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Clinical Guidelines for Respiratory Symptoms in Cancer Patients Second Edition edited by Japanese Society for Palliative Medicine ©2016 All right reserved. KANEHARA & Co., Ltd., Tokyo Japan Printed in Japan
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iii 緩和医療ガイドライン委員会委 員 長太田惠一朗日本医科大学消化器外科担当委員坂下 明大兵庫県立加古川医療センター緩和ケア内科外部委員中山 健夫京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野外部委員高山 智子国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報提供部 呼吸器症状ガイドライン改訂WPG(Working Practitioner Group) WPG員長田中 桂子がん・感染症センター都立駒込病院緩和ケア科WPG 副員長山口 崇神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科W P G 員合屋 将公立学校共済組合近畿中央病院呼吸器内科小原 弘之県立広島病院緩和ケア科坂下 明大兵庫県立加古川医療センター緩和ケア内科中村 陽一東邦大学医学部外科学講座一般・消化器外科(大橋),東邦大学大学院医学研 究科臨床腫瘍学講座,東邦大学医療センター大橋病院緩和ケアチーム 西 智弘川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター松田 能宣独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター心療内科支持・緩和療法 チーム 森 雅紀聖隷三方原病院放射線治療科渡邊 紘章小牧市民病院緩和ケア科 天野 慎介一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン〔外部委員,グループ・ネクサ ス・ジャパン(患者会)〕 井上 彰東北大学大学院医学系研究科緩和医療学分野〔日本呼吸器学会〕上月 稔幸独立行政法人国立病院機構四国がんセンター臨床研究センター臨床研究推進部 〔外部委員,日本癌治療学会〕 佐藤 淳也岩手医科大学附属病院薬剤部・薬学部臨床薬剤学講座〔日本緩和医療薬学会〕田中久美子前 神奈川県立がんセンター看護局看護教育科〔外部委員,日本がん看護学会〕浜野 淳筑波大学医学医療系〔日本プライマリ・ケア連合学会〕青江 啓介独立行政法人国立病院機構山口宇部医療センター腫瘍内科〔日本肺癌学会〕岡本 禎晃市立芦屋病院薬剤科〔日本緩和医療学会:薬剤師〕小山富美子近畿大学医学部附属病院看護部〔日本緩和医療学会:看護師〕下山 理史独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター緩和ケア科〔日本緩和医療学 会:医師〕 南郷 栄秀東京北医療センター総合診療科〔外部委員,日本プライマリ・ケア連合学会〕南 大輔岡山大学病院緩和支持医療科〔日本癌治療学会〕 (五十音順) W P G 員(デルファイ委員) W P G 員(評価委員)
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v 発刊にあたって 呼吸困難を始めとした呼吸器症状は,がん患者において頻度が高くかつ難治性であるため,その症状緩和は緩和ケアにおいて重要な位置を占めています。このため,日本緩和医療学会は2009 年に「呼吸器症状ガイドライン作業部会」を組織し,2011 年に「がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2011 年版」を上梓しました。それ以来,年を追うごとに呼吸器症状緩和に関する新たな知見が発表されたため,2013 年に「呼吸器症状ガイドライン改訂Working Practitioner Group(WPG)」が新たに組織されました。本ガイドラインの目的は,呼吸器症状のあるすべてのがん患者の生活の質(quality of life; QOL)の向上を目的に,その症状緩和に関する現時点で考えられる標準的治療法を示すことにあります。対象はすべてのがん患者であり,読者は医師,看護師,薬剤師などのすべての医療従事者を想定しています。本ガイドライン2016 年版の構成は,「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」に沿って作成され,さらにアルゴリズムを示して臨床における医療者の方針と意思決定に役立つ工夫がなされています。主な改訂点は,1旧版の推奨部分について,新たに最新の文献レビューを行い全面的に変更, 2旧版では,概説のみにとどまった「悪性胸水」「咳嗽」「死前喘鳴」の各項目について最新の文献をレビュー,3「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」と「診療ガイドラインのためのGRADE システム―治療介入―」に基づき,エビデンスレベルを,これまでの3 段階から, A(強い),B(中程度),C(弱い),D(とても弱い)の4 段階表記に変更,4背景知識の「薬剤」の項は,推奨文の全面改訂に伴い,最新の情報を含めて全面的に変更,5作成過程の段階から他の関連学会,患者会の代表者に参画していただき,その意見を反映させて,実際の臨床現場で役立つものになるように配慮し工夫,6推奨の項目に関する妥当性の検証では,WPG 員10 名と5 つの関連学会から代表として推薦された5 名とをデルファイ委員とし,デルファイ委員の会議において修正が必要な部分に関して協議,などです。これらの綿密な作業により作成された「がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2016 年版」のガイドラインとしての完成度は2011 年版に比し殊更に高いものとなっています。本ガイドライン作成にあたり,多大なご尽力をいただいた関連学会,患者会の代表者,パブリックコメントをいただいた学会員の皆様,そして「呼吸器症状ガイドライン改訂WPG」員の諸先生方のご努力に対し,この場を借りて感謝の意を表すとともに,このガイドラインが緩和ケアの臨床現場で大いに役立ち,多くの呼吸器症状に苦しむがん患者さんのつらさの軽減に役立つことを祈念して,序文とさせていただきます。 2016 年5 月特定非営利活動法人 日本緩和医療学会理事長 細 川 豊 史
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vi 1 ガイドライン作成の経緯と目的2 1.2011 年版ガイドライン作成の経緯2 2.2016 年版ガイドライン改訂の経緯2 3.ガイドラインの目的2 4.2016 年版における主な改訂点2 2 ガイドラインの使用上の注意4 1.使用上の注意4 2.構成とインストラクション5 3.他の教育プログラムとの関係6 3 エビデンスレベルと推奨の強さ7 1.エビデンスレベル7 2.推奨の強さ8 3. 推奨の強さとエビデンスレベルの臨床的 意味9 4 用語の定義と概念11 1 呼吸困難のメカニズム14 1.呼吸の調節機構14 2.呼吸困難の発生15 1 呼吸困難の発生に関与する受容器15 2 呼吸困難の発生のメカニズム16 3.呼吸困難の発生,認知,表出のメカニズム16 2 呼吸不全の病態生理18 1.呼吸不全18 1 肺胞低換気18 2 換気血流比不均等19 3 拡散障害19 4 シャント(右左シャント) 20 2.換気障害20 1 閉塞性換気障害20 2 拘束性換気障害21 3 混合性換気障害21 3 呼吸困難の原因23 1.呼吸困難の原因23 1 がんに関連した原因23 2 がん治療に関連した原因23 3 がんとは関連しない原因23 4 呼吸困難の評価25 1.使用が推奨されている評価尺度25 1 呼吸困難の量的評価尺度25 2 呼吸困難の質的評価尺度27 3 呼吸困難に伴う機能評価尺度28 2.医療従事者による呼吸困難の評価28 3.まとめ30 5 身体所見と検査31 1.問 診31 1 現病歴31 2 既往歴・生活歴31 3 増悪因子・軽快因子32 2.身体所見32 1 Vital Signs 32 2 視 診32 3 触 診33 4 打 診33 5 聴 診33 3.検査所見33 1 動脈血ガス分析/経皮的酸素飽和度33 2 血液検査34 3 画像検査34 6 酸素療法36 1.非侵襲的陽圧喚気(NPPV) 36 1 定 義36 2 メリットとデメリット36 3 一般的な適応37 2.高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC) 37 1 定 義37 2 メリットとデメリット37 3 一般的な適応38 I章 はじめに II章 背景知識 目 次
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vii 7 呼吸困難以外の呼吸器症状40 1.がん性リンパ管症40 1 定 義40 2 疫学・頻度・影響40 3 原因・分類・病態生理40 4 評 価40 2.上大静脈症候群41 1 定 義41 2 疫学・頻度・影響41 3 原因・分類・病態生理41 4 評 価41 5 マネジメント41 3.主要気道閉塞(MAO) 42 1 定 義42 2 疫学・頻度・影響42 3 原因・分類・病態生理42 4 評 価42 5 マネジメント43 4.悪性胸水43 1 定 義43 2 疫学・頻度43 3 原因・病態生理43 4 評 価44 5 マネジメント44 5.咳 嗽45 1 定 義45 2 疫学・頻度・影響45 3 原因・分類・病態生理46 4 評 価47 6.死前喘鳴47 1 定 義47 2 疫学・頻度・影響47 3 原因・分類・病態生理48 4 評 価48 5 対 応48 8 薬 剤50 1.オピオイド50 1 モルヒネ50 2 オキシコドン50 3 フェンタニル50 4 コデイン・ジヒドロコデイン50 2.オピオイド以外の薬剤51 1 ベンゾジアゼピン系薬51 2 フロセミド吸入51 3 コルチコステロイド51 4 デキストロメトルファン52 5 プレガバリン・ガバペンチン52 6 リドカイン吸入52 7 抗コリン薬52 8 オクトレオチド52 ● 推奨の概要56 1 呼吸困難に対する酸素療法59 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,酸素療 法は有効か? 59 2 呼吸困難に対する薬物療法66 モルヒネ66 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒ ネは有効か? 66モルヒネ以外のオピオイド70 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒ ネ以外のオピオイド(オキシコドン,フェンタニル,コデイン・ジヒドロコデイン)は有効か? 70ベンゾジアゼピン系薬75 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,ベンゾ ジアゼピン系薬は有効か? 75フロセミド吸入79 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,フロセ ミドの吸入投与は有効か? 79コルチコステロイド81 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,コルチ コステロイドの全身投与は有効か? 81 3 特定の病態に対する治療87 悪性胸水による呼吸困難に対する治療87 ● 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者 の,呼吸困難を緩和する有効な方法は何か? 87咳嗽の緩和に対する治療93 ● 咳嗽を有するがん患者の,咳嗽を緩和する 有効な方法は何か? 93死前喘鳴の軽減に対する治療100 III章 推 奨 1 2 3 4 5 1
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viii ● 死前喘鳴を有するがん患者の,喘鳴を軽減 する有効な方法は何か? 100 1 看護ケア106 1.呼吸法のトレーニング106 2.送 風107 3.看護師によるフォローアッププログラム107 4. 身体的・精神的側面のサポートを統合した 呼吸困難マネジメントプログラム108 5.ケアマネジメント109 6.まとめ109 2 呼吸リハビリテーション111 1.呼吸リハビリテーションの目的111 2.対 象111 3.呼吸リハビリテーションの構成要素111 4.がん患者に対する呼吸リハビリテーション112 1 呼吸リハビリテーションの考え方112 2 運動療法112 3 呼吸理学療法113 3 精神療法115 1.呼吸困難に対する精神療法115 2.まとめ116 4 リラクセーション117 1.リラクセーション法を含む複合的介入方法117 2.単独介入としてのリラクセーション法117 1 イメージ療法118 2 漸進的筋弛緩法118 3.まとめ119 1 作成過程122 1.概 要122 2.臨床疑問の設定122 3.系統的文献検索122 4.妥当性の検証123 1 1 回目のデルファイラウンド124 2 2 回目のデルファイラウンド124 3 外部評価委員による評価124 5.日本緩和医療学会の承認124 6.ガイドライン作成者と利益相反124 2 文献検索式127 3 今後の検討課題141 1. 今回のガイドラインでは,対応しなかったこ と141 2. 用語の定義・背景知識について,今後検討が 必要なこと141 3. 推奨について,今後の検討や新たな研究が必 要なこと141 索 引145 IV章 非薬物療法 V章 資 料
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ix 1 呼吸困難に対する酸素療法●呼吸困難を訴えているがん患者に,酸素療法は有効か? 59 [臨床疑問1]低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和する か? 60 [臨床疑問2]低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和する か? 61 [臨床疑問3]低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気(NPPV)は呼 吸困難を緩和するか? 62 [臨床疑問4]低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ酸素療法 (HFNC)は呼吸困難を緩和するか? 63 2 呼吸困難に対する薬物療法 モルヒネ●呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネは有効か? 66 [臨床疑問5]呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 66 [臨床疑問6]呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? 68 モルヒネ以外のオピオイド● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネ以外のオピオイド(オキシコドン,フェンタニル,コデイン・ ジヒドロコデイン)は有効か? 70 [臨床疑問7]呼吸困難を有するがん患者に対して,オキシコドンの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 70 [臨床疑問8]呼吸困難を有するがん患者に対して,フェンタニルの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 71 [臨床疑問9]呼吸困難を有するがん患者に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与は呼吸困難を 緩和するか? 72 ベンゾジアゼピン系薬●呼吸困難を訴えているがん患者に,ベンゾジアゼピン系薬は有効か? 75 [臨床疑問10]呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与は呼吸困難を緩和す るか? 75 [臨床疑問11]呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドの併用は呼吸困難 を緩和するか? 76 フロセミド吸入●呼吸困難を訴えているがん患者に,フロセミドの吸入投与は有効か? 79 [臨床疑問12]呼吸困難を有するがん患者に対して,フロセミドの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? 79 1 2 3 4臨床疑問一覧
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xコルチコステロイド ●呼吸困難を訴えているがん患者に,コルチコステロイドの全身投与は有効か? 81 [臨床疑問13]呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わずコルチコステロイドの全身投与を行うこ とは呼吸困難を緩和するか? 81 [臨床疑問14]がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投 与は呼吸困難を緩和するか? 83 [臨床疑問15]上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与 は呼吸困難を緩和するか? 84 [臨床疑問16]主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの 全身投与は呼吸困難を緩和するか? 85 3 特定の病態に対する治療 悪性胸水による呼吸困難に対する治療●悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者の,呼吸困難を緩和する有効な方法は何か? 87 [臨床疑問17]悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸腔穿刺ドレナージは呼吸困難を緩和 するか? 87 [臨床疑問18]悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸膜癒着術は呼吸困難を緩和する か? 90 [臨床疑問19]悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,利尿薬は呼吸困難を緩和するか? 91 咳嗽の緩和に対する治療●咳嗽を有するがん患者の,咳嗽を緩和する有効な方法は何か? 93 [臨床疑問20]咳嗽を有するがん患者に対して,オピオイドは咳嗽を緩和するか? 93 [臨床疑問21]咳嗽を有するがん患者に対して,デキストロメトルファンは咳嗽を緩和するか? 95 [臨床疑問22]咳嗽を有するがん患者に対して,プレガバリン・ガバペンチンは咳嗽を緩和するか? 96 [臨床疑問23]咳嗽を有するがん患者に対して,リドカインを吸入することは咳嗽を緩和するか? 97 死前喘鳴の軽減に対する治療●死前喘鳴を有するがん患者の,喘鳴を軽減する有効な方法は何か? 100 [臨床疑問24]死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与することは,喘鳴を軽減するか? 100 [臨床疑問25]死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与することは,喘鳴を軽減する か? 101 [臨床疑問26]死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引を実施することは,喘鳴を緩和するか? 102 1 2 3
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1 ガイドライン作成の経緯と目的 2 ガイドラインの使用上の注意 3 エビデンスレベルと推奨の強さ 4 用語の定義と概念 I章 はじめに
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呼吸困難,その他の呼吸器症状は,がん患者において頻度が高く難治性であることが多い症状の一つとされる。日本緩和医療学会では,身体症状緩和のガイドラインとして,「疼痛」に続いて「呼吸器症状」と「消化器症状」の緩和に関するガイドラインの作成が急務であると考え,2009 年に「呼吸器症状ガイドライン作業部会」,「消化器症状ガイドライン作業部会」が組織された。両部会は,協働しながら同様の手法を用いて,それぞれ呼吸器症状および消化器症状の緩和に関するガイドラインを作成する方針となった。2010 年に『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2010 年版』が発行された後,集中して作業に入り,翌2011 年に発刊となった。 『がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2011 年版』には,「医療の進歩に遅れることなく内容の再検討および改訂を行うこととする」と記載された。2011 年版の出版後,呼吸困難,その他の呼吸器症状の緩和に関する新たな知見が散見されるようになった。これらをふまえ,2013 年に正式に「呼吸器症状ガイドライン改訂Working Practitioner Group(WPG)」が設けられ,2016 年6 月発刊を目指すこととなった。(改訂作業の詳細は,V章-1 作成過程の項を参照) 本ガイドラインの目的は,呼吸困難をはじめとする呼吸器症状のあるすべてのがん患者の生活の質(quality of life;QOL)を向上させるために,呼吸器症状の緩和に関する現時点で考えられる標準的治療法を示すことである。対象はすべてのがん患者とし,使用者は,医師,看護師,薬剤師などすべての医療従事者を想定した。本ガイドラインでは,EBM(Evidence-Based Medicine)の考え方に基づき,Minds (Medical Information Network Distribution Service)の診療ガイドライン作成の手法に則り,最新の文献を十分に検討して体系化されたガイドラインを目指したと同時に,アルゴリズムを示して臨床の場における医療チームの意思決定の手助けになるように工夫した。 2016 年版における主な改訂点は,以下の通りである。12011 年版の推奨部分について,新たに最新の文献レビューを行って,全面的に改訂した。 ガイドライン作成の経緯と目的1 1.2011 年版ガイドライン作成の経緯 2.2016 年版ガイドライン改訂の経緯 3.ガイドラインの目的 4.2016 年版における主な改訂点
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22011 年版では,「関連する特定の病態の治療」として概説するのみにとどまった「悪性胸水」「咳嗽」「死前喘鳴」の各項目について最新の文献レビューを行い, III章 推奨として新たに追加した。3『Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014』に基づき,エビデンスレベルを,これまでの3 段階〔A(強い),B(弱い),C(とても弱い)〕から,4 段階〔A(強い),B(中程度),C(弱い),D(とても弱い)〕で表記するよう変更した(詳細はI章-3 エビデンスレベルと推奨の強さの項を参照)。4背景知識の「薬剤」の項は,推奨文の全面改訂に伴い,最新の情報を含めて全面的に改訂した。5作成過程の段階から,他の関連学会代表者,患者会代表者に参画していただき,それらの意見を反映して,実際の臨床現場で役立つものになるよう配慮し工夫した(詳細はV章-1 作成過程の項を参照)。一方で,今回,以下の項目については,時間の関係で抜本的な見直しや全面的な改訂は行わず,新しい情報の補足・修正を行うにとどめた。これらの全面的な改訂は次回改訂時の課題として残した。1背景知識の「呼吸困難のメカニズム」「呼吸不全の病態生理」「呼吸困難の原因」「呼吸困難の評価」「身体所見と検査」の項2非薬物療法の「看護ケア」「呼吸リハビリテーション」「精神療法」「リラクセーション」の項 (田中桂子,山口 崇) I章はじめに
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(1)適 用本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難,またはその他の呼吸器症状に対する症状緩和のための治療介入を扱っている。しかし,これらの症状については,外科治療・化学療法・放射線治療などを含む原疾患に対する集学的治療,さらに多職種専門家チームによるケアが重要であることはいうまでもない。また,症状の原因が,併存する呼吸器疾患やその他の疾患によるものである場合は,それらの疾患に関する成書を参照されたい。(2)対象患者すべてのがん患者を対象とする。(3)使用者がん患者の診療・ケアに携わる医師(緩和ケア医,がん治療医,総合診療医など),看護師,薬剤師など,すべての医療従事者を想定される使用者とする。ただし,患者・家族も自身が受ける治療の参考として利用できるよう配慮する。(4)効果の指標本ガイドラインでは,プライマリーアウトカムを「呼吸困難の緩和」として効果の指標とした。一部例外として,咳嗽の項では「咳嗽の改善」を,死前喘鳴の項では「喘鳴の軽減」を効果の指標とした。同時に,その他の「益のアウトカム(患者にとって望ましい効果)」として,例えば,「運動能の向上,生活の質(QOL)の向上,生存期間の延長」など,また,「負のアウトカム(患者にとって望ましくない効果)」として,例えば,「重篤な有害事象」などを挙げ,患者にとっての重要性の観点から重み付けして評価し,最終的に推奨レベル確定の参考とした(詳細はV章-1 作成過程の項を参照)。(5)診療における個別性の尊重本ガイドラインは,ガイドラインに従った画一的な治療・ケアを勧めるものではない。ガイドラインは臨床的,科学的に満たすべき一般的な水準を示しているが,個々の患者への適用は,対象となる患者の個別性に十分配慮し,医療チームが責任をもって決定するべきものである。(6)定期的な再検討の必要性2021 年末までに内容の見直しについて再検討する(改訂責任者:日本緩和医療学会理事長)。(7)対象とする薬剤本ガイドラインでは,原則的に本邦で使用可能な薬剤を評価対象として推奨文で取り扱った。しかし,海外の文献を解説する部分では,本邦で使用不可能な薬剤も記載している。その場合は英語表記とし,本邦で使用できる薬剤(カタカナ・漢字表記)と区別した。また,使用可能であっても保険診療で認められていない使用法 ガイドラインの使用上の注意2 1.使用上の注意
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を含むため,使用にあたっては注意されたい。(8)責 任本ガイドラインの内容については日本緩和医療学会が責任をもつが,個々の患者への適用や対応に関しては,患者を直接担当する医療従事者が責任をもつ。(9)利益相反本ガイドラインの作成にかかる事務・運営費用は,日本緩和医療学会より拠出された。ガイドライン作成に関わる委員の活動・作業はすべて無報酬で行われ,委員全員の利益相反に関する開示が行われ,日本緩和医療学会で承認された。本ガイドライン作成のどの段階においても,ガイドラインで扱われている内容から利害関係を生じうる団体からの資金提供は受けていない。 本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難,またはその他の呼吸器症状を取り上げた。本ガイドラインの構成は以下の通りである。まず,「I章 はじめに」では,「ガイドライン作成の経緯と目的」を簡単にまとめ,「ガイドラインの使用上の注意」として,本ガイドラインの対象とする状況や使用上の注意を説明した。「エビデンスレベルと推奨の強さ」では,それぞれの用語を解説するとともに,本ガイドラインで使用されているエビデンスレベルと推奨の強さを決定する考え方について解説した。特に本ガイドラインから,エビデンスレベルの区分が変更となっているため,使用前にぜひ一読されたい。「用語の定義と概念」では,本ガイドラインで使用する用語の定義を記載した。次に,「II章 背景知識」では,推奨文をよりよく理解し,呼吸困難,その他の呼吸器症状の緩和ケアを行ううえで必要と思われる基礎知識をまとめた。「メカニズム」「病態生理」「原因」「評価」「身体所見と検査」を簡単に解説した後,「酸素療法」では特殊な酸素療法について,続く「呼吸困難以外の呼吸器症状」では,特定の病態について整理して解説した。「薬剤」では,本ガイドラインで言及した薬剤について薬理作用,標準的な投与量や投与方法について概説した。ガイドラインの主要部分は「III章 推奨」である。章の冒頭に,全体を概観できるようアルゴリズムを示し,治療の考え方を概説した。続いて,臨床疑問,関連する臨床疑問,推奨,解説を記載した。推奨では,薬剤の投与量,投与方法については詳細を示さず,背景知識に記載することとした。また,構造化抄録はガイドラインには掲載しなかったが,推奨のなかの解説において個々の論文の概要がわかるように配慮して記載した。さらに,「IV章 非薬物療法」では,看護ケア,呼吸リハビリテーション,精神療法,リラクセーションを取り上げ,多職種による対症的アプローチ方法をまとめた。これらの項目については,現時点では十分なコンセンサスが得られていないため,本ガイドラインでは,概要を示すにとどめた。最後に「V章 資料」では,「作成過程」としてガイドラインを開発した経緯を述べ,各臨床疑問で使用した「文献検索式」を掲載した。最後に,今回のガイドラインでは対応しなかったこと,十分に検討できなかったこと,今後新たな研究が必要な課題をまとめ,今後の改訂,研究計画に役立てるようにした。 2.構成とインストラクションI章はじめに
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本ガイドラインでは,作成作業段階で得られた最新の知見をもとに,専門家の合意を得るためのコンセンサス法を用いた(P122,V章-1 作成過程参照)。そのため,本ガイドライン作成前に作成された教育資料,「症状の評価とマネジメントを中心とした緩和ケアのための医師の継続教育プログラム」(PEACE;Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education)とは,いくつかの点において相違が認められる。それらの教育資料との整合性については,随時,日本緩和医療学会ホームページなどで情報を提供する。 (田中桂子,山口 崇) 3.他の教育プログラムとの関係
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本ガイドラインでは,「エビデンスレベル」を「ある治療による効果を推定した際の確信(エビデンス)が,特定の推奨を支持するうえでどの程度十分であるか,を示す指標」と定義した。エビデンスレベルは,『Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014』『診療ガイドラインのためのGRADE システム―治療介入―』を参照し,呼吸器症状ガイドライン改訂WPG の合意に基づき,「研究デザイン」「研究の限界(limitation;バイアスリスク)」「結果が一致しているか(consistency)」「研究の対象・介入・アウトカムは想定している状況に近いか(directness)」「データは正確であるか(precision)」「その他のバイアス」から総合的に臨床疑問ごとに判断した。エビデンスレベルは,A~D の4 段階に分けられており,それぞれ,A:「今後さらなる研究を実施しても,効果推定への確信性は変わりそうにない」,B:「今後さらなる研究が実施された場合,効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性があり,その推定が変わるかもしれない」,C:「今後さらなる研究が実施された場合,効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性が非常に高く,その推定が変わる可能性がある」,D:「効果推定が不確実である」ことを示す(表1)。・「研究デザイン」は,エビデンスレベルを決定するための出発点として使用し,表 2 の区別をした。・「研究の限界(limitation)」は,割り付けのコンシールメント(隠蔽化),盲検化, アウトカム報告,アウトカム測定,適格基準の確立,フォローアップ期間など, エビデンスレベルと推奨の強さ3 1.エビデンスレベルI章はじめに 表1 エビデンスレベルA(高い)今後さらなる研究を実施しても,効果推定への確信性は変わりそうにないB(中)今後さらなる研究が実施された場合,効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性があり,その推定が変わるかもしれないC(低い)今後さらなる研究が実施された場合,効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性が非常に高く,その推定が変わる可能性があるD(非常に低い)効果推定が不確実である 表2 エビデンスレベルの参考とした研究デザインA適切に実施された複数の無作為化比較試験から得られた一貫性のある結果;無作為化比較試験のメタアナリシス;バイアスのない複数の観察研究から得られた非常に強固な結果B重要な限界を有する無作為化比較試験;非無作為化比較試験*1;一致した結果の複数のバイアスのない観察研究*2 C複数の観察研究;重大な欠陥もしくは非直接的な無作為化比較試験D単独の観察研究;非系統的な臨床観察・症例報告;専門家の意見*1:クロスオーバー比較試験を含む*2:無作為化比較試験の治療群,または,対照群を前後比較試験や観察研究として評価したものを含む
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研究の妥当性そのものを指す。・「結果が一致しているか(consistency)」は,複数の研究がある場合に,研究結果(介入の効果)が一致しているかを指す。・「研究の対象・介入・アウトカムが想定している状況に近いか(directness)」は, 研究で扱われている臨床状況・集団・条件と,本ガイドラインにおける臨床疑問で想定している内容に相違があるかを示す。具体的な評価は,研究対象集団・介入内容・アウトカム測定方法に関して行った。・「データは正確であるか(precision)」は,対象患者数やイベント数が十分である かを示す。対象者数がサンプルサイズ計算に基づく予定症例数に達しているか,などが評価される。対象患者数やイベント数が少ない場合は信頼区間が大きくなり,データの不正確性が増す。・「その他のバイアス」は,出版バイアス(publication bias)や利益相反などを評価 した。以上のように,本ガイドラインでは,エビデンスレベルを研究デザインだけでなく,研究の質,結果が一致しているか,研究の対象・介入・アウトカムは想定している状況に近いかなどを含めて,総合的に判断した。 本ガイドラインでは,「推奨の強さ」を,「推奨に従って治療を行った場合に患者の受ける利益が害や負担を上回る(下回る)と考えられる確信の強さの程度」と定義した。推奨は,エビデンスレベルやエビデンスのなかで報告されている利益と不利益の大きさ,および臨床経験をもとに,推奨した治療によって得られると見込まれる利益の大きさと,治療によって生じうる害や負担とのバランスから,総合的に判断した。治療によって生じる「負担」には,全国のすべての施設で容易に利用可能かどうか(availability;利用可能性)も含めて検討した。本ガイドラインでは,推奨の強さを「強い推奨」「弱い推奨」の2 種類で表現した。「強い推奨」とは,得られているエビデンスと臨床経験から判断して,推奨した治療によって得られる利益が,治療によって生じうる害や負担を上回る(または,下回る)確信が強いと考えられることを指す(表3)。この場合,医師は,患者の多くが推奨された治療を希望することを想定し,患者の価値観や好み,意向もふまえたうえで,推奨された治療を行うことが望ましい。「弱い推奨」とは,得られているエビデンスと臨床経験から判断して,推奨した治療によって得られる利益の大きさが不確実であるか,または,治療によって生じうる害や負担と利益とが拮抗していると考えられることを指す(表3)。この場合,医師は,推奨された治療を行うかどうか,患者の価値観や好み,意向もふまえたうえで,患者とよく相談する必要がある。デルファイラウンドの過程において,デルファイ委員が各推奨文を「1:強い推奨」と考えるか,「2:弱い推奨」と考えるかについての集計後,不一致が生じた際には討議を行った。推奨の強さに対する意見が分かれた場合には,「専門家の合意が得られるほどの強い推奨ではない」と考え,「弱い推奨」とすることを原則とした。 2.推奨の強さ
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本ガイドラインでは,推奨の方向性として,「行う」推奨と「行わない」推奨を設けた。それぞれに対しての推奨の強さが「強い推奨」と「弱い推奨」が組み合わされるため,最終的な推奨は4 種類で表現した。実際の推奨文においては,強い推奨を「recommend;推奨する」,弱い推奨を「suggest;提案する」と表現した。推奨の強さとエビデンスレベルから,表4 に示すような組み合わせの推奨文がある。それぞれの推奨文の臨床的解釈についても表5 にまとめた。 (山口 崇,田中桂子) 【参考文献】1) Guyatt GH, Cook DJ, Jaeschke R, et al. Grades of recommendation for antithrombotic agents: American College of Chest Physicians Evidence—Based Clinical Practice Guidelines(8th Edition). Chest 2008; 133(6 Suppl): 123S—31S(Erratum in: Chest 2008; 134: 473) 2) Guyatt GH, Oxman AD, Vist GE, et al.; GRADE Working Group. GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recommendations. BMJ 2008; 336: 924—6 3) 森實敏夫,吉田雅博,小島原典子 編.福井次矢,山口直人 監.Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014,東京,医学書院,2014 4) 相原守夫,三原華子,村山隆之,他.診療ガイドラインのためのGRADE システム―治療介 入―,青森,凸版メディア,2010 3.推奨の強さとエビデンスレベルの臨床的意味I章はじめに 表3 推奨の強さ1:強い推奨(recommend)推奨した治療によって得られる利益が,治療によって生じうる害や負担を明らかに上回る(あるいは下回る)と考えられる2:弱い推奨(suggest)推奨した治療によって得られる利益の大きさは不確実である,または,治療によって生じうる害や負担と拮抗していると考えられる 表4 推奨度,記号,表現の対応 推奨度記 号表 現強い推奨(recommend) 1「実施する」 行うことを推奨する「実施しない」 行わないことを推奨する弱い推奨(suggest) 2「実施する」 行うことを提案する「実施しない」 行わないことを提案する
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表5 推奨度とエビデンスレベルによる臨床的意味 臨床的意味 1A推奨は,多くの状況において,多くの患者に対して適応できる。根拠のレベルが高く,したがって,推奨した治療を行う(または,行わない)ことが勧められる 1B推奨は,多くの状況において,多くの患者に対して適応できる。ただし,根拠のレベルが十分ではなく,今後の研究結果により効果推定の確信性に影響が与えられる可能性があり,その推定が変わるかもしれない。したがって,根拠が十分ではないことを理解したうえで,推奨した治療を行う(または,行わない)ことが勧められる 1C推奨は,多くの状況において,多くの患者に対して適応できる。しかしながら,根拠のレベルは低く,今後の研究により効果推定の確信性に影響が与えられる可能性が高く,その推定が変わる可能性が多分に存在する。したがって,根拠が不足していることを理解したうえで,推奨した治療を行う(または,行わない)ことが勧められる 1D推奨は,多くの状況において,多くの患者に対して適応できる。ただし,根拠は非常に限られるもしくは臨床経験に基づくのみであり,今後の研究結果により推定が大きく変わる可能性がある。したがって,根拠は不確実であることを理解したうえで,推奨した治療を行う(または,行わない)ことが勧められる 2A推奨による利益と不利益の差は拮抗しており,患者もしくは社会的価値によって最善の対応が異なる可能性がある。ただし,推奨の方向に関する根拠のレベルは高く,効果推定に関する確信性は高い。したがって,推奨内容を選択肢として呈示し,患者と推奨内容を行う(または行わない)かに関して相談することが勧められる 2B推奨による利益と不利益の差は拮抗しており,患者もしくは社会的価値によって最善の対応が異なる可能性がある。また,推奨の方向に関する根拠のレベルは十分ではなく,今後の研究結果により効果推定の確信性に影響が与えられる可能性があり,その推定が変わるかもしれない。したがって,推奨内容を選択肢として呈示し,患者と推奨内容を行う(または行わない)かに関して相談することが勧められる 2C推奨による利益と不利益の差は拮抗しており,患者もしくは社会的価値によって最善の対応が異なる可能性がある。また,推奨の方向に関する根拠のレベルは低く,今後の研究により効果推定の確信性に影響が与えられる可能性が高く,その推定が変わる可能性が多分に存在する。したがって,推奨内容を選択肢として呈示し,患者と推奨内容を行う(または行わない)かに関して相談することが勧められる 2D推奨による利益と不利益の差は拮抗しており,患者もしくは社会的価値によって最善の対応が異なる可能性がある。さらに,推奨の方向に関する根拠は非常に限られるもしくは臨床経験に基づくのみであり,今後の研究結果により推定が大きく変わる可能性がある。したがって,推奨内容を選択肢として呈示し,患者と推奨内容を行う(または行わない)かに関して相談することが勧められる
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呼吸困難呼吸時の不快な感覚。dyspnea/breathlessness/shortness of breath 呼吸不全呼吸機能障害のため動脈血ガス(特にO2とCO2)が異常値を示し,そのために正常な機能を営むことができない状態。定義上,動脈血酸素分圧が60 Torr 以下の状態を指す。急性呼吸不全と慢性呼吸不全がある。respiratory failure 悪性胸水胸膜播種や腫瘍の転移・浸潤など,がん,悪性腫瘍が原因となって胸腔内に貯留した液体。malignant pleural effusion 胸膜癒着術胸腔内に癒着剤を投与し,壁側・臓側胸膜間に炎症を起こして,胸膜の線維化や腔の閉鎖を図る治療法。pleurodesis 咳 嗽短い吸気に引き続いて,声門が部分的に閉鎖し,胸腔内圧が上昇して,強制的な呼気とともに気道内容が押し出される状態を指す。cough死前喘鳴 死期が迫った患者において聞かれる,呼吸に伴う不快な音。呼吸とともに意図しない発声がみられる呻吟(しんぎん)とは異なる。気道分泌過多〔感染症・腫瘍・体液貯留・誤嚥などにより気管支分泌物が多くなっている状態(excessive respiratory secretion)〕とは必ずしも一致しない。noisy breathing/death rattle/respiratory secretion 精神療法精神科医,心療内科医,臨床心理士といった精神保健の専門家が,患者との相互交流を通して精神・心理的問題に対する支援を行う専門的治療。がん患者の場合,精神疾患や情緒障害に対してではなく,精神的苦痛の緩和を目的とする。 リラクセーション緊張や不安,疼痛を軽減させるための方法。〔注〕本ガイドラインでは,National Cancer Institute (米国国立癌研究所)の定義を引用した。 看護ケア健康の保持増進,回復に関するケアを意味する。〔注〕本ガイドラインでは,非薬物療法のうち看護師が 関わる可能性がある介入を看護ケアとした。 用語の定義と概念4 I章はじめに ■はじめに この項では,本ガイドラインの治療,ケアを考えるうえで,整理しておくべき用語の定義について本文から抜粋してまとめた。ここに挙げた用語(日本語訳)や定義は,今後,日本緩和医療学会のみならず関連団体を含めて,用語の統一を行っていく過程で変更される可能性がある。
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呼吸リハビリテーション呼吸器の病気によって生じた障害をもつ患者に対して,可能な限り機能を回復,あるいは維持させ,これにより患者自身が自立できるように継続的に支援していくための医療。〔注〕本ガイドラインでは,日本呼吸管理学会/日本呼吸 器学会「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」の定義を引用した。 呼吸理学療法呼吸障害に対する理学療法の呼称および略称さらには総称であり,呼吸障害の予防と治療のために適用される理学療法の手段。〔注〕肺理学療法あるいは胸部理学療法は欧米でのchest physiotherapy に相当する用語である。Chest physiotherapy は通常,伝統的な気道クリアランス法,特に体位ドレナージとそれに付随する排痰手技(特に軽打,振動)に代表される気道管理に関する理学療法手技のみを意味するものである。呼吸理学療法と,肺あるいは胸部理学療法は,しばしば混同されているが明確な相違がある。 オピオイド麻薬性鎮痛薬やその関連合成鎮痛薬などのアルカロイドおよびモルヒネ様活性を有する内因性または合成ペプチド類の総称。opioid〔注〕本ガイドラインでは,日本緩和医療学会『がん疼 痛の薬物療法に関するガイドライン2014 年版』の定義を引用した。 オピオイドナイーブオピオイド未使用の状態。opioid naive VAS水平あるいは垂直に引かれた100 mm の直線の両端に両極端の状態(例えば「息苦しさはない」「想像しうる最もひどい苦しさ」)を記載し,最も当てはまる線上にマークする自己評価法。visual analogue scale NRS 0~10 の両端に両極端の状態(例えば「息苦しさはない」「想像しうる最もひどい苦しさ」)を記載し,最も当てはまる数字を選択する自己評価法。最大値は10 以外に設定されることもある。numerical rating scale 修正Borg スケール身体活動能力の評価を目的として開発されたカテゴリー尺度で,0~10 の12 段階(0.5 を含む)の呼吸困難の強さを選択する自己評価法。modified Borg scale 非侵襲的陽圧換気気管内挿管や気管切開をせずに,鼻マスク,口鼻マスクなどの非侵襲的なインターフェイスをヘッドギアやホルダーで顔面に固定し,換気を補助する人工呼吸。NIV(non—invasive ventilation;非侵襲的換気)と表記されることもある。non—invasive positive pressure ventilation (NPPV) 高流量鼻カニュラ酸素療法加温・加湿した一定濃度の酸素を高流量で経鼻的に投与する新しい酸素療法。nasal high flow therapy,high flow therapy などとも呼ばれる。high flow nasal cannula oxygen(HFNC) (田中桂子,山口 崇)
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1 呼吸困難のメカニズム 2 呼吸不全の病態生理 3 呼吸困難の原因 4 呼吸困難の評価 5 身体所見と検査 6 酸素療法 7 呼吸困難以外の呼吸器症状 8 薬 剤 II章 背景知識
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呼吸困難とは,呼吸時の不快な感覚である。呼吸困難を一つの感覚として捉えた場合,他の感覚と同様に外的刺激が感覚受容器→求心性神経路→大脳皮質の特定領域という経路で伝えられ,呼吸困難という特異的な感覚が発生するものと考えられる。このような呼吸困難の発生には呼吸調節機構が密接に関連している。呼吸調節機構は,呼吸中枢を中心として生体の恒常性を保持するために働いている仕組みである。呼吸困難は,呼吸調節機構の恒常性維持機能に異常が生じた場合に,危険信号として働く役割を担っていると考えられる。呼吸調節機構内の異常は通常,呼吸調節系内に存在するさまざまの神経受容器によって感知され,その受容器からの信号は恒常性維持に不可欠なものとなっている。同時に,受容器からの信号は呼吸困難の発生に最も本質的な役割を果たしている。 呼吸の調節機構を図1 に示す。呼吸調節は,延髄を中心とする脳幹部の呼吸中枢で行われ,脊髄を介して横隔膜や肋間筋などの呼吸筋に情報が伝わり,呼吸運動を引き起こす。呼吸中枢は,呼吸運動の結果としての動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2),動脈血酸素分圧(PaO2),pH を感知する中枢と末梢の化学受容器と,呼吸運動を感知する気道,肺,胸壁の機械受容器から情報を受け取り,その結果として呼吸中枢からの出力を呼吸筋に伝え,呼吸運動を引き起こす。さらに大脳皮質から呼吸中枢に対する随意調節も加わり,複雑な呼吸調節が営まれている。 呼吸困難のメカニズム1 1.呼吸の調節機構 図1 呼吸調節機構 大脳皮質(呼吸困難) 化学受容器血液ガスの変化(PaO2, PaCO2)呼吸中枢 (延髄) 肺呼吸筋機械受容器 肺刺激受容器, C 線維受容器,肺伸展受容器 〔Bruera E, et al. Management of dyspnea. Principles and Practice of Palliative Care and Supportive Oncology, 2nd ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2002; p358 を引用,一部改変〕
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呼吸困難の発生に関与する受容器呼吸困難は感覚であり,感覚受容器の刺激で発生する。以下の受容器が呼吸困難の発生に関与すると考えられている。 1 )機械受容器(1)迷走神経受容器気道や肺には呼吸に影響するさまざまな受容器が存在し,その多くは肺迷走神経に支配されている。肺刺激受容器(irritant receptor)*1,C 線維受容器*2,肺伸展受容器(stretch receptor)*3などが代表的なものである。肺刺激受容器やC 線維受容器は,機械的刺激以外には,ヒスタミン,ブラジキニン,プロスタグランジンなどの物質で刺激されて,しばしば咳嗽や気管支収縮などを発生させ,呼吸困難の発生に最も関連する受容器と考えられている。一方,肺伸展受容器は肺伸展時(深呼吸時)などに強く興奮する受容器であり,その興奮は気管支拡張を起こし,呼吸困難の発生に抑制的な役割を果たしていると考えられている。また,この受容器の活動の低下や抑制は,呼吸困難の発生に寄与すると考えられる。このように迷走神経受容器には呼吸困難の発生や増悪に関与する受容器と,逆にその緩和に関与する受容器の2 つの性質の異なる受容器が混在している。(2)胸壁(筋,腱)受容器ガス交換器である肺は胸壁によって覆われており,胸壁には呼吸筋,腱,肋骨が含まれ,これらの組織の中にも機械受容器は存在する。特に,肋間筋に密に存在する筋紡錘*4という機械受容器の存在が知られており,これらの受容器が呼吸困難の発生に関与する可能性がある。(3)上気道受容器鼻腔から喉頭に至る上気道には,圧,気流,機械的あるいは化学的刺激を感受することのできる受容器が存在する。呼吸・気道系に何らかの変化が生じた場合,これらの受容器活動の変化が呼吸困難の発生に関与する可能性がある。 2 )化学受容器化学受容器は,中枢化学受容器と末梢化学受容器の2 つに分類されている。このうち延髄に存在する「中枢化学受容器」は,主にPaCO2の上昇によって刺激される。また,中枢化学受容器の興奮は呼吸中枢を刺激し,その結果として呼吸が亢進する。「末梢化学受容器」は総頸動脈分岐部に位置する頸動脈体(carotid body)と,大動脈弓に存在する大動脈体(aortic body)の存在が知られているが,大動脈体の役割は小さくあまり問題にされない。末梢化学受容器も中枢化学受容器と同様に動脈血液中のPaCO2の上昇によって刺激されるが,PaCO2による刺激効果は弱く,主にPaO2の低下によって強く刺激される。化学受容器の刺激が呼吸中枢活動亢進を介して間接的に呼吸困難の発生に関与することは明らかになっているが,化学受容器の刺激が直接的に呼吸困難を発生させるか否かについての議論がある。 2.呼吸困難の発生1 *1:肺刺激受容器(irritant receptor)気管や中枢気管支の気道上皮内に存在し,主に咳嗽反射に関わる受容器である。呼吸困難の増悪に関与し,さまざまな機械的刺激や化学的刺激(刺激性のガスやヒスタミンなどの化学物質など)で興奮するほか,肺の急激な収縮や膨張(早い深呼吸や気胸発症時),肺コンプライアンスの低下でも興奮が起こる。 *2:C 線維受容器迷走神経無髄C 線維はその末端が受容器になっており,肺毛細血管近傍や気道や咽頭の粘膜に存在する。間質のうっ血や肺水腫のような機械的刺激ならびにブラジキニンやセロトニンといった化学的刺激により興奮し,呼吸促進と呼吸困難を引き起こす。 *3:肺伸展受容器(stretch receptor)気道の平滑筋内に存在し,気道の圧変化を感知する受容器である。主に中心の太い気道に存在し,肺容量の増加に反応する。吸息とともに活動が増強し,吸息活動の抑制によって呼息への切り替えを促進する(Hering—Breuer の吸息抑制反射)。この受容器の興奮は,呼吸困難の発生を抑制すると考えられている。 *4:筋紡錘呼吸筋の筋線維間にある筋紡錘は,呼吸以外にも骨格筋の運動を調節する器官であるが,肋間筋に密に存在し,呼吸運動が妨げられた時などに反射的に呼吸筋を収縮して運動を高める。ストレッチングやバイブレーション刺激によく反応する。II章背景知識
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3 )呼吸運動出力を感知する中枢受容器近年,呼吸困難の程度が呼吸中枢から呼吸筋への運動出力の程度に相関することが明らかにされた。これによって,呼吸中枢活動の変化を感受する中枢受容器の存在が想定されている。このような受容器(central corollary discharge receptors)は,気道抵抗上昇や二酸化炭素負荷によって呼吸中枢活動が上昇した場合や意識的に呼吸中枢活動を上昇させた場合,この呼吸中枢活動の上昇を感知し,その情報を大脳皮質の感覚野に伝えることで呼吸困難の発生に関与するものと考えられている。 呼吸困難の発生のメカニズム呼吸困難の発生のメカニズムに関しては,これまでも化学受容器関与説,気道内受容器説,呼吸筋長さ—張力不均衡説など,数多くの仮説が提唱されてきたが,いずれの仮説も呼吸困難の発生のメカニズムを説明するには不十分であった。仮説の一つは,中枢—末梢ミスマッチ説,あるいは出力—再入力ミスマッチ説と呼ばれている説であり,これは呼吸中枢から呼吸筋への運動指令(出力)と受容器から入ってくる求心性の情報(入力)との間に,解離あるいはミスマッチが存在する場合に呼吸困難が発生するという説である。つまり,呼吸困難はある一定量の換気を起こすのに,予想以上の大きい呼吸筋の活動が必要とされる時に生じるというものである。 Bruera らによる呼吸困難の発生,認知,表出のメカニズムを図2 に示す。呼吸困難は,身体的・生化学的異常によって発生する。認知は,薬物(例えば,オピオイドの投与),不安・抑うつ,身体化(somatization)*によって影響される。これらの影響因子は,大脳皮質レベルで認知する症状の強さを増大,あるいは減少させる。 2 3.呼吸困難の発生,認知,表出のメカニズム *:身体化(somatization)人が心の不安や心理社会的ストレスを身体症状のかたちで訴えること。 図2 呼吸困難の発生,認知,表出のメカニズム 1.発生(production) 2.認知(perception)受容器 影響する因子 3.表出(expression) 呼吸困難の評価 治療機械受容器 化学受容器呼吸中枢 薬物(例えば,オピオイドの投与)身体化不安,抑うつ 精神的要因信仰社会文化的状況 〔Bruera E, et al. Management of Dyspnea. Principles and Practice of Palliative Care and Supportive Oncology, 2nd ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2002; pp357—71 より引用〕
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すなわち,同じように呼吸困難が発生しても,多くの因子により認知のされ方が異なる。そして,精神的要因,信仰,社会文化的状況は,さらに患者の呼吸困難の強さの表出の程度に影響する。このように呼吸困難の発生も認知も評価することができないため,患者の表出に基づき呼吸困難を評価する。 (小林 剛,山口 崇) 【参考文献】1) Manning HL, Schwartzstein RM. Pathophysiology of dyspnea. N Engl J Med 1995; 333: 1547—53 2) Nishino T. Physiological and pathophysiological implications of upper airway reflexes in humans. Jpn J Physiol 2000; 50: 3—14 3) Coleridge HM, Coleridge JCG. Reflexes evoked from tracheobronchial tree and lungs. Fishman AP, Cherniack NS, Widdicombe JG eds. Handbook of Physiology, Sec 3: The Respiratory System, Vol.II: Control of Breathing, Part 2, Bethesda, MD, American Physiological Society, 1986; pp395—429 4) Dyspnea. Mechanism, assessment, and management: a consensus statement. American Thoracic Society. Am J Respir Crit Care Med 1999; 159: 321—40 5) Sant’Ambrogio G. Information arising from the tracheobronchial tree of mammals. Physiol Rev 1982; 62: 531—69 6) Killian KJ, Gandevia SC, Summers E, Campbell EJM. Effect of increased lung volume on perception of breathlessness, effort, and tension. J Appl Physiol 1984; 57: 686—91 7) Meakins JM. The cause and treatment of dyspnea in cardiovascular diseases. BMJ 1923; 1: 1043 8) Guz A, Noble MIM, Eisele JH, Trenchard D. Experimental results of vagal block in cardiopul- monary disease. Porter R ed. Breathing: Hering—Breuer Centenary Symposium, London, J & A Churchill, 1970; pp315—36 9) Campbell EJM, Freedman S, Clark TJH, et al. The effect of muscular paralysis induced by tubocurarine on the duration and sensation of breath—holding. Clin Sci 1967; 32: 425—32 10) Schwartzstein RM, Manning HL, Weiss JW, et al. Dyspnea: a sensory experience. Lung 1990; 168: 185—99 11) Bruera E, et al. Management of dyspnea. Berger AM, Shuster JL, Von Roenn JH eds. Principles and Practice of Palliative Care and Supportive Oncology, 2nd ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2002; pp357—71 12) Ripamonti C, Bruera E. Dyspnea: pathophysiology and assessment. J Pain Symptom Manage 1997; 13: 220—32 13) Doyle D, Hanks G, Cherny NI, Calman K eds. Oxford Textbook of Palliative Medcine, 3rd ed, New York, Oxford University Press, 2004 14) 西野 卓.呼吸困難の生理.日臨麻会誌2009; 29: 341—50 15) 呼吸困難.工藤翔二,中田紘一郎,永井厚志,他 編,呼吸器専門医テキスト,東京,南江堂, 2007; pp40—2 16) 異常呼吸.工藤翔二,中田紘一郎,永井厚志,他 編,呼吸器専門医テキスト,東京,南江堂, 2007; pp58—60 17) 呼吸調節.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編,臨床呼吸機能検査,第7 版,東京,メディカルレビュー社,2008; pp122—9 18) 呼吸困難の評価.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編,臨床呼吸機能検査,第7 版,東京, メディカルレビュー社,2008; pp198—204 II章背景知識
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呼吸とは,酸素(O2)を外気から摂取し細胞内に移送するとともに,細胞内で産生された二酸化炭素(CO2)を外気に排出することである。外気と血液間のO2—CO2交換を外呼吸,血液と細胞間のO2—CO2交換を内呼吸と呼ぶ。肺は,外呼吸の主要器官で,換気,ガスの肺内分布,拡散,肺血流の4 つの過程があり,そのうちのどの過程において障害が起こっても血液中に取り込まれる酸素は不足する。これらの異常のために細胞レベルでのO2供給,CO2除去(内呼吸)に障害を来し,生体が正常な機能を営むことができない状態が呼吸不全である。 呼吸不全*1は,「呼吸機能障害のため動脈血ガス(特にO2とCO2)が異常値を示し,そのために正常な機能を営むことができない状態」と定義される。低酸素血症(PaO2 60 Torr 以下)の病態生理学的機序としては,1肺胞低換気, 2換気血流比不均等,3拡散障害,4シャント(右左シャント),5吸入気酸素分圧の低下がある。通常平地で問題となるのは,1~4で説明され,実際はこれらが混在した状態で呼吸不全を引き起こす。5も低酸素血症の原因となるが,その一般的な状況は高地での吸入気酸素分圧の低下である。高地では気圧が低いために大気の酸素含量が少なく,低酸素血症を引き起こす。I型呼吸不全(ガス交換不全)では,肺胞気—動脈血酸素分圧較差(A—aDO2)*2は開大する。A—aDO2が異常高値を呈する病態としては,換気血流比不均等,拡散障害,シャント(右左シャント)がある(表1)。また,I型呼吸不全は重症化,長期化すればII型呼吸不全を呈することもある。II型呼吸不全(換気不全)では高CO2 血症を呈し,肺胞低換気を伴う。純粋な肺胞低換気のみの場合は,A—aDO2は正常範囲である(表1)。 肺胞低換気換気は,吸気と呼気を繰り返し,外気と肺の空気の出入りを行う過程である。これは呼吸中枢を介する横隔膜,肋間筋などの呼吸筋の興奮・収縮によってなされている。何らかの原因により個体に必要な換気,特にガス交換に直接関与する肺胞換 呼吸不全の病態生理2 1.呼吸不全 *1:呼吸不全の基準・ 室内空気呼吸時のPaO2が60 Torr 以下となる呼吸器系の機能障害,またはそれに相当する異常状態を呼吸不全とする。・ 加えてPaCO2が45 Torr 以下をI型呼吸不全,45 Torr を超えるものをII型呼吸不全に分類する。・ 慢性呼吸不全とは,呼吸不全の状態が少なくとも1 カ月以上続くものをいう。・ 呼吸不全の状態には至らな いが,室内空気呼吸時のPaO2が60 Torr 以上で70 Torr 以下のものを準呼吸不全とする。*2:肺胞気—動脈血酸素分圧較差(A—aDO2)肺胞気酸素分圧(PAO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)の差,すなわちA—aDO2=PAO2- PaO2として表される。室内気吸入時(1 気圧,ガス交換率0.8)のPAO2は,PAO2= 150-PaCO2/0.8 で求められる。健常者でも換気血流不均等が存在するため,A— aDO2は0 ではない。室内気吸入下のA—aDO2は10 Torr以下が正常範囲,10~20 Torr を境界値,20 Torr 以上を異常値とする。1表1 低酸素血症の分類 肺胞低換気II型呼吸不全PaCO2>45 Torr A—aDO2正常換気血流比不均等I型呼吸不全PaCO2≦45 Torr A—aDO2開大拡散障害シャント(右左シャント)
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気量が低下した場合,肺胞内および血液中のO2は不足し,逆にCO2は蓄積される。これを肺胞低換気と呼び,低酸素血症および高CO2 血症を呈する。肺胞低換気は肺胞気酸素分圧(PAO2)の低下を招き,低酸素血症を呈するため,純粋な肺胞低換気ではA—aDO2は開大しない。肺胞低換気の原因を表2 に示す。 換気血流比不均等肺動脈血は,肺毛細血管網を通過する過程でO2とCO2の交換が行われ,動脈血化される。このガス交換が十分に行われるためには,肺胞換気量と肺血流量が正常に保たれているのみでは不十分であり,肺内各領域で換気量と血流量のマッチング,すなわち換気血流比が適切であることが重要である。健常肺でも血流は重力の影響で下肺に多く分布するので,肺内の換気血流比は一様ではなく,その値は不均等に分布している。疾患肺では,血流が非常に少ない肺胞や,換気が非常に少ない肺胞が出現して,健常肺よりもさらに不均等分布が増大する。その結果として低酸素血症を呈するが,動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)に対する換気応答が維持されていればPaCO2は上昇しない。A—aDO2は開大するが,酸素吸入で動脈血酸素分圧(PaO2)は改善する。換気血流比不均等の原因を表2 に示す。 拡散障害肺胞気O2が,肺胞腔から毛細血管内赤血球内ヘモグロビン(Hb)までの肺胞上皮細胞,間質,毛細血管内皮細胞,血漿を通過する物理的プロセスを拡散という。拡散障害は,この肺胞気から赤血球までの酸素の拡散過程に何らかの障害が生じることをいう。A—aDO2は開大し,低酸素血症を呈する病態となる。拡散障害がよほど高度にならない限り,安静時では低酸素血症にならないが,運動時では赤血球が 2 3 II章背景知識 表2 低酸素血症の病態と原因 病 態原 因 肺胞低換気十分なガス交換が行えるだけの肺胞換気量が得られていない状態中枢からの換気ドライブの減少(ベンゾジアゼピン系薬などの抗不安薬やモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬による呼吸中枢の抑制,呼吸中枢に影響する脳血管障害など),神経筋疾患(重症筋無力症など),肺・胸郭の異常(慢性的な肺疾患,肥満,後側彎症など)など換気血流比不均等肺胞換気量と血流比の均衡が崩れている状態気道疾患,間質性肺疾患,肺胞疾患,肺循環障害など,気道肺胞系・肺血管系に異常を来すすべての疾患拡散障害肺胞気から赤血球までの酸素の拡散過程に何らかの障害が生じる状態肺胞膜の障害・肥厚(間質性肺炎,放射線肺臓炎,薬剤性肺障害),肺胞面積の減少〔広範な無気肺,肺切除,慢性閉塞性肺疾患(COPD)〕,肺毛細血管血液量の減少(多発性肺血栓塞栓症,肺門部腫瘍による肺動脈の狭窄・閉塞),血液のHb 濃度の低下(貧血)などシャント(右左シャント)右室から拍出された血液が肺胞気に接触せず,酸素化されずに左心系に流入する状態肺内血管シャント(肺動静脈瘻,肺血管腫),心内右左シャント,肺胞内の充満(無気肺,肺炎),肺胞の虚脱(無気肺),肺内毛細血管の拡張(肝肺症候群)など
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肺胞を通過する時間が短くなるため低酸素血症の原因になる。CO2はO2に比べ約20倍速く拡散するため,拡散障害があっても肺胞低換気がない限りPaCO2は上昇しない。拡散障害の原因を表2 に示す。 シャント(右左シャント)右室から拍出された血液が肺胞気に接触せず,酸素化されずに左心系に流入する病態である。A—aDO2は開大し,酸素吸入を行っても,このシャント血は全く影響を受けないので,シャント率が高度の患者では,PaO2が上昇しにくいことがこの病態の特徴である。生理的シャントと病的シャントがあり,正常肺では,気管支静脈の肺静脈への流入と,左心室の小静脈が左心室へ流入する生理的シャントが存在する。病的シャントには先天性心疾患による右左シャント,換気されていない部分の肺循環があり,シャントが高度になると低酸素血症を呈する。シャントの原因を表2 に示す。 スパイロメトリーは最も基本的な呼吸機能検査で,肺活量(VC)*1,1 秒量(FEV1.0)*2,1 秒率(FEV1.0%)*3 などを測定する。FEV1.0%は70%,VC は正常予測値の80%を正常限界とし,FEV1.0%が70%未満である場合は閉塞性換気障害, VC が正常予測値の80%未満である場合は拘束性換気障害,両者をあわせもつものを混合性換気障害と分類する(図1)。 閉塞性換気障害閉塞性換気障害は気道の狭窄による通過障害であり,FEV1.0,FEV1.0%の低下が特徴である。スパイログラムでFEV1.0%が70%未満の時に,閉塞性換気障害と診断 4 2.換気障害 *1:肺活量(vital capacity; VC)緩徐な呼吸をした際に測定される最大呼気位と最大吸気位の間の肺気量変化をVC と呼ぶ。VC が正常予測値の80%未満である時に拘束性換気障害と診断する。(参考)努力肺活量(forced vital capacity;FVC)通常のVC が緩徐な呼気で測定したものであるのに対し,最大吸気位から最大努力の呼出をして得られるVC をFVCと呼ぶ。健常者では,測定値はVC とほぼ同じ値をとる。 *2:1 秒量(FEV1.0)最大努力呼出の開始後1 秒間に呼出される量をいう。気道抵抗の上昇や気道閉塞で低下するが,呼吸筋の障害や肺弾性の低下でも低下する。 *3:1 秒率(FEV1.0%)最大努力呼出の開始後1 秒間に呼出される量の努力肺活量(FVC)に対する百分率をいう。すなわちFEV1.0/FVCのこと。Gaensler の1 秒率ともいい,FEV1.0%(G)とも表される。また,FEV1.0%(F)はTiffeneau の1 秒率で, FEV1.0/VCのこと。FEV1.0%が70%未満の時に閉塞性換気障害と診断する。1図1 換気障害の分類80 100 (%) %肺活量 100 70 (%) 正常拘束性換気障害 閉塞性換気障害 1 秒 率混合性換気障害
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する。FEV1.0%は肺気量の影響が除かれているので,気流制限の有無の判定に用いる。がんに伴う閉塞性換気障害の代表的疾患を表3 に示す。 拘束性換気障害拘束性換気障害は肺の容積が縮小する異常であり,VC の減少が特徴的である。スパイログラムでVC が予測値の80%未満の時に,拘束性換気障害と診断する。VCの減少のほか,各肺気量分画の減少,肺拡散能の低下,静肺コンプライアンスの低下などを伴う。がんに伴う拘束性換気障害の代表的疾患を表3 に示す。 混合性換気障害混合性換気障害には,次の3 つの場合がある。1閉塞性換気障害と拘束性換気障害を同時に来す疾患の場合(肺結核後遺症,じん肺),2閉塞性換気障害と拘束性換気障害を来す疾患を合併した場合〔慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)と間質性肺炎など〕,3みかけ上の拘束性換気障害を来す疾患の場合(高度に進行したCOPD)がある。 (小林 剛,田中桂子) 【参考文献】1) 呼吸不全の定義,診断基準.厚生省特定疾患「呼吸不全」調査研究班 編.「呼吸不全」診断と治療のためのガイドライン,東京,メディカルレビュー社,1996; pp10—3 2) 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドライン―スパイロメトリー,フローボリューム曲線,肺拡散能力,東京,メディカルレビュー社,2004 3) 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドラインII―血液ガス,パルスオキシメーター,東京,メディカルレビュー社,2006 4) スパイロメトリーと肺気量.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.臨床呼吸機能検査,第7版,東京,メディカルレビュー社,2008; pp9—23 5) 呼吸不全.日本呼吸器学会肺生理専門委員会,日本呼吸管理学会酸素療法ガイドライン作成委員会 編.酸素療法ガイドライン,東京,メディカルレビュー社,2006; pp6—9 6) 呼吸不全.高久史麿,尾形悦郎,黒川 清,他 監.新臨床内科学,第9 版,東京,医学書院, 2009; pp101—6 7) 呼吸不全.杉本恒明,小俣政男 総編.内科学,第6 版,東京,朝倉書店,1995; pp294—7 8) 呼吸生理.工藤翔二,中田紘一郎,永井厚志,他 編.呼吸器専門医テキスト,東京,南江堂, 2 3 II章背景知識 表3 がんに伴う換気障害を来す代表的疾患障害のパターン病 態がんに伴う代表的疾患閉塞性換気障害気道狭窄上気道口腔内腫瘍,咽頭・喉頭腫瘍 下気道気管腫瘍,縦隔リンパ節腫大に伴う気管狭窄 拘束性換気障害肺の弾性の低下放射線肺臓炎,薬剤性肺障害,がん性リンパ管症 肺容量の減少肺切除手術後,原発性・転移性肺腫瘍,無気肺胸郭,胸膜病変胸水,胸膜癒着後,胸膜浸潤・肥厚,胸膜中皮腫高度の胸郭の変形横隔神経麻痺浮 腫肺水腫,心不全その他腹水貯留に伴う腹部膨満 混合性換気障害上記の合併など
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2007; pp12—7 9) 呼吸機能検査法.工藤翔二,中田紘一郎,永井厚志,他 編.呼吸器専門医テキスト,東京, 南江堂,2007; pp126—8
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がん患者において呼吸困難の発生する頻度は46~59%と報告されている。肺がんの患者だけに限るとその頻度は増加し,75~87%となる。がん患者における呼吸困難の原因は多様である。原因の分類として,1局所(心肺)における原因,2全身状態による原因に分ける考え方と,1がんに関連した原因,2がん治療に関連した原因,3がんとは関連しない原因に分ける考え方とがある。これらを表1 にまとめた。 がんに関連した原因がんに関連した原因のなかで,局所(心肺)における原因の主なものは,1肺内腫瘍(原発・転移),2悪性胸水,3胸壁腫瘍,4心囊水,5上大静脈症候群,6主要気道閉塞(major airway obstruction;MAO),7肺塞栓,8がん性リンパ管症, 9気道感染症,10その他の種々の症候群が挙げられる。また,全身状態による原因の主なものには,1貧血,2腹水,3肝腫大,4全身衰弱に伴う呼吸筋疲労,5発熱,6不安,抑うつ,精神的ストレスが挙げられる。 がん治療に関連した原因がん治療に関連した原因では,放射線治療によるものとして放射線肺臓炎がある。化学療法に伴うものとしては薬剤性肺障害*がある。 がんとは関連しない原因がんとは関連しない原因では,慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの基礎肺疾患によるものが最も多い。 (茅根義和,松田能宣) 【参考文献】1) Chan K—S, et al. Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1112—3 2) Loganathan RS, Stover DE, Shi W, et al. Prevalence of COPD in women compared to men around the time of diagnosis of primary lung cancer. Chest 2006; 129: 1305—12 呼吸困難の原因3 1.呼吸困難の原因 1 2 *:薬剤性肺障害を生じやすい抗がん剤微小管阻害薬:ビノレルビン,エリブリンアルキル化薬:シクロホスファミド,メルファラン,ベンダムスチン代謝拮抗薬:ゲムシタビン※,クラドリビン抗生物質:ブレオマイシン※,ペプロマイシン葉酸拮抗薬:ペメトレキセドトポイソメラーゼ阻害薬:イリノテカン※,アムルビシン※分子標的治療薬:ゲムツズマブ,イマチニブ,ボルテゾミブ,ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ,オシメルチニブ,スニチニブ,サリドマイド,エベロリムス,テムシロリムス,クリゾチニブ,アレクチニブ免疫チェックポイント阻害薬:ニボルマブ※間質性肺炎に対して禁忌となっている薬剤 3 II章背景知識
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表1 呼吸困難の原因(緩和ケアの立場からの分類) 局所における原因全身状態による原因 がんに直接関連した原因・肺実質への浸潤肺がん,肺転移・胸壁への浸潤胸壁の腫瘍,中皮腫悪性胸水・心 囊悪性心囊水・主要気道閉塞(MAO)気管の圧迫上気道(咽頭,喉頭,鼻腔, 口腔)での圧迫・血管性上大静脈症候群腫瘍塞栓・リンパ管性がん性リンパ管症・気 胸・肺 炎閉塞性肺炎気管食道瘻による肺炎日和見感染・全身衰弱に伴う呼吸筋疲労がん悪液質症候群腫瘍随伴症候群・血 液貧 血過粘稠症候群・横隔膜の挙上横隔膜麻痺大量腹水肝腫大・発 熱 がん治療に関連した原因・外科治療片肺切除肺葉切除・化学療法薬剤性肺障害心毒性・放射線治療放射線肺臓炎放射線性心膜炎・貧 血・ステロイドミオパチー(筋症)がんとは直接関連しない原因・基礎肺疾患慢性閉塞性肺疾患(COPD)気管支喘息間質性肺炎・心疾患うっ血性心不全不整脈肺塞栓・不安,抑うつ,精神的ストレス・パニック発作・神経筋疾患
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歴史的に,呼吸困難の評価尺度や手法の開発は,主に慢性閉塞性肺疾患(COPD),あるいは慢性心不全患者などの比較的全身状態の安定した慢性疾患患者を対象として発展してきた。このため,評価の主眼は呼吸困難が身体・機能面に及ぼす影響におかれている。一方,緩和ケアにおける介入は,呼吸困難の根本的な原因の除去を主たる目的とせず,自覚的な症状の改善を主たる目的としている。このため評価では,痛みなどと同様に患者の主観性が重視されている(patient—based measurement)。また,呼吸困難の自覚は,身体機能的側面のみならず患者の精神性や心理社会性,あるいは周囲の支援環境と密接に関連していると考えられているため,呼吸困難に関連する多領域を包括した評価尺度も開発されている(multidimensional scale)。Bausewein,Dorman らは,緩和ケアにおける呼吸困難の評価尺度の詳細な系統的レビューを報告している。彼らは詳細なレビューの結果,妥当性と信頼性が十分に検証された評価尺度はないとしている。しかし同時に,推奨しうるいくつかの尺度を取り上げており,以下にこれらを解説する。Bausewein らは尺度を,1呼吸困難の量を測定する尺度(呼吸困難の量的評価尺度:scales to measure the severity of breathlessness),2呼吸困難の質を測定する尺度(呼吸困難の質的評価尺度: scales to describe the quality of breathlessness),3呼吸困難による機能的な影響を測定する尺度(呼吸困難に伴う機能評価尺度:scales to measure functional impairment caused by breathlessness)に分類することを提唱している。本項では,呼吸困難の「主観的評価」方法を中心に解説する。呼吸不全に伴う身体症状の「客観的評価」〔修正MRC(Medical Research Council)スケール〕に関しては別項を参照のこと(P31,II章—5 身体所見と検査参照)。 呼吸困難の量的評価尺度呼吸困難の主観的な量(程度,強度)を測定する単領域性の尺度であり,代表的な尺度としてnumerical rating scale(NRS),visual analogue scale(VAS),修正Borg スケールなどがある(図1)。これらの尺度は簡便であるため,小児や全身状態の不良な対象者など広く使用が可能である。また,同一対象内における呼吸困難の相対的な経時的推移を測定するのに適している。一方,測定値は対象者の主観性に大きく左右されるため,異なる群間での比較には限界があるとされている。 1 )Numerical Rating Scale(NRS) 0 と10 を最端とし,間に数値によるアンカーポイントが記載されている。VAS に比べ少ないサンプルサイズでの変化の検出が可能である。また電話や口頭による調査が可能なことも,VAS に比し有利な点である。COPD,がん患者を対象とした妥 呼吸困難の評価4 1.使用が推奨されている評価尺度(表1,P29) 1 II章背景知識
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当性と信頼性の検証がなされている。 2 )Visual Analogue Scale(VAS)呼吸困難の量的尺度として広く用いられている。通常,水平あるいは垂直に引かれた100 mm の直線上で,その両端に両極端の状態を記載し(例えば「息苦しさはない」「想像しうる最もひどい息苦しさ」など),患者は自分の状態が最もあてはまる線上にマークする。COPD を対象とした妥当性と信頼性の検証は多くなされているが,がん患者を対象とした検証は十分でない。 3 )修正Borg スケールBorg(1982)は医学の領域あるいは社会生活の見地から,人間の身体活動性を評価する必要性を論じ,カテゴリー尺度による身体活動能力の評価を提唱した。現在,呼吸困難の評価に使用されている修正Borg スケールでは,垂直に引かれた線上を0~10 まで分類し(1 段階ずつの分類で通常0.5 を含むため12 段階に分類される),アンカーとなるポイントには,その状態を示す用語が記載されている。修正Borgスケールは,リッカート尺度*1に代表される順序カテゴリー尺度と異なり,各ポイント間は等間隔性を有すると考えられている。このため,ポイント4 は2 の倍,ポイント8 は4 の倍の強度といった評価が可能であり,同一対象者内における経時的変化の検出に優れている。修正Borg スケールは簡便かつ短時間で調査可能であり,またCOPD における運動中の身体機能評価としては確立された指標である。一方,がん患者を対象とした研究報告は少なく,反応性*2やtest—retest 信頼性*3のさらなる検証が必要とされている。本邦でも広く使用されている尺度であるが,日本語版の妥当性を検証した報告はない。 *1:リッカート尺度順序カテゴリー尺度で,1 段階ごとにスコアが上がる。例えば,EORTC QLQ—C30 の項目は,「全くない」「少しある」「多い」「非常に多い」という4 段階の分類カテゴリーをもつが,これらを順にスコア化する形式をリッカート尺度と呼ぶ。各段階の差が等しいという根拠(等間隔性)はないが,対象の平均を測定するような場合には,意味ある有益な要約を提供するといわれている。 *2:反応性(responsiveness)尺度の信頼性と深い関連のある特性の一つで,変化を検出する能力である。例えば,患者の健康状態が経時的に変化する場合,その測定尺度がその変化を検出できるかということである。信頼性と関連のあるもう一つの特性は感度(sensitivity)であり,これは群間の差を検出する能力のことである。 *3:test—retest信頼性(test— retest reliability)尺度に求められる信頼性とは,変化や差の検出する特性(感度・反応性)を有するとともに,その尺度が再現可能で一貫した結果をもたらすことである(再現性)。再現性は,反復測定によって得られた値の相関分析に基づき検証される。test—retest 信頼性とは,経時的な反復測定の手法により検証される特性である。もし患者の状態が安定しているならば,ある測定尺度をその患者に繰り返し用いた時,繰り返し可能な再現性のある結果が得られるはずである。図1 呼吸困難の主観的な量的評価尺度10.0 非常に強い 9.0 8.0 7.0 かなり強い 6.0 5.0 強い 4.0 やや強い 3.0 2.0 弱い 1.0 かなり弱い0.5 非常に弱い0 なにも感じない 修正 Borg スケール 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Numerical Rating Scale(NRS) Visual Analogue Scale(VAS)100mm 息苦しさはない想像しうる最もひどい息苦しさ
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呼吸困難の質的評価尺度呼吸困難を自覚する感覚は,原因となる疾患や呼吸困難を来すメカニズムにより,質的に大きく異なることが知られている。すなわち自覚される呼吸困難を感覚的に描写する場合,その特徴は,例えば努力感(呼吸を行うことに労力を感じる,空気飢餓感など),絞扼感(胸が締めつけられる感覚),窒息感(息が詰まる感覚)といった,いくつかのカテゴリーに分類することが可能である。これら呼吸困難の質的な評価を目的に開発された尺度として,Cancer Dyspnea Scale(CDS)が開発されている。 1 )Cancer Dyspnea Scale(CDS)本邦で開発されたがん患者の自己記入式呼吸困難調査票であり,英語版の妥当性が確認されている(図2)。進行がん患者を対象として,内容的妥当性とtest—retest信頼性が検証されている。CDS は呼吸努力感に関する5 項目の質問,呼吸不快感に関する3 項目,呼吸不安感に関する4 項目の合計12 項目の質問からなる。各質問に対し,1 から5 までの5 段階の回答が記されており(1:いいえ,2:少し,3:まあまあ,4:かなり,5:とても),患者は自分の状態にあった番号にマークする。調査 2 II章背景知識 図2 Cancer Dyspnea Scale(CDS) あなたの息切れ感,息苦しさについておたずねします。この数日間に感じられた息苦しさの状態にもっともあてはまる番号に各々一つだけ○をつけてください。感じたまま第一印象でお答えください。 いいえ少しまあまあかなりとても 1 らくに息を吸い込めますか? 1 2 3 4 5 2 らくに息をはき出せますか? 1 2 3 4 5 3 ゆっくり呼吸ができますか? 1 2 3 4 5 4 息切れを感じますか? 1 2 3 4 5 5 ドキドキして汗が出るような 息苦しさを感じますか? 1 2 3 4 5 6 「はあはあ」する感じがしますか? 1 2 3 4 5 7 身のおきどころのないような 息苦しさを感じますか? 1 2 3 4 5 8 呼吸が浅い感じがしますか? 1 2 3 4 5 9 息が止まってしまいそうな 感じがしますか? 1 2 3 4 5 10 空気の通り道がせまくなったような感じがしますか? 1 2 3 4 5 11 おぼれるような感じがしますか? 1 2 3 4 5 12 空気の通り道に,何かひっかかっているような感じがしますか? 1 2 3 4 5
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に要する時間はおよそ2 分と簡便であり,さまざまな状態の対象に広く使用可能である。CDS の使用にあたっては著作者の許諾を必要としない。 呼吸困難に伴う機能評価尺度呼吸困難が主に身体機能面に及ぼす影響の評価を目的とした尺度である。従来, COPD 患者の機能評価では,さまざまな程度の運動負荷(歩行テスト,腕の羽ばたき運動など)と,それにより自覚される呼吸困難とを評価する手法が開発されてきた。しかし,全身倦怠,痛み,四肢筋力の低下などを伴う状態が悪化した時期では,運動負荷を課す機能評価手法は適さないとされている。 1 )Chronic Respiratory Questionnaire—Dyspnea subscale(CRQ—D) COPD 患者を対象とした健康関連quality of life(QOL)の評価尺度であり, Guyatt ら(1987)により臨床試験での使用を目的に作成された。患者の主観性に基づいた面接式の調査票であり,患者へのインタビューから重要と認識された4 つの領域(呼吸困難,倦怠感,情緒,自己コントロール感)から構成されている。このうち呼吸困難に関する調査項目では,患者は26 の日常生活動作から,自分にとって最も重要な5 つの動作を選択し,その動作を行うことにより自覚する呼吸困難を7段階に評価する。CRQ—D はCOPD,心不全などさまざまな病態での妥当性が検証されており,臨床的に意味をもつ最小の差は7 段階のリッカート尺度で0.5 とされている。がん患者を対象とした妥当性検証はなされていない。欠点として,調査項目がやや多く,調査票すべての記入には通常15~25 分を要する(呼吸困難に関する項目のみに要する調査時間は不明である)。このため,切迫した呼吸困難症状のない対象において,機能評価を行うのに適した尺度とされている。日本語版が作成されており,日本人のCOPD 患者における妥当性が検証されている。使用にあたっては,著作者の許諾が必要である。 2 )Motor Neurone disease—Dyspnea Rating Scale(MDRS)神経筋疾患患者の呼吸困難と身体活動性の評価を目的としてDougan らにより開発された。CRQ—D の呼吸困難に関する調査項目を基本としており,患者は13 の日常生活動作から,自分にとって最も重要な5 つの動作を選択し,その動作を行うことにより自覚される呼吸困難を5 段階に評価する。本来,四肢の筋力低下のために運動の制限された患者を対象に開発されているため,状態が悪化した時期の評価尺度としても有用である可能性は高い。CRQ—D,MDRS の特徴は,いずれも患者自身が重要と考える活動事項において,主観的な機能評価を行う点であり,患者の主観性を重視した機能評価尺度として優れている。尺度から得られた結果は直接的に臨床的重要度を示しており,CRQ—D, MDRS はさまざまな介入の効果判定尺度として有用である可能性が示唆される。 呼吸困難の評価では患者自身による評価が重視されているが,自己評価が困難な 3 2.医療従事者による呼吸困難の評価
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状況では,第三者による代理評価が必要となる。その評価法を紹介する。Support Team Assessment Schedule(STAS)はホスピス・緩和ケアにおける評価尺度の一つである。主要項目として,「痛みのコントロール」「症状が患者に及ぼす影響」「患者の不安」「家族の不安」「患者の病状認識」「家族の病状認識」「患者と家族のコミュニケーション」「医療専門職間のコミュニケーション」「患者・家族に対する医療専門職とのコミュニケーション」の9 項目からなる5 段階のリッカート尺度である。本尺度は医師,看護師など医療専門職による「他者評価」という方法をとるため,患者に負担を与えることなく症状の評価ができるという利点がある。患者の主観的評価とは,ある程度の相関性が報告されており,また日本語版(STAS—J)の信頼性と妥当性が検証されている。STAS—J の項目2「症状が患者に及ぼす影響」は,さまざまな症状にあてはめることが可能であるため(図3),「呼吸困難」を含む22 の症状(その他を含め23 項II章背景知識 表1 使用が推奨されている呼吸困難の評価尺度 分 類尺度名妥当性の検証された疾患日本語版 の有無特 徴 量的尺度Visual Analogue Scale(VAS) COPD,喘息,人工呼吸器装着者 ―単領域の量的尺度で簡便で汎用性がある。同一対象内の経時的推移の測定に適する。異なる群間での比較には限界がある。Numerical Rating Scale(NRS) COPD,がん― 修正Borg スケールCOPD,喘息,拘束型肺疾患― 質的尺度Cancer Dyspnea Scale(CDS)がんありCDS は本邦で開発された多領域性,自己記入式調査票。簡便で妥当性と信頼性が検証済みで質的尺度として最適。英語版も検証済み。 機能評価尺度Chronic Respiratory Questionnaire— Dyspnea subscale (CRQ—D) COPD,間質性肺疾患,囊胞性線維症,α—アンチトリプシン欠損症,神経筋変性疾患 あり主観性を重視した機能評価尺度で,医療介入の効果の評価尺度として有用。CRQ—D は日本語版が開発されており,妥当性と信頼性が検証されている。使用には著作者の許諾が必要。Motor Neurone disease—Dyspnea Rating Scale(MDRS) 神経筋変性疾患なし 図3 STAS—J 項目2 の「症状が患者に及ぼす影響」の評価項目0=なし1= 時折の,または断続的な単一または複数の症状があるが,日常生活を普通に送っており,患者が今以上の治療を必要としない症状である。2= 中等度の症状。時に調子の悪い日もある。病状からみると,可能なはずの日常生活動作に支障をきたすことがある。3= たびたび強い症状がある。症状によって日常生活動作や物事への集中力に著しく支障をきたす。4= 持続的な耐えられない激しい症状。他のことを考えることができない。
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目)を評価するSTAS—J 症状版が本邦独自に開発されている。ただし,本調査票を用いた,医療従事者による呼吸困難評価の妥当性と信頼性は報告されておらず,今後に期待される。 Bausewein,Dorman らは尺度開発の今後に関し,これまでにも多くの呼吸困難評価尺度が開発されており,新たな尺度開発よりも,有用性が示唆されている既存の尺度を用いた信頼性と妥当性の検証に労力を注ぐべきと述べている。また,現時点で臨床研究や実臨床において評価を行う場合には,個々の尺度の特性を十分に理解し,評価の対象と目的に適した尺度の選択を行う必要があり,状況に応じて異なる種類の尺度を複数選択する方法も可能であるとも述べている。 (平 成人,下妻晃二郎,松田能宣,田中桂子) 【参考文献】1) Bausewein C, Farquhar M, Booth S, et al. Measurement of breathlessness in advanced disease: a systematic review. Respir Med 2007; 101: 399—410 2) Dorman S, Byrne A, Edwards A. Which measurement scales should we use to measure breathlessness in palliative care? A systematic review. Palliat Med 2007; 21: 177—91 3) Wilson RC, Jones PW. A comparison of the visual analogue scale and modified Borg scale for the measurement of dyspnoea during exercise. Clin Sci(Lond)1989; 76: 277—82 4) Gift AG. Validation of a vertical visual analogue scale as a measure of clinical dyspnea. Rehabil Nurs 1989; 14: 323—5 5) Wilcock A, Crosby V, Clarke D, Tattersfield A. Repeatability of breathlessness measurements in cancer patients. Thorax 1999; 54: 375 6) Borg GA. Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci Sports Exerc 1982; 14: 377—81 7) Borg G ed. Borg’s Perceived Exertion and Pain Scales. Champaign, Human Kinetics Publishers, 1998 8) Simon PM, Schwartzstein RM, Weiss JW, et al. Distinguishable types of dyspnea in patients with shortness of breath. Am Rev Respir Dis 1990; 142: 1009—14 9) Tanaka K, Akechi T, Okuyama T, et al. Development and validation of the Cancer Dyspnoea Scale: a multidimensional, brief, self—rating scale. Br J Cancer 2000; 82: 800—5 10) Uronis HE, Shelby RA, Currow DC, et al. Assessment of the psychometric properties of an English version of the cancer dyspnea scale in people with advanced lung cancer. J Pain Symptom Manage 2012; 44: 741—9 11) Guyatt GH, Berman LB, Townsend M, et al. A measure of quality of life for clinical trials in chronic lung disease. Thorax 1987; 42: 773—8 12) Guyatt GH, Townsend M, Keller J, et al. Measuring functional status in chronic lung disease: conclusions from a randomized control trial. Respir Med 1989; 83: 293—7 13) Jaeschke R, Singer J, Guyatt GH. Measurement of health status. Ascertaining the minimal clinically important difference. Control Clin Trials 1989; 10: 407—15 14) Hajiro T, Nishimura K, Tsukino M, et al. Comparison of discriminative properties among disease—specific questionnaires for measuring health—related quality of life in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med 1998; 157: 785—90 15) Dougan CF, Connell CO, Thornton E, Young CA. Development of a patient—specific dyspnoea questionnaire in motor neurone disease(MND): the MND dyspnoea rating scale(MDRS). J Neurol Sci 2000; 180: 86—93 16) Higginson IJ, McCarthy M. Validity of the support team assessment schedule: do staffs’ ratings reflect those made by patients or their families? Palliat Med 1993; 7: 219—28 17) Miyashita M, Matoba K, Sasahara T, et al. Reliability and Validity of the Japanese version of the Support Team Assessment Schedule(STAS—J). Palliat Support Care 2004; 2: 379—84 3.まとめ
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呼吸困難の原因は,呼吸器系疾患,循環器系疾患,神経筋疾患,精神疾患と多岐にわたる。呼吸困難の原因については別項を参照されたい(P23,II章—3 呼吸困難の原因参照)。呼吸困難の原因が何であるかを判断するために以下の身体所見を確認し,必要な検査を行う。 現病歴呼吸困難の発症の仕方を確認する。突然発症した呼吸困難は,気道閉塞,気胸,肺塞栓などを示唆する。通常,呼吸困難は徐々に出現する。呼吸困難の持続の仕方を確認する。間欠的に出現する時には,体位,日内変動などとの関連について尋ねる。例えば,臥位で増悪し起座呼吸となる呼吸困難は心不全を,明け方に増悪する呼吸困難は気管支喘息を示唆する。不安も呼吸困難と密接に関係しており,不安の強い患者は器質的疾患による呼吸困難とは異なった臨床像を示すことが多く,「深く息を吸うことができない」とか,「十分な空気を吸うことができずに息がつまってしまいそうだ」などと表現することもある。呼吸困難の訴え方にも注意を払う必要がある。どの程度の労作により息切れが出現するかを尋ねて,間接的に呼吸困難を評価する尺度として修正MRC スケールがある(表1)。従来広く用いられてきた(Fletcher—)Hugh—Jones 分類は国際的に通用しないため,使用されなくなっている。 既往歴・生活歴気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD),心不全の既往を確認する。また,職業歴(粉塵曝露の有無など),喫煙歴についても確認する。 身体所見と検査5 1.問 診1 II章背景知識 表1 修正MRC スケール質問票グレード 分類あてはまるものにチェックしてください(1 つだけ) 0 激しい運動をした時だけ息切れがある。 □ 1 平坦な道を早足で歩く,あるいは緩やかな上り坂を歩く時に息切れがある。 □ 2息切れがあるので,同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い,あるいは平坦な道を自分のペースで歩いている時,息切れのために立ち止まることがある。□ 3 平坦な道を約100 m,あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる。 □ 4 息切れがひどく家から出られない,あるいは衣服の着替えをする時にも息切 れがある。 □ 〔日本呼吸器学会COPD ガイドライン第4 版作成委員会 編.COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のため のガイドライン第4 版,メディカルレビュー社,2013; p33 より引用改変〕
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増悪因子・軽快因子どのようにすると呼吸困難が増悪するか,軽快するかを尋ねる。 Vital Signs呼吸困難患者を評価する際には,まずvital signs(体温,血圧,心拍数,呼吸数,酸素飽和度)を確認する。 視 診視診では,呼吸数と深さ,呼吸のリズムに注意する。正常時には呼吸は静かで整であり,呼吸数は1 分間に14~20 回である。通常,呼吸のリズムは規則的であるが,さまざまな状態の変化に応じて呼吸のリズムが変化する。代表的な呼吸のリズムの異常には,周期的な異常であるチェーン・ストークス呼吸,不規則な異常であるあえぎ呼吸(下顎呼吸),失調性呼吸〔Biot(ビオー)呼吸〕,奇異呼吸*1 などがある。チェーン・ストークス呼吸は中枢神経系の異常,心不全,尿毒症,オピオイド過量投与,各疾患の終末期などでみられることがある。不規則な異常呼吸は中枢神経系(特に橋や延髄レベル)の障害により生じる。奇異呼吸は,吸気時に腹部が陥没し,呼気時に突出する自然な呼吸とは逆のパターンとなる呼吸であり,呼吸筋*2疲労時や上気道閉塞で起こることがある(図1)。さらに呼吸不全の評価のために,チアノーゼの有無,胸鎖乳突筋や他の呼吸補助筋*3の収縮を観察する。右心不全の場合には,頸静脈の怒張や下肢の浮腫が認められることがある。 3 2.身体所見 1 2 *1:奇異呼吸1左右が対称的な動きでない2 胸部と腹部の動きが同調していない3 胸部の一部が他と逆の動きをする呼吸運動をいう。 *2:呼吸筋呼吸をする時に働く筋群。安静時吸気では主に横隔膜や肋間筋が収縮して胸郭が拡大し,安静時呼気は受動的に行われる。 *3:呼吸補助筋努力呼吸時や深呼吸では,主作動筋以外の呼吸筋も補助的に働く。主なものに胸鎖乳突筋,斜角筋,大胸筋,腹直筋がある。慢性呼吸不全患者で呼吸筋の機能が低下した場合などにも働く。図1 代表的な呼吸パターン 正 常遅い呼吸(緩徐呼吸) Cheyne-Stokes(チェーン・ストークス)呼吸失調性呼吸〔Biot(ビオー)呼吸〕 吸気呼気 深呼吸無呼吸 〔Bickely LS. ベイツ診察法 第2 版(日本語版監修 福井次矢,他),メディカル・サイエンス・インターナショナル,2015; p141 より引用,一部改変〕
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触 診胸水貯留や気胸の場合には,声音震盪の低下がみられることがある。胸壁腫瘍がある場合には異常な隆起として触れることがある。 打 診胸水や腫瘍などにより,正常では空気を含んでいる肺や胸膜腔の含気が低下すると,打診にて濁音となる。また気胸の場合には,正常音よりも打診音が大きくなる(過共鳴音)。 聴 診胸部の聴診では,正常呼吸音の聴取範囲と副雑音に注意する。Stridor は吸気時のハイピッチの連続性の副雑音で,これが聴取される時には上気道の閉塞の可能性を考える。Wheeze は口笛様の連続性副雑音で,喘息,COPD など下気道の狭窄や心不全などの時に聴取される。肺炎や心不全では,「ボコボコ」と表現される断続的な粗い破裂様の副雑音であるcoarse crackle(水泡音)が聴取されることがある。 動脈血ガス分析/経皮的酸素飽和度動脈血ガス分析を行うことで,呼吸不全の有無を評価する。患者の状況,病状により動脈血ガス分析を行わない場合には,パルスオキシメーターを用い経皮的酸素飽和度を測定することで酸素分圧を推定することができる。酸素飽和度と酸素分圧には相関がみられ,その関係を示したものがヘモグロビン酸素解離曲線である(図2)。この曲線は,体温の上昇,pH 低下,PCO2の増加,2,3—diphosphoglycerate(2,3— 4 5 3.検査所見1 II章背景知識 pH 7.40, PaCO2=40 Torr,体温37°C,Hb 15g/dL の条件による。〔日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドラインII,メディカルレビュー社,2006; p34 より引用〕 図2 ヘモグロビン酸素解離曲線 (%) 100 90 80 70 60 50 SO2 40 30 20 10 00 10 20 30 40 50 PO2 60 70 80 90 100(Torr)
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DPG)濃度の増加で右に移動し,逆に,体温の低下,pH 上昇,PCO2の低下,2,3— DPG 濃度の低下で左に移動する。このように,酸素飽和度と酸素分圧の関係はさまざまな因子により変動するため,SpO2から予測するPaO2はあくまでも参考であることを認識しておく必要があるが,SpO2が90%の時にPaO2は概ね60 Torr となるため,SpO2が90%未満であれば呼吸不全の存在を念頭に置く必要がある。 血液検査貧血は呼吸困難の原因となるので,貧血の有無について確認する。肺炎などによる呼吸困難では,炎症反応の評価としての赤沈やCRP,白血球数(好中球数)の増加の有無について確認する。心不全では,BNP(brain natriuremic peptide;脳性ナトリウム利尿ペプチド)が上昇し,その程度により重症度の判定も可能である。 画像検査呼吸困難の原因を鑑別するために胸部単純X 線検査を行う。肺野の主な異常所見としては,肺炎などの肺実質性陰影でみられるコンソリデーション(consolidation),エア・ブロンコグラム(air bronchogram sign)や間質性陰影で見られるカーリー線(Kerley’s line),蜂巣肺を確認する。胸部単純X 線では肺野の評価だけでなく,心拡大,胸水貯留,気胸の有無についても確認する。また,気管透亮像を注意深く追い,気管狭窄が認められないかも評価する。横隔膜の挙上は肝腫大,肺の虚脱,肥満の可能性がある。横隔神経麻痺がある場合には,横隔膜の位置異常が認められる。胸壁腫瘍がある場合には,胸膜外徴候(extrapleural sign)がみられる。胸部CT 検査は,単純X 線検査では描出できない病変の検出に役立つため,必要に応じて施行する。特に,少量の胸水や心陰影と重なる部分の肺野所見,胸壁の腫瘍の描出はCT 検査が有用となる。細かな間質性陰影の描出はHRCT(high resolution CT)が有効である。がん性リンパ管症では,典型的にはCT にて胸膜直下の結節影,気管支血管束の肥厚,小葉間隔壁の肥厚などがみられる。肺塞栓では,胸部単純X 線検査では肺血管影の狭小化がみられることもあるが,確定診断は困難なので,疑わしい場合には造影CT 検査(可能であればマルチスライスCT が望ましい)で肺動脈内の血栓の有無を評価する。超音波検査は,肺実質の評価には適さないが,胸水,心囊水貯留の有無,気胸の有無,心機能の評価を行うことができる。 (山本 亮,茅根義和,合屋 将,山口 崇) 【参考文献】1) 日本臨床検査医学会 編.臨床検査のガイドライン2005/2006―症候編・疾患編・検査編, 2005; pp24—8 2) Bickley LS.ベイツ診察法(Bates’ Guide to Physical Examination and History Taking, 9th ed),福井次矢,井部俊子 日本語版監修,東京,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2008; pp241—77 3) ハリソン内科学,福井次矢,黒川 清 日本語版監修,東京,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2006; pp207—9 4) 上田秀雄,他 編.内科学,第5 版,東京,朝倉書店,1991; pp140—4 2 3
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5) マクギーの身体診断学(Evidence—Based Physical Diagnosis),柴田寿彦 監訳,東京,エルゼビア・ジャパン,2004; pp190—223 6) 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドライン―スパイロメトリー,フローボリューム曲線,肺拡散能力,メディカルレビュー社,2004; pp2—23 7) 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドラインII―血液ガス,パルスオキシメータ,メディカルレビュー社,2006 8) 肺機能検査―呼吸生理から臨床応用まで,福地義之助 監訳,東京,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2001; pp3—24 9) 日本呼吸器学会酸素療法ガイドライン作成委員会 編.日本呼吸器学会酸素療法ガイドライン,メディカルレビュー社,2006; pp72—81 10) 肺機能検査―呼吸生理から臨床応用まで,福地義之助 監訳,東京,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2001; pp71—89 11) スパイロメトリーと肺気量.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.臨床呼吸機能検査,第7版,メディカルレビュー社,2008; pp9—23 12) 努力呼出曲線,フロー・ボリューム曲線,ピークフロー.日本呼吸器学会肺生理専門委員会編.臨床呼吸機能検査,第7 版,メディカルレビュー社,2008; pp24—33 13) 血液ガス.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.臨床呼吸機能検査,第7 版,メディカルレビュー社,2008; pp97—106 14) パルスオキシメータと臨床応用.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.臨床呼吸機能検査,第7 版,メディカルレビュー社,2008; pp107—11 15) 主要な異常所見の読影.日本医師会 編,片山 仁,大澤 忠,大場 覚 監,胸部X 線写真の ABC,東京,医学書院,1990; pp115—228 II章背景知識
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定 義非侵襲的陽圧換気(non—invasive positive pressure ventilation;NPPV)とは,気管内挿管や気管切開をせずに,鼻マスク,口鼻マスクなどの非侵襲的なインターフェイスをヘッドギアやホルダーで顔面に固定し,換気を補助する人工呼吸である。非侵襲的換気(non—invasive ventilation;NIV)と表記される場合もある。非侵襲的陽圧換気(NPPV)に用いられるデバイスは,人工呼吸器(必要に応じて加湿器)とインターフェイス(鼻マスク,鼻プラグ,口鼻マスク,顔マスク,口マスク,マウスピース)より構成される(図1)。 メリットとデメリット侵襲的人工呼吸(気管内挿管下に行う人工呼吸)と比較した場合,非侵襲的陽圧換気(NPPV)では気管内挿管が不要なため,それに伴う苦痛やリスクを回避することができ,また,必ずしも鎮静薬を必要としないため,家族との意思疎通が可能であることがメリットである。また,病状が許せば,患者の希望に応じて脱着が可能である。一方で,マスクおよび陽圧換気によって圧迫感が強くなり,かえって呼吸困難が増強する場合もあり,非侵襲的陽圧換気(NPPV)使用に耐えられない症例がある。また,侵襲的人工呼吸と同様に気道に陽圧がかかるため気胸を起こすリスク,胸腔内圧上昇による低血圧のリスク,胃膨満から嘔吐し誤嚥性肺炎の引き金となるなど 酸素療法6 1.非侵襲的陽圧換気(NPPV) 1 2 図1 非侵襲的陽圧換気(NPPV)の仕組み 人工呼吸器インターフェイス
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のリスクもある。 一般的な適応慢性閉塞性肺疾患(COPD)急性増悪,心原性肺水腫,免疫不全患者の急性呼吸不全,拘束性換気障害(肺結核後遺症,脊椎後側彎症など),神経筋疾患などの疾患に適応される。また,侵襲的人工呼吸離脱時の離脱支援に用いられることもある。慢性呼吸不全の場合,換気不全から高CO2 血症を呈し,頭痛,傾眠,呼吸困難などの症状が出現した患者に対して,換気量を増加させる目的で導入する。また気管内挿管を希望しない呼吸不全患者において,侵襲的人工呼吸の代用や治療の上限として使用される場合も増えている。一方で,非侵襲的陽圧換気(NPPV)継続に対して協力が得られない症例,喀痰排出困難例,誤嚥例,ドレナージされていない気胸例では一般的に適応とはならない。 (松田能宣,合屋 将) 【参考文献】1) 日本呼吸器学会NPPV ガイドライン(改訂第2 版)作成委員会.日本呼吸器学会NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン(改訂第2 版).日呼吸会誌2015; 4: 262—71 2) 立川良,陳和夫.非侵襲的陽圧換気(NPPV)に関する最新の知見.日呼吸会誌2014; 3: 748— 57 定 義 高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula oxygen;HFNC)とは,加温・加湿した一定濃度の酸素を高流量で経鼻的に投与する新しい酸素療法である。nasal high flow therapy,high flow therapy などとも呼ばれ,名称はいまだに統一されていない。高い吸入酸素濃度(FiO2)を確実に維持するには,高流量酸素が必要である。なぜなら,低流量だと室内気も引き込んで吸入するため,酸素濃度が薄まってしまうとともに,吸気努力の大きさにより酸素と室内気の混合比率が変わって一定しないからである。しかしながら,鼻腔の刺激と乾燥のため,通常の経鼻酸素投与では6 L/分の流量が限界であった。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は,酸素を加温・加湿することでこの問題を解決し,高流量(最大60 L/分)の経鼻投与を可能にした。その結果,これまでリザーバー付きマスクでも達成できなかった90%を超える高いFiO2の維持が可能となった。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)に用いるデバイスは,酸素調節装置(酸素ブレンダー・ガス流量計またはベンチュリー装置),ヒーターワイヤー付きの人工呼吸器用加温加湿器,専用鼻カニュラの3 つにより構成される(図2)。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の特徴を表1に示す。 メリットとデメリット生理学的なメリットを表1に示す。緩和ケアの観点からは,高濃度酸素を吸入し 3 2.高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC) 1 II章背景知識
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ながらも会話や食事が可能となり,生活の質(QOL)が維持できることが大きなメリットといえる。一方,大量の酸素,機器本体,ディスポーザブル部分の費用は問題となる。これらが補償されるような診療報酬の改定が望まれる。また作動音が大きい(特に酸素調節装置としてベンチュリー装置を使用した場合)ことも問題であったが,その点を改良した新しい機種も開発されている。 一般的な適応適応となる疾患・病態を表2 にまとめた。本療法は換気を補助するわけではないので,高CO2血症の改善は期待すべきではない。 表1 高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の特徴とメリット特徴利点コンパクトで締め付けの少ない鼻カニュラ快適さが増す十分な加温・加湿快適さが増す・気道粘液の水分量の増加・排痰が容易になる・気道の乾燥と上皮損傷を防ぐ・吸入した冷たい空気を体内で加温・加湿 するための代謝コストの削減・呼吸仕事量の軽減高流量酸素室内気の引き込みが減り,正確な吸入酸素濃度(FiO2)を維持できる解剖学的死腔のCO2の洗い出し換気効率の改善肺胞への酸素供給の改善呼気終末陽圧(PEEP) auto—PEEP*を相殺呼吸仕事量の軽減 〔SpoletiniG,etal.Chest2015; 148: 253—61 より引用改変〕 図2 高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の仕組み 鼻カニュラ酸素ブレンダー 加温加湿器 *:auto‒PEEP内因性PEEP ともいう。気道抵抗が高くなっている病態(肺気腫・気管支喘息・気管分泌貯留など)では気道内圧が高くなる。
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(合屋 将,松田能宣) 【参考文献】1) 宮本顕二.高流量鼻カニュラ酸素療法.日呼吸会誌2014; 3: 771—6 2) Spoletini G, Alotaibi M, Blasi F, et al. Heated humidified high—flow nasal oxygen in adults: mechanisms of action and clinical implications. Chest 2015; 148: 253—61 II章背景知識 表2 適応となる疾患・病態低酸素血症患者の検査時(気管支鏡,消化管内視鏡,経食道エコーなど)呼吸不全急性呼吸促迫症候群(ARDS)肺 炎肺線維症うっ血性心不全術後の呼吸管理抜管または非侵襲的陽圧換気(NPPV)後の呼吸管理挿管を希望しない患者 〔Spoletini G, et al. Chest 2015; 148: 253—61 より引用改変〕
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定 義がん性リンパ管症は,がんの転移様式の一つであり,肺内のリンパ管系にがん細胞が浸潤,リンパ管塞栓を来す病態である。 疫学・頻度・影響合併頻度が高い原発巣は,肺,乳腺,消化管,前立腺などであるが,発生頻度に関する正確な報告はない。呼吸困難,咳嗽,胸痛,喀血など非特異的な症状を呈し,呼吸不全を来すこともある。がん性リンパ管症の合併は予後不良を示唆し,発症後数カ月以内で死亡することが多い。 原因・分類・病態生理がん細胞のリンパ管への進展様式は,血行性に肺転移したがん細胞が血管に近接するリンパ管に直接浸潤する「血行進展」,縦隔・肺門リンパ節転移巣から逆行性にリンパ管内に進展する「逆行性リンパ行性進展」,胸膜・胸膜下結合組織への転移巣から順行性にリンパ管に進展する「順行性リンパ行性進展」が考えられている。がん細胞のリンパ管への進展により,肺内のリンパ流が阻害され一種の肺水腫を来し,症状を引き起こす。両側性に分布する場合も,原発性肺がんに伴い局所性に認められる場合もある。 評 価身体所見では,頻脈,頻呼吸,酸素飽和度の低下や異常な呼吸音からがん性リンパ管症の重症度や範囲を評価する。胸部単純X 線では,典型的にはびまん性の線状,微細粒状(<3 mm),網状粒状の浸潤影を呈する。肺門部リンパ節腫大や1 cm に及ぶ大きめの結節浸潤影を認めることもある。胸部CT では,小葉間隔壁や気管支肺動脈束・胸膜下の間質の結節性肥厚が特徴的な所見で,小結節がみられることがある。 【参考文献】1) Storck K, Crispens M, Brader K. Squamous cell carcinoma of the cervix presenting as lymphangitic carcinomatosis: a case report and review of the literature. Gynecol Oncol 2004; 94: 825—8 2) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic dis- ease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University 呼吸困難以外の呼吸器症状7 1.がん性リンパ管症1 2 3 4
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Press, 2010; pp1124—5 定 義上大静脈症候群とは,何らかの原因により上大静脈が閉塞され,頭部・上肢・胸郭から右心房への静脈還流が妨げられる病態である。 疫学・頻度・影響上大静脈症候群の合併は,小細胞性肺がん診断時の約10%,非小細胞肺がん診断時の1.7%にみられると報告されている。肺がん以外では,乳がんや悪性リンパ腫などで合併することがある。上大静脈症候群はオンコロジーエマージェンシー*1の一つとされているが,亜急性の経過をたどることが多く,上大静脈症候群自体により致死的になることはほとんどない。しかし,静脈還流の障害に伴い,気道気管の浮腫による狭窄や脳浮腫を伴う場合は致死的になりえる。上大静脈症候群合併例における生命予後は,原疾患により異なる。肺がん例では,合併後数カ月以内の予後であることが多いが,乳がんや悪性リンパ腫では予後はより長いことが多い。 原因・分類・病態生理がん患者における上大静脈症候群の大部分は,腫瘍による外部からの上大静脈圧迫が原因である。原疾患としては多い順に,非小細胞性肺がん(50%),小細胞性肺がん(22%),悪性リンパ腫(12%),転移性がん〔9%(乳がんが多い)〕が挙げられる。一方,非がん性の原因には,血栓症や血管内カテーテル留置が含まれる。上大静脈の閉塞により静脈還流が妨げられると,静脈圧の亢進によりさまざまな部位に浮腫が生じる。咽頭や喉頭,下気道の浮腫が生じた結果,咳嗽,嗄声,呼吸困難,吸気時の喘鳴(stridor *2),嚥下困難などが生じる。また,顔面や上肢にも浮腫が生じる。稀に脳浮腫を来し,頭痛,錯乱,昏睡を呈することもある。長期間の上大静脈閉塞の結果,側副血行路が発達すると,自然に症状が軽快する場合もある。 評 価病歴では,症状の重症度や経過の速度,血管内カテーテルの有無などを聴取する。身体所見では,頭頸部や上肢の浮腫,頸静脈や胸壁静脈の怒張,顔面や上半身の紅潮やチアノーゼなどを評価する。胸部単純X 線では,上縦隔の拡張とそれに伴う肺病変の有無を評価する。上大静脈症候群の患者の約2/3 に胸水がみられる。最も有用な画像検査は胸部造影CT である。CT では,上大静脈の閉塞部位や程度,閉塞の原因となる腫瘍や縦隔リンパ節,血栓症の有無や程度,側副血行路の形成の評価も可能である。 マネジメント上大静脈症候群に対する治療としては,まずは原因である腫瘍病変自体に対する 2.上大静脈症候群1 2 *1:オンコロジーエマージェンシー腫瘍学的緊急症。がんに起因する病態のうち,緊急な対応を要するものの総称。 3 *2:stridor吸気時のハイピッチの連続性の副雑音で,これが聴取される時には上気道の閉塞の可能性を考える。 4 II章背景知識
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化学療法・放射線治療の適応を検討する。また,病変の状況・全身状態・予測される予後などをふまえ,施行可能な施設においては上大静脈ステント留置も治療選択肢になる場合がある。対症療法の薬物療法としては,コルチコステロイドが投与される場合がある。 【参考文献】1) Rowell NP, Gleeson FV. Steroids, radiotherapy, chemotherapy and stents for superior vena caval obstruction in carcinoma of the bronchus. Cochrane Database Syst Rev 2001(4): CD001316 2) Wilson LD, Detterbeck FC, Yahalom J. Superior vena cava syndrome with malignant causes. N Engl J Med 2007; 356: 1862—9 3) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic disease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1121—2 4) Sanz Á, Centeno C. Part 14. Emergencies in palliative medicine. 85. Clinical features and man- agement of superior vena cava syndrome. Bruera E, Higginson I, von Gunten CF, et al eds. Textbook of Palliative Medicine and Supportive Care, 2nd ed, Boca Raton, CRC Press, 2015; pp863—8 定 義主要気道閉塞(major airway obstruction;MAO)は,咽頭~喉頭の上気道および気管~主気管支~葉気管支レベルの気道に狭窄を来す病態である。 疫学・頻度・影響上気道から下気道全体を含む気道狭窄は肺がん患者の20~30%にみられると報告されているが,がん患者全体での頻度は不明である。 原因・分類・病態生理進行期がんにおける主要気道閉塞(MAO)の主な原因には,気道内の腫瘍による狭窄や腫瘍による外部からの圧排がある。原疾患としては肺がんが最も多い。臨床症状は非特異的であり,狭窄の程度,部位,経過の速さにより異なる。頻度の高い症状としては,呼吸困難,咳嗽,喀痰,喀血が挙げられる。Stridor や呼吸促迫を伴う場合は上気道や気管の閉塞による窒息の可能性があるため,迅速な評価と治療的介入が必要である。一方,亜急性の経過をたどる下気道閉塞の場合は,気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)と誤診され,適切な治療が遅れることがある。 評 価主要気道閉塞(MAO)は,喀痰貯留,気道ステントの閉塞など,可逆的な原因に由来することもあり得るため,迅速な評価が要求される。身体所見では,まず酸素飽和度が十分か,気道が確保されているかを評価する。同時に,頻脈,頻呼吸,奇異呼吸,stridor などから緊急度と重症度を評価する。胸部単純X 線上,気管偏移や縦隔偏移を示す場合もあるが,症状や所見を説明す 3.主要気道閉塞(MAO) 1 2 3 4
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る肺野病変を示す所見が乏しいこともある。胸部CT では,気管や気管支内の病変,異物の有無を評価する。可逆的な病態が考えられ,患者の全身状態がある程度良好な場合,診断・治療目的に緊急気管支鏡検査を検討することもある。主要気道閉塞(MAO)と間違えられやすい気管支喘息,COPD,肺炎などの疾患の可能性を除外する。逆に喘鳴に対して気管支拡張薬の反応が乏しい場合,主要気道閉塞(MAO)の可能性が高くなる。 マネジメント気管および主気管支レベルの主要気道閉塞(MAO)に対する治療としては,気道ステント留置が行われる場合がある。ただし,気道ステント留置の適応に関しては,全身状態・予測される予後,病変部の位置などについて専門家(呼吸器内科医など)との十分な相談が必要である。また,原因腫瘍病変に対する化学療法や放射線治療の適応を検討する。対症療法の薬物療法としては,コルチコステロイドが投与される場合がある。 (森 雅紀,山口 崇) 【参考文献】1) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic dis- ease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1122—3 定 義悪性胸水とは,胸膜播種や腫瘍の転移・浸潤など,がんが原因となって胸腔内に貯留した液体をいう。 疫学・頻度悪性胸水は,進行がん患者の15%以上に生じ,診断からの生存期間中央値は3~ 12 カ月とされ,がんの種類や進行度によって異なる。がんの原発部位は,男性では肺がんが,女性では乳がんが最も多く,肺がんと乳がんで全体の50~65%を占める。リンパ腫,生殖・泌尿器がん,消化器がんなどでも合併する。 原因・病態生理胸腔には,健常者においても10~20 mL の胸水が存在する。これは,全身循環から由来した液体が壁側胸膜から産生され胸腔に入り,壁側胸膜のリンパ網で再吸収される過程で生じる。悪性胸水は,胸水の「産生過剰」と「吸収減少」により生じる。産生過剰の要因としては,腫瘍細胞の浸潤による毛細血管新生や炎症による血管透過性の亢進など 5 4.悪性胸水1 2 3 II章背景知識
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が挙げられる。吸収減少の要因は,壁側胸膜へのがんの浸潤による胸膜のリンパ系の破壊や縦隔リンパ節転移に伴うリンパ流の障害などが挙げられる。悪性腫瘍に伴う胸水には,悪性胸水のほかに,腫瘍による閉塞性肺炎,無気肺,肺塞栓,上大静脈症候群,低蛋白血症などが原因となる場合がある。 評 価1 )身体所見胸水貯留により,打診で濁音を認め,聴診で呼吸音の減弱や消失を認める。 2 )画像所見胸部単純X 線立位像では,200 mL 以上の胸水が検出可能とされている。側臥位での撮影では50 mL 程度でも検出可能である。単純CT では,より少量の胸水の存在を診断することが可能である。超音波検査では,ごく少量の胸水の検出が可能であり,胸腔穿刺や胸腔内カテーテル留置の手技の際に有用である。 3 )診断のための胸水検査悪性胸水の診断には,細胞学的診断,もしくは胸膜生検による組織診断が必要である。悪性胸水の胸水細胞診による診断率は62~90%とされている。診断目的で繰り返し胸腔穿刺する場合,2 回行うことでの診断率は70~80%であり,3 回以上検査を繰り返しても診断率は向上しない。 マネジメント悪性胸水の治療は症状緩和が主体であり,予後の改善にはつながらないことが多い。したがって,悪性胸水と診断されても無症状であれば経過観察とすることもある。全身状態や治療のゴールを総合的に判断して,治療法を選択する必要がある。 1 )胸腔穿刺による排液(胸腔穿刺ドレナージ)細径カニューレを用いた胸腔穿刺により,胸水の排液を行う。比較的簡便な手技であり,胸水の減量により呼吸困難の速やかな改善が期待できる。合併症として,気胸や実質臓器損傷があるが,超音波検査を併用することで,リスクを下げることができる。また,短時間に大量の胸水排液を行うと,再膨張性肺水腫を生じる危険性があるため,1 回に1,000~1,500 mL 以上排液することを避ける必要がある。 2 )胸腔留置カテーテルによる持続排液継続して胸水をドレナージするために,小口径カテーテルを胸腔内に長期間留置し,繰り返しの穿刺による苦痛や負担を軽減する方法である。合併症として,胸壁・胸腔内感染,カテーテル閉塞,カテーテル挿入路への腫瘍進展,などが報告されている。また,長期留置に伴う,患者の身体的制限や心理的な負担もある。 4 5
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3 )胸膜癒着術胸膜腔に癒着剤を用いて炎症を起こして,胸膜の線維化や腔の閉鎖を図る治療法である。胸腔チューブを挿入し,肺が完全に膨張した後に胸腔内に癒着剤を投与して,胸膜癒着を図る。癒着剤としては,再発率の低さ,有害事象の少なさ,対費用効果などの点でタルクの有用性が示されている。これまで,本邦ではOK—432 が用いられることが多かったが,エビデンスレベルの高い臨床研究は存在しない。ほかの癒着剤として,抗がん剤(ブレオマイシン,シスプラチン,ドキソルビシン,マイトマイシンC など),抗菌薬(ミノサイクリン,テトラサイクリンなど)がある。頻度の高い有害事象として,癒着術後の胸痛と発熱,消化器症状がある。重篤な有害事象としては,呼吸不全,膿胸,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)が報告されている。 (中村陽一,山口 崇) 【参考文献】1) American Thoracic Society. Management of malignant pleural effusions. Am J Respir Crit Care Med 2000; 162: 1987—2001 2) Roberts ME, Neville E, Berrisford RG, et al. Management of a malignant pleural effusion: British Thoracic Society Pleural Disease Guideline 2010. Thorax 2010; 65(Suppl 2): ii32—40 3) Sallach SM, Sallach JA, Vasquez E, et al. Volume of pleural fluid required for diagnosis of pleural malignancy. Chest 2002; 122: 1913—7 4) Tan C, Sedrakyan A, Browne J, et al. The evidence on the effectiveness of management for malignant pleural effusion: a systematic review. Eur J Cardiothorac Surg 2006; 29: 829—38 5) Shaw P, Agarwal R. Pleurodesis for malignant pleural effusions. Cochrane Database Syst Rev 2004(1): CD002916 定 義咳嗽とは,短い吸気に引き続いて,声門が部分的に閉鎖し,胸腔内圧が上昇して,強制的な呼気とともに気道内容が押し出される状態を指す。気道内の痰や異物を喀出するための重要な生態防御機能である。 疫学・頻度・影響咳嗽は,がん患者の治療開始時に42.9%で認め,肺がん患者では診断時に65%以上で認めると報告されている。持続的な咳嗽は,食欲不振,頭痛,嘔吐,失神,めまい,発汗,疲労,肋骨骨折,尿失禁などを起こし,患者の生活の質(QOL)を低下させる。さらに,夜間の咳嗽は,患者の不眠のみならず,同居する家族にも耐えがたい苦痛をもたらす。また,電話での通話困難,困惑,気まずさ,社会的孤立などを生じ,心理・社会的な影響も及ぼす。 5.咳 嗽1 2 II章背景知識
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原因・分類・病態生理1 )原 因慢性咳嗽の93%は複数の原因が関与しており,がんに関連する咳嗽も同様に複数の原因が関係している(表1)。がんと関連した咳嗽の原因には,気管・気管支の腫瘍病変,肺実質への浸潤,がん性胸膜炎や悪性胸膜中皮腫などの胸膜病変,がん性心膜炎,縦隔病変,がん性リンパ管症などがある。また,腫瘍と関連する,気道閉塞,誤嚥,気管食道瘻,肺炎などによる炎症や機械的刺激も咳嗽を起こす。さらに,薬剤性肺障害・放射線肺臓炎により呼吸困難を伴う咳嗽が出現することもある。がん患者においても,がんと直接関連しない咳嗽を合併する場合がある。慢性咳嗽の主な原因としては,背景にある既往の肺疾患(慢性気管支炎,気管支拡張症など),アンジオテンシン変換酵素阻害薬,咳喘息,後鼻漏症候群*,胃食道逆流症などがあげられる。 2 )分 類咳嗽は性状により,「湿性咳嗽」と「乾性咳嗽」に分類することが重要である。前者は咳嗽や気道内分泌を排出するいわゆる生理的な咳嗽であるが,後者は痰を伴わず,気道内や胸膜の刺激による病的な咳嗽である。 3 )病態生理咳嗽は,吸気相,圧縮相,呼気相の3 相に分けられる。まず,「吸気相」では,吸気をしながら呼吸筋が伸展される。この結果,胸腔内圧が高まり,呼出時の圧力を形成する。次に「圧縮相」では声門が0.2 秒ほど閉鎖し,胸腔内の容積が維持され,胸腔内圧が300 mmHg まで上昇する。最後の「呼気相」では声門が開放され,末梢肺実質と中枢気道から排出されるガスは0.03~0.05 秒という短時間に12 L/秒の速さに達し,一気に呼出される。その後,3~4 L/秒の速さで0.2~0.5 秒かけてゆっくりとガスが排出される気道,胸膜,外耳道,咽頭,喉頭,胃,心臓,食道などからの求心性刺激は,主に迷走神経を経由して,咳中枢である脳幹の孤束核に達する。咳中枢から遠心性に 3 *:後鼻漏症候群副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎,アレルギー性副鼻腔炎,慢性鼻炎,慢性鼻咽頭炎が原因となりうる。8 週間以上持続する,特に夜間に多い湿性咳嗽が特徴である。表1 がん患者における咳嗽の主な原因 がんとは直接関連しない原因がんと直接関連する原因心不全気管支喘息・咳喘息慢性気管支炎気管支拡張症後鼻漏症候群胃食道逆流症感染後咳嗽アンジオテンシン変換酵素阻害薬などの薬剤性好酸球性肺炎気管・気管支の腫瘍肺実質への浸潤胸膜病変(がん性胸膜炎,悪性胸膜中皮腫)がん性心膜炎縦隔病変がん性リンパ管症誤嚥(頭頸部腫瘍,気管食道瘻,声帯麻痺)放射線治療後の肺線維化化学療法による肺線維化肺 炎微小血栓〔Chan KS, et al. Dyspnoea and other respiratory symptoms in palliative care. Oxford Textbook of Palliative Medicine 5th ed, Oxford University Press, 2015; pp429—34 より引用改変〕
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下咽頭神経,迷走神経,肋間筋,横隔膜,気管支平滑筋に作用して咳嗽が発生する。上位中枢からの神経興奮は随意的に咳嗽を起こさせたり,随意的に抑制させたりすることができる。 評 価咳嗽の原因の同定には,病歴,身体所見,胸部単純X 線が重要である。咳受容体の求心路の解剖学に従って系統的に診療することは有用である。病歴聴取の際に,咳嗽の頻度,強さ,増悪要因,喀痰の有無,日常活動への影響などの評価が必要である。また,原因や病変の同定のために,患者の全身状態と予後を考慮したうえで必要に応じて喀痰培養,胸部CT,気管支鏡などの検査の施行を検討する。咳嗽に関する評価尺度として開発されたものを表2 に示す。 (坂下明大,山口 崇) 【参考文献】1) McCool FD. Global physiology and pathophysiology of cough: ACCP evidence—based clinical practice guidelines. Chest 2006; 129(1 Suppl): 48S—53S 2) Kvale PA. Chronic cough due to lung tumors: ACCP evidence—based clinical practice guidelines. Chest 2006; 129(1 Suppl): 147S—153S 3) Molassiotis A, Bailey C, Caress A, et al. Interventions for cough in cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2010(9): CD007881 4) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK. Section 8. Common symptoms and disorders. 8.2 Dyspnoea and other respiratory symptoms in palliative care. Cherny NI, Fallon MT, Kaasa S, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine 5th ed, New York, Oxford University Press, 2015; pp429—34 定 義死前喘鳴とは,死期が迫った患者において聞かれる,呼吸に伴う不快な音と定義される。 疫学・頻度・影響終末期がん患者の23~92%に死前喘鳴が認められる。肺腫瘍や脳腫瘍で合併が多 4 6.死前喘鳴1 II章背景知識 表2 咳嗽に関する評価尺度 評価尺度項目 Cough Specific Quality of Life Questionnaire 28 の質問項目と6 つのドメイン(身体的訴え,強い身体的訴え,精神・社会的問題,感情の安定,自身の安全に対する不安,機能障害)から構成されるLeicester Cough Questionnaire 19 の質問項目と3 つのドメイン(身体面,精神面,社会面)から構成されるChronic Cough Impact Questionnaire 21 の質問項目と4 つのドメイン(睡眠/集中,人間関係への影響,日常生活への影響,感情面)から構成される
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く,また終末期の輸液量とも関連していることが報告されている。死前喘鳴は患者の死亡16~58 時間前から出現し,意識混濁や下顎呼吸,四肢チアノーゼ,橈骨動脈触知不可と並んで,死期が迫っていることを示す5 つの徴候のうちの一つとされている。死前喘鳴は多くの場合,患者本人にとって苦痛を感じるものではないと考えられているが,付き添いの家族にとっては「本人が苦しがっているのでは」といった不安につながることも多い。 原因・分類・病態生理死前喘鳴は2 つのタイプに分類される。1 つは,死期が迫り意識レベル低下に伴う嚥下反射の抑制により唾液分泌物が咽頭部に蓄積する「1 型死前喘鳴(真性死前喘鳴)」,もう1 つは感染症や腫瘍,体液貯留,誤嚥などによって産生された気道分泌物が,衰弱により有効に喀出されないために気道内に蓄積することで生じる「2型死前喘鳴(偽性死前喘鳴)」である。2 型死前喘鳴では,患者の意識は清明もしくは軽度の低下にとどまることも多く,必ずしも死期が迫っていることを意味しない。狭義の死前喘鳴は,1 型死前喘鳴のことを指す。 評 価まず,喘鳴が1 型死前喘鳴か2 型死前喘鳴かを,身体所見や臨床状況などから推定することが大切である。状況によっては,どちらか明確に鑑別することが困難な場合もあるが,可逆的かどうかを評価し,考えうる原因への治療およびケア(輸液量の調整,口腔ケアなど)を行っていくことが求められる。喘鳴の程度の評価については,Back らの4 段階評価〔0=音が聞こえない,1=患者に近づくと聞こえる,2=静かな部屋でベッドサイドに立つ状態で聞こえる,3=静かな部屋で患者から20 フィート(およそ部屋のドアのあたり)の距離で聞こえる〕が用いられることが多い。 対 応付き添いの家族の苦痛や不安が強いと評価される場合には,家族に対して死前喘鳴の原因(気道への分泌物の貯留が原因で,空気が通るたびに音が出ているものであること,窒息するようなものではないこと),死前喘鳴の意味(亡くなる前にみられる現象で,本人は苦痛を感じていないと推測されること)を十分に説明するとともに,死前喘鳴に対する心配などについて共感的態度で対応することが重要である。 (西 智弘,山口 崇) 【参考文献】1) Bennett MI. Death rattle: an audit of hyoscine(scopolamine)use and review of management. J Pain Symptom Manage 1996; 12: 229—33 2) Bennett M, Lucas V, Brennan M, et al. Using anti—muscarinic drugs in the management of death rattle: evidence—based guidelines for palliative care. Palliat Med 2002; 16: 369—74 3) Wee B, Hillier R. Interventions for noisy breathing in patients near to death. Cochrane Database Syst Rev 2008(1): CD005177 4) Morita T, Tsunoda J, Inoue S, et al. Risk factors for death rattle in terminally ill cancer patients: a prospective exploratory study. Palliat Med 2000; 14: 19—23 3 4 5
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5) Morita T, Hyodo I, Yoshimi T, et al. Incidence and underlying etiologies of bronchial secretion in terminally ill cancer patients: a multicenter, prospective, observational study. J Pain Symptom Manage 2004; 27: 533—9 6) Morita T, Ichiki T, Tsunoda J, et al. A prospective study on the dying process in terminally ill cancer patients. Am J Hosp Palliat Care 1998; 15: 217—22 7) Back IN, Jenkins K, Blower A, et al. A study comparing hyoscine hydrobromide and glycopyrrolate in the treatment of death rattle. Palliat Med 2001; 15: 329—36 8) Wee BL, Coleman PG, Hillier R, et al. The sound of death rattleII: how do relatives interpret the sound? Palliat Med 2006; 20: 177—81 II章背景知識
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モルヒネモルヒネは,中枢および末梢のオピオイド受容体を介して強力な鎮痛作用を示すのみならず,鎮咳作用や呼吸困難を軽減する効果も期待できる。モルヒネの呼吸困難に対する作用機序は十分解明されていないが,呼吸困難の中枢神経系での知覚の低下,延髄呼吸中枢のCO2に対する感受性の低下や呼吸リズムを抑制し呼吸数を減少させることによる呼吸仕事量の軽減,有効な深呼吸の確保,抗不安効果などが関与していると想定されている。モルヒネの鎮咳作用は,延髄の咳中枢に作用し,気道からの一次求心性神経の興奮伝達を抑制することによる。モルヒネの主な有害事象は,便秘,悪心・嘔吐,眠気である。便秘は,低用量であってもほとんどのモルヒネ使用患者に生じる有害事象であるため,便の軟化を促す塩類下剤や腸管運動を亢進させる刺激性下剤の併用が必要となる。悪心・嘔吐は, 30~50%の患者に生じ,必要に応じて制吐薬を使用する。その他の有害事象としては,せん妄,排尿困難(尿閉),瘙痒などが生じることがある。モルヒネは,肝臓においてグルクロン酸抱合により,活性代謝物であるモルヒネ— 3—グルクロニド(M3G)および6—グルクロニド(M6G)に代謝される。モルヒネ, M3G およびM6G はいずれも腎排泄であるので,腎機能低下例(目安として,クレアチニンクリアランス30 mL/分未満)では蓄積により有害事象リスクが高くなるため注意が必要である。 オキシコドンオキシコドンは,鎮痛や呼吸困難の軽減などの薬理作用や有害事象プロフィールがモルヒネに類似している。オキシコドンは肝臓においてチトクロムP450*(CYP) 2D6 および3A4 により代謝される。80%以上が薬理活性をもたないノルオキシコドンに代謝され,活性代謝物であるオキシモルフォンは生成量が極めて少ない(未変化体の1/100 量程度)ため,中等度までの腎機能低下例(目安として,クレアチニンクリアランス10 mL/分以上)でも比較的安全に使用できる。 フェンタニルフェンタニルは合成オピオイドであり,臨床的な鎮痛効果はモルヒネと同等と報告されているが,呼吸困難の緩和についての有効性は十分に示されていない。また,呼吸抑制は,モルヒネやオキシコドンと比べて生じやすい可能性があり,注意が必要である。 コデイン・ジヒドロコデインコデインは,別名メチルモルヒネと呼ばれるモルヒネの誘導体である。コデイン 薬 剤8 1.オピオイド1 2 *:チトクロムP450ほとんどすべての生物に存在する酸化酵素。ヒトでは現在約50 種が報告され, CYP3A4,CYP2A6(CYP= cytochrome P450)などがある。肝臓に多く存在し,薬物代謝の主要な酵素。 3
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自体のμオピオイド受容体への親和性は極めて低い(モルヒネの1/100 程度)。投与されたコデインの約10~20%が肝臓においてCYP2D6 によりモルヒネに変換され,これが主に薬理効果を発揮する。また,鎮咳効果については,コデイン自体が延髄の咳中枢を抑制すると想定されており,鎮咳薬として使用される理由となっている。しかしながら,コデインの鎮咳作用は,十分量投与されたモルヒネと比較すると弱いと考えられている。ジヒドロコデインは,コデインの誘導体であり,鎮咳効果はコデインに比べ強い(力価はコデインの2 倍)。 ベンゾジアゼピン系薬ベンゾジアゼピン系薬は,大脳辺縁系や視床および視床下部のγ—aminobutyric acid(GABA)受容体に作用し,これらの神経系を抑制することが抗不安作用,催眠作用をもたらす。呼吸困難に対するベンゾジアゼピン系薬の作用機序は不明であるが,呼吸困難と不安が関連していることが報告されており,ベンゾジアゼピン系薬による不安の軽減が呼吸困難の緩和に寄与することが想定されている。ベンゾジアゼピン系薬の有害事象には,眠気,傾眠,ふらつきなどがあり,せん妄を惹起するリスクがある。ベンゾジアゼピン系薬は,CYP 類(主にCYP3A4)により代謝されるものが多く,薬物相互作用に注意が必要である。 フロセミド吸入呼吸困難の改善を目的としたフロセミド吸入の作用機序は不明な点が多いが,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に適用した報告では,気管支上皮のNa+およびCl-の共輸送が抑制され,肺伸展受容器周囲のこれらのイオン濃度が増加し,その活動性が増加することや肺刺激受容器の抑制などの局所作用により呼吸困難を緩和することが期待されているが,臨床上の有用性は確認されていない。 コルチコステロイドコルチコステロイドは,炎症反応の初期段階におけるホスホリパーゼA2の阻害とアラキドン酸の放出抑制によりプロスタグランジンなどの炎症性物質の産生を抑制することで主な薬理作用を発揮する。がん患者の呼吸困難に対しては,腫瘍周囲の浮腫の改善〔がん性リンパ管症,上大静脈症候群,主要気道閉塞(MAO)〕や炎症の改善(薬剤性肺障害,放射線肺臓炎)が期待される。本邦で使用できるステロイドは複数あるが,鉱質コルチコイド作用(電解質への影響)が少なく,かつ,作用時間の長いベタメタゾンやデキサメタゾンが進行がん患者に対する症状緩和目的ではよく使用される。コルチコステロイドの注意すべき有害事象としては,短期的には高血糖,消化性潰瘍,易感染性,精神神経症状(不眠やせん妄)などがある。中長期的には,満月様顔貌,骨粗しょう症や糖尿病などがある。 2.オピオイド以外の薬剤1 2 3 II章背景知識
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デキストロメトルファンデキストロメトルファンは,中枢性鎮咳薬に分類され,中枢の咳中枢に直接作用して鎮咳作用を示す。臨床上問題となる有害事象はほとんどないが,ごく稀に悪心,めまい,眠気,口渇などがある。 プレガバリン・ガバペンチンプレガバリンおよびガバペンチンは,いずれも電位依存性Ca2+チャネルを抑制し,Ca2+流入を刺激としたグルタミン酸の放出抑制が鎮痛補助薬としての薬理効果である。鎮咳効果については,咳を誘発するサブスタンスP の遊離抑制などが考えられているが,十分には解明されていない。これらの薬剤の有害事象として,傾眠や浮動性のめまいを生じやすいため転倒に注意する。また,長期投与では,体重増加や浮腫が生じることがある。 リドカイン吸入リドカインは,神経の活動電位となるNa+チャネルを阻害し,その伝搬を遮断する。リドカイン吸入の作用機序は,肺局所の伸展受容器を麻酔して,痰などの刺激による咳反射を抑制するものと考えられる。リドカインの有害事象としては,全身投与された場合には,錯乱,めまい,痙攣など,局所投与の場合には,過敏症,血圧低下などがある。 抗コリン薬抗コリン薬としては,アトロピン硫酸塩,スコポラミン臭化水素酸塩,ブチルスコポラミン臭化物がある。気道壁にはムスカリン受容体のM1,M2,M3 サブタイプが存在し,唾液や気道分泌は,副交感神経系に支配されている。抗コリン薬によるM1およびM3受容体拮抗作用によって,唾液・気道分泌の抑制が生じる。それにより,死前喘鳴を軽減することが期待されている。抗コリン薬の有害事象としては,緑内障の悪化,排尿障害(特に,前立腺肥大合併例),口渇,便秘,動悸などがある。また,傾眠やせん妄を生じる場合があるが,抗コリン薬のなかで,ブチルスコポラミン臭化物は中枢移行しないので,これらの有害事象が少ない。 オクトレオチドオクトレオチドは,ソマトスタチンアナログであり,唾液を含む複数の消化管分泌を抑制する。それにより,死前喘鳴を軽減することが期待されている。オクトレオチドの有害事象としては,甲状腺機能低下,耐糖能異常,膵炎,肝機能障害がある。 (佐藤淳也,山口 崇) 5 6 7 8
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II章背景知識 表 主な薬剤の投与方法分類一般名標準的な処方例代表的な商品名 オピオイドモルヒネ【経口】 呼吸困難時に内用液剤など速放性製剤5~10 mg を頓用あるいは10~20 mg/日から徐放性製剤などで開始し,適宜増量。【注射】呼吸困難時に2~3 mg を静注または皮下注あるいは5~10 mg/日から持続静注または皮下注を開始し,適宜増量。【坐剤】呼吸困難時に5~10 mg坐薬を開始し,適宜増減する。【速放性経口製剤】 モルヒネ塩酸塩,オプソ®【徐放性経口製剤】MS コンチン®,モルペス®,ピーガード®,パシーフ®【注射】塩酸モルヒネ,アンペック®,プレペノン®【坐剤】アンペック® オキシコドン【経口】 呼吸困難時に速放性製剤2.5~5 mg を頓用あるいは10~20 mg/日から徐放性製剤などで開始し,適宜増量。【注射】呼吸困難時に2~3 mg を静注または皮下注あるいは5~10 mg/日から持続静注または皮下注を開始し,適宜増量。【速放性経口製剤】 オキノーム®【徐放性経口製剤】オキシコンチン®【注射】オキファスト® コデイン1 回10~20 mg を4~6 時間毎に経口投与120 mg/日まで増量しても効果不良の場合,モルヒネ20 mg/日あるいはオキシコドン10~15 mg/日へ変更【経口】 コデインリン酸塩 ジヒドロコデイン1 回10 mg を1 日3 回経口投与【経口】 ジヒドロコデインリン酸塩 ベンゾジアゼピンジアゼパム【経口】1 回2~5 mg を1 日2~4 回投与【注射】1 回2~5 mg を1 日2~4 回投与【坐剤】1 回4 mg を1 日1~3 回投与【経口】【注射】 ホリゾン®,セルシン®【坐剤】ダイアップ® アルプラゾラム1 回0.2~0.4 mg を1 日2~3 回経口投与【経口】 ソラナックス®,コンスタン® ロラゼパム1 回0.5~1 mg を1 日1~3 回経口投与【経口】 ワイパックス® エチゾラム1 回0.5~1 mg を1 日1~3 回経口投与【経口】 デパス® ミダゾラム2.5~5 mg/日を持続静注あるいは皮下注から開始し,眠気を観察しながら5~10 mg/日まで増量する。【注射】 ドルミカム® コルチコステロイドベタメタゾン1漸減法開始量として4~8 mg/日を経口投与あるいは点滴静注(夕方以降の投与を避ける)。効果を認めたら0.5~ 4 mg を維持量として漸減する。2漸増法開始量として0.5 mg/日を経口投与あるいは点滴静注(夕方以降の投与を避ける)。効果を認めるまで4 mg/ 日を目標に漸増する。【経口】【注射】 リンデロン®,デカドロン® 鎮咳薬デキストロメトルファン【経口】 1 回15~30 mg を1 日1~4 回経口投与【注射】1 回10 mg を1 日1 回皮下または筋肉内注射【経口】 メジコン®【注射】デキストロメトルファン臭化水素酸塩
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【参考文献】1) 各薬剤添付文書ならびにインタビューフォーム2) 日本緩和医療薬学会 編.緩和医療薬学,東京,南江堂,2013; pp34—45 3) 鍋島俊隆,井上和秀 編.図解 薬理学,東京,南山堂,2015; pp112—3,132—8,148—51,381— 2,283—4,410,427—34 4) Clemens KE, Klaschik E. Symptomatic therapy of dyspnea with strong opioids and its effect on ventilation in palliative care patients. J Pain Symptom Manage 2007; 33: 473—81 5) Ben—Aharon I, Gafter—Gvili A, Leibovici L, et al. Interventions for alleviating cancer—related dyspnea: a systematic review and meta—analysis. ActaOncol 2012; 51: 996—1008 6) Dean M. Opioids in renal failure and dialysis patients. J Pain Symptom Manage 2004; 28: 497—504 7) Kawabata M, Kaneishi K. Continuous subcutaneous infusion of compound oxycodone for the relief of dyspnea in patients with terminally ill cancer: a retrospective study. Am J Hosp Palliat Care 2013; 30: 305—11 8) Simon ST, Köskeroglu P, Gaertner J, et al. Fentanyl for the relief of refractory breathlessness: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2013; 46: 874—86 9) Tassinari D, Sartori S, Tamburini E, et al. Adverse effects of transdermal opiates treating moderate—severe cancer pain in comparison to long—acting morphine: A meta—analysis and systematic review of the literature. J Palliat Med 2008; 11: 492—501 10) Simon ST, Higginson IJ, Booth S, et al. Benzodiazepines for the relief of breathlessness in advanced malignant and non—malignant diseases in adults. Cochrane Database Syst Rev 2010 (1): CD007354 11) Sheikh Motahar Vahedi H, Mahshidfar B, Rabiee H, et al. The adjunctive effect of nebulized furosemide in COPD exacerbation: a randomized controlled clinical trial. Respir Care 2013; 58: 1873—7 12) Jensen D, Amjadi K, Harris—McAllister V, et al. Mechanisms of dyspnoea relief and improved exercise endurance after furosemide inhalation in COPD. Thorax 2008; 63: 606—13 13) Hardy JR, Rees E, Ling J, et al. A prospective survey of the use of dexamethasone on a palliative care unit. Palliat Med 2001; 15: 3—8 14) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, et al. Section 11. Issues in specific neoplastic disease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1124—5 15) McCrory DC, Coeytaux RR, Yancy WS Jr, et al. Assessment and Management of Chronic Cough. Rockville(MD): Agency for Healthcare Research and Quality(US); 2013 Jan. Report No.: 13—EHC032—EF. 16) Ryan NM, Birring SS, Gibson PG. Gabapentin for refractory chronic cough: a randomised, double—blind, placebo—controlled trial. Lancet 2012; 380: 1583—9
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● 推奨の概要 1 呼吸困難に対する酸素療法 2 呼吸困難に対する薬物療法 1 モルヒネ2 モルヒネ以外のオピオイド3 ベンゾジアゼピン系薬4 フロセミド吸入5 コルチコステロイド 3 特定の病態に対する治療 1 悪性胸水による呼吸困難に対する治療2 咳嗽の緩和に対する治療3 死前喘鳴の軽減に対する治療 III章 推 奨
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呼吸困難の症状を訴える患者には,まず問診で,呼吸困難の量,質,生活への影響,軽快・増悪因子を患者や家族に尋ねて同定する。また,バイタルサイン(特に,呼吸数・酸素飽和度)と身体所見を確認し,症状の評価を行う。さらに必要に応じて,動脈血ガス分析,血液検査,画像検査を行い,呼吸困難の原因となりうる病態を総合的に診断する。 1.呼吸困難の評価 ●推奨の概要● OVERVIEW ●呼吸困難の評価 低酸素血症ステロイド全身投与(→P81) 胸腔穿刺ドレナージ(→P87)胸膜癒着術(→P90) ●酸素投与(→P60) ●オプション 注)それぞれの療養場所・施設で,リソースに応じて提供可能な非薬物療法を実施する。 ●モルヒネ全身投与(→P66) ※代替薬・オピオイドナイーブ:コデイン・ジヒドロコデイン(→P72)・腎機能障害:オキシコドン(→P70) あり なし なし あり ●高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC) (→P63) ●非侵襲的陽圧換気(NPPV) (→P62) ●ベンゾジアゼピン系薬追加(→P76) ●咳嗽への対応(→P93) ●死前喘鳴への対応(→P100) ●原因に応じた治療・がん性リンパ管症・上大静脈症候群・主要気道閉塞(MAO)・悪性胸水高CO2血症
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治療はまず,呼吸困難の原因に応じた対応を検討する。最初に,がんに対する抗がん治療の適応や,背景の呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など),肺炎などの呼吸器合併症に対する治療を検討する。呼吸困難の原因が,がん性リンパ管症・上大静脈症候群・主要気道閉塞(MAO)の場合はステロイド全身投与を,悪性胸水の場合は胸腔穿刺ドレナージ・胸膜癒着術を検討する。 1 )低酸素血症がある場合呼吸困難を訴えるがん患者に低酸素血症がある場合,酸素投与を検討する。通常の酸素投与で効果が不十分な場合,患者の状態や希望および療養場所・施設の状況により,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)や非侵襲的陽圧換気(NPPV)を検討する。この際,高CO2血症を伴う場合は非侵襲的陽圧換気(NPPV)を,高CO2血症を伴わない場合は高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を用いる。 2 )低酸素血症がない場合,または酸素療法で呼吸困難の十分な緩和が得られない 場合低酸素血症がない場合や,低酸素血症があり酸素療法で対応しても呼吸困難の緩和が十分に得られない場合,モルヒネ全身投与を検討する。この際,オピオイドナイーブの症例でモルヒネ全身投与がためらわれる場合は,コデイン・ジヒドロコデインを代替薬として開始することは許容される。また,腎機能障害などでモルヒネ全身投与を回避することが望ましい場合は,オキシコドン全身投与を代替手段として選択することが許容される。 3 )オピオイド(モルヒネ,コデイン・ジヒドロコデイン,オキシコドン)全身投 与で十分な緩和が得られない場合オピオイドの全身投与で呼吸困難の十分な緩和が得られない場合,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドに追加併用することを検討する。 4 )推奨されない治療法モルヒネ吸入やフロセミド吸入は,がん患者の呼吸困難を緩和させる明確な根拠はないことから,使用は推奨されない。また,オピオイドのなかでフェンタニル全身投与は,がん患者の呼吸困難を緩和させる明確な根拠はないことから,使用は推奨されない。特定の病態〔がん性リンパ管症・上大静脈症候群・主要気道閉塞(MAO)〕以外が原因となるがん患者の呼吸困難に対してのステロイド全身投与も推奨されない。 5 )患者に応じた対応,非薬物療法酸素療法,薬物療法とあわせて,患者の病態や好みに応じて,非薬物療法を検討 2.原因に応じた治療 3.呼吸困難に対する治療III章推奨
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する。患者の症状評価,軽快因子,増悪因子,好み,全身状態,予後の見通しを総合的に判断し,看護ケア,呼吸リハビリテーション,精神療法,リラクセーションから,それぞれの療養場所・施設のリソースに応じて提供可能な非薬物療法の実施を検討する(P105,IV章非薬物療法参照)。 6 )治療抵抗性の呼吸困難への対応1すべての治療が無効である,あるいは,2患者の希望と全身状態から考えて,予測される生命予後までに有効で,かつ,合併症の危険性と侵襲を許容できる治療手段がないと考えられる場合,苦痛を治療抵抗性と評価する。評価は医療チームで判断する。医療チームが治療抵抗性の呼吸困難と評価した場合は,苦痛緩和を目的とした鎮静の適応を検討する。鎮静の開始には,専門家へのコンサルテーション,患者,家族の希望の確認が必要である。 1 )咳嗽への対応がん患者の咳嗽に対しては,オピオイド(コデイン・ジヒドロコデイン,モルヒネ)全身投与,デキストロメトルファンの投与を検討する。ガバペンチノイド(プレガバリン・ガバペンチン)・リドカイン吸入はがん患者の咳嗽を緩和させる明確な根拠はないことから,使用は推奨されない。 2 )死前喘鳴への対応がん患者の死前喘鳴に対する介入はいずれも症状緩和させる明確な根拠はない。したがって,現時点では施行が推奨される介入はない。 (山口 崇) 4.その他の特定の病態に対する対応
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呼吸困難に対する酸素療法1 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,酸素療法は有効か? 関連する臨床疑問 1 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困 難を緩和するか? 2 低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困 難を緩和するか? 3 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気 (NPPV)は呼吸困難を緩和するか? 4 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ 酸素療法(HFNC)は呼吸困難を緩和するか? 1 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行うこ とを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 2 低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行わな いことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 3 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気 (NPPV)を行うことを条件付きで提案する。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 4 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ 酸素療法(HFNC)を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
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解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件ある。Phillip ら1)は,VAS *(0~100 mm)30 mm 以上の呼吸困難のあるがん患者51 名を,酸素吸入群(O2 4 L/分)と空気吸入群に無作為に割り付け,それぞれクロスオーバーさせ,呼吸困難強度を評価した。この研究では,低酸素血症がある患者17名のサブグループ解析が行われ,酸素吸入群は空気吸入群と比較して,吸入開始15分後の酸素飽和度は統計学的に有意に上昇したが,呼吸困難VAS の変化量は両群間で統計学的有意差を認めなかった(酸素吸入群:13.3 mm 低下vs 空気吸入群: 15.4 mm 低下)。Bruera ら2)は,呼吸困難と低酸素血症(SpO2<90%)のある進行がん患者14 名を,酸素吸入群(O2 5 L/分)と空気吸入群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難強度を評価した。すべての患者は割り付け前にすでに鼻カニュラ4 L/分以上の酸素吸入をしており,介入前に30 分以上室内気で安静を保ち,ベースラインの評価を行った後,介入を行った。評価項目である吸入前後の呼吸困難VAS(0~100 mm)は,酸素吸入群は空気吸入群と比較して統計学的に有意に呼吸困難強度が軽減した(酸素吸入群:11.0 mm 低下vs 空気吸入群:9.4 mm 増加)。また,吸入前後の酸素飽和度は,酸素吸入群で統計学的に有意に上昇した(酸素吸入群:9.1%上昇vs 空気吸入群:0.5%上昇)。いずれの研究も,有害事象については記載がなかった。 ** 以上より,これまでの研究では結果は一致しないが,低酸素血症があるがん患者のみを対象とした研究では,酸素吸入は空気吸入と比較して統計学的に有意に呼吸困難を改善していた。また,統計学的有意差を認めなかった研究はサブグループ解析であり,研究デザインに問題がある。したがって,本ガイドラインでは,低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行うことを推奨する。 臨床疑問1 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和するか? 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 *:VAS(visual analogue scale) 100 mm の線の左端を「息苦しさなし」,右端を「最もひどい息苦しさ」とした場合,患者の呼吸困難の程度を表すところに印を付けてもらうもの。P26 参照。
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解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為比較試験が2 件ある。Ahmedzai ら3)は,労作時呼吸困難(修正Borg スケール*1 3 以上)のある外来肺がん患者12 名を,Heliox28(72%ヘリウムと28%酸素)吸入群,酸素吸入群(28%酸素),空気吸入群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,3 種類のガスのいずれかをマスクで吸入しながら6 分間歩行試験*2 を行い評価した。この試験では,安静時呼吸困難,低酸素血症がある患者は除外されていた。評価項目である6 分間の歩行距離は,酸素吸入群で空気吸入群と比較して統計学的に有意に長かったが,6 分間歩行試験後の呼吸困難はVAS(0~100 mm),修正Borg スケールともに両群間で統計学的有意差を認めなかった。Bruera ら4)は,安静時または軽い労作時の呼吸困難があり,低酸素血症のない(SpO2≧90%)進行がん患者33 名を,酸素吸入群(O2鼻カニュラ5 L/分)と空気吸入群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,6 分間歩行試験後の呼吸困難を評価した。評価項目である6 分間歩行試験後の呼吸困難NRS*3(0~10)は両群間で統計学的有意差を認めなかった。また,6 分間歩行距離も両群間で統計学的有意差を認めなかった。 ** 以上より,これまでの研究では,酸素吸入が空気吸入と比較して,低酸素血症のないがん患者の呼吸困難を改善する根拠は認められない。また,がん患者を含む低酸素血症のない難治性呼吸困難患者を対象とした,より大規模で質の高い無作為化比較試験でも,酸素吸入と空気吸入の間に呼吸困難強度の統計学的有意差を認めず9),この研究のがん患者だけを取り出したサブグループ解析でも両群間に統計学的有意差は認められなかった10)。ただし,この研究では,気体の種類(酸素・空気)によらず吸入前後で呼吸困難強度は改善していたことから,個々の患者において気体の吸入が呼吸困難を改善する可能性は残される。したがって,本ガイドラインでは,低酸素血症がないがん患者の呼吸困難に対して,酸素吸入を行わないことを提案する。もし,酸素吸入を試みる場合は,気道の乾燥・刺激や拘束感などの有害事象を評価し,さらに,チューブ類の増加や拘束感などがせん妄の活発因子になりうることにも十分に注意し,酸素吸入に伴う不利益よりも利益が明らかに上回る場合以外は,酸素吸入を中止することが望ましい。 臨床疑問2 低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和するか? 低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 *1:修正Borg スケール身体活動能力の評価を目的として開発されたカテゴリー尺度で,0~10 の12 段階(0.5を含む)の呼吸困難の強さを選択する自己評価法。P26 参照。 *2:6 分間歩行試験平坦な屋内の歩行路を6 分間でどのくらいたくさん歩行できるかを評価する運動負荷試験。 *3:NRS(numerical rating scale)呼吸困難を0から10の11段階に分け,呼吸困難が全くないのを0,考えられるなかで最悪の呼吸困難を10 として,呼吸困難の点数を問うもの。P25 参照。III章推奨
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解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為比較試験が1 件,観察研究が2 件ある。Nava ら5)は,急性呼吸不全(PaO2/FiO2比<250)で入院となり,呼吸困難のある終末期(予後6 カ月以内)固形がん患者で,事前に5~10 分間の非侵襲的陽圧換気(non‒invasive positive pressure ventilation;NPPV)*使用に耐えられた200 名を,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群と酸素吸入群に無作為に割り付けし,それぞれを高CO2血症(PaCO2 45 Torr 以上)の有無で層別化し,呼吸困難強度を評価した。評価項目である呼吸困難強度(修正Borg スケール)は両群ともに改善したが,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群で有意に早く改善が認められた。この研究のサブグループ解析では,高CO2血症を伴うサブグループでは,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群は酸素吸入群と比較して統計学的に有意に呼吸困難が改善したが,高CO2血症を伴わないサブグループでは両群間に統計学的有意差を認めなかった。院内死亡は2 群間で統計学的有意差を認めなかった。ただし,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群99 名のうち,11 名は閉所恐怖,窒息感,不安などのため早期中止となったが,酸素群では脱落はなかった。Hui ら6)は,酸素を吸入してもNRS 3/10 以上の安静時呼吸困難のある進行がん患者30 名を,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群と高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)群に無作為に割り付けし,介入を2 時間施行することの実現可能性を検証する試験(feasibility study)を行った(両群間の比較は行われず)。この試験の非侵襲的陽圧換気(NPPV)群の結果を前後比較の観察研究として評価すると,介入の前後で呼吸困難NRS(0~10)は統計学的に有意に低下したが,修正Borg スケールでは有意な低下は認めなかった。非侵襲的陽圧換気(NPPV)群13 名中3 名で2 時間の介入を完遂できなかった。問題となる有害事象は認めなかった。Cuomo ら7)は,急性呼吸不全(PaO2/FiO2<250 またはpH<7.35,PaCO2> 50 Torr)を合併し,集中治療室および緩和ケア病棟に入院となった固形がん患者23名を対象として,非侵襲的陽圧換気(NPPV)の効果を前向きに検討した。非侵襲的陽圧換気(NPPV)は開始後24 時間は持続的に行い,72 時間以内に離脱した。評価項目である非侵襲的陽圧換気(NPPV)開始1 時間後の修正Borg スケールは, 5.5 から2.3 と開始前と比較して統計学的に有意な改善を示した。PaO2/FiO2, PaCO2,pH といった指標も,入院時と比較して,1 時間後,24 時間後,48 時間後, 臨床疑問3 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気(NPPV)は呼吸困難を緩和するか? 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うことを条件付きで提案する。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 *:非侵襲的陽圧換気(NPPV)気管内挿管や気管切開をせずに,鼻マスク,口鼻マスクなどの非侵襲的なインターフェイスをヘッドギアやホルダーで顔面に固定し,換気を補助する人工呼吸。P36 参照。
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退院時のいずれの時点においても,統計学的に有意に改善していた。非侵襲的陽圧換気(NPPV)が導入・維持できた13 名は回復し退院することができたが,10 名は非侵襲的陽圧換気(NPPV)に耐えられない,動脈血ガスの悪化,突然死,嘔吐,強い痛みに対する深い鎮静,の理由で脱落となった。 ** 以上より,これまでの研究では,2 件の観察研究において非侵襲的陽圧換気(NPPV)の使用により低酸素血症があるがん患者の呼吸困難が緩和される可能性が示唆され,1 件の比較試験では酸素吸入と比較して,統計学的に有意な緩和を認めた。ただし,いずれの研究でも一定の割合以上で非侵襲的陽圧換気(NPPV)からの脱落例が認められた。また,対象となった症例は多くが急性呼吸不全患者であり,比較試験のサブグループ解析で高CO2血症を伴う患者では非侵襲的陽圧換気(NPPV)使用で呼吸困難の有意な改善が認められたが,伴わない患者では酸素吸入との統計学的有意差が示されなかったため,非侵襲的陽圧換気(NPPV)が有効である患者は限定される可能性がある。したがって,本ガイドラインでは,低酸素血症があるがん患者の呼吸困難の緩和のため非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うことを提案する。ただし,適応は,1急性呼吸不全があり,2高CO2 血症を伴う患者に限り,3適切なモニタリングを行うことができ,4機器管理に習熟している,という体制下でのみ実施するべき,と考える。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,観察研究が2 件ある。Hui ら6)は,酸素を吸入してもNRS 3/10 以上の安静時呼吸困難のある進行がん患者30 名を,高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula oxygen;HFNC) *群と非侵襲的陽圧換気(NPPV)群に無作為に割り付けし,介入を2 時間施行することの実現可能性を検証する試験(feasibility study)を行った(両群間の比較は行われず)。この試験の高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)群の結果を前後比較の観察研究として評価すると,介入の前後で呼吸困難NRS(0~10),修正Borg スケールともに統計学的に有意に低下した。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)群14 名中1 名で2 時間の介入を完遂できなかった。問題となる有害事象は認めなかった。Epstein ら8)は,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を行ったがん患者353 名の 臨床疑問4 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は呼吸困難を緩和するか? 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 *:高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)加温・加湿した一定濃度の酸素を高流量で経鼻的に投与する新しい酸素療法。P37参照。III章推奨
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うち183 名を無作為に抽出し,後ろ向きに診療録調査を行った。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を行った期間は中央値3 日(1~27 日)で,治療効果(患者の快適さ,酸素飽和度,他のデバイスへの変更などから総合的に判断)は,改善が41%であったが,呼吸困難単独の評価は行われなかった。忍容性は良好で,中止となったのは鼻の不快による2 名のみであった。 ** 以上より,これまでの研究では,現時点では,通常の酸素投与との比較研究はないが,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)が,低酸素血症があるがん患者の呼吸困難を改善させる可能性が示唆されている。また,短期的な忍容性は良好で,重篤な有害事象も報告されていない。したがって,本ガイドラインでは,低酸素血症があるがん患者の呼吸困難に対して高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を行うことを提案する。ただし,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の問題点としては,費用が高い,使用可能な施設が限られる(特に,在宅での利用は現実的ではない),作動音が大きい,などが挙げられ,本邦の臨床現場における使用経験も十分とはいえないことに留意して使用を検討する必要がある。 (合屋 将,松田能宣) 【文 献】臨床疑問1 1) Philip J, Gold M, Milner A, et al. A randomized, double‒blind, crossover trial of the effect of oxygen on dyspnea in patients with advanced cancer. J Pain Symptom Manage 2006; 32: 541‒50 2) Bruera E, de Stoutz N, Velasco‒Leiva A, et al. Effects of oxygen on dyspnoea in hypoxaemic terminal‒cancer patients. Lancet 1993; 342: 13‒4 臨床疑問2 3) Ahmedzai SH, Laude E, Robertson A, et al. A double‒blind, randomised, controlled PhaseII trial of Heliox28 gas mixture in lung cancer patients with dyspnoea on exertion. Br J Cancer 2004; 90: 366‒71 4) Bruera E, Sweeney C, Willey J, et al. A randomized controlled trial of supplemental oxygen versus air in cancer patients with dyspnea. Palliat Med 2003; 17: 659‒63 臨床疑問3,4 5) Nava S, Ferrer M, Esquinas A, et al. Palliative use of non‒invasive ventilation in end‒of‒life patients with solid tumours: a randomised feasibility trial. Lancet Oncol 2013; 14: 219‒27 6) Hui D, Morgado M, Chisholm G, et al. High‒flow oxygen and bilevel positive airway pressure for persistent dyspnea in patients with advanced cancer: a phaseII randomized trial. J Pain Symptom Manage 2013; 46: 463‒73 7) Cuomo A, Delmastro M, Ceriana P, et al. Noninvasive mechanical ventilation as a palliative treatment of acute respiratory failure in patients with end‒stage solid cancer. Palliat Med 2004; 18: 602‒10 8) Epstein AS, Hartridge‒Lambert SK, Ramaker JS, et al. Humidified high‒flow nasal oxygen utilization in patients with cancer at Memorial Sloan‒Kettering Cancer Center. J Palliat Med 2011; 14: 835‒9 【参考文献】臨床疑問2 9) Abernethy AP, McDonald CF, Frith PA, et al. Effect of palliative oxygen versus room air in
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relief of breathlessness in patients with refractory dyspnoea: a double‒blind, randomised controlled trial. Lancet 2010; 376: 784‒93 10) Ben‒Aharon I, Gafter‒Gvili A, Leibovici L, et al. Interventions for alleviating cancer‒related dyspnea: a systematic review and meta‒analysis. Acta Oncol 2012; 51: 996‒1008 III章推奨
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モルヒネ 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が4 件と系統的レビューが2 件ある。Navigante ら(2010)1)は,外来通院中で安静時に中等度から重度の呼吸困難があり,performance status(PS)≦3 のがん患者63 名を,モルヒネ群(効果的投与量の経口モルヒネを4 時間毎に定期投与)とミダゾラム群(効果的投与量の経口ミダゾラムを4 時間毎に定期投与)に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評 呼吸困難に対する薬物療法2 1 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネは有効 か? 関連する臨床疑問 5 呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの全身投与は呼吸困難を緩和 するか? 6 呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの吸入投与は呼吸困難を緩和 するか? 5がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与を行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 6 がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの吸入投与を行わないことを提案す る。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 臨床疑問5 呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与を行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨
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価項目である投与開始2 日目,3 日目,4 日目,5 日目の呼吸困難NRS の中央値は,モルヒネ群で開始前より低下していたが,モルヒネ群と比較してミダゾラム群で有意に低かった。モルヒネ群,ミダゾラム群とも重篤な有害事象は認めなかったが,モルヒネ群の19.4%,ミダゾラム群の12.5%に傾眠(CTCAE*v3.0 でGrade 2 以上)を認めた。Navigante ら(2006)2)は,予測される予後が1 週間以内で安静時の重度の呼吸困難がある終末期がん患者101 名を,モルヒネ単独投与群〔モルヒネ皮下注2.5 mg を4 時間毎に定期投与もしくは定期モルヒネ投与量を25%増量(呼吸困難時レスキュー薬はミダゾラム皮下注)〕,ミダゾラム単独投与群〔ミダゾラム皮下注を4 時間毎定期投与(呼吸困難時レスキュー薬はモルヒネ皮下注)〕,モルヒネ+ミダゾラム併用群の3 群に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評価項目である試験開始24 時間後,48 時間後の呼吸困難の修正Borg スケールの中央値は,モルヒネ単独投与群では投与開始前と比較して低下していたが,モルヒネ単独投与群とミダゾラム単独投与群で統計学的に有意な差を認めなかった。48 時間後の死亡率についてはモルヒネ単独投与群31.4%,ミダゾラム単独投与群30.3%であった。Mazzocato ら3)は,呼吸困難を伴うがん患者9 名を,モルヒネ群(モルヒネ5 mg/回の皮下注もしくは経口モルヒネ速放性製剤1 回分の50%量を皮下注投与)とプラセボ群に無作為に割り付け,それぞれクロスオーバーさせて,呼吸困難強度を評価した。評価項目である投与前と45 分後の呼吸困難VAS(0~100 mm)の変化は,プラセボ群と比較してモルヒネ群で統計学的に有意に改善していた(モルヒネ群: 25 改善vs プラセボ群:0.6 悪化)。この試験では,プラセボ群では有害事象は認めず,モルヒネ群では3 名が一過性の有害事象を認めたが,重篤な有害事象は認めなかった。Bruera ら4)は,呼吸困難を伴う終末期がん患者10 名を,モルヒネ群(モルヒネの4 時間毎の定期投与分を50%増量)とプラセボ群に無作為に割り付け,クロスオーバーさせて,呼吸困難強度を評価した。評価項目である投与30 分後,45 分後,60分後の呼吸困難VAS(0~100 mm)は,プラセボ群と比較してモルヒネ群で統計学的に有意に低値であった。両群とも呼吸抑制は認めなかった。Ben‒Aharon ら5)による系統的レビューでは,基準に合致した3 つの臨床試験のメタアナリシスを実施して,呼吸困難に対するモルヒネの全身投与は対照群と比較して有意に呼吸困難を軽減する効果があると結論した。 ** 以上より,これまでの研究では,モルヒネの全身投与はプラセボと比較して,がん患者の呼吸困難を統計学的に有意に緩和することが示されている3,4)。一方,実薬の対照群との比較試験1,2)では,がん患者の呼吸困難に対するモルヒネ全身投与の優位性は示せなかったが,これらの試験はバイアスリスクが高い試験であった。また,モルヒネ全身投与に伴う有害事象は,医療従事者による十分な観察を行うことで許容されると考えられる。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与を行うことを推奨する。ただし全身状態や呼吸状態の悪い患者では,モルヒネ全身投与開始後に,意識状態の変化や呼吸抑制に関して慎重に観察を行うこととする。*:CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)有害事象共通用語基準。治療・手技の実施に関連した可能性のある好ましくない,意図しない徴候を1~5 の5 段階(grade)の重症度に分類した基準であり,最新のバージョンは4.0 である。III章推奨
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解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件ある。Bruera ら6)は,呼吸困難を伴うがん患者12 名を,モルヒネ吸入群(定期使用中のオピオイドを経口モルヒネ換算し,その1 日あたりの投与量の1/6 に相当する経口モルヒネの50%量を吸入投与)とモルヒネ皮下注射投与群(モルヒネ吸入群と同量のモルヒネを皮下注射で投与)に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。主要評価項目である投与60 分後の呼吸困難NRS (0~10)中央値は,両群間に統計学的有意差を認めなかった(モルヒネ吸入群:2 vs モルヒネ皮下注射投与群:3)。有害事象は,眠気,悪心,発汗,喘鳴のNRS 中央値について両群間に統計学的有意差を認めなかった。Davis ら7)は,呼吸困難を伴うがん患者79 名を,モルヒネ吸入投与群(5~50 mg)とプラセボ吸入群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。評価項目である投与前と投与60 分後の呼吸困難VAS(0~10 cm)平均値の変化量(mm)は,両群間に統計学的有意差を認めなかった(モルヒネ吸入群:9.58 vs プラセボ吸入群:7.66)。有害事象は,眠気と悪心について両群に統計学的有意差を認めなかった。 ** 以上より,これまでの研究では,モルヒネ吸入投与がプラセボおよび対照群と比較してがん患者の呼吸困難を改善する明確な根拠は認めない。モルヒネ全身投与の呼吸困難に対する有効性が示されている現状において,モルヒネ吸入を行う利点はないと考えられる。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの吸入投与を行わないことを提案する。 (小原弘之,渡邊紘章) 【文 献】臨床疑問5 1) Navigante AH, Castro MA, Cerchietti LC. Morphine versus midazolam as upfront therapy to control dyspnea perception in cancer patients while its underlying cause is sought or treated. J Pain Symptom Manage 2010; 39: 820‒30 2) Navigante AH, Cerchietti LC, Castro MA, et al. Midazolam as adjunct therapy to morphine in 臨床疑問6 呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの吸入投与を行わないことを提案する。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨
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the alleviation of severe dyspnea perception in patients with advanced cancer. J Pain Symptom Manage 2006; 31: 38‒47 3) Mazzocato C, Buclin T, Rapin CH. The effects of morphine on dyspnea and ventilatory function in elderly patients with advanced cancer: a randomized double‒blind controlled trial. Ann Oncol 1999; 10: 1511‒4 4) Bruera E, MacEachern T, Ripamonti C, et al. Subcutaneous morphine for dyspnea in cancer patients. Ann Intern Med 1993; 119: 906‒7 5) Ben‒Aharon I, Gafter‒Gvili A, Leibovici L, et al. Interventions for alleviating cancer‒related dyspnea: a systematic review and meta‒analysis. Acta Oncol 2012; 51: 996‒1008 臨床疑問6 6) Bruera E, Sala R, Spruyt O, et al. Nebulized versus subcutaneous morphine for patients with cancer dyspnea: a preliminary study. J Pain Symptom Manage 2005; 29: 613‒8 7) Davis CL, Penn K, A’Hern R, et al. Single dose randomized controlled trial of nebulized mor- phine in patients with cancer related breathlessness. Palliat Med 1996; 10: 64‒5 III章推奨
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モルヒネ以外のオピオイド 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,観察研究が2 件(後ろ向きコホート研究1 件,症例報告1 件)ある。Kawabata ら1)は,さまざまな症状の緩和を目的としてヒドロコタルニンを含ん 2 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネ以外のオ ピオイド(オキシコドン,フェンタニル,コデイン・ ジヒドロコデイン)は有効か? 関連する臨床疑問 7 呼吸困難を有するがん患者に対して,オキシコドンの全身投与は呼吸困難を 緩和するか? 8 呼吸困難を有するがん患者に対して,フェンタニルの全身投与は呼吸困難を 緩和するか? 9 呼吸困難を有するがん患者に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投 与は呼吸困難を緩和するか? 7 がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与が困難な場合に代替とし てオキシコドンの全身投与を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 8 がん患者の呼吸困難に対して,フェンタニルの全身投与を行わないことを提 案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 9 がん患者の呼吸困難に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与を行 うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問7 呼吸困難を有するがん患者に対して,オキシコドンの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与が困難な場合に代替としてオキシコドンの全身投与を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨
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だ塩酸オキシコドンの複合注射製剤を持続皮下投与した終末期がん患者136 名中,投与期間が48 時間以内であった28 名と意識障害を認めた13 名を除外した95 名の診療録を後ろ向きに調査した。独自の3 件法ツールでの評価においてスコアが改善した例を改善例と定義したところ,投与開始時に呼吸困難を認めた44 名中39 名(88.6%)で呼吸困難が改善した。有害事象としては,試験全体で18 名に傾眠を認めたが,重篤な呼吸抑制は認めなかった。Shinjo ら2)は,モルヒネ持続皮下投与でがん患者の呼吸困難が軽減されたのちオキシコドン徐放性製剤内服へ変更した3 名に関する症例報告を行った。この3 名では,オキシコドン徐放性製剤内服へ変更後も呼吸困難はモルヒネ投与時と同等に緩和された。 ** 以上より,これまでの研究では質の高い研究はなく,その根拠は不十分であるが,オキシコドンの全身投与は,がん患者の呼吸困難を緩和する可能性が示唆されている。また,オキシコドンの全身投与に伴う有害事象は,医療従事者による十分な観察を行うことで許容されると考えられ,腎機能障害合併例やモルヒネによる有害事象でモルヒネ投与を回避することが望ましい場合に,モルヒネの代替となる可能性がある。したがって,本ガイドラインでは,呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの全身投与が困難な場合に,モルヒネの代替としてオキシコドンの全身投与を行うことを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件と系統的レビューが1 件ある。Pinna ら3)は,NRS 3/10 以上の体動時呼吸困難のある進行期がん患者13 名を, oral transmucosal fentanyl citrate(OTFC,本邦未発売)群(オピオイド未投与の場合はOTFC 200μg,オピドイド既使用の場合は400μg を投与)とプラセボ群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせて,6 分間歩行試験後の呼吸困難強度を評価した。評価項目である6 分間歩行試験後30 分・60 分時点の呼吸困難NRS は両群間に統計学的有意差はなく,歩行距離も両群間に統計学的有意差を認めなかった。有害事象は両群とも認められなかった。 臨床疑問8 呼吸困難を有するがん患者に対して,フェンタニルの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,フェンタニルの全身投与を行わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
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Hui ら4)は,breakthrough dyspnea*1 の平均値がNRS 3/10 以上のがん患者20 名を,フェンタニル群(定期オピオイドの総投与量に従って規定した量のフェンタニルを皮下投与)とプラセボ群に無作為に割り付け,試験薬投与前後に2 回運動負荷(6 分間歩行試験)を行い,呼吸困難を評価する介入の実現可能性を検証する試験(feasibility study)を行った(両群間の比較は行われず)。「1 回目(=試験薬投与なし)の6 分間歩行試験前後のNRS 差」-「2 回目(=試験薬投与後)の6 分間歩行試験前後のNRS 差」はフェンタニル群0.9,プラセボ群1.3 で,フェンタニル群はプラセボ群と比べNRS の改善効果を上回らなかった。 ** 以上より,これまでの研究は,がん患者の運動負荷時の呼吸困難に対するフェンタニルの全身投与の効果を検討したもののみであり,結果も呼吸困難を緩和することは示されていない。また,健常者や非がん患者に対するフェンタニル投与も対象に含んだ系統的レビューでも,有効性に関する確実な結果は不足している,と結論されている10)。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,フェンタニルの全身投与を行わないことを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,がん患者を対象とした無作為化比較試験が1 件と非がん患者を対象とした無作為化比較試験が4 件ある。Leppertら5)は,がん疼痛を有するオピオイドを使用していないがん患者15名を,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン120 mg/日)とトラマドール群(トラマドール200 mg/日)に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,疼痛の強度および生活の質(QOL)を評価した。QOL の評価として実施されたEORTC QLQ‒ C30*2 の呼吸困難に関する下位項目の評価では,両群間に統計学的有意差を認めなかった。Chua ら6)は,慢性心不全患者12 名を,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン1 mg/kg)とプラセボ群に無作為に割り付け,呼吸困難の強度を評価した。評価項目であるトレッドミルテストでの負荷開始6 分後の修正Borg スケールは,プラセボ群と比較してジヒドロコデイン群で統計学的に有意に低値であった。有害事象としては,悪心をジヒドロコデイン群1 名に認めた。 *1:breakthrough dyspnea発作的,突発的な呼吸困難の状態を示し,短時間に突発的に出現する呼吸困難(episodic dyspnea)と表現される呼吸困難と同等の概念と考えられている。従来の労作時呼吸困難を含む概念とされているが,breakthrough dyspnea, episodic dyspneaともまだ定義は定まっていない。 臨床疑問9 呼吸困難を有するがん患者に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 *2:EORTC QLQ‒C30 The European Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ‒C30の略語。がん患者を対象とした自記式QOL 調査票で,機能スケールと症状スケールの合計30 項目で構成されている。
p.82
Rice ら7)は,chronic airflow obstruction 患者7 名を,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン120 mg/日)とプロメタジン群(プロメタジン100 mg/日)に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。評価項目である12 分間歩行テストでの呼吸困難VAS(0~10 cm)は,両群間で統計学的有意差は認めなかった。有害事象として眠気をプロメタジン投与群3 名,ジヒドロコデイン群4 名に認めた。Johnson ら8)は,呼吸困難を有するchronic airflow obstruction 患者19 名を,ジヒドロコデイン群(15 mg/回)とプラセボ群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。評価項目である1 週間の呼吸困難VAS平均値(0~10 cm)およびトレッドミルテストでの負荷時の呼吸困難VAS 値は,いずれもプラセボ群と比較してジヒドロコデイン群で統計学的に有意に低値であった。有害事象の発現に両群間で統計学的有意差は認めなかった。Woodcock ら9)は,呼吸困難を有するchronic airflow obstruction 患者12 名を,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン1 mg/kg)とカフェイン群(カフェイン5 mg/kg),アルコール群,プラセボ群に無作為に割り付け,呼吸困難の強度を評価した。評価項目であるトレッドミルテストでの運動負荷開始45 分後のVAS 値(0~ 10 cm)は,プラセボ群と比較してジヒドロコデイン群で統計学的に有意に低値であった。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者のみを対象とした呼吸困難に対するコデイン・ジヒドロコデインの全身投与の有効性を検討した試験が1 件あるのみでバイアスリスクも高いため,この試験の結果のみでは結論づけられない。しかしながら,非がん患者を対象とした4 件の無作為化比較試験のうち3 件でコデイン・ジヒドロコデイン全身投与はプラセボと比較して統計学的に有意に呼吸困難の緩和を認めたことから,がん患者の呼吸困難に対してもコデイン・ジヒドロコデイン全身投与が有効である可能性がある。また,本邦の臨床現場においては,オピオイドナイーブ*の患者に対して,初回のオピオイド導入時などにモルヒネの代替薬として実際に使用される場合もある。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与を行うことを提案する。 (小原弘之,渡邊紘章) 【文 献】臨床疑問7 1) Kawabata M, Kaneishi K. Continuous subcutaneous infusion of compound oxycodone for the relief of dyspnea in patients with terminally ill cancer: a retrospective study. Am J Hosp Palliat Care 2013; 30: 305‒11 2) Shinjo T, Okada M. Efficacy of controlled‒release oxycodone for dyspnea in cancer patients― three case series. Gan To Kagaku Ryoho 2006; 33: 529‒32 臨床疑問8 3) Pinna MÁ, Bruera E, Moralo MJ, et al. A randomized crossover clinical trial to evaluate the efficacy of oral transmucosal fentanyl citrate in the treatment of dyspnea on exertion in patients with advanced cancer. Am J Hosp Palliat Care 2015; 32: 298‒304 *:オピオイドナイーブオピオイド未使用の状態。III章推奨
p.83
4) Hui D, Xu A, Frisbee‒Hume S, et al. Effects of prophylactic subcutaneous fentanyl on exer- cise‒induced breakthrough dyspnea in cancer patients: a preliminary double‒blind, randomized, controlled trial. J Pain Symptom Manage 2014; 47: 209‒17 臨床疑問9 5) Leppert W, Majkowicz M. The impact of tramadol and dihydrocodeine treatment on quality of life of patients with cancer pain. Int J Clin Pract 2010; 64: 1681‒7 6) Chua TP, Harrington D, Ponikowski P. Effects of dihydrocodeine on chemosensitivity and exercise tolerance in patients with chronic heart failure. J Am Coll Cardiol 1997; 29: 147‒ 52 7) Rice KL, Kronenberg RS, Hedemark LL, et al. Effects of chronic administration of codeine and promethazine on breathlessness and exercise tolerance in patients with chronic airflow obstruction. Br J Dis Chest 1987; 81: 287‒92 8) Johnson MA, Woodcock AA, Geddes DM. Dihydrocodeine for breathlessness in“pink puffers”. Br Med J(Clin Res Ed)1983; 286: 675‒7 9) Woodcock AA, Gross ER, Gellert A, et al. Effects of dihydrocodeine, alcohol, and caffeine on breathlessness and exercise tolerance in patients with chronic obstructive lung disease and normal blood gases. N Engl J Med 1981; 305: 1611‒6 【参考文献】臨床疑問8 10) Simon ST, Köskeroglu P, Gaertner J, et al. Fentanyl for the relief of refractory breathlessness: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2013; 46: 874‒86
p.84
ベンゾジアゼピン系薬 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件と系統的レビューが1 件ある。Navigante ら(2010)1)は,外来通院中の呼吸困難を有するがん患者63 名を,ミダゾラム群(効果的投与量の経口ミダゾラムを4 時間毎に定期投与)とモルヒネ群(効果的投与量の経口モルヒネを4 時間毎に定期投与)に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評価項目である投与開始2 日目,3 日目,4 日目,5 日目の呼吸困難NRSの中央値は,モルヒネ群と比較してミダゾラム群で統計学的に有意に低かった。有害事象については両群とも重篤な有害事象は認めなかったが,モルヒネ群の19.4%,ミダゾラム群の12.5%に傾眠(CTCAE v3.0 でGrade 2 以上)を認めた。 3 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,ベンゾジアゼピン 系薬は有効か? 関連する臨床疑問 10 呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与は呼 吸困難を緩和するか? 11 呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドの 併用は呼吸困難を緩和するか? 10 がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与を行わない ことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 11 がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドに併用す ることを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問10 呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与を行わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
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一方,Navigante ら(2006)2)は,予測される生命予後が1 週間以内である重度の呼吸困難を有するがん患者101 名を,モルヒネ単独投与群〔モルヒネ皮下注2.5 mgを4 時間毎に定期投与もしくは定期モルヒネ投与量を25%増量(呼吸困難時レスキュー薬はミダゾラム皮下注)〕,ミダゾラム単独投与群〔ミダゾラム皮下注を4 時間毎に定期投与(呼吸困難時レスキュー薬はモルヒネ皮下注)〕,モルヒネ+ミダゾラム併用群に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評価項目とされた試験開始24 時間後,48 時間後の修正Borg スケールの中央値は,モルヒネ単独投与群とミダゾラム単独投与群で統計学的有意差を認めなかった。48 時間後の死亡率についてはモルヒネ単独投与群31.4%,ミダゾラム単独投与群30.3%であった。Simon ら3)による系統的レビューでは,文献化されていない臨床試験を含め,がん患者のみを対象とした研究結果のメタアナリシスが行われ,呼吸困難を有するがん患者においてベンゾジアゼピン系薬はプラセボおよびモルヒネと比較し,呼吸困難の有意な改善を示せなかった。 ** 以上より,これまでの研究では結果が一致しておらず,がん患者のみを対象とした1 つの無作為化比較試験1)でベンゾジアゼピン系薬はモルヒネに比較して有意な効果を示しているものの,バイアスリスクの高い試験であり,その研究を含めたメタアナリシスでベンゾジアゼピン系薬はプラセボ・対照薬と比較して統計学的に有意な改善を示さなかった。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与を行わないことを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が1 件,観察研究が2件ある。Navigante ら(2006)2)は,予測される生命予後が1 週間以内である重度の呼吸困難を有するがん患者101 名を,モルヒネ単独投与群〔モルヒネ皮下注を4 時間毎に定期投与もしくは定期モルヒネ投与量を25%増量(呼吸困難時レスキュー薬はミダゾラム皮下注)〕,ミダゾラム単独投与群,モルヒネ+ミダゾラム併用群〔モルヒネ皮下注を4 時間毎に定期投与もしくは定期モルヒネ投与量を25%増量に加えミダゾラム皮下注を4 時間毎に定期投与(呼吸困難時レスキュー薬はモルヒネ皮下注)〕に 臨床疑問11 呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドの併用は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドに併用することを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨
p.86
無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評価項目とされた試験開始24 時間後,48 時間後の修正Borg スケールの中央値は,モルヒネ単独投与群とモルヒネ+ミダゾラム併用群で統計学的有意差を認めなかった。一方,試験開始24 時間後に呼吸困難が改善した患者の割合は,モルヒネ+ミダゾラム併用群はモルヒネ単独群と比較し統計学的に有意に高かった。48 時間後の死亡率についてはモルヒネ単独投与群31.4%,モルヒネ+ミダゾラム併用群30.3%であった。Gomutbutra ら4)は,緩和ケアサービス紹介時に中等度から重度の呼吸困難を有し,初回評価から24 時間以内のフォローアップ評価を受けた患者115 名(うちがん患者は73 名)を後ろ向きに調査した。呼吸困難強度は独自の4 件法スケールで評価され,介入24 時間後における呼吸困難改善の有無を評価した。24 時間後の評価時点において,無投薬27 名,オピオイド単独投与50 名,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイド併用35 名であった。呼吸困難改善症例の割合は,オピオイド単独投与群は無投薬群と統計学的有意差がなかったが,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイド併用群は無投薬群と比較して統計学的に有意に高かった。Clemens ら5)は,緩和ケア病棟入院時に不安に関連した呼吸困難を有するがん患者26 名にオピオイド〔モルヒネもしくはhydromorphone(本邦未承認)〕とロラゼパムを投与し,投与前後の呼吸困難強度(NRS)を前向きに評価した。投与120 分後の安静時および労作時呼吸困難は,緩和ケア病棟入院時と比較し,統計学的に有意な改善を認めた。 ** 以上より,2 件の観察研究においてオピオイドとベンゾジアゼピン系薬の併用によるがん患者の呼吸困難改善効果が示唆され,対象が生命予後1 週以内の終末期患者に限られてはいるががん患者のみを対象とした1 つの無作為化比較試験で,ベンゾジアゼピン系薬とモルヒネの併用はモルヒネ単独と比較して一部の評価項目で呼吸困難に対する有意な効果を示した。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドに併用することを提案する。ただし,本項で扱うベンゾジアゼピン系薬の使用は,「苦痛緩和のための鎮静」を意図した投与方法ではないため,特に全身状態の悪い患者では,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドと併用開始後に,意識状態に関して慎重な観察を行うこととする。 (松田能宣,合屋 将) 【文 献】臨床疑問10,11 1) Navigante AH, Castro MA, Cerchietti LC. Morphine versus midazolam as upfront therapy to control dyspnea perception in cancer patients while its underlying cause is sought or treated. J Pain Symptom Manage 2010; 39: 820‒30 2) Navigante AH, Cerchietti LC, Castro MA, et al. Midazolam as adjunct therapy to morphine in the alleviation of severe dyspnea perception in patients with advanced cancer. J Pain Symptom Manage 2006; 31: 38‒47 3) Simon ST, Higginson IJ, Booth S, et al. Benzodiazepines for the relief of breathlessness in advanced malignant and non‒malignant diseases in adults. Cochrane Database Syst Rev 2010 (1): CD007354 4) Gomutbutra P, O’Riordan DL, Pantilat SZ. Management of moderate‒to‒severe dyspnea in III章推奨
p.87
hospitalized patients receiving palliative care. J Pain Symptom Manage 2013; 45: 885‒91 5) Clemens KE, Klaschik E. Dyspnoea associated with anxiety―symptomatic therapy with opi- oids in combination with lorazepam and its effect on ventilation in palliative care patients. Support Care Cancer 2011; 19: 2027‒33
p.88
フロセミド吸入 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,2 件の無作為化比較試験がある。Wilcock ら1)は,呼吸困難を有するがん患者15 名を,フロセミド吸入群(40 mg)とプラセボ吸入群および無治療群に無作為に割り付け,それぞれクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。評価項目であるarm exercise test*による最大運動負荷時の修正Borg スケールは,両群間に統計学的有意差を認めなかった(フロセミド吸入群:2.3 vs プラセボ吸入群:2.5)。またフロセミド吸入に伴う有害事象は認めなかった。Stone ら2)は,呼吸困難を有する進行がん患者7 名を,フロセミド吸入群(20 mg)とプラセボ吸入群に無作為に割り付け,呼吸困難の強度を評価した。評価項目である治療前と治療120 分後における呼吸困難VAS(0~100 mm)の変化量は,両群間に統計学的有意差を認めなかった(フロセミド吸入群:+17 mm vs プラセボ吸入群:-25 mm)。また,有害事象については未記載であった。 ** 以上より,これまでの研究では,フロセミドの吸入投与はプラセボと比較してが 4 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,フロセミドの吸入 投与は有効か? 関連する臨床疑問 12 呼吸困難を有するがん患者に対して,フロセミドの吸入投与は呼吸困難を緩 和するか? 12 がん患者の呼吸困難に対して,フロセミドの吸入投与を行わないことを推奨 する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 臨床疑問12 呼吸困難を有するがん患者に対して,フロセミドの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,フロセミドの吸入投与を行わないことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 *:arm exercise test腕運動負荷試験は,少ない運動負荷で呼吸困難のあるがん患者の呼吸困難を評価する方法である。座位で肩の高さの上下20 cm の範囲で片方ずつ1 分間に80 回のリズムに合わせて動かし,運動耐用能から呼吸困難の程度や肺機能を評価する。III章推奨
p.89
ん患者の呼吸困難を改善する明確な根拠は認めない。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,フロセミドの吸入投与を行わないことを推奨する。 (渡邊紘章,小原弘之) 【文 献】臨床疑問12 1) Wilcock A, Walton A, Manderson C, et al. Randomised, placebo controlled trial of nebulised furosemide for breathlessness in patients with cancer. Thorax 2008; 63: 872‒5 2) Stone P, Rix, Kurowska A, et al. Re: Nebulized furosemide for dyspnea in terminal cancer patients. J Pain Symptom Manage 2002; 24: 274‒5
p.90
コルチコステロイド5 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,コルチコステロイドの全身投与は有効か? 関連する臨床疑問 13 呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わずコルチコステロイドの全 身投与を行うことは呼吸困難を緩和するか? 14 がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステ ロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 15 上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロ イドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 16 主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコ ステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 13 呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わず一律にはコルチコステロ イドの全身投与を行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 14 がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステ ロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 15 上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロ イドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 16 主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコ ステロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問13 呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わずコルチコステロイドの全身投与を行うことは呼吸困難を緩和するか? 呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わず一律にはコルチコステロイドの全身投与を行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
p.91
解 説本臨床疑問に関する臨床研究には,観察研究が4 件ある(症例報告2 件を含む)。Hardy ら1)は,何らかの病態や症状に対してコルチコステロイドが投与されたがん患者106 名を対象として,前向き観察研究を行った。治療効果は4 段階の自己評価による症状スコア(0:なし~3:重度)で,1 週間ごとに8 週まで評価され,時期を問わず最も良いスコアを“Best overall response”と定義した。呼吸困難を伴う15 名のうち治療効果が解析可能な13 名において,開始時と比較したBest overall response が改善であったのは5 名(39%)であった。Mercadante ら2)は,在宅緩和ケアサービスを受けるがん患者で,何らかの病態や症状のためコルチコステロイドの投与が開始された50名を対象として,前向き観察研究を行った。4 段階の症状スコア(0:全くない~3:重度)で,2 または3 が適格基準で,スコアが0 または1 になれば有効と判定した。治療経過は全患者の死亡時まで観察された。呼吸困難に対してコルチコステロイドを投与された18 名のうち, 13 名(72%)は有効であった。Elsayem ら3)は,主要気道閉塞(major airway obstruction;MAO)を呈しコルチコステロイドの投与が開始されたがん患者3 名に関する症例報告を行った。そのうち主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者2 名に対してコルチコステロイドの全身投与を行い,呼吸困難NRS(0~10)で評価した。コルチコステロイドの投与開始後,2 名(100%)とも12 時間以内に著明な呼吸困難の改善を認めた(NRS 6~7→2,NRS 10→1~2)。Storck ら4)は,がん性リンパ管症に伴う呼吸困難を有する子宮頸がん患者1 名に関する症例報告を行った。モルヒネの全身投与,アルブテロールの吸入とともにコルチコステロイドの全身投与を行ったところ,呼吸状態はほとんど改善せず急速に悪化した。呼吸困難自体の変化は報告されなかった。上記4 件の観察研究において,病態・症状を問わずコルチコステロイドの全身投与を行った際の有害事象としては,不眠・せん妄(20%),感染症(口腔内カンジダ症を含む)(24%),高血糖(4%),消化管出血(10%)が報告され,重篤な有害事象も12%にみられた。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者の呼吸困難に対するコルチコステロイドの全身投与が有効である可能性が示唆された。しかしながら,これらの研究は研究デザインの質が非常に低く,十分な根拠とはいえない。また,コルチコステロイドの全身投与が奏効する患者の背景や病態については明らかではない。さらに,有害事象も稀ではなく報告されている。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,呼吸困難を有するがん患者に対して,原因病態を問わず一律にはコルチコステロイドの全身投与を行わないことを提案する。ただし,コルチコステロイドによる呼吸困難の緩和作用を期待しうる原因病態(がん性リンパ管症,上大静脈症候群,主要気道閉塞(MAO),気管支攣縮,化学療法・放射線治療による肺障害)がある場合は,条件付きでコルチコステロイドの全身投与を検討してもよい。
p.92
解 説本臨床疑問に対する臨床研究には,観察研究が2 件ある(症例報告1 件を含む)。Hardy ら1)は,何らかの病態や症状に対してコルチコステロイドが投与されたがん患者106 名を対象として,前向き観察研究を行った。治療効果は4 段階の自己評価による症状スコア(0:なし~3:重度)で,1 週間ごとに8 週まで評価され,時期を問わず最も良いスコアを“Best overall response”と定義した。がん性リンパ管症*に対してコルチコステロイドが投与された患者は10 名だったが,がん性リンパ管症を有する患者に関する呼吸困難の有無や呼吸困難の変化については報告されていない。Storck ら4)は,がん性リンパ管症による呼吸困難を有する子宮頸がん患者1 名に関する症例報告を行った。モルヒネの全身投与,アルブテロールの吸入とともにコルチコステロイドの全身投与を行ったところ,呼吸状態はほとんど改善せず,急速に悪化した。呼吸困難自体の変化は報告されなかった。 ** 以上より,これまでの研究では,がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことで呼吸困難が緩和するという根拠はない。しかしながら,臨床現場では,がん性リンパ管症による呼吸困難に対してコルチコステロイドの全身投与が慣習的に行われることが多く,Oxford Textbook of Palliative Medicine(4th ed.)6)では,がん性リンパ管症による呼吸困難の緩和を目的としてコルチコステロイドが慣習的に用いられており,開始量としてデキサメタゾン4~12 mg/日を用いてもよいと記載されている。上記のとおり,がん性リンパ管症に対するコルチコステロイド全身投与に関する研究自体が不足しており,その慣習を否定するに足る質の高い根拠もない。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。ただし,コルチコステロイドの投与開始後は,有効性と有害事象について慎重に評価し,無効例では速やかに中止することを前提とする。また,がん性リンパ管症合併例に対して,抗がん治療(化学療法や放射線治療など)の適応がある場合は,抗がん治療をコルチコステロイド投与に優先することとする。 臨床疑問14 がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 *:がん性リンパ管症がんの転移様式の一つであり,肺内のリンパ管系にがん細胞が浸潤,リンパ管塞栓を来す病態。P40 参照。III章推奨
p.93
解 説本臨床疑問に関する1 件の系統的レビューがある。無作為化比較試験,前後比較試験,観察研究は存在しない。Rowell ら5)は,気管支のがんによる上大静脈症候群*に対するコルチコステロイド,放射線治療,化学療法,ステント留置に関する系統的レビューを行った。しかし,コルチコステロイドの効果に関しては,実証研究がみられなかった。Ostler ら7)の総説をもとに,コルチコステロイドは放射線治療の標準治療の一環として使用されているものの,放射線治療により浮腫が惹起されるというエビデンスがないため,コルチコステロイドを使用する根拠は乏しいと結論づけている。 ** 以上より,これまでのところ,上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことで呼吸困難が緩和されることを検討した研究はない。しかしながら,臨床現場では,上大静脈症候群による呼吸困難に対してコルチコステロイドの全身投与が慣習的に行われることが多い。上大静脈症候群に関する2 件の総説7,8)では,コルチコステロイドは症状緩和目的に慣習的に用いられ,悪性リンパ腫や胸腺腫ではコルチコステロイドにより腫瘍の縮小が得られるため,その他の腫瘍に比べて上大静脈閉塞の軽減が得られる可能性があるが,効果を検証した試験はないと記載されている。また,Oxford Textbook of Palliative Medicine(4th ed.)9)では,上大静脈症候群による呼吸困難を含む症状の緩和を目的としてコルチコステロイドを投与し(デキサメタゾン16 mg/日),漸減してもよいと記載されている。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。ただし,コルチコステロイドの投与開始後は,有効性と有害事象について慎重に評価し,無効例では速やかに中止することを前提とする。また,上大静脈症候群合併例に対して,抗がん治療(化学療法や放射線治療など)の適応がある場合は,抗がん治療をコルチコステロイドに優先することとする。 臨床疑問15 上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 *:上大静脈症候群何らかの原因により上大静脈が閉塞され,頭部・上肢・胸郭から右心房への静脈還流が妨げられる病態。P41 参照。
p.94
解 説本臨床疑問に関する系統的レビュー,無作為化比較試験,前後比較試験は存在しないが,症例報告が1 件ある。Elsayem ら3)は,主要気道閉塞(major airway obstruction;MAO)*を呈しコルチコステロイドの投与が開始されたがん患者3 名に関する症例報告を行った。そのうち主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者2 名に対してコルチコステロイドの全身投与を行い,呼吸困難NRS(0~10)で評価した。1 名ではデキサメタゾン10 mg を6 時間毎に静注したところ,12 時間以内に呼吸困難の改善(NRS 6~7→2)と喘鳴の軽減を認めた。もう1 名ではメチルプレドニゾロン125 mg を6時間毎に静注したところ,12 時間以内に呼吸困難の改善(NRS 10→1~2)を認め,喘鳴はほぼ消失した。 ** 以上より,これまでの研究では,主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は,呼吸困難を緩和させる可能性が示唆されるが,十分な根拠とはいえない。しかしながら,臨床現場では,主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難に対してコルチコステロイドの全身投与が慣習的に行われることが多く,その慣習を否定するに足る質の高い研究もない。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。ただし,コルチコステロイドの投与開始後は,有効性と有害事象について慎重に評価し,無効例では速やかに中止することを前提とする。また,主要気道閉塞(MAO)合併例に対して,抗がん治療(化学療法や放射線治療など)の適応がある場合は,抗がん治療をコルチコステロイドに優先することとする。 (森 雅紀,西 智弘) 【文 献】臨床疑問13~16 1) Hardy JR, Rees E, Ling J, et al. A prospective survey of the use of dexamethasone on a palliative care unit. Palliat Med 2001; 15: 3‒8 2) Mercadante S, Fulfaro F, Casuccio A. The use of corticosteroids in home palliative care. Sup- port Care Cancer 2001; 9: 386‒9 臨床疑問16 主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 *:主要気道閉塞(MAO)咽頭~喉頭の上気道および気管~主気管支~葉気管支レベルの気道に狭窄を来す病態。P42 参照。III章推奨
p.95
3) Elsayem A, Bruera E. High‒dose corticosteroids for the management of dyspnea in patients with tumor obstruction of the upper airway. Support Care Cancer 2007; 15: 1437‒9 4) Storck K, Crispens M, Brader K. Squamous cell carcinoma of the cervix presenting as lymphangitic carcinomatosis: a case report and review of the literature. Gynecol Oncol 2004; 94: 825‒8 5) Rowell NP, Gleeson FV. Steroids, radiotherapy, chemotherapy and stents for superior vena caval obstruction in carcinoma of the bronchus. Cochrane Database Syst Rev 2001(4): CD001316 【参考文献】臨床疑問14 6) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic dis- ease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1124‒5 臨床疑問15 7) Ostler PJ, Clarke DP, Watkinson AF, et al. Superior vena cava obstruction: a modern management strategy. Clin Oncol(R Coll Radiol)1997; 9: 83‒9 8) Wilson LD, Detterbeck FC, Yahalom J. Clinical practice. Superior vena cava syndrome with malignant causes. N Engl J Med 2007; 356: 1862‒9 9) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic dis- ease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1121‒2
p.96
悪性胸水による呼吸困難に対する治療 特定の病態に対する治療3 1 ● 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者の,呼吸困 難を緩和する有効な方法は何か? 関連する臨床疑問 17 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸腔穿刺ドレナージは 呼吸困難を緩和するか? 18 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸膜癒着術は呼吸困難 を緩和するか? 19 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,利尿薬は呼吸困難を緩 和するか? 17 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するた めに胸腔穿刺ドレナージを行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 18 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するた めに胸膜癒着術を行うことを条件付きで提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 19 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するた めに利尿薬の投与を行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問17 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸腔穿刺ドレナージは呼吸困難を緩和するか? 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために胸腔穿刺ドレナージを行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨III章推奨
p.97
解 説本臨床疑問に対する臨床試験としては,比較試験が4 件(うち無作為化比較試験3 件),観察研究が7 件,系統的レビューが1 件ある。比較試験において,悪性胸水*1 による呼吸困難を有するがん患者に対し,胸腔穿刺ドレナージと無治療を直接比較した研究は存在しない。Boshuizen ら1)は,悪性胸水を有する患者49 名に胸腔穿刺ドレナージを行い,治療効果を前向きに調査した。安静時呼吸困難は修正Borg スケールで評価され,胸腔穿刺ドレナージ施行前には平均2.9 であったが,施行後平均1.9 日後には0.69 に改善していた。しかし,30 日以内に57.1%(28/49 名)に胸水に対する再処置が必要となった。Ost ら2)は,悪性胸水を有する患者266 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置を行い,治療効果を前向きに評価した。皮下カテーテル留置1 カ月後の呼吸困難を修正Borg スケールで評価し,留置前と比較して呼吸困難強度は統計学的に有意に改善(2.31 減少)を認めた。Lorenzo ら3)は,悪性胸水を有する肺がん患者27 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置を行い,治療効果を前向きに評価した。皮下カテーテル留置30 日後の呼吸困難をEORTC QLQ‒LC13*2 の呼吸困難に関する下位項目(0~100)で評価し,留置前と比較して呼吸困難強度は統計学的に有意に改善を認めた(21.62 改善)。Sabur ら4)は,悪性胸水を有する患者82 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置を行い,治療効果を前向きに評価した。皮下カテーテル留置2週間後の呼吸困難をEORTC QLQ‒LC13 の呼吸困難に関する下位項目(0~100)で評価し,56 名で評価が可能であり,留置前と比較して呼吸困難強度は統計学的に有意に改善を認めた(20.4 改善)。Tscheikuna ら5)は,悪性胸水を有する患者10 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置を行い,治療効果を前向きに評価した。皮下カテーテル留置2 週間後の修正Borg スケールで評価し,留置前と比較して呼吸困難強度は統計学的に有意に改善を認めた(留置前:4→留置2 週間後:0.5)。Chen ら6)は,悪性胸水を有する患者342 名に対して胸腔穿刺ドレナージのためのpig‒tail カテーテルの留置を477 回行い,治療効果を後ろ向きに評価した。91%で呼吸困難の改善を認めた(呼吸困難改善の定義の記載はなし)。Kriegel ら7)は,悪性胸水を有する患者125 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下ポート留置を行い,治療効果を前向きに評価した。97.8%(122/125 名)で呼吸困難の改善を認めた(呼吸困難改善の定義の記載はなし)。上記の観察研究7件すべてにおいて,介入後の呼吸困難の改善が報告されていた。これらの研究において,生活の質(QOL)の改善を指標とした検討が行われた4 件のうち2 件4,5)で,統計学的に有意なQOL の改善を認めたが,他の2 件2,3)ではQOLの有意な改善を認めなかった。有害事象に関しては,全研究の統合値で何らかの有害事象が6.5%に認められたが,処置に伴う死亡は認めなかった。Fysh ら8)は,悪性胸水を有する患者65 名を,患者意向による治療法選択を行う方法で,皮下カテーテル留置群と,胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)に分け,治療効果を評価した。呼吸困難VAS(0~100 mm)の治療前の標準偏差の1/2 の数 *1:悪性胸水胸膜播種や腫瘍の転移・浸潤など,がんが原因となって胸腔内に貯留した液体。P43 参照。 *2:EORTC QLQ‒LC13肺がん患者の生活の質(quality of life)を評価する目的で開発された13 項目からなる自記式質問表である。QLQ‒ C30 は全がん種を対象にしており,QLQ‒LC13 には肺がん特異的な症状の評価が含まれている。
p.98
値以上改善したものを改善例と定義し評価したところ,改善例は両群間で統計学的有意差を認めなかった(皮下カテーテル留置:93.3% vs 胸膜癒着:78.6%)。Davies ら9)は,悪性胸水を有する患者106 名を,皮下カテーテル留置群と胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である施行42 日後の呼吸困難VAS(0~100 mm)の改善は両群間に統計学的有意差を認めなかった。呼吸困難VAS が10 mm 以上の改善を認めた症例の割合も,両群間で統計学的有意差を認めなかった(皮下カテーテル留置群:86% vs 胸膜癒着群:74%)。Demmy ら10)は,悪性胸水を有する患者57 名を,皮下カテーテル留置群と胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である呼吸困難強度(dyspnea score:数値の範囲記載なし)の改善(評価の時点は記載なし)は,胸膜癒着群と比較して皮下カテーテル留置群で呼吸困難の改善量が統計学的に有意に大きかった(皮下カテーテル留置群:8.5 vs 胸膜癒着群:6.1)。Putnam ら11)は,悪性胸水を有する患者144 名を,皮下カテーテル留置群と胸膜癒着群(ドキシサイクリンで胸膜癒着術施行)に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である安静時・労作時における修正Borg スケールは,30 日後の労作時は胸膜癒着群と比較して皮下カテーテル留置群で統計学的に有意に改善を認めた(皮下カテーテル留置群:2.2 vs 胸膜癒着群:1.0)が,安静時は統計学的有意差を認めず,60 日後および90 日後は安静時,労作時ともに両群間に統計学的有意差は認めなかった。上記4 件の比較試験の統合データでは,胸腔穿刺ドレナージに伴う有害事象は21.1%に認められたが,対照群(19.1%)との統計学的有意差は認めなかった。また,死亡例は0.5%で認めたが,対照群(0.6%)との統計学的有意差は認めなかった。Van Meter ら12)による系統的レビューでは,胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置の悪性胸水に対する治療効果と安全性に関して19 件の研究(1 件の無作為化比較試験,18 件の観察研究)が検討された。症状は95.6%の症例で緩和され,合併症は皮下気腫(2.8%),気胸(5.9%),カテーテル閉塞(3.7%)などであるが重篤な合併症は少なかった。皮下カテーテル留置は悪性胸水の治療・症状緩和に有用で大きな合併症も少ないと考えられるが,観察研究が中心であり,質の高いエビデンスではないため,さらなる無作為化比較試験による検証が必要と結論されている。 ** 以上より,これまで行われた7 件の観察研究と観察研究を中心とした1 件の系統的レビューの結果から,悪性胸水に対する胸腔穿刺ドレナージによる呼吸困難改善効果が示唆された。また,採用した4 件の胸膜癒着との比較試験においても,胸腔穿刺ドレナージによる呼吸困難改善効果が示唆されている。したがって,本ガイドラインでは,悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために胸腔穿刺ドレナージを行うことを推奨する。ただし,胸水再貯留のため,頻回の胸腔穿刺ドレナージが必要となる場合は,気胸,膿胸,胸腔内隔壁形成などの合併症の原因ともなりうる。そのため,予測される生命予後が短く,全身状態が不良な症例では,呼吸困難に対する薬剤での対応を行いつつ,胸腔穿刺ドレナージの必要性を慎重に検討することとする。III章推奨
p.99
解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,比較試験が4 件(うち無作為化比較試験3 件)と系統的レビューが1 件がある。Fysh ら8)は,悪性胸水を有する患者65 名を,患者意向による治療法選択を行う方法で,胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)と皮下カテーテル留置群に分け,治療効果を評価した。呼吸困難VAS(0~100 mm)の治療前の標準偏差の1/2 の数値以上改善したものを改善例と定義し評価したところ,改善例は両群で統計学的有意差を認めなかった(胸膜癒着:78.6% vs 皮下留置カテーテル:93.3%)。Davies ら9)は,悪性胸水を有する患者106 名を,胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)と皮下カテーテル留置群に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である施行42 日後の呼吸困難VAS(0~100 mm)の改善は両群間に統計学的有意差を認めなかった。呼吸困難VAS が10 mm 以上の改善を認めた症例の割合も,両群で統計学的有意差を認めなかった(胸膜癒着群:74% vs 皮下カテーテル留置群:86%)。Demmy ら10)は,悪性胸水を有する患者57 名を,胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)と皮下カテーテル留置群に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である呼吸困難強度(dyspnea score:数値の範囲記載なし)の改善(評価の時点は記載なし)は,皮下カテーテル留置群と比較して胸膜癒着群で呼吸困難の改善量が統計学的に有意に少なかった(胸膜癒着群:6.1 vs 皮下カテーテル留置群:8.5)。Putnam ら11)は,悪性胸水を有する患者144 名を,胸膜癒着群(ドキシサイクリンで胸膜癒着術施行)と皮下カテーテル留置群に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である安静時・労作時における修正Borg スケールの改善は,30日後の労作時は皮下カテーテル留置群と比較して胸膜癒着群で統計学的に有意に改善が乏しかった(胸膜癒着群:1.0 vs 皮下カテーテル留置群:2.2)が,安静時は統計学的有意差を認めず,60 日後および90 日後は安静時,労作時ともに両群に統計学的有意差は認めなかった。上記4 件の比較試験の統合データでは,胸膜癒着に伴う有害事象は19.1%で認められたが,対照群(21.1%)と統計学的な有意差は認めなかった。また,死亡例は0.6%で認めたが,対照群(0.5%)と統計学的な有意差は認めなかった。Shaw ら13)による系統的レビューでは,36 件の無作為化比較試験の結果から胸膜癒着剤の種類による胸膜癒着の効果の差を再貯留の有無で評価検討している。メタ 臨床疑問18 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸膜癒着術は呼吸困難を緩和するか? 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために胸膜癒着術を行うことを条件付きで提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨
p.100
アナリシスで,タルクが他の癒着剤よりも成功率が高いと報告されているが,呼吸困難の改善に関しての評価はされていなかった。 ** 以上より,これまでの研究では,悪性胸水による呼吸困難に対して,胸膜癒着術が胸腔穿刺ドレナージを上回る有用性は示されていない。しかしながら,胸膜癒着術施行後に7 割以上の症例で呼吸困難が改善しており,有害事象の発生は胸腔穿刺ドレナージと比較して統計学的有意差は認めなかった。また,胸膜癒着術が成功した場合は,チューブ留置状態からの解放や頻回の胸腔穿刺ドレナージの回避が可能となる場合があり,胸膜癒着成功例では利益が得られる場合もあると考えられる。したがって,本ガイドラインでは,悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために胸膜癒着術を行うことを条件付きで提案する。ただし,適応となるのは,1悪性胸水貯留に伴う症状緩和のために頻回の胸腔穿刺ドレナージが必要である,2全身状態が比較的良好である,3予後が月単位以上で見込める,というすべての条件を満たす症例に限られると考える。また,胸膜癒着術を行う場合には,有害事象発生の可能性も念頭に置き,施行目的を明確にし,利益と不利益に関して患者と十分に相談したうえで実施することとする。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究は,これまでのところ報告されていない。 ** 以上より,これまでの研究では,利尿薬が悪性胸水による呼吸困難を改善する根拠はない。臨床的には,心不全・肝不全・ネフローゼ症候群などに伴う体液過剰による胸水には利尿薬が有効であることがあるが,悪性胸水に対する治療効果を裏付ける薬理学的・病態生理学的な根拠は十分ではない。また,利尿薬の使用に伴い腎機能障害・電解質異常や,循環血漿量の低下に伴う有害事象のリスクがあると考えられるため,悪性胸水を有する患者に対して一律な利尿薬の使用は避ける必要がある。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和することを目的に利尿薬の投与を行わないことを提案する。 (中村陽一,坂下明大) 臨床疑問19 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,利尿薬は呼吸困難を緩和するか? 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために利尿薬の投与を行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
p.101
【文 献】臨床疑問17,18 1) Boshuizen RC, Vincent AD, van den Heuvel MM. Comparison of modified Borg scale and visual analog scale dyspnea scores in predicting re—intervention after drainage of malignant pleural effusion. Support Care Cancer 2013; 21: 3109—16 2) Ost DE, Jimenez CA, Lei X, et al. Quality—adjusted survival following treatment of malignant pleural effusions with indwelling pleural catheters. Chest 2014; 145: 1347—56 3) Lorenzo MJ, Modesto M, Pérez J, et al. Quality—of—Life assessment in malignant pleural effusion treated with indwelling pleural catheter: a prospective study. Palliat Med 2014; 28: 326—34 4) Sabur NF, Chee A, Stather DR, et al. The impact of tunneled pleural catheters on the quality of life of patients with malignant pleural effusions. Respiration 2013; 85: 36—42 5) Tscheikuna J, Thomrongpairoj P, Disayabutr S. The efficacy of Jackson drain in the application to be a tunnel pleural catheter(TPC)in the management of malignant pleural effusion. J Med Assoc Thai 2011; 94: 679—85 6) Chen YM, Shih JF, Yang KY, et al. Usefulness of pig—tail catheter for palliative drainage of malignant pleural effusions in cancer patients. Support Care Cancer 2000; 8: 423—6 7) Kriegel I, Daniel C, Falcou MC, et al. Use of a subcutaneous implantable pleural port in the management of recurrent malignant pleurisy: five—year experience based on 168 subcutaneous implantable pleural ports. J Palliat Med 2011; 14: 829—34 8) Fysh ET, Waterer GW, Kendall PA, et al. Indwelling pleural catheters reduce inpatient days over pleurodesis for malignant pleural effusion. Chest 2012; 142: 394—400 9) Davies HE, Mishra EK, Kahan BC, et al. Effect of an indwelling pleural catheter vs chest tube and talc pleurodesis for relieving dyspnea in patients with malignant pleural effusion: the TIME2 randomized controlled trial. JAMA 2012; 307: 2383—9 10) Demmy TL, Gu L, Burkhalter JE, et al. Optimal management of malignant pleural effusions (results of CALGB 30102). J Natl Compr Canc Netw 2012; 10: 975—82 11) Putnam JB Jr, Light RW, Rodriguez RM, et al. A randomized comparison of indwelling pleural catheter and doxycycline pleurodesis in the management of malignant pleural effusions. Cancer 1999; 86: 1992—9 12) Van Meter ME, McKee KY, Kohlwes RJ. Efficacy and safety of tunneled pleural catheters in adults with malignant pleural effusions: a systematic review. J Gen Intern Med 2011; 26: 70—6 13) Shaw P, Agarwal R. Pleurodesis for malignant pleural effusions. Cochrane Database Syst Rev 2004(1): CD002916
p.102
咳嗽の緩和に対する治療 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,比較試験が2 件,系統的レビューが1 件 2 ● 咳嗽を有するがん患者の,咳嗽を緩和する有効な方法 は何か? 関連する臨床疑問 20 咳嗽を有するがん患者に対して,オピオイドは咳嗽を緩和するか? 21 咳嗽を有するがん患者に対して,デキストロメトルファンは咳嗽を緩和する か? 22 咳嗽を有するがん患者に対して,プレガバリン・ガバペンチンは咳嗽を緩和 するか? 23 咳嗽を有するがん患者に対して,リドカインを吸入することは咳嗽を緩和す るか? 20 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにコデイン・ジヒドロ コデイン,モルヒネを投与することを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 21 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにデキストロメトル ファンを投与することを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 22 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにプレガバリン・ガバ ペンチンを投与しないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 23 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにリドカイン吸入を行 わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問20 咳嗽を有するがん患者に対して,オピオイドは咳嗽を緩和するか? 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにコデイン・ジヒドロコデイン,モルヒネを投与することを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
p.103
ある。Luporini ら1)は,140 名の咳嗽を有する肺がん患者を対象として,levodropropizine〔末梢性鎮咳薬(本邦未承認)〕群(levodropropizine 75 mg を1 日3 回内服)と,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン10 mg を1 日3 回内服)に無作為に割り付け,7 日間の投与前後での咳嗽の強度を患者と医療従事者が5 段階リッカート尺度で評価した。両群ともに投与前後で咳嗽は統計学的に有意な改善を認めたが,両群間に統計学的有意差は認めなかった。Barnabè ら2)は,119 名の咳嗽を有する呼吸器疾患患者を対象として,moguisteine〔末梢性鎮咳薬(本邦未承認)〕群(moguisteine 100 mg を1 日3 回内服),コデイン15 mg 群(コデイン15 mg を1 日3 回内服),コデイン30 mg 群(コデイン30 mg を1 日3 回内服),の3 群に無作為に割り付け,咳嗽の改善を評価した。咳嗽の強度はVAS(0~100 mm)で評価した。投与48 時間前後の咳嗽の強度は,moguisteine 群で80%,コデイン群で77%の患者で低下した。上記2 件の報告では,コデイン・ジヒドロコデインの内服による有害事象として眠気などを対照群と比較して有意に多く認めたが,重篤な有害事象に関して統計学的有意差は認めなかった。Molassiotis ら3)の系統的レビューでは,がん患者の咳嗽に対しての薬物療法としてモルヒネ,コデイン・ジヒドロコデインが挙げられているが,いずれの報告も質の高い研究ではなく,がん患者の咳嗽に対しての薬物療法として推奨されるものはないと結論づけている。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者の咳嗽に対するオピオイドの有効性について,対照薬と比較して統計学的有意差は認められない。しかしながら,いずれの研究も実薬を対照としており,プラセボとオピオイドを比較した試験ではない。また,検討されているオピオイドは,コデイン・ジヒドロコデインおよびモルヒネのみであり,その他のオピオイドの効果は検討されていない。そのようななかで,既存の研究の結果では,コデイン・ジヒドロコデイン,モルヒネを投与した前後で咳嗽の頻度や強度が減少し,重篤な有害事象の増加を認めないことが示されている。これらのことから,オピオイドががん患者の咳嗽を改善する可能性はあると考えられる。したがって,本ガイドラインでは専門家の合意により,咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにコデイン・ジヒドロコデイン,モルヒネを投与することを提案する。
p.104
解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,咳嗽を有するがん患者のみを対象とした,デキストロメトルファンの効果を検討した研究は存在しなかった。一方,非がん患者を含めた咳嗽を有する患者を対象とした臨床研究は,無作為化比較試験が5件と,系統的レビューが2 件ある。Catena ら4)は,中等症以上の乾性咳嗽患者(原疾患は問わない)209 名を,デキストロメトルファン群(デキストロメトルファン45 mg/日,5 日間内服)99 名と, levodropropizine〔末梢性鎮咳薬(本邦未承認)〕群(levodropropizine 180 mg/日, 5 日間内服)110 名に無作為に割り付け,咳嗽の回数を評価した。両群ともに投与前後で,咳嗽の回数は低下していたが,両群間に統計学的有意差は認めなかった。Del Donno ら5)は,7 日間以上持続する咳嗽を有した呼吸器疾患患者124 名を,デキストロメトルファン群(デキストロメトルファン90 mg/日)63 名と,moguisteine〔末梢性鎮咳薬(本邦未承認)〕群(moguisteine 600 mg/日)61 名に無作為に割り付け,咳嗽の回数を評価した。評価項目である投与2 日後の咳嗽回数は,投与前と比較して両群ともに減少していたが,両群間に統計学的有意差は認めなかった。Rühle ら6)は,9 名のがん患者を含む24 名の慢性咳嗽患者を対象として,デキストロメトルファン30 mg/日,glaucine〔気管支拡張薬(本邦未承認)〕30 mg/日,プラセボを用いたクロスオーバー比較試験を行い,咳嗽の回数を評価した。評価項目である投与日の夜間の咳嗽平均回数は,デキストロメトルファン群はプラセボ群と比較して統計学的に有意に咳嗽の回数が少なかった。Matthys ら7)は,4 名のがん患者を含む16 名の慢性咳嗽患者を対象として,デキストロメトルファン20 mg/日,コデイン20 mg/日,プラセボを用いたクロスオーバー比較試験を行い,咳嗽の回数を評価した。評価項目である投与3 日目の夜間8時間における咳嗽回数は,プラセボ群と比較してデキストロメトルファン群で統計学的に有意に減少した。Hamada ら8)は,127 名の慢性呼吸器疾患の患者を対象として,デキストロメトルファン群(90 mg/日)63 名とクロフェダノール群(75 mg/日)64 名に無作為に割り付け,咳嗽の改善度を評価した。評価項目である投与7 日目の呼吸困難改善度(7段階のリッカート尺度)は,デキストロメトルファン群は66.7%で改善を認めたが,両群間では統計学的有意差を認めなかった。上記5 件の無作為化比較試験のうち,4 件について有害事象の報告がなされてお 臨床疑問21 咳嗽を有するがん患者に対して,デキストロメトルファンは咳嗽を緩和するか? 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにデキストロメトルファンを投与することを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 III章推奨
p.105
り,デキストロメトルファンの投与による有害事象は13.3%(32 名/241 名)で認めたが,対照群との統計学的有意差は認めなかった。また,死亡を含めた重篤な有害事象は認めなかった。Yancy ら9)の系統的レビューでは,がん患者を含まない慢性咳嗽を対象としたデキストロメトルファンとプラセボとの比較試験について,Rühle ら6)とMatthys ら7)の報告を含む6 件について報告している。4 件の報告でデキストロメトルファンが咳嗽の強度,咳嗽の頻度を減少させ,1 件の報告で咳嗽の回数は減少させるが,咳嗽特異的QOL や睡眠障害の改善には有効でなく,1 件の報告でプラセボと比較して効果がなかったとしている。McCrory ら10)の系統的レビューでは,がん患者を含まない慢性咳嗽に対してのデキストロメトルファンの効果についてメタアナリシスが行われており,プラセボと比較して効果量は,咳嗽の強度が0.54〔95%信頼区間(CI),0.27 to 0.80;p=0.0008〕,咳嗽の頻度が0.40(95% CI,0.18 to 0.85;p=0.0248)と報告している。咳嗽の強度や頻度の改善には有効である可能性があるが,エビデンスとしては不十分であり,有害事象についてもエビデンスレベルの高い報告がないと結論づけている。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者のみを対象とした咳嗽に対するデキストロメトルファンの有効性を検討した試験はないが,慢性咳嗽患者を対象とした研究結果ではデキストロメトルファン群は対照群と比較して咳嗽の頻度の減少を示している。また,有害事象に関してはデキストロメトルファン群と対照群の間で統計学的有意差を認めない。これらの結果から,がん患者の咳嗽に対してもデキストロメトルファンの有効性が期待できる可能性がある。したがって,本ガイドラインでは,咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにデキストロメトルファンを投与することを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,がん患者を対象としたプレガバリン・ガバペンチンの咳嗽に対する効果を検討した研究は存在しなかった。一方,非がん患者を対象とした臨床研究は,無作為化比較試験が1 件,観察研究が1 件,系統的レビューが1 件ある。Ryan ら11)は,8 週間以上持続する慢性咳嗽で末梢性咳嗽の原因となりうる病態を 臨床疑問22 咳嗽を有するがん患者に対して,プレガバリン・ガバペンチンは咳嗽を緩和するか? 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにプレガバリン・ガバペンチンを投与しないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨
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すべて除外した患者62 名を,ガバペンチン群(ガバペンチン300~1,800 mg/日)32名,プラセボ群30 名に無作為に割り付け,咳嗽特異的QOL を評価した。主要評価項目である8 週間投与後のLeicester cough questionnaire(LCQ)score(3~21)は,プラセボ群と比較してガバペンチン群で統計学的に有意に改善していた。有害事象については,ガバペンチン群で17 件(31%),プラセボ群で6 件(10%)とガバペンチン群で統計学的に有意に多く認めたが,重篤な有害事象は認めなかった。Van de Kerkhove ら12)は,慢性咳嗽に対してガバペンチンが投与(ガバペンチン1,200 mg/日,4 週間の投与)された51 名について後ろ向きに調査した。咳嗽の強度については10 段階(1~10)評価を行い,治療後に平均2.8 低下した。8 名が有害事象を危惧して治療をせず,5 名が倦怠感,3 名がめまいで治療を中止している。35名の患者に効果を認めた。Cohen ら13)の系統的レビューでは,ガバペンチンに関するRyan らの無作為化比較試験1 件と2 件の症例集積を,プレガバリンに関する1 件の症例集積を評価に採用し,慢性咳嗽に対してはプレガバリン・ガバペンチンの投与が有効である可能性はあるが,さらに妥当性が確認された効果指標を用いた研究が必要であると結論づけている。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者のみを対象とした咳嗽に対するプレガバリン・ガバペンチンの有効性を検討した試験はない。慢性咳嗽患者を対象とした研究結果では,プレガバリン・ガバペンチンの投与により咳嗽の強度が減少し,咳嗽関連QOL の改善を認め,重篤な有害事象は認めないとされている。しかしながら,これらの研究は,がん患者の咳嗽の原因となりうる病態をすべて除外した患者のみを対象としており,がん患者に対してあてはめることができない可能性が高い。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにプレガバリン・ガバペンチンを投与しないことを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,がん患者のみを対象とした,リドカイン吸入の咳嗽に対する効果を検討した研究は存在しなかった。一方,非がん患者を対象とした臨床研究は,無作為化比較試験が1 件,観察研究が2 件,系統的レビュー 臨床疑問23 咳嗽を有するがん患者に対して,リドカインを吸入することは咳嗽を緩和するか? 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにリドカイン吸入を行わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
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が1 件ある。Chong ら14)は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者127 名を対象として,リドカイン吸入(リドカイン1 mg/kg)群62 名とテルブタリン(気管支拡張薬)吸入群65 名に無作為に割り付け,咳嗽の強度を評価した。主要評価項目である吸入1 時間後の咳嗽強度(10 段階のスコア)の改善は,両群ともにスコアが低下していたが,両群間に統計学的有意差は認めなかった。Lim ら15)は,慢性咳嗽に対して4%リドカイン(120 mg)吸入を施行された165名を対象としてリドカイン吸入の安全性についてアンケート調査を行った。99 名(60%)から回答が得られ,咳嗽の強度については,11 段階評価(0~10)で吸入前後での平均値が8.4 から5.9 に低下し,49%の患者が改善したと回答した。Lingerfelt ら16)は,1 名のがん患者を含む4 名の終末期の慢性咳嗽を有する患者に対して,4~6 L/分の酸素吸入に加えてリドカイン100 mg の吸入を行い,吸入から30 分後の咳嗽の強度を4 段階で評価した。慢性心不全患者1 名とがん患者1 名で効果があったとしているが,吸入後の咳嗽の強度について詳細な記載はなかった。リドカイン吸入による有害事象としては,先述した3 件の報告をまとめると動悸などの不整脈の頻度は3.8%(6 名/158 名)で発生したが,対照薬よりも統計学的に有意に発生頻度は少なかった。また,重篤な有害事象は認めなかった。Slaton ら17)の系統的レビューでは,Chong らの無作為化比較試験1 件と,Lim らの症例報告を含む6 件の症例集積を評価に採用し,治療抵抗性の慢性咳嗽患者に対して,リドカイン吸入は代替治療となる可能性はあるが,安全を確保するためにも十分な監視が必要であると結論している。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者のみを対象とした咳嗽に対するリドカイン吸入の有効性を検討した試験はない。慢性咳嗽患者を対象とした研究結果ではリドカイン吸入により咳嗽の強度は減少する可能性はあるが,咽頭のしびれや苦味,不整脈などの有害事象発生のリスクが指摘されている。したがって,本ガイドラインでは,咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにリドカインを吸入しないことを提案する。 (坂下明大,中村陽一) 【文 献】臨床疑問20 1) Luporini G, Barni S, Marchi E, et al. Efficacy and safety of levodropropizine and dihydrocodeine on nonproductive cough in primary and metastatic lung cancer. Eur Respir J 1998; 12: 97‒101 2) Barnabè R, Berni F, Clini V, et al. The efficacy and safety of moguisteine in comparison with codeine phosphate in patients with chronic cough. Monaldi Arch Chest Dis 1995; 50: 93‒7 3) Molassiotis A, Bailey C, Caress A, et al. Interventions for cough in cancer. Cochrane Database Syst Rev 2010(9): CD007881 臨床疑問21 4) Catena E, Daffonchio L. Efficacy and tolerability of levodropropizine in adult patients with non‒productive cough. Comparison with dextromethorphan. Pulm Pharmacol Ther 1997; 10: 89‒96 5) Del Donno M, Aversa C, Corsico R, et al. Efficacy and safety of moguisteine in comparison
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with dextromethorphan in patients with persistent cough. Drug Invest 1994; 7: 93‒100 6) Rühle KH, Criscuolo D, Dieterich HA, et al. Objective evaluation of dextromethorphan and glaucine as antitussive agents. Br J Clin Pharmacol 1984; 17: 521‒4 7) Matthys H, Bleicher B, Bleicher U. Dextromethorphan and codeine: objective assessment of antitussive activity in patients with chronic cough. J Int Med Res 1983; 11: 92‒100 8) Hamada A, Ito K, Ito S, et al. Study on the Effects of Clofedanol, A New‒Antitussive, by Double Blind Method‒In Comparison with Dextromethorphan. Rinsho Hyoka(Clinical Evaluation)1978; 6: 563‒87 9) Yancy WS Jr, McCrory DC, Coeytaux RR, et al. Efficacy and tolerability of treatments for chronic cough: a systematic review and meta‒analysis. Chest 2013; 144: 1827‒38 10) McCrory DC, Coeytaux RR, Yancy WS Jr, et al. Assessment and Management of Chronic Cough. Rockville(MD): Agency for Healthcare Research and Quality(US); 2013 Jan. Report No.: 13‒EHC032‒EF. AHRQ Comparative Effectiveness Reviews. 臨床疑問22 11) Ryan NM, Birring SS, Gibson PG. Gabapentin for refractory chronic cough: a randomised, double‒blind, placebo‒controlled trial. Lancet 2012; 380: 1583‒9 12) Van de Kerkhove C, Goeminne PC, Van Bleyenbergh P, et al. A cohort description and analysis of the effect of gabapentin on idiopathic cough. Cough 2012; 8: 9 13) Cohen SM, Misono S. Use of specific neuromodulators in the treatment of chronic, idiopathic cough: a systematic review. Otolaryngol Head Neck Surg 2013; 148: 374‒82 臨床疑問23 14) Chong CF, Chen CC, Ma HP, et al. Comparison of lidocaine and bronchodilator inhalation treatments for cough suppression in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Emerg Med J 2005; 22: 429‒32 15) Lim KG, Rank MA, Hahn PY, et al. Long‒term safety of nebulized lidocaine for adults with difficult‒to‒control chronic cough: a case series. Chest 2013; 143: 1060‒5 16) Lingerfelt BM, Swainey CW, Smith TJ, et al. Nebulized lidocaine for intractable cough near the end of life. J Support Oncol. 2007; 5: 301‒2 17) Slaton RM, Thomas RH, Mbathi JW. Evidence for therapeutic uses of nebulized lidocaine in the treatment of intractable cough and asthma. Ann Pharmacother 2013; 47: 578‒85 III章推奨
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死前喘鳴の軽減に対する治療 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件ある。Heisler ら1)は,59 名のがん患者(43%)を含む死前喘鳴を発症した終末期患者160 名を,アトロピン群(アトロピン1 mg 舌下投与)とプラセボ群に無作為に割り付けし,喘鳴の程度を評価した。主要評価項目の投与2 時間後の喘鳴の評価は看護師により4 段階で行われ,0=音が聞こえない,1=患者に近づくと聞こえる,2=静 3 ● 死前喘鳴を有するがん患者の,喘鳴を軽減する有効な 方法は何か? 関連する臨床疑問 24 死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与することは,喘鳴を軽 減するか? 25 死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与することは,喘鳴 を軽減するか? 26 死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引を実施することは,喘鳴を緩和する か? 24 死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与しないことを提案する。2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 25 死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与しないことを推奨 する。 1C (強い推奨,弱いエビデンス) 26 死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引は行わないことを提案する。2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問24 死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与することは,喘鳴を軽減するか? 死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与しないことを提案する。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨
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かな部屋でベッドサイドに立つ状態で聞こえる,3=静かな部屋で患者から20フィート(およそ部屋のドアのあたり)の距離で聞こえる,とスコア化し,1 段階以上のスコア改善を「効果あり」と判定した。この試験は中間解析において,主要評価項目で両群間に統計学的有意差がないことが判明したため(アトロピン群: 37.8% vs プラセボ群:41.3%),早期中止された。Clark ら2)は,進行がん患者10 名をスコポラミン臭化水素酸群(スコポラミン臭化水素酸400 mg 皮下注)とオクトレオチド群(オクトレオチド200 mg 皮下注)に無作為に割り付けし,それぞれクロスオーバーさせ,喘鳴の程度を評価した。主要評価項目である各薬剤投与1 時間後の喘鳴の程度(none~very severe の5 段階評価で,1 段階以上改善があれば効果ありと評価)は,両群間で統計学的有意差は認められなかった(スコポラミン臭化水素酸群:20% vs オクトレオチド群:20%)。これらの研究では,有害事象に関して,意識障害や尿閉の新たな発生は認めず,観察期間中に抗コリン薬群で19%の死亡例が認められたが,対照群との統計学的有意差は認めなかった。 ** 以上から,これまでの研究では,抗コリン薬の投与によりがん患者の死前喘鳴を改善する明確な根拠は認めない。また,がん患者以外も対象とした死前喘鳴に対する抗コリン薬の効果を検討した3 件の系統的レビューでは,いずれも死前喘鳴を治療するために抗コリン薬を使用することを支持するエビデンスは乏しいと結論づけている4‒6)。ただし,いずれの研究でも,抗コリン薬投与により一定割合で死前喘鳴の強度は改善を示しており,有害事象も対照群と同等であったことから,個々の患者においては抗コリン薬投与により死前喘鳴が改善する場合がある可能性は残される。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の死前喘鳴に対して,抗コリン薬の投与を行わないことを提案する。ただし,輸液の適正化や口腔ケアを行ったうえでも喘鳴が遷延し,家族の苦痛が強い場合には,抗コリン薬の投与を検討することは許容できると考える。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が1 件ある。Clark ら2)は,進行がん患者10 名を,オクトレオチド群(オクトレオチド200 mg 臨床疑問25 死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与することは,喘鳴を軽減するか? 死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与しないことを推奨する。 1C (強い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
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皮下注)とスコポラミン臭化水素酸群(スコポラミン臭化水素酸400 mg 皮下注)に無作為に割り付けし,それぞれクロスオーバーさせ,喘鳴の程度を評価した。主要評価項目である各薬剤投与1 時間後の喘鳴の程度(none~very severe の5 段階評価で,1 段階以上改善があれば効果ありと評価)は,両群間で統計学的有意差は認められなかった(スコポラミン臭化水素酸群:20% vs オクトレオチド群:20%)。この試験では,両群間において,重篤なものを含めて有害事象に統計学的有意差は認められなかった。 ** 以上から,これまでの研究では,オクトレオチドの投与により,がん患者の死前喘鳴が改善する明確な根拠は認めない。がん患者以外も対象とした死前喘鳴に対する複数の薬剤の効果を検討した系統的レビューにおいても,オクトレオチドの有効性について質の高いデータはない,と結論されている7)。また,オクトレオチドは薬価の高い薬剤であり,死前喘鳴に対する費用対効果を比較検討した報告は認められなかったものの,一般的に考えてその薬価に見合うだけの効果を示す根拠には乏しいと考えられる。したがって,本ガイドラインではがん患者の死前喘鳴に対して,オクトレオチドの投与は行わないことを推奨する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,比較試験は存在せず,観察研究が1 件ある。Mercadante ら3)は,死前喘鳴に対して抗コリン薬やモルヒネ,デキサメタゾンなどの薬剤を投与したのち,鎮静下に喉頭鏡を用いて吸引を行ったことで,喘鳴が消失し,特に有害事象は認められなかった,という1 例の症例報告を行っている。 ** 以上から,これまでの研究は症例報告のみで,報告されている手技内容が一般化できるものではなく,喘鳴を改善する明確な根拠とはいえない。死前喘鳴に対する吸引の有害事象について示した報告も認められないものの,臨床的には吸引に伴う刺激による疼痛や不快感,出血や酸素飽和度の低下,嘔吐の誘発といった苦痛を生じる可能性がある。また,吸引を頻回に行うことで,患者や家族にも身体的・精神的苦痛を与える可能性があることが懸念される。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,がん患者の死前喘鳴に 臨床疑問26 死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引を実施することは,喘鳴を緩和するか? 死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引は行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨
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対して,吸引は行わないことを提案する。 (西 智弘,森 雅紀) 【文 献】臨床疑問24,25 1) Heisler M, Hamilton G, Abbott A, et al. Randomized double‒blind trial of sublingual atropine vs. placebo for the management of death rattle. J Pain Symptom Manage 2013; 45: 14‒22 2) Clark K, Currow DC, Agar M, et al. A pilot phaseII randomized, cross‒over, double‒blinded, controlled efficacy study of octreotide versus hyoscine hydrobromide for control of noisy breathing at the end‒of‒life. J Pain Palliat Care Pharmacother 2008; 22: 131‒8 臨床疑問26 3) Mercadante S, Villari P, Ferrera P. Refractory death rattle: deep aspiration facilitates the effects of antisecretory agents. J Pain Symptom Manage 2011; 41: 637‒9 【参考文献】臨床疑問24 4) Mercadamte S. Death rattle: critical review and research agenda. Support Care Cancer 2014; 22: 571‒5 5) Lokker ME, van Zuylen L, van der Rijt CC, et al. Prevalence, impact, and treatment of death rattle: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2014; 47: 105‒22 6) Wee B, Hillier R. Interventions for noisy breathing in patients near to death. Cochrane Data- base Syst Rev 2008(1): CD005177 臨床疑問25 7) Lokker ME, van Zuylen L, van der Rijt CC, et al. Prevalence, impact, and treatment of death rattle: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2014; 47: 105‒22 III章推奨
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1 看護ケア 2 呼吸リハビリテーション 3 精神療法 4 リラクセーション IV章 非薬物療法
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呼吸困難の効果的な緩和のためには,薬物療法および非薬物療法の併用が必要である1—4)。非薬物療法には,以下の項で述べる呼吸リハビリテーション(P111 参照),精神療法(P115 参照),リラクセーション(P117 参照)のほか,主に看護師が関わる非薬物療法・非侵襲的な介入として,呼吸法のトレーニング,送風,看護師によるフォローアッププログラム,身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントプログラム,ケアマネジメントなどがある3,4)。これらは呼吸困難を緩和し,患者の生活の質(QOL)に貢献する可能性があるが,多くは慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者など非がん患者を対象に効果を検証したものであり,がん患者を対象とするエビデンスは不十分である。しかし,呼吸困難に対する有効な介入の理解を深め,統合された効果的なケアの開発に向けて取り組むために,すでに明らかになっている科学的エビデンスを俯瞰することは重要である。この項では,主に看護師が関わるであろう非薬物療法・非侵襲的な介入について,看護ケアとして述べる。 浅速呼吸や肺過膨脹時などの呼吸パターンの変化は,呼吸困難の原因となる。呼吸パターンの変調へのアプローチについては複数報告されている。口すぼめ呼吸*は,気道内圧を上昇させ呼吸回数を減少させることにより,ガス交換を改善する。Garrod ら5)は,69 名のCOPD 患者を対象に,口すぼめ呼吸と通常呼吸のクロスオーバー試験を実施した。いずれも歩行テスト(shuttle walking test)の前後で,呼吸困難の強度(修正Borg スケール)と呼吸困難が回復するまでの所要時間を評価した。歩行テスト後,両群で呼吸困難の強度は統計学的有意差を認めなかったが,呼吸困難が回復するまでの所要時間の平均値は,口すぼめ呼吸群のほうが統計学的に有意に短かった。Hochstetter ら6)は,30 名の心・肺疾患患者を無作為に2 群に割り付け,介入群(n=15)に対し,45 分間の呼吸法のトレーニング(口すぼめ呼吸,腹式呼吸,呼気時に動作を同調すること,体位の工夫および歩行や階段を登る時のペース配分の指導)を提供した。トレーニング初日と3 日目において,階段昇降時の呼吸困難を修正Borg スケールで評価した。3 日目の階段を昇り切った時および階段を下り切った時において,介入群の呼吸困難は統計学的に有意に低かった。Wu ら7)は,呼吸法のトレーニングが患者のQOL(呼吸困難を含む)および日常生活動作に与える効果を検証するために,30 名のCOPD 患者を2 群に割り付けた。介入群(n=20)は,1 日3 回,1 回15 分の呼吸法のトレーニング(呼吸困難時のパニックへの対処方法:5 分,口すぼめ呼吸:5 分,腹式呼吸:5 分)を2 週間受け,対照群は通常ケアを受けた。3 カ月後の呼吸困難(VAS)は,介入群において統計学的に有意に低かった。上記の報告により,口すぼめ呼吸,腹式呼吸,体位の工夫,パニックへの対処法 看護ケア1 1.呼吸法のトレーニング *:口すぼめ呼吸呼気に際して口をすぼめ,ゆっくり吐き出す呼吸法。気道内圧が高まり,末梢気道が虚脱しにくくなることで呼吸困難が改善する。
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などの呼吸法のトレーニングは,患者の呼吸困難の軽減に有効であることが示唆された。また,口すぼめ呼吸のみでは,呼吸困難の軽減には効果がなかったが,呼吸の回復までの所要時間の短縮には効果があることが示唆された。Bauseweinら3)は,系統的レビューにおいて,呼吸困難に対するこれらの呼吸法トレーニングのエビデンスレベルを中程度と分類している。しかし,いずれもCOPD 患者を対象とした研究報告であり,がん患者の呼吸困難に対する呼吸法トレーニングの有効性は,いまだ検証されていない。 Baltzan ら8)は,重症COPD 患者17 名を対象に,歩行中の顔への送風が呼吸困難の軽減に効果があるかどうかを検証するクロスオーバー試験を実施した。酸素飽和度が90%以上を維持するように経鼻で酸素吸入をしながらのトレッドミルテスト(コントロール)と,酸素供給に加えて顔に送風しながらのトレッドミルテスト(介入)のセットを3 日間実施し,VAS と修正Borg スケールを用いて呼吸困難を評価した。結果として,治療効果の統計学的有意差はみられなかった。Galbraith ら9)は,COPD,肺がん,喘息,心疾患の患者49 名を対象に,携帯型の扇風機(ファン)を顔に向けての5 分間歩行(介入)と,手持ちの扇風機を足に向けての5 分間歩行(コントロール)を10 分の間隔をおいて実施した。顔と足の順でそれぞれ,クロスオーバー試験を実施した。それぞれの歩行の前後で呼吸困難をVAS で評価したところ,顔に送風した群は呼吸困難が統計学的に有意に低かった。したがって,扇風機(ファン),うちわなどで顔に送風する方法は,呼吸困難を軽減する簡便な手段であり,自宅療養においても実践的かつ経済的で簡単な方法であることが示唆される。しかし,これらの報告は主にCOPD 患者を対象としたものであり,がん患者への効果は明らかではない。また,健常者を対象に顔に冷気を当てる方法が,呼吸困難の軽減に有効であることが報告されている10)。「風を感じることは,爽快感にはつながった」という患者コメントが多かったことからも9),呼吸困難のある患者の環境整備を行う際に,温度を低めに設定し,扇風機やうちわなどで顔に送風するなどのケアの工夫は有効である可能性がある。 Moore ら11)は,看護師による肺がん患者へのフォローアップの効果を明らかにするために,初期治療を終え,余命3 カ月以上と推測される肺がん患者を無作為に2群に割り付けた。介入群(n=100)に対し,肺がんのケアを専門とする看護師が以下のプログラムに沿ってフォローアップを行った。1電話または看護外来でのアセスメントを初回受診から2 週間後に行い,その後患者の状態が落ち着いていれば4週毎に,病状の進行や重篤な合併症に関するアセスメントを実施する,2専門看護師や看護外来への連絡は無料でできるようにし,緊急時にも対応できる体制とする,3必要な医療福祉資源を整え,情報を提供し,療養にあたっての支援を提供する,4一般開業医と地域医療福祉者たちとの迅速かつ包括的なコミュニケーション 2.送 風 3.看護師によるフォローアッププログラムIV章非薬物療法
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を強化する。対照群(n=103)には従来どおりの医療が提供された。EORTC QLQ (C30 とLC13)を用いて評価したところ,3 カ月後,12 カ月後における介入群の呼吸困難は統計学的に有意に減少した。したがって,看護師による肺がん患者のフォローアッププログラムは,呼吸困難の改善に貢献する可能性が示唆された。なお,このほか,ステージII以上の男性肺がん患者を,1がん専門ホームケアプログラム:進行がん患者のケアに関するトレーニングを受けた看護師によって提供,2標準的な在宅ケアプログラム:多職種によるホームケアプログラム,3外来プログラム:対照群(外来医師による通常のフォローアップ)の3 群に無作為に割り付け,効果を比較検討した報告があるが12),全般的な症状による苦痛を評価指標としており,呼吸困難に特化したものではない。また,進行肺がん患者の苦痛症状の構造的,系統的なアセスメントプロトコル利用の効果を評価したが,この報告でも全般的な症状を評価しており,呼吸困難に関する記述はなかった13)。 Corner ら14)は,身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントの効果を明らかにするために,化学療法・放射線治療後の肺がん患者34 名を対象とする無作為化比較試験を実施した。介入群(n=11)は,1カウンセリング,2呼吸法のトレーニング,3リラクセーションの方法に関する指導,4コーピング*方法の指導,の組み合わせからなる1 時間の複合的なプログラムに3~6 回参加した。対照群には,呼吸困難に関する詳細なアセスメントと呼吸困難に関する質問への回答のみ提供され,呼吸法のトレーニングやカウンセングは実施されなかった。VASを用いて,ベースライン,4 週目,12 週目の呼吸困難および呼吸困難による苦痛が評価された。4 週目,12 週目における呼吸困難(最も症状が強い時)のVAS および呼吸困難による苦痛(最も症状が強い時)のVAS は介入群において統計学的に有意な改善がみられた。この結果から,身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントプログラムは,呼吸困難および呼吸困難による苦痛の軽減に対して有効である可能性が示唆された。さらにBredin ら15)は,6 病院119 名の肺がん患者(小細胞肺がん,非小細胞肺がん,悪性胸膜中皮腫)を2 群に割り付け,介入群の患者は,外来に通院し(週1 回× 8 週間),看護師による身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントのプログラムを受けた。具体的には,1呼吸困難および,症状を悪化または改善する要素に関する詳細なアセスメント,2患者・家族に対する呼吸困難への対処方法のアドバイスとサポート,3呼吸困難や疾患がもたらす影響,今後の生活に対する患者の思いの探索,4呼吸法のトレーニング,リラクセーション法および気分転換のためのエクササイズの指導,5社会復帰支援,呼吸困難に対処するための方法やゴールの設定,6治療が有効とされる病態の早期発見である。対照群の患者は通常のケアを受けた。呼吸困難はVAS により,ベースライン,4 週間,8 週間の時点で測定された。8 週間後の呼吸困難は,介入群において統計学的に有意な改善がみられた。上記の2 つの報告から,呼吸困難に関する詳細なアセスメント,カウンセリング,患者・家族へのコーピング教育,呼吸法のトレーニング,リラクセーション法およ 4.身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントプログラム *:コーピングストレスに対応することを目的とした行動や考え方。がんの診断などがストレスとなる。
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び気分転換のためのエクササイズの指導など身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントは,肺がん患者の呼吸困難に対する対処能力を高め,また呼吸困難による身体的・心理的な苦痛を軽減することが示唆される。 Rabow ら16)は,重症もしくは予測される生命予後が1~5 年の外来患者90 名(がん30 名,COPD 29 名,心不全31 名)を無作為に2 群に割り付け,介入群(n=50)には,緩和ケアチームによる包括的なケアマネジメント(医療ソーシャルワーカー,看護師,チャプレン*,薬剤師,心理士,アートセラピスト,ボランティアコーディネーター,3 人の医師によるコンサルテーションやグループサポート)を実施した。対照群(n=40)には,通常ケアが提供された。評価は,6 カ月後,12 カ月後における呼吸困難が日常生活動作に及ぼす支障〔University of California St. Diego Shortness of Breath Questionnaire;UCSD—SOB dyspnoea interfering score(0~ 105)〕を測定した。その結果,介入群の呼吸困難による日常生活動作の支障は統計学的に有意に低かった。Egan ら17)は,66 名の入院中のCOPD 患者を無作為に2 群に割り付け,介入群(n=33)に対して,呼吸器疾患の卒後教育を受けた看護師がケアを立案して提供する包括的看護アセスメント(入院中のケアコーディネート,退院支援の一環としてのケースカンファレンスの開催,退院後1 週目と6 週目のフォローアップケアの提供)を提供した。対照群(n=33)には通常ケアを提供した。両群ともベースラインと退院1 カ月後,退院3 カ月後における呼吸困難の強度(St. George’s Respiratory Questionnaire の症状サブスケール)の平均値の変化で評価した。その結果,ベースラインと退院1 カ月後,ベースラインと3 カ月後の比較では,両群に統計学的有意差がみられたが,退院1 カ月後と3 カ月後の比較では統計学的有意差はなかった。Egan らの看護師による介入は,院内の治療に依存し,効果は一時的なものである可能性が高いが,Rabow の多職種チームによるケアマネジメントは,呼吸困難に対して長期的な効果が示唆される。しかし上記2 つの報告は,多くの対象が呼吸器・心疾患の患者であり,がん患者へのケアマネジメントの効果は検証されていない。 冒頭でも述べたように,呼吸困難に関する看護ケアの多くは,COPD 患者など非がん患者を対象に効果を検証したものであり,がん患者を対象とするエビデンスは不十分である。がんとCOPD では呼吸困難の発生のメカニズムが異なることからも,今後はがん患者を対象として,これらの看護ケアの有効性を検証していく必要がある。またエビデンスを俯瞰すると,身体的・精神的側面のサポートを統合したマネジメントが看護ケアのなかでも重要であることが示唆される。患者の呼吸困難に対する対処能力を高め,呼吸困難による身体的・心理的な苦痛を軽減するための効果的な看護ケアの開発が求められる。 (山岸暁美,小迫冨美恵,高橋美賀子,長谷川久巳,畑 千秋,田中桂子) 5.ケアマネジメント *:チャプレン軍隊,学校,病院,刑務所といった施設や組織で働く聖職者。 6.まとめIV章非薬物療法
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【文 献】1) National Comprehensive Cancer Network. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Palliative Care(version 1. 2009) http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/palliative.pdf 2) Dy SM, Lorenz KA, Naeim A, et al. Evidence—based recommendations for cancer fatigue, anorexia, depression, and dyspnea. J Clin Oncol 2008; 26: 3886—95 3) Bausewein C, Booth S, Gysels M, Higginson IJ. Non—pharmacological interventions for breathlessness in advanced stages of malignant and non—malignant diseases. Cochrane Database Syst Rev 2008(2): CD005623 4) Solà I, Thompson EM, Subirana Casacuberta M, et al. Non—invasive interventions for improving well—being and quality of life in patients with lung cancer. Cochrane Database Syst Rev 2004(4): CD004282 5) Garrod R, Dallimore K, Cook J, et al. An evaluation of the acute impact of pursed lips breathing on walking distance in nonspontaneous pursed lips breathing chronic obstructive pulmonary disease patients. Chron Respir Dis 2005; 2: 67—72 6) Hochstetter JK, Lewis J, Soares—Smith L. An investigation into the immediate impact of breathlessness management on the breathless patient: randomised controlled trial. Physiotherapy 2005; 91: 178—85 7) Wu X, Hou L, Bai W. Effects of breathing training on quality of life and activities of daily living in elderly patients with stable severe chronic obstructive pulmonary disease. Chinese Journal of Rehabilitation Medicine 2006; 21: 307—10 8) Baltzan MA, Alter A, Rotaple M, et al. Fan to palliate exercise—induced dyspnea with severe COPD. Am J Respir Crit Care Med 2000; 161(3 Suppl): A59 9) Galbraith S, Perkins P, Lynch A, Booth S. Does the use of a handheld fan improve chronic dyspnea? A randomized, controlled, crossover trial. J Pain Symptom Manage 2010; 39: 831— 8 10) Schwartzstein RM, Lahive K, Pope A, et al. Cold facial stimulation reduces breathlessness induced in normal subjects. Am Rev Respir Dis 1987; 136: 58—61 11) Moore S, Corner J, Haviland J, et al. Nurse led follow up and conventional medical follow up in management of patients with lung cancer: randomised trial. BMJ 2002; 325: 1145 12) McCorkle R, Benoliel JQ, Donaldson G, et al. A randomized clinical trial of home nursing care for lung cancer patients. Cancer 1989; 64: 1375—82 13) Sarna L. Effectiveness of structured nursing assessment of symptom distress in advanced lung cancer. Oncol Nurs Forum 1998; 25: 1041—8 14) Corner J, Plant H, A’Hern R, Bailey C. Non—pharmacological intervention for breathlessness in lung cancer. Palliat Med 1996; 10: 299—305 15) Bredin M, Corner J, Krishnasamy M, et al. Multicentre randomised controlled trial of nursing intervention for breathlessness in patients with lung cancer. BMJ 1999; 318: 901—4 16) Rabow MW, Dibble SL, Pantilat SZ, McPhee SJ. The comprehensive care team: a controlled trial of outpatient palliative medicine consultation. Arch Intern Med 2004; 164: 83—91 17) Egan E, Clavarino A, Burridge L, et al. A randomized control trial of nursing—based case man- agement for patients with chronic obstructive pulmonary disease. Lippincotts Case Manag 2002; 7: 170—9
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一般に,呼吸リハビリテーションの目的は,1呼吸機能障害による,労作時の呼吸困難の緩和,2呼吸困難による日常生活動作低下の改善,3気道感染などによる急性増悪の予防である。 呼吸リハビリテーションの対象は,標準的治療により病態が安定しており,症状(呼吸困難)と機能的制限がある慢性呼吸器疾患患者が中心であり,なかでも慢性閉塞性肺疾患(COPD)が最もよい適応である1)。現在の,呼吸リハビリテーションの有効性に関するエビデンスの多くは,COPD を対象としたものである。このCOPDを対象とした呼吸リハビリテーションは他の慢性呼吸器疾患,例えば間質性肺疾患,囊胞性線維症,気管支拡張症,胸郭変形といった疾患にも適用できる2)。呼吸困難の程度としてMRC(Medical Research Council)スケール*,Grade 3~ 5(中等度以上)の患者に呼吸リハビリテーションの適応があり,効果が期待できるとされる3)。また,運動療法を行ううえで支障となる運動器および神経疾患,精神疾患や不安定な循環器疾患などの合併した患者には呼吸リハビリテーションの適応はないと考えられる1)。 呼吸リハビリテーションのプログラムには,禁煙指導,患者教育,栄養指導,運動療法などが含まれる4)。[教育・指導] 疾患の自己管理,禁煙,薬物療法,感染症予防,栄養・食事療法などについての教育を指導する。[運動療法・呼吸理学療法] 持久力トレーニングおよび筋力トレーニング(運動療法),呼吸法のトレーニング,リラクセーション,排痰法など(理学療法)を行う。運動療法は,骨格筋の代謝機能の改善を通して,運動時の筋内乳酸産生を抑制し,それによって労作時の換気需要の低減をもたらし呼吸困難を有意に軽減する5)。さらに運動耐容能の改善,生活の質(QOL)の向上が期待でき,その効果の大きさ,エビデンスの強さから呼吸リハビリテーションの最も基本的な手段に位置づけられている1)。呼吸理学療法は,呼吸法のトレーニング,リラクセーション,排痰法などの手段を単独あるいは組み合わせて適用することにより,呼吸困難の軽減を図るとともに,身体活動の拡大や運動療法の導入を容易にすることが主な役割である。 呼吸リハビリテーション2 1.呼吸リハビリテーションの目的1) 2.対 象1) *:MRC スケール現在は修正MRC スケールが使用されている。P31 参照。 3.呼吸リハビリテーションの構成要素IV章非薬物療法
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呼吸リハビリテーションの考え方がん患者に対する呼吸リハビリテーションの役割は,現時点で十分に明らかにされているとはいえない。これまでの研究では,対象患者は主に病状が進行した慢性呼吸器疾患患者と,周術期のがん患者である。前者の場合,海外のガイドライン2)では適切な患者選択と,適切かつ現実的なリハビリテーションの目標が設定されていれば,患者にとっての利益は大きいであろうと述べている。これまでの呼吸リハビリテーションに関する研究の多くは,歩行して通院できる外来患者を対象しており,すべての患者にあてはまるとはいえず,研究結果の解釈には注意が必要である。例えば,頻回の入退院や長期入院のがん患者は,活動性低下と呼吸困難の悪化を来しやすく6),呼吸リハビリテーションの適応となる。しかし,このような患者の呼吸リハビリテーションに関する研究は少なく,現時点では全身状態の悪化したがん患者に対する適切なリハビリテーションの方法は,十分に検討されていない。がん患者の呼吸リハビリテーションに関する報告の多くは,周術期において検討されている。通常は,術後の呼吸器合併症の発症率や離床までの期間,ICU 在室あるいは入院期間などをアウトカムとして術後短期間の治療成績を検討している場合が多く,QOL の向上を主目的にした研究はまだ少ない。 運動療法がん患者においても,冒頭で述べたような目的で運動療法を主体とした呼吸リハビリテーションを適用することができる。歩行や自転車エルゴメータといった有酸素運動による運動療法は運動耐容能を増大させること7),呼吸法のトレーニングやリラクセーションを併用した運動療法は呼吸困難や疲労,痛みの緩和,運動耐容能およびHRQoL(health—related QOL:健康関連QOL)の改善6)が報告されている。Morris ら7)は,呼吸困難に伴う運動耐容能低下を来しているがん患者30名を対象に,外来での呼吸リハビリテーションの効果を後ろ向きに検討している。トレッドミルや自転車エルゴメータによる持久力トレーニングを中心とした運動療法,患者教育,心理・社会的サポートから構成された週2~3 回,8~12 週間のプログラムを施行し,導入前後で6 分間歩行試験*を行い,6 分間歩行距離(6—minute walk distance;6MWD)および6 分間歩行仕事量(6—minute walk work;6MWW:body mass×6MWD)によって効果判定を行った。その結果,呼吸困難の統計学的に有意な変化はなく6MWD および6MWW の増大を認め,有害事象はなかった。がん患者にとって外来呼吸リハビリテーションは安全で効果的であることが示された。Ozalevli ら6)は,Stage IIIB およびIVの入院肺がん患者18 名(男性15 名)に対して,呼吸調整および呼吸法のトレーニング,リラクセーション,運動療法(上下肢の自動運動と筋力トレーニング,電気刺激による筋力トレーニング)を対象者個別のニーズにあわせて施行し,痛みVAS(0~100),肺機能検査,6 分間歩行試験, Karnofsky performance status(KPS),HRQoL,Nottingham health profile(NHP)を介入前後で評価した。その結果,呼吸困難,疲労感および痛みの緩和,NHP にお 4.がん患者に対する呼吸リハビリテーション1 2 *:6 分間歩行試験平坦な屋内の歩行路を6 分間でどのくらいたくさん歩行できるかを評価する運動負荷試験。
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けるサブカテゴリー(身体運動性,痛み,エネルギー,感情および睡眠状態)の改善と6MWD の延長が統計学的に有意に認められた。しかしながら,肺機能やKPSにおいては統計学的に有意な変化はみられなかった。本介入は進行肺がん患者の呼吸器症状および痛み,HRQoL,運動耐容能の改善に有益であると結論している。特に,患者の個別性を重視した点が有用であったとされ,肺がん患者の治療の一つとして位置づけるべきであると結論している。以上より,がん患者においてさまざまな運動療法が試みられているが,現時点においては,実施可能性の高い標準的な介入は開発されていない。全身状態が良好な症例では,運動療法の効果が期待できる可能性が示唆されているが,がん患者に高頻度に合併する全身倦怠感や易疲労感などの症状に十分配慮するとともに,病的骨折を来しうる骨転移などにも十分なリスク管理が必要である。 呼吸理学療法呼吸法のトレーニング(P106,IV章—1 看護ケア参照)やリラクセーション(P117,IV章—4 リラクセーション参照)などの呼吸理学療法は,がん患者において症状緩和に役立つ重要な手段であるが,単独の効果について検討した報告はなく,その有効性は証明されていない。進行がんおよび非がん患者(COPD,間質性肺疾患,慢性心不全,運動ニューロン疾患)に対する呼吸法のトレーニングやリラクセーションなどの呼吸理学療法を含む非薬物療法が呼吸困難の軽減に及ぼす影響について,47 の無作為化比較試験(2,532 名)を対象にした系統的レビュー8)では,神経筋電気刺激(neuromusucular electrical stimulation;NMES*1,3 件),胸壁への振動刺激(chest wall vibration; CWV*2,5 件),歩行器の使用(7 件),呼吸法のトレーニング(3 件)が有効であることが示された。呼吸法のトレーニングは呼気時に口をすぼめながらゆっくりとはき出す口すぼめ呼吸によって,呼吸数の減少と1 回換気量の増大による換気効率の改善が示されており,理論的には進行がん患者群にも有効である可能性がある。しかし,これらの研究はほとんどがCOPD を対象としたものであり,がん患者に関するものは限られていた。以上より,がん患者においてさまざまな理学療法や介入法が試みられているが,現時点で推奨しうる呼吸理学療法プログラムは存在しない。NMES,CWV,歩行器の使用,呼吸法のトレーニングは,進行がん患者における呼吸困難の軽減に有用な介入手段である可能性が示唆される。今後,がん患者における各介入の有効性の確認,適応の明確化や方法の標準化が必要である。 (神津 玲,安部能成,田中桂子) 【文 献】1) Nici L, Donner C, Wouters E, et al; ATS/ERS Pulmonary Rehabilitation Writing Committee. American Thoracic Society/European Respiratory Society statement on pulmonary rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med 2006; 173: 1390—413 2) Ries AL, Bauldoff GS, Carlin BW, et al. Pulmonary Rehabilitation: Joint ACCP/AACVPR Evidence—Based Clinical Practice Guidelines. Chest 2007; 131(5 Suppl): 4S—42S 3) British Thoracic Society Standards of Care Subcommittee on Pulmonary Rehabilitation. Pul- 3 *1:NMES NMES は下肢筋群(主に大腿四頭筋)への電気刺激によって他動的に筋収縮を引き起こし,筋力の増強を試みる方法である。 *2:CWV CWV は傍胸骨部に吸気相に一致させて100 Hz 程度の振動刺激を加えることで呼吸困難の軽減を試みる方法である。IV章非薬物療法
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monary rehabilitation. Thorax 2001; 56: 827—34 4) 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリテーション委員会,日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会,日本呼吸器学会ガイドライン施行管理委員会,日本理学療法士協会呼吸リハビリテーションガイドライン作成委員会 編.呼吸リハビリテーションマニュアル―患者教育の考え方と実践,東京,照林社,2007 5) Casaburi R, Patessio A, Ioli F, et al. Reductions in exercise lactic acidosis and ventilation as a result of exercise training in patients with obstructive lung disease. Am Rev Respir Dis 1991; 143: 9—18 6) Ozalevli S, Ilgin D, Kul Karaali H, et al. The effect of in—patient chest physiotherapy in lung cancer patients. Support Care Cancer 2010; 18: 351—8 7) Morris GS, Gallagher GH, Baxter MF, et al. Pulmonary rehabilitation improves functional status in oncology patients. Arch Phys Med Rehabil 2009; 90: 837—41 8) Bausewein C, Booth S, Gysels M, Higginson IJ. Non—pharmacological interventions for breath- lessness in advanced stages of malignant and non—malignant diseases. Cochrane Database Syst Rev 2008(2): CD005623
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観察研究において,呼吸困難と不安などの精神症状との関連が指摘されている。本項では,精神療法が呼吸困難の軽減に有効であるかについて概説する。 系統的レビューによると,がん患者の呼吸困難に対する精神療法の有用性を検討した無作為化比較試験は存在しない。ただし,慢性閉塞性肺疾患(COPD)における呼吸困難に対する精神療法の有用性を検討した研究として,以下の2 つがある1)。Rosser ら2)は,COPD を有する65 名の患者を,8 週間かけて施行する3 種類の精神療法(精神力動的精神療法*1,支持的精神療法*2,看護ケア)のいずれか,あるいは対照群(1 週間ごとに採血のみを行う)の計4 群に無作為に割り付け,介入終了後,6 カ月後にVAS(呼吸困難,抑うつ,不安)とFletcher scale(Hugh—Jonesの分類:耐運動能),GHQ*3(精神疾患の有無)を用いて評価を行った。その結果,すべての群で治療終了後に呼吸困難の改善を認めたが,看護ケア群でのみ,その効果は6 カ月後にも持続していた。精神症状は支持的精神療法群で改善したが,精神力動的精神療法群では改善しなかった。本研究では,症例数の計算などが行われておらず,症例数の不足のために効果が見出せなかった可能性がある。また,無作為割付も不適切で,対照群で抑うつ,不安が強かったという背景の相違があった。また著者らは,呼吸困難があるとはいえ不安についての治療を求めていない患者に,心理学的介入を提供することの妥当性に疑問を呈している。Eiser ら3)は,COPD を有する患者群において,グループ認知行動療法*4 が不安を軽減し,ひいては呼吸困難を改善するかどうかを調査した。16 名の安定したCOPD患者を,無作為化を行わずに,介入群に10 名,対照群に6 名を振り分けた。介入群は,5~6 名を1 グループとして,精神科医による1 回90 分のグループ認知行動療法を毎週計6 回行った。対照群では,呼吸機能検査を6 週間にわたって毎週行った。評価は第1 日目,介入終了後1 週目,12 週目に,VAS(6 分間歩行試験後の呼吸困難),MRC スケール*5(呼吸困難による支障の程度),SGRQ*6(呼吸器疾患による健康状態やQOL への影響)を用いて行った。その結果,対照群においてはすべての生理学的検査,心理学的スコアの変化を認めなかったが,介入群においては6 分間歩行距離が,介入終了後1 週目において有意に改善し,この効果は12 週目にも認められた。しかし主観的な抑うつ,不安,呼吸困難には全く改善を認めなかった。本研究についても,症例数が不足していること,無作為化を行っていないこと,その他多くの研究デザイン上の問題がある。レビューにおいては,精神療法に関するカテゴリーには,これらの2 研究しか含まれなかったため,エビデンスの強さは算出されなかった1)。 精神療法3 1.呼吸困難に対する精神療法*1:精神力動的精神療法洞察的精神療法の一種。患者の有する葛藤を明らかにし,転移感情の解釈を行ったり,精神療法中に生じた感情と幼少時に経験した感情を結び付けて過去の問題を治療関係のなかで扱うことで解決するといった手法を用いて治療を行う。一般的には年単位にわたって長期に行うことが定型とされるが,Rosser らは,それを身体疾患がある患者に提供するため,短期間のプログラムとして実施した。 *2:支持的精神療法患者と信頼関係を構築するなかで,感情表出の促進をしつつ,それを傾聴,受容,共感といった技術を用いて患者を支えることを中心とした精神療法。洞察的精神療法などと比較すると,患者に変化を迫るよりもむしろ現在の患者を肯定的に受け止め,現在有している能力を強化するといった点に特徴がある。精神力動的精神療法のなかで転移解釈を行わないものを支持的精神療法と定義している。 *3:GHQ(General Health Questionnaire)精神障害のスクリーニングを目的として開発された,30項目の自記式質問票。 *4:グループ認知行動療法認知行動療法とは,患者が直面している問題に関連する不適応な認知および行動のパターンに焦点をあて,治療者との精神療法的交流や行動実践などを通して適応的な認知・行動を学習することで,精神的苦痛を軽減する治療法である。グループ認知行動療法とは,複数の患者を対象とし,1 つの構造のなかで本治療方法を提供することをいう。Eiser らは,身体症状や病気が心理的側面に与える影響がどのように生活に影響を与えているかを話し合うなかで,不安やそのコントロールについて理解を深めるような治療を行った。また,呼吸法や筋弛緩法などのリラクセーション法も施行した。 *5:MRC スケール現在は修正MRC スケールが使用されている。P31 参照。 *6:SGRQ(St George’s Respiratory Questionnaire)呼吸器疾患による健康状態やQOL への影響を評価する, 50 項目の自記式質問票。IV章非薬物療法
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がん患者を対象とする横断的観察研究などにおいて,不安と呼吸困難との関連が示されているが,その因果関係は依然明らかになっているとは言い難い。よってがん患者の呼吸困難の治療にあたっては,まずは身体的側面からの対応が優先されるべきであると思われる。不安によって呼吸困難が増強しているように観察される患者に対しては,不安などの精神的負担の軽減を目的に精神療法を行い,副次的に呼吸困難の改善を目的とする場合があるかもしれない。しかしその場合にも,Rosser らが指摘するように患者自身の精神療法を受けたいという意向が重要となるのはいうまでもない2)。また終末期であれば,呼吸困難のために長時間にわたる会話が困難となり,精神療法の適応となりにくいことも留意するべきである1)。 (奥山 徹,山口 崇) 【文 献】1) Bausewein C, Booth S, Gysels M, Higginson IJ. Non—pharmacological interventions for breathlessness in advanced stages of malignant and non—malignant diseases. Cochrane Database Syst Rev 2008(2): CD005623 2) Rosser R, Denford J, Heslop A, et al. Breathlessness and psychiatric morbidity in chronic bronchitis and emphysema: a study of psychotherapeutic management. Psychol Med 1983; 13: 93—110 3) Eiser N, West C, Evans S, et al. Effects of psychotherapy in moderately severe COPD: a pilot study. Eur Respir J 1997; 10: 1581—4 2.まとめ
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がんによる心身の苦痛症状に対し,リラクセーションなどの非薬物療法は,非侵襲的かつ効果が期待できる介入方法として,関心が集まりつつある。昨今では,無作為化比較試験を含め,その有用性を検討する臨床研究が少しずつ増えてきている。この項では,リラクセーションに関する知見を概説する。 系統的レビュー1)によると,がん患者の呼吸困難に対する看護師によるカウンセリングと呼吸法およびリラクセーション法のトレーニングを提供した,いわゆる複合的介入方法の有用性を検討した無作為化比較試験の研究が2 つ取り上げられている。Corner ら2)は,肺がん患者34 名を19 名の介入群と15 名の対照群に無作為に割り付け,介入群に対しては,看護師によるカウンセリング,呼吸法の再訓練,リラクセーション法,コーピングスキルの指導からなる週1 回1 時間のセッションを3~6回と,その後患者の希望に応じてのフォローアップセッションを実施し,呼吸困難とそれによる苦痛をVAS により評価した。その結果,介入群に中等度の改善(呼吸困難によるつらさが53%,最悪時の呼吸困難が35%,呼吸機能能力が21%,それぞれ改善したが不安や抑うつには変化なし)がみられた一方で,対照群では同時期に現状維持あるいは増悪がみられた。よって,この介入方法は肺がん患者に対して有効と結論づけている。Bredin ら3)は,悪性胸膜中皮腫,非小細胞肺がん,小細胞肺がんの患者計119 名を介入群と対照群に無作為に割り付け,介入群には専門看護師による呼吸困難のアセスメントと対応へのアドバイス+カウンセリング+呼吸法+リラクセーション法のトレーニングを8 週間実施し,対照群に対しては同じ期間標準的な呼吸困難への治療法とマネジメントを実施した。その評価は介入前,4 週間後,8 週間後にVAS (呼吸困難の程度とそのつらさ),WHO のperformance status(PS),ロッテルダム症状チェックリスト,およびhospital anxiety and depression scale(HADS:不安・抑うつ評価スケール)を用いて行った。その結果,介入群では呼吸困難,抑うつ,(呼吸困難や消化器症状などを含む)身体症状によるつらさが有意に改善し,不安と呼吸困難によるつらさはわずかに改善した。看護師が提供する心理社会的サポートと呼吸法の指導およびコーピング法指導,そしてリラクセーションなどを含む複合的な介入は,がん患者の呼吸困難に対して有益であり,推奨すべきと結論している(P108~109 も参照)。 系統的レビューには,呼吸困難に対してイメージ療法(guided imagery),漸進的 リラクセーション4 1.リラクセーション法を含む複合的介入方法 2.単独介入としてのリラクセーション法IV章非薬物療法
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筋弛緩法(progressive muscle relaxation training;PMRT)など,単独でリラクセーション法が用いられた介入研究でがん患者を対象としたものはないが,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象とした研究が3 つと心不全患者を対象とした研究が1 つある1)。 イメージ療法Louie4)は,COPD 患者26 名を介入群13 名と対照群13 名に無作為に割り付け,介入群に対しては,心地よいイメージの想起や腹式呼吸を指示したリラクセーションテープをヘッドフォンで聴くというセッションを7 回行い,修正Borg スケールによる呼吸困難の評価と身体所見のパラメーター(酸素飽和度,心拍数,上胸部筋電図,皮膚伝導率,末梢皮膚温度)の変化をみた。その結果,介入群で酸素飽和度にのみ統計学的に有意な改善効果がみられたが,その他のパラメーターは2 つのグループの間で統計学的有意差を認めなかった。 漸進的筋弛緩法Renfroe5)は,COPD 患者を対象に7 名の介入群と7 名の対照群とに分け,介入群に対しては,16 の筋肉群に分けたPMRT セッション(規則的な呼吸に合わせて,足から顔まで順番に各群の筋肉の緊張と弛緩を繰り返していく)を週1 回45 分間行った後,4 週間にわたり同セッションを録音したテープを用いて毎日自宅で個々に練習をさせた。介入効果は,VAS を用いて呼吸困難を評価し,state—trait anxiety inventory(STAI)を用いて不安を評価した。加えて,心拍数,呼吸数,努力肺活量(forced vital capacity;FVC)*,1 秒間の呼出量も測定した。その結果,PMRT介入群には,介入中の呼吸困難,不安,呼吸数および心拍数のいずれも軽減したが, 4 週間の介入終了後の評価では呼吸数の減少のみが示された。Gift ら6)は,26 名のCOPD 患者を対象に,PMRT セッションによるリラクセーション法の指示を録音したテープを用いた介入群と,ただ静かに座っているよう指示された対照群とに無作為に割り付け,週1 回のセッションを計4 回行い,皮膚温度,心拍数,呼吸数,不安,呼吸困難,気道閉塞のパラメータを介入前後で評価した。その結果,呼吸困難,不安,気道閉塞のいずれもが介入群で軽減した。またYu ら7)は,心不全患者158 名を対象にベースラインアセスメント(介入前評価)を行った後,介入群と対照群に無作為に割り付け,介入群に対しては週1 回のPMRT セッションを2 回,4 週目に電話によるフォローアップ,6 週目にPMRT スキルの復習セッション,8 週目に初回の介入後評価アセスメント,その後10 週目と12 週目に電話によるフォローアップ,14 週目に2 回目の介入後評価を行った。対照群には,介入群と同じタイミングで2週間ごとの電話によるフォローアップを行い,介入群同様8 週目と14 週目に評価を行った。介入効果は,HADS および慢性心不全質問票(chronic heart failure questionnaire;CHQ)の呼吸困難と倦怠感のサブスケール,およびMOS ソーシャルサポート調査票(medical outcomes study social support survey;MOS—SSS)を用いて評価した。その結果,不安・抑うつについては介入群に中等度の効果が認められたが,呼吸困難や倦怠感といった身体症状の改善においては統計学的に有意な効果はみられなかった。上記の研究において,不安など心理的な苦痛症状,不安により惹起される可能性 1 2 *:努力肺活量(forced vital capacity;FVC)通常のVC が緩徐な呼気で測定したものであるのに対し,最大吸気位から最大努力の呼出をして得られるVC をFVCと呼ぶ。健常者では,測定値はVC とほぼ同じ値をとる。
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のある身体症状(心拍数,皮膚温度,酸素飽和度),呼吸困難などを評価対象として,効果を認めた介入もみられた。しかし,対象となる患者の背景がそれぞれ異なること,また質の高い研究が少ないことから,こうしたリラクセーション介入効果のエビデンスの強さの算出は保留されている。また,スキル習得を目的として患者に毎日の練習を求めるPMRT のような介入方法の場合,練習を通じての患者のスキル習得度が介入効果に影響すると思われるが,その長期的効果は不確定である。 過去の研究の多くがCOPD 患者など非がん患者対象であり,また,それぞれの介入方法ごとに特定の対象患者が定められているため,どの介入方法がどのような患者に対して最も有効であるかということは現時点で不明である。 (栗原幸江,山口 崇) 【文 献】1) Bausewein C, Booth S, Gysels M, Higginson IJ. Non—pharmacological interventions for breathlessness in advanced stages of malignant and non—malignant diseases. Cochrane Database Syst Rev 2008(2): CD005623 2) Corner J, Plant H, A’Hern R, et al. Non—pharmacological intervention for breathlessness in lung cancer. Palliat Med 1996; 10: 299—305 3) Bredin M, Corner J, Graydon J, et al. Multicentre randomaized controlled trial of nursing intervention for breathlessness in patients with lung cancer. BMJ 1999; 318: 901—4 4) Louie SW. The effects of guided imagery relaxation in people with COPD. Occupational Therapy International 2004; 11: 145—59 5) Renfroe KL. Effect of progressive relaxation on dyspnea and state anxiety in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Heart Lung 1988; 17: 408—13 6) Gift AG, Moore T, Soeken K. Relaxation to reduce dyspnea and anxiety in COPD patients. Nurs Res 1992; 41: 242—6 7) Yu DSF, Lee DTF, Woo J. Effects of relaxation therapy on psychologic distress and symptom status in older Chinese patients with heart failure. J Psychosom Res 2007; 62: 427—37 3.まとめ IV章非薬物療法
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1 作成過程 2 文献検索式 3 今後の検討課題 V章 資 料
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本ガイドラインは,日本緩和医療学会の「緩和医療ガイドライン作成委員会:呼吸器症状ガイドライン改訂Working Practitioner Group」(以下,WPG)が,『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』に準じて作成した。推奨の強さとエビデンスレベルに関しては,『Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014』ならびに『診療ガイドラインのためのGRADE システム―治療介入―』を参照し,WPG 内の合議であらかじめ定めた。 日本緩和医療学会において,WPG を組織し,ガイドライン作成のための手順を作成した。次に,『がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2011 年版』で取り上げた項目および今後の課題として挙げられた内容を元に,各WPG 員より臨床疑問案を収集した。収集された臨床疑問案をもとに,WPG の合議において改訂ガイドラインで取り上げる臨床疑問を作成した。続いて,WPG 員が分担して系統的文献検索を行い,基準を満たす論文を抽出し,臨床疑問に対する推奨文の原案を作成した。推奨文原案は,デルファイ法に従って日本緩和医療学会,各関連学会,ならびに患者団体の代表者による討議を行い,合意が得られるまで修正を行い推奨文最終案を確定した。推奨文最終案は,日本緩和医療学会と各関連学会それぞれの代表者からなる外部委員評価を得た後に,ガイドライン改訂推奨文の最終版を確定し,日本緩和医療学会理事会の承認を得て完成した。 一般的には臨床疑問を定式化する際にはPICO 形式(P:患者,I:介入,C:比較,O:結果)でなされるが,本ガイドラインでは,疑問の中心である「介入」が広く「有効であるか」を検討する疑問とし,その比較対象は,プラセボおよび実薬(active comparator)のいずれかに限定することを想定しなかった。そのため,本ガイドラインにおける臨床疑問はPIO 形式(P:患者,I:介入,O:結果)に定式化した。定式化された臨床疑問を解決できる臨床研究が存在しなかった場合には,より包括的な臨床疑問を作成し,最終的に合計26 の臨床疑問を設定した。 臨床疑問ごとにWPG 員2 名一組の担当者〔システマティックレビュー(SR)チーム〕を決めた。以下に述べる系統的文献検索の各プロセスに関して,SR チームの2名がそれぞれ独立して作業を行い,プロセスごとに結果をSR チーム内で照らし合 作成過程1 1.概 要 2.臨床疑問の設定 3.系統的文献検索
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わせて合議のうえ,採用文献を確定した。一次スクリーニングでは,まず検索式を作成した。次に,その検索式を用いて文献検索データベースを利用した文献検索を行った。文献検索データソースには, PubMed とCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)を用いた。データベース検索で同定された文献のタイトルおよび抄録を確認し,臨床疑問に合致しないものを除外した。残された文献を二次スクリーニング用のデータセットとして採用し文献本体を収集した。二次スクリーニングは,収集した文献のフルテキストを精読し,臨床疑問に合った文献を選び,採用文献を決定した。加えて,日本語文献に関しては補足的に医学中央雑誌(医中誌)Web を利用して検索を行った。さらに,該当項目に関する総説や緩和ケア領域の代表的な教科書(Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, Oxford University Press, 2010,Textbook of Palliative Medicine,Hodder Arnold, 2006)の該当部位の参考文献リストと採用文献の参考文献リストをハンドサーチし,データベースを利用した文献検索でカバーできていない文献を追加採用する作業を行った。これらから,各委員が適格基準(表1)に満たすものをすべて選択した。文献検索のルールとして,まず,1臨床疑問の介入に関するがん患者のみを対象とした比較研究,2臨床疑問の介入に関するがん患者のみを対象とした観察研究,3臨床疑問の介入に関するがん患者を含む混在する患者群を対象とした比較研究,4臨床疑問の介入に関するがん患者を含む混在する患者群を対象とした観察研究,5臨床疑問の介入に関する非がん患者のみを対象とした比較研究,を採用可能文献とした。そのうえで,以下のルールに基づき最終的な採用文献を決定した:1が複数存在する場合は2以下のものは採用せず完了,1がないまたは1つのみの場合は2を採用, 12がないまたは合計1 つのみの場合は3を採用,123がないまたは合計1 つのみの場合は4を採用,1234がないまたは合計1 つのみの場合は5を採用。原則として,基準に該当しない研究で推奨文の解説に必要と判断された文献は参考文献とした。 推奨の項目に関する妥当性の検証は,WPG 員10 名と関連学会(日本癌治療学会,日本呼吸器学会,日本プライマリ・ケア連合学会,日本がん看護学会,日本緩和医療薬学会)から代表として推薦された各1 名,合計15 名をデルファイ委員として選抜した。修正デルファイ法による検証は匿名で評価票を用いて行った後にデルファイ委員以外の事務担当者が回収し,集計した評価をデルファイ委員に公表し,デルファイ委員の会議において修正が必要な部分に関して協議を行った。このデルファ 4.妥当性の検証V章資料 表1 文献の適格基準・成人を対象としている・英語または日本語で記載されている・国内で利用できる方法・薬物である・系統的レビュー,メタアナリシス,比較試験,または観察研究(症例報告を含む)である
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イ委員の会議には,患者団体の代表者にも参加していただき,患者の立場からの意見を述べていただいて,修正内容に反映させた。推奨内容に関して合意が得られるまで修正を行い,合計2 回の検証ラウンドを行った。 1 回目のデルファイラウンド「推奨」の26 項目それぞれについて妥当性を「推奨の方向と強さ(推奨文の内容)」,「エビデンスの強さ(解説文の内容)」に分けて,それぞれ1(適切でない)から9(適切である)の9 件法で評価を求めた。その結果,「推奨の方向と強さ(推奨文の内容)」,「エビデンスの強さ(解説文の内容)」のいずれも中央値8 以上かつ最小と最大の差が5 以下の項目が18 項目,「推奨の方向と強さ(推奨文の内容)」,「エビデンスの強さ(解説文の内容)」のいずれかもしくは両方が中央値7 以下もしくは最小と最大の差が6 点以上の項目が8 項目であった。項目ごとに中央値,最小値,最大値を各委員に公開し,会議によって相違点を議論した。議論の議事録をWPG員に配布し原稿の修正を行った。 2 回目のデルファイラウンド1回目のデルファイラウンド後に修正を加えた推奨について,1回目と同様に妥当性を1(適切でない)から9(適切である)の9 件法で評価を求めた。その結果,すべての項目に関して,「推奨の方向と強さ(推奨文の内容)」,「エビデンスの強さ(解説文の内容)」のいずれも中央値8 以上かつ最小と最大の差が5 以下となり,デルファイラウンドにおける意見は収束したと判断し,この時点の推奨文・解説文を修正ガイドラインの暫定稿とした。 外部評価委員による評価暫定稿に対して,外部評価委員として本ガイドラインの作成に関与していなかった日本緩和医療学会の代表者(医師,看護師,薬剤師,各1 名)と,関連学会(日本癌治療学会,日本肺癌学会,日本プライマリ・ケア連合学会)の代表者各1 名の計6 名に,自由記述による評価を依頼し,その結果をWPG 員に配布した。外部評価の結果から小修正を加えたものをWPG の決定稿とした。 日本緩和医療学会代議員の意見公募手続きを経た後,本ガイドラインは,日本緩和医療学会理事会により承認された。 以下に本ガイドラインの作成者と利益相反を示す。 1 2 3 5.日本緩和医療学会の承認 6.ガイドライン作成者と利益相反
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[利益相反開示事項]日本緩和医療学会の利益相反に関する指針,細則,報告事項,Q&A については学会ホームページ(http://www.jspm.ne.jp/rieki/)をご確認いただきたい。 [役員・委員等の利益相反開示事項(概要)] 1 報告対象企業等の職員,顧問職2 給与・報酬等100 万円以上3 特許権使用料100 万円以上4 講演料等50 万円以上5 原稿料等50 万円以上6 顧問料100 万円以上7 委受託研究費200 万円以上8 研究助成金(寄付金)等100 万円以上9 奨学(奨励)寄付金等100 万円以上10 寄付講座等500 万円以上11 株式等12 無関係な旅行,贈答品等5 万円以上13 自由診療 [開示期間] 2014 年4 月1 日~2015 年3 月31 日 [緩和医療ガイドライン委員会]利益相反委員長太田惠一朗日本医科大学消化器外科教授該当なし担当委員坂下 明大兵庫県立加古川医療センター緩和ケア内科医長該当なし外部委員中山 健夫京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野教授該当なし外部委員高山 智子国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報提供部部長該当なし [呼吸器症状ガイドライン改訂WPG]利益相反WPG 員長田中 桂子がん・感染症センター都立駒込病院緩和ケア科部長該当なしWPG 副員長山口 崇神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科特定助教該当なしWPG 員合屋 将公立学校共済組合近畿中央病院呼吸器内科部長該当なし小原 弘之県立広島病院緩和ケア科主任部長該当なし坂下 明大兵庫県立加古川医療センター緩和ケア内科医長該当なし中村 陽一東邦大学医学部外科学講座一般・消化器外科(大橋)准教授,東邦大学大学院医学研究科臨床腫瘍学講座准教授,東邦大学医療センター大橋病院緩和ケアチーム部長 該当なし 西 智弘川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター副医長該当なし松田 能宣独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター心療内科支持・緩和療法チーム心療内科医長 該当なし 森 雅紀聖隷三方原病院放射線治療科医長該当なし渡邊 紘章小牧市民病院緩和ケア科部長該当なしV章資料
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WPG 員(デルファイ委員)天野 慎介一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン理事長〔外部委員,グループ・ネクサス・ジャパン(患者会)〕該当なし 井上 彰東北大学大学院医学系研究科緩和医療学分野教授〔日本呼吸器学会〕 講演料等:アストラゼネカ株式会社,大鵬薬品工業株式会社,日本イーライリリー株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,中外製薬株式会社,ファイザー株式会社奨学(奨励)寄付金等:塩野義製薬株式会社上月 稔幸独立行政法人国立病院機構四国がんセンター臨床研究センター臨床研究推進部臨床試験支援室長〔外部委員,日本癌治療学会〕 講演料等:中外製薬株式会社委受託研究費:中外製薬株式会社,ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社自由診療:四国がんセンター佐藤 淳也岩手医科大学附属病院薬剤部・薬学部臨床薬剤学講座主任薬剤師・講師〔日本緩和医療薬学会〕 該当なし 田中久美子前 神奈川県立がんセンター看護局看護教育科主任看護師〔外部委員,日本がん看護学会〕該当なし浜野 淳筑波大学医学医療系講師〔日本プライマリ・ケア連合学会〕該当なし WPG 員(評価委員)青江 啓介独立行政法人国立病院機構山口宇部医療センター腫瘍内科内科系診療部長〔日本肺癌学会〕 委受託研究費:日本イーライリリー株式会社,武田薬品工業株式会社,小野薬品工業株式会社岡本 禎晃市立芦屋病院薬剤科部長〔日本緩和医療学会:薬剤師〕該当なし小山富美子近畿大学医学部附属病院看護部〔日本緩和医療学会:看護師〕 該当なし 下山 理史独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター緩和ケア科医長〔日本緩和医療学会:医師〕該当なし南郷 栄秀東京北医療センター総合診療科医長〔外部委員,日本プライマリ・ケア連合学会〕該当なし南 大輔岡山大学病院緩和支持医療科助教〔日本癌治療学会〕該当なし (五十音順) (山口 崇,田中桂子)
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系統的文献検索は,下記の方法で行った。(1)PubMed〔http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed〕(2)CENTRAL〔http://onlinelibrary.wiley.com/cochranelibrary/search/advanced〕[適格基準]・2014 年8 月15 日時点で掲載されたもの・英語もしくは日本語文献・介入の効果を測定しているもの [臨床疑問1](P60)低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,996,366 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,704 件#3. oxygen ............................................................................................................ 468,775 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 352 件#5. #1 AND #2 AND #3 Filters:English;Japanese ......................................................... 306 件検索の結果得られた306 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより13 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. oxygen ...............................................................................................................23,416 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 107 件#5. #1 AND #2 AND #8 in Trials .................................................................................... 27 件検索の結果得られた27 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した13 件のうち,フルテキスト精読の結果,2 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問2](P61)低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,996,366 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,704 件#3. oxygen ............................................................................................................ 468,775 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 352 件#5. #1 AND #2 AND #3 Filters:English;Japanese ......................................................... 306 件検索の結果得られた306 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより13 件を二次スクリーニングに採用。 文献検索式2 1 呼吸困難に対する酸素療法 ●呼吸困難を訴えているがん患者に,酸素療法は有効か? V章資料
p.135
CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. oxygen ...............................................................................................................23,416 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 107 件#5. #1 AND #2 AND #8 in Trials .................................................................................... 27 件検索の結果得られた27 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した13 件のうち,フルテキスト精読の結果,2 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問3](P62)低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気(NPPV)は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,996,366 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,704 件#3. bilevel positive airway pressure OR non invasive ventilation .......................................... 6,635 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 26 件#5. #1 AND #2 AND #3 Filters:English;Japanese ......................................................... 26 件検索の結果得られた26 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより3 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. bilevel positive airway pressure OR non invasive ventilation ............................................. 853 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 16 件#5. #1 AND #2 AND #3 in Trials ....................................................................................... 4 件検索の結果得られた4 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより,PubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した3 件のうち,フルテキスト精読の結果,3 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問4](P63)低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,996,366 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,704 件#3. high flow oxygen ................................................................................................... 8,385 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................... 6 件#5. #1 AND #2 AND #3 Filters:English;Japanese ............................................................ 5 件検索の結果得られた5 件の文献のうち,題名・症例のレビューより2 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. high flow oxygen ................................................................................................... 1,720 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 58 件#5. #1 AND #2 AND #3 in Trials ....................................................................................... 1 件検索の結果得られた1 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより,PubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した2 件のうち,フルテキスト精読の結果,2 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。
p.136
モルヒネ [臨床疑問5](P66)呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの全身投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,997,016 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,718 件#3. morphine ............................................................................................................49,257 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 130 件#5. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 130 件検索の結果得られた130 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより9 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,910 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,040 件#3. morphine ............................................................................................................ 7,340 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 40 件#5. #4, limit with trials ................................................................................................... 22 件検索の結果得られた22 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した9 件のうち,フルテキスト精読の結果,5 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問6](P68)呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,997,016 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,718 件#3. nebulized OR nebulised OR inhaled ........................................................................ 121,778 件#4. morphine ............................................................................................................49,257 件#5. #1 AND #2 AND #3 AND #4 .................................................................................... 34 件#6. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 34 件検索の結果得られた34 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより7 件を二次スクリーニングへ採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,910 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,040 件#3. nebulized OR nebulised OR inhaled ...........................................................................11,357 件#4. morphine ............................................................................................................ 7,340 件#5. #1 AND #2 AND #3 AND #4 ....................................................................................... 5 件#6. #5, limit with trials ...................................................................................................... 4 件検索の結果得られた4 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した7 件のうち,フルテキスト精読の結果,2 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 2 呼吸困難に対する薬物療法 1 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネは有効か? V章資料
p.137
モルヒネ以外のオピオイド [臨床疑問7](P70)呼吸困難を有するがん患者に対して,オキシコドンの全身投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,997,016 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,718 件#3. oxycodone ............................................................................................................ 2,161 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................... 8 件#5. Limit:English, Japanese ............................................................................................. 8 件検索の結果得られた8 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより3 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,910 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,040 件#3. oxycodone ............................................................................................................... 811 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................... 6 件#5. #4, limit with trials ...................................................................................................... 1 件検索の結果得られた1 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した3 件のうち,フルテキスト精読の結果,2 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問8](P71)呼吸困難を有するがん患者に対して,フェンタニルの全身投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,997,016 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,718 件#3. fentanyl ...............................................................................................................19,666 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 33 件#5. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 33 件検索の結果得られた33 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより6 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,910 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,040 件#3. fentanyl ............................................................................................................... 7,631 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 12 件#5. #4, limit with tirals ...................................................................................................... 4 件検索の結果得られた4 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した6 件のうち,フルテキスト精読の結果,2 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問9](P72)呼吸困難を有するがん患者に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,997,016 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,718 件#3. codeine ............................................................................................................... 7,153 件 2 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネ以外のオピオイド(オキシコドン,フェンタニル,コデイン・ジヒドロコデイン)は有効か?
p.138
#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 13 件#5. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 13 件検索の結果得られた13 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより1 件を二次スクリーニングに採用。 #6. #2 AND #3 ............................................................................................................ 39 件#7. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 39 件非がん患者症例を含めた検索の結果得られた39 件の文献のうち,題名・抄録のレビューにより4 件を二次スクリーニングに追加採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,910 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,040 件#3. codeine ............................................................................................................... 1,269 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 11 件#5. #4 limit with trials ...................................................................................................... 2 件#6. #2 AND #3 ............................................................................................................ 23 件#7. #6, limit with trials ................................................................................................... 10 件検索の結果得られた10 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した5 件のうち,フルテキスト精読の結果,5 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 ベンゾジアゼピン系薬 [臨床疑問10](P75)呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,996,366 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,704 件#3. benzodiazepine OR anxiolytic .................................................................................95,184 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 64 件#5. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 51 件検索の結果得られた51 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより7 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. benzodiazepine OR anxiolytic ................................................................................. 3,480 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 15 件#5. #1 AND #2 AND #3 in Trials ....................................................................................... 4 件検索の結果得られた4 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した7 件のうち,フルテキスト精読の結果,3 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問11](P76)呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドの併用は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,996,366 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,704 件#3. benzodiazepine OR anxiolytic .................................................................................95,184 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 64 件 3 ●呼吸困難を訴えているがん患者に,ベンゾジアゼピン系薬は有効か? V章資料
p.139
#5. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 51 件検索の結果得られた51 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより7 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. benzodiazepine OR anxiolytic ................................................................................. 3,480 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 15 件#5. #1 AND #2 AND #3 in Trials ....................................................................................... 4 件検索の結果得られた4 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した7 件のうち,フルテキスト精読の結果,3 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 フロセミド吸入 [臨床疑問12](P79)呼吸困難を有するがん患者に対して,フロセミドの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,997,016 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,718 件#3. nebulized OR nebulised OR inhaled ........................................................................ 121,778 件#4. furosemide ............................................................................................................14,869 件#5. #1 AND #2 AND #3 AND #4 .................................................................................... 13 件#6. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 13 件検索の結果得られた13 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより5 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,910 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,040 件#3. nebulized OR nebulised OR inhaled ...........................................................................11,357 件#4. furosemide ............................................................................................................ 1,595 件#5. #1 AND #2 AND #3 AND #4 ....................................................................................... 6 件#6. #5, limit with trials ...................................................................................................... 2 件検索の結果得られた2 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した5 件のうち,フルテキスト精読の結果,2 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 コルチコステロイド [臨床疑問13](P81)呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わずコルチコステロイドの全身投与を行うことは呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,690 件#3. steroid ............................................................................................................ 791,531 件 4 ●呼吸困難を訴えているがん患者に,フロセミドの吸入投与は有効か? 5 ●呼吸困難を訴えているがん患者に,コルチコステロイドの全身投与は有効か?
p.140
#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 504 件#5. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 457 件検索の結果得られた457 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより4 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,906 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. steroid ...............................................................................................................12,128 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 81 件#5. #4, limit with trials ...................................................................................................... 9 件検索の結果得られた9 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより,PubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した4 件のうち,フルテキスト精読の結果,4 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問14](P83)がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,690 件#3. steroid ............................................................................................................ 791,531 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 504 件#5. lymphangitis ......................................................................................................... 1,252 件#6. #4 AND #5 ............................................................................................................... 3 件#7. #6, Limit:English, Japanese .......................................................................................... 3 件検索の結果得られた3 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより2 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,906 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. steroid ...............................................................................................................12,128 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 81 件#5. lymphangitis ............................................................................................................ 59 件#6. #4 AND #5 ............................................................................................................... 2 件#7. #6, limit with trials ...................................................................................................... 0 件検索の結果,PubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した2 件のうち,フルテキスト精読の結果,2 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問15](P84)上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,690 件#3. steroid ............................................................................................................ 791,531 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 504 件#5. superior vena cava syndrome ................................................................................. 3,488 件#6. #4 AND #5 ............................................................................................................... 7 件#7. #6, Limit:English, Japanese .......................................................................................... 5 件検索の結果得られた5 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより0 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,906 件V章資料
p.141
#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. steroid ...............................................................................................................12,128 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 81 件#5. superior vena cava syndrome .................................................................................... 35 件#6. #4 AND #5 ............................................................................................................... 2 件#7. #6, limit with trials ...................................................................................................... 0 件検索の結果,PubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングでの採用は0 件であり,ハンドサーチにより1 件の文献を採用した。 [臨床疑問16](P85)主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ...................................................45,690 件#3. steroid ............................................................................................................ 791,531 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 504 件#5. airway stenosis OR airway obstruction OR tracheal stenosis OR tracheal obstruction OR bronchial stenosis OR bronchial obstruction OR respiratory stenosis OR respiratory obstruction ......45,627 件#6. #4 AND #5 ............................................................................................................ 24 件#7. #6, Limit:English, Japanese ....................................................................................... 19 件検索の結果得られた19 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより1 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,906 件#2. dyspnea OR breathlessness OR shortness of breath ................................................... 4,038 件#3. steroid ...............................................................................................................12,128 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 81 件#5. airway stenosis OR airway obstruction OR tracheal stenosis OR tracheal obstruction OR bronchial stenosis OR bronchial obstruction OR respiratory stenosis OR respiratory obstruction ...... 3,310 件#6. #4 AND #5 ............................................................................................................ 42 件#7. #6, limit with trials ...................................................................................................... 0 件検索の結果,PubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した1 件のうち,フルテキスト精読の結果,1 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 悪性胸水による呼吸困難に対する治療 [臨床疑問17](P87)悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸腔穿刺ドレナージは呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. dyspnea ...............................................................................................................39,828 件#3. breathlessness ......................................................................................................36,752 件#4. shortness of breath ................................................................................................38,418 件 3 特定の病態に対する治療 1 ●悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者の,呼吸困難を緩和する有効な方法は何 か?
p.142
#5. #2 OR #3 OR #4 ...................................................................................................45,690 件#6. pleural effusions ...................................................................................................25,849 件#7. thoracocentesis ......................................................................................................... 535 件#8. thoracentesis ......................................................................................................... 1,229 件#9. pleural tap ............................................................................................................... 81 件#10. pleural drainage ................................................................................................... 5,555 件#11. indwelling catheter ................................................................................................21,069 件#12. #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 ...........................................................................27,848 件#13. #1 AND #5 AND #6 AND #12 ................................................................................. 200 件#14. #13, Limits:English, Japanese .................................................................................... 174 件検索の結果得られた174 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより40 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. dyspnea ............................................................................................................... 3,086 件#3. breathlessness ......................................................................................................... 822 件#4. shortness of breath ................................................................................................... 549 件#5. #2 OR #3 OR #4 ................................................................................................... 4,038 件#6. pleural effusions ...................................................................................................... 750 件#7. thoracocentesis ......................................................................................................... 36 件#8. thoracentesis ............................................................................................................ 45 件#9. pleural tap ............................................................................................................... 19 件#10. pleural drainage ...................................................................................................... 258 件#11. indwelling catheter ................................................................................................ 1,517 件#12. #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 ........................................................................... 1,818 件#13. #1 AND #5 AND #6 AND #12 ................................................................................. 10 件#14. #1 AND #5 AND #6 AND #12 in Trials ........................................................................ 6 件検索の結果得られた6 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより,PubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した40 件のうち,フルテキスト精読の結果,12 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問18](P90)悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸膜癒着術は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. dyspnea ...............................................................................................................39,828 件#3. breathlessness ......................................................................................................36,752 件#4. shortness of breath ................................................................................................38,418 件#5. #2 OR #3 OR #4 ...................................................................................................45,690 件#6. pleural effusions ...................................................................................................25,849 件#7. Pleurodesis ......................................................................................................... 2,142 件#8. pleural adhesion ...................................................................................................... 627 件#9. #7 OR #8 ............................................................................................................ 2,718 件#10. #1 AND #5 AND #6 AND #9 .................................................................................... 116 件#11. #10, Limits:English, Japanese .................................................................................... 94 件検索の結果得られた94 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより27 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. dyspnea ............................................................................................................... 3,086 件#3. breathlessness ......................................................................................................... 822 件#4. shortness of breath ................................................................................................... 549 件#5. #2 OR #3 OR #4 ................................................................................................... 4,038 件#6. pleural effusions ...................................................................................................... 750 件#7. pleurodesis ............................................................................................................ 148 件#8. pleural adhesion ...................................................................................................... 45 件#9. #7 OR #8 ............................................................................................................... 189 件#10. #1 AND #5 AND #6 AND #9 .................................................................................... 10 件V章資料
p.143
#11. #1 AND #5 AND #6 AND #9 in Trials ........................................................................... 7 件検索の結果得られた7 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより,PubMed の検索結果に1 件を追加採用。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した28 件のうち,フルテキスト精読の結果,4 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問19](P91)悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,利尿薬は呼吸困難を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. dyspnea ...............................................................................................................39,828 件#3. breathlessness ......................................................................................................36,752 件#4. shortness of breath ................................................................................................38,418 件#5. #2 OR #3 OR #4 ...................................................................................................45,690 件#6. pleural effusions ...................................................................................................25,849 件#7. diuretic ...............................................................................................................88,705 件#8. #1 AND #5 AND #6 AND #7 .................................................................................... 13 件#9. Limit:English, Japanese .......................................................................................... 13 件#10. #5 AND #6 AND #7 ................................................................................................ 59 件#11. #10, Limits:English, Japanese .................................................................................... 56 件検索の結果得られた56 件の文献のうち,題名・抄録のレビューにより二次スクリーニングに採用する文献はなし。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. dyspnea ............................................................................................................... 3,086 件#3. breathlessness ......................................................................................................... 822 件#4. shortness of breath ................................................................................................... 549 件#5. #2 OR #3 OR #4 ................................................................................................... 4,038 件#6. pleural effusions ...................................................................................................... 750 件#7. diuretic ............................................................................................................... 6,132 件#8. #1 AND #5 AND #6 AND #7 ....................................................................................... 3 件#9. #5 AND #6 AND #7 ................................................................................................... 4 件#10. #5 AND #6 AND #7 in Trials ....................................................................................... 1 件検索の結果得られた1 件の文献のうち,題名・抄録のレビューにより,PubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングでの採用は0 件であり,ハンドサーチによる追加文献もなし。 咳嗽の緩和に対する治療 [臨床疑問20](P93)咳嗽を有するがん患者に対して,オピオイドは咳嗽を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. cough ..................................................................................................................39,512 件#3. opioid ............................................................................................................... 126,101 件#4. morphine ............................................................................................................49,245 件#5. codeine ............................................................................................................... 7,151 件#6. fentanyl ...............................................................................................................19,666 件#7. oxycodone ............................................................................................................ 2,158 件#8. #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 ........................................................................... 140,130 件#9. #1 AND #2 AND #8 ................................................................................................ 65 件 2 ●咳嗽を有するがん患者の,咳嗽を緩和する有効な方法は何か?
p.144
#10. ((#1)AND #2)AND #8 Filters:English;Japanese ................................................... 52 件検索の結果得られた52 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより11 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. cough .................................................................................................................. 6,010 件#3. opioid .................................................................................................................. 9,827 件#4. morphine ............................................................................................................ 7,339 件#5. codeine ............................................................................................................... 1,269 件#6. fentanyl ............................................................................................................... 7,631 件#7. oxycodone ............................................................................................................... 811 件#8. #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 ..............................................................................20,197 件#9. #1 AND #2 AND #8 ................................................................................................ 83 件#10. #1 AND #2 AND #8 in Trials .................................................................................... 31 件検索の結果得られた31 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した11 件のうち,フルテキスト精読の結果,3 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問21](P95)咳嗽を有するがん患者に対して,デキストロメトルファンは咳嗽を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. cough ..................................................................................................................39,512 件#3. dextromethorphan ................................................................................................ 2,303 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 10 件悪性腫瘍に限った検索の結果得られた10 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより採用文献なし。 #5. #2 AND #3 ............................................................................................................ 265 件#6. #5 AND Filters:English;Japanese ........................................................................... 257 件悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた257 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより18 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. cough .................................................................................................................. 6,010 件#3. dextromethorphan ................................................................................................... 373 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................... 9 件#5. #2 AND #3 ............................................................................................................ 94 件#6. #2 AND #3 in Trials ................................................................................................ 70 件悪性腫瘍に限った検索の結果得られた9 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた70 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより2 件をPubMed の検索結果に追加採用。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した20 件のうち,フルテキスト精読の結果,7 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問22](P96)咳嗽を有するがん患者に対して,プレガバリン・ガバペンチンは咳嗽を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. cough ..................................................................................................................39,512 件#3. pregabalin OR gabapentin ....................................................................................... 5,940 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................... 1 件悪性腫瘍に限った検索の結果得られた1 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより採用文献なし。V章資料
p.145
#5. #2 AND #3 ............................................................................................................ 32 件#6. #5 AND Filters:Japanese;English ........................................................................... 32 件悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた32 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより8 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. cough .................................................................................................................. 6,010 件#3. pregabalin OR gabapentin ....................................................................................... 1,456 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 14 件#5. #2 AND #3 ............................................................................................................ 38 件#6. #2 AND #3 in Trials ................................................................................................ 18 件悪性腫瘍に限った検索の結果得られた14 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた18 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した8 件のうち,フルテキスト精読の結果,3 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問23](P97)咳嗽を有するがん患者に対して,リドカインを吸入することは咳嗽を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,995,194 件#2. cough ..................................................................................................................39,512 件#3. lidocaine ...............................................................................................................27,332 件#4. nebulized ............................................................................................................ 2,971 件#5. nebulizer ............................................................................................................10,167 件#6. inhaled ............................................................................................................ 119,974 件#7. ((#4)OR #5)OR #6 ....................................................................................... 125,302 件#8. #1 AND #2 AND #3 AND #7 ....................................................................................... 2 件悪性腫瘍に限った検索の結果得られた2 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより採用文献なし。 #9. #2 AND #3 AND #7 ................................................................................................ 72 件#10. #9 AND Filters:English;Japanese ........................................................................... 69 件悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた69 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより4 件を二次スクリーニングに採用。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,905 件#2. cough .................................................................................................................. 6,010 件#3. lidocaine ............................................................................................................... 6,596 件#4. nebulized OR nebulizer OR inhaled ...........................................................................10,164 件#5. #1 AND #2 AND #3 AND #4 ....................................................................................... 5 件#6. #2 AND #3 AND #4 ................................................................................................ 16 件#7. #2 AND #3 AND #4 in Trials ....................................................................................... 8 件悪性腫瘍に限った検索の結果得られた5 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた8 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した4 件のうち,フルテキスト精読の結果,4 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。
p.146
死前喘鳴の軽減に対する治療 [臨床疑問24](P100)死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与することは,喘鳴を軽減するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,996,366 件#2. death rattle OR noisy breathing OR airway secretion OR tracheal secretion OR bronchial secretion OR respiratory secretion .......................................................................................23,560 件#3. cholinergic antagonists OR scopolamine derivatives OR atropine ....................................93,324 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 14 件#5. #4, Limit:English and Japanese ................................................................................. 12 件検索の結果得られた12 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより6 件を二次スクリーニングに採用。 #6. #2 AND #3 ............................................................................................................ 449 件#7. #6, Limit:systematic review, clinical trial, randomized controlled trial .............................. 50 件#8. #7, Limit:English and Japanese ................................................................................. 45 件悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた45 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより6 件を二次スクリーニングに採用(重複あり)。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. death rattle OR noisy breathing OR airway secretion OR tracheal secretion OR bronchial secretion OR respiratory secretion ....................................................................................... 1,521 件#3. cholinergic antagonists OR scopolamine derivatives OR atropine .................................... 3,018 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................... 9 件#5. #4, Limit with Trials ................................................................................................... 0 件#6. #2 AND #3 ............................................................................................................ 68 件#7. #6, limit with trials ................................................................................................... 42 件検索の結果文献は得られなかった。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した12 件のうち,フルテキスト精読の結果,2 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問25](P101)死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与することは,喘鳴を軽減するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,996,366 件#2. death rattle OR noisy breathing OR airway secretion OR tracheal secretion OR bronchial secretion OR respiratory secretion .......................................................................................23,560 件#3. octreotide ............................................................................................................ 8,364 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 36 件#5. #4, Limit:English and Japanese ................................................................................. 32 件#6. #2 AND #3 ............................................................................................................ 44 件#7. #6, Limit:systematic review, clinical trial, randomized controlled trial ................................. 4 件#8. #7, Limit:English and Japanese .................................................................................... 3 件検索の結果得られた32 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより1 件を二次スクリーニングに採用。 #6. #2 AND #3 ............................................................................................................ 44 件#7. #6, Limit:systematic review, clinical trial, randomized controlled trial ................................. 4 件#8. #7, Limit:English and Japanese .................................................................................... 3 件悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた3 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりさらに1 件採用し,合計2 件を二次スクリーニングに採用。 3 ●死前喘鳴を有するがん患者の,喘鳴を軽減する有効な方法は何か? V章資料
p.147
CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. death rattle OR noisy breathing OR airway secretion OR tracheal secretion OR bronchial secretion OR respiratory secretion ....................................................................................... 1,517 件#3. octreotide ............................................................................................................... 942 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................... 2 件#5. #4, limit with trials ...................................................................................................... 1 件#6. #2 AND #3 ............................................................................................................... 6 件#7. #6, limit with trials ...................................................................................................... 1 件悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた1 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングで採用した2 件のうち,フルテキスト精読の結果,1 件の文献を採用した。ハンドサーチによる追加文献はなし。 [臨床疑問26](P102)死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引を実施することは,喘鳴を緩和するか? ・一次スクリーニングPubMed #1. cancer ............................................................................................................ 2,996,366 件#2. death rattle OR noisy breathing OR airway secretion OR tracheal secretion OR bronchial secretion OR respiratory secretion .......................................................................................23,560 件#3. suction ...............................................................................................................20,864 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 11 件#5. #4, Limit:English and Japanese ................................................................................. 11 件検索の結果得られた11 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより二次スクリーニングへ採用文献なし。 #6. #2 AND #3 ............................................................................................................ 269 件#7. #6, Limit:systematic review, clinical trial, randomized controlled trial .............................. 48 件#8. #7, Limit:English and Japanese ................................................................................. 39 件悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた39 件の文献のうち,題名・抄録のレビューより二次スクリーニングへ採用文献なし。 CENTRAL #1. cancer ..................................................................................................................79,908 件#2. death rattle OR noisy breathing OR airway secretion OR tracheal secretion OR bronchial secretion OR respiratory secretion ....................................................................................... 1,517 件#3. suction ............................................................................................................... 2,149 件#4. #1 AND #2 AND #3 ................................................................................................ 11 件#5. #4, limit with trials ...................................................................................................... 1 件#6. #2 AND #3 ............................................................................................................ 118 件#7. #6, limit with trials ................................................................................................... 53 件悪性腫瘍に限らない検索の結果得られた53 件の文献のうち,題名・抄録のレビューよりPubMed の検索結果に追加採用はなし。 ・二次スクリーニング一次スクリーニングでの採用は0 件であり,ハンドサーチにより1 件の文献を採用した。 (山口 崇,田中桂子)
p.148
以下の項目については,ガイドラインとして示すに足る十分なエビデンスや情報がなかったため,または,十分な検討,議論を行う時間がなかったため,次回改訂の際に再度検討することとした。今後,この領域の臨床研究が推進されることを期待する。 ・ 個々の薬剤の具体的な使用法(投与用量,用法)を,エビデンスに基づいて詳細 に記載すること・ 非薬物療法(看護ケア,呼吸リハビリテーション,精神療法,リラクセーション) について,エビデンスに基づいた詳細な検討を行い,推奨に関して検討すること・ダイジェスト版など,より簡便な普及のためのツールを作成すること・包括的な呼吸困難治療プロトコールを開発し,その有効性を検証すること・ 2011 年度版のAGREE 評価で指摘された,ガイドラインを遵守することに関する モニタリング・監査のための基準を示し方法を提案すること ・ 背景知識の「呼吸困難のメカニズム」「呼吸不全の病態生理」「呼吸困難の原因」「呼吸困難の評価」「身体所見と検査」「非薬物療法」については今回抜本的な見直しをしていないため,次回,最新情報を加味して見直しをすることが必要である。・ 非薬物療法(看護ケア,呼吸リハビリテーション,精神療法,リラクセーション) については,それら非薬物療法の分類を詳細に検討すること,それらの臨床研究を推進していくことが課題として挙げられる。・ 評価方法については,意識障害や認知機能障害のあるがん患者の呼吸困難の評価 方法について記載することなどが課題として挙げられる。・ 用語については,関係学会と協力したうえで用語の整理を行う必要がある。例え ば,呼吸リハビリテーション,呼吸理学療法,肺理学療法,胸部理学療法の区別について検討することが課題として挙げられる。 1 )酸素療法・ 低酸素血症がない安静時呼吸困難に対する,酸素投与の有効性と有害事象を検討 すること・ 呼吸困難のあるがん患者に対する高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の有効性 を,より質の高い臨床研究で検討すること。また,その効果が期待できる患者群 今後の検討課題3 1.今回のガイドラインでは,対応しなかったこと 2.用語の定義・背景知識について,今後検討が必要なこと 3.推奨について,今後の検討や新たな研究が必要なことV章資料
p.149
を抽出すること 2 )オピオイド・ がん患者の呼吸困難に対してモルヒネをはじめとしたオピオイドの効果が期待で きる患者群を抽出すること・ がん患者の呼吸困難に対するモルヒネの全身投与とその他のオピオイド(コデイ ン・ジヒドロコデイン,オキシコドン,フェンタニル)の全身投与における有効性および有害事象発現について比較検討すること 3 )ベンゾジアゼピン系薬・ 呼吸困難のあるがん患者に対するベンゾジアゼピン系薬の安全性について検討す ること・ベンゾジアゼピン系薬の効果が期待できる患者群を抽出すること 4 )コルチコステロイド・ コルチコステロイドの有効性や有害事象を予測する因子(病態・原因・並存疾患 など)を同定すること・ コルチコステロイドの効果が期待できる時期〔performance status(PS)など〕, 適切な投与量,効果発現までの時間,効果が持続する期間などについて検討すること・ 酸素投与やモルヒネの全身投与など有効性が検証されている治療に,コルチコス テロイドを,呼吸困難の原因病態を問わず補助的に使用することで呼吸困難の緩和が得られるかを検討すること 5 )上大静脈症候群・上大静脈症候群に対する静脈ステントの適応および有効性について検討すること 6 )主要気道閉塞(MAO)・ 主要気道閉塞(MAO)に対する気道ステントの適応および有効性について検討す ること 7 )悪性胸水・ 悪性胸水に対する胸腔穿刺ドレナージと胸膜癒着術のQOL への影響を検証する こと 8 )咳 嗽・ がん患者の咳嗽に対する,モルヒネ,デキストロメトルファンの全身投与の効果 が期待できる患者群を抽出すること・ オキシコドン,フェンタニル,プレガバリン・ガバペンチンの全身投与が,がん 患者の咳嗽を緩和するかを検討すること。緩和するとしたら,それぞれの効果が期待できる患者群を抽出すること・ 咳嗽に対する非薬物療法(看護ケア,呼吸リハビリテーション,精神療法,リラ
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クセーション)の有効性を検討すること 9 )推奨全体・ がん患者で比較的頻度が高いが,今回のガイドラインでは扱わなかったその他の 呼吸器症状(血痰など)の症状緩和に関する内容を含めることを検討すること・包括的な呼吸困難治療プロトコールを開発し,その有効性を検証すること (田中桂子,山口 崇) V章資料
p.151
◆和文◆あアウトカム 4悪性胸水 11, 23, 43, 56, 87, 90, 91アトロピン硫酸塩 52アルプラゾラム 53 い胃食道逆流症 46一次スクリーニング 123イメージ療法 118 う運動療法 111 えエア・ブロンコグラム 34エチゾラム 53エビデンスレベル 7 ― ,定義 7エルゴメータ 112延髄 14 お横隔膜 14オキシコドン 50, 53, 56, 70オクトレオチド 52, 101オピオイド 12, 93 ― 受容体 50 ― ナイーブ 12, 73オンコロジーエマージェンシー 41 かカーリー線 34外呼吸 18咳嗽 11, 45, 56, 93, 95, 96, 97 ― の原因 46カウンセリング 108下顎呼吸 32化学受容器 15拡散障害 19 ガバペンチン 52, 96感覚受容器 14感覚野 16換気血流比不均等 19換気障害 20看護ケア 11, 106乾性咳嗽 46がん性リンパ管症 21, 23, 34, 40, 46, 51, 56, 82, 83がんに伴う換気障害 21 き奇異呼吸 32機械受容器 14, 15気管支拡張症 46気管支喘息 46機能評価尺度 28吸引 102吸入酸素濃度 37胸腔穿刺ドレナージ 44, 56, 87胸腔チューブ 45胸水 34, 44胸部CT 検査 34胸部単純X 線 34胸部理学療法 12胸膜外徴候 34胸膜癒着術 11, 45, 56, 90 く口すぼめ呼吸 106, 113グループ認知行動療法 115 けケアマネジメント 109頸動脈体 15経皮的酸素飽和度 33研究デザイン 7 こ抗コリン薬 52, 100拘束性換気障害 21索 引 (太字は主要ページ)
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後鼻漏症候群 46高流量鼻カニュラ酸素療法 12, 37, 56, 63誤嚥 46コーピング 108呼気終末陽圧 38呼吸困難 11, 14 ― に伴う機能評価尺度 28 ― の原因 23 ― の質的評価尺度 27 ― の発生のメカニズム 16 ― の評価 25 ― の量的評価尺度 25呼吸数 32呼吸中枢 14, 50呼吸不全 11, 18 ― の基準 18呼吸法トレーニング 106, 113呼吸抑制 50呼吸理学療法 12, 111呼吸リハビリテーション 12, 111コデイン 50, 53, 56, 72コルチコステロイド 51, 81, 83, 84, 85混合性換気障害 21コンソリデーション 34 さ酸素 56 ― 吸入 60, 61 ― 分圧 33 ― 療法 59しジアゼパム 53支持的精神療法 115死前喘鳴 11, 47, 52, 56, 100, 101, 102湿性咳嗽 46失調性呼吸 32ジヒドロコデイン 50, 53, 56, 72シャント 20修正Borg スケール 12, 26修正MRC スケール 31主要気道閉塞 23, 42, 51, 56, 82, 85上大静脈症候群 23, 41, 51, 56, 82, 84呻吟 11侵襲的人工呼吸 36身体化 16心不全 46す推奨度 9 推奨の強さ 8スコポラミン臭化水素酸塩 52ステロイド 56スパイロメトリー 20 せ声音震盪 33精神力動的精神療法 115精神療法 11, 115漸進的筋弛緩法 118扇風機 107 そ送風 107 た大動脈体 15大脳皮質 14タルク 45, 90 ちチェーン・ストークス呼吸 32治療抵抗性 58鎮静 58, 77 つ強い推奨 8 て低酸素血症 18, 60, 62, 63デキサメタゾン 51デキストロメトルファン 52, 53, 95デルファイ 8, 123 と動脈血ガス分析 33トレッドミル 112 な内呼吸 18 に二次スクリーニング 123認知行動療法 115
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は肺炎 46肺活量 20肺刺激受容器 15, 51肺伸展受容器 15, 51, 52肺塞栓 23肺胞気—動脈血酸素分圧較差 18肺胞低換気 18肺理学療法 12 ひビオー呼吸 32非侵襲的陽圧換気 12, 36, 56, 62 ふファン 107不安 115フェンタニル 50, 71ブチルスコポラミン臭化物 52プレガバリン 52, 96フロセミド 79 ― 吸入 51 ― の吸入投与 79文献検索式 127 へ閉塞性換気障害 20ベタメタゾン 51, 53ベンゾジアゼピン系薬 51, 56, 75, 76 ほ放射線肺臓炎 21, 23, 46, 51蜂巣肺 34 ま慢性気管支炎 46 みミダゾラム 53, 75 むムスカリン受容体 52 め迷走神経受容器 15 もモルヒネ 50, 53, 56, 66 ― の吸入投与 68 ― の全身投与 66や薬剤性肺障害 21, 23, 46, 51 よ抑うつ 115弱い推奨 8 りリッカート尺度 26リドカイン吸入 52, 97利尿薬 91リハビリテーション 111量的評価尺度 25リラクセーション 11, 117 ろ肋間筋 14ロラゼパム 53 ◆欧文◆ A A—aDO2 18 air bronchogram sign 34 B Biot 呼吸 32 breakthrough dyspnea 72 C Cancer Dyspnea Scale(CDS) 27 Chronic Respiratory Questionnaire—Dyspnea subscale (CRQ—D) 28 coarse crackle 33 consolidation 34 C 線維受容器 15 F FEV1.0 20 FEV1.0% 20 FiO2 37 G General Health Questionnaire(GHQ) 115
p.154
H high flow therapy 37 Hugh—Jones 分類 31 K Kerley’s line 34 M Motor Neurone disease—Dyspnea Rating Scale (MDRS) 28 N nasal high flow therapy 37 numerical rating scale(NRS) 12, 25 O OK—432 45 P PEEP 38 PICO 形式 122 PIO 形式 122 S St George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ) 115 STAS—J 29 stridor 33, 42 Support Team Assessment Schedule(STAS) 29 V visual analogue scale(VAS) 12, 26 vital capacity(VC) 20 W wheeze 33 ◆数字◆ I型呼吸不全 18 II型呼吸不全 18 1 秒率 20 1 秒量 20 6 分間歩行試験 112
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がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2016 年版定価(本体2,200 円+税) 2011 年7 月 27 日 第1 版発行2016 年6 月 20 日 第2 版第1 刷発行 編 集 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 発行者 福村 直樹発行所 金原出版株式会社 〒113-8687 東京都文京区湯島 2-31-14電話 編集 (03)3811-7162営業 (03)3811-7184 FAX (03)3813-0288振替口座 00120-4-151494 http://www.kanehara-shuppan.co.jp/ ©2011,2016 検印省略Printed in Japan ISBN 978-4-307-10178-3印刷・製本/三報社印刷(株) <(社)出版者著作権管理機構 委託出版物>本書の無断複製は著作権法上での例外を除き禁じられています。複製される場合は,そのつど事前に,(社)出版者著作権管理機構(電話 03-3513-6969,FAX 03-3513- 6979,e-mail : info@jcopy.or.jp)の許諾を得てください。小社は捺印または貼付紙をもって定価を変更致しません。乱丁,落丁のものはお買上げ書店または小社にてお取り替え致します。
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vi 1 ガイドライン作成の経緯と目的2 1.2011 年版ガイドライン作成の経緯2 2.2016 年版ガイドライン改訂の経緯2 3.ガイドラインの目的2 4.2016 年版における主な改訂点2 2 ガイドラインの使用上の注意4 1.使用上の注意4 2.構成とインストラクション5 3.他の教育プログラムとの関係6 3 エビデンスレベルと推奨の強さ7 1.エビデンスレベル7 2.推奨の強さ8 3. 推奨の強さとエビデンスレベルの臨床的 意味9 4 用語の定義と概念11 1 呼吸困難のメカニズム14 1.呼吸の調節機構14 2.呼吸困難の発生15 1 呼吸困難の発生に関与する受容器15 2 呼吸困難の発生のメカニズム16 3.呼吸困難の発生,認知,表出のメカニズム16 2 呼吸不全の病態生理18 1.呼吸不全18 1 肺胞低換気18 2 換気血流比不均等19 3 拡散障害19 4 シャント(右左シャント) 20 2.換気障害20 1 閉塞性換気障害20 2 拘束性換気障害21 3 混合性換気障害21 3 呼吸困難の原因23 1.呼吸困難の原因23 1 がんに関連した原因23 2 がん治療に関連した原因23 3 がんとは関連しない原因23 4 呼吸困難の評価25 1.使用が推奨されている評価尺度25 1 呼吸困難の量的評価尺度25 2 呼吸困難の質的評価尺度27 3 呼吸困難に伴う機能評価尺度28 2.医療従事者による呼吸困難の評価28 3.まとめ30 5 身体所見と検査31 1.問 診31 1 現病歴31 2 既往歴・生活歴31 3 増悪因子・軽快因子32 2.身体所見32 1 Vital Signs 32 2 視 診32 3 触 診33 4 打 診33 5 聴 診33 3.検査所見33 1 動脈血ガス分析/経皮的酸素飽和度33 2 血液検査34 3 画像検査34 6 酸素療法36 1.非侵襲的陽圧喚気(NPPV) 36 1 定 義36 2 メリットとデメリット36 3 一般的な適応37 2.高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC) 37 1 定 義37 2 メリットとデメリット37 3 一般的な適応38 I章 はじめに II章 背景知識 目 次
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vii 7 呼吸困難以外の呼吸器症状40 1.がん性リンパ管症40 1 定 義40 2 疫学・頻度・影響40 3 原因・分類・病態生理40 4 評 価40 2.上大静脈症候群41 1 定 義41 2 疫学・頻度・影響41 3 原因・分類・病態生理41 4 評 価41 5 マネジメント41 3.主要気道閉塞(MAO) 42 1 定 義42 2 疫学・頻度・影響42 3 原因・分類・病態生理42 4 評 価42 5 マネジメント43 4.悪性胸水43 1 定 義43 2 疫学・頻度43 3 原因・病態生理43 4 評 価44 5 マネジメント44 5.咳 嗽45 1 定 義45 2 疫学・頻度・影響45 3 原因・分類・病態生理46 4 評 価47 6.死前喘鳴47 1 定 義47 2 疫学・頻度・影響47 3 原因・分類・病態生理48 4 評 価48 5 対 応48 8 薬 剤50 1.オピオイド50 1 モルヒネ50 2 オキシコドン50 3 フェンタニル50 4 コデイン・ジヒドロコデイン50 2.オピオイド以外の薬剤51 1 ベンゾジアゼピン系薬51 2 フロセミド吸入51 3 コルチコステロイド51 4 デキストロメトルファン52 5 プレガバリン・ガバペンチン52 6 リドカイン吸入52 7 抗コリン薬52 8 オクトレオチド52 ● 推奨の概要56 1 呼吸困難に対する酸素療法59 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,酸素療 法は有効か? 59 2 呼吸困難に対する薬物療法66 モルヒネ66 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒ ネは有効か? 66モルヒネ以外のオピオイド70 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒ ネ以外のオピオイド(オキシコドン,フェンタニル,コデイン・ジヒドロコデイン)は有効か? 70ベンゾジアゼピン系薬75 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,ベンゾ ジアゼピン系薬は有効か? 75フロセミド吸入79 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,フロセ ミドの吸入投与は有効か? 79コルチコステロイド81 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,コルチ コステロイドの全身投与は有効か? 81 3 特定の病態に対する治療87 悪性胸水による呼吸困難に対する治療87 ● 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者 の,呼吸困難を緩和する有効な方法は何か? 87咳嗽の緩和に対する治療93 ● 咳嗽を有するがん患者の,咳嗽を緩和する 有効な方法は何か? 93死前喘鳴の軽減に対する治療100 III章 推 奨 1 2 3 4 5 1
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viii ● 死前喘鳴を有するがん患者の,喘鳴を軽減 する有効な方法は何か? 100 1 看護ケア106 1.呼吸法のトレーニング106 2.送 風107 3.看護師によるフォローアッププログラム107 4. 身体的・精神的側面のサポートを統合した 呼吸困難マネジメントプログラム108 5.ケアマネジメント109 6.まとめ109 2 呼吸リハビリテーション111 1.呼吸リハビリテーションの目的111 2.対 象111 3.呼吸リハビリテーションの構成要素111 4.がん患者に対する呼吸リハビリテーション112 1 呼吸リハビリテーションの考え方112 2 運動療法112 3 呼吸理学療法113 3 精神療法115 1.呼吸困難に対する精神療法115 2.まとめ116 4 リラクセーション117 1.リラクセーション法を含む複合的介入方法117 2.単独介入としてのリラクセーション法117 1 イメージ療法118 2 漸進的筋弛緩法118 3.まとめ119 1 作成過程122 1.概 要122 2.臨床疑問の設定122 3.系統的文献検索122 4.妥当性の検証123 1 1 回目のデルファイラウンド124 2 2 回目のデルファイラウンド124 3 外部評価委員による評価124 5.日本緩和医療学会の承認124 6.ガイドライン作成者と利益相反124 2 文献検索式127 3 今後の検討課題141 1. 今回のガイドラインでは,対応しなかったこ と141 2. 用語の定義・背景知識について,今後検討が 必要なこと141 3. 推奨について,今後の検討や新たな研究が必 要なこと141 索 引145 IV章 非薬物療法 V章 資 料
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ix 1 呼吸困難に対する酸素療法●呼吸困難を訴えているがん患者に,酸素療法は有効か? 59 [臨床疑問1]低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和する か? 60 [臨床疑問2]低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和する か? 61 [臨床疑問3]低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気(NPPV)は呼 吸困難を緩和するか? 62 [臨床疑問4]低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ酸素療法 (HFNC)は呼吸困難を緩和するか? 63 2 呼吸困難に対する薬物療法 モルヒネ●呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネは有効か? 66 [臨床疑問5]呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 66 [臨床疑問6]呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? 68 モルヒネ以外のオピオイド● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネ以外のオピオイド(オキシコドン,フェンタニル,コデイン・ ジヒドロコデイン)は有効か? 70 [臨床疑問7]呼吸困難を有するがん患者に対して,オキシコドンの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 70 [臨床疑問8]呼吸困難を有するがん患者に対して,フェンタニルの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 71 [臨床疑問9]呼吸困難を有するがん患者に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与は呼吸困難を 緩和するか? 72 ベンゾジアゼピン系薬●呼吸困難を訴えているがん患者に,ベンゾジアゼピン系薬は有効か? 75 [臨床疑問10]呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与は呼吸困難を緩和す るか? 75 [臨床疑問11]呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドの併用は呼吸困難 を緩和するか? 76 フロセミド吸入●呼吸困難を訴えているがん患者に,フロセミドの吸入投与は有効か? 79 [臨床疑問12]呼吸困難を有するがん患者に対して,フロセミドの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? 79 1 2 3 4臨床疑問一覧
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xコルチコステロイド ●呼吸困難を訴えているがん患者に,コルチコステロイドの全身投与は有効か? 81 [臨床疑問13]呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わずコルチコステロイドの全身投与を行うこ とは呼吸困難を緩和するか? 81 [臨床疑問14]がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投 与は呼吸困難を緩和するか? 83 [臨床疑問15]上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与 は呼吸困難を緩和するか? 84 [臨床疑問16]主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの 全身投与は呼吸困難を緩和するか? 85 3 特定の病態に対する治療 悪性胸水による呼吸困難に対する治療●悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者の,呼吸困難を緩和する有効な方法は何か? 87 [臨床疑問17]悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸腔穿刺ドレナージは呼吸困難を緩和 するか? 87 [臨床疑問18]悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸膜癒着術は呼吸困難を緩和する か? 90 [臨床疑問19]悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,利尿薬は呼吸困難を緩和するか? 91 咳嗽の緩和に対する治療●咳嗽を有するがん患者の,咳嗽を緩和する有効な方法は何か? 93 [臨床疑問20]咳嗽を有するがん患者に対して,オピオイドは咳嗽を緩和するか? 93 [臨床疑問21]咳嗽を有するがん患者に対して,デキストロメトルファンは咳嗽を緩和するか? 95 [臨床疑問22]咳嗽を有するがん患者に対して,プレガバリン・ガバペンチンは咳嗽を緩和するか? 96 [臨床疑問23]咳嗽を有するがん患者に対して,リドカインを吸入することは咳嗽を緩和するか? 97 死前喘鳴の軽減に対する治療●死前喘鳴を有するがん患者の,喘鳴を軽減する有効な方法は何か? 100 [臨床疑問24]死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与することは,喘鳴を軽減するか? 100 [臨床疑問25]死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与することは,喘鳴を軽減する か? 101 [臨床疑問26]死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引を実施することは,喘鳴を緩和するか? 102 1 2 3
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呼吸困難,その他の呼吸器症状は,がん患者において頻度が高く難治性であることが多い症状の一つとされる。日本緩和医療学会では,身体症状緩和のガイドラインとして,「疼痛」に続いて「呼吸器症状」と「消化器症状」の緩和に関するガイドラインの作成が急務であると考え,2009 年に「呼吸器症状ガイドライン作業部会」,「消化器症状ガイドライン作業部会」が組織された。両部会は,協働しながら同様の手法を用いて,それぞれ呼吸器症状および消化器症状の緩和に関するガイドラインを作成する方針となった。2010 年に『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2010 年版』が発行された後,集中して作業に入り,翌2011 年に発刊となった。 『がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2011 年版』には,「医療の進歩に遅れることなく内容の再検討および改訂を行うこととする」と記載された。2011 年版の出版後,呼吸困難,その他の呼吸器症状の緩和に関する新たな知見が散見されるようになった。これらをふまえ,2013 年に正式に「呼吸器症状ガイドライン改訂Working Practitioner Group(WPG)」が設けられ,2016 年6 月発刊を目指すこととなった。(改訂作業の詳細は,V章-1 作成過程の項を参照) 本ガイドラインの目的は,呼吸困難をはじめとする呼吸器症状のあるすべてのがん患者の生活の質(quality of life;QOL)を向上させるために,呼吸器症状の緩和に関する現時点で考えられる標準的治療法を示すことである。対象はすべてのがん患者とし,使用者は,医師,看護師,薬剤師などすべての医療従事者を想定した。本ガイドラインでは,EBM(Evidence-Based Medicine)の考え方に基づき,Minds (Medical Information Network Distribution Service)の診療ガイドライン作成の手法に則り,最新の文献を十分に検討して体系化されたガイドラインを目指したと同時に,アルゴリズムを示して臨床の場における医療チームの意思決定の手助けになるように工夫した。 2016 年版における主な改訂点は,以下の通りである。12011 年版の推奨部分について,新たに最新の文献レビューを行って,全面的に改訂した。 ガイドライン作成の経緯と目的1 1.2011 年版ガイドライン作成の経緯 2.2016 年版ガイドライン改訂の経緯 3.ガイドラインの目的 4.2016 年版における主な改訂点
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22011 年版では,「関連する特定の病態の治療」として概説するのみにとどまった「悪性胸水」「咳嗽」「死前喘鳴」の各項目について最新の文献レビューを行い, III章 推奨として新たに追加した。3『Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014』に基づき,エビデンスレベルを,これまでの3 段階〔A(強い),B(弱い),C(とても弱い)〕から,4 段階〔A(強い),B(中程度),C(弱い),D(とても弱い)〕で表記するよう変更した(詳細はI章-3 エビデンスレベルと推奨の強さの項を参照)。4背景知識の「薬剤」の項は,推奨文の全面改訂に伴い,最新の情報を含めて全面的に改訂した。5作成過程の段階から,他の関連学会代表者,患者会代表者に参画していただき,それらの意見を反映して,実際の臨床現場で役立つものになるよう配慮し工夫した(詳細はV章-1 作成過程の項を参照)。一方で,今回,以下の項目については,時間の関係で抜本的な見直しや全面的な改訂は行わず,新しい情報の補足・修正を行うにとどめた。これらの全面的な改訂は次回改訂時の課題として残した。1背景知識の「呼吸困難のメカニズム」「呼吸不全の病態生理」「呼吸困難の原因」「呼吸困難の評価」「身体所見と検査」の項2非薬物療法の「看護ケア」「呼吸リハビリテーション」「精神療法」「リラクセーション」の項 (田中桂子,山口 崇) I章はじめに
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(1)適 用本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難,またはその他の呼吸器症状に対する症状緩和のための治療介入を扱っている。しかし,これらの症状については,外科治療・化学療法・放射線治療などを含む原疾患に対する集学的治療,さらに多職種専門家チームによるケアが重要であることはいうまでもない。また,症状の原因が,併存する呼吸器疾患やその他の疾患によるものである場合は,それらの疾患に関する成書を参照されたい。(2)対象患者すべてのがん患者を対象とする。(3)使用者がん患者の診療・ケアに携わる医師(緩和ケア医,がん治療医,総合診療医など),看護師,薬剤師など,すべての医療従事者を想定される使用者とする。ただし,患者・家族も自身が受ける治療の参考として利用できるよう配慮する。(4)効果の指標本ガイドラインでは,プライマリーアウトカムを「呼吸困難の緩和」として効果の指標とした。一部例外として,咳嗽の項では「咳嗽の改善」を,死前喘鳴の項では「喘鳴の軽減」を効果の指標とした。同時に,その他の「益のアウトカム(患者にとって望ましい効果)」として,例えば,「運動能の向上,生活の質(QOL)の向上,生存期間の延長」など,また,「負のアウトカム(患者にとって望ましくない効果)」として,例えば,「重篤な有害事象」などを挙げ,患者にとっての重要性の観点から重み付けして評価し,最終的に推奨レベル確定の参考とした(詳細はV章-1 作成過程の項を参照)。(5)診療における個別性の尊重本ガイドラインは,ガイドラインに従った画一的な治療・ケアを勧めるものではない。ガイドラインは臨床的,科学的に満たすべき一般的な水準を示しているが,個々の患者への適用は,対象となる患者の個別性に十分配慮し,医療チームが責任をもって決定するべきものである。(6)定期的な再検討の必要性2021 年末までに内容の見直しについて再検討する(改訂責任者:日本緩和医療学会理事長)。(7)対象とする薬剤本ガイドラインでは,原則的に本邦で使用可能な薬剤を評価対象として推奨文で取り扱った。しかし,海外の文献を解説する部分では,本邦で使用不可能な薬剤も記載している。その場合は英語表記とし,本邦で使用できる薬剤(カタカナ・漢字表記)と区別した。また,使用可能であっても保険診療で認められていない使用法 ガイドラインの使用上の注意2 1.使用上の注意
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を含むため,使用にあたっては注意されたい。(8)責 任本ガイドラインの内容については日本緩和医療学会が責任をもつが,個々の患者への適用や対応に関しては,患者を直接担当する医療従事者が責任をもつ。(9)利益相反本ガイドラインの作成にかかる事務・運営費用は,日本緩和医療学会より拠出された。ガイドライン作成に関わる委員の活動・作業はすべて無報酬で行われ,委員全員の利益相反に関する開示が行われ,日本緩和医療学会で承認された。本ガイドライン作成のどの段階においても,ガイドラインで扱われている内容から利害関係を生じうる団体からの資金提供は受けていない。 本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難,またはその他の呼吸器症状を取り上げた。本ガイドラインの構成は以下の通りである。まず,「I章 はじめに」では,「ガイドライン作成の経緯と目的」を簡単にまとめ,「ガイドラインの使用上の注意」として,本ガイドラインの対象とする状況や使用上の注意を説明した。「エビデンスレベルと推奨の強さ」では,それぞれの用語を解説するとともに,本ガイドラインで使用されているエビデンスレベルと推奨の強さを決定する考え方について解説した。特に本ガイドラインから,エビデンスレベルの区分が変更となっているため,使用前にぜひ一読されたい。「用語の定義と概念」では,本ガイドラインで使用する用語の定義を記載した。次に,「II章 背景知識」では,推奨文をよりよく理解し,呼吸困難,その他の呼吸器症状の緩和ケアを行ううえで必要と思われる基礎知識をまとめた。「メカニズム」「病態生理」「原因」「評価」「身体所見と検査」を簡単に解説した後,「酸素療法」では特殊な酸素療法について,続く「呼吸困難以外の呼吸器症状」では,特定の病態について整理して解説した。「薬剤」では,本ガイドラインで言及した薬剤について薬理作用,標準的な投与量や投与方法について概説した。ガイドラインの主要部分は「III章 推奨」である。章の冒頭に,全体を概観できるようアルゴリズムを示し,治療の考え方を概説した。続いて,臨床疑問,関連する臨床疑問,推奨,解説を記載した。推奨では,薬剤の投与量,投与方法については詳細を示さず,背景知識に記載することとした。また,構造化抄録はガイドラインには掲載しなかったが,推奨のなかの解説において個々の論文の概要がわかるように配慮して記載した。さらに,「IV章 非薬物療法」では,看護ケア,呼吸リハビリテーション,精神療法,リラクセーションを取り上げ,多職種による対症的アプローチ方法をまとめた。これらの項目については,現時点では十分なコンセンサスが得られていないため,本ガイドラインでは,概要を示すにとどめた。最後に「V章 資料」では,「作成過程」としてガイドラインを開発した経緯を述べ,各臨床疑問で使用した「文献検索式」を掲載した。最後に,今回のガイドラインでは対応しなかったこと,十分に検討できなかったこと,今後新たな研究が必要な課題をまとめ,今後の改訂,研究計画に役立てるようにした。 2.構成とインストラクションI章はじめに
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本ガイドラインでは,作成作業段階で得られた最新の知見をもとに,専門家の合意を得るためのコンセンサス法を用いた(P122,V章-1 作成過程参照)。そのため,本ガイドライン作成前に作成された教育資料,「症状の評価とマネジメントを中心とした緩和ケアのための医師の継続教育プログラム」(PEACE;Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education)とは,いくつかの点において相違が認められる。それらの教育資料との整合性については,随時,日本緩和医療学会ホームページなどで情報を提供する。 (田中桂子,山口 崇) 3.他の教育プログラムとの関係
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本ガイドラインでは,「エビデンスレベル」を「ある治療による効果を推定した際の確信(エビデンス)が,特定の推奨を支持するうえでどの程度十分であるか,を示す指標」と定義した。エビデンスレベルは,『Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014』『診療ガイドラインのためのGRADE システム―治療介入―』を参照し,呼吸器症状ガイドライン改訂WPG の合意に基づき,「研究デザイン」「研究の限界(limitation;バイアスリスク)」「結果が一致しているか(consistency)」「研究の対象・介入・アウトカムは想定している状況に近いか(directness)」「データは正確であるか(precision)」「その他のバイアス」から総合的に臨床疑問ごとに判断した。エビデンスレベルは,A~D の4 段階に分けられており,それぞれ,A:「今後さらなる研究を実施しても,効果推定への確信性は変わりそうにない」,B:「今後さらなる研究が実施された場合,効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性があり,その推定が変わるかもしれない」,C:「今後さらなる研究が実施された場合,効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性が非常に高く,その推定が変わる可能性がある」,D:「効果推定が不確実である」ことを示す(表1)。・「研究デザイン」は,エビデンスレベルを決定するための出発点として使用し,表 2 の区別をした。・「研究の限界(limitation)」は,割り付けのコンシールメント(隠蔽化),盲検化, アウトカム報告,アウトカム測定,適格基準の確立,フォローアップ期間など, エビデンスレベルと推奨の強さ3 1.エビデンスレベルI章はじめに 表1 エビデンスレベルA(高い)今後さらなる研究を実施しても,効果推定への確信性は変わりそうにないB(中)今後さらなる研究が実施された場合,効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性があり,その推定が変わるかもしれないC(低い)今後さらなる研究が実施された場合,効果推定への確信性に重要な影響を与える可能性が非常に高く,その推定が変わる可能性があるD(非常に低い)効果推定が不確実である 表2 エビデンスレベルの参考とした研究デザインA適切に実施された複数の無作為化比較試験から得られた一貫性のある結果;無作為化比較試験のメタアナリシス;バイアスのない複数の観察研究から得られた非常に強固な結果B重要な限界を有する無作為化比較試験;非無作為化比較試験*1;一致した結果の複数のバイアスのない観察研究*2 C複数の観察研究;重大な欠陥もしくは非直接的な無作為化比較試験D単独の観察研究;非系統的な臨床観察・症例報告;専門家の意見*1:クロスオーバー比較試験を含む*2:無作為化比較試験の治療群,または,対照群を前後比較試験や観察研究として評価したものを含む
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研究の妥当性そのものを指す。・「結果が一致しているか(consistency)」は,複数の研究がある場合に,研究結果(介入の効果)が一致しているかを指す。・「研究の対象・介入・アウトカムが想定している状況に近いか(directness)」は, 研究で扱われている臨床状況・集団・条件と,本ガイドラインにおける臨床疑問で想定している内容に相違があるかを示す。具体的な評価は,研究対象集団・介入内容・アウトカム測定方法に関して行った。・「データは正確であるか(precision)」は,対象患者数やイベント数が十分である かを示す。対象者数がサンプルサイズ計算に基づく予定症例数に達しているか,などが評価される。対象患者数やイベント数が少ない場合は信頼区間が大きくなり,データの不正確性が増す。・「その他のバイアス」は,出版バイアス(publication bias)や利益相反などを評価 した。以上のように,本ガイドラインでは,エビデンスレベルを研究デザインだけでなく,研究の質,結果が一致しているか,研究の対象・介入・アウトカムは想定している状況に近いかなどを含めて,総合的に判断した。 本ガイドラインでは,「推奨の強さ」を,「推奨に従って治療を行った場合に患者の受ける利益が害や負担を上回る(下回る)と考えられる確信の強さの程度」と定義した。推奨は,エビデンスレベルやエビデンスのなかで報告されている利益と不利益の大きさ,および臨床経験をもとに,推奨した治療によって得られると見込まれる利益の大きさと,治療によって生じうる害や負担とのバランスから,総合的に判断した。治療によって生じる「負担」には,全国のすべての施設で容易に利用可能かどうか(availability;利用可能性)も含めて検討した。本ガイドラインでは,推奨の強さを「強い推奨」「弱い推奨」の2 種類で表現した。「強い推奨」とは,得られているエビデンスと臨床経験から判断して,推奨した治療によって得られる利益が,治療によって生じうる害や負担を上回る(または,下回る)確信が強いと考えられることを指す(表3)。この場合,医師は,患者の多くが推奨された治療を希望することを想定し,患者の価値観や好み,意向もふまえたうえで,推奨された治療を行うことが望ましい。「弱い推奨」とは,得られているエビデンスと臨床経験から判断して,推奨した治療によって得られる利益の大きさが不確実であるか,または,治療によって生じうる害や負担と利益とが拮抗していると考えられることを指す(表3)。この場合,医師は,推奨された治療を行うかどうか,患者の価値観や好み,意向もふまえたうえで,患者とよく相談する必要がある。デルファイラウンドの過程において,デルファイ委員が各推奨文を「1:強い推奨」と考えるか,「2:弱い推奨」と考えるかについての集計後,不一致が生じた際には討議を行った。推奨の強さに対する意見が分かれた場合には,「専門家の合意が得られるほどの強い推奨ではない」と考え,「弱い推奨」とすることを原則とした。 2.推奨の強さ
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本ガイドラインでは,推奨の方向性として,「行う」推奨と「行わない」推奨を設けた。それぞれに対しての推奨の強さが「強い推奨」と「弱い推奨」が組み合わされるため,最終的な推奨は4 種類で表現した。実際の推奨文においては,強い推奨を「recommend;推奨する」,弱い推奨を「suggest;提案する」と表現した。推奨の強さとエビデンスレベルから,表4 に示すような組み合わせの推奨文がある。それぞれの推奨文の臨床的解釈についても表5 にまとめた。 (山口 崇,田中桂子) 【参考文献】1) Guyatt GH, Cook DJ, Jaeschke R, et al. Grades of recommendation for antithrombotic agents: American College of Chest Physicians Evidence—Based Clinical Practice Guidelines(8th Edition). Chest 2008; 133(6 Suppl): 123S—31S(Erratum in: Chest 2008; 134: 473) 2) Guyatt GH, Oxman AD, Vist GE, et al.; GRADE Working Group. GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recommendations. BMJ 2008; 336: 924—6 3) 森實敏夫,吉田雅博,小島原典子 編.福井次矢,山口直人 監.Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014,東京,医学書院,2014 4) 相原守夫,三原華子,村山隆之,他.診療ガイドラインのためのGRADE システム―治療介 入―,青森,凸版メディア,2010 3.推奨の強さとエビデンスレベルの臨床的意味I章はじめに 表3 推奨の強さ1:強い推奨(recommend)推奨した治療によって得られる利益が,治療によって生じうる害や負担を明らかに上回る(あるいは下回る)と考えられる2:弱い推奨(suggest)推奨した治療によって得られる利益の大きさは不確実である,または,治療によって生じうる害や負担と拮抗していると考えられる 表4 推奨度,記号,表現の対応 推奨度記 号表 現強い推奨(recommend) 1「実施する」 行うことを推奨する「実施しない」 行わないことを推奨する弱い推奨(suggest) 2「実施する」 行うことを提案する「実施しない」 行わないことを提案する
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表5 推奨度とエビデンスレベルによる臨床的意味 臨床的意味 1A推奨は,多くの状況において,多くの患者に対して適応できる。根拠のレベルが高く,したがって,推奨した治療を行う(または,行わない)ことが勧められる 1B推奨は,多くの状況において,多くの患者に対して適応できる。ただし,根拠のレベルが十分ではなく,今後の研究結果により効果推定の確信性に影響が与えられる可能性があり,その推定が変わるかもしれない。したがって,根拠が十分ではないことを理解したうえで,推奨した治療を行う(または,行わない)ことが勧められる 1C推奨は,多くの状況において,多くの患者に対して適応できる。しかしながら,根拠のレベルは低く,今後の研究により効果推定の確信性に影響が与えられる可能性が高く,その推定が変わる可能性が多分に存在する。したがって,根拠が不足していることを理解したうえで,推奨した治療を行う(または,行わない)ことが勧められる 1D推奨は,多くの状況において,多くの患者に対して適応できる。ただし,根拠は非常に限られるもしくは臨床経験に基づくのみであり,今後の研究結果により推定が大きく変わる可能性がある。したがって,根拠は不確実であることを理解したうえで,推奨した治療を行う(または,行わない)ことが勧められる 2A推奨による利益と不利益の差は拮抗しており,患者もしくは社会的価値によって最善の対応が異なる可能性がある。ただし,推奨の方向に関する根拠のレベルは高く,効果推定に関する確信性は高い。したがって,推奨内容を選択肢として呈示し,患者と推奨内容を行う(または行わない)かに関して相談することが勧められる 2B推奨による利益と不利益の差は拮抗しており,患者もしくは社会的価値によって最善の対応が異なる可能性がある。また,推奨の方向に関する根拠のレベルは十分ではなく,今後の研究結果により効果推定の確信性に影響が与えられる可能性があり,その推定が変わるかもしれない。したがって,推奨内容を選択肢として呈示し,患者と推奨内容を行う(または行わない)かに関して相談することが勧められる 2C推奨による利益と不利益の差は拮抗しており,患者もしくは社会的価値によって最善の対応が異なる可能性がある。また,推奨の方向に関する根拠のレベルは低く,今後の研究により効果推定の確信性に影響が与えられる可能性が高く,その推定が変わる可能性が多分に存在する。したがって,推奨内容を選択肢として呈示し,患者と推奨内容を行う(または行わない)かに関して相談することが勧められる 2D推奨による利益と不利益の差は拮抗しており,患者もしくは社会的価値によって最善の対応が異なる可能性がある。さらに,推奨の方向に関する根拠は非常に限られるもしくは臨床経験に基づくのみであり,今後の研究結果により推定が大きく変わる可能性がある。したがって,推奨内容を選択肢として呈示し,患者と推奨内容を行う(または行わない)かに関して相談することが勧められる
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呼吸困難呼吸時の不快な感覚。dyspnea/breathlessness/shortness of breath 呼吸不全呼吸機能障害のため動脈血ガス(特にO2とCO2)が異常値を示し,そのために正常な機能を営むことができない状態。定義上,動脈血酸素分圧が60 Torr 以下の状態を指す。急性呼吸不全と慢性呼吸不全がある。respiratory failure 悪性胸水胸膜播種や腫瘍の転移・浸潤など,がん,悪性腫瘍が原因となって胸腔内に貯留した液体。malignant pleural effusion 胸膜癒着術胸腔内に癒着剤を投与し,壁側・臓側胸膜間に炎症を起こして,胸膜の線維化や腔の閉鎖を図る治療法。pleurodesis 咳 嗽短い吸気に引き続いて,声門が部分的に閉鎖し,胸腔内圧が上昇して,強制的な呼気とともに気道内容が押し出される状態を指す。cough死前喘鳴 死期が迫った患者において聞かれる,呼吸に伴う不快な音。呼吸とともに意図しない発声がみられる呻吟(しんぎん)とは異なる。気道分泌過多〔感染症・腫瘍・体液貯留・誤嚥などにより気管支分泌物が多くなっている状態(excessive respiratory secretion)〕とは必ずしも一致しない。noisy breathing/death rattle/respiratory secretion 精神療法精神科医,心療内科医,臨床心理士といった精神保健の専門家が,患者との相互交流を通して精神・心理的問題に対する支援を行う専門的治療。がん患者の場合,精神疾患や情緒障害に対してではなく,精神的苦痛の緩和を目的とする。 リラクセーション緊張や不安,疼痛を軽減させるための方法。〔注〕本ガイドラインでは,National Cancer Institute (米国国立癌研究所)の定義を引用した。 看護ケア健康の保持増進,回復に関するケアを意味する。〔注〕本ガイドラインでは,非薬物療法のうち看護師が 関わる可能性がある介入を看護ケアとした。 用語の定義と概念4 I章はじめに ■はじめに この項では,本ガイドラインの治療,ケアを考えるうえで,整理しておくべき用語の定義について本文から抜粋してまとめた。ここに挙げた用語(日本語訳)や定義は,今後,日本緩和医療学会のみならず関連団体を含めて,用語の統一を行っていく過程で変更される可能性がある。
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呼吸リハビリテーション呼吸器の病気によって生じた障害をもつ患者に対して,可能な限り機能を回復,あるいは維持させ,これにより患者自身が自立できるように継続的に支援していくための医療。〔注〕本ガイドラインでは,日本呼吸管理学会/日本呼吸 器学会「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」の定義を引用した。 呼吸理学療法呼吸障害に対する理学療法の呼称および略称さらには総称であり,呼吸障害の予防と治療のために適用される理学療法の手段。〔注〕肺理学療法あるいは胸部理学療法は欧米でのchest physiotherapy に相当する用語である。Chest physiotherapy は通常,伝統的な気道クリアランス法,特に体位ドレナージとそれに付随する排痰手技(特に軽打,振動)に代表される気道管理に関する理学療法手技のみを意味するものである。呼吸理学療法と,肺あるいは胸部理学療法は,しばしば混同されているが明確な相違がある。 オピオイド麻薬性鎮痛薬やその関連合成鎮痛薬などのアルカロイドおよびモルヒネ様活性を有する内因性または合成ペプチド類の総称。opioid〔注〕本ガイドラインでは,日本緩和医療学会『がん疼 痛の薬物療法に関するガイドライン2014 年版』の定義を引用した。 オピオイドナイーブオピオイド未使用の状態。opioid naive VAS水平あるいは垂直に引かれた100 mm の直線の両端に両極端の状態(例えば「息苦しさはない」「想像しうる最もひどい苦しさ」)を記載し,最も当てはまる線上にマークする自己評価法。visual analogue scale NRS 0~10 の両端に両極端の状態(例えば「息苦しさはない」「想像しうる最もひどい苦しさ」)を記載し,最も当てはまる数字を選択する自己評価法。最大値は10 以外に設定されることもある。numerical rating scale 修正Borg スケール身体活動能力の評価を目的として開発されたカテゴリー尺度で,0~10 の12 段階(0.5 を含む)の呼吸困難の強さを選択する自己評価法。modified Borg scale 非侵襲的陽圧換気気管内挿管や気管切開をせずに,鼻マスク,口鼻マスクなどの非侵襲的なインターフェイスをヘッドギアやホルダーで顔面に固定し,換気を補助する人工呼吸。NIV(non—invasive ventilation;非侵襲的換気)と表記されることもある。non—invasive positive pressure ventilation (NPPV) 高流量鼻カニュラ酸素療法加温・加湿した一定濃度の酸素を高流量で経鼻的に投与する新しい酸素療法。nasal high flow therapy,high flow therapy などとも呼ばれる。high flow nasal cannula oxygen(HFNC) (田中桂子,山口 崇)
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呼吸困難とは,呼吸時の不快な感覚である。呼吸困難を一つの感覚として捉えた場合,他の感覚と同様に外的刺激が感覚受容器→求心性神経路→大脳皮質の特定領域という経路で伝えられ,呼吸困難という特異的な感覚が発生するものと考えられる。このような呼吸困難の発生には呼吸調節機構が密接に関連している。呼吸調節機構は,呼吸中枢を中心として生体の恒常性を保持するために働いている仕組みである。呼吸困難は,呼吸調節機構の恒常性維持機能に異常が生じた場合に,危険信号として働く役割を担っていると考えられる。呼吸調節機構内の異常は通常,呼吸調節系内に存在するさまざまの神経受容器によって感知され,その受容器からの信号は恒常性維持に不可欠なものとなっている。同時に,受容器からの信号は呼吸困難の発生に最も本質的な役割を果たしている。 呼吸の調節機構を図1 に示す。呼吸調節は,延髄を中心とする脳幹部の呼吸中枢で行われ,脊髄を介して横隔膜や肋間筋などの呼吸筋に情報が伝わり,呼吸運動を引き起こす。呼吸中枢は,呼吸運動の結果としての動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2),動脈血酸素分圧(PaO2),pH を感知する中枢と末梢の化学受容器と,呼吸運動を感知する気道,肺,胸壁の機械受容器から情報を受け取り,その結果として呼吸中枢からの出力を呼吸筋に伝え,呼吸運動を引き起こす。さらに大脳皮質から呼吸中枢に対する随意調節も加わり,複雑な呼吸調節が営まれている。 呼吸困難のメカニズム1 1.呼吸の調節機構 図1 呼吸調節機構 大脳皮質(呼吸困難) 化学受容器血液ガスの変化(PaO2, PaCO2)呼吸中枢 (延髄) 肺呼吸筋機械受容器 肺刺激受容器, C 線維受容器,肺伸展受容器 〔Bruera E, et al. Management of dyspnea. Principles and Practice of Palliative Care and Supportive Oncology, 2nd ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2002; p358 を引用,一部改変〕
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呼吸困難の発生に関与する受容器呼吸困難は感覚であり,感覚受容器の刺激で発生する。以下の受容器が呼吸困難の発生に関与すると考えられている。 1 )機械受容器(1)迷走神経受容器気道や肺には呼吸に影響するさまざまな受容器が存在し,その多くは肺迷走神経に支配されている。肺刺激受容器(irritant receptor)*1,C 線維受容器*2,肺伸展受容器(stretch receptor)*3などが代表的なものである。肺刺激受容器やC 線維受容器は,機械的刺激以外には,ヒスタミン,ブラジキニン,プロスタグランジンなどの物質で刺激されて,しばしば咳嗽や気管支収縮などを発生させ,呼吸困難の発生に最も関連する受容器と考えられている。一方,肺伸展受容器は肺伸展時(深呼吸時)などに強く興奮する受容器であり,その興奮は気管支拡張を起こし,呼吸困難の発生に抑制的な役割を果たしていると考えられている。また,この受容器の活動の低下や抑制は,呼吸困難の発生に寄与すると考えられる。このように迷走神経受容器には呼吸困難の発生や増悪に関与する受容器と,逆にその緩和に関与する受容器の2 つの性質の異なる受容器が混在している。(2)胸壁(筋,腱)受容器ガス交換器である肺は胸壁によって覆われており,胸壁には呼吸筋,腱,肋骨が含まれ,これらの組織の中にも機械受容器は存在する。特に,肋間筋に密に存在する筋紡錘*4という機械受容器の存在が知られており,これらの受容器が呼吸困難の発生に関与する可能性がある。(3)上気道受容器鼻腔から喉頭に至る上気道には,圧,気流,機械的あるいは化学的刺激を感受することのできる受容器が存在する。呼吸・気道系に何らかの変化が生じた場合,これらの受容器活動の変化が呼吸困難の発生に関与する可能性がある。 2 )化学受容器化学受容器は,中枢化学受容器と末梢化学受容器の2 つに分類されている。このうち延髄に存在する「中枢化学受容器」は,主にPaCO2の上昇によって刺激される。また,中枢化学受容器の興奮は呼吸中枢を刺激し,その結果として呼吸が亢進する。「末梢化学受容器」は総頸動脈分岐部に位置する頸動脈体(carotid body)と,大動脈弓に存在する大動脈体(aortic body)の存在が知られているが,大動脈体の役割は小さくあまり問題にされない。末梢化学受容器も中枢化学受容器と同様に動脈血液中のPaCO2の上昇によって刺激されるが,PaCO2による刺激効果は弱く,主にPaO2の低下によって強く刺激される。化学受容器の刺激が呼吸中枢活動亢進を介して間接的に呼吸困難の発生に関与することは明らかになっているが,化学受容器の刺激が直接的に呼吸困難を発生させるか否かについての議論がある。 2.呼吸困難の発生1 *1:肺刺激受容器(irritant receptor)気管や中枢気管支の気道上皮内に存在し,主に咳嗽反射に関わる受容器である。呼吸困難の増悪に関与し,さまざまな機械的刺激や化学的刺激(刺激性のガスやヒスタミンなどの化学物質など)で興奮するほか,肺の急激な収縮や膨張(早い深呼吸や気胸発症時),肺コンプライアンスの低下でも興奮が起こる。 *2:C 線維受容器迷走神経無髄C 線維はその末端が受容器になっており,肺毛細血管近傍や気道や咽頭の粘膜に存在する。間質のうっ血や肺水腫のような機械的刺激ならびにブラジキニンやセロトニンといった化学的刺激により興奮し,呼吸促進と呼吸困難を引き起こす。 *3:肺伸展受容器(stretch receptor)気道の平滑筋内に存在し,気道の圧変化を感知する受容器である。主に中心の太い気道に存在し,肺容量の増加に反応する。吸息とともに活動が増強し,吸息活動の抑制によって呼息への切り替えを促進する(Hering—Breuer の吸息抑制反射)。この受容器の興奮は,呼吸困難の発生を抑制すると考えられている。 *4:筋紡錘呼吸筋の筋線維間にある筋紡錘は,呼吸以外にも骨格筋の運動を調節する器官であるが,肋間筋に密に存在し,呼吸運動が妨げられた時などに反射的に呼吸筋を収縮して運動を高める。ストレッチングやバイブレーション刺激によく反応する。II章背景知識
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3 )呼吸運動出力を感知する中枢受容器近年,呼吸困難の程度が呼吸中枢から呼吸筋への運動出力の程度に相関することが明らかにされた。これによって,呼吸中枢活動の変化を感受する中枢受容器の存在が想定されている。このような受容器(central corollary discharge receptors)は,気道抵抗上昇や二酸化炭素負荷によって呼吸中枢活動が上昇した場合や意識的に呼吸中枢活動を上昇させた場合,この呼吸中枢活動の上昇を感知し,その情報を大脳皮質の感覚野に伝えることで呼吸困難の発生に関与するものと考えられている。 呼吸困難の発生のメカニズム呼吸困難の発生のメカニズムに関しては,これまでも化学受容器関与説,気道内受容器説,呼吸筋長さ—張力不均衡説など,数多くの仮説が提唱されてきたが,いずれの仮説も呼吸困難の発生のメカニズムを説明するには不十分であった。仮説の一つは,中枢—末梢ミスマッチ説,あるいは出力—再入力ミスマッチ説と呼ばれている説であり,これは呼吸中枢から呼吸筋への運動指令(出力)と受容器から入ってくる求心性の情報(入力)との間に,解離あるいはミスマッチが存在する場合に呼吸困難が発生するという説である。つまり,呼吸困難はある一定量の換気を起こすのに,予想以上の大きい呼吸筋の活動が必要とされる時に生じるというものである。 Bruera らによる呼吸困難の発生,認知,表出のメカニズムを図2 に示す。呼吸困難は,身体的・生化学的異常によって発生する。認知は,薬物(例えば,オピオイドの投与),不安・抑うつ,身体化(somatization)*によって影響される。これらの影響因子は,大脳皮質レベルで認知する症状の強さを増大,あるいは減少させる。 2 3.呼吸困難の発生,認知,表出のメカニズム *:身体化(somatization)人が心の不安や心理社会的ストレスを身体症状のかたちで訴えること。 図2 呼吸困難の発生,認知,表出のメカニズム 1.発生(production) 2.認知(perception)受容器 影響する因子 3.表出(expression) 呼吸困難の評価 治療機械受容器 化学受容器呼吸中枢 薬物(例えば,オピオイドの投与)身体化不安,抑うつ 精神的要因信仰社会文化的状況 〔Bruera E, et al. Management of Dyspnea. Principles and Practice of Palliative Care and Supportive Oncology, 2nd ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2002; pp357—71 より引用〕
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すなわち,同じように呼吸困難が発生しても,多くの因子により認知のされ方が異なる。そして,精神的要因,信仰,社会文化的状況は,さらに患者の呼吸困難の強さの表出の程度に影響する。このように呼吸困難の発生も認知も評価することができないため,患者の表出に基づき呼吸困難を評価する。 (小林 剛,山口 崇) 【参考文献】1) Manning HL, Schwartzstein RM. Pathophysiology of dyspnea. N Engl J Med 1995; 333: 1547—53 2) Nishino T. Physiological and pathophysiological implications of upper airway reflexes in humans. Jpn J Physiol 2000; 50: 3—14 3) Coleridge HM, Coleridge JCG. Reflexes evoked from tracheobronchial tree and lungs. Fishman AP, Cherniack NS, Widdicombe JG eds. Handbook of Physiology, Sec 3: The Respiratory System, Vol.II: Control of Breathing, Part 2, Bethesda, MD, American Physiological Society, 1986; pp395—429 4) Dyspnea. Mechanism, assessment, and management: a consensus statement. American Thoracic Society. Am J Respir Crit Care Med 1999; 159: 321—40 5) Sant’Ambrogio G. Information arising from the tracheobronchial tree of mammals. Physiol Rev 1982; 62: 531—69 6) Killian KJ, Gandevia SC, Summers E, Campbell EJM. Effect of increased lung volume on perception of breathlessness, effort, and tension. J Appl Physiol 1984; 57: 686—91 7) Meakins JM. The cause and treatment of dyspnea in cardiovascular diseases. BMJ 1923; 1: 1043 8) Guz A, Noble MIM, Eisele JH, Trenchard D. Experimental results of vagal block in cardiopul- monary disease. Porter R ed. Breathing: Hering—Breuer Centenary Symposium, London, J & A Churchill, 1970; pp315—36 9) Campbell EJM, Freedman S, Clark TJH, et al. The effect of muscular paralysis induced by tubocurarine on the duration and sensation of breath—holding. Clin Sci 1967; 32: 425—32 10) Schwartzstein RM, Manning HL, Weiss JW, et al. Dyspnea: a sensory experience. Lung 1990; 168: 185—99 11) Bruera E, et al. Management of dyspnea. Berger AM, Shuster JL, Von Roenn JH eds. Principles and Practice of Palliative Care and Supportive Oncology, 2nd ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2002; pp357—71 12) Ripamonti C, Bruera E. Dyspnea: pathophysiology and assessment. J Pain Symptom Manage 1997; 13: 220—32 13) Doyle D, Hanks G, Cherny NI, Calman K eds. Oxford Textbook of Palliative Medcine, 3rd ed, New York, Oxford University Press, 2004 14) 西野 卓.呼吸困難の生理.日臨麻会誌2009; 29: 341—50 15) 呼吸困難.工藤翔二,中田紘一郎,永井厚志,他 編,呼吸器専門医テキスト,東京,南江堂, 2007; pp40—2 16) 異常呼吸.工藤翔二,中田紘一郎,永井厚志,他 編,呼吸器専門医テキスト,東京,南江堂, 2007; pp58—60 17) 呼吸調節.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編,臨床呼吸機能検査,第7 版,東京,メディカルレビュー社,2008; pp122—9 18) 呼吸困難の評価.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編,臨床呼吸機能検査,第7 版,東京, メディカルレビュー社,2008; pp198—204 II章背景知識
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呼吸とは,酸素(O2)を外気から摂取し細胞内に移送するとともに,細胞内で産生された二酸化炭素(CO2)を外気に排出することである。外気と血液間のO2—CO2交換を外呼吸,血液と細胞間のO2—CO2交換を内呼吸と呼ぶ。肺は,外呼吸の主要器官で,換気,ガスの肺内分布,拡散,肺血流の4 つの過程があり,そのうちのどの過程において障害が起こっても血液中に取り込まれる酸素は不足する。これらの異常のために細胞レベルでのO2供給,CO2除去(内呼吸)に障害を来し,生体が正常な機能を営むことができない状態が呼吸不全である。 呼吸不全*1は,「呼吸機能障害のため動脈血ガス(特にO2とCO2)が異常値を示し,そのために正常な機能を営むことができない状態」と定義される。低酸素血症(PaO2 60 Torr 以下)の病態生理学的機序としては,1肺胞低換気, 2換気血流比不均等,3拡散障害,4シャント(右左シャント),5吸入気酸素分圧の低下がある。通常平地で問題となるのは,1~4で説明され,実際はこれらが混在した状態で呼吸不全を引き起こす。5も低酸素血症の原因となるが,その一般的な状況は高地での吸入気酸素分圧の低下である。高地では気圧が低いために大気の酸素含量が少なく,低酸素血症を引き起こす。I型呼吸不全(ガス交換不全)では,肺胞気—動脈血酸素分圧較差(A—aDO2)*2は開大する。A—aDO2が異常高値を呈する病態としては,換気血流比不均等,拡散障害,シャント(右左シャント)がある(表1)。また,I型呼吸不全は重症化,長期化すればII型呼吸不全を呈することもある。II型呼吸不全(換気不全)では高CO2 血症を呈し,肺胞低換気を伴う。純粋な肺胞低換気のみの場合は,A—aDO2は正常範囲である(表1)。 肺胞低換気換気は,吸気と呼気を繰り返し,外気と肺の空気の出入りを行う過程である。これは呼吸中枢を介する横隔膜,肋間筋などの呼吸筋の興奮・収縮によってなされている。何らかの原因により個体に必要な換気,特にガス交換に直接関与する肺胞換 呼吸不全の病態生理2 1.呼吸不全 *1:呼吸不全の基準・ 室内空気呼吸時のPaO2が60 Torr 以下となる呼吸器系の機能障害,またはそれに相当する異常状態を呼吸不全とする。・ 加えてPaCO2が45 Torr 以下をI型呼吸不全,45 Torr を超えるものをII型呼吸不全に分類する。・ 慢性呼吸不全とは,呼吸不全の状態が少なくとも1 カ月以上続くものをいう。・ 呼吸不全の状態には至らな いが,室内空気呼吸時のPaO2が60 Torr 以上で70 Torr 以下のものを準呼吸不全とする。*2:肺胞気—動脈血酸素分圧較差(A—aDO2)肺胞気酸素分圧(PAO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)の差,すなわちA—aDO2=PAO2- PaO2として表される。室内気吸入時(1 気圧,ガス交換率0.8)のPAO2は,PAO2= 150-PaCO2/0.8 で求められる。健常者でも換気血流不均等が存在するため,A— aDO2は0 ではない。室内気吸入下のA—aDO2は10 Torr以下が正常範囲,10~20 Torr を境界値,20 Torr 以上を異常値とする。1表1 低酸素血症の分類 肺胞低換気II型呼吸不全PaCO2>45 Torr A—aDO2正常換気血流比不均等I型呼吸不全PaCO2≦45 Torr A—aDO2開大拡散障害シャント(右左シャント)
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気量が低下した場合,肺胞内および血液中のO2は不足し,逆にCO2は蓄積される。これを肺胞低換気と呼び,低酸素血症および高CO2 血症を呈する。肺胞低換気は肺胞気酸素分圧(PAO2)の低下を招き,低酸素血症を呈するため,純粋な肺胞低換気ではA—aDO2は開大しない。肺胞低換気の原因を表2 に示す。 換気血流比不均等肺動脈血は,肺毛細血管網を通過する過程でO2とCO2の交換が行われ,動脈血化される。このガス交換が十分に行われるためには,肺胞換気量と肺血流量が正常に保たれているのみでは不十分であり,肺内各領域で換気量と血流量のマッチング,すなわち換気血流比が適切であることが重要である。健常肺でも血流は重力の影響で下肺に多く分布するので,肺内の換気血流比は一様ではなく,その値は不均等に分布している。疾患肺では,血流が非常に少ない肺胞や,換気が非常に少ない肺胞が出現して,健常肺よりもさらに不均等分布が増大する。その結果として低酸素血症を呈するが,動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)に対する換気応答が維持されていればPaCO2は上昇しない。A—aDO2は開大するが,酸素吸入で動脈血酸素分圧(PaO2)は改善する。換気血流比不均等の原因を表2 に示す。 拡散障害肺胞気O2が,肺胞腔から毛細血管内赤血球内ヘモグロビン(Hb)までの肺胞上皮細胞,間質,毛細血管内皮細胞,血漿を通過する物理的プロセスを拡散という。拡散障害は,この肺胞気から赤血球までの酸素の拡散過程に何らかの障害が生じることをいう。A—aDO2は開大し,低酸素血症を呈する病態となる。拡散障害がよほど高度にならない限り,安静時では低酸素血症にならないが,運動時では赤血球が 2 3 II章背景知識 表2 低酸素血症の病態と原因 病 態原 因 肺胞低換気十分なガス交換が行えるだけの肺胞換気量が得られていない状態中枢からの換気ドライブの減少(ベンゾジアゼピン系薬などの抗不安薬やモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬による呼吸中枢の抑制,呼吸中枢に影響する脳血管障害など),神経筋疾患(重症筋無力症など),肺・胸郭の異常(慢性的な肺疾患,肥満,後側彎症など)など換気血流比不均等肺胞換気量と血流比の均衡が崩れている状態気道疾患,間質性肺疾患,肺胞疾患,肺循環障害など,気道肺胞系・肺血管系に異常を来すすべての疾患拡散障害肺胞気から赤血球までの酸素の拡散過程に何らかの障害が生じる状態肺胞膜の障害・肥厚(間質性肺炎,放射線肺臓炎,薬剤性肺障害),肺胞面積の減少〔広範な無気肺,肺切除,慢性閉塞性肺疾患(COPD)〕,肺毛細血管血液量の減少(多発性肺血栓塞栓症,肺門部腫瘍による肺動脈の狭窄・閉塞),血液のHb 濃度の低下(貧血)などシャント(右左シャント)右室から拍出された血液が肺胞気に接触せず,酸素化されずに左心系に流入する状態肺内血管シャント(肺動静脈瘻,肺血管腫),心内右左シャント,肺胞内の充満(無気肺,肺炎),肺胞の虚脱(無気肺),肺内毛細血管の拡張(肝肺症候群)など
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肺胞を通過する時間が短くなるため低酸素血症の原因になる。CO2はO2に比べ約20倍速く拡散するため,拡散障害があっても肺胞低換気がない限りPaCO2は上昇しない。拡散障害の原因を表2 に示す。 シャント(右左シャント)右室から拍出された血液が肺胞気に接触せず,酸素化されずに左心系に流入する病態である。A—aDO2は開大し,酸素吸入を行っても,このシャント血は全く影響を受けないので,シャント率が高度の患者では,PaO2が上昇しにくいことがこの病態の特徴である。生理的シャントと病的シャントがあり,正常肺では,気管支静脈の肺静脈への流入と,左心室の小静脈が左心室へ流入する生理的シャントが存在する。病的シャントには先天性心疾患による右左シャント,換気されていない部分の肺循環があり,シャントが高度になると低酸素血症を呈する。シャントの原因を表2 に示す。 スパイロメトリーは最も基本的な呼吸機能検査で,肺活量(VC)*1,1 秒量(FEV1.0)*2,1 秒率(FEV1.0%)*3 などを測定する。FEV1.0%は70%,VC は正常予測値の80%を正常限界とし,FEV1.0%が70%未満である場合は閉塞性換気障害, VC が正常予測値の80%未満である場合は拘束性換気障害,両者をあわせもつものを混合性換気障害と分類する(図1)。 閉塞性換気障害閉塞性換気障害は気道の狭窄による通過障害であり,FEV1.0,FEV1.0%の低下が特徴である。スパイログラムでFEV1.0%が70%未満の時に,閉塞性換気障害と診断 4 2.換気障害 *1:肺活量(vital capacity; VC)緩徐な呼吸をした際に測定される最大呼気位と最大吸気位の間の肺気量変化をVC と呼ぶ。VC が正常予測値の80%未満である時に拘束性換気障害と診断する。(参考)努力肺活量(forced vital capacity;FVC)通常のVC が緩徐な呼気で測定したものであるのに対し,最大吸気位から最大努力の呼出をして得られるVC をFVCと呼ぶ。健常者では,測定値はVC とほぼ同じ値をとる。 *2:1 秒量(FEV1.0)最大努力呼出の開始後1 秒間に呼出される量をいう。気道抵抗の上昇や気道閉塞で低下するが,呼吸筋の障害や肺弾性の低下でも低下する。 *3:1 秒率(FEV1.0%)最大努力呼出の開始後1 秒間に呼出される量の努力肺活量(FVC)に対する百分率をいう。すなわちFEV1.0/FVCのこと。Gaensler の1 秒率ともいい,FEV1.0%(G)とも表される。また,FEV1.0%(F)はTiffeneau の1 秒率で, FEV1.0/VCのこと。FEV1.0%が70%未満の時に閉塞性換気障害と診断する。1図1 換気障害の分類80 100 (%) %肺活量 100 70 (%) 正常拘束性換気障害 閉塞性換気障害 1 秒 率混合性換気障害
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する。FEV1.0%は肺気量の影響が除かれているので,気流制限の有無の判定に用いる。がんに伴う閉塞性換気障害の代表的疾患を表3 に示す。 拘束性換気障害拘束性換気障害は肺の容積が縮小する異常であり,VC の減少が特徴的である。スパイログラムでVC が予測値の80%未満の時に,拘束性換気障害と診断する。VCの減少のほか,各肺気量分画の減少,肺拡散能の低下,静肺コンプライアンスの低下などを伴う。がんに伴う拘束性換気障害の代表的疾患を表3 に示す。 混合性換気障害混合性換気障害には,次の3 つの場合がある。1閉塞性換気障害と拘束性換気障害を同時に来す疾患の場合(肺結核後遺症,じん肺),2閉塞性換気障害と拘束性換気障害を来す疾患を合併した場合〔慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)と間質性肺炎など〕,3みかけ上の拘束性換気障害を来す疾患の場合(高度に進行したCOPD)がある。 (小林 剛,田中桂子) 【参考文献】1) 呼吸不全の定義,診断基準.厚生省特定疾患「呼吸不全」調査研究班 編.「呼吸不全」診断と治療のためのガイドライン,東京,メディカルレビュー社,1996; pp10—3 2) 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドライン―スパイロメトリー,フローボリューム曲線,肺拡散能力,東京,メディカルレビュー社,2004 3) 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドラインII―血液ガス,パルスオキシメーター,東京,メディカルレビュー社,2006 4) スパイロメトリーと肺気量.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.臨床呼吸機能検査,第7版,東京,メディカルレビュー社,2008; pp9—23 5) 呼吸不全.日本呼吸器学会肺生理専門委員会,日本呼吸管理学会酸素療法ガイドライン作成委員会 編.酸素療法ガイドライン,東京,メディカルレビュー社,2006; pp6—9 6) 呼吸不全.高久史麿,尾形悦郎,黒川 清,他 監.新臨床内科学,第9 版,東京,医学書院, 2009; pp101—6 7) 呼吸不全.杉本恒明,小俣政男 総編.内科学,第6 版,東京,朝倉書店,1995; pp294—7 8) 呼吸生理.工藤翔二,中田紘一郎,永井厚志,他 編.呼吸器専門医テキスト,東京,南江堂, 2 3 II章背景知識 表3 がんに伴う換気障害を来す代表的疾患障害のパターン病 態がんに伴う代表的疾患閉塞性換気障害気道狭窄上気道口腔内腫瘍,咽頭・喉頭腫瘍 下気道気管腫瘍,縦隔リンパ節腫大に伴う気管狭窄 拘束性換気障害肺の弾性の低下放射線肺臓炎,薬剤性肺障害,がん性リンパ管症 肺容量の減少肺切除手術後,原発性・転移性肺腫瘍,無気肺胸郭,胸膜病変胸水,胸膜癒着後,胸膜浸潤・肥厚,胸膜中皮腫高度の胸郭の変形横隔神経麻痺浮 腫肺水腫,心不全その他腹水貯留に伴う腹部膨満 混合性換気障害上記の合併など
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2007; pp12—7 9) 呼吸機能検査法.工藤翔二,中田紘一郎,永井厚志,他 編.呼吸器専門医テキスト,東京, 南江堂,2007; pp126—8
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がん患者において呼吸困難の発生する頻度は46~59%と報告されている。肺がんの患者だけに限るとその頻度は増加し,75~87%となる。がん患者における呼吸困難の原因は多様である。原因の分類として,1局所(心肺)における原因,2全身状態による原因に分ける考え方と,1がんに関連した原因,2がん治療に関連した原因,3がんとは関連しない原因に分ける考え方とがある。これらを表1 にまとめた。 がんに関連した原因がんに関連した原因のなかで,局所(心肺)における原因の主なものは,1肺内腫瘍(原発・転移),2悪性胸水,3胸壁腫瘍,4心囊水,5上大静脈症候群,6主要気道閉塞(major airway obstruction;MAO),7肺塞栓,8がん性リンパ管症, 9気道感染症,10その他の種々の症候群が挙げられる。また,全身状態による原因の主なものには,1貧血,2腹水,3肝腫大,4全身衰弱に伴う呼吸筋疲労,5発熱,6不安,抑うつ,精神的ストレスが挙げられる。 がん治療に関連した原因がん治療に関連した原因では,放射線治療によるものとして放射線肺臓炎がある。化学療法に伴うものとしては薬剤性肺障害*がある。 がんとは関連しない原因がんとは関連しない原因では,慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの基礎肺疾患によるものが最も多い。 (茅根義和,松田能宣) 【参考文献】1) Chan K—S, et al. Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1112—3 2) Loganathan RS, Stover DE, Shi W, et al. Prevalence of COPD in women compared to men around the time of diagnosis of primary lung cancer. Chest 2006; 129: 1305—12 呼吸困難の原因3 1.呼吸困難の原因 1 2 *:薬剤性肺障害を生じやすい抗がん剤微小管阻害薬:ビノレルビン,エリブリンアルキル化薬:シクロホスファミド,メルファラン,ベンダムスチン代謝拮抗薬:ゲムシタビン※,クラドリビン抗生物質:ブレオマイシン※,ペプロマイシン葉酸拮抗薬:ペメトレキセドトポイソメラーゼ阻害薬:イリノテカン※,アムルビシン※分子標的治療薬:ゲムツズマブ,イマチニブ,ボルテゾミブ,ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ,オシメルチニブ,スニチニブ,サリドマイド,エベロリムス,テムシロリムス,クリゾチニブ,アレクチニブ免疫チェックポイント阻害薬:ニボルマブ※間質性肺炎に対して禁忌となっている薬剤 3 II章背景知識
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表1 呼吸困難の原因(緩和ケアの立場からの分類) 局所における原因全身状態による原因 がんに直接関連した原因・肺実質への浸潤肺がん,肺転移・胸壁への浸潤胸壁の腫瘍,中皮腫悪性胸水・心 囊悪性心囊水・主要気道閉塞(MAO)気管の圧迫上気道(咽頭,喉頭,鼻腔, 口腔)での圧迫・血管性上大静脈症候群腫瘍塞栓・リンパ管性がん性リンパ管症・気 胸・肺 炎閉塞性肺炎気管食道瘻による肺炎日和見感染・全身衰弱に伴う呼吸筋疲労がん悪液質症候群腫瘍随伴症候群・血 液貧 血過粘稠症候群・横隔膜の挙上横隔膜麻痺大量腹水肝腫大・発 熱 がん治療に関連した原因・外科治療片肺切除肺葉切除・化学療法薬剤性肺障害心毒性・放射線治療放射線肺臓炎放射線性心膜炎・貧 血・ステロイドミオパチー(筋症)がんとは直接関連しない原因・基礎肺疾患慢性閉塞性肺疾患(COPD)気管支喘息間質性肺炎・心疾患うっ血性心不全不整脈肺塞栓・不安,抑うつ,精神的ストレス・パニック発作・神経筋疾患
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歴史的に,呼吸困難の評価尺度や手法の開発は,主に慢性閉塞性肺疾患(COPD),あるいは慢性心不全患者などの比較的全身状態の安定した慢性疾患患者を対象として発展してきた。このため,評価の主眼は呼吸困難が身体・機能面に及ぼす影響におかれている。一方,緩和ケアにおける介入は,呼吸困難の根本的な原因の除去を主たる目的とせず,自覚的な症状の改善を主たる目的としている。このため評価では,痛みなどと同様に患者の主観性が重視されている(patient—based measurement)。また,呼吸困難の自覚は,身体機能的側面のみならず患者の精神性や心理社会性,あるいは周囲の支援環境と密接に関連していると考えられているため,呼吸困難に関連する多領域を包括した評価尺度も開発されている(multidimensional scale)。Bausewein,Dorman らは,緩和ケアにおける呼吸困難の評価尺度の詳細な系統的レビューを報告している。彼らは詳細なレビューの結果,妥当性と信頼性が十分に検証された評価尺度はないとしている。しかし同時に,推奨しうるいくつかの尺度を取り上げており,以下にこれらを解説する。Bausewein らは尺度を,1呼吸困難の量を測定する尺度(呼吸困難の量的評価尺度:scales to measure the severity of breathlessness),2呼吸困難の質を測定する尺度(呼吸困難の質的評価尺度: scales to describe the quality of breathlessness),3呼吸困難による機能的な影響を測定する尺度(呼吸困難に伴う機能評価尺度:scales to measure functional impairment caused by breathlessness)に分類することを提唱している。本項では,呼吸困難の「主観的評価」方法を中心に解説する。呼吸不全に伴う身体症状の「客観的評価」〔修正MRC(Medical Research Council)スケール〕に関しては別項を参照のこと(P31,II章—5 身体所見と検査参照)。 呼吸困難の量的評価尺度呼吸困難の主観的な量(程度,強度)を測定する単領域性の尺度であり,代表的な尺度としてnumerical rating scale(NRS),visual analogue scale(VAS),修正Borg スケールなどがある(図1)。これらの尺度は簡便であるため,小児や全身状態の不良な対象者など広く使用が可能である。また,同一対象内における呼吸困難の相対的な経時的推移を測定するのに適している。一方,測定値は対象者の主観性に大きく左右されるため,異なる群間での比較には限界があるとされている。 1 )Numerical Rating Scale(NRS) 0 と10 を最端とし,間に数値によるアンカーポイントが記載されている。VAS に比べ少ないサンプルサイズでの変化の検出が可能である。また電話や口頭による調査が可能なことも,VAS に比し有利な点である。COPD,がん患者を対象とした妥 呼吸困難の評価4 1.使用が推奨されている評価尺度(表1,P29) 1 II章背景知識
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当性と信頼性の検証がなされている。 2 )Visual Analogue Scale(VAS)呼吸困難の量的尺度として広く用いられている。通常,水平あるいは垂直に引かれた100 mm の直線上で,その両端に両極端の状態を記載し(例えば「息苦しさはない」「想像しうる最もひどい息苦しさ」など),患者は自分の状態が最もあてはまる線上にマークする。COPD を対象とした妥当性と信頼性の検証は多くなされているが,がん患者を対象とした検証は十分でない。 3 )修正Borg スケールBorg(1982)は医学の領域あるいは社会生活の見地から,人間の身体活動性を評価する必要性を論じ,カテゴリー尺度による身体活動能力の評価を提唱した。現在,呼吸困難の評価に使用されている修正Borg スケールでは,垂直に引かれた線上を0~10 まで分類し(1 段階ずつの分類で通常0.5 を含むため12 段階に分類される),アンカーとなるポイントには,その状態を示す用語が記載されている。修正Borgスケールは,リッカート尺度*1に代表される順序カテゴリー尺度と異なり,各ポイント間は等間隔性を有すると考えられている。このため,ポイント4 は2 の倍,ポイント8 は4 の倍の強度といった評価が可能であり,同一対象者内における経時的変化の検出に優れている。修正Borg スケールは簡便かつ短時間で調査可能であり,またCOPD における運動中の身体機能評価としては確立された指標である。一方,がん患者を対象とした研究報告は少なく,反応性*2やtest—retest 信頼性*3のさらなる検証が必要とされている。本邦でも広く使用されている尺度であるが,日本語版の妥当性を検証した報告はない。 *1:リッカート尺度順序カテゴリー尺度で,1 段階ごとにスコアが上がる。例えば,EORTC QLQ—C30 の項目は,「全くない」「少しある」「多い」「非常に多い」という4 段階の分類カテゴリーをもつが,これらを順にスコア化する形式をリッカート尺度と呼ぶ。各段階の差が等しいという根拠(等間隔性)はないが,対象の平均を測定するような場合には,意味ある有益な要約を提供するといわれている。 *2:反応性(responsiveness)尺度の信頼性と深い関連のある特性の一つで,変化を検出する能力である。例えば,患者の健康状態が経時的に変化する場合,その測定尺度がその変化を検出できるかということである。信頼性と関連のあるもう一つの特性は感度(sensitivity)であり,これは群間の差を検出する能力のことである。 *3:test—retest信頼性(test— retest reliability)尺度に求められる信頼性とは,変化や差の検出する特性(感度・反応性)を有するとともに,その尺度が再現可能で一貫した結果をもたらすことである(再現性)。再現性は,反復測定によって得られた値の相関分析に基づき検証される。test—retest 信頼性とは,経時的な反復測定の手法により検証される特性である。もし患者の状態が安定しているならば,ある測定尺度をその患者に繰り返し用いた時,繰り返し可能な再現性のある結果が得られるはずである。図1 呼吸困難の主観的な量的評価尺度10.0 非常に強い 9.0 8.0 7.0 かなり強い 6.0 5.0 強い 4.0 やや強い 3.0 2.0 弱い 1.0 かなり弱い0.5 非常に弱い0 なにも感じない 修正 Borg スケール 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Numerical Rating Scale(NRS) Visual Analogue Scale(VAS)100mm 息苦しさはない想像しうる最もひどい息苦しさ
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呼吸困難の質的評価尺度呼吸困難を自覚する感覚は,原因となる疾患や呼吸困難を来すメカニズムにより,質的に大きく異なることが知られている。すなわち自覚される呼吸困難を感覚的に描写する場合,その特徴は,例えば努力感(呼吸を行うことに労力を感じる,空気飢餓感など),絞扼感(胸が締めつけられる感覚),窒息感(息が詰まる感覚)といった,いくつかのカテゴリーに分類することが可能である。これら呼吸困難の質的な評価を目的に開発された尺度として,Cancer Dyspnea Scale(CDS)が開発されている。 1 )Cancer Dyspnea Scale(CDS)本邦で開発されたがん患者の自己記入式呼吸困難調査票であり,英語版の妥当性が確認されている(図2)。進行がん患者を対象として,内容的妥当性とtest—retest信頼性が検証されている。CDS は呼吸努力感に関する5 項目の質問,呼吸不快感に関する3 項目,呼吸不安感に関する4 項目の合計12 項目の質問からなる。各質問に対し,1 から5 までの5 段階の回答が記されており(1:いいえ,2:少し,3:まあまあ,4:かなり,5:とても),患者は自分の状態にあった番号にマークする。調査 2 II章背景知識 図2 Cancer Dyspnea Scale(CDS) あなたの息切れ感,息苦しさについておたずねします。この数日間に感じられた息苦しさの状態にもっともあてはまる番号に各々一つだけ○をつけてください。感じたまま第一印象でお答えください。 いいえ少しまあまあかなりとても 1 らくに息を吸い込めますか? 1 2 3 4 5 2 らくに息をはき出せますか? 1 2 3 4 5 3 ゆっくり呼吸ができますか? 1 2 3 4 5 4 息切れを感じますか? 1 2 3 4 5 5 ドキドキして汗が出るような 息苦しさを感じますか? 1 2 3 4 5 6 「はあはあ」する感じがしますか? 1 2 3 4 5 7 身のおきどころのないような 息苦しさを感じますか? 1 2 3 4 5 8 呼吸が浅い感じがしますか? 1 2 3 4 5 9 息が止まってしまいそうな 感じがしますか? 1 2 3 4 5 10 空気の通り道がせまくなったような感じがしますか? 1 2 3 4 5 11 おぼれるような感じがしますか? 1 2 3 4 5 12 空気の通り道に,何かひっかかっているような感じがしますか? 1 2 3 4 5
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に要する時間はおよそ2 分と簡便であり,さまざまな状態の対象に広く使用可能である。CDS の使用にあたっては著作者の許諾を必要としない。 呼吸困難に伴う機能評価尺度呼吸困難が主に身体機能面に及ぼす影響の評価を目的とした尺度である。従来, COPD 患者の機能評価では,さまざまな程度の運動負荷(歩行テスト,腕の羽ばたき運動など)と,それにより自覚される呼吸困難とを評価する手法が開発されてきた。しかし,全身倦怠,痛み,四肢筋力の低下などを伴う状態が悪化した時期では,運動負荷を課す機能評価手法は適さないとされている。 1 )Chronic Respiratory Questionnaire—Dyspnea subscale(CRQ—D) COPD 患者を対象とした健康関連quality of life(QOL)の評価尺度であり, Guyatt ら(1987)により臨床試験での使用を目的に作成された。患者の主観性に基づいた面接式の調査票であり,患者へのインタビューから重要と認識された4 つの領域(呼吸困難,倦怠感,情緒,自己コントロール感)から構成されている。このうち呼吸困難に関する調査項目では,患者は26 の日常生活動作から,自分にとって最も重要な5 つの動作を選択し,その動作を行うことにより自覚する呼吸困難を7段階に評価する。CRQ—D はCOPD,心不全などさまざまな病態での妥当性が検証されており,臨床的に意味をもつ最小の差は7 段階のリッカート尺度で0.5 とされている。がん患者を対象とした妥当性検証はなされていない。欠点として,調査項目がやや多く,調査票すべての記入には通常15~25 分を要する(呼吸困難に関する項目のみに要する調査時間は不明である)。このため,切迫した呼吸困難症状のない対象において,機能評価を行うのに適した尺度とされている。日本語版が作成されており,日本人のCOPD 患者における妥当性が検証されている。使用にあたっては,著作者の許諾が必要である。 2 )Motor Neurone disease—Dyspnea Rating Scale(MDRS)神経筋疾患患者の呼吸困難と身体活動性の評価を目的としてDougan らにより開発された。CRQ—D の呼吸困難に関する調査項目を基本としており,患者は13 の日常生活動作から,自分にとって最も重要な5 つの動作を選択し,その動作を行うことにより自覚される呼吸困難を5 段階に評価する。本来,四肢の筋力低下のために運動の制限された患者を対象に開発されているため,状態が悪化した時期の評価尺度としても有用である可能性は高い。CRQ—D,MDRS の特徴は,いずれも患者自身が重要と考える活動事項において,主観的な機能評価を行う点であり,患者の主観性を重視した機能評価尺度として優れている。尺度から得られた結果は直接的に臨床的重要度を示しており,CRQ—D, MDRS はさまざまな介入の効果判定尺度として有用である可能性が示唆される。 呼吸困難の評価では患者自身による評価が重視されているが,自己評価が困難な 3 2.医療従事者による呼吸困難の評価
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状況では,第三者による代理評価が必要となる。その評価法を紹介する。Support Team Assessment Schedule(STAS)はホスピス・緩和ケアにおける評価尺度の一つである。主要項目として,「痛みのコントロール」「症状が患者に及ぼす影響」「患者の不安」「家族の不安」「患者の病状認識」「家族の病状認識」「患者と家族のコミュニケーション」「医療専門職間のコミュニケーション」「患者・家族に対する医療専門職とのコミュニケーション」の9 項目からなる5 段階のリッカート尺度である。本尺度は医師,看護師など医療専門職による「他者評価」という方法をとるため,患者に負担を与えることなく症状の評価ができるという利点がある。患者の主観的評価とは,ある程度の相関性が報告されており,また日本語版(STAS—J)の信頼性と妥当性が検証されている。STAS—J の項目2「症状が患者に及ぼす影響」は,さまざまな症状にあてはめることが可能であるため(図3),「呼吸困難」を含む22 の症状(その他を含め23 項II章背景知識 表1 使用が推奨されている呼吸困難の評価尺度 分 類尺度名妥当性の検証された疾患日本語版 の有無特 徴 量的尺度Visual Analogue Scale(VAS) COPD,喘息,人工呼吸器装着者 ―単領域の量的尺度で簡便で汎用性がある。同一対象内の経時的推移の測定に適する。異なる群間での比較には限界がある。Numerical Rating Scale(NRS) COPD,がん― 修正Borg スケールCOPD,喘息,拘束型肺疾患― 質的尺度Cancer Dyspnea Scale(CDS)がんありCDS は本邦で開発された多領域性,自己記入式調査票。簡便で妥当性と信頼性が検証済みで質的尺度として最適。英語版も検証済み。 機能評価尺度Chronic Respiratory Questionnaire— Dyspnea subscale (CRQ—D) COPD,間質性肺疾患,囊胞性線維症,α—アンチトリプシン欠損症,神経筋変性疾患 あり主観性を重視した機能評価尺度で,医療介入の効果の評価尺度として有用。CRQ—D は日本語版が開発されており,妥当性と信頼性が検証されている。使用には著作者の許諾が必要。Motor Neurone disease—Dyspnea Rating Scale(MDRS) 神経筋変性疾患なし 図3 STAS—J 項目2 の「症状が患者に及ぼす影響」の評価項目0=なし1= 時折の,または断続的な単一または複数の症状があるが,日常生活を普通に送っており,患者が今以上の治療を必要としない症状である。2= 中等度の症状。時に調子の悪い日もある。病状からみると,可能なはずの日常生活動作に支障をきたすことがある。3= たびたび強い症状がある。症状によって日常生活動作や物事への集中力に著しく支障をきたす。4= 持続的な耐えられない激しい症状。他のことを考えることができない。
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目)を評価するSTAS—J 症状版が本邦独自に開発されている。ただし,本調査票を用いた,医療従事者による呼吸困難評価の妥当性と信頼性は報告されておらず,今後に期待される。 Bausewein,Dorman らは尺度開発の今後に関し,これまでにも多くの呼吸困難評価尺度が開発されており,新たな尺度開発よりも,有用性が示唆されている既存の尺度を用いた信頼性と妥当性の検証に労力を注ぐべきと述べている。また,現時点で臨床研究や実臨床において評価を行う場合には,個々の尺度の特性を十分に理解し,評価の対象と目的に適した尺度の選択を行う必要があり,状況に応じて異なる種類の尺度を複数選択する方法も可能であるとも述べている。 (平 成人,下妻晃二郎,松田能宣,田中桂子) 【参考文献】1) Bausewein C, Farquhar M, Booth S, et al. Measurement of breathlessness in advanced disease: a systematic review. Respir Med 2007; 101: 399—410 2) Dorman S, Byrne A, Edwards A. Which measurement scales should we use to measure breathlessness in palliative care? A systematic review. Palliat Med 2007; 21: 177—91 3) Wilson RC, Jones PW. A comparison of the visual analogue scale and modified Borg scale for the measurement of dyspnoea during exercise. Clin Sci(Lond)1989; 76: 277—82 4) Gift AG. Validation of a vertical visual analogue scale as a measure of clinical dyspnea. Rehabil Nurs 1989; 14: 323—5 5) Wilcock A, Crosby V, Clarke D, Tattersfield A. Repeatability of breathlessness measurements in cancer patients. Thorax 1999; 54: 375 6) Borg GA. Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci Sports Exerc 1982; 14: 377—81 7) Borg G ed. Borg’s Perceived Exertion and Pain Scales. Champaign, Human Kinetics Publishers, 1998 8) Simon PM, Schwartzstein RM, Weiss JW, et al. Distinguishable types of dyspnea in patients with shortness of breath. Am Rev Respir Dis 1990; 142: 1009—14 9) Tanaka K, Akechi T, Okuyama T, et al. Development and validation of the Cancer Dyspnoea Scale: a multidimensional, brief, self—rating scale. Br J Cancer 2000; 82: 800—5 10) Uronis HE, Shelby RA, Currow DC, et al. Assessment of the psychometric properties of an English version of the cancer dyspnea scale in people with advanced lung cancer. J Pain Symptom Manage 2012; 44: 741—9 11) Guyatt GH, Berman LB, Townsend M, et al. A measure of quality of life for clinical trials in chronic lung disease. Thorax 1987; 42: 773—8 12) Guyatt GH, Townsend M, Keller J, et al. Measuring functional status in chronic lung disease: conclusions from a randomized control trial. Respir Med 1989; 83: 293—7 13) Jaeschke R, Singer J, Guyatt GH. Measurement of health status. Ascertaining the minimal clinically important difference. Control Clin Trials 1989; 10: 407—15 14) Hajiro T, Nishimura K, Tsukino M, et al. Comparison of discriminative properties among disease—specific questionnaires for measuring health—related quality of life in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med 1998; 157: 785—90 15) Dougan CF, Connell CO, Thornton E, Young CA. Development of a patient—specific dyspnoea questionnaire in motor neurone disease(MND): the MND dyspnoea rating scale(MDRS). J Neurol Sci 2000; 180: 86—93 16) Higginson IJ, McCarthy M. Validity of the support team assessment schedule: do staffs’ ratings reflect those made by patients or their families? Palliat Med 1993; 7: 219—28 17) Miyashita M, Matoba K, Sasahara T, et al. Reliability and Validity of the Japanese version of the Support Team Assessment Schedule(STAS—J). Palliat Support Care 2004; 2: 379—84 3.まとめ
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呼吸困難の原因は,呼吸器系疾患,循環器系疾患,神経筋疾患,精神疾患と多岐にわたる。呼吸困難の原因については別項を参照されたい(P23,II章—3 呼吸困難の原因参照)。呼吸困難の原因が何であるかを判断するために以下の身体所見を確認し,必要な検査を行う。 現病歴呼吸困難の発症の仕方を確認する。突然発症した呼吸困難は,気道閉塞,気胸,肺塞栓などを示唆する。通常,呼吸困難は徐々に出現する。呼吸困難の持続の仕方を確認する。間欠的に出現する時には,体位,日内変動などとの関連について尋ねる。例えば,臥位で増悪し起座呼吸となる呼吸困難は心不全を,明け方に増悪する呼吸困難は気管支喘息を示唆する。不安も呼吸困難と密接に関係しており,不安の強い患者は器質的疾患による呼吸困難とは異なった臨床像を示すことが多く,「深く息を吸うことができない」とか,「十分な空気を吸うことができずに息がつまってしまいそうだ」などと表現することもある。呼吸困難の訴え方にも注意を払う必要がある。どの程度の労作により息切れが出現するかを尋ねて,間接的に呼吸困難を評価する尺度として修正MRC スケールがある(表1)。従来広く用いられてきた(Fletcher—)Hugh—Jones 分類は国際的に通用しないため,使用されなくなっている。 既往歴・生活歴気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD),心不全の既往を確認する。また,職業歴(粉塵曝露の有無など),喫煙歴についても確認する。 身体所見と検査5 1.問 診1 II章背景知識 表1 修正MRC スケール質問票グレード 分類あてはまるものにチェックしてください(1 つだけ) 0 激しい運動をした時だけ息切れがある。 □ 1 平坦な道を早足で歩く,あるいは緩やかな上り坂を歩く時に息切れがある。 □ 2息切れがあるので,同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い,あるいは平坦な道を自分のペースで歩いている時,息切れのために立ち止まることがある。□ 3 平坦な道を約100 m,あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる。 □ 4 息切れがひどく家から出られない,あるいは衣服の着替えをする時にも息切 れがある。 □ 〔日本呼吸器学会COPD ガイドライン第4 版作成委員会 編.COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のため のガイドライン第4 版,メディカルレビュー社,2013; p33 より引用改変〕
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増悪因子・軽快因子どのようにすると呼吸困難が増悪するか,軽快するかを尋ねる。 Vital Signs呼吸困難患者を評価する際には,まずvital signs(体温,血圧,心拍数,呼吸数,酸素飽和度)を確認する。 視 診視診では,呼吸数と深さ,呼吸のリズムに注意する。正常時には呼吸は静かで整であり,呼吸数は1 分間に14~20 回である。通常,呼吸のリズムは規則的であるが,さまざまな状態の変化に応じて呼吸のリズムが変化する。代表的な呼吸のリズムの異常には,周期的な異常であるチェーン・ストークス呼吸,不規則な異常であるあえぎ呼吸(下顎呼吸),失調性呼吸〔Biot(ビオー)呼吸〕,奇異呼吸*1 などがある。チェーン・ストークス呼吸は中枢神経系の異常,心不全,尿毒症,オピオイド過量投与,各疾患の終末期などでみられることがある。不規則な異常呼吸は中枢神経系(特に橋や延髄レベル)の障害により生じる。奇異呼吸は,吸気時に腹部が陥没し,呼気時に突出する自然な呼吸とは逆のパターンとなる呼吸であり,呼吸筋*2疲労時や上気道閉塞で起こることがある(図1)。さらに呼吸不全の評価のために,チアノーゼの有無,胸鎖乳突筋や他の呼吸補助筋*3の収縮を観察する。右心不全の場合には,頸静脈の怒張や下肢の浮腫が認められることがある。 3 2.身体所見 1 2 *1:奇異呼吸1左右が対称的な動きでない2 胸部と腹部の動きが同調していない3 胸部の一部が他と逆の動きをする呼吸運動をいう。 *2:呼吸筋呼吸をする時に働く筋群。安静時吸気では主に横隔膜や肋間筋が収縮して胸郭が拡大し,安静時呼気は受動的に行われる。 *3:呼吸補助筋努力呼吸時や深呼吸では,主作動筋以外の呼吸筋も補助的に働く。主なものに胸鎖乳突筋,斜角筋,大胸筋,腹直筋がある。慢性呼吸不全患者で呼吸筋の機能が低下した場合などにも働く。図1 代表的な呼吸パターン 正 常遅い呼吸(緩徐呼吸) Cheyne-Stokes(チェーン・ストークス)呼吸失調性呼吸〔Biot(ビオー)呼吸〕 吸気呼気 深呼吸無呼吸 〔Bickely LS. ベイツ診察法 第2 版(日本語版監修 福井次矢,他),メディカル・サイエンス・インターナショナル,2015; p141 より引用,一部改変〕
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触 診胸水貯留や気胸の場合には,声音震盪の低下がみられることがある。胸壁腫瘍がある場合には異常な隆起として触れることがある。 打 診胸水や腫瘍などにより,正常では空気を含んでいる肺や胸膜腔の含気が低下すると,打診にて濁音となる。また気胸の場合には,正常音よりも打診音が大きくなる(過共鳴音)。 聴 診胸部の聴診では,正常呼吸音の聴取範囲と副雑音に注意する。Stridor は吸気時のハイピッチの連続性の副雑音で,これが聴取される時には上気道の閉塞の可能性を考える。Wheeze は口笛様の連続性副雑音で,喘息,COPD など下気道の狭窄や心不全などの時に聴取される。肺炎や心不全では,「ボコボコ」と表現される断続的な粗い破裂様の副雑音であるcoarse crackle(水泡音)が聴取されることがある。 動脈血ガス分析/経皮的酸素飽和度動脈血ガス分析を行うことで,呼吸不全の有無を評価する。患者の状況,病状により動脈血ガス分析を行わない場合には,パルスオキシメーターを用い経皮的酸素飽和度を測定することで酸素分圧を推定することができる。酸素飽和度と酸素分圧には相関がみられ,その関係を示したものがヘモグロビン酸素解離曲線である(図2)。この曲線は,体温の上昇,pH 低下,PCO2の増加,2,3—diphosphoglycerate(2,3— 4 5 3.検査所見1 II章背景知識 pH 7.40, PaCO2=40 Torr,体温37°C,Hb 15g/dL の条件による。〔日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドラインII,メディカルレビュー社,2006; p34 より引用〕 図2 ヘモグロビン酸素解離曲線 (%) 100 90 80 70 60 50 SO2 40 30 20 10 00 10 20 30 40 50 PO2 60 70 80 90 100(Torr)
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DPG)濃度の増加で右に移動し,逆に,体温の低下,pH 上昇,PCO2の低下,2,3— DPG 濃度の低下で左に移動する。このように,酸素飽和度と酸素分圧の関係はさまざまな因子により変動するため,SpO2から予測するPaO2はあくまでも参考であることを認識しておく必要があるが,SpO2が90%の時にPaO2は概ね60 Torr となるため,SpO2が90%未満であれば呼吸不全の存在を念頭に置く必要がある。 血液検査貧血は呼吸困難の原因となるので,貧血の有無について確認する。肺炎などによる呼吸困難では,炎症反応の評価としての赤沈やCRP,白血球数(好中球数)の増加の有無について確認する。心不全では,BNP(brain natriuremic peptide;脳性ナトリウム利尿ペプチド)が上昇し,その程度により重症度の判定も可能である。 画像検査呼吸困難の原因を鑑別するために胸部単純X 線検査を行う。肺野の主な異常所見としては,肺炎などの肺実質性陰影でみられるコンソリデーション(consolidation),エア・ブロンコグラム(air bronchogram sign)や間質性陰影で見られるカーリー線(Kerley’s line),蜂巣肺を確認する。胸部単純X 線では肺野の評価だけでなく,心拡大,胸水貯留,気胸の有無についても確認する。また,気管透亮像を注意深く追い,気管狭窄が認められないかも評価する。横隔膜の挙上は肝腫大,肺の虚脱,肥満の可能性がある。横隔神経麻痺がある場合には,横隔膜の位置異常が認められる。胸壁腫瘍がある場合には,胸膜外徴候(extrapleural sign)がみられる。胸部CT 検査は,単純X 線検査では描出できない病変の検出に役立つため,必要に応じて施行する。特に,少量の胸水や心陰影と重なる部分の肺野所見,胸壁の腫瘍の描出はCT 検査が有用となる。細かな間質性陰影の描出はHRCT(high resolution CT)が有効である。がん性リンパ管症では,典型的にはCT にて胸膜直下の結節影,気管支血管束の肥厚,小葉間隔壁の肥厚などがみられる。肺塞栓では,胸部単純X 線検査では肺血管影の狭小化がみられることもあるが,確定診断は困難なので,疑わしい場合には造影CT 検査(可能であればマルチスライスCT が望ましい)で肺動脈内の血栓の有無を評価する。超音波検査は,肺実質の評価には適さないが,胸水,心囊水貯留の有無,気胸の有無,心機能の評価を行うことができる。 (山本 亮,茅根義和,合屋 将,山口 崇) 【参考文献】1) 日本臨床検査医学会 編.臨床検査のガイドライン2005/2006―症候編・疾患編・検査編, 2005; pp24—8 2) Bickley LS.ベイツ診察法(Bates’ Guide to Physical Examination and History Taking, 9th ed),福井次矢,井部俊子 日本語版監修,東京,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2008; pp241—77 3) ハリソン内科学,福井次矢,黒川 清 日本語版監修,東京,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2006; pp207—9 4) 上田秀雄,他 編.内科学,第5 版,東京,朝倉書店,1991; pp140—4 2 3
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5) マクギーの身体診断学(Evidence—Based Physical Diagnosis),柴田寿彦 監訳,東京,エルゼビア・ジャパン,2004; pp190—223 6) 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドライン―スパイロメトリー,フローボリューム曲線,肺拡散能力,メディカルレビュー社,2004; pp2—23 7) 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.呼吸機能検査ガイドラインII―血液ガス,パルスオキシメータ,メディカルレビュー社,2006 8) 肺機能検査―呼吸生理から臨床応用まで,福地義之助 監訳,東京,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2001; pp3—24 9) 日本呼吸器学会酸素療法ガイドライン作成委員会 編.日本呼吸器学会酸素療法ガイドライン,メディカルレビュー社,2006; pp72—81 10) 肺機能検査―呼吸生理から臨床応用まで,福地義之助 監訳,東京,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2001; pp71—89 11) スパイロメトリーと肺気量.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.臨床呼吸機能検査,第7版,メディカルレビュー社,2008; pp9—23 12) 努力呼出曲線,フロー・ボリューム曲線,ピークフロー.日本呼吸器学会肺生理専門委員会編.臨床呼吸機能検査,第7 版,メディカルレビュー社,2008; pp24—33 13) 血液ガス.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.臨床呼吸機能検査,第7 版,メディカルレビュー社,2008; pp97—106 14) パルスオキシメータと臨床応用.日本呼吸器学会肺生理専門委員会 編.臨床呼吸機能検査,第7 版,メディカルレビュー社,2008; pp107—11 15) 主要な異常所見の読影.日本医師会 編,片山 仁,大澤 忠,大場 覚 監,胸部X 線写真の ABC,東京,医学書院,1990; pp115—228 II章背景知識
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定 義非侵襲的陽圧換気(non—invasive positive pressure ventilation;NPPV)とは,気管内挿管や気管切開をせずに,鼻マスク,口鼻マスクなどの非侵襲的なインターフェイスをヘッドギアやホルダーで顔面に固定し,換気を補助する人工呼吸である。非侵襲的換気(non—invasive ventilation;NIV)と表記される場合もある。非侵襲的陽圧換気(NPPV)に用いられるデバイスは,人工呼吸器(必要に応じて加湿器)とインターフェイス(鼻マスク,鼻プラグ,口鼻マスク,顔マスク,口マスク,マウスピース)より構成される(図1)。 メリットとデメリット侵襲的人工呼吸(気管内挿管下に行う人工呼吸)と比較した場合,非侵襲的陽圧換気(NPPV)では気管内挿管が不要なため,それに伴う苦痛やリスクを回避することができ,また,必ずしも鎮静薬を必要としないため,家族との意思疎通が可能であることがメリットである。また,病状が許せば,患者の希望に応じて脱着が可能である。一方で,マスクおよび陽圧換気によって圧迫感が強くなり,かえって呼吸困難が増強する場合もあり,非侵襲的陽圧換気(NPPV)使用に耐えられない症例がある。また,侵襲的人工呼吸と同様に気道に陽圧がかかるため気胸を起こすリスク,胸腔内圧上昇による低血圧のリスク,胃膨満から嘔吐し誤嚥性肺炎の引き金となるなど 酸素療法6 1.非侵襲的陽圧換気(NPPV) 1 2 図1 非侵襲的陽圧換気(NPPV)の仕組み 人工呼吸器インターフェイス
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のリスクもある。 一般的な適応慢性閉塞性肺疾患(COPD)急性増悪,心原性肺水腫,免疫不全患者の急性呼吸不全,拘束性換気障害(肺結核後遺症,脊椎後側彎症など),神経筋疾患などの疾患に適応される。また,侵襲的人工呼吸離脱時の離脱支援に用いられることもある。慢性呼吸不全の場合,換気不全から高CO2 血症を呈し,頭痛,傾眠,呼吸困難などの症状が出現した患者に対して,換気量を増加させる目的で導入する。また気管内挿管を希望しない呼吸不全患者において,侵襲的人工呼吸の代用や治療の上限として使用される場合も増えている。一方で,非侵襲的陽圧換気(NPPV)継続に対して協力が得られない症例,喀痰排出困難例,誤嚥例,ドレナージされていない気胸例では一般的に適応とはならない。 (松田能宣,合屋 将) 【参考文献】1) 日本呼吸器学会NPPV ガイドライン(改訂第2 版)作成委員会.日本呼吸器学会NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン(改訂第2 版).日呼吸会誌2015; 4: 262—71 2) 立川良,陳和夫.非侵襲的陽圧換気(NPPV)に関する最新の知見.日呼吸会誌2014; 3: 748— 57 定 義 高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula oxygen;HFNC)とは,加温・加湿した一定濃度の酸素を高流量で経鼻的に投与する新しい酸素療法である。nasal high flow therapy,high flow therapy などとも呼ばれ,名称はいまだに統一されていない。高い吸入酸素濃度(FiO2)を確実に維持するには,高流量酸素が必要である。なぜなら,低流量だと室内気も引き込んで吸入するため,酸素濃度が薄まってしまうとともに,吸気努力の大きさにより酸素と室内気の混合比率が変わって一定しないからである。しかしながら,鼻腔の刺激と乾燥のため,通常の経鼻酸素投与では6 L/分の流量が限界であった。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は,酸素を加温・加湿することでこの問題を解決し,高流量(最大60 L/分)の経鼻投与を可能にした。その結果,これまでリザーバー付きマスクでも達成できなかった90%を超える高いFiO2の維持が可能となった。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)に用いるデバイスは,酸素調節装置(酸素ブレンダー・ガス流量計またはベンチュリー装置),ヒーターワイヤー付きの人工呼吸器用加温加湿器,専用鼻カニュラの3 つにより構成される(図2)。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の特徴を表1に示す。 メリットとデメリット生理学的なメリットを表1に示す。緩和ケアの観点からは,高濃度酸素を吸入し 3 2.高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC) 1 II章背景知識
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ながらも会話や食事が可能となり,生活の質(QOL)が維持できることが大きなメリットといえる。一方,大量の酸素,機器本体,ディスポーザブル部分の費用は問題となる。これらが補償されるような診療報酬の改定が望まれる。また作動音が大きい(特に酸素調節装置としてベンチュリー装置を使用した場合)ことも問題であったが,その点を改良した新しい機種も開発されている。 一般的な適応適応となる疾患・病態を表2 にまとめた。本療法は換気を補助するわけではないので,高CO2血症の改善は期待すべきではない。 表1 高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の特徴とメリット特徴利点コンパクトで締め付けの少ない鼻カニュラ快適さが増す十分な加温・加湿快適さが増す・気道粘液の水分量の増加・排痰が容易になる・気道の乾燥と上皮損傷を防ぐ・吸入した冷たい空気を体内で加温・加湿 するための代謝コストの削減・呼吸仕事量の軽減高流量酸素室内気の引き込みが減り,正確な吸入酸素濃度(FiO2)を維持できる解剖学的死腔のCO2の洗い出し換気効率の改善肺胞への酸素供給の改善呼気終末陽圧(PEEP) auto—PEEP*を相殺呼吸仕事量の軽減 〔SpoletiniG,etal.Chest2015; 148: 253—61 より引用改変〕 図2 高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の仕組み 鼻カニュラ酸素ブレンダー 加温加湿器 *:auto‒PEEP内因性PEEP ともいう。気道抵抗が高くなっている病態(肺気腫・気管支喘息・気管分泌貯留など)では気道内圧が高くなる。
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(合屋 将,松田能宣) 【参考文献】1) 宮本顕二.高流量鼻カニュラ酸素療法.日呼吸会誌2014; 3: 771—6 2) Spoletini G, Alotaibi M, Blasi F, et al. Heated humidified high—flow nasal oxygen in adults: mechanisms of action and clinical implications. Chest 2015; 148: 253—61 II章背景知識 表2 適応となる疾患・病態低酸素血症患者の検査時(気管支鏡,消化管内視鏡,経食道エコーなど)呼吸不全急性呼吸促迫症候群(ARDS)肺 炎肺線維症うっ血性心不全術後の呼吸管理抜管または非侵襲的陽圧換気(NPPV)後の呼吸管理挿管を希望しない患者 〔Spoletini G, et al. Chest 2015; 148: 253—61 より引用改変〕
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定 義がん性リンパ管症は,がんの転移様式の一つであり,肺内のリンパ管系にがん細胞が浸潤,リンパ管塞栓を来す病態である。 疫学・頻度・影響合併頻度が高い原発巣は,肺,乳腺,消化管,前立腺などであるが,発生頻度に関する正確な報告はない。呼吸困難,咳嗽,胸痛,喀血など非特異的な症状を呈し,呼吸不全を来すこともある。がん性リンパ管症の合併は予後不良を示唆し,発症後数カ月以内で死亡することが多い。 原因・分類・病態生理がん細胞のリンパ管への進展様式は,血行性に肺転移したがん細胞が血管に近接するリンパ管に直接浸潤する「血行進展」,縦隔・肺門リンパ節転移巣から逆行性にリンパ管内に進展する「逆行性リンパ行性進展」,胸膜・胸膜下結合組織への転移巣から順行性にリンパ管に進展する「順行性リンパ行性進展」が考えられている。がん細胞のリンパ管への進展により,肺内のリンパ流が阻害され一種の肺水腫を来し,症状を引き起こす。両側性に分布する場合も,原発性肺がんに伴い局所性に認められる場合もある。 評 価身体所見では,頻脈,頻呼吸,酸素飽和度の低下や異常な呼吸音からがん性リンパ管症の重症度や範囲を評価する。胸部単純X 線では,典型的にはびまん性の線状,微細粒状(<3 mm),網状粒状の浸潤影を呈する。肺門部リンパ節腫大や1 cm に及ぶ大きめの結節浸潤影を認めることもある。胸部CT では,小葉間隔壁や気管支肺動脈束・胸膜下の間質の結節性肥厚が特徴的な所見で,小結節がみられることがある。 【参考文献】1) Storck K, Crispens M, Brader K. Squamous cell carcinoma of the cervix presenting as lymphangitic carcinomatosis: a case report and review of the literature. Gynecol Oncol 2004; 94: 825—8 2) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic dis- ease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University 呼吸困難以外の呼吸器症状7 1.がん性リンパ管症1 2 3 4
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Press, 2010; pp1124—5 定 義上大静脈症候群とは,何らかの原因により上大静脈が閉塞され,頭部・上肢・胸郭から右心房への静脈還流が妨げられる病態である。 疫学・頻度・影響上大静脈症候群の合併は,小細胞性肺がん診断時の約10%,非小細胞肺がん診断時の1.7%にみられると報告されている。肺がん以外では,乳がんや悪性リンパ腫などで合併することがある。上大静脈症候群はオンコロジーエマージェンシー*1の一つとされているが,亜急性の経過をたどることが多く,上大静脈症候群自体により致死的になることはほとんどない。しかし,静脈還流の障害に伴い,気道気管の浮腫による狭窄や脳浮腫を伴う場合は致死的になりえる。上大静脈症候群合併例における生命予後は,原疾患により異なる。肺がん例では,合併後数カ月以内の予後であることが多いが,乳がんや悪性リンパ腫では予後はより長いことが多い。 原因・分類・病態生理がん患者における上大静脈症候群の大部分は,腫瘍による外部からの上大静脈圧迫が原因である。原疾患としては多い順に,非小細胞性肺がん(50%),小細胞性肺がん(22%),悪性リンパ腫(12%),転移性がん〔9%(乳がんが多い)〕が挙げられる。一方,非がん性の原因には,血栓症や血管内カテーテル留置が含まれる。上大静脈の閉塞により静脈還流が妨げられると,静脈圧の亢進によりさまざまな部位に浮腫が生じる。咽頭や喉頭,下気道の浮腫が生じた結果,咳嗽,嗄声,呼吸困難,吸気時の喘鳴(stridor *2),嚥下困難などが生じる。また,顔面や上肢にも浮腫が生じる。稀に脳浮腫を来し,頭痛,錯乱,昏睡を呈することもある。長期間の上大静脈閉塞の結果,側副血行路が発達すると,自然に症状が軽快する場合もある。 評 価病歴では,症状の重症度や経過の速度,血管内カテーテルの有無などを聴取する。身体所見では,頭頸部や上肢の浮腫,頸静脈や胸壁静脈の怒張,顔面や上半身の紅潮やチアノーゼなどを評価する。胸部単純X 線では,上縦隔の拡張とそれに伴う肺病変の有無を評価する。上大静脈症候群の患者の約2/3 に胸水がみられる。最も有用な画像検査は胸部造影CT である。CT では,上大静脈の閉塞部位や程度,閉塞の原因となる腫瘍や縦隔リンパ節,血栓症の有無や程度,側副血行路の形成の評価も可能である。 マネジメント上大静脈症候群に対する治療としては,まずは原因である腫瘍病変自体に対する 2.上大静脈症候群1 2 *1:オンコロジーエマージェンシー腫瘍学的緊急症。がんに起因する病態のうち,緊急な対応を要するものの総称。 3 *2:stridor吸気時のハイピッチの連続性の副雑音で,これが聴取される時には上気道の閉塞の可能性を考える。 4 II章背景知識
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化学療法・放射線治療の適応を検討する。また,病変の状況・全身状態・予測される予後などをふまえ,施行可能な施設においては上大静脈ステント留置も治療選択肢になる場合がある。対症療法の薬物療法としては,コルチコステロイドが投与される場合がある。 【参考文献】1) Rowell NP, Gleeson FV. Steroids, radiotherapy, chemotherapy and stents for superior vena caval obstruction in carcinoma of the bronchus. Cochrane Database Syst Rev 2001(4): CD001316 2) Wilson LD, Detterbeck FC, Yahalom J. Superior vena cava syndrome with malignant causes. N Engl J Med 2007; 356: 1862—9 3) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic disease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1121—2 4) Sanz Á, Centeno C. Part 14. Emergencies in palliative medicine. 85. Clinical features and man- agement of superior vena cava syndrome. Bruera E, Higginson I, von Gunten CF, et al eds. Textbook of Palliative Medicine and Supportive Care, 2nd ed, Boca Raton, CRC Press, 2015; pp863—8 定 義主要気道閉塞(major airway obstruction;MAO)は,咽頭~喉頭の上気道および気管~主気管支~葉気管支レベルの気道に狭窄を来す病態である。 疫学・頻度・影響上気道から下気道全体を含む気道狭窄は肺がん患者の20~30%にみられると報告されているが,がん患者全体での頻度は不明である。 原因・分類・病態生理進行期がんにおける主要気道閉塞(MAO)の主な原因には,気道内の腫瘍による狭窄や腫瘍による外部からの圧排がある。原疾患としては肺がんが最も多い。臨床症状は非特異的であり,狭窄の程度,部位,経過の速さにより異なる。頻度の高い症状としては,呼吸困難,咳嗽,喀痰,喀血が挙げられる。Stridor や呼吸促迫を伴う場合は上気道や気管の閉塞による窒息の可能性があるため,迅速な評価と治療的介入が必要である。一方,亜急性の経過をたどる下気道閉塞の場合は,気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)と誤診され,適切な治療が遅れることがある。 評 価主要気道閉塞(MAO)は,喀痰貯留,気道ステントの閉塞など,可逆的な原因に由来することもあり得るため,迅速な評価が要求される。身体所見では,まず酸素飽和度が十分か,気道が確保されているかを評価する。同時に,頻脈,頻呼吸,奇異呼吸,stridor などから緊急度と重症度を評価する。胸部単純X 線上,気管偏移や縦隔偏移を示す場合もあるが,症状や所見を説明す 3.主要気道閉塞(MAO) 1 2 3 4
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る肺野病変を示す所見が乏しいこともある。胸部CT では,気管や気管支内の病変,異物の有無を評価する。可逆的な病態が考えられ,患者の全身状態がある程度良好な場合,診断・治療目的に緊急気管支鏡検査を検討することもある。主要気道閉塞(MAO)と間違えられやすい気管支喘息,COPD,肺炎などの疾患の可能性を除外する。逆に喘鳴に対して気管支拡張薬の反応が乏しい場合,主要気道閉塞(MAO)の可能性が高くなる。 マネジメント気管および主気管支レベルの主要気道閉塞(MAO)に対する治療としては,気道ステント留置が行われる場合がある。ただし,気道ステント留置の適応に関しては,全身状態・予測される予後,病変部の位置などについて専門家(呼吸器内科医など)との十分な相談が必要である。また,原因腫瘍病変に対する化学療法や放射線治療の適応を検討する。対症療法の薬物療法としては,コルチコステロイドが投与される場合がある。 (森 雅紀,山口 崇) 【参考文献】1) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic dis- ease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1122—3 定 義悪性胸水とは,胸膜播種や腫瘍の転移・浸潤など,がんが原因となって胸腔内に貯留した液体をいう。 疫学・頻度悪性胸水は,進行がん患者の15%以上に生じ,診断からの生存期間中央値は3~ 12 カ月とされ,がんの種類や進行度によって異なる。がんの原発部位は,男性では肺がんが,女性では乳がんが最も多く,肺がんと乳がんで全体の50~65%を占める。リンパ腫,生殖・泌尿器がん,消化器がんなどでも合併する。 原因・病態生理胸腔には,健常者においても10~20 mL の胸水が存在する。これは,全身循環から由来した液体が壁側胸膜から産生され胸腔に入り,壁側胸膜のリンパ網で再吸収される過程で生じる。悪性胸水は,胸水の「産生過剰」と「吸収減少」により生じる。産生過剰の要因としては,腫瘍細胞の浸潤による毛細血管新生や炎症による血管透過性の亢進など 5 4.悪性胸水1 2 3 II章背景知識
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が挙げられる。吸収減少の要因は,壁側胸膜へのがんの浸潤による胸膜のリンパ系の破壊や縦隔リンパ節転移に伴うリンパ流の障害などが挙げられる。悪性腫瘍に伴う胸水には,悪性胸水のほかに,腫瘍による閉塞性肺炎,無気肺,肺塞栓,上大静脈症候群,低蛋白血症などが原因となる場合がある。 評 価1 )身体所見胸水貯留により,打診で濁音を認め,聴診で呼吸音の減弱や消失を認める。 2 )画像所見胸部単純X 線立位像では,200 mL 以上の胸水が検出可能とされている。側臥位での撮影では50 mL 程度でも検出可能である。単純CT では,より少量の胸水の存在を診断することが可能である。超音波検査では,ごく少量の胸水の検出が可能であり,胸腔穿刺や胸腔内カテーテル留置の手技の際に有用である。 3 )診断のための胸水検査悪性胸水の診断には,細胞学的診断,もしくは胸膜生検による組織診断が必要である。悪性胸水の胸水細胞診による診断率は62~90%とされている。診断目的で繰り返し胸腔穿刺する場合,2 回行うことでの診断率は70~80%であり,3 回以上検査を繰り返しても診断率は向上しない。 マネジメント悪性胸水の治療は症状緩和が主体であり,予後の改善にはつながらないことが多い。したがって,悪性胸水と診断されても無症状であれば経過観察とすることもある。全身状態や治療のゴールを総合的に判断して,治療法を選択する必要がある。 1 )胸腔穿刺による排液(胸腔穿刺ドレナージ)細径カニューレを用いた胸腔穿刺により,胸水の排液を行う。比較的簡便な手技であり,胸水の減量により呼吸困難の速やかな改善が期待できる。合併症として,気胸や実質臓器損傷があるが,超音波検査を併用することで,リスクを下げることができる。また,短時間に大量の胸水排液を行うと,再膨張性肺水腫を生じる危険性があるため,1 回に1,000~1,500 mL 以上排液することを避ける必要がある。 2 )胸腔留置カテーテルによる持続排液継続して胸水をドレナージするために,小口径カテーテルを胸腔内に長期間留置し,繰り返しの穿刺による苦痛や負担を軽減する方法である。合併症として,胸壁・胸腔内感染,カテーテル閉塞,カテーテル挿入路への腫瘍進展,などが報告されている。また,長期留置に伴う,患者の身体的制限や心理的な負担もある。 4 5
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3 )胸膜癒着術胸膜腔に癒着剤を用いて炎症を起こして,胸膜の線維化や腔の閉鎖を図る治療法である。胸腔チューブを挿入し,肺が完全に膨張した後に胸腔内に癒着剤を投与して,胸膜癒着を図る。癒着剤としては,再発率の低さ,有害事象の少なさ,対費用効果などの点でタルクの有用性が示されている。これまで,本邦ではOK—432 が用いられることが多かったが,エビデンスレベルの高い臨床研究は存在しない。ほかの癒着剤として,抗がん剤(ブレオマイシン,シスプラチン,ドキソルビシン,マイトマイシンC など),抗菌薬(ミノサイクリン,テトラサイクリンなど)がある。頻度の高い有害事象として,癒着術後の胸痛と発熱,消化器症状がある。重篤な有害事象としては,呼吸不全,膿胸,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)が報告されている。 (中村陽一,山口 崇) 【参考文献】1) American Thoracic Society. Management of malignant pleural effusions. Am J Respir Crit Care Med 2000; 162: 1987—2001 2) Roberts ME, Neville E, Berrisford RG, et al. Management of a malignant pleural effusion: British Thoracic Society Pleural Disease Guideline 2010. Thorax 2010; 65(Suppl 2): ii32—40 3) Sallach SM, Sallach JA, Vasquez E, et al. Volume of pleural fluid required for diagnosis of pleural malignancy. Chest 2002; 122: 1913—7 4) Tan C, Sedrakyan A, Browne J, et al. The evidence on the effectiveness of management for malignant pleural effusion: a systematic review. Eur J Cardiothorac Surg 2006; 29: 829—38 5) Shaw P, Agarwal R. Pleurodesis for malignant pleural effusions. Cochrane Database Syst Rev 2004(1): CD002916 定 義咳嗽とは,短い吸気に引き続いて,声門が部分的に閉鎖し,胸腔内圧が上昇して,強制的な呼気とともに気道内容が押し出される状態を指す。気道内の痰や異物を喀出するための重要な生態防御機能である。 疫学・頻度・影響咳嗽は,がん患者の治療開始時に42.9%で認め,肺がん患者では診断時に65%以上で認めると報告されている。持続的な咳嗽は,食欲不振,頭痛,嘔吐,失神,めまい,発汗,疲労,肋骨骨折,尿失禁などを起こし,患者の生活の質(QOL)を低下させる。さらに,夜間の咳嗽は,患者の不眠のみならず,同居する家族にも耐えがたい苦痛をもたらす。また,電話での通話困難,困惑,気まずさ,社会的孤立などを生じ,心理・社会的な影響も及ぼす。 5.咳 嗽1 2 II章背景知識
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原因・分類・病態生理1 )原 因慢性咳嗽の93%は複数の原因が関与しており,がんに関連する咳嗽も同様に複数の原因が関係している(表1)。がんと関連した咳嗽の原因には,気管・気管支の腫瘍病変,肺実質への浸潤,がん性胸膜炎や悪性胸膜中皮腫などの胸膜病変,がん性心膜炎,縦隔病変,がん性リンパ管症などがある。また,腫瘍と関連する,気道閉塞,誤嚥,気管食道瘻,肺炎などによる炎症や機械的刺激も咳嗽を起こす。さらに,薬剤性肺障害・放射線肺臓炎により呼吸困難を伴う咳嗽が出現することもある。がん患者においても,がんと直接関連しない咳嗽を合併する場合がある。慢性咳嗽の主な原因としては,背景にある既往の肺疾患(慢性気管支炎,気管支拡張症など),アンジオテンシン変換酵素阻害薬,咳喘息,後鼻漏症候群*,胃食道逆流症などがあげられる。 2 )分 類咳嗽は性状により,「湿性咳嗽」と「乾性咳嗽」に分類することが重要である。前者は咳嗽や気道内分泌を排出するいわゆる生理的な咳嗽であるが,後者は痰を伴わず,気道内や胸膜の刺激による病的な咳嗽である。 3 )病態生理咳嗽は,吸気相,圧縮相,呼気相の3 相に分けられる。まず,「吸気相」では,吸気をしながら呼吸筋が伸展される。この結果,胸腔内圧が高まり,呼出時の圧力を形成する。次に「圧縮相」では声門が0.2 秒ほど閉鎖し,胸腔内の容積が維持され,胸腔内圧が300 mmHg まで上昇する。最後の「呼気相」では声門が開放され,末梢肺実質と中枢気道から排出されるガスは0.03~0.05 秒という短時間に12 L/秒の速さに達し,一気に呼出される。その後,3~4 L/秒の速さで0.2~0.5 秒かけてゆっくりとガスが排出される気道,胸膜,外耳道,咽頭,喉頭,胃,心臓,食道などからの求心性刺激は,主に迷走神経を経由して,咳中枢である脳幹の孤束核に達する。咳中枢から遠心性に 3 *:後鼻漏症候群副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎,アレルギー性副鼻腔炎,慢性鼻炎,慢性鼻咽頭炎が原因となりうる。8 週間以上持続する,特に夜間に多い湿性咳嗽が特徴である。表1 がん患者における咳嗽の主な原因 がんとは直接関連しない原因がんと直接関連する原因心不全気管支喘息・咳喘息慢性気管支炎気管支拡張症後鼻漏症候群胃食道逆流症感染後咳嗽アンジオテンシン変換酵素阻害薬などの薬剤性好酸球性肺炎気管・気管支の腫瘍肺実質への浸潤胸膜病変(がん性胸膜炎,悪性胸膜中皮腫)がん性心膜炎縦隔病変がん性リンパ管症誤嚥(頭頸部腫瘍,気管食道瘻,声帯麻痺)放射線治療後の肺線維化化学療法による肺線維化肺 炎微小血栓〔Chan KS, et al. Dyspnoea and other respiratory symptoms in palliative care. Oxford Textbook of Palliative Medicine 5th ed, Oxford University Press, 2015; pp429—34 より引用改変〕
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下咽頭神経,迷走神経,肋間筋,横隔膜,気管支平滑筋に作用して咳嗽が発生する。上位中枢からの神経興奮は随意的に咳嗽を起こさせたり,随意的に抑制させたりすることができる。 評 価咳嗽の原因の同定には,病歴,身体所見,胸部単純X 線が重要である。咳受容体の求心路の解剖学に従って系統的に診療することは有用である。病歴聴取の際に,咳嗽の頻度,強さ,増悪要因,喀痰の有無,日常活動への影響などの評価が必要である。また,原因や病変の同定のために,患者の全身状態と予後を考慮したうえで必要に応じて喀痰培養,胸部CT,気管支鏡などの検査の施行を検討する。咳嗽に関する評価尺度として開発されたものを表2 に示す。 (坂下明大,山口 崇) 【参考文献】1) McCool FD. Global physiology and pathophysiology of cough: ACCP evidence—based clinical practice guidelines. Chest 2006; 129(1 Suppl): 48S—53S 2) Kvale PA. Chronic cough due to lung tumors: ACCP evidence—based clinical practice guidelines. Chest 2006; 129(1 Suppl): 147S—153S 3) Molassiotis A, Bailey C, Caress A, et al. Interventions for cough in cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2010(9): CD007881 4) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK. Section 8. Common symptoms and disorders. 8.2 Dyspnoea and other respiratory symptoms in palliative care. Cherny NI, Fallon MT, Kaasa S, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine 5th ed, New York, Oxford University Press, 2015; pp429—34 定 義死前喘鳴とは,死期が迫った患者において聞かれる,呼吸に伴う不快な音と定義される。 疫学・頻度・影響終末期がん患者の23~92%に死前喘鳴が認められる。肺腫瘍や脳腫瘍で合併が多 4 6.死前喘鳴1 II章背景知識 表2 咳嗽に関する評価尺度 評価尺度項目 Cough Specific Quality of Life Questionnaire 28 の質問項目と6 つのドメイン(身体的訴え,強い身体的訴え,精神・社会的問題,感情の安定,自身の安全に対する不安,機能障害)から構成されるLeicester Cough Questionnaire 19 の質問項目と3 つのドメイン(身体面,精神面,社会面)から構成されるChronic Cough Impact Questionnaire 21 の質問項目と4 つのドメイン(睡眠/集中,人間関係への影響,日常生活への影響,感情面)から構成される
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く,また終末期の輸液量とも関連していることが報告されている。死前喘鳴は患者の死亡16~58 時間前から出現し,意識混濁や下顎呼吸,四肢チアノーゼ,橈骨動脈触知不可と並んで,死期が迫っていることを示す5 つの徴候のうちの一つとされている。死前喘鳴は多くの場合,患者本人にとって苦痛を感じるものではないと考えられているが,付き添いの家族にとっては「本人が苦しがっているのでは」といった不安につながることも多い。 原因・分類・病態生理死前喘鳴は2 つのタイプに分類される。1 つは,死期が迫り意識レベル低下に伴う嚥下反射の抑制により唾液分泌物が咽頭部に蓄積する「1 型死前喘鳴(真性死前喘鳴)」,もう1 つは感染症や腫瘍,体液貯留,誤嚥などによって産生された気道分泌物が,衰弱により有効に喀出されないために気道内に蓄積することで生じる「2型死前喘鳴(偽性死前喘鳴)」である。2 型死前喘鳴では,患者の意識は清明もしくは軽度の低下にとどまることも多く,必ずしも死期が迫っていることを意味しない。狭義の死前喘鳴は,1 型死前喘鳴のことを指す。 評 価まず,喘鳴が1 型死前喘鳴か2 型死前喘鳴かを,身体所見や臨床状況などから推定することが大切である。状況によっては,どちらか明確に鑑別することが困難な場合もあるが,可逆的かどうかを評価し,考えうる原因への治療およびケア(輸液量の調整,口腔ケアなど)を行っていくことが求められる。喘鳴の程度の評価については,Back らの4 段階評価〔0=音が聞こえない,1=患者に近づくと聞こえる,2=静かな部屋でベッドサイドに立つ状態で聞こえる,3=静かな部屋で患者から20 フィート(およそ部屋のドアのあたり)の距離で聞こえる〕が用いられることが多い。 対 応付き添いの家族の苦痛や不安が強いと評価される場合には,家族に対して死前喘鳴の原因(気道への分泌物の貯留が原因で,空気が通るたびに音が出ているものであること,窒息するようなものではないこと),死前喘鳴の意味(亡くなる前にみられる現象で,本人は苦痛を感じていないと推測されること)を十分に説明するとともに,死前喘鳴に対する心配などについて共感的態度で対応することが重要である。 (西 智弘,山口 崇) 【参考文献】1) Bennett MI. Death rattle: an audit of hyoscine(scopolamine)use and review of management. J Pain Symptom Manage 1996; 12: 229—33 2) Bennett M, Lucas V, Brennan M, et al. Using anti—muscarinic drugs in the management of death rattle: evidence—based guidelines for palliative care. Palliat Med 2002; 16: 369—74 3) Wee B, Hillier R. Interventions for noisy breathing in patients near to death. Cochrane Database Syst Rev 2008(1): CD005177 4) Morita T, Tsunoda J, Inoue S, et al. Risk factors for death rattle in terminally ill cancer patients: a prospective exploratory study. Palliat Med 2000; 14: 19—23 3 4 5
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5) Morita T, Hyodo I, Yoshimi T, et al. Incidence and underlying etiologies of bronchial secretion in terminally ill cancer patients: a multicenter, prospective, observational study. J Pain Symptom Manage 2004; 27: 533—9 6) Morita T, Ichiki T, Tsunoda J, et al. A prospective study on the dying process in terminally ill cancer patients. Am J Hosp Palliat Care 1998; 15: 217—22 7) Back IN, Jenkins K, Blower A, et al. A study comparing hyoscine hydrobromide and glycopyrrolate in the treatment of death rattle. Palliat Med 2001; 15: 329—36 8) Wee BL, Coleman PG, Hillier R, et al. The sound of death rattleII: how do relatives interpret the sound? Palliat Med 2006; 20: 177—81 II章背景知識
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モルヒネモルヒネは,中枢および末梢のオピオイド受容体を介して強力な鎮痛作用を示すのみならず,鎮咳作用や呼吸困難を軽減する効果も期待できる。モルヒネの呼吸困難に対する作用機序は十分解明されていないが,呼吸困難の中枢神経系での知覚の低下,延髄呼吸中枢のCO2に対する感受性の低下や呼吸リズムを抑制し呼吸数を減少させることによる呼吸仕事量の軽減,有効な深呼吸の確保,抗不安効果などが関与していると想定されている。モルヒネの鎮咳作用は,延髄の咳中枢に作用し,気道からの一次求心性神経の興奮伝達を抑制することによる。モルヒネの主な有害事象は,便秘,悪心・嘔吐,眠気である。便秘は,低用量であってもほとんどのモルヒネ使用患者に生じる有害事象であるため,便の軟化を促す塩類下剤や腸管運動を亢進させる刺激性下剤の併用が必要となる。悪心・嘔吐は, 30~50%の患者に生じ,必要に応じて制吐薬を使用する。その他の有害事象としては,せん妄,排尿困難(尿閉),瘙痒などが生じることがある。モルヒネは,肝臓においてグルクロン酸抱合により,活性代謝物であるモルヒネ— 3—グルクロニド(M3G)および6—グルクロニド(M6G)に代謝される。モルヒネ, M3G およびM6G はいずれも腎排泄であるので,腎機能低下例(目安として,クレアチニンクリアランス30 mL/分未満)では蓄積により有害事象リスクが高くなるため注意が必要である。 オキシコドンオキシコドンは,鎮痛や呼吸困難の軽減などの薬理作用や有害事象プロフィールがモルヒネに類似している。オキシコドンは肝臓においてチトクロムP450*(CYP) 2D6 および3A4 により代謝される。80%以上が薬理活性をもたないノルオキシコドンに代謝され,活性代謝物であるオキシモルフォンは生成量が極めて少ない(未変化体の1/100 量程度)ため,中等度までの腎機能低下例(目安として,クレアチニンクリアランス10 mL/分以上)でも比較的安全に使用できる。 フェンタニルフェンタニルは合成オピオイドであり,臨床的な鎮痛効果はモルヒネと同等と報告されているが,呼吸困難の緩和についての有効性は十分に示されていない。また,呼吸抑制は,モルヒネやオキシコドンと比べて生じやすい可能性があり,注意が必要である。 コデイン・ジヒドロコデインコデインは,別名メチルモルヒネと呼ばれるモルヒネの誘導体である。コデイン 薬 剤8 1.オピオイド1 2 *:チトクロムP450ほとんどすべての生物に存在する酸化酵素。ヒトでは現在約50 種が報告され, CYP3A4,CYP2A6(CYP= cytochrome P450)などがある。肝臓に多く存在し,薬物代謝の主要な酵素。 3
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自体のμオピオイド受容体への親和性は極めて低い(モルヒネの1/100 程度)。投与されたコデインの約10~20%が肝臓においてCYP2D6 によりモルヒネに変換され,これが主に薬理効果を発揮する。また,鎮咳効果については,コデイン自体が延髄の咳中枢を抑制すると想定されており,鎮咳薬として使用される理由となっている。しかしながら,コデインの鎮咳作用は,十分量投与されたモルヒネと比較すると弱いと考えられている。ジヒドロコデインは,コデインの誘導体であり,鎮咳効果はコデインに比べ強い(力価はコデインの2 倍)。 ベンゾジアゼピン系薬ベンゾジアゼピン系薬は,大脳辺縁系や視床および視床下部のγ—aminobutyric acid(GABA)受容体に作用し,これらの神経系を抑制することが抗不安作用,催眠作用をもたらす。呼吸困難に対するベンゾジアゼピン系薬の作用機序は不明であるが,呼吸困難と不安が関連していることが報告されており,ベンゾジアゼピン系薬による不安の軽減が呼吸困難の緩和に寄与することが想定されている。ベンゾジアゼピン系薬の有害事象には,眠気,傾眠,ふらつきなどがあり,せん妄を惹起するリスクがある。ベンゾジアゼピン系薬は,CYP 類(主にCYP3A4)により代謝されるものが多く,薬物相互作用に注意が必要である。 フロセミド吸入呼吸困難の改善を目的としたフロセミド吸入の作用機序は不明な点が多いが,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に適用した報告では,気管支上皮のNa+およびCl-の共輸送が抑制され,肺伸展受容器周囲のこれらのイオン濃度が増加し,その活動性が増加することや肺刺激受容器の抑制などの局所作用により呼吸困難を緩和することが期待されているが,臨床上の有用性は確認されていない。 コルチコステロイドコルチコステロイドは,炎症反応の初期段階におけるホスホリパーゼA2の阻害とアラキドン酸の放出抑制によりプロスタグランジンなどの炎症性物質の産生を抑制することで主な薬理作用を発揮する。がん患者の呼吸困難に対しては,腫瘍周囲の浮腫の改善〔がん性リンパ管症,上大静脈症候群,主要気道閉塞(MAO)〕や炎症の改善(薬剤性肺障害,放射線肺臓炎)が期待される。本邦で使用できるステロイドは複数あるが,鉱質コルチコイド作用(電解質への影響)が少なく,かつ,作用時間の長いベタメタゾンやデキサメタゾンが進行がん患者に対する症状緩和目的ではよく使用される。コルチコステロイドの注意すべき有害事象としては,短期的には高血糖,消化性潰瘍,易感染性,精神神経症状(不眠やせん妄)などがある。中長期的には,満月様顔貌,骨粗しょう症や糖尿病などがある。 2.オピオイド以外の薬剤1 2 3 II章背景知識
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デキストロメトルファンデキストロメトルファンは,中枢性鎮咳薬に分類され,中枢の咳中枢に直接作用して鎮咳作用を示す。臨床上問題となる有害事象はほとんどないが,ごく稀に悪心,めまい,眠気,口渇などがある。 プレガバリン・ガバペンチンプレガバリンおよびガバペンチンは,いずれも電位依存性Ca2+チャネルを抑制し,Ca2+流入を刺激としたグルタミン酸の放出抑制が鎮痛補助薬としての薬理効果である。鎮咳効果については,咳を誘発するサブスタンスP の遊離抑制などが考えられているが,十分には解明されていない。これらの薬剤の有害事象として,傾眠や浮動性のめまいを生じやすいため転倒に注意する。また,長期投与では,体重増加や浮腫が生じることがある。 リドカイン吸入リドカインは,神経の活動電位となるNa+チャネルを阻害し,その伝搬を遮断する。リドカイン吸入の作用機序は,肺局所の伸展受容器を麻酔して,痰などの刺激による咳反射を抑制するものと考えられる。リドカインの有害事象としては,全身投与された場合には,錯乱,めまい,痙攣など,局所投与の場合には,過敏症,血圧低下などがある。 抗コリン薬抗コリン薬としては,アトロピン硫酸塩,スコポラミン臭化水素酸塩,ブチルスコポラミン臭化物がある。気道壁にはムスカリン受容体のM1,M2,M3 サブタイプが存在し,唾液や気道分泌は,副交感神経系に支配されている。抗コリン薬によるM1およびM3受容体拮抗作用によって,唾液・気道分泌の抑制が生じる。それにより,死前喘鳴を軽減することが期待されている。抗コリン薬の有害事象としては,緑内障の悪化,排尿障害(特に,前立腺肥大合併例),口渇,便秘,動悸などがある。また,傾眠やせん妄を生じる場合があるが,抗コリン薬のなかで,ブチルスコポラミン臭化物は中枢移行しないので,これらの有害事象が少ない。 オクトレオチドオクトレオチドは,ソマトスタチンアナログであり,唾液を含む複数の消化管分泌を抑制する。それにより,死前喘鳴を軽減することが期待されている。オクトレオチドの有害事象としては,甲状腺機能低下,耐糖能異常,膵炎,肝機能障害がある。 (佐藤淳也,山口 崇) 5 6 7 8
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II章背景知識 表 主な薬剤の投与方法分類一般名標準的な処方例代表的な商品名 オピオイドモルヒネ【経口】 呼吸困難時に内用液剤など速放性製剤5~10 mg を頓用あるいは10~20 mg/日から徐放性製剤などで開始し,適宜増量。【注射】呼吸困難時に2~3 mg を静注または皮下注あるいは5~10 mg/日から持続静注または皮下注を開始し,適宜増量。【坐剤】呼吸困難時に5~10 mg坐薬を開始し,適宜増減する。【速放性経口製剤】 モルヒネ塩酸塩,オプソ®【徐放性経口製剤】MS コンチン®,モルペス®,ピーガード®,パシーフ®【注射】塩酸モルヒネ,アンペック®,プレペノン®【坐剤】アンペック® オキシコドン【経口】 呼吸困難時に速放性製剤2.5~5 mg を頓用あるいは10~20 mg/日から徐放性製剤などで開始し,適宜増量。【注射】呼吸困難時に2~3 mg を静注または皮下注あるいは5~10 mg/日から持続静注または皮下注を開始し,適宜増量。【速放性経口製剤】 オキノーム®【徐放性経口製剤】オキシコンチン®【注射】オキファスト® コデイン1 回10~20 mg を4~6 時間毎に経口投与120 mg/日まで増量しても効果不良の場合,モルヒネ20 mg/日あるいはオキシコドン10~15 mg/日へ変更【経口】 コデインリン酸塩 ジヒドロコデイン1 回10 mg を1 日3 回経口投与【経口】 ジヒドロコデインリン酸塩 ベンゾジアゼピンジアゼパム【経口】1 回2~5 mg を1 日2~4 回投与【注射】1 回2~5 mg を1 日2~4 回投与【坐剤】1 回4 mg を1 日1~3 回投与【経口】【注射】 ホリゾン®,セルシン®【坐剤】ダイアップ® アルプラゾラム1 回0.2~0.4 mg を1 日2~3 回経口投与【経口】 ソラナックス®,コンスタン® ロラゼパム1 回0.5~1 mg を1 日1~3 回経口投与【経口】 ワイパックス® エチゾラム1 回0.5~1 mg を1 日1~3 回経口投与【経口】 デパス® ミダゾラム2.5~5 mg/日を持続静注あるいは皮下注から開始し,眠気を観察しながら5~10 mg/日まで増量する。【注射】 ドルミカム® コルチコステロイドベタメタゾン1漸減法開始量として4~8 mg/日を経口投与あるいは点滴静注(夕方以降の投与を避ける)。効果を認めたら0.5~ 4 mg を維持量として漸減する。2漸増法開始量として0.5 mg/日を経口投与あるいは点滴静注(夕方以降の投与を避ける)。効果を認めるまで4 mg/ 日を目標に漸増する。【経口】【注射】 リンデロン®,デカドロン® 鎮咳薬デキストロメトルファン【経口】 1 回15~30 mg を1 日1~4 回経口投与【注射】1 回10 mg を1 日1 回皮下または筋肉内注射【経口】 メジコン®【注射】デキストロメトルファン臭化水素酸塩
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【参考文献】1) 各薬剤添付文書ならびにインタビューフォーム2) 日本緩和医療薬学会 編.緩和医療薬学,東京,南江堂,2013; pp34—45 3) 鍋島俊隆,井上和秀 編.図解 薬理学,東京,南山堂,2015; pp112—3,132—8,148—51,381— 2,283—4,410,427—34 4) Clemens KE, Klaschik E. Symptomatic therapy of dyspnea with strong opioids and its effect on ventilation in palliative care patients. J Pain Symptom Manage 2007; 33: 473—81 5) Ben—Aharon I, Gafter—Gvili A, Leibovici L, et al. Interventions for alleviating cancer—related dyspnea: a systematic review and meta—analysis. ActaOncol 2012; 51: 996—1008 6) Dean M. Opioids in renal failure and dialysis patients. J Pain Symptom Manage 2004; 28: 497—504 7) Kawabata M, Kaneishi K. Continuous subcutaneous infusion of compound oxycodone for the relief of dyspnea in patients with terminally ill cancer: a retrospective study. Am J Hosp Palliat Care 2013; 30: 305—11 8) Simon ST, Köskeroglu P, Gaertner J, et al. Fentanyl for the relief of refractory breathlessness: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2013; 46: 874—86 9) Tassinari D, Sartori S, Tamburini E, et al. Adverse effects of transdermal opiates treating moderate—severe cancer pain in comparison to long—acting morphine: A meta—analysis and systematic review of the literature. J Palliat Med 2008; 11: 492—501 10) Simon ST, Higginson IJ, Booth S, et al. Benzodiazepines for the relief of breathlessness in advanced malignant and non—malignant diseases in adults. Cochrane Database Syst Rev 2010 (1): CD007354 11) Sheikh Motahar Vahedi H, Mahshidfar B, Rabiee H, et al. The adjunctive effect of nebulized furosemide in COPD exacerbation: a randomized controlled clinical trial. Respir Care 2013; 58: 1873—7 12) Jensen D, Amjadi K, Harris—McAllister V, et al. Mechanisms of dyspnoea relief and improved exercise endurance after furosemide inhalation in COPD. Thorax 2008; 63: 606—13 13) Hardy JR, Rees E, Ling J, et al. A prospective survey of the use of dexamethasone on a palliative care unit. Palliat Med 2001; 15: 3—8 14) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, et al. Section 11. Issues in specific neoplastic disease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1124—5 15) McCrory DC, Coeytaux RR, Yancy WS Jr, et al. Assessment and Management of Chronic Cough. Rockville(MD): Agency for Healthcare Research and Quality(US); 2013 Jan. Report No.: 13—EHC032—EF. 16) Ryan NM, Birring SS, Gibson PG. Gabapentin for refractory chronic cough: a randomised, double—blind, placebo—controlled trial. Lancet 2012; 380: 1583—9
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呼吸困難の症状を訴える患者には,まず問診で,呼吸困難の量,質,生活への影響,軽快・増悪因子を患者や家族に尋ねて同定する。また,バイタルサイン(特に,呼吸数・酸素飽和度)と身体所見を確認し,症状の評価を行う。さらに必要に応じて,動脈血ガス分析,血液検査,画像検査を行い,呼吸困難の原因となりうる病態を総合的に診断する。 1.呼吸困難の評価 ●推奨の概要● OVERVIEW ●呼吸困難の評価 低酸素血症ステロイド全身投与(→P81) 胸腔穿刺ドレナージ(→P87)胸膜癒着術(→P90) ●酸素投与(→P60) ●オプション 注)それぞれの療養場所・施設で,リソースに応じて提供可能な非薬物療法を実施する。 ●モルヒネ全身投与(→P66) ※代替薬・オピオイドナイーブ:コデイン・ジヒドロコデイン(→P72)・腎機能障害:オキシコドン(→P70) あり なし なし あり ●高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC) (→P63) ●非侵襲的陽圧換気(NPPV) (→P62) ●ベンゾジアゼピン系薬追加(→P76) ●咳嗽への対応(→P93) ●死前喘鳴への対応(→P100) ●原因に応じた治療・がん性リンパ管症・上大静脈症候群・主要気道閉塞(MAO)・悪性胸水高CO2血症
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治療はまず,呼吸困難の原因に応じた対応を検討する。最初に,がんに対する抗がん治療の適応や,背景の呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など),肺炎などの呼吸器合併症に対する治療を検討する。呼吸困難の原因が,がん性リンパ管症・上大静脈症候群・主要気道閉塞(MAO)の場合はステロイド全身投与を,悪性胸水の場合は胸腔穿刺ドレナージ・胸膜癒着術を検討する。 1 )低酸素血症がある場合呼吸困難を訴えるがん患者に低酸素血症がある場合,酸素投与を検討する。通常の酸素投与で効果が不十分な場合,患者の状態や希望および療養場所・施設の状況により,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)や非侵襲的陽圧換気(NPPV)を検討する。この際,高CO2血症を伴う場合は非侵襲的陽圧換気(NPPV)を,高CO2血症を伴わない場合は高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を用いる。 2 )低酸素血症がない場合,または酸素療法で呼吸困難の十分な緩和が得られない 場合低酸素血症がない場合や,低酸素血症があり酸素療法で対応しても呼吸困難の緩和が十分に得られない場合,モルヒネ全身投与を検討する。この際,オピオイドナイーブの症例でモルヒネ全身投与がためらわれる場合は,コデイン・ジヒドロコデインを代替薬として開始することは許容される。また,腎機能障害などでモルヒネ全身投与を回避することが望ましい場合は,オキシコドン全身投与を代替手段として選択することが許容される。 3 )オピオイド(モルヒネ,コデイン・ジヒドロコデイン,オキシコドン)全身投 与で十分な緩和が得られない場合オピオイドの全身投与で呼吸困難の十分な緩和が得られない場合,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドに追加併用することを検討する。 4 )推奨されない治療法モルヒネ吸入やフロセミド吸入は,がん患者の呼吸困難を緩和させる明確な根拠はないことから,使用は推奨されない。また,オピオイドのなかでフェンタニル全身投与は,がん患者の呼吸困難を緩和させる明確な根拠はないことから,使用は推奨されない。特定の病態〔がん性リンパ管症・上大静脈症候群・主要気道閉塞(MAO)〕以外が原因となるがん患者の呼吸困難に対してのステロイド全身投与も推奨されない。 5 )患者に応じた対応,非薬物療法酸素療法,薬物療法とあわせて,患者の病態や好みに応じて,非薬物療法を検討 2.原因に応じた治療 3.呼吸困難に対する治療III章推奨
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する。患者の症状評価,軽快因子,増悪因子,好み,全身状態,予後の見通しを総合的に判断し,看護ケア,呼吸リハビリテーション,精神療法,リラクセーションから,それぞれの療養場所・施設のリソースに応じて提供可能な非薬物療法の実施を検討する(P105,IV章非薬物療法参照)。 6 )治療抵抗性の呼吸困難への対応1すべての治療が無効である,あるいは,2患者の希望と全身状態から考えて,予測される生命予後までに有効で,かつ,合併症の危険性と侵襲を許容できる治療手段がないと考えられる場合,苦痛を治療抵抗性と評価する。評価は医療チームで判断する。医療チームが治療抵抗性の呼吸困難と評価した場合は,苦痛緩和を目的とした鎮静の適応を検討する。鎮静の開始には,専門家へのコンサルテーション,患者,家族の希望の確認が必要である。 1 )咳嗽への対応がん患者の咳嗽に対しては,オピオイド(コデイン・ジヒドロコデイン,モルヒネ)全身投与,デキストロメトルファンの投与を検討する。ガバペンチノイド(プレガバリン・ガバペンチン)・リドカイン吸入はがん患者の咳嗽を緩和させる明確な根拠はないことから,使用は推奨されない。 2 )死前喘鳴への対応がん患者の死前喘鳴に対する介入はいずれも症状緩和させる明確な根拠はない。したがって,現時点では施行が推奨される介入はない。 (山口 崇) 4.その他の特定の病態に対する対応
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呼吸困難に対する酸素療法1 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,酸素療法は有効か? 関連する臨床疑問 1 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困 難を緩和するか? 2 低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困 難を緩和するか? 3 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気 (NPPV)は呼吸困難を緩和するか? 4 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ 酸素療法(HFNC)は呼吸困難を緩和するか? 1 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行うこ とを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 2 低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行わな いことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 3 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気 (NPPV)を行うことを条件付きで提案する。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 4 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ 酸素療法(HFNC)を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
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解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件ある。Phillip ら1)は,VAS *(0~100 mm)30 mm 以上の呼吸困難のあるがん患者51 名を,酸素吸入群(O2 4 L/分)と空気吸入群に無作為に割り付け,それぞれクロスオーバーさせ,呼吸困難強度を評価した。この研究では,低酸素血症がある患者17名のサブグループ解析が行われ,酸素吸入群は空気吸入群と比較して,吸入開始15分後の酸素飽和度は統計学的に有意に上昇したが,呼吸困難VAS の変化量は両群間で統計学的有意差を認めなかった(酸素吸入群:13.3 mm 低下vs 空気吸入群: 15.4 mm 低下)。Bruera ら2)は,呼吸困難と低酸素血症(SpO2<90%)のある進行がん患者14 名を,酸素吸入群(O2 5 L/分)と空気吸入群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難強度を評価した。すべての患者は割り付け前にすでに鼻カニュラ4 L/分以上の酸素吸入をしており,介入前に30 分以上室内気で安静を保ち,ベースラインの評価を行った後,介入を行った。評価項目である吸入前後の呼吸困難VAS(0~100 mm)は,酸素吸入群は空気吸入群と比較して統計学的に有意に呼吸困難強度が軽減した(酸素吸入群:11.0 mm 低下vs 空気吸入群:9.4 mm 増加)。また,吸入前後の酸素飽和度は,酸素吸入群で統計学的に有意に上昇した(酸素吸入群:9.1%上昇vs 空気吸入群:0.5%上昇)。いずれの研究も,有害事象については記載がなかった。 ** 以上より,これまでの研究では結果は一致しないが,低酸素血症があるがん患者のみを対象とした研究では,酸素吸入は空気吸入と比較して統計学的に有意に呼吸困難を改善していた。また,統計学的有意差を認めなかった研究はサブグループ解析であり,研究デザインに問題がある。したがって,本ガイドラインでは,低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行うことを推奨する。 臨床疑問1 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和するか? 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 *:VAS(visual analogue scale) 100 mm の線の左端を「息苦しさなし」,右端を「最もひどい息苦しさ」とした場合,患者の呼吸困難の程度を表すところに印を付けてもらうもの。P26 参照。
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解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為比較試験が2 件ある。Ahmedzai ら3)は,労作時呼吸困難(修正Borg スケール*1 3 以上)のある外来肺がん患者12 名を,Heliox28(72%ヘリウムと28%酸素)吸入群,酸素吸入群(28%酸素),空気吸入群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,3 種類のガスのいずれかをマスクで吸入しながら6 分間歩行試験*2 を行い評価した。この試験では,安静時呼吸困難,低酸素血症がある患者は除外されていた。評価項目である6 分間の歩行距離は,酸素吸入群で空気吸入群と比較して統計学的に有意に長かったが,6 分間歩行試験後の呼吸困難はVAS(0~100 mm),修正Borg スケールともに両群間で統計学的有意差を認めなかった。Bruera ら4)は,安静時または軽い労作時の呼吸困難があり,低酸素血症のない(SpO2≧90%)進行がん患者33 名を,酸素吸入群(O2鼻カニュラ5 L/分)と空気吸入群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,6 分間歩行試験後の呼吸困難を評価した。評価項目である6 分間歩行試験後の呼吸困難NRS*3(0~10)は両群間で統計学的有意差を認めなかった。また,6 分間歩行距離も両群間で統計学的有意差を認めなかった。 ** 以上より,これまでの研究では,酸素吸入が空気吸入と比較して,低酸素血症のないがん患者の呼吸困難を改善する根拠は認められない。また,がん患者を含む低酸素血症のない難治性呼吸困難患者を対象とした,より大規模で質の高い無作為化比較試験でも,酸素吸入と空気吸入の間に呼吸困難強度の統計学的有意差を認めず9),この研究のがん患者だけを取り出したサブグループ解析でも両群間に統計学的有意差は認められなかった10)。ただし,この研究では,気体の種類(酸素・空気)によらず吸入前後で呼吸困難強度は改善していたことから,個々の患者において気体の吸入が呼吸困難を改善する可能性は残される。したがって,本ガイドラインでは,低酸素血症がないがん患者の呼吸困難に対して,酸素吸入を行わないことを提案する。もし,酸素吸入を試みる場合は,気道の乾燥・刺激や拘束感などの有害事象を評価し,さらに,チューブ類の増加や拘束感などがせん妄の活発因子になりうることにも十分に注意し,酸素吸入に伴う不利益よりも利益が明らかに上回る場合以外は,酸素吸入を中止することが望ましい。 臨床疑問2 低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和するか? 低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 *1:修正Borg スケール身体活動能力の評価を目的として開発されたカテゴリー尺度で,0~10 の12 段階(0.5を含む)の呼吸困難の強さを選択する自己評価法。P26 参照。 *2:6 分間歩行試験平坦な屋内の歩行路を6 分間でどのくらいたくさん歩行できるかを評価する運動負荷試験。 *3:NRS(numerical rating scale)呼吸困難を0から10の11段階に分け,呼吸困難が全くないのを0,考えられるなかで最悪の呼吸困難を10 として,呼吸困難の点数を問うもの。P25 参照。III章推奨
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解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為比較試験が1 件,観察研究が2 件ある。Nava ら5)は,急性呼吸不全(PaO2/FiO2比<250)で入院となり,呼吸困難のある終末期(予後6 カ月以内)固形がん患者で,事前に5~10 分間の非侵襲的陽圧換気(non‒invasive positive pressure ventilation;NPPV)*使用に耐えられた200 名を,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群と酸素吸入群に無作為に割り付けし,それぞれを高CO2血症(PaCO2 45 Torr 以上)の有無で層別化し,呼吸困難強度を評価した。評価項目である呼吸困難強度(修正Borg スケール)は両群ともに改善したが,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群で有意に早く改善が認められた。この研究のサブグループ解析では,高CO2血症を伴うサブグループでは,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群は酸素吸入群と比較して統計学的に有意に呼吸困難が改善したが,高CO2血症を伴わないサブグループでは両群間に統計学的有意差を認めなかった。院内死亡は2 群間で統計学的有意差を認めなかった。ただし,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群99 名のうち,11 名は閉所恐怖,窒息感,不安などのため早期中止となったが,酸素群では脱落はなかった。Hui ら6)は,酸素を吸入してもNRS 3/10 以上の安静時呼吸困難のある進行がん患者30 名を,非侵襲的陽圧換気(NPPV)群と高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)群に無作為に割り付けし,介入を2 時間施行することの実現可能性を検証する試験(feasibility study)を行った(両群間の比較は行われず)。この試験の非侵襲的陽圧換気(NPPV)群の結果を前後比較の観察研究として評価すると,介入の前後で呼吸困難NRS(0~10)は統計学的に有意に低下したが,修正Borg スケールでは有意な低下は認めなかった。非侵襲的陽圧換気(NPPV)群13 名中3 名で2 時間の介入を完遂できなかった。問題となる有害事象は認めなかった。Cuomo ら7)は,急性呼吸不全(PaO2/FiO2<250 またはpH<7.35,PaCO2> 50 Torr)を合併し,集中治療室および緩和ケア病棟に入院となった固形がん患者23名を対象として,非侵襲的陽圧換気(NPPV)の効果を前向きに検討した。非侵襲的陽圧換気(NPPV)は開始後24 時間は持続的に行い,72 時間以内に離脱した。評価項目である非侵襲的陽圧換気(NPPV)開始1 時間後の修正Borg スケールは, 5.5 から2.3 と開始前と比較して統計学的に有意な改善を示した。PaO2/FiO2, PaCO2,pH といった指標も,入院時と比較して,1 時間後,24 時間後,48 時間後, 臨床疑問3 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気(NPPV)は呼吸困難を緩和するか? 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うことを条件付きで提案する。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 *:非侵襲的陽圧換気(NPPV)気管内挿管や気管切開をせずに,鼻マスク,口鼻マスクなどの非侵襲的なインターフェイスをヘッドギアやホルダーで顔面に固定し,換気を補助する人工呼吸。P36 参照。
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退院時のいずれの時点においても,統計学的に有意に改善していた。非侵襲的陽圧換気(NPPV)が導入・維持できた13 名は回復し退院することができたが,10 名は非侵襲的陽圧換気(NPPV)に耐えられない,動脈血ガスの悪化,突然死,嘔吐,強い痛みに対する深い鎮静,の理由で脱落となった。 ** 以上より,これまでの研究では,2 件の観察研究において非侵襲的陽圧換気(NPPV)の使用により低酸素血症があるがん患者の呼吸困難が緩和される可能性が示唆され,1 件の比較試験では酸素吸入と比較して,統計学的に有意な緩和を認めた。ただし,いずれの研究でも一定の割合以上で非侵襲的陽圧換気(NPPV)からの脱落例が認められた。また,対象となった症例は多くが急性呼吸不全患者であり,比較試験のサブグループ解析で高CO2血症を伴う患者では非侵襲的陽圧換気(NPPV)使用で呼吸困難の有意な改善が認められたが,伴わない患者では酸素吸入との統計学的有意差が示されなかったため,非侵襲的陽圧換気(NPPV)が有効である患者は限定される可能性がある。したがって,本ガイドラインでは,低酸素血症があるがん患者の呼吸困難の緩和のため非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うことを提案する。ただし,適応は,1急性呼吸不全があり,2高CO2 血症を伴う患者に限り,3適切なモニタリングを行うことができ,4機器管理に習熟している,という体制下でのみ実施するべき,と考える。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,観察研究が2 件ある。Hui ら6)は,酸素を吸入してもNRS 3/10 以上の安静時呼吸困難のある進行がん患者30 名を,高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula oxygen;HFNC) *群と非侵襲的陽圧換気(NPPV)群に無作為に割り付けし,介入を2 時間施行することの実現可能性を検証する試験(feasibility study)を行った(両群間の比較は行われず)。この試験の高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)群の結果を前後比較の観察研究として評価すると,介入の前後で呼吸困難NRS(0~10),修正Borg スケールともに統計学的に有意に低下した。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)群14 名中1 名で2 時間の介入を完遂できなかった。問題となる有害事象は認めなかった。Epstein ら8)は,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を行ったがん患者353 名の 臨床疑問4 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は呼吸困難を緩和するか? 低酸素血症があり,呼吸困難を有するがん患者に対して,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 *:高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)加温・加湿した一定濃度の酸素を高流量で経鼻的に投与する新しい酸素療法。P37参照。III章推奨
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うち183 名を無作為に抽出し,後ろ向きに診療録調査を行った。高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を行った期間は中央値3 日(1~27 日)で,治療効果(患者の快適さ,酸素飽和度,他のデバイスへの変更などから総合的に判断)は,改善が41%であったが,呼吸困難単独の評価は行われなかった。忍容性は良好で,中止となったのは鼻の不快による2 名のみであった。 ** 以上より,これまでの研究では,現時点では,通常の酸素投与との比較研究はないが,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)が,低酸素血症があるがん患者の呼吸困難を改善させる可能性が示唆されている。また,短期的な忍容性は良好で,重篤な有害事象も報告されていない。したがって,本ガイドラインでは,低酸素血症があるがん患者の呼吸困難に対して高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を行うことを提案する。ただし,高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の問題点としては,費用が高い,使用可能な施設が限られる(特に,在宅での利用は現実的ではない),作動音が大きい,などが挙げられ,本邦の臨床現場における使用経験も十分とはいえないことに留意して使用を検討する必要がある。 (合屋 将,松田能宣) 【文 献】臨床疑問1 1) Philip J, Gold M, Milner A, et al. A randomized, double‒blind, crossover trial of the effect of oxygen on dyspnea in patients with advanced cancer. J Pain Symptom Manage 2006; 32: 541‒50 2) Bruera E, de Stoutz N, Velasco‒Leiva A, et al. Effects of oxygen on dyspnoea in hypoxaemic terminal‒cancer patients. Lancet 1993; 342: 13‒4 臨床疑問2 3) Ahmedzai SH, Laude E, Robertson A, et al. A double‒blind, randomised, controlled PhaseII trial of Heliox28 gas mixture in lung cancer patients with dyspnoea on exertion. Br J Cancer 2004; 90: 366‒71 4) Bruera E, Sweeney C, Willey J, et al. A randomized controlled trial of supplemental oxygen versus air in cancer patients with dyspnea. Palliat Med 2003; 17: 659‒63 臨床疑問3,4 5) Nava S, Ferrer M, Esquinas A, et al. Palliative use of non‒invasive ventilation in end‒of‒life patients with solid tumours: a randomised feasibility trial. Lancet Oncol 2013; 14: 219‒27 6) Hui D, Morgado M, Chisholm G, et al. High‒flow oxygen and bilevel positive airway pressure for persistent dyspnea in patients with advanced cancer: a phaseII randomized trial. J Pain Symptom Manage 2013; 46: 463‒73 7) Cuomo A, Delmastro M, Ceriana P, et al. Noninvasive mechanical ventilation as a palliative treatment of acute respiratory failure in patients with end‒stage solid cancer. Palliat Med 2004; 18: 602‒10 8) Epstein AS, Hartridge‒Lambert SK, Ramaker JS, et al. Humidified high‒flow nasal oxygen utilization in patients with cancer at Memorial Sloan‒Kettering Cancer Center. J Palliat Med 2011; 14: 835‒9 【参考文献】臨床疑問2 9) Abernethy AP, McDonald CF, Frith PA, et al. Effect of palliative oxygen versus room air in
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relief of breathlessness in patients with refractory dyspnoea: a double‒blind, randomised controlled trial. Lancet 2010; 376: 784‒93 10) Ben‒Aharon I, Gafter‒Gvili A, Leibovici L, et al. Interventions for alleviating cancer‒related dyspnea: a systematic review and meta‒analysis. Acta Oncol 2012; 51: 996‒1008 III章推奨
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モルヒネ 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が4 件と系統的レビューが2 件ある。Navigante ら(2010)1)は,外来通院中で安静時に中等度から重度の呼吸困難があり,performance status(PS)≦3 のがん患者63 名を,モルヒネ群(効果的投与量の経口モルヒネを4 時間毎に定期投与)とミダゾラム群(効果的投与量の経口ミダゾラムを4 時間毎に定期投与)に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評 呼吸困難に対する薬物療法2 1 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネは有効 か? 関連する臨床疑問 5 呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの全身投与は呼吸困難を緩和 するか? 6 呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの吸入投与は呼吸困難を緩和 するか? 5がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与を行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 6 がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの吸入投与を行わないことを提案す る。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 臨床疑問5 呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与を行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨
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価項目である投与開始2 日目,3 日目,4 日目,5 日目の呼吸困難NRS の中央値は,モルヒネ群で開始前より低下していたが,モルヒネ群と比較してミダゾラム群で有意に低かった。モルヒネ群,ミダゾラム群とも重篤な有害事象は認めなかったが,モルヒネ群の19.4%,ミダゾラム群の12.5%に傾眠(CTCAE*v3.0 でGrade 2 以上)を認めた。Navigante ら(2006)2)は,予測される予後が1 週間以内で安静時の重度の呼吸困難がある終末期がん患者101 名を,モルヒネ単独投与群〔モルヒネ皮下注2.5 mg を4 時間毎に定期投与もしくは定期モルヒネ投与量を25%増量(呼吸困難時レスキュー薬はミダゾラム皮下注)〕,ミダゾラム単独投与群〔ミダゾラム皮下注を4 時間毎定期投与(呼吸困難時レスキュー薬はモルヒネ皮下注)〕,モルヒネ+ミダゾラム併用群の3 群に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評価項目である試験開始24 時間後,48 時間後の呼吸困難の修正Borg スケールの中央値は,モルヒネ単独投与群では投与開始前と比較して低下していたが,モルヒネ単独投与群とミダゾラム単独投与群で統計学的に有意な差を認めなかった。48 時間後の死亡率についてはモルヒネ単独投与群31.4%,ミダゾラム単独投与群30.3%であった。Mazzocato ら3)は,呼吸困難を伴うがん患者9 名を,モルヒネ群(モルヒネ5 mg/回の皮下注もしくは経口モルヒネ速放性製剤1 回分の50%量を皮下注投与)とプラセボ群に無作為に割り付け,それぞれクロスオーバーさせて,呼吸困難強度を評価した。評価項目である投与前と45 分後の呼吸困難VAS(0~100 mm)の変化は,プラセボ群と比較してモルヒネ群で統計学的に有意に改善していた(モルヒネ群: 25 改善vs プラセボ群:0.6 悪化)。この試験では,プラセボ群では有害事象は認めず,モルヒネ群では3 名が一過性の有害事象を認めたが,重篤な有害事象は認めなかった。Bruera ら4)は,呼吸困難を伴う終末期がん患者10 名を,モルヒネ群(モルヒネの4 時間毎の定期投与分を50%増量)とプラセボ群に無作為に割り付け,クロスオーバーさせて,呼吸困難強度を評価した。評価項目である投与30 分後,45 分後,60分後の呼吸困難VAS(0~100 mm)は,プラセボ群と比較してモルヒネ群で統計学的に有意に低値であった。両群とも呼吸抑制は認めなかった。Ben‒Aharon ら5)による系統的レビューでは,基準に合致した3 つの臨床試験のメタアナリシスを実施して,呼吸困難に対するモルヒネの全身投与は対照群と比較して有意に呼吸困難を軽減する効果があると結論した。 ** 以上より,これまでの研究では,モルヒネの全身投与はプラセボと比較して,がん患者の呼吸困難を統計学的に有意に緩和することが示されている3,4)。一方,実薬の対照群との比較試験1,2)では,がん患者の呼吸困難に対するモルヒネ全身投与の優位性は示せなかったが,これらの試験はバイアスリスクが高い試験であった。また,モルヒネ全身投与に伴う有害事象は,医療従事者による十分な観察を行うことで許容されると考えられる。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与を行うことを推奨する。ただし全身状態や呼吸状態の悪い患者では,モルヒネ全身投与開始後に,意識状態の変化や呼吸抑制に関して慎重に観察を行うこととする。*:CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)有害事象共通用語基準。治療・手技の実施に関連した可能性のある好ましくない,意図しない徴候を1~5 の5 段階(grade)の重症度に分類した基準であり,最新のバージョンは4.0 である。III章推奨
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解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件ある。Bruera ら6)は,呼吸困難を伴うがん患者12 名を,モルヒネ吸入群(定期使用中のオピオイドを経口モルヒネ換算し,その1 日あたりの投与量の1/6 に相当する経口モルヒネの50%量を吸入投与)とモルヒネ皮下注射投与群(モルヒネ吸入群と同量のモルヒネを皮下注射で投与)に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。主要評価項目である投与60 分後の呼吸困難NRS (0~10)中央値は,両群間に統計学的有意差を認めなかった(モルヒネ吸入群:2 vs モルヒネ皮下注射投与群:3)。有害事象は,眠気,悪心,発汗,喘鳴のNRS 中央値について両群間に統計学的有意差を認めなかった。Davis ら7)は,呼吸困難を伴うがん患者79 名を,モルヒネ吸入投与群(5~50 mg)とプラセボ吸入群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。評価項目である投与前と投与60 分後の呼吸困難VAS(0~10 cm)平均値の変化量(mm)は,両群間に統計学的有意差を認めなかった(モルヒネ吸入群:9.58 vs プラセボ吸入群:7.66)。有害事象は,眠気と悪心について両群に統計学的有意差を認めなかった。 ** 以上より,これまでの研究では,モルヒネ吸入投与がプラセボおよび対照群と比較してがん患者の呼吸困難を改善する明確な根拠は認めない。モルヒネ全身投与の呼吸困難に対する有効性が示されている現状において,モルヒネ吸入を行う利点はないと考えられる。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの吸入投与を行わないことを提案する。 (小原弘之,渡邊紘章) 【文 献】臨床疑問5 1) Navigante AH, Castro MA, Cerchietti LC. Morphine versus midazolam as upfront therapy to control dyspnea perception in cancer patients while its underlying cause is sought or treated. J Pain Symptom Manage 2010; 39: 820‒30 2) Navigante AH, Cerchietti LC, Castro MA, et al. Midazolam as adjunct therapy to morphine in 臨床疑問6 呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの吸入投与を行わないことを提案する。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨
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the alleviation of severe dyspnea perception in patients with advanced cancer. J Pain Symptom Manage 2006; 31: 38‒47 3) Mazzocato C, Buclin T, Rapin CH. The effects of morphine on dyspnea and ventilatory function in elderly patients with advanced cancer: a randomized double‒blind controlled trial. Ann Oncol 1999; 10: 1511‒4 4) Bruera E, MacEachern T, Ripamonti C, et al. Subcutaneous morphine for dyspnea in cancer patients. Ann Intern Med 1993; 119: 906‒7 5) Ben‒Aharon I, Gafter‒Gvili A, Leibovici L, et al. Interventions for alleviating cancer‒related dyspnea: a systematic review and meta‒analysis. Acta Oncol 2012; 51: 996‒1008 臨床疑問6 6) Bruera E, Sala R, Spruyt O, et al. Nebulized versus subcutaneous morphine for patients with cancer dyspnea: a preliminary study. J Pain Symptom Manage 2005; 29: 613‒8 7) Davis CL, Penn K, A’Hern R, et al. Single dose randomized controlled trial of nebulized mor- phine in patients with cancer related breathlessness. Palliat Med 1996; 10: 64‒5 III章推奨
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モルヒネ以外のオピオイド 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,観察研究が2 件(後ろ向きコホート研究1 件,症例報告1 件)ある。Kawabata ら1)は,さまざまな症状の緩和を目的としてヒドロコタルニンを含ん 2 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,モルヒネ以外のオ ピオイド(オキシコドン,フェンタニル,コデイン・ ジヒドロコデイン)は有効か? 関連する臨床疑問 7 呼吸困難を有するがん患者に対して,オキシコドンの全身投与は呼吸困難を 緩和するか? 8 呼吸困難を有するがん患者に対して,フェンタニルの全身投与は呼吸困難を 緩和するか? 9 呼吸困難を有するがん患者に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投 与は呼吸困難を緩和するか? 7 がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与が困難な場合に代替とし てオキシコドンの全身投与を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 8 がん患者の呼吸困難に対して,フェンタニルの全身投与を行わないことを提 案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 9 がん患者の呼吸困難に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与を行 うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問7 呼吸困難を有するがん患者に対して,オキシコドンの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,モルヒネの全身投与が困難な場合に代替としてオキシコドンの全身投与を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨
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だ塩酸オキシコドンの複合注射製剤を持続皮下投与した終末期がん患者136 名中,投与期間が48 時間以内であった28 名と意識障害を認めた13 名を除外した95 名の診療録を後ろ向きに調査した。独自の3 件法ツールでの評価においてスコアが改善した例を改善例と定義したところ,投与開始時に呼吸困難を認めた44 名中39 名(88.6%)で呼吸困難が改善した。有害事象としては,試験全体で18 名に傾眠を認めたが,重篤な呼吸抑制は認めなかった。Shinjo ら2)は,モルヒネ持続皮下投与でがん患者の呼吸困難が軽減されたのちオキシコドン徐放性製剤内服へ変更した3 名に関する症例報告を行った。この3 名では,オキシコドン徐放性製剤内服へ変更後も呼吸困難はモルヒネ投与時と同等に緩和された。 ** 以上より,これまでの研究では質の高い研究はなく,その根拠は不十分であるが,オキシコドンの全身投与は,がん患者の呼吸困難を緩和する可能性が示唆されている。また,オキシコドンの全身投与に伴う有害事象は,医療従事者による十分な観察を行うことで許容されると考えられ,腎機能障害合併例やモルヒネによる有害事象でモルヒネ投与を回避することが望ましい場合に,モルヒネの代替となる可能性がある。したがって,本ガイドラインでは,呼吸困難を有するがん患者に対して,モルヒネの全身投与が困難な場合に,モルヒネの代替としてオキシコドンの全身投与を行うことを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件と系統的レビューが1 件ある。Pinna ら3)は,NRS 3/10 以上の体動時呼吸困難のある進行期がん患者13 名を, oral transmucosal fentanyl citrate(OTFC,本邦未発売)群(オピオイド未投与の場合はOTFC 200μg,オピドイド既使用の場合は400μg を投与)とプラセボ群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせて,6 分間歩行試験後の呼吸困難強度を評価した。評価項目である6 分間歩行試験後30 分・60 分時点の呼吸困難NRS は両群間に統計学的有意差はなく,歩行距離も両群間に統計学的有意差を認めなかった。有害事象は両群とも認められなかった。 臨床疑問8 呼吸困難を有するがん患者に対して,フェンタニルの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,フェンタニルの全身投与を行わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
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Hui ら4)は,breakthrough dyspnea*1 の平均値がNRS 3/10 以上のがん患者20 名を,フェンタニル群(定期オピオイドの総投与量に従って規定した量のフェンタニルを皮下投与)とプラセボ群に無作為に割り付け,試験薬投与前後に2 回運動負荷(6 分間歩行試験)を行い,呼吸困難を評価する介入の実現可能性を検証する試験(feasibility study)を行った(両群間の比較は行われず)。「1 回目(=試験薬投与なし)の6 分間歩行試験前後のNRS 差」-「2 回目(=試験薬投与後)の6 分間歩行試験前後のNRS 差」はフェンタニル群0.9,プラセボ群1.3 で,フェンタニル群はプラセボ群と比べNRS の改善効果を上回らなかった。 ** 以上より,これまでの研究は,がん患者の運動負荷時の呼吸困難に対するフェンタニルの全身投与の効果を検討したもののみであり,結果も呼吸困難を緩和することは示されていない。また,健常者や非がん患者に対するフェンタニル投与も対象に含んだ系統的レビューでも,有効性に関する確実な結果は不足している,と結論されている10)。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,フェンタニルの全身投与を行わないことを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,がん患者を対象とした無作為化比較試験が1 件と非がん患者を対象とした無作為化比較試験が4 件ある。Leppertら5)は,がん疼痛を有するオピオイドを使用していないがん患者15名を,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン120 mg/日)とトラマドール群(トラマドール200 mg/日)に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,疼痛の強度および生活の質(QOL)を評価した。QOL の評価として実施されたEORTC QLQ‒ C30*2 の呼吸困難に関する下位項目の評価では,両群間に統計学的有意差を認めなかった。Chua ら6)は,慢性心不全患者12 名を,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン1 mg/kg)とプラセボ群に無作為に割り付け,呼吸困難の強度を評価した。評価項目であるトレッドミルテストでの負荷開始6 分後の修正Borg スケールは,プラセボ群と比較してジヒドロコデイン群で統計学的に有意に低値であった。有害事象としては,悪心をジヒドロコデイン群1 名に認めた。 *1:breakthrough dyspnea発作的,突発的な呼吸困難の状態を示し,短時間に突発的に出現する呼吸困難(episodic dyspnea)と表現される呼吸困難と同等の概念と考えられている。従来の労作時呼吸困難を含む概念とされているが,breakthrough dyspnea, episodic dyspneaともまだ定義は定まっていない。 臨床疑問9 呼吸困難を有するがん患者に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与を行うことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 *2:EORTC QLQ‒C30 The European Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ‒C30の略語。がん患者を対象とした自記式QOL 調査票で,機能スケールと症状スケールの合計30 項目で構成されている。
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Rice ら7)は,chronic airflow obstruction 患者7 名を,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン120 mg/日)とプロメタジン群(プロメタジン100 mg/日)に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。評価項目である12 分間歩行テストでの呼吸困難VAS(0~10 cm)は,両群間で統計学的有意差は認めなかった。有害事象として眠気をプロメタジン投与群3 名,ジヒドロコデイン群4 名に認めた。Johnson ら8)は,呼吸困難を有するchronic airflow obstruction 患者19 名を,ジヒドロコデイン群(15 mg/回)とプラセボ群に無作為に割り付け,それぞれをクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。評価項目である1 週間の呼吸困難VAS平均値(0~10 cm)およびトレッドミルテストでの負荷時の呼吸困難VAS 値は,いずれもプラセボ群と比較してジヒドロコデイン群で統計学的に有意に低値であった。有害事象の発現に両群間で統計学的有意差は認めなかった。Woodcock ら9)は,呼吸困難を有するchronic airflow obstruction 患者12 名を,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン1 mg/kg)とカフェイン群(カフェイン5 mg/kg),アルコール群,プラセボ群に無作為に割り付け,呼吸困難の強度を評価した。評価項目であるトレッドミルテストでの運動負荷開始45 分後のVAS 値(0~ 10 cm)は,プラセボ群と比較してジヒドロコデイン群で統計学的に有意に低値であった。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者のみを対象とした呼吸困難に対するコデイン・ジヒドロコデインの全身投与の有効性を検討した試験が1 件あるのみでバイアスリスクも高いため,この試験の結果のみでは結論づけられない。しかしながら,非がん患者を対象とした4 件の無作為化比較試験のうち3 件でコデイン・ジヒドロコデイン全身投与はプラセボと比較して統計学的に有意に呼吸困難の緩和を認めたことから,がん患者の呼吸困難に対してもコデイン・ジヒドロコデイン全身投与が有効である可能性がある。また,本邦の臨床現場においては,オピオイドナイーブ*の患者に対して,初回のオピオイド導入時などにモルヒネの代替薬として実際に使用される場合もある。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,コデイン・ジヒドロコデインの全身投与を行うことを提案する。 (小原弘之,渡邊紘章) 【文 献】臨床疑問7 1) Kawabata M, Kaneishi K. Continuous subcutaneous infusion of compound oxycodone for the relief of dyspnea in patients with terminally ill cancer: a retrospective study. Am J Hosp Palliat Care 2013; 30: 305‒11 2) Shinjo T, Okada M. Efficacy of controlled‒release oxycodone for dyspnea in cancer patients― three case series. Gan To Kagaku Ryoho 2006; 33: 529‒32 臨床疑問8 3) Pinna MÁ, Bruera E, Moralo MJ, et al. A randomized crossover clinical trial to evaluate the efficacy of oral transmucosal fentanyl citrate in the treatment of dyspnea on exertion in patients with advanced cancer. Am J Hosp Palliat Care 2015; 32: 298‒304 *:オピオイドナイーブオピオイド未使用の状態。III章推奨
p.231
4) Hui D, Xu A, Frisbee‒Hume S, et al. Effects of prophylactic subcutaneous fentanyl on exer- cise‒induced breakthrough dyspnea in cancer patients: a preliminary double‒blind, randomized, controlled trial. J Pain Symptom Manage 2014; 47: 209‒17 臨床疑問9 5) Leppert W, Majkowicz M. The impact of tramadol and dihydrocodeine treatment on quality of life of patients with cancer pain. Int J Clin Pract 2010; 64: 1681‒7 6) Chua TP, Harrington D, Ponikowski P. Effects of dihydrocodeine on chemosensitivity and exercise tolerance in patients with chronic heart failure. J Am Coll Cardiol 1997; 29: 147‒ 52 7) Rice KL, Kronenberg RS, Hedemark LL, et al. Effects of chronic administration of codeine and promethazine on breathlessness and exercise tolerance in patients with chronic airflow obstruction. Br J Dis Chest 1987; 81: 287‒92 8) Johnson MA, Woodcock AA, Geddes DM. Dihydrocodeine for breathlessness in“pink puffers”. Br Med J(Clin Res Ed)1983; 286: 675‒7 9) Woodcock AA, Gross ER, Gellert A, et al. Effects of dihydrocodeine, alcohol, and caffeine on breathlessness and exercise tolerance in patients with chronic obstructive lung disease and normal blood gases. N Engl J Med 1981; 305: 1611‒6 【参考文献】臨床疑問8 10) Simon ST, Köskeroglu P, Gaertner J, et al. Fentanyl for the relief of refractory breathlessness: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2013; 46: 874‒86
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ベンゾジアゼピン系薬 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件と系統的レビューが1 件ある。Navigante ら(2010)1)は,外来通院中の呼吸困難を有するがん患者63 名を,ミダゾラム群(効果的投与量の経口ミダゾラムを4 時間毎に定期投与)とモルヒネ群(効果的投与量の経口モルヒネを4 時間毎に定期投与)に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評価項目である投与開始2 日目,3 日目,4 日目,5 日目の呼吸困難NRSの中央値は,モルヒネ群と比較してミダゾラム群で統計学的に有意に低かった。有害事象については両群とも重篤な有害事象は認めなかったが,モルヒネ群の19.4%,ミダゾラム群の12.5%に傾眠(CTCAE v3.0 でGrade 2 以上)を認めた。 3 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,ベンゾジアゼピン 系薬は有効か? 関連する臨床疑問 10 呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与は呼 吸困難を緩和するか? 11 呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドの 併用は呼吸困難を緩和するか? 10 がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与を行わない ことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 11 がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドに併用す ることを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問10 呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与を行わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
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一方,Navigante ら(2006)2)は,予測される生命予後が1 週間以内である重度の呼吸困難を有するがん患者101 名を,モルヒネ単独投与群〔モルヒネ皮下注2.5 mgを4 時間毎に定期投与もしくは定期モルヒネ投与量を25%増量(呼吸困難時レスキュー薬はミダゾラム皮下注)〕,ミダゾラム単独投与群〔ミダゾラム皮下注を4 時間毎に定期投与(呼吸困難時レスキュー薬はモルヒネ皮下注)〕,モルヒネ+ミダゾラム併用群に無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評価項目とされた試験開始24 時間後,48 時間後の修正Borg スケールの中央値は,モルヒネ単独投与群とミダゾラム単独投与群で統計学的有意差を認めなかった。48 時間後の死亡率についてはモルヒネ単独投与群31.4%,ミダゾラム単独投与群30.3%であった。Simon ら3)による系統的レビューでは,文献化されていない臨床試験を含め,がん患者のみを対象とした研究結果のメタアナリシスが行われ,呼吸困難を有するがん患者においてベンゾジアゼピン系薬はプラセボおよびモルヒネと比較し,呼吸困難の有意な改善を示せなかった。 ** 以上より,これまでの研究では結果が一致しておらず,がん患者のみを対象とした1 つの無作為化比較試験1)でベンゾジアゼピン系薬はモルヒネに比較して有意な効果を示しているものの,バイアスリスクの高い試験であり,その研究を含めたメタアナリシスでベンゾジアゼピン系薬はプラセボ・対照薬と比較して統計学的に有意な改善を示さなかった。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬の単独投与を行わないことを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が1 件,観察研究が2件ある。Navigante ら(2006)2)は,予測される生命予後が1 週間以内である重度の呼吸困難を有するがん患者101 名を,モルヒネ単独投与群〔モルヒネ皮下注を4 時間毎に定期投与もしくは定期モルヒネ投与量を25%増量(呼吸困難時レスキュー薬はミダゾラム皮下注)〕,ミダゾラム単独投与群,モルヒネ+ミダゾラム併用群〔モルヒネ皮下注を4 時間毎に定期投与もしくは定期モルヒネ投与量を25%増量に加えミダゾラム皮下注を4 時間毎に定期投与(呼吸困難時レスキュー薬はモルヒネ皮下注)〕に 臨床疑問11 呼吸困難を有するがん患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドの併用は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドに併用することを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨
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無作為に割り付け,呼吸困難強度を評価した。評価項目とされた試験開始24 時間後,48 時間後の修正Borg スケールの中央値は,モルヒネ単独投与群とモルヒネ+ミダゾラム併用群で統計学的有意差を認めなかった。一方,試験開始24 時間後に呼吸困難が改善した患者の割合は,モルヒネ+ミダゾラム併用群はモルヒネ単独群と比較し統計学的に有意に高かった。48 時間後の死亡率についてはモルヒネ単独投与群31.4%,モルヒネ+ミダゾラム併用群30.3%であった。Gomutbutra ら4)は,緩和ケアサービス紹介時に中等度から重度の呼吸困難を有し,初回評価から24 時間以内のフォローアップ評価を受けた患者115 名(うちがん患者は73 名)を後ろ向きに調査した。呼吸困難強度は独自の4 件法スケールで評価され,介入24 時間後における呼吸困難改善の有無を評価した。24 時間後の評価時点において,無投薬27 名,オピオイド単独投与50 名,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイド併用35 名であった。呼吸困難改善症例の割合は,オピオイド単独投与群は無投薬群と統計学的有意差がなかったが,ベンゾジアゼピン系薬とオピオイド併用群は無投薬群と比較して統計学的に有意に高かった。Clemens ら5)は,緩和ケア病棟入院時に不安に関連した呼吸困難を有するがん患者26 名にオピオイド〔モルヒネもしくはhydromorphone(本邦未承認)〕とロラゼパムを投与し,投与前後の呼吸困難強度(NRS)を前向きに評価した。投与120 分後の安静時および労作時呼吸困難は,緩和ケア病棟入院時と比較し,統計学的に有意な改善を認めた。 ** 以上より,2 件の観察研究においてオピオイドとベンゾジアゼピン系薬の併用によるがん患者の呼吸困難改善効果が示唆され,対象が生命予後1 週以内の終末期患者に限られてはいるががん患者のみを対象とした1 つの無作為化比較試験で,ベンゾジアゼピン系薬とモルヒネの併用はモルヒネ単独と比較して一部の評価項目で呼吸困難に対する有意な効果を示した。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドに併用することを提案する。ただし,本項で扱うベンゾジアゼピン系薬の使用は,「苦痛緩和のための鎮静」を意図した投与方法ではないため,特に全身状態の悪い患者では,ベンゾジアゼピン系薬をオピオイドと併用開始後に,意識状態に関して慎重な観察を行うこととする。 (松田能宣,合屋 将) 【文 献】臨床疑問10,11 1) Navigante AH, Castro MA, Cerchietti LC. Morphine versus midazolam as upfront therapy to control dyspnea perception in cancer patients while its underlying cause is sought or treated. J Pain Symptom Manage 2010; 39: 820‒30 2) Navigante AH, Cerchietti LC, Castro MA, et al. Midazolam as adjunct therapy to morphine in the alleviation of severe dyspnea perception in patients with advanced cancer. J Pain Symptom Manage 2006; 31: 38‒47 3) Simon ST, Higginson IJ, Booth S, et al. Benzodiazepines for the relief of breathlessness in advanced malignant and non‒malignant diseases in adults. Cochrane Database Syst Rev 2010 (1): CD007354 4) Gomutbutra P, O’Riordan DL, Pantilat SZ. Management of moderate‒to‒severe dyspnea in III章推奨
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hospitalized patients receiving palliative care. J Pain Symptom Manage 2013; 45: 885‒91 5) Clemens KE, Klaschik E. Dyspnoea associated with anxiety―symptomatic therapy with opi- oids in combination with lorazepam and its effect on ventilation in palliative care patients. Support Care Cancer 2011; 19: 2027‒33
p.236
フロセミド吸入 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,2 件の無作為化比較試験がある。Wilcock ら1)は,呼吸困難を有するがん患者15 名を,フロセミド吸入群(40 mg)とプラセボ吸入群および無治療群に無作為に割り付け,それぞれクロスオーバーさせ,呼吸困難の強度を評価した。評価項目であるarm exercise test*による最大運動負荷時の修正Borg スケールは,両群間に統計学的有意差を認めなかった(フロセミド吸入群:2.3 vs プラセボ吸入群:2.5)。またフロセミド吸入に伴う有害事象は認めなかった。Stone ら2)は,呼吸困難を有する進行がん患者7 名を,フロセミド吸入群(20 mg)とプラセボ吸入群に無作為に割り付け,呼吸困難の強度を評価した。評価項目である治療前と治療120 分後における呼吸困難VAS(0~100 mm)の変化量は,両群間に統計学的有意差を認めなかった(フロセミド吸入群:+17 mm vs プラセボ吸入群:-25 mm)。また,有害事象については未記載であった。 ** 以上より,これまでの研究では,フロセミドの吸入投与はプラセボと比較してが 4 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,フロセミドの吸入 投与は有効か? 関連する臨床疑問 12 呼吸困難を有するがん患者に対して,フロセミドの吸入投与は呼吸困難を緩 和するか? 12 がん患者の呼吸困難に対して,フロセミドの吸入投与を行わないことを推奨 する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 臨床疑問12 呼吸困難を有するがん患者に対して,フロセミドの吸入投与は呼吸困難を緩和するか? がん患者の呼吸困難に対して,フロセミドの吸入投与を行わないことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨 *:arm exercise test腕運動負荷試験は,少ない運動負荷で呼吸困難のあるがん患者の呼吸困難を評価する方法である。座位で肩の高さの上下20 cm の範囲で片方ずつ1 分間に80 回のリズムに合わせて動かし,運動耐用能から呼吸困難の程度や肺機能を評価する。III章推奨
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ん患者の呼吸困難を改善する明確な根拠は認めない。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の呼吸困難に対して,フロセミドの吸入投与を行わないことを推奨する。 (渡邊紘章,小原弘之) 【文 献】臨床疑問12 1) Wilcock A, Walton A, Manderson C, et al. Randomised, placebo controlled trial of nebulised furosemide for breathlessness in patients with cancer. Thorax 2008; 63: 872‒5 2) Stone P, Rix, Kurowska A, et al. Re: Nebulized furosemide for dyspnea in terminal cancer patients. J Pain Symptom Manage 2002; 24: 274‒5
p.238
コルチコステロイド5 ● 呼吸困難を訴えているがん患者に,コルチコステロイドの全身投与は有効か? 関連する臨床疑問 13 呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わずコルチコステロイドの全 身投与を行うことは呼吸困難を緩和するか? 14 がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステ ロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 15 上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロ イドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 16 主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコ ステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 13 呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わず一律にはコルチコステロ イドの全身投与を行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 14 がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステ ロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 15 上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロ イドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 16 主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコ ステロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問13 呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わずコルチコステロイドの全身投与を行うことは呼吸困難を緩和するか? 呼吸困難を有するがん患者に対して,病態を問わず一律にはコルチコステロイドの全身投与を行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
p.239
解 説本臨床疑問に関する臨床研究には,観察研究が4 件ある(症例報告2 件を含む)。Hardy ら1)は,何らかの病態や症状に対してコルチコステロイドが投与されたがん患者106 名を対象として,前向き観察研究を行った。治療効果は4 段階の自己評価による症状スコア(0:なし~3:重度)で,1 週間ごとに8 週まで評価され,時期を問わず最も良いスコアを“Best overall response”と定義した。呼吸困難を伴う15 名のうち治療効果が解析可能な13 名において,開始時と比較したBest overall response が改善であったのは5 名(39%)であった。Mercadante ら2)は,在宅緩和ケアサービスを受けるがん患者で,何らかの病態や症状のためコルチコステロイドの投与が開始された50名を対象として,前向き観察研究を行った。4 段階の症状スコア(0:全くない~3:重度)で,2 または3 が適格基準で,スコアが0 または1 になれば有効と判定した。治療経過は全患者の死亡時まで観察された。呼吸困難に対してコルチコステロイドを投与された18 名のうち, 13 名(72%)は有効であった。Elsayem ら3)は,主要気道閉塞(major airway obstruction;MAO)を呈しコルチコステロイドの投与が開始されたがん患者3 名に関する症例報告を行った。そのうち主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者2 名に対してコルチコステロイドの全身投与を行い,呼吸困難NRS(0~10)で評価した。コルチコステロイドの投与開始後,2 名(100%)とも12 時間以内に著明な呼吸困難の改善を認めた(NRS 6~7→2,NRS 10→1~2)。Storck ら4)は,がん性リンパ管症に伴う呼吸困難を有する子宮頸がん患者1 名に関する症例報告を行った。モルヒネの全身投与,アルブテロールの吸入とともにコルチコステロイドの全身投与を行ったところ,呼吸状態はほとんど改善せず急速に悪化した。呼吸困難自体の変化は報告されなかった。上記4 件の観察研究において,病態・症状を問わずコルチコステロイドの全身投与を行った際の有害事象としては,不眠・せん妄(20%),感染症(口腔内カンジダ症を含む)(24%),高血糖(4%),消化管出血(10%)が報告され,重篤な有害事象も12%にみられた。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者の呼吸困難に対するコルチコステロイドの全身投与が有効である可能性が示唆された。しかしながら,これらの研究は研究デザインの質が非常に低く,十分な根拠とはいえない。また,コルチコステロイドの全身投与が奏効する患者の背景や病態については明らかではない。さらに,有害事象も稀ではなく報告されている。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,呼吸困難を有するがん患者に対して,原因病態を問わず一律にはコルチコステロイドの全身投与を行わないことを提案する。ただし,コルチコステロイドによる呼吸困難の緩和作用を期待しうる原因病態(がん性リンパ管症,上大静脈症候群,主要気道閉塞(MAO),気管支攣縮,化学療法・放射線治療による肺障害)がある場合は,条件付きでコルチコステロイドの全身投与を検討してもよい。
p.240
解 説本臨床疑問に対する臨床研究には,観察研究が2 件ある(症例報告1 件を含む)。Hardy ら1)は,何らかの病態や症状に対してコルチコステロイドが投与されたがん患者106 名を対象として,前向き観察研究を行った。治療効果は4 段階の自己評価による症状スコア(0:なし~3:重度)で,1 週間ごとに8 週まで評価され,時期を問わず最も良いスコアを“Best overall response”と定義した。がん性リンパ管症*に対してコルチコステロイドが投与された患者は10 名だったが,がん性リンパ管症を有する患者に関する呼吸困難の有無や呼吸困難の変化については報告されていない。Storck ら4)は,がん性リンパ管症による呼吸困難を有する子宮頸がん患者1 名に関する症例報告を行った。モルヒネの全身投与,アルブテロールの吸入とともにコルチコステロイドの全身投与を行ったところ,呼吸状態はほとんど改善せず,急速に悪化した。呼吸困難自体の変化は報告されなかった。 ** 以上より,これまでの研究では,がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことで呼吸困難が緩和するという根拠はない。しかしながら,臨床現場では,がん性リンパ管症による呼吸困難に対してコルチコステロイドの全身投与が慣習的に行われることが多く,Oxford Textbook of Palliative Medicine(4th ed.)6)では,がん性リンパ管症による呼吸困難の緩和を目的としてコルチコステロイドが慣習的に用いられており,開始量としてデキサメタゾン4~12 mg/日を用いてもよいと記載されている。上記のとおり,がん性リンパ管症に対するコルチコステロイド全身投与に関する研究自体が不足しており,その慣習を否定するに足る質の高い根拠もない。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。ただし,コルチコステロイドの投与開始後は,有効性と有害事象について慎重に評価し,無効例では速やかに中止することを前提とする。また,がん性リンパ管症合併例に対して,抗がん治療(化学療法や放射線治療など)の適応がある場合は,抗がん治療をコルチコステロイド投与に優先することとする。 臨床疑問14 がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? がん性リンパ管症による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 *:がん性リンパ管症がんの転移様式の一つであり,肺内のリンパ管系にがん細胞が浸潤,リンパ管塞栓を来す病態。P40 参照。III章推奨
p.241
解 説本臨床疑問に関する1 件の系統的レビューがある。無作為化比較試験,前後比較試験,観察研究は存在しない。Rowell ら5)は,気管支のがんによる上大静脈症候群*に対するコルチコステロイド,放射線治療,化学療法,ステント留置に関する系統的レビューを行った。しかし,コルチコステロイドの効果に関しては,実証研究がみられなかった。Ostler ら7)の総説をもとに,コルチコステロイドは放射線治療の標準治療の一環として使用されているものの,放射線治療により浮腫が惹起されるというエビデンスがないため,コルチコステロイドを使用する根拠は乏しいと結論づけている。 ** 以上より,これまでのところ,上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことで呼吸困難が緩和されることを検討した研究はない。しかしながら,臨床現場では,上大静脈症候群による呼吸困難に対してコルチコステロイドの全身投与が慣習的に行われることが多い。上大静脈症候群に関する2 件の総説7,8)では,コルチコステロイドは症状緩和目的に慣習的に用いられ,悪性リンパ腫や胸腺腫ではコルチコステロイドにより腫瘍の縮小が得られるため,その他の腫瘍に比べて上大静脈閉塞の軽減が得られる可能性があるが,効果を検証した試験はないと記載されている。また,Oxford Textbook of Palliative Medicine(4th ed.)9)では,上大静脈症候群による呼吸困難を含む症状の緩和を目的としてコルチコステロイドを投与し(デキサメタゾン16 mg/日),漸減してもよいと記載されている。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。ただし,コルチコステロイドの投与開始後は,有効性と有害事象について慎重に評価し,無効例では速やかに中止することを前提とする。また,上大静脈症候群合併例に対して,抗がん治療(化学療法や放射線治療など)の適応がある場合は,抗がん治療をコルチコステロイドに優先することとする。 臨床疑問15 上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 上大静脈症候群による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 *:上大静脈症候群何らかの原因により上大静脈が閉塞され,頭部・上肢・胸郭から右心房への静脈還流が妨げられる病態。P41 参照。
p.242
解 説本臨床疑問に関する系統的レビュー,無作為化比較試験,前後比較試験は存在しないが,症例報告が1 件ある。Elsayem ら3)は,主要気道閉塞(major airway obstruction;MAO)*を呈しコルチコステロイドの投与が開始されたがん患者3 名に関する症例報告を行った。そのうち主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者2 名に対してコルチコステロイドの全身投与を行い,呼吸困難NRS(0~10)で評価した。1 名ではデキサメタゾン10 mg を6 時間毎に静注したところ,12 時間以内に呼吸困難の改善(NRS 6~7→2)と喘鳴の軽減を認めた。もう1 名ではメチルプレドニゾロン125 mg を6時間毎に静注したところ,12 時間以内に呼吸困難の改善(NRS 10→1~2)を認め,喘鳴はほぼ消失した。 ** 以上より,これまでの研究では,主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は,呼吸困難を緩和させる可能性が示唆されるが,十分な根拠とはいえない。しかしながら,臨床現場では,主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難に対してコルチコステロイドの全身投与が慣習的に行われることが多く,その慣習を否定するに足る質の高い研究もない。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。ただし,コルチコステロイドの投与開始後は,有効性と有害事象について慎重に評価し,無効例では速やかに中止することを前提とする。また,主要気道閉塞(MAO)合併例に対して,抗がん治療(化学療法や放射線治療など)の適応がある場合は,抗がん治療をコルチコステロイドに優先することとする。 (森 雅紀,西 智弘) 【文 献】臨床疑問13~16 1) Hardy JR, Rees E, Ling J, et al. A prospective survey of the use of dexamethasone on a palliative care unit. Palliat Med 2001; 15: 3‒8 2) Mercadante S, Fulfaro F, Casuccio A. The use of corticosteroids in home palliative care. Sup- port Care Cancer 2001; 9: 386‒9 臨床疑問16 主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与は呼吸困難を緩和するか? 主要気道閉塞(MAO)による呼吸困難を有するがん患者に対して,コルチコステロイドの全身投与を行うことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 *:主要気道閉塞(MAO)咽頭~喉頭の上気道および気管~主気管支~葉気管支レベルの気道に狭窄を来す病態。P42 参照。III章推奨
p.243
3) Elsayem A, Bruera E. High‒dose corticosteroids for the management of dyspnea in patients with tumor obstruction of the upper airway. Support Care Cancer 2007; 15: 1437‒9 4) Storck K, Crispens M, Brader K. Squamous cell carcinoma of the cervix presenting as lymphangitic carcinomatosis: a case report and review of the literature. Gynecol Oncol 2004; 94: 825‒8 5) Rowell NP, Gleeson FV. Steroids, radiotherapy, chemotherapy and stents for superior vena caval obstruction in carcinoma of the bronchus. Cochrane Database Syst Rev 2001(4): CD001316 【参考文献】臨床疑問14 6) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic dis- ease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1124‒5 臨床疑問15 7) Ostler PJ, Clarke DP, Watkinson AF, et al. Superior vena cava obstruction: a modern management strategy. Clin Oncol(R Coll Radiol)1997; 9: 83‒9 8) Wilson LD, Detterbeck FC, Yahalom J. Clinical practice. Superior vena cava syndrome with malignant causes. N Engl J Med 2007; 356: 1862‒9 9) Chan KS, Tse DMW, Sham MMK, Thorsen AB. Section 11. Issues in specific neoplastic dis- ease. 11.1 Palliative medicine in malignant respiratory diseases. Hanks G, Cherny NI, Christakis NA, et al eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 4th ed, New York, Oxford University Press, 2010; pp1121‒2
p.244
悪性胸水による呼吸困難に対する治療 特定の病態に対する治療3 1 ● 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者の,呼吸困 難を緩和する有効な方法は何か? 関連する臨床疑問 17 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸腔穿刺ドレナージは 呼吸困難を緩和するか? 18 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸膜癒着術は呼吸困難 を緩和するか? 19 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,利尿薬は呼吸困難を緩 和するか? 17 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するた めに胸腔穿刺ドレナージを行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 18 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するた めに胸膜癒着術を行うことを条件付きで提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 19 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するた めに利尿薬の投与を行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問17 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸腔穿刺ドレナージは呼吸困難を緩和するか? 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために胸腔穿刺ドレナージを行うことを推奨する。 1B (強い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨III章推奨
p.245
解 説本臨床疑問に対する臨床試験としては,比較試験が4 件(うち無作為化比較試験3 件),観察研究が7 件,系統的レビューが1 件ある。比較試験において,悪性胸水*1 による呼吸困難を有するがん患者に対し,胸腔穿刺ドレナージと無治療を直接比較した研究は存在しない。Boshuizen ら1)は,悪性胸水を有する患者49 名に胸腔穿刺ドレナージを行い,治療効果を前向きに調査した。安静時呼吸困難は修正Borg スケールで評価され,胸腔穿刺ドレナージ施行前には平均2.9 であったが,施行後平均1.9 日後には0.69 に改善していた。しかし,30 日以内に57.1%(28/49 名)に胸水に対する再処置が必要となった。Ost ら2)は,悪性胸水を有する患者266 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置を行い,治療効果を前向きに評価した。皮下カテーテル留置1 カ月後の呼吸困難を修正Borg スケールで評価し,留置前と比較して呼吸困難強度は統計学的に有意に改善(2.31 減少)を認めた。Lorenzo ら3)は,悪性胸水を有する肺がん患者27 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置を行い,治療効果を前向きに評価した。皮下カテーテル留置30 日後の呼吸困難をEORTC QLQ‒LC13*2 の呼吸困難に関する下位項目(0~100)で評価し,留置前と比較して呼吸困難強度は統計学的に有意に改善を認めた(21.62 改善)。Sabur ら4)は,悪性胸水を有する患者82 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置を行い,治療効果を前向きに評価した。皮下カテーテル留置2週間後の呼吸困難をEORTC QLQ‒LC13 の呼吸困難に関する下位項目(0~100)で評価し,56 名で評価が可能であり,留置前と比較して呼吸困難強度は統計学的に有意に改善を認めた(20.4 改善)。Tscheikuna ら5)は,悪性胸水を有する患者10 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置を行い,治療効果を前向きに評価した。皮下カテーテル留置2 週間後の修正Borg スケールで評価し,留置前と比較して呼吸困難強度は統計学的に有意に改善を認めた(留置前:4→留置2 週間後:0.5)。Chen ら6)は,悪性胸水を有する患者342 名に対して胸腔穿刺ドレナージのためのpig‒tail カテーテルの留置を477 回行い,治療効果を後ろ向きに評価した。91%で呼吸困難の改善を認めた(呼吸困難改善の定義の記載はなし)。Kriegel ら7)は,悪性胸水を有する患者125 名に対して胸腔穿刺ドレナージのための皮下ポート留置を行い,治療効果を前向きに評価した。97.8%(122/125 名)で呼吸困難の改善を認めた(呼吸困難改善の定義の記載はなし)。上記の観察研究7件すべてにおいて,介入後の呼吸困難の改善が報告されていた。これらの研究において,生活の質(QOL)の改善を指標とした検討が行われた4 件のうち2 件4,5)で,統計学的に有意なQOL の改善を認めたが,他の2 件2,3)ではQOLの有意な改善を認めなかった。有害事象に関しては,全研究の統合値で何らかの有害事象が6.5%に認められたが,処置に伴う死亡は認めなかった。Fysh ら8)は,悪性胸水を有する患者65 名を,患者意向による治療法選択を行う方法で,皮下カテーテル留置群と,胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)に分け,治療効果を評価した。呼吸困難VAS(0~100 mm)の治療前の標準偏差の1/2 の数 *1:悪性胸水胸膜播種や腫瘍の転移・浸潤など,がんが原因となって胸腔内に貯留した液体。P43 参照。 *2:EORTC QLQ‒LC13肺がん患者の生活の質(quality of life)を評価する目的で開発された13 項目からなる自記式質問表である。QLQ‒ C30 は全がん種を対象にしており,QLQ‒LC13 には肺がん特異的な症状の評価が含まれている。
p.246
値以上改善したものを改善例と定義し評価したところ,改善例は両群間で統計学的有意差を認めなかった(皮下カテーテル留置:93.3% vs 胸膜癒着:78.6%)。Davies ら9)は,悪性胸水を有する患者106 名を,皮下カテーテル留置群と胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である施行42 日後の呼吸困難VAS(0~100 mm)の改善は両群間に統計学的有意差を認めなかった。呼吸困難VAS が10 mm 以上の改善を認めた症例の割合も,両群間で統計学的有意差を認めなかった(皮下カテーテル留置群:86% vs 胸膜癒着群:74%)。Demmy ら10)は,悪性胸水を有する患者57 名を,皮下カテーテル留置群と胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である呼吸困難強度(dyspnea score:数値の範囲記載なし)の改善(評価の時点は記載なし)は,胸膜癒着群と比較して皮下カテーテル留置群で呼吸困難の改善量が統計学的に有意に大きかった(皮下カテーテル留置群:8.5 vs 胸膜癒着群:6.1)。Putnam ら11)は,悪性胸水を有する患者144 名を,皮下カテーテル留置群と胸膜癒着群(ドキシサイクリンで胸膜癒着術施行)に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である安静時・労作時における修正Borg スケールは,30 日後の労作時は胸膜癒着群と比較して皮下カテーテル留置群で統計学的に有意に改善を認めた(皮下カテーテル留置群:2.2 vs 胸膜癒着群:1.0)が,安静時は統計学的有意差を認めず,60 日後および90 日後は安静時,労作時ともに両群間に統計学的有意差は認めなかった。上記4 件の比較試験の統合データでは,胸腔穿刺ドレナージに伴う有害事象は21.1%に認められたが,対照群(19.1%)との統計学的有意差は認めなかった。また,死亡例は0.5%で認めたが,対照群(0.6%)との統計学的有意差は認めなかった。Van Meter ら12)による系統的レビューでは,胸腔穿刺ドレナージのための皮下カテーテル留置の悪性胸水に対する治療効果と安全性に関して19 件の研究(1 件の無作為化比較試験,18 件の観察研究)が検討された。症状は95.6%の症例で緩和され,合併症は皮下気腫(2.8%),気胸(5.9%),カテーテル閉塞(3.7%)などであるが重篤な合併症は少なかった。皮下カテーテル留置は悪性胸水の治療・症状緩和に有用で大きな合併症も少ないと考えられるが,観察研究が中心であり,質の高いエビデンスではないため,さらなる無作為化比較試験による検証が必要と結論されている。 ** 以上より,これまで行われた7 件の観察研究と観察研究を中心とした1 件の系統的レビューの結果から,悪性胸水に対する胸腔穿刺ドレナージによる呼吸困難改善効果が示唆された。また,採用した4 件の胸膜癒着との比較試験においても,胸腔穿刺ドレナージによる呼吸困難改善効果が示唆されている。したがって,本ガイドラインでは,悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために胸腔穿刺ドレナージを行うことを推奨する。ただし,胸水再貯留のため,頻回の胸腔穿刺ドレナージが必要となる場合は,気胸,膿胸,胸腔内隔壁形成などの合併症の原因ともなりうる。そのため,予測される生命予後が短く,全身状態が不良な症例では,呼吸困難に対する薬剤での対応を行いつつ,胸腔穿刺ドレナージの必要性を慎重に検討することとする。III章推奨
p.247
解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,比較試験が4 件(うち無作為化比較試験3 件)と系統的レビューが1 件がある。Fysh ら8)は,悪性胸水を有する患者65 名を,患者意向による治療法選択を行う方法で,胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)と皮下カテーテル留置群に分け,治療効果を評価した。呼吸困難VAS(0~100 mm)の治療前の標準偏差の1/2 の数値以上改善したものを改善例と定義し評価したところ,改善例は両群で統計学的有意差を認めなかった(胸膜癒着:78.6% vs 皮下留置カテーテル:93.3%)。Davies ら9)は,悪性胸水を有する患者106 名を,胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)と皮下カテーテル留置群に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である施行42 日後の呼吸困難VAS(0~100 mm)の改善は両群間に統計学的有意差を認めなかった。呼吸困難VAS が10 mm 以上の改善を認めた症例の割合も,両群で統計学的有意差を認めなかった(胸膜癒着群:74% vs 皮下カテーテル留置群:86%)。Demmy ら10)は,悪性胸水を有する患者57 名を,胸膜癒着群(タルクで胸膜癒着術施行)と皮下カテーテル留置群に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である呼吸困難強度(dyspnea score:数値の範囲記載なし)の改善(評価の時点は記載なし)は,皮下カテーテル留置群と比較して胸膜癒着群で呼吸困難の改善量が統計学的に有意に少なかった(胸膜癒着群:6.1 vs 皮下カテーテル留置群:8.5)。Putnam ら11)は,悪性胸水を有する患者144 名を,胸膜癒着群(ドキシサイクリンで胸膜癒着術施行)と皮下カテーテル留置群に無作為に割り付け,治療効果を評価した。評価項目である安静時・労作時における修正Borg スケールの改善は,30日後の労作時は皮下カテーテル留置群と比較して胸膜癒着群で統計学的に有意に改善が乏しかった(胸膜癒着群:1.0 vs 皮下カテーテル留置群:2.2)が,安静時は統計学的有意差を認めず,60 日後および90 日後は安静時,労作時ともに両群に統計学的有意差は認めなかった。上記4 件の比較試験の統合データでは,胸膜癒着に伴う有害事象は19.1%で認められたが,対照群(21.1%)と統計学的な有意差は認めなかった。また,死亡例は0.6%で認めたが,対照群(0.5%)と統計学的な有意差は認めなかった。Shaw ら13)による系統的レビューでは,36 件の無作為化比較試験の結果から胸膜癒着剤の種類による胸膜癒着の効果の差を再貯留の有無で評価検討している。メタ 臨床疑問18 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸膜癒着術は呼吸困難を緩和するか? 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために胸膜癒着術を行うことを条件付きで提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨
p.248
アナリシスで,タルクが他の癒着剤よりも成功率が高いと報告されているが,呼吸困難の改善に関しての評価はされていなかった。 ** 以上より,これまでの研究では,悪性胸水による呼吸困難に対して,胸膜癒着術が胸腔穿刺ドレナージを上回る有用性は示されていない。しかしながら,胸膜癒着術施行後に7 割以上の症例で呼吸困難が改善しており,有害事象の発生は胸腔穿刺ドレナージと比較して統計学的有意差は認めなかった。また,胸膜癒着術が成功した場合は,チューブ留置状態からの解放や頻回の胸腔穿刺ドレナージの回避が可能となる場合があり,胸膜癒着成功例では利益が得られる場合もあると考えられる。したがって,本ガイドラインでは,悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために胸膜癒着術を行うことを条件付きで提案する。ただし,適応となるのは,1悪性胸水貯留に伴う症状緩和のために頻回の胸腔穿刺ドレナージが必要である,2全身状態が比較的良好である,3予後が月単位以上で見込める,というすべての条件を満たす症例に限られると考える。また,胸膜癒着術を行う場合には,有害事象発生の可能性も念頭に置き,施行目的を明確にし,利益と不利益に関して患者と十分に相談したうえで実施することとする。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究は,これまでのところ報告されていない。 ** 以上より,これまでの研究では,利尿薬が悪性胸水による呼吸困難を改善する根拠はない。臨床的には,心不全・肝不全・ネフローゼ症候群などに伴う体液過剰による胸水には利尿薬が有効であることがあるが,悪性胸水に対する治療効果を裏付ける薬理学的・病態生理学的な根拠は十分ではない。また,利尿薬の使用に伴い腎機能障害・電解質異常や,循環血漿量の低下に伴う有害事象のリスクがあると考えられるため,悪性胸水を有する患者に対して一律な利尿薬の使用は避ける必要がある。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和することを目的に利尿薬の投与を行わないことを提案する。 (中村陽一,坂下明大) 臨床疑問19 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,利尿薬は呼吸困難を緩和するか? 悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために利尿薬の投与を行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
p.249
【文 献】臨床疑問17,18 1) Boshuizen RC, Vincent AD, van den Heuvel MM. Comparison of modified Borg scale and visual analog scale dyspnea scores in predicting re—intervention after drainage of malignant pleural effusion. Support Care Cancer 2013; 21: 3109—16 2) Ost DE, Jimenez CA, Lei X, et al. Quality—adjusted survival following treatment of malignant pleural effusions with indwelling pleural catheters. Chest 2014; 145: 1347—56 3) Lorenzo MJ, Modesto M, Pérez J, et al. Quality—of—Life assessment in malignant pleural effusion treated with indwelling pleural catheter: a prospective study. Palliat Med 2014; 28: 326—34 4) Sabur NF, Chee A, Stather DR, et al. The impact of tunneled pleural catheters on the quality of life of patients with malignant pleural effusions. Respiration 2013; 85: 36—42 5) Tscheikuna J, Thomrongpairoj P, Disayabutr S. The efficacy of Jackson drain in the application to be a tunnel pleural catheter(TPC)in the management of malignant pleural effusion. J Med Assoc Thai 2011; 94: 679—85 6) Chen YM, Shih JF, Yang KY, et al. Usefulness of pig—tail catheter for palliative drainage of malignant pleural effusions in cancer patients. Support Care Cancer 2000; 8: 423—6 7) Kriegel I, Daniel C, Falcou MC, et al. Use of a subcutaneous implantable pleural port in the management of recurrent malignant pleurisy: five—year experience based on 168 subcutaneous implantable pleural ports. J Palliat Med 2011; 14: 829—34 8) Fysh ET, Waterer GW, Kendall PA, et al. Indwelling pleural catheters reduce inpatient days over pleurodesis for malignant pleural effusion. Chest 2012; 142: 394—400 9) Davies HE, Mishra EK, Kahan BC, et al. Effect of an indwelling pleural catheter vs chest tube and talc pleurodesis for relieving dyspnea in patients with malignant pleural effusion: the TIME2 randomized controlled trial. JAMA 2012; 307: 2383—9 10) Demmy TL, Gu L, Burkhalter JE, et al. Optimal management of malignant pleural effusions (results of CALGB 30102). J Natl Compr Canc Netw 2012; 10: 975—82 11) Putnam JB Jr, Light RW, Rodriguez RM, et al. A randomized comparison of indwelling pleural catheter and doxycycline pleurodesis in the management of malignant pleural effusions. Cancer 1999; 86: 1992—9 12) Van Meter ME, McKee KY, Kohlwes RJ. Efficacy and safety of tunneled pleural catheters in adults with malignant pleural effusions: a systematic review. J Gen Intern Med 2011; 26: 70—6 13) Shaw P, Agarwal R. Pleurodesis for malignant pleural effusions. Cochrane Database Syst Rev 2004(1): CD002916
p.250
咳嗽の緩和に対する治療 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,比較試験が2 件,系統的レビューが1 件 2 ● 咳嗽を有するがん患者の,咳嗽を緩和する有効な方法 は何か? 関連する臨床疑問 20 咳嗽を有するがん患者に対して,オピオイドは咳嗽を緩和するか? 21 咳嗽を有するがん患者に対して,デキストロメトルファンは咳嗽を緩和する か? 22 咳嗽を有するがん患者に対して,プレガバリン・ガバペンチンは咳嗽を緩和 するか? 23 咳嗽を有するがん患者に対して,リドカインを吸入することは咳嗽を緩和す るか? 20 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにコデイン・ジヒドロ コデイン,モルヒネを投与することを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 21 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにデキストロメトル ファンを投与することを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 22 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにプレガバリン・ガバ ペンチンを投与しないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 23 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにリドカイン吸入を行 わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問20 咳嗽を有するがん患者に対して,オピオイドは咳嗽を緩和するか? 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにコデイン・ジヒドロコデイン,モルヒネを投与することを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
p.251
ある。Luporini ら1)は,140 名の咳嗽を有する肺がん患者を対象として,levodropropizine〔末梢性鎮咳薬(本邦未承認)〕群(levodropropizine 75 mg を1 日3 回内服)と,ジヒドロコデイン群(ジヒドロコデイン10 mg を1 日3 回内服)に無作為に割り付け,7 日間の投与前後での咳嗽の強度を患者と医療従事者が5 段階リッカート尺度で評価した。両群ともに投与前後で咳嗽は統計学的に有意な改善を認めたが,両群間に統計学的有意差は認めなかった。Barnabè ら2)は,119 名の咳嗽を有する呼吸器疾患患者を対象として,moguisteine〔末梢性鎮咳薬(本邦未承認)〕群(moguisteine 100 mg を1 日3 回内服),コデイン15 mg 群(コデイン15 mg を1 日3 回内服),コデイン30 mg 群(コデイン30 mg を1 日3 回内服),の3 群に無作為に割り付け,咳嗽の改善を評価した。咳嗽の強度はVAS(0~100 mm)で評価した。投与48 時間前後の咳嗽の強度は,moguisteine 群で80%,コデイン群で77%の患者で低下した。上記2 件の報告では,コデイン・ジヒドロコデインの内服による有害事象として眠気などを対照群と比較して有意に多く認めたが,重篤な有害事象に関して統計学的有意差は認めなかった。Molassiotis ら3)の系統的レビューでは,がん患者の咳嗽に対しての薬物療法としてモルヒネ,コデイン・ジヒドロコデインが挙げられているが,いずれの報告も質の高い研究ではなく,がん患者の咳嗽に対しての薬物療法として推奨されるものはないと結論づけている。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者の咳嗽に対するオピオイドの有効性について,対照薬と比較して統計学的有意差は認められない。しかしながら,いずれの研究も実薬を対照としており,プラセボとオピオイドを比較した試験ではない。また,検討されているオピオイドは,コデイン・ジヒドロコデインおよびモルヒネのみであり,その他のオピオイドの効果は検討されていない。そのようななかで,既存の研究の結果では,コデイン・ジヒドロコデイン,モルヒネを投与した前後で咳嗽の頻度や強度が減少し,重篤な有害事象の増加を認めないことが示されている。これらのことから,オピオイドががん患者の咳嗽を改善する可能性はあると考えられる。したがって,本ガイドラインでは専門家の合意により,咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにコデイン・ジヒドロコデイン,モルヒネを投与することを提案する。
p.252
解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,咳嗽を有するがん患者のみを対象とした,デキストロメトルファンの効果を検討した研究は存在しなかった。一方,非がん患者を含めた咳嗽を有する患者を対象とした臨床研究は,無作為化比較試験が5件と,系統的レビューが2 件ある。Catena ら4)は,中等症以上の乾性咳嗽患者(原疾患は問わない)209 名を,デキストロメトルファン群(デキストロメトルファン45 mg/日,5 日間内服)99 名と, levodropropizine〔末梢性鎮咳薬(本邦未承認)〕群(levodropropizine 180 mg/日, 5 日間内服)110 名に無作為に割り付け,咳嗽の回数を評価した。両群ともに投与前後で,咳嗽の回数は低下していたが,両群間に統計学的有意差は認めなかった。Del Donno ら5)は,7 日間以上持続する咳嗽を有した呼吸器疾患患者124 名を,デキストロメトルファン群(デキストロメトルファン90 mg/日)63 名と,moguisteine〔末梢性鎮咳薬(本邦未承認)〕群(moguisteine 600 mg/日)61 名に無作為に割り付け,咳嗽の回数を評価した。評価項目である投与2 日後の咳嗽回数は,投与前と比較して両群ともに減少していたが,両群間に統計学的有意差は認めなかった。Rühle ら6)は,9 名のがん患者を含む24 名の慢性咳嗽患者を対象として,デキストロメトルファン30 mg/日,glaucine〔気管支拡張薬(本邦未承認)〕30 mg/日,プラセボを用いたクロスオーバー比較試験を行い,咳嗽の回数を評価した。評価項目である投与日の夜間の咳嗽平均回数は,デキストロメトルファン群はプラセボ群と比較して統計学的に有意に咳嗽の回数が少なかった。Matthys ら7)は,4 名のがん患者を含む16 名の慢性咳嗽患者を対象として,デキストロメトルファン20 mg/日,コデイン20 mg/日,プラセボを用いたクロスオーバー比較試験を行い,咳嗽の回数を評価した。評価項目である投与3 日目の夜間8時間における咳嗽回数は,プラセボ群と比較してデキストロメトルファン群で統計学的に有意に減少した。Hamada ら8)は,127 名の慢性呼吸器疾患の患者を対象として,デキストロメトルファン群(90 mg/日)63 名とクロフェダノール群(75 mg/日)64 名に無作為に割り付け,咳嗽の改善度を評価した。評価項目である投与7 日目の呼吸困難改善度(7段階のリッカート尺度)は,デキストロメトルファン群は66.7%で改善を認めたが,両群間では統計学的有意差を認めなかった。上記5 件の無作為化比較試験のうち,4 件について有害事象の報告がなされてお 臨床疑問21 咳嗽を有するがん患者に対して,デキストロメトルファンは咳嗽を緩和するか? 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにデキストロメトルファンを投与することを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨 III章推奨
p.253
り,デキストロメトルファンの投与による有害事象は13.3%(32 名/241 名)で認めたが,対照群との統計学的有意差は認めなかった。また,死亡を含めた重篤な有害事象は認めなかった。Yancy ら9)の系統的レビューでは,がん患者を含まない慢性咳嗽を対象としたデキストロメトルファンとプラセボとの比較試験について,Rühle ら6)とMatthys ら7)の報告を含む6 件について報告している。4 件の報告でデキストロメトルファンが咳嗽の強度,咳嗽の頻度を減少させ,1 件の報告で咳嗽の回数は減少させるが,咳嗽特異的QOL や睡眠障害の改善には有効でなく,1 件の報告でプラセボと比較して効果がなかったとしている。McCrory ら10)の系統的レビューでは,がん患者を含まない慢性咳嗽に対してのデキストロメトルファンの効果についてメタアナリシスが行われており,プラセボと比較して効果量は,咳嗽の強度が0.54〔95%信頼区間(CI),0.27 to 0.80;p=0.0008〕,咳嗽の頻度が0.40(95% CI,0.18 to 0.85;p=0.0248)と報告している。咳嗽の強度や頻度の改善には有効である可能性があるが,エビデンスとしては不十分であり,有害事象についてもエビデンスレベルの高い報告がないと結論づけている。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者のみを対象とした咳嗽に対するデキストロメトルファンの有効性を検討した試験はないが,慢性咳嗽患者を対象とした研究結果ではデキストロメトルファン群は対照群と比較して咳嗽の頻度の減少を示している。また,有害事象に関してはデキストロメトルファン群と対照群の間で統計学的有意差を認めない。これらの結果から,がん患者の咳嗽に対してもデキストロメトルファンの有効性が期待できる可能性がある。したがって,本ガイドラインでは,咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにデキストロメトルファンを投与することを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,がん患者を対象としたプレガバリン・ガバペンチンの咳嗽に対する効果を検討した研究は存在しなかった。一方,非がん患者を対象とした臨床研究は,無作為化比較試験が1 件,観察研究が1 件,系統的レビューが1 件ある。Ryan ら11)は,8 週間以上持続する慢性咳嗽で末梢性咳嗽の原因となりうる病態を 臨床疑問22 咳嗽を有するがん患者に対して,プレガバリン・ガバペンチンは咳嗽を緩和するか? 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにプレガバリン・ガバペンチンを投与しないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨
p.254
すべて除外した患者62 名を,ガバペンチン群(ガバペンチン300~1,800 mg/日)32名,プラセボ群30 名に無作為に割り付け,咳嗽特異的QOL を評価した。主要評価項目である8 週間投与後のLeicester cough questionnaire(LCQ)score(3~21)は,プラセボ群と比較してガバペンチン群で統計学的に有意に改善していた。有害事象については,ガバペンチン群で17 件(31%),プラセボ群で6 件(10%)とガバペンチン群で統計学的に有意に多く認めたが,重篤な有害事象は認めなかった。Van de Kerkhove ら12)は,慢性咳嗽に対してガバペンチンが投与(ガバペンチン1,200 mg/日,4 週間の投与)された51 名について後ろ向きに調査した。咳嗽の強度については10 段階(1~10)評価を行い,治療後に平均2.8 低下した。8 名が有害事象を危惧して治療をせず,5 名が倦怠感,3 名がめまいで治療を中止している。35名の患者に効果を認めた。Cohen ら13)の系統的レビューでは,ガバペンチンに関するRyan らの無作為化比較試験1 件と2 件の症例集積を,プレガバリンに関する1 件の症例集積を評価に採用し,慢性咳嗽に対してはプレガバリン・ガバペンチンの投与が有効である可能性はあるが,さらに妥当性が確認された効果指標を用いた研究が必要であると結論づけている。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者のみを対象とした咳嗽に対するプレガバリン・ガバペンチンの有効性を検討した試験はない。慢性咳嗽患者を対象とした研究結果では,プレガバリン・ガバペンチンの投与により咳嗽の強度が減少し,咳嗽関連QOL の改善を認め,重篤な有害事象は認めないとされている。しかしながら,これらの研究は,がん患者の咳嗽の原因となりうる病態をすべて除外した患者のみを対象としており,がん患者に対してあてはめることができない可能性が高い。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにプレガバリン・ガバペンチンを投与しないことを提案する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,がん患者のみを対象とした,リドカイン吸入の咳嗽に対する効果を検討した研究は存在しなかった。一方,非がん患者を対象とした臨床研究は,無作為化比較試験が1 件,観察研究が2 件,系統的レビュー 臨床疑問23 咳嗽を有するがん患者に対して,リドカインを吸入することは咳嗽を緩和するか? 咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにリドカイン吸入を行わないことを提案する。 2C (弱い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
p.255
が1 件ある。Chong ら14)は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者127 名を対象として,リドカイン吸入(リドカイン1 mg/kg)群62 名とテルブタリン(気管支拡張薬)吸入群65 名に無作為に割り付け,咳嗽の強度を評価した。主要評価項目である吸入1 時間後の咳嗽強度(10 段階のスコア)の改善は,両群ともにスコアが低下していたが,両群間に統計学的有意差は認めなかった。Lim ら15)は,慢性咳嗽に対して4%リドカイン(120 mg)吸入を施行された165名を対象としてリドカイン吸入の安全性についてアンケート調査を行った。99 名(60%)から回答が得られ,咳嗽の強度については,11 段階評価(0~10)で吸入前後での平均値が8.4 から5.9 に低下し,49%の患者が改善したと回答した。Lingerfelt ら16)は,1 名のがん患者を含む4 名の終末期の慢性咳嗽を有する患者に対して,4~6 L/分の酸素吸入に加えてリドカイン100 mg の吸入を行い,吸入から30 分後の咳嗽の強度を4 段階で評価した。慢性心不全患者1 名とがん患者1 名で効果があったとしているが,吸入後の咳嗽の強度について詳細な記載はなかった。リドカイン吸入による有害事象としては,先述した3 件の報告をまとめると動悸などの不整脈の頻度は3.8%(6 名/158 名)で発生したが,対照薬よりも統計学的に有意に発生頻度は少なかった。また,重篤な有害事象は認めなかった。Slaton ら17)の系統的レビューでは,Chong らの無作為化比較試験1 件と,Lim らの症例報告を含む6 件の症例集積を評価に採用し,治療抵抗性の慢性咳嗽患者に対して,リドカイン吸入は代替治療となる可能性はあるが,安全を確保するためにも十分な監視が必要であると結論している。 ** 以上より,これまでの研究では,がん患者のみを対象とした咳嗽に対するリドカイン吸入の有効性を検討した試験はない。慢性咳嗽患者を対象とした研究結果ではリドカイン吸入により咳嗽の強度は減少する可能性はあるが,咽頭のしびれや苦味,不整脈などの有害事象発生のリスクが指摘されている。したがって,本ガイドラインでは,咳嗽を有するがん患者に対して,咳嗽を改善するためにリドカインを吸入しないことを提案する。 (坂下明大,中村陽一) 【文 献】臨床疑問20 1) Luporini G, Barni S, Marchi E, et al. Efficacy and safety of levodropropizine and dihydrocodeine on nonproductive cough in primary and metastatic lung cancer. Eur Respir J 1998; 12: 97‒101 2) Barnabè R, Berni F, Clini V, et al. The efficacy and safety of moguisteine in comparison with codeine phosphate in patients with chronic cough. Monaldi Arch Chest Dis 1995; 50: 93‒7 3) Molassiotis A, Bailey C, Caress A, et al. Interventions for cough in cancer. Cochrane Database Syst Rev 2010(9): CD007881 臨床疑問21 4) Catena E, Daffonchio L. Efficacy and tolerability of levodropropizine in adult patients with non‒productive cough. Comparison with dextromethorphan. Pulm Pharmacol Ther 1997; 10: 89‒96 5) Del Donno M, Aversa C, Corsico R, et al. Efficacy and safety of moguisteine in comparison
p.256
with dextromethorphan in patients with persistent cough. Drug Invest 1994; 7: 93‒100 6) Rühle KH, Criscuolo D, Dieterich HA, et al. Objective evaluation of dextromethorphan and glaucine as antitussive agents. Br J Clin Pharmacol 1984; 17: 521‒4 7) Matthys H, Bleicher B, Bleicher U. Dextromethorphan and codeine: objective assessment of antitussive activity in patients with chronic cough. J Int Med Res 1983; 11: 92‒100 8) Hamada A, Ito K, Ito S, et al. Study on the Effects of Clofedanol, A New‒Antitussive, by Double Blind Method‒In Comparison with Dextromethorphan. Rinsho Hyoka(Clinical Evaluation)1978; 6: 563‒87 9) Yancy WS Jr, McCrory DC, Coeytaux RR, et al. Efficacy and tolerability of treatments for chronic cough: a systematic review and meta‒analysis. Chest 2013; 144: 1827‒38 10) McCrory DC, Coeytaux RR, Yancy WS Jr, et al. Assessment and Management of Chronic Cough. Rockville(MD): Agency for Healthcare Research and Quality(US); 2013 Jan. Report No.: 13‒EHC032‒EF. AHRQ Comparative Effectiveness Reviews. 臨床疑問22 11) Ryan NM, Birring SS, Gibson PG. Gabapentin for refractory chronic cough: a randomised, double‒blind, placebo‒controlled trial. Lancet 2012; 380: 1583‒9 12) Van de Kerkhove C, Goeminne PC, Van Bleyenbergh P, et al. A cohort description and analysis of the effect of gabapentin on idiopathic cough. Cough 2012; 8: 9 13) Cohen SM, Misono S. Use of specific neuromodulators in the treatment of chronic, idiopathic cough: a systematic review. Otolaryngol Head Neck Surg 2013; 148: 374‒82 臨床疑問23 14) Chong CF, Chen CC, Ma HP, et al. Comparison of lidocaine and bronchodilator inhalation treatments for cough suppression in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Emerg Med J 2005; 22: 429‒32 15) Lim KG, Rank MA, Hahn PY, et al. Long‒term safety of nebulized lidocaine for adults with difficult‒to‒control chronic cough: a case series. Chest 2013; 143: 1060‒5 16) Lingerfelt BM, Swainey CW, Smith TJ, et al. Nebulized lidocaine for intractable cough near the end of life. J Support Oncol. 2007; 5: 301‒2 17) Slaton RM, Thomas RH, Mbathi JW. Evidence for therapeutic uses of nebulized lidocaine in the treatment of intractable cough and asthma. Ann Pharmacother 2013; 47: 578‒85 III章推奨
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死前喘鳴の軽減に対する治療 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2 件ある。Heisler ら1)は,59 名のがん患者(43%)を含む死前喘鳴を発症した終末期患者160 名を,アトロピン群(アトロピン1 mg 舌下投与)とプラセボ群に無作為に割り付けし,喘鳴の程度を評価した。主要評価項目の投与2 時間後の喘鳴の評価は看護師により4 段階で行われ,0=音が聞こえない,1=患者に近づくと聞こえる,2=静 3 ● 死前喘鳴を有するがん患者の,喘鳴を軽減する有効な 方法は何か? 関連する臨床疑問 24 死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与することは,喘鳴を軽 減するか? 25 死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与することは,喘鳴 を軽減するか? 26 死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引を実施することは,喘鳴を緩和する か? 24 死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与しないことを提案する。2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 25 死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与しないことを推奨 する。 1C (強い推奨,弱いエビデンス) 26 死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引は行わないことを提案する。2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨 臨床疑問24 死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与することは,喘鳴を軽減するか? 死前喘鳴を有するがん患者に対して抗コリン薬を投与しないことを提案する。 2B (弱い推奨,中程度のエビデンス) 推 奨
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かな部屋でベッドサイドに立つ状態で聞こえる,3=静かな部屋で患者から20フィート(およそ部屋のドアのあたり)の距離で聞こえる,とスコア化し,1 段階以上のスコア改善を「効果あり」と判定した。この試験は中間解析において,主要評価項目で両群間に統計学的有意差がないことが判明したため(アトロピン群: 37.8% vs プラセボ群:41.3%),早期中止された。Clark ら2)は,進行がん患者10 名をスコポラミン臭化水素酸群(スコポラミン臭化水素酸400 mg 皮下注)とオクトレオチド群(オクトレオチド200 mg 皮下注)に無作為に割り付けし,それぞれクロスオーバーさせ,喘鳴の程度を評価した。主要評価項目である各薬剤投与1 時間後の喘鳴の程度(none~very severe の5 段階評価で,1 段階以上改善があれば効果ありと評価)は,両群間で統計学的有意差は認められなかった(スコポラミン臭化水素酸群:20% vs オクトレオチド群:20%)。これらの研究では,有害事象に関して,意識障害や尿閉の新たな発生は認めず,観察期間中に抗コリン薬群で19%の死亡例が認められたが,対照群との統計学的有意差は認めなかった。 ** 以上から,これまでの研究では,抗コリン薬の投与によりがん患者の死前喘鳴を改善する明確な根拠は認めない。また,がん患者以外も対象とした死前喘鳴に対する抗コリン薬の効果を検討した3 件の系統的レビューでは,いずれも死前喘鳴を治療するために抗コリン薬を使用することを支持するエビデンスは乏しいと結論づけている4‒6)。ただし,いずれの研究でも,抗コリン薬投与により一定割合で死前喘鳴の強度は改善を示しており,有害事象も対照群と同等であったことから,個々の患者においては抗コリン薬投与により死前喘鳴が改善する場合がある可能性は残される。したがって,本ガイドラインでは,がん患者の死前喘鳴に対して,抗コリン薬の投与を行わないことを提案する。ただし,輸液の適正化や口腔ケアを行ったうえでも喘鳴が遷延し,家族の苦痛が強い場合には,抗コリン薬の投与を検討することは許容できると考える。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が1 件ある。Clark ら2)は,進行がん患者10 名を,オクトレオチド群(オクトレオチド200 mg 臨床疑問25 死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与することは,喘鳴を軽減するか? 死前喘鳴を有するがん患者に対してオクトレオチドを投与しないことを推奨する。 1C (強い推奨,弱いエビデンス) 推 奨III章推奨
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皮下注)とスコポラミン臭化水素酸群(スコポラミン臭化水素酸400 mg 皮下注)に無作為に割り付けし,それぞれクロスオーバーさせ,喘鳴の程度を評価した。主要評価項目である各薬剤投与1 時間後の喘鳴の程度(none~very severe の5 段階評価で,1 段階以上改善があれば効果ありと評価)は,両群間で統計学的有意差は認められなかった(スコポラミン臭化水素酸群:20% vs オクトレオチド群:20%)。この試験では,両群間において,重篤なものを含めて有害事象に統計学的有意差は認められなかった。 ** 以上から,これまでの研究では,オクトレオチドの投与により,がん患者の死前喘鳴が改善する明確な根拠は認めない。がん患者以外も対象とした死前喘鳴に対する複数の薬剤の効果を検討した系統的レビューにおいても,オクトレオチドの有効性について質の高いデータはない,と結論されている7)。また,オクトレオチドは薬価の高い薬剤であり,死前喘鳴に対する費用対効果を比較検討した報告は認められなかったものの,一般的に考えてその薬価に見合うだけの効果を示す根拠には乏しいと考えられる。したがって,本ガイドラインではがん患者の死前喘鳴に対して,オクトレオチドの投与は行わないことを推奨する。 解 説本臨床疑問に関する臨床研究としては,比較試験は存在せず,観察研究が1 件ある。Mercadante ら3)は,死前喘鳴に対して抗コリン薬やモルヒネ,デキサメタゾンなどの薬剤を投与したのち,鎮静下に喉頭鏡を用いて吸引を行ったことで,喘鳴が消失し,特に有害事象は認められなかった,という1 例の症例報告を行っている。 ** 以上から,これまでの研究は症例報告のみで,報告されている手技内容が一般化できるものではなく,喘鳴を改善する明確な根拠とはいえない。死前喘鳴に対する吸引の有害事象について示した報告も認められないものの,臨床的には吸引に伴う刺激による疼痛や不快感,出血や酸素飽和度の低下,嘔吐の誘発といった苦痛を生じる可能性がある。また,吸引を頻回に行うことで,患者や家族にも身体的・精神的苦痛を与える可能性があることが懸念される。したがって,本ガイドラインでは,専門家の合意により,がん患者の死前喘鳴に 臨床疑問26 死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引を実施することは,喘鳴を緩和するか? 死前喘鳴を有するがん患者に対して吸引は行わないことを提案する。 2D (弱い推奨,とても弱いエビデンス) 推 奨
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対して,吸引は行わないことを提案する。 (西 智弘,森 雅紀) 【文 献】臨床疑問24,25 1) Heisler M, Hamilton G, Abbott A, et al. Randomized double‒blind trial of sublingual atropine vs. placebo for the management of death rattle. J Pain Symptom Manage 2013; 45: 14‒22 2) Clark K, Currow DC, Agar M, et al. A pilot phaseII randomized, cross‒over, double‒blinded, controlled efficacy study of octreotide versus hyoscine hydrobromide for control of noisy breathing at the end‒of‒life. J Pain Palliat Care Pharmacother 2008; 22: 131‒8 臨床疑問26 3) Mercadante S, Villari P, Ferrera P. Refractory death rattle: deep aspiration facilitates the effects of antisecretory agents. J Pain Symptom Manage 2011; 41: 637‒9 【参考文献】臨床疑問24 4) Mercadamte S. Death rattle: critical review and research agenda. Support Care Cancer 2014; 22: 571‒5 5) Lokker ME, van Zuylen L, van der Rijt CC, et al. Prevalence, impact, and treatment of death rattle: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2014; 47: 105‒22 6) Wee B, Hillier R. Interventions for noisy breathing in patients near to death. Cochrane Data- base Syst Rev 2008(1): CD005177 臨床疑問25 7) Lokker ME, van Zuylen L, van der Rijt CC, et al. Prevalence, impact, and treatment of death rattle: a systematic review. J Pain Symptom Manage 2014; 47: 105‒22 III章推奨
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呼吸困難の効果的な緩和のためには,薬物療法および非薬物療法の併用が必要である1—4)。非薬物療法には,以下の項で述べる呼吸リハビリテーション(P111 参照),精神療法(P115 参照),リラクセーション(P117 参照)のほか,主に看護師が関わる非薬物療法・非侵襲的な介入として,呼吸法のトレーニング,送風,看護師によるフォローアッププログラム,身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントプログラム,ケアマネジメントなどがある3,4)。これらは呼吸困難を緩和し,患者の生活の質(QOL)に貢献する可能性があるが,多くは慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者など非がん患者を対象に効果を検証したものであり,がん患者を対象とするエビデンスは不十分である。しかし,呼吸困難に対する有効な介入の理解を深め,統合された効果的なケアの開発に向けて取り組むために,すでに明らかになっている科学的エビデンスを俯瞰することは重要である。この項では,主に看護師が関わるであろう非薬物療法・非侵襲的な介入について,看護ケアとして述べる。 浅速呼吸や肺過膨脹時などの呼吸パターンの変化は,呼吸困難の原因となる。呼吸パターンの変調へのアプローチについては複数報告されている。口すぼめ呼吸*は,気道内圧を上昇させ呼吸回数を減少させることにより,ガス交換を改善する。Garrod ら5)は,69 名のCOPD 患者を対象に,口すぼめ呼吸と通常呼吸のクロスオーバー試験を実施した。いずれも歩行テスト(shuttle walking test)の前後で,呼吸困難の強度(修正Borg スケール)と呼吸困難が回復するまでの所要時間を評価した。歩行テスト後,両群で呼吸困難の強度は統計学的有意差を認めなかったが,呼吸困難が回復するまでの所要時間の平均値は,口すぼめ呼吸群のほうが統計学的に有意に短かった。Hochstetter ら6)は,30 名の心・肺疾患患者を無作為に2 群に割り付け,介入群(n=15)に対し,45 分間の呼吸法のトレーニング(口すぼめ呼吸,腹式呼吸,呼気時に動作を同調すること,体位の工夫および歩行や階段を登る時のペース配分の指導)を提供した。トレーニング初日と3 日目において,階段昇降時の呼吸困難を修正Borg スケールで評価した。3 日目の階段を昇り切った時および階段を下り切った時において,介入群の呼吸困難は統計学的に有意に低かった。Wu ら7)は,呼吸法のトレーニングが患者のQOL(呼吸困難を含む)および日常生活動作に与える効果を検証するために,30 名のCOPD 患者を2 群に割り付けた。介入群(n=20)は,1 日3 回,1 回15 分の呼吸法のトレーニング(呼吸困難時のパニックへの対処方法:5 分,口すぼめ呼吸:5 分,腹式呼吸:5 分)を2 週間受け,対照群は通常ケアを受けた。3 カ月後の呼吸困難(VAS)は,介入群において統計学的に有意に低かった。上記の報告により,口すぼめ呼吸,腹式呼吸,体位の工夫,パニックへの対処法 看護ケア1 1.呼吸法のトレーニング *:口すぼめ呼吸呼気に際して口をすぼめ,ゆっくり吐き出す呼吸法。気道内圧が高まり,末梢気道が虚脱しにくくなることで呼吸困難が改善する。
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などの呼吸法のトレーニングは,患者の呼吸困難の軽減に有効であることが示唆された。また,口すぼめ呼吸のみでは,呼吸困難の軽減には効果がなかったが,呼吸の回復までの所要時間の短縮には効果があることが示唆された。Bauseweinら3)は,系統的レビューにおいて,呼吸困難に対するこれらの呼吸法トレーニングのエビデンスレベルを中程度と分類している。しかし,いずれもCOPD 患者を対象とした研究報告であり,がん患者の呼吸困難に対する呼吸法トレーニングの有効性は,いまだ検証されていない。 Baltzan ら8)は,重症COPD 患者17 名を対象に,歩行中の顔への送風が呼吸困難の軽減に効果があるかどうかを検証するクロスオーバー試験を実施した。酸素飽和度が90%以上を維持するように経鼻で酸素吸入をしながらのトレッドミルテスト(コントロール)と,酸素供給に加えて顔に送風しながらのトレッドミルテスト(介入)のセットを3 日間実施し,VAS と修正Borg スケールを用いて呼吸困難を評価した。結果として,治療効果の統計学的有意差はみられなかった。Galbraith ら9)は,COPD,肺がん,喘息,心疾患の患者49 名を対象に,携帯型の扇風機(ファン)を顔に向けての5 分間歩行(介入)と,手持ちの扇風機を足に向けての5 分間歩行(コントロール)を10 分の間隔をおいて実施した。顔と足の順でそれぞれ,クロスオーバー試験を実施した。それぞれの歩行の前後で呼吸困難をVAS で評価したところ,顔に送風した群は呼吸困難が統計学的に有意に低かった。したがって,扇風機(ファン),うちわなどで顔に送風する方法は,呼吸困難を軽減する簡便な手段であり,自宅療養においても実践的かつ経済的で簡単な方法であることが示唆される。しかし,これらの報告は主にCOPD 患者を対象としたものであり,がん患者への効果は明らかではない。また,健常者を対象に顔に冷気を当てる方法が,呼吸困難の軽減に有効であることが報告されている10)。「風を感じることは,爽快感にはつながった」という患者コメントが多かったことからも9),呼吸困難のある患者の環境整備を行う際に,温度を低めに設定し,扇風機やうちわなどで顔に送風するなどのケアの工夫は有効である可能性がある。 Moore ら11)は,看護師による肺がん患者へのフォローアップの効果を明らかにするために,初期治療を終え,余命3 カ月以上と推測される肺がん患者を無作為に2群に割り付けた。介入群(n=100)に対し,肺がんのケアを専門とする看護師が以下のプログラムに沿ってフォローアップを行った。1電話または看護外来でのアセスメントを初回受診から2 週間後に行い,その後患者の状態が落ち着いていれば4週毎に,病状の進行や重篤な合併症に関するアセスメントを実施する,2専門看護師や看護外来への連絡は無料でできるようにし,緊急時にも対応できる体制とする,3必要な医療福祉資源を整え,情報を提供し,療養にあたっての支援を提供する,4一般開業医と地域医療福祉者たちとの迅速かつ包括的なコミュニケーション 2.送 風 3.看護師によるフォローアッププログラムIV章非薬物療法
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を強化する。対照群(n=103)には従来どおりの医療が提供された。EORTC QLQ (C30 とLC13)を用いて評価したところ,3 カ月後,12 カ月後における介入群の呼吸困難は統計学的に有意に減少した。したがって,看護師による肺がん患者のフォローアッププログラムは,呼吸困難の改善に貢献する可能性が示唆された。なお,このほか,ステージII以上の男性肺がん患者を,1がん専門ホームケアプログラム:進行がん患者のケアに関するトレーニングを受けた看護師によって提供,2標準的な在宅ケアプログラム:多職種によるホームケアプログラム,3外来プログラム:対照群(外来医師による通常のフォローアップ)の3 群に無作為に割り付け,効果を比較検討した報告があるが12),全般的な症状による苦痛を評価指標としており,呼吸困難に特化したものではない。また,進行肺がん患者の苦痛症状の構造的,系統的なアセスメントプロトコル利用の効果を評価したが,この報告でも全般的な症状を評価しており,呼吸困難に関する記述はなかった13)。 Corner ら14)は,身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントの効果を明らかにするために,化学療法・放射線治療後の肺がん患者34 名を対象とする無作為化比較試験を実施した。介入群(n=11)は,1カウンセリング,2呼吸法のトレーニング,3リラクセーションの方法に関する指導,4コーピング*方法の指導,の組み合わせからなる1 時間の複合的なプログラムに3~6 回参加した。対照群には,呼吸困難に関する詳細なアセスメントと呼吸困難に関する質問への回答のみ提供され,呼吸法のトレーニングやカウンセングは実施されなかった。VASを用いて,ベースライン,4 週目,12 週目の呼吸困難および呼吸困難による苦痛が評価された。4 週目,12 週目における呼吸困難(最も症状が強い時)のVAS および呼吸困難による苦痛(最も症状が強い時)のVAS は介入群において統計学的に有意な改善がみられた。この結果から,身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントプログラムは,呼吸困難および呼吸困難による苦痛の軽減に対して有効である可能性が示唆された。さらにBredin ら15)は,6 病院119 名の肺がん患者(小細胞肺がん,非小細胞肺がん,悪性胸膜中皮腫)を2 群に割り付け,介入群の患者は,外来に通院し(週1 回× 8 週間),看護師による身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントのプログラムを受けた。具体的には,1呼吸困難および,症状を悪化または改善する要素に関する詳細なアセスメント,2患者・家族に対する呼吸困難への対処方法のアドバイスとサポート,3呼吸困難や疾患がもたらす影響,今後の生活に対する患者の思いの探索,4呼吸法のトレーニング,リラクセーション法および気分転換のためのエクササイズの指導,5社会復帰支援,呼吸困難に対処するための方法やゴールの設定,6治療が有効とされる病態の早期発見である。対照群の患者は通常のケアを受けた。呼吸困難はVAS により,ベースライン,4 週間,8 週間の時点で測定された。8 週間後の呼吸困難は,介入群において統計学的に有意な改善がみられた。上記の2 つの報告から,呼吸困難に関する詳細なアセスメント,カウンセリング,患者・家族へのコーピング教育,呼吸法のトレーニング,リラクセーション法およ 4.身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントプログラム *:コーピングストレスに対応することを目的とした行動や考え方。がんの診断などがストレスとなる。
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び気分転換のためのエクササイズの指導など身体的・精神的側面のサポートを統合した呼吸困難マネジメントは,肺がん患者の呼吸困難に対する対処能力を高め,また呼吸困難による身体的・心理的な苦痛を軽減することが示唆される。 Rabow ら16)は,重症もしくは予測される生命予後が1~5 年の外来患者90 名(がん30 名,COPD 29 名,心不全31 名)を無作為に2 群に割り付け,介入群(n=50)には,緩和ケアチームによる包括的なケアマネジメント(医療ソーシャルワーカー,看護師,チャプレン*,薬剤師,心理士,アートセラピスト,ボランティアコーディネーター,3 人の医師によるコンサルテーションやグループサポート)を実施した。対照群(n=40)には,通常ケアが提供された。評価は,6 カ月後,12 カ月後における呼吸困難が日常生活動作に及ぼす支障〔University of California St. Diego Shortness of Breath Questionnaire;UCSD—SOB dyspnoea interfering score(0~ 105)〕を測定した。その結果,介入群の呼吸困難による日常生活動作の支障は統計学的に有意に低かった。Egan ら17)は,66 名の入院中のCOPD 患者を無作為に2 群に割り付け,介入群(n=33)に対して,呼吸器疾患の卒後教育を受けた看護師がケアを立案して提供する包括的看護アセスメント(入院中のケアコーディネート,退院支援の一環としてのケースカンファレンスの開催,退院後1 週目と6 週目のフォローアップケアの提供)を提供した。対照群(n=33)には通常ケアを提供した。両群ともベースラインと退院1 カ月後,退院3 カ月後における呼吸困難の強度(St. George’s Respiratory Questionnaire の症状サブスケール)の平均値の変化で評価した。その結果,ベースラインと退院1 カ月後,ベースラインと3 カ月後の比較では,両群に統計学的有意差がみられたが,退院1 カ月後と3 カ月後の比較では統計学的有意差はなかった。Egan らの看護師による介入は,院内の治療に依存し,効果は一時的なものである可能性が高いが,Rabow の多職種チームによるケアマネジメントは,呼吸困難に対して長期的な効果が示唆される。しかし上記2 つの報告は,多くの対象が呼吸器・心疾患の患者であり,がん患者へのケアマネジメントの効果は検証されていない。 冒頭でも述べたように,呼吸困難に関する看護ケアの多くは,COPD 患者など非がん患者を対象に効果を検証したものであり,がん患者を対象とするエビデンスは不十分である。がんとCOPD では呼吸困難の発生のメカニズムが異なることからも,今後はがん患者を対象として,これらの看護ケアの有効性を検証していく必要がある。またエビデンスを俯瞰すると,身体的・精神的側面のサポートを統合したマネジメントが看護ケアのなかでも重要であることが示唆される。患者の呼吸困難に対する対処能力を高め,呼吸困難による身体的・心理的な苦痛を軽減するための効果的な看護ケアの開発が求められる。 (山岸暁美,小迫冨美恵,高橋美賀子,長谷川久巳,畑 千秋,田中桂子) 5.ケアマネジメント *:チャプレン軍隊,学校,病院,刑務所といった施設や組織で働く聖職者。 6.まとめIV章非薬物療法
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【文 献】1) National Comprehensive Cancer Network. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Palliative Care(version 1. 2009) http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/palliative.pdf 2) Dy SM, Lorenz KA, Naeim A, et al. Evidence—based recommendations for cancer fatigue, anorexia, depression, and dyspnea. J Clin Oncol 2008; 26: 3886—95 3) Bausewein C, Booth S, Gysels M, Higginson IJ. Non—pharmacological interventions for breathlessness in advanced stages of malignant and non—malignant diseases. Cochrane Database Syst Rev 2008(2): CD005623 4) Solà I, Thompson EM, Subirana Casacuberta M, et al. Non—invasive interventions for improving well—being and quality of life in patients with lung cancer. Cochrane Database Syst Rev 2004(4): CD004282 5) Garrod R, Dallimore K, Cook J, et al. An evaluation of the acute impact of pursed lips breathing on walking distance in nonspontaneous pursed lips breathing chronic obstructive pulmonary disease patients. Chron Respir Dis 2005; 2: 67—72 6) Hochstetter JK, Lewis J, Soares—Smith L. An investigation into the immediate impact of breathlessness management on the breathless patient: randomised controlled trial. Physiotherapy 2005; 91: 178—85 7) Wu X, Hou L, Bai W. Effects of breathing training on quality of life and activities of daily living in elderly patients with stable severe chronic obstructive pulmonary disease. Chinese Journal of Rehabilitation Medicine 2006; 21: 307—10 8) Baltzan MA, Alter A, Rotaple M, et al. Fan to palliate exercise—induced dyspnea with severe COPD. Am J Respir Crit Care Med 2000; 161(3 Suppl): A59 9) Galbraith S, Perkins P, Lynch A, Booth S. Does the use of a handheld fan improve chronic dyspnea? A randomized, controlled, crossover trial. J Pain Symptom Manage 2010; 39: 831— 8 10) Schwartzstein RM, Lahive K, Pope A, et al. Cold facial stimulation reduces breathlessness induced in normal subjects. Am Rev Respir Dis 1987; 136: 58—61 11) Moore S, Corner J, Haviland J, et al. Nurse led follow up and conventional medical follow up in management of patients with lung cancer: randomised trial. BMJ 2002; 325: 1145 12) McCorkle R, Benoliel JQ, Donaldson G, et al. A randomized clinical trial of home nursing care for lung cancer patients. Cancer 1989; 64: 1375—82 13) Sarna L. Effectiveness of structured nursing assessment of symptom distress in advanced lung cancer. Oncol Nurs Forum 1998; 25: 1041—8 14) Corner J, Plant H, A’Hern R, Bailey C. Non—pharmacological intervention for breathlessness in lung cancer. Palliat Med 1996; 10: 299—305 15) Bredin M, Corner J, Krishnasamy M, et al. Multicentre randomised controlled trial of nursing intervention for breathlessness in patients with lung cancer. BMJ 1999; 318: 901—4 16) Rabow MW, Dibble SL, Pantilat SZ, McPhee SJ. The comprehensive care team: a controlled trial of outpatient palliative medicine consultation. Arch Intern Med 2004; 164: 83—91 17) Egan E, Clavarino A, Burridge L, et al. A randomized control trial of nursing—based case man- agement for patients with chronic obstructive pulmonary disease. Lippincotts Case Manag 2002; 7: 170—9
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一般に,呼吸リハビリテーションの目的は,1呼吸機能障害による,労作時の呼吸困難の緩和,2呼吸困難による日常生活動作低下の改善,3気道感染などによる急性増悪の予防である。 呼吸リハビリテーションの対象は,標準的治療により病態が安定しており,症状(呼吸困難)と機能的制限がある慢性呼吸器疾患患者が中心であり,なかでも慢性閉塞性肺疾患(COPD)が最もよい適応である1)。現在の,呼吸リハビリテーションの有効性に関するエビデンスの多くは,COPD を対象としたものである。このCOPDを対象とした呼吸リハビリテーションは他の慢性呼吸器疾患,例えば間質性肺疾患,囊胞性線維症,気管支拡張症,胸郭変形といった疾患にも適用できる2)。呼吸困難の程度としてMRC(Medical Research Council)スケール*,Grade 3~ 5(中等度以上)の患者に呼吸リハビリテーションの適応があり,効果が期待できるとされる3)。また,運動療法を行ううえで支障となる運動器および神経疾患,精神疾患や不安定な循環器疾患などの合併した患者には呼吸リハビリテーションの適応はないと考えられる1)。 呼吸リハビリテーションのプログラムには,禁煙指導,患者教育,栄養指導,運動療法などが含まれる4)。[教育・指導] 疾患の自己管理,禁煙,薬物療法,感染症予防,栄養・食事療法などについての教育を指導する。[運動療法・呼吸理学療法] 持久力トレーニングおよび筋力トレーニング(運動療法),呼吸法のトレーニング,リラクセーション,排痰法など(理学療法)を行う。運動療法は,骨格筋の代謝機能の改善を通して,運動時の筋内乳酸産生を抑制し,それによって労作時の換気需要の低減をもたらし呼吸困難を有意に軽減する5)。さらに運動耐容能の改善,生活の質(QOL)の向上が期待でき,その効果の大きさ,エビデンスの強さから呼吸リハビリテーションの最も基本的な手段に位置づけられている1)。呼吸理学療法は,呼吸法のトレーニング,リラクセーション,排痰法などの手段を単独あるいは組み合わせて適用することにより,呼吸困難の軽減を図るとともに,身体活動の拡大や運動療法の導入を容易にすることが主な役割である。 呼吸リハビリテーション2 1.呼吸リハビリテーションの目的1) 2.対 象1) *:MRC スケール現在は修正MRC スケールが使用されている。P31 参照。 3.呼吸リハビリテーションの構成要素IV章非薬物療法
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呼吸リハビリテーションの考え方がん患者に対する呼吸リハビリテーションの役割は,現時点で十分に明らかにされているとはいえない。これまでの研究では,対象患者は主に病状が進行した慢性呼吸器疾患患者と,周術期のがん患者である。前者の場合,海外のガイドライン2)では適切な患者選択と,適切かつ現実的なリハビリテーションの目標が設定されていれば,患者にとっての利益は大きいであろうと述べている。これまでの呼吸リハビリテーションに関する研究の多くは,歩行して通院できる外来患者を対象しており,すべての患者にあてはまるとはいえず,研究結果の解釈には注意が必要である。例えば,頻回の入退院や長期入院のがん患者は,活動性低下と呼吸困難の悪化を来しやすく6),呼吸リハビリテーションの適応となる。しかし,このような患者の呼吸リハビリテーションに関する研究は少なく,現時点では全身状態の悪化したがん患者に対する適切なリハビリテーションの方法は,十分に検討されていない。がん患者の呼吸リハビリテーションに関する報告の多くは,周術期において検討されている。通常は,術後の呼吸器合併症の発症率や離床までの期間,ICU 在室あるいは入院期間などをアウトカムとして術後短期間の治療成績を検討している場合が多く,QOL の向上を主目的にした研究はまだ少ない。 運動療法がん患者においても,冒頭で述べたような目的で運動療法を主体とした呼吸リハビリテーションを適用することができる。歩行や自転車エルゴメータといった有酸素運動による運動療法は運動耐容能を増大させること7),呼吸法のトレーニングやリラクセーションを併用した運動療法は呼吸困難や疲労,痛みの緩和,運動耐容能およびHRQoL(health—related QOL:健康関連QOL)の改善6)が報告されている。Morris ら7)は,呼吸困難に伴う運動耐容能低下を来しているがん患者30名を対象に,外来での呼吸リハビリテーションの効果を後ろ向きに検討している。トレッドミルや自転車エルゴメータによる持久力トレーニングを中心とした運動療法,患者教育,心理・社会的サポートから構成された週2~3 回,8~12 週間のプログラムを施行し,導入前後で6 分間歩行試験*を行い,6 分間歩行距離(6—minute walk distance;6MWD)および6 分間歩行仕事量(6—minute walk work;6MWW:body mass×6MWD)によって効果判定を行った。その結果,呼吸困難の統計学的に有意な変化はなく6MWD および6MWW の増大を認め,有害事象はなかった。がん患者にとって外来呼吸リハビリテーションは安全で効果的であることが示された。Ozalevli ら6)は,Stage IIIB およびIVの入院肺がん患者18 名(男性15 名)に対して,呼吸調整および呼吸法のトレーニング,リラクセーション,運動療法(上下肢の自動運動と筋力トレーニング,電気刺激による筋力トレーニング)を対象者個別のニーズにあわせて施行し,痛みVAS(0~100),肺機能検査,6 分間歩行試験, Karnofsky performance status(KPS),HRQoL,Nottingham health profile(NHP)を介入前後で評価した。その結果,呼吸困難,疲労感および痛みの緩和,NHP にお 4.がん患者に対する呼吸リハビリテーション1 2 *:6 分間歩行試験平坦な屋内の歩行路を6 分間でどのくらいたくさん歩行できるかを評価する運動負荷試験。
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けるサブカテゴリー(身体運動性,痛み,エネルギー,感情および睡眠状態)の改善と6MWD の延長が統計学的に有意に認められた。しかしながら,肺機能やKPSにおいては統計学的に有意な変化はみられなかった。本介入は進行肺がん患者の呼吸器症状および痛み,HRQoL,運動耐容能の改善に有益であると結論している。特に,患者の個別性を重視した点が有用であったとされ,肺がん患者の治療の一つとして位置づけるべきであると結論している。以上より,がん患者においてさまざまな運動療法が試みられているが,現時点においては,実施可能性の高い標準的な介入は開発されていない。全身状態が良好な症例では,運動療法の効果が期待できる可能性が示唆されているが,がん患者に高頻度に合併する全身倦怠感や易疲労感などの症状に十分配慮するとともに,病的骨折を来しうる骨転移などにも十分なリスク管理が必要である。 呼吸理学療法呼吸法のトレーニング(P106,IV章—1 看護ケア参照)やリラクセーション(P117,IV章—4 リラクセーション参照)などの呼吸理学療法は,がん患者において症状緩和に役立つ重要な手段であるが,単独の効果について検討した報告はなく,その有効性は証明されていない。進行がんおよび非がん患者(COPD,間質性肺疾患,慢性心不全,運動ニューロン疾患)に対する呼吸法のトレーニングやリラクセーションなどの呼吸理学療法を含む非薬物療法が呼吸困難の軽減に及ぼす影響について,47 の無作為化比較試験(2,532 名)を対象にした系統的レビュー8)では,神経筋電気刺激(neuromusucular electrical stimulation;NMES*1,3 件),胸壁への振動刺激(chest wall vibration; CWV*2,5 件),歩行器の使用(7 件),呼吸法のトレーニング(3 件)が有効であることが示された。呼吸法のトレーニングは呼気時に口をすぼめながらゆっくりとはき出す口すぼめ呼吸によって,呼吸数の減少と1 回換気量の増大による換気効率の改善が示されており,理論的には進行がん患者群にも有効である可能性がある。しかし,これらの研究はほとんどがCOPD を対象としたものであり,がん患者に関するものは限られていた。以上より,がん患者においてさまざまな理学療法や介入法が試みられているが,現時点で推奨しうる呼吸理学療法プログラムは存在しない。NMES,CWV,歩行器の使用,呼吸法のトレーニングは,進行がん患者における呼吸困難の軽減に有用な介入手段である可能性が示唆される。今後,がん患者における各介入の有効性の確認,適応の明確化や方法の標準化が必要である。 (神津 玲,安部能成,田中桂子) 【文 献】1) Nici L, Donner C, Wouters E, et al; ATS/ERS Pulmonary Rehabilitation Writing Committee. American Thoracic Society/European Respiratory Society statement on pulmonary rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med 2006; 173: 1390—413 2) Ries AL, Bauldoff GS, Carlin BW, et al. Pulmonary Rehabilitation: Joint ACCP/AACVPR Evidence—Based Clinical Practice Guidelines. Chest 2007; 131(5 Suppl): 4S—42S 3) British Thoracic Society Standards of Care Subcommittee on Pulmonary Rehabilitation. Pul- 3 *1:NMES NMES は下肢筋群(主に大腿四頭筋)への電気刺激によって他動的に筋収縮を引き起こし,筋力の増強を試みる方法である。 *2:CWV CWV は傍胸骨部に吸気相に一致させて100 Hz 程度の振動刺激を加えることで呼吸困難の軽減を試みる方法である。IV章非薬物療法
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monary rehabilitation. Thorax 2001; 56: 827—34 4) 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリテーション委員会,日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会,日本呼吸器学会ガイドライン施行管理委員会,日本理学療法士協会呼吸リハビリテーションガイドライン作成委員会 編.呼吸リハビリテーションマニュアル―患者教育の考え方と実践,東京,照林社,2007 5) Casaburi R, Patessio A, Ioli F, et al. Reductions in exercise lactic acidosis and ventilation as a result of exercise training in patients with obstructive lung disease. Am Rev Respir Dis 1991; 143: 9—18 6) Ozalevli S, Ilgin D, Kul Karaali H, et al. The effect of in—patient chest physiotherapy in lung cancer patients. Support Care Cancer 2010; 18: 351—8 7) Morris GS, Gallagher GH, Baxter MF, et al. Pulmonary rehabilitation improves functional status in oncology patients. Arch Phys Med Rehabil 2009; 90: 837—41 8) Bausewein C, Booth S, Gysels M, Higginson IJ. Non—pharmacological interventions for breath- lessness in advanced stages of malignant and non—malignant diseases. Cochrane Database Syst Rev 2008(2): CD005623
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観察研究において,呼吸困難と不安などの精神症状との関連が指摘されている。本項では,精神療法が呼吸困難の軽減に有効であるかについて概説する。 系統的レビューによると,がん患者の呼吸困難に対する精神療法の有用性を検討した無作為化比較試験は存在しない。ただし,慢性閉塞性肺疾患(COPD)における呼吸困難に対する精神療法の有用性を検討した研究として,以下の2 つがある1)。Rosser ら2)は,COPD を有する65 名の患者を,8 週間かけて施行する3 種類の精神療法(精神力動的精神療法*1,支持的精神療法*2,看護ケア)のいずれか,あるいは対照群(1 週間ごとに採血のみを行う)の計4 群に無作為に割り付け,介入終了後,6 カ月後にVAS(呼吸困難,抑うつ,不安)とFletcher scale(Hugh—Jonesの分類:耐運動能),GHQ*3(精神疾患の有無)を用いて評価を行った。その結果,すべての群で治療終了後に呼吸困難の改善を認めたが,看護ケア群でのみ,その効果は6 カ月後にも持続していた。精神症状は支持的精神療法群で改善したが,精神力動的精神療法群では改善しなかった。本研究では,症例数の計算などが行われておらず,症例数の不足のために効果が見出せなかった可能性がある。また,無作為割付も不適切で,対照群で抑うつ,不安が強かったという背景の相違があった。また著者らは,呼吸困難があるとはいえ不安についての治療を求めていない患者に,心理学的介入を提供することの妥当性に疑問を呈している。Eiser ら3)は,COPD を有する患者群において,グループ認知行動療法*4 が不安を軽減し,ひいては呼吸困難を改善するかどうかを調査した。16 名の安定したCOPD患者を,無作為化を行わずに,介入群に10 名,対照群に6 名を振り分けた。介入群は,5~6 名を1 グループとして,精神科医による1 回90 分のグループ認知行動療法を毎週計6 回行った。対照群では,呼吸機能検査を6 週間にわたって毎週行った。評価は第1 日目,介入終了後1 週目,12 週目に,VAS(6 分間歩行試験後の呼吸困難),MRC スケール*5(呼吸困難による支障の程度),SGRQ*6(呼吸器疾患による健康状態やQOL への影響)を用いて行った。その結果,対照群においてはすべての生理学的検査,心理学的スコアの変化を認めなかったが,介入群においては6 分間歩行距離が,介入終了後1 週目において有意に改善し,この効果は12 週目にも認められた。しかし主観的な抑うつ,不安,呼吸困難には全く改善を認めなかった。本研究についても,症例数が不足していること,無作為化を行っていないこと,その他多くの研究デザイン上の問題がある。レビューにおいては,精神療法に関するカテゴリーには,これらの2 研究しか含まれなかったため,エビデンスの強さは算出されなかった1)。 精神療法3 1.呼吸困難に対する精神療法*1:精神力動的精神療法洞察的精神療法の一種。患者の有する葛藤を明らかにし,転移感情の解釈を行ったり,精神療法中に生じた感情と幼少時に経験した感情を結び付けて過去の問題を治療関係のなかで扱うことで解決するといった手法を用いて治療を行う。一般的には年単位にわたって長期に行うことが定型とされるが,Rosser らは,それを身体疾患がある患者に提供するため,短期間のプログラムとして実施した。 *2:支持的精神療法患者と信頼関係を構築するなかで,感情表出の促進をしつつ,それを傾聴,受容,共感といった技術を用いて患者を支えることを中心とした精神療法。洞察的精神療法などと比較すると,患者に変化を迫るよりもむしろ現在の患者を肯定的に受け止め,現在有している能力を強化するといった点に特徴がある。精神力動的精神療法のなかで転移解釈を行わないものを支持的精神療法と定義している。 *3:GHQ(General Health Questionnaire)精神障害のスクリーニングを目的として開発された,30項目の自記式質問票。 *4:グループ認知行動療法認知行動療法とは,患者が直面している問題に関連する不適応な認知および行動のパターンに焦点をあて,治療者との精神療法的交流や行動実践などを通して適応的な認知・行動を学習することで,精神的苦痛を軽減する治療法である。グループ認知行動療法とは,複数の患者を対象とし,1 つの構造のなかで本治療方法を提供することをいう。Eiser らは,身体症状や病気が心理的側面に与える影響がどのように生活に影響を与えているかを話し合うなかで,不安やそのコントロールについて理解を深めるような治療を行った。また,呼吸法や筋弛緩法などのリラクセーション法も施行した。 *5:MRC スケール現在は修正MRC スケールが使用されている。P31 参照。 *6:SGRQ(St George’s Respiratory Questionnaire)呼吸器疾患による健康状態やQOL への影響を評価する, 50 項目の自記式質問票。IV章非薬物療法
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がん患者を対象とする横断的観察研究などにおいて,不安と呼吸困難との関連が示されているが,その因果関係は依然明らかになっているとは言い難い。よってがん患者の呼吸困難の治療にあたっては,まずは身体的側面からの対応が優先されるべきであると思われる。不安によって呼吸困難が増強しているように観察される患者に対しては,不安などの精神的負担の軽減を目的に精神療法を行い,副次的に呼吸困難の改善を目的とする場合があるかもしれない。しかしその場合にも,Rosser らが指摘するように患者自身の精神療法を受けたいという意向が重要となるのはいうまでもない2)。また終末期であれば,呼吸困難のために長時間にわたる会話が困難となり,精神療法の適応となりにくいことも留意するべきである1)。 (奥山 徹,山口 崇) 【文 献】1) Bausewein C, Booth S, Gysels M, Higginson IJ. Non—pharmacological interventions for breathlessness in advanced stages of malignant and non—malignant diseases. Cochrane Database Syst Rev 2008(2): CD005623 2) Rosser R, Denford J, Heslop A, et al. Breathlessness and psychiatric morbidity in chronic bronchitis and emphysema: a study of psychotherapeutic management. Psychol Med 1983; 13: 93—110 3) Eiser N, West C, Evans S, et al. Effects of psychotherapy in moderately severe COPD: a pilot study. Eur Respir J 1997; 10: 1581—4 2.まとめ
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がんによる心身の苦痛症状に対し,リラクセーションなどの非薬物療法は,非侵襲的かつ効果が期待できる介入方法として,関心が集まりつつある。昨今では,無作為化比較試験を含め,その有用性を検討する臨床研究が少しずつ増えてきている。この項では,リラクセーションに関する知見を概説する。 系統的レビュー1)によると,がん患者の呼吸困難に対する看護師によるカウンセリングと呼吸法およびリラクセーション法のトレーニングを提供した,いわゆる複合的介入方法の有用性を検討した無作為化比較試験の研究が2 つ取り上げられている。Corner ら2)は,肺がん患者34 名を19 名の介入群と15 名の対照群に無作為に割り付け,介入群に対しては,看護師によるカウンセリング,呼吸法の再訓練,リラクセーション法,コーピングスキルの指導からなる週1 回1 時間のセッションを3~6回と,その後患者の希望に応じてのフォローアップセッションを実施し,呼吸困難とそれによる苦痛をVAS により評価した。その結果,介入群に中等度の改善(呼吸困難によるつらさが53%,最悪時の呼吸困難が35%,呼吸機能能力が21%,それぞれ改善したが不安や抑うつには変化なし)がみられた一方で,対照群では同時期に現状維持あるいは増悪がみられた。よって,この介入方法は肺がん患者に対して有効と結論づけている。Bredin ら3)は,悪性胸膜中皮腫,非小細胞肺がん,小細胞肺がんの患者計119 名を介入群と対照群に無作為に割り付け,介入群には専門看護師による呼吸困難のアセスメントと対応へのアドバイス+カウンセリング+呼吸法+リラクセーション法のトレーニングを8 週間実施し,対照群に対しては同じ期間標準的な呼吸困難への治療法とマネジメントを実施した。その評価は介入前,4 週間後,8 週間後にVAS (呼吸困難の程度とそのつらさ),WHO のperformance status(PS),ロッテルダム症状チェックリスト,およびhospital anxiety and depression scale(HADS:不安・抑うつ評価スケール)を用いて行った。その結果,介入群では呼吸困難,抑うつ,(呼吸困難や消化器症状などを含む)身体症状によるつらさが有意に改善し,不安と呼吸困難によるつらさはわずかに改善した。看護師が提供する心理社会的サポートと呼吸法の指導およびコーピング法指導,そしてリラクセーションなどを含む複合的な介入は,がん患者の呼吸困難に対して有益であり,推奨すべきと結論している(P108~109 も参照)。 系統的レビューには,呼吸困難に対してイメージ療法(guided imagery),漸進的 リラクセーション4 1.リラクセーション法を含む複合的介入方法 2.単独介入としてのリラクセーション法IV章非薬物療法
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筋弛緩法(progressive muscle relaxation training;PMRT)など,単独でリラクセーション法が用いられた介入研究でがん患者を対象としたものはないが,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象とした研究が3 つと心不全患者を対象とした研究が1 つある1)。 イメージ療法Louie4)は,COPD 患者26 名を介入群13 名と対照群13 名に無作為に割り付け,介入群に対しては,心地よいイメージの想起や腹式呼吸を指示したリラクセーションテープをヘッドフォンで聴くというセッションを7 回行い,修正Borg スケールによる呼吸困難の評価と身体所見のパラメーター(酸素飽和度,心拍数,上胸部筋電図,皮膚伝導率,末梢皮膚温度)の変化をみた。その結果,介入群で酸素飽和度にのみ統計学的に有意な改善効果がみられたが,その他のパラメーターは2 つのグループの間で統計学的有意差を認めなかった。 漸進的筋弛緩法Renfroe5)は,COPD 患者を対象に7 名の介入群と7 名の対照群とに分け,介入群に対しては,16 の筋肉群に分けたPMRT セッション(規則的な呼吸に合わせて,足から顔まで順番に各群の筋肉の緊張と弛緩を繰り返していく)を週1 回45 分間行った後,4 週間にわたり同セッションを録音したテープを用いて毎日自宅で個々に練習をさせた。介入効果は,VAS を用いて呼吸困難を評価し,state—trait anxiety inventory(STAI)を用いて不安を評価した。加えて,心拍数,呼吸数,努力肺活量(forced vital capacity;FVC)*,1 秒間の呼出量も測定した。その結果,PMRT介入群には,介入中の呼吸困難,不安,呼吸数および心拍数のいずれも軽減したが, 4 週間の介入終了後の評価では呼吸数の減少のみが示された。Gift ら6)は,26 名のCOPD 患者を対象に,PMRT セッションによるリラクセーション法の指示を録音したテープを用いた介入群と,ただ静かに座っているよう指示された対照群とに無作為に割り付け,週1 回のセッションを計4 回行い,皮膚温度,心拍数,呼吸数,不安,呼吸困難,気道閉塞のパラメータを介入前後で評価した。その結果,呼吸困難,不安,気道閉塞のいずれもが介入群で軽減した。またYu ら7)は,心不全患者158 名を対象にベースラインアセスメント(介入前評価)を行った後,介入群と対照群に無作為に割り付け,介入群に対しては週1 回のPMRT セッションを2 回,4 週目に電話によるフォローアップ,6 週目にPMRT スキルの復習セッション,8 週目に初回の介入後評価アセスメント,その後10 週目と12 週目に電話によるフォローアップ,14 週目に2 回目の介入後評価を行った。対照群には,介入群と同じタイミングで2週間ごとの電話によるフォローアップを行い,介入群同様8 週目と14 週目に評価を行った。介入効果は,HADS および慢性心不全質問票(chronic heart failure questionnaire;CHQ)の呼吸困難と倦怠感のサブスケール,およびMOS ソーシャルサポート調査票(medical outcomes study social support survey;MOS—SSS)を用いて評価した。その結果,不安・抑うつについては介入群に中等度の効果が認められたが,呼吸困難や倦怠感といった身体症状の改善においては統計学的に有意な効果はみられなかった。上記の研究において,不安など心理的な苦痛症状,不安により惹起される可能性 1 2 *:努力肺活量(forced vital capacity;FVC)通常のVC が緩徐な呼気で測定したものであるのに対し,最大吸気位から最大努力の呼出をして得られるVC をFVCと呼ぶ。健常者では,測定値はVC とほぼ同じ値をとる。
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のある身体症状(心拍数,皮膚温度,酸素飽和度),呼吸困難などを評価対象として,効果を認めた介入もみられた。しかし,対象となる患者の背景がそれぞれ異なること,また質の高い研究が少ないことから,こうしたリラクセーション介入効果のエビデンスの強さの算出は保留されている。また,スキル習得を目的として患者に毎日の練習を求めるPMRT のような介入方法の場合,練習を通じての患者のスキル習得度が介入効果に影響すると思われるが,その長期的効果は不確定である。 過去の研究の多くがCOPD 患者など非がん患者対象であり,また,それぞれの介入方法ごとに特定の対象患者が定められているため,どの介入方法がどのような患者に対して最も有効であるかということは現時点で不明である。 (栗原幸江,山口 崇) 【文 献】1) Bausewein C, Booth S, Gysels M, Higginson IJ. Non—pharmacological interventions for breathlessness in advanced stages of malignant and non—malignant diseases. Cochrane Database Syst Rev 2008(2): CD005623 2) Corner J, Plant H, A’Hern R, et al. Non—pharmacological intervention for breathlessness in lung cancer. Palliat Med 1996; 10: 299—305 3) Bredin M, Corner J, Graydon J, et al. Multicentre randomaized controlled trial of nursing intervention for breathlessness in patients with lung cancer. BMJ 1999; 318: 901—4 4) Louie SW. The effects of guided imagery relaxation in people with COPD. Occupational Therapy International 2004; 11: 145—59 5) Renfroe KL. Effect of progressive relaxation on dyspnea and state anxiety in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Heart Lung 1988; 17: 408—13 6) Gift AG, Moore T, Soeken K. Relaxation to reduce dyspnea and anxiety in COPD patients. Nurs Res 1992; 41: 242—6 7) Yu DSF, Lee DTF, Woo J. Effects of relaxation therapy on psychologic distress and symptom status in older Chinese patients with heart failure. J Psychosom Res 2007; 62: 427—37 3.まとめ IV章非薬物療法
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◆和文◆あアウトカム 4悪性胸水 11, 23, 43, 56, 87, 90, 91アトロピン硫酸塩 52アルプラゾラム 53 い胃食道逆流症 46一次スクリーニング 123イメージ療法 118 う運動療法 111 えエア・ブロンコグラム 34エチゾラム 53エビデンスレベル 7 ― ,定義 7エルゴメータ 112延髄 14 お横隔膜 14オキシコドン 50, 53, 56, 70オクトレオチド 52, 101オピオイド 12, 93 ― 受容体 50 ― ナイーブ 12, 73オンコロジーエマージェンシー 41 かカーリー線 34外呼吸 18咳嗽 11, 45, 56, 93, 95, 96, 97 ― の原因 46カウンセリング 108下顎呼吸 32化学受容器 15拡散障害 19 ガバペンチン 52, 96感覚受容器 14感覚野 16換気血流比不均等 19換気障害 20看護ケア 11, 106乾性咳嗽 46がん性リンパ管症 21, 23, 34, 40, 46, 51, 56, 82, 83がんに伴う換気障害 21 き奇異呼吸 32機械受容器 14, 15気管支拡張症 46気管支喘息 46機能評価尺度 28吸引 102吸入酸素濃度 37胸腔穿刺ドレナージ 44, 56, 87胸腔チューブ 45胸水 34, 44胸部CT 検査 34胸部単純X 線 34胸部理学療法 12胸膜外徴候 34胸膜癒着術 11, 45, 56, 90 く口すぼめ呼吸 106, 113グループ認知行動療法 115 けケアマネジメント 109頸動脈体 15経皮的酸素飽和度 33研究デザイン 7 こ抗コリン薬 52, 100拘束性換気障害 21索 引 (太字は主要ページ)
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後鼻漏症候群 46高流量鼻カニュラ酸素療法 12, 37, 56, 63誤嚥 46コーピング 108呼気終末陽圧 38呼吸困難 11, 14 ― に伴う機能評価尺度 28 ― の原因 23 ― の質的評価尺度 27 ― の発生のメカニズム 16 ― の評価 25 ― の量的評価尺度 25呼吸数 32呼吸中枢 14, 50呼吸不全 11, 18 ― の基準 18呼吸法トレーニング 106, 113呼吸抑制 50呼吸理学療法 12, 111呼吸リハビリテーション 12, 111コデイン 50, 53, 56, 72コルチコステロイド 51, 81, 83, 84, 85混合性換気障害 21コンソリデーション 34 さ酸素 56 ― 吸入 60, 61 ― 分圧 33 ― 療法 59しジアゼパム 53支持的精神療法 115死前喘鳴 11, 47, 52, 56, 100, 101, 102湿性咳嗽 46失調性呼吸 32ジヒドロコデイン 50, 53, 56, 72シャント 20修正Borg スケール 12, 26修正MRC スケール 31主要気道閉塞 23, 42, 51, 56, 82, 85上大静脈症候群 23, 41, 51, 56, 82, 84呻吟 11侵襲的人工呼吸 36身体化 16心不全 46す推奨度 9 推奨の強さ 8スコポラミン臭化水素酸塩 52ステロイド 56スパイロメトリー 20 せ声音震盪 33精神力動的精神療法 115精神療法 11, 115漸進的筋弛緩法 118扇風機 107 そ送風 107 た大動脈体 15大脳皮質 14タルク 45, 90 ちチェーン・ストークス呼吸 32治療抵抗性 58鎮静 58, 77 つ強い推奨 8 て低酸素血症 18, 60, 62, 63デキサメタゾン 51デキストロメトルファン 52, 53, 95デルファイ 8, 123 と動脈血ガス分析 33トレッドミル 112 な内呼吸 18 に二次スクリーニング 123認知行動療法 115
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は肺炎 46肺活量 20肺刺激受容器 15, 51肺伸展受容器 15, 51, 52肺塞栓 23肺胞気—動脈血酸素分圧較差 18肺胞低換気 18肺理学療法 12 ひビオー呼吸 32非侵襲的陽圧換気 12, 36, 56, 62 ふファン 107不安 115フェンタニル 50, 71ブチルスコポラミン臭化物 52プレガバリン 52, 96フロセミド 79 ― 吸入 51 ― の吸入投与 79文献検索式 127 へ閉塞性換気障害 20ベタメタゾン 51, 53ベンゾジアゼピン系薬 51, 56, 75, 76 ほ放射線肺臓炎 21, 23, 46, 51蜂巣肺 34 ま慢性気管支炎 46 みミダゾラム 53, 75 むムスカリン受容体 52 め迷走神経受容器 15 もモルヒネ 50, 53, 56, 66 ― の吸入投与 68 ― の全身投与 66や薬剤性肺障害 21, 23, 46, 51 よ抑うつ 115弱い推奨 8 りリッカート尺度 26リドカイン吸入 52, 97利尿薬 91リハビリテーション 111量的評価尺度 25リラクセーション 11, 117 ろ肋間筋 14ロラゼパム 53 ◆欧文◆ A A—aDO2 18 air bronchogram sign 34 B Biot 呼吸 32 breakthrough dyspnea 72 C Cancer Dyspnea Scale(CDS) 27 Chronic Respiratory Questionnaire—Dyspnea subscale (CRQ—D) 28 coarse crackle 33 consolidation 34 C 線維受容器 15 F FEV1.0 20 FEV1.0% 20 FiO2 37 G General Health Questionnaire(GHQ) 115
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H high flow therapy 37 Hugh—Jones 分類 31 K Kerley’s line 34 M Motor Neurone disease—Dyspnea Rating Scale (MDRS) 28 N nasal high flow therapy 37 numerical rating scale(NRS) 12, 25 O OK—432 45 P PEEP 38 PICO 形式 122 PIO 形式 122 S St George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ) 115 STAS—J 29 stridor 33, 42 Support Team Assessment Schedule(STAS) 29 V visual analogue scale(VAS) 12, 26 vital capacity(VC) 20 W wheeze 33 ◆数字◆ I型呼吸不全 18 II型呼吸不全 18 1 秒率 20 1 秒量 20 6 分間歩行試験 112
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がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン 2016年版外部評価コメント御氏名総評重要なコメント(改訂が必要な箇所)その他赤字対応コメント2 評価委員2 2016年2月17日原稿を受領し日本肺癌学会ガイドライン委員会緩和ケア小委員会委員として外部評価のため拝読さ 「薬剤の解説」は適応薬剤が増えたことから,記載も増加しています。2011年版では,「オピオイド」,「コルチコステロイド」,「ベンゾジアゼピン系薬」,「気管支拡張薬」の4部に分けて記載されていましたが,今回は「オピオイド」と「オピオイド以外の薬剤」の2部に分けられているのみになっています。オピオイドとそれ以外の薬剤の重要度の比重の違いによるものと思われますが,「オピオイド以外の薬剤」の順序が入り乱れているように感じました。重要度の高い順に記載するか,用法によってそろえた方が理解しやすいと感じました。もし,何らかの意図を持って順をこのように決められたのであれば,ごく簡単にその旨表記したほうがよいのではないかと思いましたがいかがでしょうか。フロセミド吸入について推奨度1Bではありますが,「行わないことを推奨する」であり,臨床疑問の優先順位としてはコルチコステロイドよりも下位にあると思われます。コルチコステロイドの章よりも前に記載されていることに違和感を覚えたのですがいかがで悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,胸膜癒着術は呼吸困難を緩和するか? の臨床疑問に対して引用された文献はいずれも皮下カテーテル留置との比較です。最終的な推奨について意義ありませんが,解説と推奨の連続性にやや疑問を感じました(感想まで)。 I章-4 用語の定義と概念・p011:「看護ケア」について英語表記があった方がよい 「薬剤の解説」に関して「薬剤の解説」の項目に小見出しの追加と順序の変更を行いました。推奨文の掲載順に関して病態を問わず呼吸困難全般を対象としたもの、特定の病態による呼吸困難を対象にしたもの、アウトカムが呼吸困難の緩和ではなく咳嗽や喘鳴の軽減としたもの、という順番の構成になっています。「悪性胸水」に関して無治療(もしくはsham procedure)と比較した胸膜癒着術の効果を検討した研究がないことと、臨床的な側面とこの度のガイドライン作成プロセスの中で、標準治療を胸腔穿刺ドレナージと想定し、推奨文を作成しました。用語の英語表記に関して推奨文に関わる用語について英語を表記しています。特にありません。推奨文の否定文の扱いに関してご提案の通り、推奨文が「行わない」方向である場合は、該当部分に下線を引くよう統一いたしました。 III章推奨に関して:推奨文は「行う/行わない」の推奨の方向と、「推奨する/提案する」の推奨の強さ、の2つで表現しております。これらの2×2の組み合わせでの表現は、ガイドラインの推奨文全体で統一しております。(I章-3「エビデンスレベルと推奨の強さ」 参照)臨床疑問10に関して(III章-2-3ベンゾジアゼピン系薬):ご指摘の通り、2011年版ガイドライン以降、当該CQに関する新たな研究は報告されておりませんが、この度の改訂における文献採用基準や採用文献の評価方法に則り、WPG員の臨床的な専門知識を加味した上での推奨文作成であり、デルファイでの評価も経た上で確定した推奨文となります。ご指摘いただいている「不安に伴う呼吸困難」という病態は限定された状況として、次回以降の改訂で別の臨床疑問として設けることは検討致します。なお、本邦で使用可能な薬剤に関して、保険適応範囲外であることに関しては推奨自体の考慮には入れておりません(現状ではこの度のガイドラインで扱っている薬剤の多くは保険適応外です)。(I章-2「ガイドライン使用上の注意」 1-(7) 「対象とする薬剤」 参照) II章-8薬剤の解説・p051:フロセミド吸入について推奨文内容を理解するための背景知識として、推奨文で取り上げた薬剤に関してはすべて記載しております。ただし、推奨内容(方向)との齟齬が無いように、「薬剤の解説」の内容(文章表現)は一部修正いたしました。・p053:表 主な薬剤の投与方法商品名表記部分における剤型名(「注」など)はすべて削除いたしました。III章-2-1モルヒネ・p064:解説のNaviganteらの報告投与量の実数記載が論文上確認できないため、記載しておりません。 評価委員1 1 II章-8薬剤の解説・p051:フロセミド吸入について「p058(推奨の概要)やIII章では,行わないことを強く推奨されていますが,こちらに掲載されますか?」・p053:表 主な薬剤の投与方法商品名の「注」は不要ではないでしょうか。III章-2-1モルヒネ・p064:解説のNaviganteらの報告「効果的投与量」の具体的な数字があるほうが理解しやすいと思います。III章-2-3ベンゾジアゼピン系薬・p074:左記「重要なコメント」参照 III章推奨に関して:推奨文が「推奨する」や「行う」や「提案する」などとなっています。今後の用語の統一で変更されるご予定かもしれませんが,気になりました。臨床疑問10に関して(III章-2-3ベンゾジアゼピン系薬):前版から新たな知見が無いにも関わらず,前版の推奨では「行う」となっていたものが,今回は「行わない」となった経緯を示す必要があるように思います。今回の「解説」に記載されている薬物がミダゾラムのみで,しかも日本では適応になっていない経口投与や皮下投与になっているのも気になります。臨床では不安に伴う呼吸困難は多く見られ,比較的早い段階のオピオイドを使用していない患者が呼吸困難を訴えた場合に,内服の抗不安薬でなく,いきなりモルヒネの使用を推奨しているように受け取られませんでしょうか?私見として,前回の推奨の方が臨床には馴染むように思い或いは,ガイドラインの作成方法を重要視される場合は,患者群や薬物を限定して,「行わない」とされるなら同意いたしご検討いただければ幸いです。1/2
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がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン 2016年版外部評価コメント御氏名総評重要なコメント(改訂が必要な箇所)その他赤字対応コメントるように思います。下記表現の変更についてご検討よろしくお願いします。P061 臨床疑問2の推奨低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素吸入を行わないことを提案する。→低酸素血症がなく,呼吸困難を有するがん患者に対して,酸素による吸入は行わないことを提案する(気体の吸入が呼吸困難を改善する可能性はあるため) p090 臨床疑問19の推奨悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために利尿薬の投与を行わないことを提案→悪性胸水による呼吸困難を有するがん患者に対して,呼吸困難を緩和するために積極的な利尿薬の投与を行わないことを提案する(病態に応じて有用な可能性はあるため) 「P061 臨床疑問2の推奨」に関してご指摘の内容は非常に妥当と思いますが、日本では「医療用空気(Medical Air)」の使用は人工呼吸器および高圧酸素療法に限られており、臨床現場においても空気吸入が一般に行われている状況にないため、現状の推奨文にいたし、解説文の中で、「気体吸入が呼吸困難を改善する可能性」に言及しました。「p090 臨床疑問19の推奨」に関して解説文中で言及している通り、心不全などによる漏出性の胸水の場合は利尿薬による改善が期待できる場合がありますが、当該の臨床疑問では対象を「悪性胸水」に限定しているため、臨床研究結果においても病態生理的な考察に置いても、利尿薬が有効である根拠はないと考えたため、特別な文言を付けくわえず、その他の項目と同様の形式の推奨文としました。「6編集の独立性:」に関してアカデミックCOIに関しては、記載するのが望ましいと考えます。日本緩和医療学会の他のガイドラインと表記を合わせるため、今回は変更が難しいですが、次回改定時には専門領域を記載するように働きかけたいと思います。I章-4 用語の定義と概念p011~012:用語の定義英訳を追加しました。I章-2 ガイドライン使用上の注意p005:利益相反WPG員および外部評価委員の個人COIは最終版に記載しております。II章-8薬剤の解説p050:「1モルヒネ」の4行目解説文中の作用機序に関する内容を修正いたしました。III章-1 呼吸困難に対する酸素療法p062:臨床疑問3の推奨推奨文はなるべく簡潔にまとめるため、条件等詳しい内容に関しては解説文中に記載することで統一しております。そのため、条件等は解説文中に記載することを基本として対応しております。II章-2 呼吸困難に対する薬物療法p076:臨床疑問11 解説の最後の段落p080:コルチコステロイド投与量・方法に関しては、推奨を明示するに足る根拠が少なく、ガイドライン推奨文全体を通じて明記しないことで統一しております。今後の改訂で可能であれば、投与量・方法に関する部分に関しても推奨を作成したいと思います。 詳しくはそちらをご覧ください。CQの末尾を「○○に対して××は有効か?」から「○○に対 して××を行うべきか」の形に変えられることをお勧めしま「ガイドライン」の語は(日米防衛ガイドラインなど)他分野でも使われますが,医療分野で用いる場合は必ずしもその推奨に従う診療を行わなければならないわけではないため,ぜひ区別をするために「診療ガイドライン」の語を用いていただきますようお願い申し上げます。 次回ガイドライン改訂の際には、ご指摘いただいたように、「××を行うべきか?」の形でCQを立てることを検討したいと思います。また、「ガイドライン」の文言に関しましても、次回改訂の際には「診療ガイドライン」の文言への変更を検討したいと思います。 4提示の明確さ:推奨はどれもわかりやすく,端的であり臨床上も参考にしやすくなっています。非常に読みやすく,構成も充実していると感じ,利用しやすいと思います。ただし,たとえば,胸水のドレナージについて考えますと,ドレナージが推奨されることはわかるのだけれど,具体的に,どの程度の量の胸水を何を用いてどのくらいの時間をかけてドレナージすればよいのか,などといった具体的内容が臨床の間隔としては経験則だけではなく知りたいと考えますので,そのレベルまで踏み込んだエビデンスとなると非常に弱くなってしまうことは十分わかるのですが,今後検討していけるとよいのかもしれません。また,推奨の強さとエビデンスレベルの臨床的意味に関しても明記されており,緩和領域のガイドラインとしてはこの推奨方法が理にかなっていると考えます。しかし,どうしても他の分野のガイドラインとは異なる「あいまいさ」がガイドラインにも反映されてしまう側面はあり,今後の検討課題だと思われます。(あいまいさを含んだ臨床に即したガイドラインを作るのか,エビデンス集としてのガイドラインに徹するのか,といったところです。) 5適用可能性:章立て等の構成はとてもわかりやすいと感じます。ガイドラインという性格上やむをえない部分もあるかと思いますが,上でも述べさせていただきましたように,具体的にどう使うというものがあると,実臨床でこのガイドラインを使う医療者にはより役に立つものになるであろうと思われます。6編集の独立性:利益相反に関して,資金源等に関して簡潔ではありますが記載されています。ここだけでもある程度の編集性の独立性を担保するものと考えられますが,「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」に基づいて,個人的COIと組織的COIをガイドライン上その管理と対応について明記していただけましたら,なおよろしいかと存じます。個人的COIの中でも経済的COIに関しては,委員就任時に審査されており,問題はないと考えますが,アカデミックCOIに関しては,作成グループの構成員が特定の専門領域に偏っていないかどうかだけは再確認していただくことが念のため必要かと思われます。皆様ご多忙の日常臨床の中で,本ガイドラインを非常に完成度の高いものに作り上げられたことには頭が下がる思いで I章-2 ガイドライン使用上の注意p005:利益相反個人的COIに関しても併記していただけるとよいかと思います。I章-4 用語の定義と概念p011~012:用語の定義精神療法から呼吸理学療法の6項目には英訳を入れない? II章-8薬剤の解説p050:「1モルヒネ」の4行目「1回換気量と呼吸数を減少させることが」の記載が以前より気になっていますが,1回換気量に関しては減少させる,でよいのでしょうか? III章-1 呼吸困難に対する酸素療法p062:臨床疑問3の推奨本文を読めばすぐに分かるので蛇足かもしれませんが,ここに「条件」も列記しておくほうがより分かり易いかもしれません。II章-2 呼吸困難に対する薬物療法p076:臨床疑問11 解説の最後の段落難しいと思いますが,何をどのくらい,という例示ができると実用的ですし,下線の部分の意図もより分かり易くなるのではないかと思います。p080:コルチコステロイドステロイドに関しては,「どのくらいの量を」「どのくらいの期間」「どのようなステロイドを」用いると良いのかが,臨床上いつも悩みとして相談を受けるように思っています。難しいと思いますが,ガイドライン上で何か示唆できるものがもしあれば,列記していただけるとよいかと思います。2/2
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