完代替療法を利用する患者の心理 それでは,医療機関で提供される医療と補完代替療法が併用されたとき,具体的に実臨床上の問題となり得るのはどのような状況であろうか。特に,生物学的な活性をもつような補完代替療法のモダリティ(健康食品,ハーブ,サプリメントなど)では,抗がん剤や支持療法薬と並行して摂取した場合に未知の相互作用が生じる懸念がある。その結果として,意図された治療の効果を減弱したり,逆に副作用を増強したりというリスクが考えられる。抗がん剤を含む薬剤との明らかな相互作用が知られているものとして 3 コミュニケーションの実際 専門職セクターprofessional sector 制度としての医療近代西洋医療(病院・診療所など) 民間セクターpopular sector自己治療家族・知人のアドバイス(健康食品・サプリメント・民間薬・市販工業医薬品など) 社会・経済・文化・環境的背景 民俗セクターfolk sector民族医療・伝統医療宗教的医療(漢方・鍼灸・気功按摩・マッサージなど) 図 9 多元的医療システム 〔辻内琢也,他.心身医学2005;45:53—623)より引用〕民俗セクターA’ A C D B B’ 併診 専門職セクター 民間セクター 図 10 多元的医療システムにおける受療行動パ ターン〔辻内琢也,他.心身医学2005;45:53—623)より引用〕
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V章参考資料 は,セント・ジョーンズ・ワート,カテキン,イチョウ葉エキスなどがあるが,それ以外の物質についても,抗がん剤や支持療法薬と併用した場合の安全が確立されているわけではなく,データがないため何ともいえないというのが現状である。また,「がん治療の副作用軽減のため」として補完代替療法を使用している患者も多い。医療者への遠慮などから,患者がオープンに副作用について医療者に訴え,対策を話し合うことができていないために,自己判断で補完代替療法を用いている可能性も考慮される。オープンに話し合うことができれば,より状況にあった対処を提案し,危険を避けることができる場合も考え得るため,医療者の側から積極的に副作用について状況を確認すべきである。また,進行がんの患者は「1%でも治癒の見込みがあるなら毒性の強い治療を受け入れるが,ある程度確実な延命効果のためであれば同じ治療を受けない傾向がある」という質的調査結果もあるように4,5),心の一方では治癒の可能性は低いと理解し現実をみつめ,医療機関や医療者に対する感謝や信頼ももちながらも,また一方では「末期がんで標準治療から見放された私がこれで治癒した」といった誇張された風評や広告に,「もしかしたら......」「ダメでもともと......」と心を動かされやすい,という不安定な心理状況がある。こうした心情に理解を示しその波を受けとめたうえで,安易な自己責任論ではなく,患者にとってできる限りよい選択ができるようにサポートする姿勢が医療者には望まれる。 2 医療者の介入 昨今,患者の利用する補完代替療法(多くは健康食品)の種類は多様化し,複数の成分が組み合わされるなどしており,多くの場合ただ商品名を聞いただけでは含有成分が不明である。また,含有成分が判明している場合でも,耳慣れない成分であれば「安全性について情報不足であり,すぐにはコメントできない」ことを率直に患者に伝え,できれば成分を確認し,信頼できるリソース(PubMed などで検索可能で,批判的に吟味することが可能な科学的論文や,厚生労働省「健康食品」のホームページなど)を参考に調べたうえで,患者に情報を還元できれば理想的である。時間の制約などでそこまでの対応ができないことも多いが,そういった場合でも,「相互作用や潜在的な危険性が不明」である健康食品を用いることそのものにリスクがあることは,最低限伝えておきたい。生物学的な活性をもつ健康食品と食品の境界はときに曖昧であり,嗜好品・ぜいたく品の範疇とも重なるので,その使用について医療者がどこまで介入すべきかの判断は難しいところである。しかし,明らかな虚偽・誇大広告など悪質と判断されるものや,経済的に患者に不相応な負荷をかけていると見受けられるものなどについては,少なくともその利益・不利益を整理したうえで,患者に冷静な判断を促す努力をしたいものである。患者が医療者に対し補完代替療法の使用を明らかにしないこと(non—disclosure)の直接の理由としては,前述したように「尋ねられなかったから」とする回答が多いが,掘り下げれば「医師が反対するのではないか」「言ってもしょうがない」「今の治療と折り合わないのではないか」など,複雑な心理的背景があることも,いくつかの質的研究において指摘されている。その一方で,患者は補完代替療法についてもっと医師と話したいと考えている,とい
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う調査結果がある。ハーブやサプリメントについての米国の腫瘍内科医を対象とした調査では,「ハーブやサプリメントの利用について話し合いをもつことが,医師患者関係にプラスの影響を与える」と考える医師が40%で,「マイナスの影響を与える」と考える医師(3%)よりも明らかに多かった6)。多くの医療者も,補完代替療法についてオープンに話し合うことの有用性を認めているものと思われる。 3 患者の特性(文化,性別,年齢) また,日本の臨床現場においては,背景として医療におけるコミュニケ―ションそのものの文化的な特徴があることも示唆されている。例えば,悪い知らせを伝えるコミュニケーションにおいて,海外の患者と比較して日本の患者の意向は,1因子構造が複雑で,2「質問を促してそれに回答してほしい」傾向がある,という特徴が抽出され,さらに情緒的サポートを重視する傾向がみられるという7)。補完代替療法に関するコミュニケーションにおいても,自分から使用について口火を切ることのハードルが高いと感じており,医療者の側から質問を促されることを暗に望んでいる患者は多いと考えられる。また,早期乳がん患者を対象とした調査では,「心理的負荷が大きく」「(全般的な) QOL が低い」患者ほど補完代替療法の利用が有意に多い8)と報告されている。すべての患者において,補完代替療法について積極的に話し合いの場をもとうとすることは,潜在的に支援を必要としている患者をスクリーニングし,必要なケアを提供するきっかけになり得るという意味で,有用である。現代の患者は,がんの診断・告知という大きな心理的負荷を受けたあとも,引き続き病状について,治療と予想されるメリット・デメリットについて,といった医療者からの情報,また患者本人または家族や友人,患者仲間などによりインターネットや口コミで収集された情報など,次々と膨大な量の情報にさらされ続けている。前述のように若年,高学歴といった情報リテラシーが高いと想像される特徴をもつ患者ほど,補完代替療法の利用頻度が高いといわれる1)。 4 患者自身による意思決定 こうした補完代替療法の利用が,患者自ら主体的に選んだ療法を利用することで,症状の自己コントロール感が高まるなど,全体としてプラスの影響を患者にもたらしているのか,それとも病名や病状に対する焦り,不安や混乱の結果として補完代替療法にすがることは心理的な不安定さの反映であり,疑念を抱えたまま複数の治療を受けることのストレスなど,デメリットのほうが大きいのか,おそらくどちらの側面も事実であり,先行研究結果から一概に語ることは難しい。がん患者とその家族は,特に告知前後や病状進行といった「悪い知らせ」のフェイズにおいて動揺しており,心理的に不安定であることも多い9)。日本のがん患者の調査では,病期にかかわらず約半数に適応障害やうつ病といった精神疾患の診断基準にあてはまる状態が認められている10)。だからこそ,がん患者が補完代替療法の話題を持ち出したときには積極的に耳を傾け,患者にとってそれ(補完代替療法)が非常に重要な問題であることをまず認め,共感を示すことに大きな意味がある。そのうえで,医療者としては専門的立場から,押しつけることなく中立的に,しかし率直に意見を述べるべきである。責任の所在も対象もあいまいな多方面からの情報により,自らの病状や治療内容について偏った見解や誤解をもっているために,最初から標準治療に消極的な患者もいる。補完代替療法を,また標準治療をどのように捉えているかといった話を中立的に聞
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V章参考資料 きとるなかで,そうした誤解が解けていくこともよく経験する。ときに,ある治療法で高率に治癒を望める悪性腫瘍や,または根治不能ながんであっても効果的な標準治療により長期の生存・QOL の改善を期待できる場合においても,がん治療の手段としての補完代替療法を優先し,保険適用の標準治療を受けないという選択をする患者も少ないながらいる。治療について最終的な決定権をもち,治癒・延命の機会の喪失や相互作用,その他の起こり得るリスクも含めて結果を引き受けるのは最終的には患者本人である。しかし,そうした重要な意思決定が,十分な説明を受け熟慮したうえでの決断であること,加えて,患者の決定とそこに至った経緯について家族も納得していることは大事である。患者が極端な選択を急ごうとしているように思われるときは,家族(キーパーソン)同席のうえで,考える時間を差しはさみながら複数回の話し合いを行うことを考慮したい。また,医療者側も多職種カンファランスの場で症例を共有し意見を出し合うなどしながら,風通しのよい医療者患者関係のなかで,患者が納得して治療方針の決定に至ることができるよう,努力する必要がある。 (舛本真理子) 【文 献】1) Hyodo I, Amano N, Eguchi K, et al. Nationwide survey on complementary and alternative medicine in cancer patients in Japan. J Clin Oncol 2005; 23: 2645-54 2) Davis EL, Oh B, Butow PN, et al. Cancer patient disclosure and patient-doctor communication of complementary and alternative medicine use: a systematic review. Oncologist 2012; 17: 1475-81 3) 辻内琢也,鈴木勝己,辻内優子,他.民俗セクター医療を利用する患者の社会文化的背景: 医療人類学的視点による質的研究.心身医学2005; 45: 53-62 4) Slevin ML, Stubbs L, Plant HJ, et al. Attitudes to chemotherapy: comparing views of patients with cancer with those of doctors, nurses, and general public. BMJ 1990; 300: 1458-60 5) McQuellon RP, Muss HB, Hoffman SL, et al. Patient preferences for treatment of metastatic breast cancer: a study of women with early-stage breast cancer. J Clin Oncol 1995; 13: 858-68 6) Lee RT, Barbo A, Lopez G, et al. National survey of US oncologists’ knowledge, attitudes, and practice patterns regarding herb and supplement use by patients with cancer. J Clin Oncol 2014; 32: 4095-101 7) 内富庸介,藤森麻衣子 編.がん医療におけるコミュニケーション・スキル―悪い知らせをどう伝えるか,医学書院,2007 8) Burstein HJ, Gelber S, Guadagnoli E, et al. Use of alternative medicine by women with early-stage breast cancer. N Engl J Med 1999; 340: 1733-9 9) Mehnert A, Brähler E, Faller H, et al. Four-week prevalence of mental disorders in patients with cancer across major tumor entities. J Clin Oncol 2014; 32: 3540-6 10) 大谷恭平,内富庸介.がん患者の心理と心のケア.日本耳鼻咽喉科学会会報2010; 113: 45-52
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補完代替療法に関して,さらに詳細な情報を入手したい場合は,以下のサイトを参考にしていただきたい。●国立がん研究センターがん対策情報センター:がん情報サービス・補完代替療法を考える(http://ganjoho.jp/hikkei/chapter3—1/03—01—11.html)・代替療法(健康食品やサプリメント)(http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/ alternative_medicine.html) ●厚生労働省がん研究開発費:がんの代替医療の科学的検証に関する研究班(http://www.shikoku—cc.go.jp/hospital/guide/useful/newest/cam/index.html) ●国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(https://hfnet.nih.go.jp/) ●厚生労働省:「統合医療」情報発信サイト(http://www.ejim.ncgg.go.jp/) 健康食品や健康器具などの安全性に関する情報は,関連省庁,都道府県,保健所などが監視活動を行っており,健康被害等の事例が生じた場合にはインターネット上にて情報が発信されている。そのため,患者から補完代替療法の利用に関して相談を受けた際には,以下のサイトを参考に安全性についての情報収集にも努めていただきたい。●国民生活センター(http://www.kokusen.go.jp/) ●食品安全委員会(http://www.fsc.go.jp/) ● 消費者庁:安全・安心のために注意していただきたいこと(http://www.caa.go.jp/ action/need.html) ● 厚生労働省:健康被害情報・無承認無許可医薬品情報(http://www.mhlw.go.jp/ kinkyu/diet/musyounin.html) ● 東京都福祉保健局:注意が必要な健康食品(http://www.fukushihoken.metro.tokyo. jp/anzen/supply/news.html) ● 国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報:安全情報・被害関連情報(https://hfnet.nih.go.jp/contents/index1.html) 補完代替療法は患者個人が自己判断で行っており,ときにトラブルに巻き込まれているケースもある。そのような事態を避けるためにも,悪質商法やインターネット上のトラブルなどの事例についても患者への情報提供に努めていただきたい。また,もしトラブルに巻き込まれ,被害にあっている場合の相談窓口についても以下のサイトを参考にしていただきたい。 1 補完代替療法全般に関する情報 2 健康被害等に関する情報 3 消費者トラブルに関する情報 3 補完代替療法に関する 公的機関による情報資料
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V章参考資料 ●消費者庁:被害にあったら(http://www.caa.go.jp/globalnavi/damage_a.html) ●消費者庁:被害にあわないために(http://www.caa.go.jp/globalnavi/damage_b.html) ● 消費者庁:悪質商法などから身を守るために(http://www.caa.go.jp/consumers/pro- tect/) (大野 智)
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付 録 ●エビデンス掲載ページ(主ながん種) がん種療 法ページ大腸がん健康食品22 アロマテラピー・マッサージ37,38,39,41運動療法50,52,57,60,62,65,67,68栄養療法,経腸栄養剤120免疫療法134漢方薬137 乳がん健康食品24 マッサージ29,30,31,32,33運動療法46,47,48,49,51,52,53,57,58,60,61,64,66,67,68,69ホメオパシー74,75リラクセーション86,89音楽療法96,97鍼灸治療106,107ヨガ114,115,116,117免疫療法134漢方薬137 肺がん運動療法49,52,54,60,62,65,66 リラクセーション87鍼灸治療105,108栄養療法,経腸栄養剤120免疫療法134 胃がん栄養療法,経腸栄養剤120 免疫療法134漢方薬137 肝がん漢方薬137造血器腫瘍運動療法47,48,49,51,52,54,57,58,60,61,64,65前立腺がん健康食品24,25 運動療法47,48,50,52,55,57,60,62,64,67鍼灸治療107免疫療法134 小児がん運動療法51,53,55,62,63,67 音楽療法95,96,97
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◆和文◆あ亜鉛 25, 124悪液質 120, 125, 127アグラベーション 72アセチル—L—カルニチン 21アニマルセラピー 77アバンド 130アルギニン 131アロマテラピー 34アロマテラピー・マッサージ 34 いイソフラボン 25インナーパワー 124 うウエイト・リフティング 53, 66ウォーキング 47, 48, 51, 52, 57, 58, 60, 61, 67運動療法 43 えエイコサペンタエン酸 127, 128栄養療法 120エネルギー代謝異常 120エラグ酸 23, 25エンシュア 22 お嘔吐 89, 106, 116悪心 89, 106, 116オリゴ糖 122音楽療法 92音楽療法士 92 か科学的根拠に基づく医療 3活性化自己リンパ球移入療法 133合併症予防 124カモミール 40, 41 カルシウム 21カルチトリオール 25カルニチン 124乾燥BCG 133漢方薬 136漢方薬の副作用 137 き気功 47, 48, 57, 58, 60, 61急性皮膚炎 75 くクエン酸 124クリニカル・エビデンス 4グルタチオン 21, 23, 25グルタミン 20, 21, 23, 122, 131 け経口栄養補助剤 122経腸栄養剤 22, 120血球減少 23ゲニステイン 25健康食品 14, 154健康食品の相互作用 20健康被害 15, 142, 160倦怠感 125 こ口腔乾燥 107口腔粘膜炎 123口腔粘膜障害 23抗酸化サプリメント 24口内炎 75高濃度ビタミンC 点滴療法 138コエンザイムQ10 25, 124骨髄抑制 108骨盤筋抵抗運動 55骨盤底筋体操 47, 52コミュニケーション 155索 引 (太字は主要ページ)
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さサイクリング 47, 57, 58, 60, 61, 67サイトカイン 133サスタカル 22サプリメント 154 し脂質代謝異常 121姿勢運動 46手術 124樹状細胞ワクチン 133術後合併症 22, 67, 122ジュニパー 41消化管粘膜障害 20消費者トラブル 160自律訓練法 83鍼灸 99シンバイオティクス 22心理教育 86診療ガイドライン 3 すスイートアーモンド 40, 41水中リンパ療法 53, 66水溶性ファイバー 122ストレッチング 49, 50, 62 せゼラニウム 41セレン 21, 23, 25全身運動 46漸進的筋弛緩法 83漸進的抵抗運動 46 そ相互作用 20, 142創傷治癒 117, 125, 130 た耐久運動 47, 49, 52, 57, 60太極拳 48, 58, 60代謝異常 120体重減少 21, 128大豆イソフラボン 143ダイゼイン 25多機能運動 53, 66脱水症 130ダンス療法 53, 66 蛋白代謝異常 121 ち・て調整運動 46抵抗運動 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 57, 58, 60, 61, 62, 66 と統合医療 10糖代謝異常 120ドコサヘキサエン酸 128 はハーブ 154 ひビタミンB 25ビタミンB6 21ビタミンC 24, 25ビタミンD 24ビタミンE 21, 23, 25 ふフェンネル 41副作用予防 124ブラックペッパー 41プルービング 72プレバイオティクス 143プロシュア 127プロバイオティクス 20, 21, 22, 143分岐鎖アミノ酸 124 へペプチドワクチン 133 ほ包括的リハビリテーション 53, 66放射線性口腔乾燥 107放射線性口腔粘膜炎 123補完代替医療 10補完代替療法 4, 10保健機能食品制度 14ホットフラッシュ 74, 89, 107, 117ホメオパシー 71ポリファーマシー 143
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まマインドフルネスストレス低減法 82, 88マインドフルネス瞑想 88マグネシウム 21マッサージ 27末梢神経障害 21, 108 み味覚障害 125 めメラトニン 20, 21, 23, 25免疫チェックポイント阻害薬 133免疫療法 133免疫療法の保険適用 134 や薬物動態学的相互作用 142薬力学的相互作用 142 ゆ有酸素運動 46, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 57, 58, 60, 61, 62, 66 よヨガ 46, 47, 48, 50, 51, 52, 57, 58, 60, 61, 111 らラコールNF 128ラベンダー 37, 38, 40, 41 り理学療法 53, 66リコピン 25リフレクソロジー 29, 30, 32リポ酸 21緑茶抽出物 25リラクセーション 82リンパ浮腫 33, 66, 117 れレチノール 24レメディ 71 わ悪い知らせ 158 ◆欧文◆ A autogenic training 84 B BCAA 124 C Ca 21 complementary therapies 7 D DHA 19, 128 E EPA 19, 127, 128 evidence—based medicine(EBM) 3 G GFO 122 GRADE system 3 L L—カルニチン 124 M MeSH 7 Mg 21 N N—アセチルシステイン 21, 23, 25 O OS—1 128 P progressive muscle relaxation 84 PubMed 7 R relaxation therapy 82, 84 ◆記号◆ ω—3 脂肪酸 18, 19, 21, 128