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サルコペニア・フレイルを合併した透析期CKDの食事療法 日本腎臓学会・2019・3 ページ · 腎臓・透析 · 老年・精神・薬物療法
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透析療法の進歩に伴い,患者の長期生存が可能になったこと,高齢で透析導入する症例が増加していることから,透析患者全体の高齢化が進んでいる.これによりサルコペニア・フレイルを合併した透析患者が増加しており,その予防・改善のために必要な食事療法と,従来透析患者に対して指導してきた食事療法との整合性の検討が必要となった.日本透析医学会においても栄養問題検討ワーキンググループを中心にこの問題に対する調査検討を行ったが,その中で透析患者の食事療法およびサルコペニア・フレイルに関する報告は本学会で定めたガイドライン作成方法を適用するには充分とはいえず,システマティックレビューを実施することができないと判断した.このためガイドラインにおけるクリニカルクエスチョン,ステートメント(推奨文)は設定せず,臨床的疑問としての疑問(Q),推奨度を付けないポイントおよび解説文を作成した委員会オピニオンとして提言することとした.今回取り扱った領域では他に比べて介入と評価が難しいことからエビデンスが不足しているが,今後エビデンスの構築がなされ,より科学的妥当性の検証が行われたガイドラインに発展することを期待している.

サルコペニア・フレイルともに最近まで基準が統一されていなかったこと,体格差から欧米の基準が日本人にそぐわない部分があることから,わが国における大規模な疫学研究は行われていない.サルコペニアの頻度については,日本サルコペニ

ア・フレイル学会のガイドライン2017 年版では12.7~ 33.7%と記載があるa.アジア(タイ)における頻度は女性で68.3%,男性で59.6%であり,白人,黒人に比べて高値であった1).アジア・サルコペニア・ワーキンググループの基準で評価したサルコペニアの有病率(頻度)は,わが国の血液透析患者では40%2),腹膜透析患者では8.4%と報告されている3).また,日本版CHS(Cardiovascular Health Study)基準を診断基準として岡山大学関連5 施設の血液透析患者542 名における観察研究では21.4%がフレイル, 52.6%がプレフレイルと診断された4).日本老年医学会のフレイル診療ガイド2018 年版では,「透析患者におけるフレイルの頻度は13.8~67.7%と一般集団,保存期CKD 患者より高率であり,フレイルは透析患者の予後悪化に関連する」(エビデンスレベル:E‒1b(コホート研究))と記載されているb.これまで報告されているサルコペニア・フレイルの頻度は透析患者に限らず人種や診断基準により大きな差があるが,今後は日本透析医学会において新基準に基づく調査が進み,わが国における実態が明らかになることが期待される.

Q1  「透析患者におけるサルコペニア・フレイルの

頻度は非透析患者に比べて高いか?」

ポイント:わが国の透析患者における検討は少ないが,透析患者ではサルコペニア・フレイルともに非透析患者に比べて頻度は高い. Q2「現在のたんぱく質推奨量(0.9~1.2 g/kg 標準

体重/日)で,透析患者の骨格筋量は減るか?」

ポイント:非糖尿病の血液透析患者では,十分なエネルギー量を摂取していれば,現在のたんぱく質推奨量で骨格筋量は減少しない.糖尿病または高齢の透析患者における食事摂取量と骨格筋量の関連は明らかでない.

透析会誌52(7):397~399,2019委員会報告

サルコペニア・フレイルを合併した透析期CKD の食事療法

日本透析医学会学術委員会栄養問題検討ワーキンググループ菅 野 義 彦1加 藤 明 彦2神田 英一郎3稲 葉 雅 章4森  克 仁4 1東京医科大学 2浜松医科大学 3川崎医科大学 4大阪市立大学

菅野 義彦 東京医科大学腎臓内科学分野  〒160‒0023 東京都新宿区西新宿6‒7‒1 Yoshihiko Kanno Tel:03‒3342‒6111 Fax:03‒3342‒2650
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透析患者に対してたんぱく質摂取量に介入して骨格筋量の変化を検討した報告はないため,現時点でこのQ に対して科学的に答えることは難しい.Ohkawa らが非糖尿病の日本人血液透析患者127 名に行った横断研究ではnPNA 0.9 g/kgIBW(Ideal Body Weight)/日以上のたんぱく質摂取群では腹部,大腿部の筋肉面積に男女とも有意差はなく,それ未満では有意に筋肉面積が低かった5).本研究の対象患者は平均年齢が男性59.4 歳,女性60.9 歳と現在の透析患者に比べて若いために,現在,サルコペニア・フレイルが危惧されている高齢患者に対して当てはまらない可能性もあるが,筋肉量が一定になるたんぱく質摂取量の範囲は存在すると考えられる.一方で筋肉量減少はたんぱく質欠乏だけでなくエネルギー欠乏でも生じるため,現在のたんぱく質推奨量を順守していても体重減少がもたらされた場合は,エネルギーおよび脂質摂取量の増加やたんぱく質摂取量の再考が必要である.当然食事による介入だけではなく運動療法と併用する必要がある.

先述のOhkawa らの報告ではnPNA 1.3 g/kgIBW/日以上の患者群でも0.9 g/kgIBW/日以上1.3 g/ kgIBW/日未満の群に比べて腹部,大腿部の筋肉面積に差はなかった.しかし腹部内臓および大腿部脂肪面積は有意に増加していた.また血清カリウム値も増加していた.一般にたんぱく質摂取量の増加に伴い,血清リン値の上昇,重炭酸濃度の低下など,生命予後に不利になる数値の変化が認められる6).こうした要素が影響したものと考えられるが海外ではnPNA 1.3 g/ kgBW/日以上の患者群では全死亡に対するリスクも上昇している7,8).ただしサルコペニア・フレイルが危惧されている高齢患者においては内臓脂肪の増加は必ずしも死亡リスクとはならない可能性もある.実際わが国の113 名の血液透析患者(平均年齢61.6 歳)において内臓脂肪量に逆相関するアディポネクチンの高値は平均38か月の追跡期間に脂肪率を上昇させた.間接的なデータではあるが内臓脂肪の増加は高齢透析患者においては生命予後を好転する可能性も示唆されたといえる9).またわが国においてはnPNA 1.3 g/kgBW/日以上の患者群は5%未満であるため,これらの患者

群の予後に対する報告はない.2015 年末調査におけるわが国の透析患者のnPNA は推奨量である0.9~1.2 g/ kg 標準体重/日を大きく下回っており10),喫緊のサルコペニア・フレイル対策としてはそれぞれの患者のたんぱく質摂取量をまずこの推奨量まで底上げすることと考える.

透析患者におけるたんぱく質摂取量評価について透析患者のたんぱく質摂取量を推算する方法として従来nPCR(normalized protein catabolic rate 標準化蛋白異化率),nPNA(normalized protein nitrogen appearance 標準化蛋白窒素出現率)が使用されているが,この数値も絶対的なものではない.Rao らによりたんぱく質摂取量が0.75 g/kgIBW/日以上の場合は, nPNA は約20%低め(1.17+/-0.3 vs. 0.88+/-0.2 g/ kg/day)に算出されるが,0.75 g/kgIBW/日未満では蛋白異化が亢進するため,nPNA はむしろ28%高めに計算される(0.61+/-0.1 vs. 0.78+/-0.2 g/kg/day)ことが報告されている11).この報告は30代の透析患者12 名のデータをもとにしており,またサルコペニア・フレイルの問題に直面している患者はこの0.75 g/ kgIBW の前後にあることが多いため,実際の指導においては体重,可能であれば筋力,筋肉量などの変動に注意する必要がある.

この提言は日本栄養療法協議会内に2017 年に設置された腎臓関連ワーキンググループ(日本腎臓学会,日本透析医学会,日本糖尿病学会,日本病態栄養学会,日本老年医学会)の活動であるサルコペニア・フレイルを合併したCKD の食事療法を検討するにあたり,透析患者に対する提言を日本透析医学会の委員(菅野義彦,稲葉雅章,加藤明彦,神田英一郎),協力委員(森克仁)で作成したものである.この内容は日本透析医学会学術委員会,著者を除く栄養問題検討ワーキンググループメンバー,日本腎臓学会,日本病態栄養学会,日本老年医学会,日本糖尿病学会により査読,承認を受けた.

参考文献a. サルコペニア診療ガイドライン作成委員会(日本サル

コペニア・フレイル学会,日本老年医学会,国立長寿医療研究センター)編.サルコペニア診療ガイドライン2017 年版.2017. b. 荒井秀典編集主幹,一般社団法人日本老年医学会,国

立研究開発法人国立長寿医療研究センター発行.フレイル診療ガイド2018 年版.2018.

Q3  「たんぱく質摂取量が1.2 g/kg/標準体重日以

上になると,別のリスクが生じるか?」

ポイント:nPNA≧1.3 g/kgIBW/日では,内臓脂肪の増加や高カリウム血症のリスクが高い.また全死亡リスクも高い可能性がある.

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