p.1
Vol.31 Supplement 2 DECEMBER 2024 日集中医誌J Jpn Soc Intensive Care Med 日本版敗血症診療ガイドライン2024 The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2024 (J-SSCG2024)
Vol.31 Supplement 2 DECEMBER 2024 日集中医誌J Jpn Soc Intensive Care Med 日本版敗血症診療ガイドライン2024 The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2024 (J-SSCG2024)
-S 1165-日集中医誌 2024;31:S1165-1313. 日本版敗血症診療ガイドライン2024 The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2024(J-SSCG 2024) 志馬 伸朗1,※中田 孝明2, ※矢田部 智昭3山川 一馬4青木 善孝5井上 茂亮6射場 敏明7小倉 裕司8河合 佑亮9川口 敦10川崎 達也11近藤 豊12櫻谷 正明13對東 俊介14土井 研人15橋本 英樹16原 嘉孝17福田 龍将18松嶋 麻子19江木 盛時20,※※ 久志本 成樹21,※※ 大網 毅彦2菊谷 知也1相川 玄22青木 誠23赤塚 正幸24淺井 英樹25阿部 智一26雨宮 優4石澤 嶺27石原 唯史28石丸 忠賢29糸洲 佑介30井上 拓保31今長谷 尚史32井村 春樹33岩崎 直也34生塩 典敬4内田 雅俊35内 倫子36梅垣 岳志37梅村 穣38遠藤 彰39大井 真里奈40大内 玲22大沢 樹輝41大島 良康42太田 浩平1大野 孝則43岡田 遥平44岡野 弘45小川 新史38柏浦 正広46春日井 大介47狩野 謙一48上谷 遼49河内 章50川上 定俊51川上 大裕52川村 雄介53神鳥 研二54岸原 悠貴46木村 翔55久保 健児56栗原 知己57小網 博之58小谷 祐樹59木庭 茂60佐藤 威仁61佐藤 蓮62澤田 悠輔63志田 瑶64島田 忠長2志水 元洋65清水 一茂66白石 拓人67新貝 達68丹保 亜希仁69杉浦 岳50杉本 健輔70杉本 裕史71壽原 朋宏72関野 元裕34其田 健司73對東 真帆子74高橋 希75竹下 淳76武田 親宗77立野 淳子78田中 愛子79谷 昌憲80谷河 篤81陳 昊82土田 拓見83堤 悠介84恒光 健史85出口 亮86鉄原 健一87寺山 毅郎88戸上 由貴89十時 崇彰90友田 吉則91中尾 俊一郎8長澤 宏樹92中谷 安寿93中西 信人94西岡 典宏85錦見 満暁1野口 智子95野浪 豪96野村 理97橋本 克彦98畠山 淳司4濵井 康貴85彦根 麻由99久宗 遼4廣瀬 智也8福家 良太100藤井 遼101藤江 直輝102藤永 潤103藤浪 好寿104藤原 翔105舩越 拓106本間 康一郎107牧野 佑斗85松浦 裕司108松岡 綾華109松岡 義107松村 洋輔110水野 彰人77宮本 颯真111三好 ゆかり28村田 慧112村田 哲平113薬師寺 泰匡114安尾 俊祐115山田 浩平116山田 博之117山元 良107山本 良平118湯本 哲也119吉田 裕治77吉廣 尚大120吉村 聡志121吉村 旬平8米倉 寛122若林 侑起123和田 剛志124渡辺 伸一125井尻 篤宏116宇賀田 圭126宇田 周司77小野寺 隆太127高橋 正樹83中島 聡志128本多 純太47松本 承大77 日本版敗血症診療ガイドライン2024特別委員会
-S 1166- ※委員長※※ 担当理事 1 広島大学大学院医系科学研究科救急集中治療医学 2 千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学 3 公立西知多総合病院救急診療センター 4 大阪医科薬科大学救急医学教室 5 浜松医科大学医学部附属病院集中治療部 6 和歌山県立医科大学救急集中治療医学講座 7 順天堂大学救急災害医学 8 大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 9 藤田医科大学病院看護部 10 聖マリアンナ医科大学 11 静岡県立こども病院集中治療センター 12 順天堂大学医学部附属浦安病院 13 JA広島総合病院救急・集中治療科 14 広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門 15 東京大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学 16 筑波大学附属病院感染症科 17 藤田医科大学医学部麻酔・侵襲制御医学講座 18 国家公務員共済組合連合会虎の門病院救急科 19 名古屋市立大学大学院医学研究科救命救急医療学 20 京都大学大学院医学研究科侵襲反応制御医学講座麻酔科 学分野 21 東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学分野 22 茨城キリスト教大学看護学部看護学科 23 防衛医科大学防衛医学研究センター外傷研究部門 24 札幌医科大学医学部集中治療医学 25 奈良県立医科大学救急医学講座 26 筑波記念病院救急科・救急センター 27 多摩総合医療センター救命・集中治療科 28 順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科 29 千葉市立海浜病院救急科 30 北海道大学麻酔科 31 昭和大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法 学専攻 32 自治医科大学麻酔科学集中治療医学講座集中治療医学部門 33 洛和会音羽病院 34 長崎大学大学院麻酔集中治療医学 35 獨協医科大学救急医学講座 36 国立病院機構茨城東病院看護部 37 関西医科大学麻酔科学講座 38 大阪急性期・総合医療センター救急診療科 39 総合病院土浦協同病院救命救急センター 40 北里大学医学部救命救急医学 41 東京大学医学部附属病院救急・集中治療科 42 神戸徳洲会病院 43 新百合ヶ丘総合病院救急科 44 Duke-NUS Medical School 45 聖路加国際病院集中治療科 46 自治医科大学附属さいたま医療センター救急科47 名古屋大学医学部附属病院救急科 48 福井県立病院救命救急センター 49 岐阜大学大学院医学系研究科救急・災害医学分野 50 前橋赤十字病院集中治療科・救急科 51 がん研究会有明病院麻酔科 52 飯塚病院集中治療科 53 公立昭和病院リハビリテーション科 54 京都第二赤十字病院高度救命救急センター救急科 55 東京女子医科大学八千代医療センター小児集中治療科 56 日本赤十字社和歌山医療センター感染症内科部・救急科 集中治療部 57 札幌市立大学看護学部 58 佐賀大学医学部救急医学講座 59 医療法人鉄蕉会亀田総合病院集中治療科 60 練馬光が丘病院 61 名古屋大学医学部附属病院麻酔科 62 東京医科大学病院 63 群馬大学大学院医学系研究科救急医学 64 アストラゼネカ株式会社 65 社会医療法人緑泉会米盛病院集中治療科 66 天理よろづ相談所病院臨床工学部 67 相澤病院 68 三重大学医学部附属病院高度救命救急・総合集中治療セ ンター 69 旭川医科大学救急医学講座 70 群馬大学医学部附属病院集中治療部 71 近畿中央呼吸器センター内科 72 慶應義塾大学医学部麻酔学教室 73 宮城県立こども病院集中治療科 74 広島大学病院看護部 75 University of British Columbia 76 大阪母子医療センター麻酔科 77 京都大学医学部附属病院麻酔科・集中治療部 78 小倉記念病院 79 福井大学医学部附属病院集中治療部 80 埼玉県立小児医療センター集中治療科 81 東北大学病院高度救命救急センター 82 横浜南共済病院化学療法室 83 北海道大学病院救急科 84 国立病院機構水戸医療センター救急科 85 京都大学大学院医学研究科予防医療学分野 86 大阪公立大学大学院医学研究科救急医学 87 福岡市立こども病院集中治療科 88 自衛隊中央病院救急科 89 国立病院機構大阪医療センター救命救急センター 90 九州大学病院別府病院麻酔科 91 北里大学薬学部薬物動態学 92 順天堂大学医学部附属静岡病院救急診療科 93 大阪大学医学部附属病院看護部 94 神戸大学災害救急医学分野
-S 1167- 112 兵庫県立こども病院救急科 113 宮崎県立延岡病院循環器内科 114 薬師寺慈恵病院 115 天理よろづ相談所病院放射線科 116 防衛医科大学校病院救急部 117 京都大学初期診療・救急科 118 福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 119 岡山大学学術研究院医歯薬学域救命救急・災害医学講座 120 広島大学病院薬剤部 121 洛和会音羽病院救命救急センター京都ER 122 藤田医科大学ばんたね病院麻酔・疼痛制御学 123 神戸市立医療センター中央市民病院看護部 124 北海道大学大学院医学研究院侵襲制御医学分野救急医学 教室 125 岐阜保健大学 126 松江赤十字病院集中治療科 127 京都大学院予防医療学部 128 京都府立医科大学救急医療学教室 95 弘前大学大学院医学研究科麻酔科学講座 96 京都桂病院救急科 97 弘前大学大学院医学研究科医学教育学講座 98 福島県立医科大学救急・生体侵襲制御学講座 99 東京都立墨東病院高度救命救急センター救急診療科 100 イムス明理会仙台総合病院内科 101 上尾中央総合病院救急科 102 大阪府立病院機構大阪精神医療センター薬局 103 倉敷中央病院集中治療科 104 加古川中央市民病院救急科 105 東京曳舟病院救急科 106 東京ベイ・浦安市川医療センター救命救急センター 107 慶應義塾大学医学部救急医学 108 大阪府立中河内救命救急センター 109 佐賀大学医学部附属病院高度救命救急センター 110 千葉県総合救急災害医療センター救急診療部・集中治療 科 111 聖路加国際病院救急部・救命救急センター 要約:日本集中治療医学会と日本救急医学会は合同で特別委員会を結成し,日本版敗血症診療ガイドライン2024年版(J-SSCG 2024)を作成した。今回の改訂により,2012年の初版から数えて3回目の改訂となる。本ガイドラインの目的は,敗血症および敗血症性ショックの診療において,医療従事者が適切な判断を下し,患者の転帰改善につなげるための支援を行うことである。敗血症を認識し初期対応する医師,引き継いで専門家として診療する医師,そして看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師など,多職種の医療従事者にとって理解しやすく,使いやすいものを目指した。J-SSCG 2024は,敗血症の診断と感染源のコントロール,抗菌薬治療,初期蘇生・循環作動薬,急性血液浄化,DIC診断と治療,その他の補助療法,PICS対策,家族ケア,小児の9領域をカバーし,合計78個の重要臨床課題を設定した。ガイドラインパネルには両学会から委員21名を任用し,ワーキンググループ・系統的レビューチームメンバー131名(医師,看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)のサポートのもとに作成した。将来への発展性を見据えて,多くの若手医療従事者や研究者を含めた。また前回と同様に,中立的立場で領域を横断的に俯瞰するアカデミックガイドライン推進班を構成し,質の担保と作業過程の透明化を目的にパブリックコメントを募集した。作成手法にはGRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムを採用し,質の高いガイドラインを目指した。7個のgood practice statement(GPS)と42個のGRADEに基づく推奨を提示した。その他に,background question(BQ)22個,future research question(FRQ)12個の解説文を付記した。さらにガイドラインの幅広い普及と教育効果の向上を目指し,スマートフォンアプリを開発した。本ガイドラインは日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載される。日本集中治療医学会と日本救急医学会の精鋭の英知が詰まった本ガイドラインが,より多くの関係者に利用され,評価され,1人でも多くの敗血症患者の転帰改善につながることを願っている。 Key words: sepsis, septic shock, guidelines, evidence-based medicine, systematic review, Medical Information Network Distribution Service (Minds), The Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation (GRADE) 謝辞:本ガイドラインの外部査読をいただきました,福岡敏雄先生,安田英人先生,大田えりか先生にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
-S 1168- はじめに 敗血症は重要な医療課題であり,世界保健機関は2017年に敗血症を世界が取り組むべき課題に指定している。日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024)は,敗血症診療に従事するすべての医療スタッフに,診断・治療・管理・注意すべき事項に関する情報を提示し,診療の質と救命率の向上を目的とするものである。 日本版敗血症診療ガイドラインは2012年に初版が発行され,今回は4版目となる。J-SSCG 2024では,重要臨床課題(clinical question: CQ)を真に敗血症に関連した重要なものに厳選し,J-SSCG 2020の118CQから78CQに減じ,内容の濃密化と作成作業の省力化を図った。これまでに蓄積されたガイドライン作成のノウハウを活かし,GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムに則り,最新のエビデンスを網羅的に収集し,標準的手法で解析し,客観的手法により評価した。また今回は,利用者に「より使いやすいガイドライン」として,初学者からエキスパートまで,有用な情報を提示するガイドラインとして活用されることを目指した。 このガイドラインには,日本集中治療医学会と日本救急医学会の精鋭の英知が詰まっている。より多くの関係者に利用され,評価され,1人でも多くの敗血症患者の転帰改善につながることを願っている。本診療ガイドラインの基本理念・概要 1 名称 日本版敗血症診療ガイドライン2024とした。英語名称は「The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2024」,略称は国際版との対比からJ-SSCG 2024とした。 2 目的 敗血症は全年齢層が罹患する重篤な疾患であり,その診療において,医療従事者が患者の予後を改善するための判断を支援することを目的とする。日本の医療機関での使用を想定しており,異なる環境での適用には注意を要する。 3 対象患者 小児から成人までの敗血症・敗血症性ショック患者,これらの疑いのある患者を対象とする。ICUだけでなく,一般病棟や救急外来で診断・治療を受ける患者を包括する。しかし,敗血症患者は高度な全身管理を必要とすることから,ICUあるいはこれに準じた施設を想定している。 4 使用者 敗血症診療に従事または関与する医師,看護師,薬剤師,理学療法士,臨床工学技士,管理栄養士などのすべての医療従事者である。 5 利用時の注意 診療ガイドラインはより良い医療を実践するための指針であり,決して法律ではない。専門家が標準治療を超える成績を達成していれば,診療ガイドラインの厳格な遵守は必要ではない。医師は個別の患者の状況に応じて,裁量によって治療を選択することもある。 推奨の強さは連続体であり,弱い推奨・弱い非推奨の間にはほとんど差がない場合もある。敗血症の多様性を考慮し,医療者のマンパワーやリソース,患者・家族の意向などを勘案して,診療ガイドラインは柔軟に活用されるべきである。本委員会は,J-SSCG 2024を裁判や保険適用の根拠とすることを認めない。エビデンスは常に更新されるため,日本において保険適用外の治療法も重要臨床課題として取り上げた。また,今回の改訂では,他の診療ガイドラインが敗血症診療での臨床疑問を十分にカバーしている場合はCQとして採用しなかったため,必要に応じてそれらも参照していただきたい。本ガイドラインは,1敗血症の診断
-S 1169- 名の看護師または理学療法士が参加した。また診療ガイドラインの草案完成後,外部の専門家3名による査読を実施し,その意見を取り入れた。 8 患者の価値観の反映 敗血症に関する患者・家族団体がないことから,敗血症患者や家族の価値観を反映させるために,家族が敗血症に罹患した医療者を患者代表者として委員に加えた。これにより,患者や家族の視点がJ-SSCG 2024に反映されている。 9 質と透明性の担保 診療ガイドラインの質と透明性向上のため,アカデミックガイドライン推進班編成以外に,委員による相互査読,パブリックコメント,メーリングリスト活用による作業の透明化,利益相反の開示(付録)などの取り組みを行った。 10 作成資金 本診療ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の資金で作成した。作成にあたり,すべてのメンバーは一切の報酬を受けていない。 11 診療ガイドライン普及の方策 利用者の利便性を考慮し,初期治療とケアバンドルの作成(図,付録),ダイジェスト版やアプリ版の開発,学術集会での普及活動を行っている。また,両学会の和文および英文機関誌に掲載する。本診療ガイドラインの普及状況や敗血症診療に関するモニタリング活動も実施する予定である。 12 改訂予定 本診療ガイドラインは4年ごとの改訂を予定しており,次回は2028年の予定である。それまでに内容を改訂すべき重要な知見が得られた場合は,部分改訂を行うことを検討する。 作成方法と推奨の解釈 J-SSCG 2024はGRADEシステムを用いて作成された。詳細な作成方法は付録に記載した。ここでは,推奨の解釈に必要な内容に限定して記載する。 1 クリニカルクエスチョン(CQ) 今回の改訂では,敗血症診療において重要と考えられるCQに限定し,広く普及している臨床課題や不確実なエビデンスの臨床課題は除外した。重要な臨床課 と感染源のコントロール,2抗菌薬治療,3初期蘇生・循環作動薬,4急性血液浄化,5DIC診断と治療, 6その他の補助療法,7PICS対策,8家族ケア, 9小児,の9領域をカバーした。 6 組織構成 日本医療機能評価機構のEBM医療情報部が推奨する診療ガイドライン作成のための組織構成は,診療ガイドライン統括委員会,作成グループ,系統的レビューチームの3つである1)。J-SSCG独自の取り組みとして, J-SSCG 2020と同様にアカデミックガイドライン推進班を編成し,中立的な立場から診療ガイドライン作成を支援している。以下にJ-SSCG 2024における組織編成を示す。利益相反・作成の役割一覧表(付録)に関連専門領域とその役割を記した。 = 診療ガイドライン統括委員会(日本版敗血症診 療ガイドライン2024特別委員会)= 日本版敗血症診療ガイドライン2024特別委員会は,日本集中治療医学会および日本救急医学会理事会の承認を受けて設立された。本委員会は,J-SSCG 2024におけるスコープや内容,重要臨床課題の決定,系統的レビューの方法,推奨作成から最終確認および公開に関する事項を決定した。 = 診療ガイドライン作成グループ(ワーキンググ ループ)= 診療ガイドライン作成グループは,系統的レビューチームを補助する目的で,系統的レビューの事前調査,系統的レビュー実施のリード,推奨文案・草案の作成補助を担当した。班長,副班長は診療ガイドライン統括委員会の委員と兼任した。 = 系統的レビューチーム = 系統的レビューチームは,主に特別委員会を組織する2学会会員からの公募メンバーにより構成された。 = アカデミックガイドライン推進班 = 各班の活動を俯瞰するとともに,系統的レビューの質の向上を図るための支援や学術資料の作成など,様々な局面でガイドライン全体の統一性をもたせるための活動を行った。 7 関係する専門家グループの参加と外部評価 敗血症診療は,医師だけではなく多職種の専門家が参加する。このため,J-SSCG 2024では各班に最低1
-S 1170-また,エビデンスの確実性は下の表のように分類さ れる。エビデンスの 確実性表記解説 高A効果の推定値に強く確信がある中B効果の推定値に中程度の確信がある低C効果の推定値に対する確信は限定的である非常に低D効果の推定値がほとんど確信できない 投票の方法,パネル会議による合意形成の手順は,付録を参考とすること。 なお,重要臨床課題において,次頁の略語を使用している。 文 献 1) Minds診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会: Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0. 公益財団法人日本医療機能評価機構EBM医療情報部. 2021. Available online at: https://minds.jcqhc.or.jp/docs/methods/cpg-development/minds-manual/pdf/all_manual_.pdf Accessed February 3, 2024. 題をCQ,バックグラウンドクエスチョン(BQ),フューチャーリサーチクエスチョン(FRQ)に分類した(下表)。 2 推奨 推奨策定のプロセスでは,まず委員とワーキンググループが共同で Evidence to Decision(EtD)テーブルを作成した(付録参照)。次に,エビデンスの確実性,効果のバランス,価値観,コストや資源利用の4要因を考慮し,委員会での合議により推奨を決定した。各CQにおける検索式,Evidence Profile,EtD(PICOの記載を含む)は付録に記した。 GRADEシステムに基づく推奨の強さは,推奨・弱い推奨・弱い非推奨・非推奨の4つのカテゴリーに分類される(下表)。推奨の強さ表記解説例 推奨1介入支持の強い推奨~することを推奨する。弱い推奨2介入支持の弱い推奨~することを弱く推奨する。弱い非推奨2介入反対の弱い推奨~しないことを弱く推奨する。 非推奨1介入反対の強い推奨~しないことを推奨する。 クリニカルクエスチョン(clinical question: CQ)臨床現場の様々な状況に応じた情報を提供する。例えば,特定の疾患に対する治療法の有効性を問うCQは,医療者の臨床判断に大きな影響を与えうる。これらは委員会で討議され,GPSとGRADEに基づく推奨が作成される。 グッドプラクティスステートメント(good practice statement: GPS)エビデンスの確実性は低いものの,介入による有益性がその有害性を上回る可能性が高く,その他のGPS基準をすべて満たすと委員会が判断した強い推奨GRADEに基づく推奨系統的レビューを通じて得られたエビデンスに基づき,エビデンスの確実性,利益と害のバランス,価値観や好み,コストや資源利用の4要因を考慮して作成された推奨 バックグラウンドクエスチョン(background question: BQ)疾患,診断,治療に関する基本知識を解説する。推奨事項ではなく,委員会で議論された標準的な情報を提供するものである。フューチャーリサーチクエスチョン(future research question: FRQ)系統的レビューを行っても,確実性の高いエビデンスに基づく推奨作成が困難であるもの。そのため推奨を作成せず,現時点でのエビデンスと今後の展望に関する情報提供を行う。委員会での合意形成は必須ではない。
-S 1171- AI artificial intelligence人工知能AKI acute kidney injury急性腎障害DIC disseminated intravascular coagulation播種性血管内凝固ER emergency room救急外来ESBL extended-spectrum β-lactamase基質特異性拡張型β-ラクタマーゼIVIG intravenous immunoglobulin静注用免疫グロブリン製剤ICU intensive care unit集中治療室ICU-AW ICU-acquired weakness ICU獲得筋力低下MRSA methicillin-resistant Staphylococcus aureusメチシリン耐性黄色ブドウ球菌PICS post-intensive care syndrome集中治療後症候群PICS-F post-intensive care syndrome-family (患者家族に関するPICS) PMX-DHP polymyxin B immobilized fiber column direct hemoperfusionポリミキシンB固定化カラムによる直接血液灌流法SOFA sequential organ failure assessment (SOFAスコア) qSOFA quick sequential organ failure assessment (qSOFA) 図 日本版敗血症診療ガイドライン2024バンドル
-S 1172- CQ1. 敗血症の診断と感染源のコントロール CQ1-1 BQ敗血症の定義敗血症は「感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり,重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義される。CQ1-2 BQ敗血症の診断と重症度分類敗血症は,1感染症もしくは感染症の疑いがあり,かつ2SOFAスコアの合計2点以上の急上昇をもって診断する。また敗血症性ショックは,敗血症の診断基準に加え,平均動脈圧65 mmHg以上を保つために輸液療法に加えて血管収縮薬を必要とし,かつ血中乳酸値2 mmol/L (18 mg/dL)を超える場合に診断する。CQ1-3 BQ一般病棟,ERで敗血症を早期発見する方法は?一般病棟,ERで敗血症を早期に発見する方法として,quick SOFA(qSOFA)や早期警告スコアなどを用いたスクリーニング法がある。CQ1-4 GPS血液培養は,いつ,どのように採取するか?抗菌薬投与前に,2セット以上採取する。CQ1-5 GPS血液培養以外の培養検体は,いつ,どのように採取するか?抗菌薬投与前に,感染が疑われる部位から培養検体を採取する。CQ1-6 BQ敗血症診断のバイオマーカー検査として,C反応性蛋白(CRP),プロカルシトニン(PCT),プレセプシン(P-SEP),インターロイキン6(IL-6)の位置づけは? 一般病棟,ER,ICUのいずれにおいても,CRP,PCT,P-SEP,IL-6は単独で高い診断精度は示されていない。したがって,バイオマーカー単独による敗血症診断は一般的に困難と考えられ,その使用はいずれも全身状態観察などに加えた補助的な位置づけといえる。 CQ1-7 GPS敗血症を疑う患者に対して,感染源検索のために画像検査を行うか?感染源が明らかでない場合は,感染源検索のために疑われる疾患に応じて画像検査を行う。CQ1-8 GPS敗血症の感染源コントロールはどのタイミングで行うか?感染源を同定後,可能な限り速やかに感染源コントロールを実施する。CQ1-9 GPS初期輸液蘇生に不応の敗血症はどこで管理するか?初期輸液蘇生に不応の敗血症は集中治療が行える場所で管理する。FRQ1-1 FRQ ERやICUにおいて,AIを用いた診断システムは従来の診断システムと比較して予後を改善するか? FRQ1-2 FRQ敗血症に対して,遠隔ICUによる支援下での診療を行うか? CQ2. 抗菌薬治療 CQ 2-1 GRADE経験的抗菌薬を選択するうえで,グラム染色検査は有用か?敗血症に対して,経験的抗菌薬を選択するうえでグラム染色検査を利用することを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ2-2 GRADE敗血症に対する経験的抗菌薬は,敗血症認知後1時間以内を目標に投与開始するか?敗血症あるいは敗血症性ショックと認知した後,抗菌薬は可及的早期に開始するが,必ずしも1時間以内という目標は用いないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ2-3 BQ経験的抗菌薬はどのようにして選択するか?疑わしい感染巣ごとに,患者背景,疫学や迅速微生物診断法に基づいて原因微生物を推定し,臓器移行性と耐性菌の可能性も考慮して選択する方法がある。CQ2-4 BQ経験的抗菌薬にカルバペネム系抗菌薬を含めるのはどのような場合か? ESBL産生菌,あるいはカルバペネムのみに感受性を持つ耐性緑膿菌,耐性アシネトバクターなど,カルバペネムが特に有効と考えられる微生物が原因として想定される場合である。CQ2-5 BQどのような場合に,MRSAや一般細菌以外(カンジダ,ウイルス,レジオネラ,リケッチア,クロストリジオイデス ディフィシルなど)に対する経験的抗微生物薬を選択するか?感染巣,患者背景および検査結果などから,それぞれの微生物が原因として想定される場合である。CQ2-6 BQ腎排泄型の抗微生物薬の用量調整に際して,何が参考になるか?複数の時点で測定された腎機能検査値(血清クレアチニン値など)に加えて,体液量の変動,腎代替療法や他の体外循環治療の有無などが参考になる。CQ2-7(SR1)GRADE敗血症に対して,βラクタム系薬の持続投与または投与時間の延長を行うか?敗血症に対するβラクタム系抗菌薬治療において,持続投与もしくは投与時間の延長を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)。CQ2-7(SR2)GRADE敗血症に対して,グリコペプチド系薬の持続投与または投与時間の延長を行うか?敗血症に対するグリコペプチド系抗菌薬治療において,持続投与もしくは投与時間の延長を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ2-8 GRADE敗血症において,therapeutic drug monitoring(TDM)を活用した抗菌薬の用量調整を行うか?敗血症において,TDMを活用した抗菌薬投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2D)。 CQ一覧
-S 1173- CQ2-9 GRADE敗血症に対する抗菌薬治療において,培養結果に基づいたデエスカレーションを行うか?敗血症に対する抗菌薬治療で,デエスカレーションを行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ2-10 GRADE経験的抗真菌薬が投与された敗血症において,β-Dグルカンを指標とした抗真菌薬の中止を行うか?経験的抗真菌薬を投与された敗血症に対して,β-Dグルカンを指標とした抗真菌薬投与の中止を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ2-11 GRADE敗血症に対する抗菌薬治療において,プロカルシトニン(PCT)を指標とした抗菌薬治療の中止を行うか?敗血症に対して,PCTを指標とした抗菌薬治療の中止を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)。CQ2-12 GRADE敗血症に対して,比較的短期間(7日間以内)の抗菌薬治療を行うか?敗血症に対して,比較的短期間(7日間以内)の抗菌薬治療を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 CQ3. 初期蘇生・循環作動薬 CQ3-1 BQ敗血症の初期蘇生における組織低灌流の指標は?敗血症の初期蘇生における組織低灌流の指標として主に血中乳酸値が用いられている。また,毛細血管再充満時間の有用性も報告されている。CQ3-2 GPS敗血症に対する初期蘇生において,心臓超音波検査による心機能・循環血液量評価を行うか?敗血症に対する初期蘇生と並行して,心臓超音波検査による心機能・循環血液量評価を行う。CQ3-3 GRADE敗血症に対する初期蘇生において,平均動脈圧の目標値をいくらとするか?敗血症に対して,平均動脈圧の目標値を65 mmHgとすることを弱く推奨する(GRADE 2C)。 CQ3-4(SR1:調整晶質液) GRADE敗血症に対する初期輸液にどの輸液製剤を用いるか?敗血症の初期輸液療法に生理食塩液と比較して調整晶質液の投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 CQ3-4(SR2:等張アルブミン製剤) GRADE敗血症に対する初期輸液にどの輸液製剤を用いるか?敗血症に対して,晶質液を用いた標準治療に反応せず大量の晶質液を必要とする場合には,初期輸液に等張アルブミン製剤(4~5%)の投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)。 CQ3-4(SR3:人工膠質液) GRADE敗血症に対する初期輸液にどの輸液製剤を用いるか?敗血症に対して,人工膠質液の投与を行わないことを強く推奨する(GRADE 1B)。 CQ3-5 BQ敗血症に対する初期輸液の速度や投与量は?血管内容量減少のある敗血症の初期輸液は,循環血液量を適正化することを目標とし,3時間以内に晶質液30 mL/kg以上の投与を要することがある。ただし,過剰な輸液による害も報告されている。CQ3-6 GRADE敗血症の初期蘇生において,早期に血管収縮薬を使用するか?低血圧を伴う敗血症に対する初期蘇生において,蘇生輸液と並行して,早期に血管収縮薬を投与することを弱く推奨する(GRADE 2C)。 CQ3-7(SR1:ノルアドレナリン) GRADE敗血症性ショックに対して,血管収縮薬をどのように使用するか?敗血症に対する血管収縮薬の第一選択薬として,ノルアドレナリンを使用することを弱く推奨する(GRADE 2D)。 CQ3-7(SR2:ノルアドレナリン+バソプレシン) GRADE敗血症性ショックに対して,血管収縮薬をどのように使用するか?敗血症に対する血管収縮薬の第二選択薬として,バソプレシンを使用することを弱く推奨する(GRADE 2A)。(保険適用外) CQ3-8 GRADE敗血症性ショックに対して,ステロイドを投与するか?初期輸液と血管収縮薬投与に反応しない敗血症性ショックに対して,ショックからの離脱を目的として,低用量ヒドロコルチゾン(200~300 mg/day)を投与することを弱く推奨する(GRADE 2C) 。CQ3-9 GRADE敗血症性ショックに対する初期蘇生において,赤血球輸血を行うヘモグロビンの閾値は?敗血症性ショックに対する初期蘇生において,赤血球輸血を行う閾値はヘモグロビン 7g/dLとすることを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ3-10 GRADE敗血症の初期蘇生後に頻脈が持続する場合に,心拍数管理目的にβ受容体遮断薬を使用するか?初期蘇生後の頻脈に対して,心拍数の管理目的にβ1受容体遮断薬を投与することを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ3-11 GRADE重度の代謝性アシドーシス(pH≦7.2)を伴う敗血症に対して,重炭酸ナトリウムの静脈投与を行うか?重度の代謝性アシドーシス(pH≦7.2)を伴う敗血症に対して,重炭酸ナトリウムの静脈投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ3-12 BQ敗血症性ショックに対する機械的循環補助の適応は?敗血症性ショックにおける心機能不全に対して,体外式膜型人工肺,大動脈内バルーンパンピング,循環補助用心内留置型ポンプカテーテルなどの機械的循環補助の効果に関するエビデンスは十分ではなく,適応は確立していない。CQ3-13 GRADE循環動態が安定した敗血症に対して,制限的輸液管理を行うか?循環動態が安定した敗血症では,低灌流による臓器障害に十分注意しつつ,制限的輸液管理を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。付帯事項:低灌流は,皮膚所見(斑状皮膚や末梢チアノーゼなど),バイタルサイン,毛細血管再充満時間,血中乳酸値,尿量などを用いて総合的に判断する。
-S 1174- FRQ3-1 FRQ敗血症性ショックに対する初期輸液に高張アルブミン製剤(20~25%)を用いるか? FRQ3-2 FRQ敗血症性ショックでノルアドレナリンとバソプレシンを併用しても循環動態の維持が難しい場合にアドレナリンを追加するか? FRQ3-3 FRQ心収縮力低下かつ組織低灌流を伴う敗血症性ショックに対して,強心薬を使用するか? FRQ3-4 FRQ敗血症性ショックに対する初期蘇生後に高張アルブミン製剤(20~25%)を用いて血清アルブミン値を3.0g/dLに維持するか? FRQ3-5 FRQ循環動態が安定している敗血症に対して,赤血球輸血を行うヘモグロビン値の閾値は? CQ4. 急性血液浄化 CQ 4-1 GRADE敗血症に対して,PMX-DHPを行うか?敗血症に対して,PMX-DHPを行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D)。CQ4-2 GRADE敗血症性AKIに対して,早期の腎代替療法を行うか?敗血症性AKIに対して,早期の腎代替療法を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 CQ4-3 GRADE・GPS敗血症性AKIに対する腎代替療法では持続的治療を行うか?敗血症性AKIに対する腎代替療法は,持続的治療・間欠的治療のどちらを選択しても構わない(GRADE 2D)。ただし,循環動態が不安定な症例については持続的治療を選択する(Good Practice Statement)。 CQ4-4 GRADE敗血症性AKIに対する腎代替療法において,血液浄化量の増加を行うか?敗血症性AKIに対して,血液浄化量を国際的な標準量(20~25 mL/kg/hr)よりも増やさないことを強く推奨する(GRADE 1A)。 CQ5. DIC診断と治療 CQ 5-1 BQ敗血症性DICの診断方法は?敗血症におけるDIC診断には目的に応じた複数の診断基準が提唱されている。早期DICの診断や治療開始判断には急性期DIC診断基準やsepsis-induced coagulopathy (SIC)診断基準,進行期DICの診断や死亡予測には国際血栓止血学会overt-DIC診断基準がある。CQ5-2 BQ敗血症性 DIC が疑われる症例での鑑別疾患は? DIC類似病態として,血栓性微小血管障害症(TMA)やヘパリン起因性血小板減少症(HIT)などがあり鑑別を要する。CQ5-3 GRADE敗血症性DIC にアンチトロンビンの投与を行うか?敗血症性DICに対して,アンチトロンビンの投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)。CQ5-4 GRADE敗血症性DICにリコンビナント・トロンボモジュリンの投与を行うか?敗血症性 DICに対して,リコンビナント・トロンボモジュリンの投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)。FRQ5-1 FRQ敗血症性DICに対して,アンチトロンビンとトロンボモジュリンを併用投与するか? FRQ5-2 FRQ敗血症性DICにヘパリン・ヘパリン類の投与を行うか? CQ6. 補助療法 CQ 6-1 GRADE敗血症に対して,免疫グロブリン(IVIG)投与を行うか?敗血症に対して,IVIG投与を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ6-2 GRADE敗血症に対して,大量ビタミンC療法を行うか?敗血症に対して,大量ビタミンC療法を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2B)。CQ6-3 GRADE敗血症の目標血糖値はいくつにするか?敗血症の目標血糖値を144~180 mg/dLとすることを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ6-4 GRADE発熱を伴う敗血症に解熱療法を行うか?発熱を伴う敗血症に対して,解熱療法を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ6-5 GRADE敗血症に消化管出血の予防を目的とした抗潰瘍薬の投与を行うか?敗血症に対して,予防的抗潰瘍薬投与を行うことを弱く推奨する (GRADE 2D)。CQ6-6 BQ低体温を伴う患者の体温管理はどのようにするか?低体温(深部体温<35°C)を呈する敗血症において,低体温に伴う循環障害や凝固異常などを認めるときには,復温療法を行うほうがよいとする意見がある。ただし,復温により末梢血管の拡張が生じ,血圧低下などの新たな有害事象が発生する可能性があるため注意が必要である。CQ6-7 BQ敗血症ではどのように気管挿管を行うか?敗血症において気管挿管が必要な患者は,気道閉塞や低酸素血症だけではなく,ショックや酸素需給バランス障害などが考えられる。気管挿管の際に使用する鎮静薬や鎮痛薬によって循環変動を来す可能性があるため,循環作動薬の準備など適切な循環管理が求められる。FRQ6-1 FRQ劇症型溶血性レンサ球菌感染症に対して,IVIG投与を行うか?
-S 1175- CQ7. PICS対策 CQ7-1 GRADE PICSの予防に早期リハビリテーションを行うか? PICSの予防に早期リハビリテーションを行うことを弱く推奨する(GRADE 2D)。CQ7-2 GRADE ICU-AWの予防に神経筋電気刺激を行うか? ICU-AWの予防に神経筋電気刺激を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ7-3 GRADE ICU退室後に身体機能・認知機能・精神機能改善のためのフォローアップを行うか? ICU退室後に身体機能・認知機能・精神機能改善のためのフォローアップを行うことを弱く推奨する(GRADE 2D)。CQ7-4 GRADE退院後に身体機能・認知機能・精神機能改善のためのリハビリテーションを行うか?退院後に身体機能・認知機能・精神機能改善のためのリハビリテーションを行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。FRQ7-1 FRQ PICSの予防にABCDEFGHバンドルを行うか? CQ8. 家族ケア CQ8-1 GRADE重症患者の家族に対して,文書などによる情報提供を行うか?重症患者の家族に対して,文書などによる集中治療に関連する情報を提供することを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ8-2 BQ重症患者の家族に対する面会制限の緩和とは何か?重症患者の家族に対する面会制限の緩和とは,面会時間や面会者の制限緩和やオンライン面会などの代替面会手段を導入することであり,PICS-Fの予防に有効であるとの意見がある。自施設の状況や個々の症例に応じてその必要性を検討する。CQ8-3 BQ患者の価値観・考え方などを尊重した意思決定支援の方法は?患者や家族を含めた多職種カンファレンスで議論を重ね,患者の価値観や意向を尊重した意思決定を支援するなどの方法がある。患者の意思が不明確な場合には,家族等の代理意思推定者を慎重に見極め,患者本人の意思を推定する方法が提案されている。患者の意思を尊重すると同時に,患者・家族に医学的に正確な情報を提供する。CQ8-4 GRADE重症患者に対して,ICU日記をつけるか?重症患者に対して,ICU日記をつけることを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ8-5 GRADE重症患者の家族に対して,メンタルヘルスの改善にICU退室後のフォローアップなどの新たな介入を行うか?重症患者の家族のメンタルヘルスの改善に,体制が整っている施設においては,ICU退室後の対面や電話,オンラインでの面談などのフォローアップを行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 CQ9. 小児 CQ9-1 BQ小児敗血症性ショックに対する経験的抗微生物薬はどのように選択するか?感染臓器,発生場所(市中,院内,ICUなど),患者背景(免疫状態,治療歴など)を考慮して,想定しうる微生物をカバーできる抗微生物薬を選択する。CQ9-2 BQ小児敗血症における初期輸液はどのように行うか?小児敗血症に対しての初期輸液投与法として,調整晶質液に対する反応を評価しながら10~20 mL/kgずつボーラス投与を反復する方法がある。輸液過剰を示唆する臨床所見や輸液に対する反応の鈍化があれば,初期輸液中断の参考になる。特に心不全を合併している場合などはボーラス量や投与速度に注意を要する。輸液速度や輸液量の上限について提示できる情報はない。CQ9-3 BQ小児敗血症性ショックに対する循環作動薬はどのように選択するか?小児敗血症性ショックに対して,身体所見や循環動態パラメータ,心エコー所見などを総合的に判断し,アドレナリンやノルアドレナリンなどを循環作動薬として使用する。CQ9-4 BQ小児敗血症患者に対して,循環作動薬の投与方法はどのようなものがあるか?小児敗血症患者の管理において,輸液不応のショック状態では循環作動薬の迅速な投与開始が重要である。循環作動薬は血管外漏出により組織障害を引き起こすため,一般的には中心静脈路から投与される。しかし末梢静脈路や骨髄路からであっても,適切な濃度かつ短時間であれば投与可能であり,必要な循環作動薬の投与を遅らせてはならない。CQ9-5 GRADE初期輸液と循環作動薬に反応しない小児敗血症性ショックに対して,ステロイド投与を行うか?初期輸液と循環作動薬に反応しない小児敗血症性ショックに対して,ルーチンのステロイド投与を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D)。CQ9-6 GRADE小児敗血症で循環動態が安定している場合に赤血球輸血はどのような閾値で開始するか?循環動態の安定している小児敗血症において,ヘモグロビン値7.0 g/dL を閾値として赤血球輸血を開始することを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ9-7 GRADE小児敗血症に対して,厳密な血糖管理を行うか?小児敗血症に対して,厳密な血糖管理を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。CQ9-8 BQ重症小児患者を中心においた診療,支援方針は?患児の利益を最優先とし,患児やその家族の価値観や意向を尊重した意思決定を支援する必要がある。多職種で構成されたチームで,正確な医学的情報を提供することが不可欠である。特に重症小児患者における診療では,家族のケアへの参加などの環境整備を積極的に行い,意思決定のプロセスを支援することも重要である。FRQ9-1 FRQ小児敗血症患者に対して,IVIG投与を行うか?
-S 1176- CQ1-4 血液培養は,いつ,どのように採取するか? CQ1-5 血液培養以外の培養検体は, いつ, どのように採取するか?敗血症あるいは疑い患者 感染源は同定されたか? 敗血症をどのように診断するか? バイオマーカー検査は?病原微生物の同定は? CQ1-1 敗血症の定義CQ1-2 敗血症の診断と重症度分類CQ1-3 一般病棟,ERで敗血症を早期発見する方法は? AIを用いた診断は? CQ1-7 敗血症を疑う患者に対して,感染源検索のために画像検査を行うか? Yes CQ1-8 敗血症の感染源コントロールはどのタイミングで行うか? No 集中治療が行える場所はあるか? Yes No CQ1-9 初期輸液蘇生に不応の敗血症はどこで管理するか? 適切な場所での診療FRQ1-2 敗血症に対して,遠隔ICUによる支援下での診療を行うか? CQ1-6 敗血症診断のバイオマーカー検査として,C反応性蛋白(CRP),プロカルシトニン(PCT),プレセプシン(P-SEP),インターロイキン6(IL-6)の位置づけは? FRQ1-1 ERやICUにおいて,AIを用いた診断システムは従来の診断システムと比較して予後を改善するか? 診療フロー
-S 1177- く受け入れられてきた。Sepsis-3の定義のもとで行われた疫学研究では,ショックを伴わない敗血症患者の死亡率は10.1%,敗血症性ショック患者の死亡率は28.5%であったことが報告され,感染症による重篤な病態を的確にとらえていることが確認された7)。Sepsis-3をSepsis-1,Sepsis-2と比較し,その妥当性を検証する研究も行われ,Sepsis-3による定義では,より重症病態の患者を同定できるとしている8-10)。 J-SSCG 2012においては11),それまで敗血症の必要条件として認識されていた菌血症と敗血症の区別を明確にし,敗血症の定義をSepsis-1に準じることとした。その後,2016年にSepsis-3が公表されたことを受け, J-SSCG 201612, 13),J-SSCG 202014, 15)ではSepsis-3に準じて敗血症を定義した。本ガイドラインでも, Sepsis-3に準じて敗血症を定義する。 Sepsis-1,Sepsis-2からSepsis-3へ変遷したように,敗血症の定義は今後も見直される可能性があり,その背景を十分に理解して適切に活用することが重要である。 文 献 1) Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al: The third international consensus definitions for sepsis and septic shock (Sepsis-3). JAMA. 2016; 315: 801-10. 2) Bone RC, Fisher CJ Jr, Clemmer TP, et al: Sepsis syndrome: a valid clinical entity. Methylprednisolone severe sepsis study group. Crit Care Med. 1989; 17: 389-93. 3) Bone RC, Balk RA, Cerra FB, et al: Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. The ACCP/SCCM Consensus Conference Committee. American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine. Chest. 1992; 101: 1644-55. 4) Levy MM, Fink MP, Marshall JC, et al; International Sepsis Definitions Conference: 2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference. Intensive Care Med. 2003; 29: 530-8. 5) Vincent JL, Opal SM, Marshall JC, et al: Sepsis definitions: time for change. Lancet. 2013; 381: 774-5. 6) Pittet D, Rangel-Frausto S, Li N, et al: Systemic inflammatory response syndrome, sepsis, severe sepsis and septic shock: incidence, morbidities and outcomes in surgical ICU patients. Intensive Care Med. 1995; 21: 302-9. 7) Shah AD, MacCallum NS, Harris S, et al: Descriptors of Sepsis Using the Sepsis-3 Criteria: A Cohort Study in Critical Care Units Within the U.K. National Institute for Health Research Critical Care Health Informatics Collaborative. Crit Care Med. 2021; 49: 1883-94. 8) Sterling SA, Puskarich MA, Glass AF, et al: The Impact of the Sepsis-3 Septic Shock Definition on Previously Defined Septic Shock Patients. Crit Care Med. 2017; 45: 1436-42. 9) Estenssoro E, Kanoore Edul VS, Loudet CI, et al: Predictive Validity of Sepsis-3 Definitions and Sepsis Outcomes in Critically Ill Patients: A Cohort Study in 49 ICUs in Argentina. Crit Care Med. 2018; 46: 1276-83. 10) Engoren M, Seelhammer T, Freundlich RE, et al: A Comparison of Sepsis-2 (Systemic Inflammatory Response Syndrome Based) to Sepsis-3 (Sequential Organ Failure Assessment Based) CQ1-1:敗血症の定義 Answer:敗血症は「感染症に対する生体反応が調節 不能な状態となり,重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義される(BQに対する情報提示)。 (1)背景 敗血症は「感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり,重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義される。また敗血症性ショックは,「急性循環不全により細胞障害・代謝異常が重度となり,ショックを伴わない敗血症と比べて死亡の危険性が高まる状態」と定義され,敗血症における最重症の病態である。これらの定義は,2016年に発表された「The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock(Sepsis-3)1)」に準じる。 (2)解説 敗血症の定義は時代とともに変遷してきたが,近年の定義は1989年にBoneらによってsepsis syndromeとして記述されたことに始まる2)。この考え方を受けて, 1992年に米国集中治療医学会と米国胸部疾患学会により全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)の概念が紹介され,敗血症は「感染症によるSIRS」と定義された(Sepsis-1)3)。Sepsis-1は広く受け入れられたが,敗血症の病態生理を反映した定義を作成することを目的に,2003年にSepsis-1の基準を拡大する形でSepsis-2が定義された4)。この定義では24項目から構成される診断基準が提案されたが, Sepsis-1と比較して敗血症診断における感度,特異度に差はなく,簡便なSepsis-1の定義に代わるものではなかった5)。 Sepsis-1の定義は約25年間広く用いられてきたが, SIRSを用いた敗血症診断は感度が高い反面,臓器障害の進展や生命予後に対する診断特異性が低いという課題があった6)。また敗血症の病態が,単に炎症だけでなく,感染に対する宿主の複合的反応とそれに伴う臓器障害を中心に理解されるようになった。これらの視点から,敗血症の定義が2016年にSepsis-3として公表された1)。Sepsis-3では,「感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり,重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義され,SOFA[sequential(sepsisrelated)organ failure assessment]スコアを用いた臨床における診断基準が提示された。 Sepsis-3は,感染症における臓器障害の進行に着目したものであり,2016年の発表以来,国際的にも広
-S 1178- CQ1-2:敗血症の診断と重症度分類 Answer:敗血症は,1感染症もしくは感染症の疑い があり,かつ2SOFAスコアの合計2点以上の急上昇をもって診断する。また敗血症性ショックは,敗血症の診断基準に加え,平均動脈圧65 mmHg以上を保つために輸液療法に加えて血管収縮薬を必要とし,かつ血中乳酸値2 mmol/L(18 mg/dL)を超える場合に診断する(BQに対する情報提示)。 (1)背景 診断と重症度判定は,敗血症診療の起点となる重要なプロセスである。2016年に敗血症の定義と診断基準(Sepsis-3)が改訂された。日本でも多くの施設ではSepsis-3に準じた診断・重症度分類を行っていると考えられ,その改訂の経緯,評価,課題を知ることは重要であり,本ガイドラインの臨床疑問のひとつとして取り上げた。 (2)解説 2016年に公表されたSepsis-31)で,敗血症は「感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり,重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義される。Sepsis-3では感染症による臓器障害の進展を重要な治療ターゲットと位置づけ,SOFAスコア(Table 1-2-1)を用いた診断基準を提唱した。この診断基準は, J-SSCG 2020 2, 3),およびSSCG 20214)でも採用され,国内外に広く普及している。本ガイドラインでもSepsis-3を採用し,以下に敗血症および敗血症性ショックの診断基準を紹介する。 Sepsis-3では,敗血症診断のプロセスを,ICUあるいはそれに準じる環境と,ICUの外(病院前救護, ER,一般病棟)の環境に分けて提案している。ICUでは,感染症または感染症が疑われる患者において, SOFAスコア5)の推移を評価し,臓器障害の重症度や進行を把握することが推奨されている。Seymourら6)はICU症例を対象とした大規模観察研究を行い, SOFAスコアが院内死亡の予測に有効であると報告した。その結果,Sepsis-3ではSOFAスコアの総得点が2点以上急上昇した場合を重篤な臓器障害の進行とみなし,敗血症の確定診断とすることが提唱された。 SOFAスコアの評価には複数の血液検査指標を要することが問題視されるが,SOFAスコアは日本の特定集中治療室管理料算定にかかる必須評価項目であるため,ICUにおける日常診療としてSOFAスコアを用いることは可能である。 Definitions-A Multicenter Retrospective Study. Crit Care Med. 2020; 48: 1258-64. 11) 織田成人, 相引眞幸, 池田寿昭, 他; 日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会: 日本版敗血症治療ガイドライン The Japanese Guideline for Management of Sepsis; 日集中医誌. 2013; 20: 124-73. 12) 西田修, 小倉裕司, 井上茂亮, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2016作成特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2016. 日集中医誌. 2017; 24: S1-232. 13) 西田修, 小倉裕司, 井上茂亮, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2016作成特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2016. 日救急医会誌. 2017; 28: S1-232. 14) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 15) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411.
-S 1179- Sepsis-3における敗血症・敗血症性ショックの診断 基準に関する問題点として,1qSOFAは敗血症診断の感度が低く,単独での早期スクリーニングに懸念があること,2SOFAスコアの不均一性,再現性の問題,新規治療評価の必要性などが指摘され,世界的にも見直し(SOFA2.0への改訂)が求められていること12), 3感染症を疑う基準が不明瞭であること13),4乳酸値測定のルーチン化の問題があること,5迅速な診断と初期治療の開始が必ずしも一体化していないこと,などが指摘されている。したがって,実際の臨床では, Sepsis-3が策定された経緯や現状の課題を理解し,患者の状態に応じた迅速かつ適切な診断を行うことが重要である。 文 献 1) Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al: The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016; 315: 801-10. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 3) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 4) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 5) Vincent JL, Moreno R, Takala J, et al: The SOFA (Sepsis-related Organ Failure Assessment) score to describe organ dysfunction/ failure. On behalf of the Working Group on Sepsis-Related Problems of the European Society of Intensive Care Medicine. Intensive Care Med. 1996; 22: 707-10. 6) Seymour CW, Liu VX, Iwashyna TJ, et al: Assessment of clinical criteria for sepsis: for the third international consensus definitions for sepsis and septic shock (Sepsis-3). JAMA. 2016; 315: 762-74. 7) American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference: definitions for sepsis and organ 一方,ICU外では,SOFAスコアの評価が困難な場合もあるため,quick SOFA(qSOFA)1)を用いた敗血症のスクリーニングが提唱された。qSOFAは,意識,収縮期血圧,呼吸数の3項目から成るスクリーニングシステムであり,2項目以上が満たされる場合に敗血症を疑う。ICU以外で感染が疑われる成人患者を対象としたコホート解析で,qSOFAはSIRS7)やSOFAスコアと比較して,院内死亡の予測に優れていた。しかし,その後の検証研究では,敗血症診断や院内死亡に対する感度が低いことが報告され,最近ではベッドサイドにおけるスクリーニングシステムとしての有用性は疑問視されている8-10)。また,qSOFAを用いて敗血症を疑った場合でも,敗血症の確定診断はSOFAスコアを用いて行う必要がある。 敗血症性ショックは,敗血症の最重症の状態である。Sepsis-3では,輸液蘇生だけでは血圧を維持できずノルアドレナリンなどの血管収縮薬を必要とし,さらに血中乳酸値が2 mmol/L(18 mg/dL)を超える状態を敗血症性ショックと定義している。この診断基準の策定にあたって,Shankar-Hariら11)は敗血症性ショックに関する臨床研究を対象とした系統的レビューを行い, Delphi法などを用いて「持続する低血圧」,「血管収縮薬を用いた治療」,「血中乳酸値」の3つの組み合わせにより新しい敗血症性ショックの診断項目とすることを提唱した。さらにSurviving Sepsis Campaignデータベース28,150例を用いたコホート研究より血中乳酸値を評価できる18,840例を抽出し,乳酸値>2 mmol/ L(18 mg/dL)を敗血症性ショックの診断の閾値と定めた。J-SSCG 2020同様,本ガイドラインにおいても採用する方針とした。 Table 1-2-1 SOFAスコア スコア0 1 2 3 4 意識Glasgow coma scale 15 13~14 10~12 6~9 <6呼吸PaO2/FIO2(mmHg) ≧400 <400 <300 <200および呼吸補助<100および呼吸補助循環平均血圧≧ 70mmHg平均血圧< 70mmHgドパミン<5 μg/kg/分あるいはドブタミンドパミン5~15 μg/kg/分あるいは ノルアドレナリン≦0.1 μg/kg/分あるいはアドレナリン≦0.1 μg/kg/分ドパミン>15 μg/kg/分あるいは ノルアドレナリン>0.1 μg/kg/分あるいはアドレナリン>0.1 μg/kg/分肝血清ビリルビン値(mg/dL) <1.2 1.2~1.9 2.0~5.9 6.0~11.9 ≧12.0腎血清クレアチニン値(mg/dL)尿量(mL/日) <1.2 1.2~1.9 2.0~3.4 3.5~4.9 <500 ≧5.0 <200凝固血小板数(×103/ μL) ≧150 <150 <100 <50 <20
-S 1180- CQ1-3:一般病棟,ERで敗血症を早期発見する 方法は? Answer:一般病棟,ERで敗血症を早期に発見する 方法として,quick SOFA(qSOFA)や早期警告スコアなどを用いたスクリーニング法がある(BQに対する情報提示)。 (1)背景 敗血症を早期に発見し治療を開始することで,予後が改善する可能性がある1)。特に一般病棟やERでは,敗血症を想起して発見することで治療開始のタイミングを逃さないようにする必要があり,早期に認知することは重要なポイントである。Sepsis-3において敗血症のスクリーニングとして提唱されたqSOFAは感度が低い可能性が指摘されており,全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)やnational early warning score(NEWS)といったスコアを含めた知見を整理することは臨床において有用である。 (2)解説 敗血症の早期発見と早期介入は,死亡率改善には不可欠である。敗血症の早期発見により,遅滞なき輸液蘇生や抗菌薬投与などが可能となり,患者の予後が改善しうる2)。2019年の日本の多施設データベースを用いた後ろ向き観察研究では,敗血症の感染巣は肺(31%),腹腔(26%),尿路(18%),軟部組織(11%)の順に頻度が高く,また敗血症の中でショックを合併する割合は腹腔内感染症(72%)と尿路感染症(70%)で高かった。そのため,これらの感染症では敗血症の合併に特に留意することが大切である3)。一方,敗血症と敗血症以外の感染症で病態生理が大きく異なるわけではなく,時系列で変化するものである。よって,敗血症患者のみを抽出するような診断基準は極めてむずかしい。そのため,近年では死亡率の高い,高度な医療を必要とする感染症群をどのように検出するかという観点で診断基準が作成されている。 1991年にSIRSをもとにした敗血症の定義が提唱された4)(Table 1-3-1)。SIRSは敗血症の早期発見のツールとしての特異度が低く,一般病棟の患者でも約半数がSIRSの2項目を満たしてしまうなどの問題点が指摘された5)。 2016年にSepsis-3の定義とともに,病棟やERで敗血症を疑うスクリーニングツールとしてSIRSより項目数を減らしたqSOFAが提唱された6)(Table 1-3-2)。 failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med. 1992; 20: 864-74. 8) Peake SL, Delaney A, Bailey M, et al; ARISE Investigators: Potential impact of the 2016 consensus definitions of sepsis and septic shock on future sepsis research. Ann Emerg Med. 2017; 70: 553-61.e1. 9) Maitra S, Som A, Bhattacharjee S: Accuracy of quick Sequential Organ Failure Assessment (qSOFA) score and systemic inflammatory response syndrome (SIRS) criteria for predicting mortality in hospitalized patients with suspected infection: a meta-analysis of observational studies. Clin Microbiol Infect. 2018; 24: 1123-9. 10) Song JU, Sin CK, Park HK, et al: Performance of the quick Sequential (sepsis-related) Organ Failure Assessment score as a prognostic tool in infected patients outside the intensive care unit: a systematic review and meta-analysis. Crit Care. 2018; 22: 28. 11) Shankar-Hari M, Phillips GS, Levy ML, et al; Sepsis Definitions Task Force: Developing a new definition and assessing new clinical criteria for septic shock: For the third international consensus definitions for sepsis and septic shock (Sepsis-3). JAMA. 2016; 315: 775-87. 12) Moreno R, Rhodes A, Piquilloud L, et al: The Sequential Organ Failure Assessment (SOFA) Score: has the time come for an update? Crit Care. 2023; 27: 15. 13) IDSA Sepsis Task Force: Infectious Diseases Society of America (IDSA) POSITION STATEMENT: Why IDSA Did Not Endorse the Surviving Sepsis Campaign Guidelines. Clin Infect Dis. 2018; 66: 1631-5.
-S 1181- National PEWSは他の6つのPEWSと比較してERの小児発熱患者のICU/HCU入室予測能に優れていることが示された[Area under the curve(AUC)0.95,6点以上で感度90%,特異度91%]22)。 一方,qSOFAに関しても小児領域での検討が行われている。ERを受診した細菌感染症の疑われる小児患者864名におけるPICU入室または死亡の予測能に関する研究では,年齢調整を加えたqSOFA,乳酸値を加えたqSOFA-L,SIRS,quick Pediatric Logistic Organ Dysfunction Score-2(qPELOD-2)の中でqSOFAの予測能が最も高いが(感度50%,特異度93%),中等度に留まることが示された(AUROCは順に0.72, 0.67,0.64,0.60)23)。また,2020年の後ろ向き観察研究では,年齢層に応じた基準値に照らしてqSOFAを修正し,意識レベル・心拍数・呼吸数・capillary refill timeの4項目を評価するLiverpool quick Sequential Organ Failure Assessment(LqSOFA)が発表された24)。ERに来院した小児発熱患者に対するPEWS, LqSOFA,qSOFA,NICE high-risk criteriaのICU/HCU入室予測能に関して,AUROCは順に0.93,0.81, 0.66,0.81であったが,LqSOFAのICU/HCU入室予測に最適な閾値は示せなかった24)。 敗血症の早期発見のためのスクリーニングは,いずれも単独で使用する際には注意が必要であり,スコアリングの特性や限界をよく理解して用いる必要がある。 Table 1-3-1 SIRSの定義4) 体温>38°C あるいは <36°C心拍数>90 /min呼吸数>20 /minあるいはPaCO2<32 mmHg白血球数>12,000/mm3 あるいは <4,000/mm3 あるいは 幼若球>10%上記4項目のうち,2項目以上を満たす場合に,全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)と定義する。感染症が疑われる状態において,SIRSを満たす場合に,敗血症と診断していた。 Table 1-3-2 qSOFA(quick SOFA)基準6)意識変容呼吸数≧22 /min収縮期血圧≦100 mmHg感染症が疑われ,上記3項目のうち2項目以上を満たす場合に敗血症を疑う。敗血症の確定診断は,合計SOFAスコアの2点以上の急上昇による。 文 献 1) Kadri SS, Rhee C, Strich JR, et al: Estimating Ten-Year Trends in Septic Shock Incidence and Mortality in United States Academic Medical Centers Using Clinical Data. Chest. 2017;151:278-85. 2) Bhattacharjee P, Edelson DP, Churpek MM: Identifying Patients With Sepsis on the Hospital Wards. Chest. 2017; 151: 898-907. qSOFAは,病棟やERにおける敗血症患者の院内死亡率,急性臓器障害,ICU緊急入室に関して高い診断特異性を示した7)。また,院内死亡率の予測因子を評価した10編の研究のメタ解析では,SIRSよりqSOFAが有用と報告されている[リスク比(RR)0.03,95% CI: 0.01~0.05,P=0.002)]8)。一方,qSOFAは敗血症を認識するには感度が低い可能性がある9)。 院内の急変事例を早期に発見・対応するrapid response system(RRS)の起動指標をスコア化したNEWS(Table 1-3-3)も,敗血症の早期発見のツールとして評価されている10)。Redfernらは,感染症が疑われる非ICU患者における院内死亡の予測(area under the Receiver Operating Characteristic curve: AUROC)ではNEWSがqSOFAよりも優れている(NEWS: 0.805 vs. qSOFA: 0.677)と報告している11)。また,NEWSのスコア項目を調整・変更したスコアリングも複数開発されており,敗血症の早期発見に関する検討が行われているが,その他のスクリーニングツールと比較し臨床的に優れた診断精度は示されていない12, 13)。 SIRS,qSOFA,NEWSの敗血症の診断精度を比較した研究は散見されるが,2021年の前向き観察研究では,ERで感染症が疑われた患者における敗血症診断に関する感度はそれぞれ77%,23%,58%であり,特異度は35%,99%,81%であった14)。また,30日死亡に対する感度はそれぞれ82%,39%,77%,特異度は29%,91%,64%であり,30日死亡の予測能(AUROC)はSIRSで有意に低かった(それぞれ0.542, 0.758,0.772)14)。また,2021年に26研究(62,338人)を対象としたメタ解析が行われ,SIRS,qSOFA, NEWSの敗血症患者の死亡予測能が比較された15)。SIRSは高い感度(82%)と低い特異度(24%),qSOFAは低い感度(46%)と高い特異度(82%)を持つことが示され,またNEWSは中等度の感度(73%)と中等度の特異度(52%)を持つことが示された15)。 小児領域でも,状態変化の早期発見ツールとしてpediatric early warning score(PEWS)の効果が検討されている。PEWSは開発当初は施設間で異なる基準が用いられ,複数の系統的レビューでPEWSの有用性が明確に示されなかった16-18)。2018年,国際的多施設クラスターRCTであるEPOCH study(21施設,144,539人)では,PEWS使用により全原因死亡の減少を認めなかったものの,臨床的増悪事象の発生率は減少したことが報告されている(入院日数1,000日あたり0.50件 vs. 0.84件)19)。その後,英国においてNational PEWSが導入され,PEWSの基準を統一した20, 21)。Romaineらによる後ろ向き観察研究において,
-S 1182- 16) Chapman SM, Wray J, Oulton K, et al: Systematic review of paediatric track and trigger systems for hospitalised children. Resuscitation. 2016; 109: 87-109. 17) Lambert V, Matthews A, MacDonell R, et al: Paediatric early warning systems for detecting and responding to clinical deterioration in children: a systematic review. BMJ Open. 2017; 7: e014497. 18) Trubey R, Huang C, Lugg-Widger FV, et al: Validity and effectiveness of paediatric early warning systems and track and trigger tools for identifying and reducing clinical deterioration in hospitalised children: a systematic review. BMJ Open. 2019; 9: e022105. 19) Parshuram CS, Dryden-Palmer K, Farrell C, et al; Canadian Critical Care Trials Group and the EPOCH Investigators: Effect of a Pediatric Early Warning System on All-Cause Mortality in Hospitalized Pediatric Patients: The EPOCH Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018; 319: 1002-12. 20) NHS: National paediatric early warning sysytem (PEWS). Available online at: https://www.england.nhs.uk/get-involved/cyp/ pews/ Accessed November 7, 2023. 21) Roland D, Stilwell PA, Fortune PM, et al: Case for change: a standardised inpatient paediatric early warning system in England. Arch Dis Child. 2021; 106: 648-51. 22) Romaine ST, Sefton G, Lim E, et al: Performance of seven different paediatric early warning scores to predict critical care admission in febrile children presenting to the emergency department: a retrospective cohort study. BMJ Open. 2021; 11: e044091. 23) van Nassau SC, van Beek RH, Driessen GJ, et al: Translating Sepsis-3 Criteria in Children: Prognostic Accuracy of Age-Adjusted Quick SOFA Score in Children Visiting the Emergency Department With Suspected Bacterial Infection. Front Pediatr. 2018; 6: 266. 24) Romaine ST, Potter J, Khanijau A, et al: Accuracy of a Modified qSOFA Score for Predicting Critical Care Admission in Febrile Children. Pediatrics. 2020; 146: e20200782. 3) Abe T, Ogura H, Kushimoto S, et al; JAAM FORECAST group: Variations in infection sites and mortality rates among patients in intensive care units with severe sepsis and septic shock in Japan. J Intensive Care. 2019; 7: 28. 4) Bone RC, Balk RA, Cerra FB, et al: Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. The ACCP/SCCM Consensus Conference Committee. American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine. Chest. 1992; 101: 1644-55. 5) Churpek MM, Zadravecz FJ, Winslow C, et al: Incidence and prognostic value of the systemic inflammatory response syndrome and organ dysfunctions in ward patients. Am J Respir Crit Care Med. 2015; 192: 958-64. 6) Seymour CW, Liu VX, Iwashyna TJ, et al: Assessment of clinical criteria for sepsis: for the third international consensus definitions for sepsis and septic shock (Sepsis-3). JAMA. 2016; 315: 762-74. 7) Song JU, Sin CK, Park HK, et al: Performance of the quick Sequential (sepsis-related) Organ Failure Assessment score as a prognostic tool in infected patients outside the intensive care unit: a systematic review and meta-analysis. Crit Care. 2018; 22: 28. 8) Serafim R, Gomes JA, Salluh J, et al: A Comparison of the Quick-SOFA and Systemic Inflammatory Response Syndrome Criteria for the Diagnosis of Sepsis and Prediction of Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis. Chest. 2018; 153: 646-55. 9) Anand V, Zhang Z, Kadri SS, et al; CDC Prevention Epicenters Program: Epidemiology of Quick Sequential Organ Failure Assessment Criteria in Undifferentiated Patients and Association With Suspected Infection and Sepsis. Chest. 2019; 156: 289-97. 10) Royal College of Physicians: National Early Warning Score (NEWS) 2. Available online at: https://www.rcp.ac.uk/improvingcare/resources/national-early-warning-score-news-2/ 11) Redfern OC, Smith GB, Prytherch DR, et al: A Comparison of the Quick Sequential (Sepsis-Related) Organ Failure Assessment Score and the National Early Warning Score in Non-ICU Patients With/Without Infection. Crit Care Med. 2018; 46: 1923-33. 12) Liu VX, Lu Y, Carey KA, et al: Comparison of Early Warning Scoring Systems for Hospitalized Patients With and Without Infection at Risk for In-Hospital Mortality and Transfer to the Intensive Care Unit. JAMA Netw Open. 2020; 3: e205191. 13) Churpek MM, Snyder A, Han X, et al: Quick Sepsis-related Organ Failure Assessment, Systemic Inflammatory Response Syndrome, and Early Warning Scores for Detecting Clinical Deterioration in Infected Patients outside the Intensive Care Unit. Am J Respir Crit Care Med. 2017; 195: 906-11. 14) Oduncu AF, Kıyan GS, Yalçınlı S: Comparison of qSOFA, SIRS, and NEWS scoring systems for diagnosis, mortality, and morbidity of sepsis in emergency department. Am J Emerg Med. 2021; 48: 54-9. 15) Wang C, Xu R, Zeng Y, et al: A comparison of qSOFA, SIRS and NEWS in predicting the accuracy of mortality in patients with suspected sepsis: A meta-analysis. PLoS One. 2022; 17: e0266755. Table 1-3-3 早期警告スコア national early warning score(NEWS)10) 点数項目3 2 1 0 1 2 3呼吸数(/min) ≦8 9~11 12~20 21~24 ≧ 25 SpO2(%) ≦91 92~93 94~95 ≧ 96酸素投与ありなし体温(°C) ≦35.0 35.1~36.0 36.1~38.0 38.1~39.0 ≧ 39.1血圧(mmHg) ≦90 91~100 101~110 111~219 ≧ 220心拍数(/min) ≦40 41~50 51~90 91~110 111~130 ≧ 131意識覚醒覚醒以外
-S 1183-採血量に関しては,多いほど病原微生物の検出率が 高くなる。しかし,採血量が多くなると医原性貧血を引き起こす可能性があり,また1セットあたり30 mLを超える採血量では検出率向上にあまり寄与しないとされる9)。そのため,一般的には1セットあたり20~ 30 mLの採血量が推奨される。日本で汎用されている血液ボトルの採血量上限は10 mLのものが多いため, 1セットあたり20 mLとすることが一般的である。Cheruvankyらは,医療経済学的には30 mLに比べて20 mLのほうがよいと報告している10)。 何セット採取するかという問題に関しては,1セットだけでは検出率が低下し,またコンタミネーションの評価が困難であるため,少なくとも2セット,可能なら3セット採取するのが望ましいとの報告がある9, 11)。病原微生物の検出率については,セット数を増やせば上昇するが(1セット 73%,2セット 90%,3セット 98%11)),4セット以上採取しても検出率の上昇は見込めず,患者負担が多くなる。一方,血液培養陽性のうち20~56%はコンタミネーションであると報告されており12),複数セットの血液培養結果がコンタミネーションかどうかを判断するうえで参考になる。 また,コンタミネーションを減らすために,適切な皮膚消毒も重要である。1%グルコン酸クロルヘキシジン,ポビドンヨード,70%アルコールのうち,どれが最適な消毒薬かは明らかでない。しかし,アルコール含有製剤の使用は非アルコール含有製剤に比べ,コンタミネーションを減らすことが報告されている13)。いずれにせよ,正確な無菌操作を遵守することが重要である。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Umemura Y, Abe T, Ogura H, et al: Hour-1 bundle adherence was associated with reduction of in-hospital mortality among patients with sepsis in Japan. PLoS One. 2022; 17: e0263936. 4) Fabre V, Sharara SL, Salinas AB, et al: Does This Patient Need Blood Cultures? A Scoping Review of Indications for Blood Cultures in Adult Nonneutropenic Inpatients. Clin Infect Dis. 2020; 71: 1339-47. 5) Coburn B, Morris AM, Tomlinson G, et al: Does this adult patient with suspected bacteremia require blood cultures? JAMA. 2012; 308: 502-11. 6) Samuel L: Direct-from-Blood Detection of Pathogens: a Review of Technology and Challenges. J Clin Microbiol. 2023; 61: e0023121. 7) Chandrasekar PH, Brown WJ: Clinical issues of blood cultures. CQ1-4:血液培養は,いつ,どのように採取す るか? Answer:抗菌薬投与前に,2セット以上採取する (Good Practice Statement)。 (1)背景 敗血症の診療において,原因となる病原微生物の同定は適切な抗菌薬治療を進めるために重要である。血液培養に関する一般的な推奨はJ-SSCG 2020においても記載されているが1, 2),依然として臨床では十分に実践されていないため3),本ガイドラインでも踏襲する。 (2)解説 菌血症は,心内膜炎,カテーテル関連血流感染症,肺炎,膿瘍,骨髄炎,腹腔内感染症,尿路感染症などの感染症で生じ,高い死亡率を示している。敗血症においては,38~69%で菌血症を合併することが報告されている4, 5)。各種の迅速診断法が開発されているものの6),現在でも血液培養は敗血症の病原微生物を同定する標準的検査法である。 菌血症を疑う症状(発熱,悪寒・戦慄など)の出現,原因不明の低体温,低血圧,頻呼吸,意識障害(特に高齢者や小児),白血球数増加や減少,代謝性アシドーシス,免疫不全患者における呼吸不全・急性腎障害・急性肝障害などがみられた場合は敗血症を疑い,できるだけ早急に血液培養を2セット以上採取することが推奨されている7)。悪寒・戦慄を伴う発熱が生じた場合は菌血症の陽性尤度比が高い4)。一方,菌血症の可能性が低い場合の発熱や白血球数の上昇のみでは必ずしも血液培養を採取しなくてもよいとする報告もある5)。 原則として,抗菌薬治療の開始が遅滞しないよう留意しつつ,抗菌薬投与前に血液培養を採取する。なぜなら,抗菌薬投与後では検出率が低下し,病原微生物を同定できない可能性が高まるためである。敗血症患者を対象とした観察研究において,抗菌薬投与後に採取された血液培養の微生物検出率は,抗菌薬投与前に採取された群に比べ低値であったことが報告されている(19% vs. 31%)8)。術後感染や入院患者の敗血症の場合は,事前に抗菌薬が投与されている場合が少なくない。しかし,前述の研究において,抗菌薬投与後の血液培養でも約2割の症例において微生物が検出されており8),このような患者においても,新規抗菌薬の投与前に血液培養2セット以上を採取する。
-S 1184- CQ1-5:血液培養以外の培養検体は,いつ,ど のように採取するか? Answer:抗菌薬投与前に,感染が疑われる部位から 培養検体を採取する(Good Practice Statement)。 (1)背景 敗血症の診療において,感染臓器および原因微生物の同定は重要である。J-SSCG 2020においても,感染が疑われる部位からの検体を抗菌薬開始前に採取しておくことの重要性が述べられている1, 2)。敗血症診療において,各種検体特有の留意点の整理が必要と考え,本ガイドラインにおいても取り上げた。 (2)解説 血液培養は,血流感染や菌血症を診断する標準的検査法である。敗血症性ショック患者の血液培養検査陽性率は69%との報告があるが,疾患によってはその陽性率は高くないため,血液培養のみでの原因微生物の同定には限界がある3, 4)。また感染臓器の検索においても,血液培養だけで臓器を特定することはできない。検体を抗菌薬開始前に採取することによって,予後を改善するというエビデンスはないものの,臨床像より感染が疑われる部位からできるだけ早期に検体を採取することが多くのガイドラインで推奨されている5-7)。ここでは,培養検体採取と結果の解釈に注意すべき点を有するいくつかの疾患について触れる。 肺炎が疑われる場合,下気道検体の培養が診断の手助けになる。特に重症肺炎や,患者背景にMRSAや緑膿菌のリスク因子がある場合は強く推奨されている8)。しかし,喀痰培養は上気道細菌叢のコンタミネーションのリスクを伴っているため,結果の解釈には注意を要する。患者が人工呼吸管理のために気管挿管されている場合,気管吸引痰を採取して定量培養を行う。抗菌薬投与前の吸引痰の菌数が105 CFU/mL以上の場合の感度は76%,特異度は68%と報告されている。気管支肺胞洗浄液は感度71%,特異度80%であり,最も特異度が高いとされる9)。しかし,人工呼吸器関連肺炎の診断において,培養検体として吸引痰と気管支肺胞洗浄液のどちらを用いるかについては統一された見解はない。米国ガイドラインでは非侵襲的な吸引痰を推奨している一方,欧州では気管支肺胞洗浄液を推奨しており,呼吸状態や各施設の状況を考慮して判断する10, 11)。またARDSの原因となるウイルス性肺炎,真菌性肺炎の鑑別のための気管支肺胞洗浄液の有用性に関するエビデンスは限定的である12)。 Arch Intern Med. 1994; 154: 841-9. 8) Cheng MP, Stenstrom R, Paquette K, et al; FABLED Investigators: Blood Culture Results Before and After Antimicrobial Administration in Patients With Severe Manifestations of Sepsis: A Diagnostic Study. Ann Intern Med. 2019; 171: 547-54. 9) Cockerill FR 3rd, Wilson JW, Vetter EA, et al: Optimal testing parameters for blood cultures. Clin Infect Dis. 2004; 38: 1724-30. 10) Cheruvanky A, Kirn TJ, Weinstein MP: Cost-effectiveness of 30compared to 20-milliliter blood cultures: a retrospective study. J Clin Microbiol. 2016; 54: 64-7. 11) Lee A, Mirrett S, Reller LB, et al: Detection of bloodstream infections in adults: how many blood cultures are needed? J Clin Microbiol. 2007; 45: 3546-8. 12) Lamy B, Dargère S, Arendrup MC, et al: How to optimize the use of blood cultures for the diagnosis of bloodstream infections? A state-of-the art. Front Microbiol. 2016; 7: 697. 13) Doern GV, Carroll KC, Diekema DJ, et al: Practical Guidance for Clinical Microbiology Laboratories: A Comprehensive Update on the Problem of Blood Culture Contamination and a Discussion of Methods for Addressing the Problem. Clin Microbiol Rev. 2019; 33: e00009-19.
-S 1185- 7) 細菌性髄膜炎診療ガイドライン作成委員会: 細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014. 南江堂, 東京, 2014. 8) Metlay JP, Waterer GW, Long AC, et al: Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America. Am J Respir Crit Care Med. 2019; 200: e45-67. 9) Fernando SM, Tran A, Cheng W, et al: Diagnosis of ventilatorassociated pneumonia in critically ill adult patients-a systematic review and meta-analysis. Intensive Care Med. 2020; 46: 1170-9. 10) Kalil AC, Metersky ML, Klompas M, et al: Management of Adults With Hospital-acquired and Ventilator-associated Pneumonia: 2016 Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America and the American Thoracic Society. Clin Infect Dis. 2016; 63: e61-111. 11) Torres A, Niederman MS, Chastre J, et al: International ERS/ ESICM/ESCMID/ALAT guidelines for the management of hospital-acquired pneumonia and ventilator-associated pneumonia: Guidelines for the management of hospital-acquired pneumonia (HAP)/ventilator-associated pneumonia (VAP) of the European Respiratory Society (ERS), European Society of Intensive Care Medicine (ESICM), European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases (ESCMID) and Asociación Latinoamericana del Tórax (ALAT). Eur Respir J. 2017; 50: 1700582. 12) 日本集中治療医学会/日本呼吸器学会/日本呼吸療法医学会ARDS診療ガイドライン作成委員会: ARDS診療ガイドライン2021. 日集中医誌. 2022; 29: 295-332. 13) Pernille H, Lars B, Marjukka M, et al: Sampling of urine for diagnosing urinary tract infection in general practice - First-void or mid-stream urine? Scand J Prim Health Care. 2019; 37: 113-9. 14) Chan-Tack KM, Trautner BW, Morgan DJ, et al: The varying specificity of urine cultures in different populations. Infect Control Hosp Epidemiol. 2020; 41: 489-91. 15) Sieger N, Kyriazis I, Schaudinn A, et al: Acute focal bacterial nephritis is associated with invasive diagnostic procedures-a cohort of 138 cases extracted through a systematic review. BMC Infect Dis. 2017; 17: 240. 16) LaRocco MT, Franek J, Leibach EK, et al: Effectiveness of Preanalytic Practices on Contamination and Diagnostic Accuracy of Urine Cultures: a Laboratory Medicine Best Practices Systematic Review and Meta-analysis. Clin Microbiol Rev. 2016; 29: 105-47. 17) Bodilsen J, Dalager-Pedersen M, Schønheyder HC, et al: Time to antibiotic therapy and outcome in bacterial meningitis: a Danish population-based cohort study. BMC Infect Dis. 2016; 16: 392. 18) McGill F, Heyderman RS, Panagiotou S, et al: Acute bacterial meningitis in adults. Lancet. 2016; 388: 3036-47. 19) Gray LD, Fedorko DP: Laboratory diagnosis of bacterial meningitis. Clin Microbiol Rev. 1992; 5: 130-45. 20) Bijlsma MW, Brouwer MC, Kasanmoentalib ES, et al: Community-acquired bacterial meningitis in adults in the Netherlands, 2006-14: a prospective cohort study. Lancet Infect Dis. 2016; 16: 339-47. 尿路感染症の多くは,大腸常在菌による上行性尿路感染である。健康な妊娠のない女性の尿路感染症における尿培養の感度は90%,特異度は86%と報告されている13, 14)。腎盂腎炎と似た症状を呈する急性巣状細菌性腎炎では,尿培養の感度は59%と低いため診断には注意を要する15)。カテーテルを用いないで採尿する場合,コンタミネーションを減らすために中間尿を用いることが推奨されている16)。また高齢者や尿道カテーテルが留置されている患者においては,無症候性細菌尿の可能性がある6)。そのため,身体所見,尿沈渣や血液培養などの結果から,他臓器の感染に合併した無症候性細菌尿との鑑別を総合的に判断する。 頭痛,意識障害などにより細菌性髄膜炎が疑われる場合,頭部CTや臨床所見より脳ヘルニアが疑われず,腰椎穿刺が禁忌でなければ抗菌薬投与前に髄液を採取することが望ましい。しかし,抗菌薬投与が遅れることで死亡率が高くなると報告されている6, 17)。髄液採取に時間がかかる場合には,血液培養を提出したうえで,抗菌薬投与を優先する。髄液培養の陽性率は,未治療では70~80%,抗菌薬治療後では50%以下といわれている6, 18)。髄液検体の採取量が多いほど,また遠心(1,500~2,500×g,15分)を行うことで,髄液培養の陽性率は高くなる19)。一方,最も頻度の高い肺炎球菌性髄膜炎の血液培養の陽性率は75%と報告されており20),抗菌薬を髄液検査に先行する場合でも,事前に血液培養を採取しておくことが診断の一助となる。 原因微生物の同定は,感染症診療の適正化に重要である。敗血症においては,治療に遅れが生じないように注意を払いつつ,可能な限り抗菌薬投与前に感染が疑われる部位から検体採取を行う。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Coburn B, Morris AM, Tomlinson G, et al: Does this adult patient with suspected bacteremia require blood cultures? JAMA. 2012; 308: 502-11. 4) Fabre V, Sharara SL, Salinas AB, et al: Does This Patient Need Blood Cultures? A Scoping Review of Indications for Blood Cultures in Adult Nonneutropenic Inpatients. Clin Infect Dis. 2020; 71: 1339-47. 5) 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017作成委員会:成人肺炎診療ガイドライン2017. 日本呼吸器学会, 東京, 2017. 6) 山本新吾, 石川清仁, 速見浩士, 他: JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―. 日化療会誌. 2015; 64: 1-30.
-S 1186- された。またより大規模な59編(7,376人)を用いたメタ解析3)では,感度79%,特異度78%,AUC 0.85と報告された。 P-SEPの診断精度は,19編(3,012人)を用いたメタ解析4)で感度84%,特異度73%,AUC 0.87と報告された。また18編(3,470人)を用いたメタ解析5)においても感度84%,特異度76%,AUC 0.88と,ほぼ同等の診断精度が報告された。 IL-6の診断精度は,22編(2,680人)を用いたメタ解析6)が行われ,感度68%,特異度73%,AUC 0.80と報告された。また22編(3,450人)を用いたメタ解析3)では感度72%,特異度73%,AUC 0.79と報告された。 各バイオマーカーの診断精度をTable 1-6-1にまとめる。バイオマーカーによって差があるものの,いずれも単独で診断が可能であるほどの診断精度は示されていない。敗血症は,感染臓器,基礎疾患などにより病態としての異質性が高く,一般病棟,ER,ICUのいずれにおいても,全身状態観察などに加えた補助的な指標として使用するのが適切である。 文 献 1) Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al: The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016; 315: 801-10. 2) Tan M, Lu Y, Jiang H, et al: The diagnostic accuracy of procalcitonin and C-reactive protein for sepsis: A systematic review and meta-analysis. J Cell Biochem. 2019; 120: 5852-9. 3) Liu Y, Hou JH, Li Q, et al: Biomarkers for diagnosis of sepsis in patients with systemic inflammatory response syndrome: a systematic review and meta-analysis. Springerplus. 2016; 5: 2091. 4) Kondo Y, Umemura Y, Hayashida K, et al: Diagnostic value of procalcitonin and presepsin for sepsis in critically ill adult patients: a systematic review and meta-analysis. J Intensive Care. 2019; 7: 22. 5) Wu CC, Lan HM, Han ST, et al: Comparison of diagnostic accuracy in sepsis between presepsin, procalcitonin, and C-reactive protein: a systematic review and meta-analysis. Ann Intensive Care. 2017; 7: 91. 6) Ma L, Zhang H, Yin YL, et al: Role of interleukin-6 to differentiate sepsis from non-infectious systemic inflammatory response syndrome. Cytokine. 2016; 88: 126-35. CQ1-6:敗血症診断のバイオマーカー検査とし て,C反応性蛋白(CRP),プロカルシトニン (PCT),プレセプシン(P-SEP),インターロイ キン6(IL-6)の位置づけは? Answer:一般病棟,ER,ICUのいずれにおいても, CRP,PCT,P-SEP,IL-6 は単独で高い診断精度は示されていない。したがって,バイオマーカー単独による敗血症診断は一般的に困難と考えられ,その使用はいずれも全身状態観察などに加えた補助的な位置づけといえる(BQに対する情報提示)。 (1)背景 敗血症は,「感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり,重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義される1)。しかし,臨床診断が難しい場合も多く,多様なバイオマーカーが参照される。J-SSCG 2020では,C-reactive protein(CRP),procalcitonin (PCT),presepsin(P-SEP),interleukin-6(IL-6)の4種類のバイオマーカーについて,全身状態観察などに加えた補助的な利用を推奨した。敗血症の診断において,これらのバイオマーカーの有用性評価は重要であり,本ガイドラインでも臨床課題として取り上げた。 (2)解説 4種類のバイオマーカーを用いた敗血症診断に関して,多くの観察研究による系統的レビューが報告されている。 CRPによる敗血症の診断精度を検証した9編(1,368人)を用いたメタ解析2)では,感度80%,特異度61%, AUC 0.73と報告された。また,より大規模な45編(5,654人)を用いたメタ解析3)では,感度75%,特異度67%,AUC 0.77と報告された。 PCTによる診断精度は,9編(1,368人)を用いたメタ解析2)で感度80%,特異度77%,AUC 0.85と報告 Table 1-6-1 各バイオマーカーの敗血症診断精度 バイオマーカー著者,発表年組入れ論文数患者数感度特異度AUC CRP Tan 20192) 9 1,368 0.80[95% CI: 0.63~0.90]0.61[95% CI: 0.50~0.72]0.73[95% CI: 0.69~0.77] Liu 20163) 45 5,654 0.75[95% CI: 0.69~0.79]0.67[95% CI: 0.58~0.74]0.77[95% CI: 0.73~0.81] PCT Tan 20192) 9 1,368 0.80[95% CI: 0.69~0.87]0.77[95% CI: 0.60~0.88]0.85[95% CI: 0.82~0.88] Liu 20163) 59 7,376 0.79[95% CI: 0.75~0.83]0.78[95% CI: 0.74~0.81]0.85[95% CI: 0.82~0.88] P-SEP Kondo 20194) 19 3,012 0.84[95% CI: 0.80~0.88]0.73[95% CI: 0.61~0.82]0.87[95% CI: 0.84~0.90] Wu 20175) 18 3,470 0.84[95% CI: 0.80~0.87]0.76[95% CI: 0.67~0.82]0.88[95% CI: 0.85~0.90] IL-6 Liu 20163) 22 3,450 0.72[95% CI: 0.63~0.80]0.73[95% CI: 0.67~0.79]0.79[95% CI: 0.75~0.82] Ma 20166) 22 2,680 0.68[95% CI: 0.65~0.70]0.73[95% CI: 0.71~0.76]0.80* AUC: Area under the curve; CRP: C-reactive protein; PCT: procalcitonin; IL-6: Interleukin-6; P-SEP: Presepsin. *引用文献に95% CIの記載なし
-S 1187- れない場合の原因検索などに有用である12)。 感染性心内膜炎:感染性心内膜炎の診断は,超音波検査により疣腫,膿瘍,仮性動脈瘤,心内瘻孔,弁穿孔または弁瘤,新たな弁逆流の出現,人工弁の新たな部分剥離を確認することが有用である13)。2023年Duke-ISCVID基準では,画像診断の第一選択は超音波検査としながらも,検査が可能な施設では心臓CT検査や18F-FDG PET/CT(positron emission tomography/ computed tomography with 18F-fluorodeoxyglucose)検査が新たに画像検査として推奨されている14)。経食道心臓超音波検査と心臓CT検査の比較では,疣贅や弁の穿孔や心内瘻孔に関しては経食道心臓超音波検査,仮性動脈瘤や膿瘍に関しては心臓CT検査の方が診断感度として高いことから,両者の併用が推奨されている14)。3腹部 急性腹症:急性腹症診療ガイドライン201515)では,単純X線検査をルーチンで行う意義は乏しく,スクリーニングとしては超音波検査を推奨している。単純CT検査に関しては,感度,特異度,正診率ともに96.0%,95.1%,95.6%と良好ではあるが,被曝を考慮する必要がある。そのため,超音波検査で陰性または診断に至らなかった際の推奨となっている。臓器虚血の有無,血管性病変,急性膵炎の重症度判定においては,造影CT検査が推奨されている。 胆管炎・胆嚢炎:急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン201816)では,超音波検査がまず行われる検査となり,次いでCT検査となっている。MRI/MRCP(magnetic resonance cholangio pancreatgraphy)は,超音波検査やCT検査で診断ができない際に考慮する1, 2)。壊疽性胆嚢炎の診断は,CT検査やMRI/MRCPが有用である。 閉塞性尿路感染症17):第一選択は超音波検査であり,閉塞性腎盂腎炎の診断感度は90%,特異度は97%とされる。CT検査は,超音波検査で診断困難な場合や腎外病変の診断における有用性が報告されている。閉塞の原因検索には造影剤使用が望ましいが,結石による閉塞であれば単純CT検査でも評価可能である 。4その他 壊死性軟部組織感染症18):CT検査やMRI検査で筋膜面に広がる浮腫を確認する。しかし,初期にはこれらの画像所見を認めないこともあるため,臨床的に外科処置による皮下組織や筋膜の観察を行うことが最も重要である。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン CQ1-7:敗血症を疑う患者に対して,感染源検 索のために画像検査を行うか? Answer:感染源が明らかでない場合は,感染源検索 のために疑われる疾患に応じて画像検査を行う(Good Practice Statement)。 (1)背景 敗血症治療において,感染源のコントロールは患者の転帰改善につながる重要な治療である。そのため,敗血症を疑う患者に対してコントロールが必要な感染源の存在を評価することは重要であり,疑われる疾患に応じて画像検査を考慮する必要があると考え, J-SSCG 2020 1, 2)に引き続き本CQでも取り上げた。 (2)解説 適切な感染源のコントロールは,敗血症治療における原則である。SSCG 20213)においても,感染源の制御が生存率の改善につながるため4-6),初期の蘇生処置に引き続き画像診断を行い,迅速な感染源への介入を行うことが推奨されている7, 8)。感染源のコントロールとは,膿瘍ドレナージ,壊死組織除去,感染の可能性のある異物の除去である。感染源検索のためには,超音波検査,単純X線検査,CT検査,MRI検査などの画像検査が用いられる。部位により有用性の高い検査は異なるので,適切な検査を選択する(Table 1-7-1)。以下に,主に用いられる画像診断法について解説する。なお,検査によっては,被曝や造影剤使用に伴うリスクを考慮する必要があり,血行動態が不安定な患者では検査室への移動中の急変にも注意する。1頭頸部 脳膿瘍9):造影CT検査により,膿瘍の数,大きさ,部位の診断ができる。MRI検査では,拡散強調像(diffusion weighted image: DWI)と見かけの拡散係数(apparent diffusion coefficient: ADC)を用いたADC mapを組み合わせて評価することにより,膿瘍とその他の疾患を鑑別するのに有用である。 頸部膿瘍10):体表に近い頸部膿瘍は超音波検査で検出可能であるが,深頸部膿瘍の検出には限界があり, CT検査が有用である。造影CT検査は,感染による液体貯留と血管などの構造物を明瞭に鑑別できる。2胸部 膿胸:単純胸部X線検査に加えて超音波検査を行うことが,米国胸部外科学会のガイドラインで推奨されている11)。造影CT検査は,膿胸を疑う場合の感染源の推定や胸腔ドレーンによる治療開始後も改善が見ら
-S 1188- Criteria. Clin Infect Dis. 2023; 77: 518-26. 15) 真弓俊彦, 吉田雅博, 古川顕, 他; 急性腹症診療ガイドライン出版委員会: 急性腹症診療ガイドライン2015. 医学書院, 東京, 2015; p.96-112. 16) 高田忠敬, 吉田雅博, 真弓俊彦, 他; 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン改訂出版委員会: 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018. 医学図書出版, 東京, 2018; p. 57-112. 17) Tamburrini S, Lugarà M, Iannuzzi M, et al: Pyonephrosis Ultrasound and Computed Tomography Features: A Pictorial Review. Diagnostics (Basel). 2021; 11: 331. 18) Stevens DL, Bisno AL, Chambers HF, et al: Practice guidelines for the diagnosis and management of skin and soft tissue infections: 2014 update by the infectious diseases society of America. Clin Infect Dis. 2014; 59: 147-59. 2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 4) Bloos F, Rüddel H, Thomas-Rüddel D, et al; MEDUSA study group: Effect of a multifaceted educational intervention for antiinfectious measures on sepsis mortality: a cluster randomized trial. Intensive Care Med. 2017; 43: 1602-12. 5) Kim H, Chung SP, Choi SH, et al; Korean Shock Society (KoSS) Investigators: Impact of timing to source control in patients with septic shock: A prospective multi-center observational study. J Crit Care. 2019; 53: 176-82. 6) Martínez ML, Ferrer R, Torrents E, et al; Edusepsis Study Group: Impact of Source Control in Patients With Severe Sepsis and Septic Shock. Crit Care Med. 2017; 45: 11-9. 7) Azuhata T, Kinoshita K, Kawano D, et al: Time from admission to initiation of surgery for source control is a critical determinant of survival in patients with gastrointestinal perforation with associated septic shock. Crit Care. 2014; 18: R87. 8) Bloos F, Thomas-Rüddel D, Rüddel H, et al; MEDUSA Study Group: Impact of compliance with infection management guidelines on outcome in patients with severe sepsis: a prospective observational multi-center study. Crit Care. 2014; 18: R42. 9) Brouwer MC, Tunkel AR, McKhann GM 2nd, et al: Brain abscess. N Engl J Med. 2014; 371: 447-56. 10) Maroldi R, Farina D, Ravanelli M, et al: Emergency imaging assessment of deep neck space infections. Semin Ultrasound CT MR. 2012; 33: 432-42. 11) Shen KR, Bribriesco A, Crabtree T, et al: The American Association for Thoracic Surgery consensus guidelines for the management of empyema. J Thorac Cardiovasc Surg. 2017; 153: e129-46. 12) Bedawi EO, Ricciardi S, Hassan M, et al: ERS/ESTS statement on the management of pleural infection in adults. Eur Respir J. 2023; 61: 2201062. 13) 中谷敏, 大原貴裕, 芦原京美, 他: 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版). 日本循環器学会, 2018. 14) Fowler VG, Durack DT, Selton-Suty C, et al: The 2023 Duke-International Society for Cardiovascular Infectious Diseases Criteria for Infective Endocarditis: Updating the Modified Duke Table 1-7-1 感染源コントロールが必要な疾患と画像検査 部位疾患主に想定される画像検査 超音波検査単純X線検査CT検査MRI検査 頭頸部脳膿瘍造影〇〇 頸部膿瘍〇造影〇胸部膿胸〇〇造影〇 感染性心内膜炎〇*心臓CT 18F-FDG PET/CT 腹部腹膜炎〇〇† 胆管炎・胆嚢炎〇造影〇〇閉塞性尿路感染症〇〇その他壊死性軟部組織感染症〇〇18F-FDG PET/CT: positron emission tomography/computed tomography with 18F-fluorodeoxyglucose. *画像不良で診断できない症例または陰性であっても臨床的に疑われる場合,人工弁例やその他のデバイスが挿入されている場合には経食道心臓超音波検査を行うことが,感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)では推奨されている13)。†臓器虚血や血管性病変,急性膵炎の評価においては造影CT検査が推奨される。
-S 1189- 化が起こる時期(通常発症4週以降)に内視鏡的もしくは経皮的ドレナージを行うことが推奨されている8)。ただし,臓器不全や敗血症が持続するなど臨床的な改善が乏しい場合は,ステップアップ・アプローチに従い4週未満でもドレナージを実施することは許容され9-12),ネクロセクトミーは4週以降に実施することが望ましいとされる8)。 尿路閉塞に起因する急性腎盂腎炎は,経尿道的尿管ステント留置術あるいは経皮的腎瘻造設術による迅速な感染源のコントロールを行う。米国泌尿器科学会ガイドラインでは,尿管閉塞に起因する腎盂腎炎や膿腎症において迅速な閉塞の解除が推奨されている13)。また,欧州泌尿器科学会ガイドラインにおいても,速やかな閉塞の解除が強く推奨されている14)。尿管閉塞の緊急解除の方法である経尿道的尿管ステント留置術と経皮的腎瘻造設術には,合併症に関する有意な差は認められない15)。 壊死性軟部組織感染症は,早期の外科的コントロールが必要な疾患である。敗血症の原因となっている壊死組織に対し,外科的デブリードマンを行うことで感染源の確実なコントロールが可能となり,生命予後や治療日数の短縮などの望ましい効果が得られる。また,壊死性軟部組織感染症は急速に進行することがあるため,タイムリーな外科的デブリードマンが必要である。観察研究のメタ解析では,来院後12時間以内にデブリードマンが行われた群では,12時間後以降に行われた群と比べて死亡率が低かったことが報告されている16)。 カテーテル関連血流感染症が疑われる敗血症において,診断と対処の遅れは転帰悪化につながりうる。血管カテーテル感染は,カテーテル抜去を行わなければ予後の悪化につながるため,迅速なカテーテルの抜去が望ましい17)。SSCG 2021では,敗血症や敗血症性ショックの感染源の可能性がある血管カテーテルは,他の血管カテーテルを挿入後直ちに抜去することが推奨されている18)。 膿胸も感染源のコントロールが必要な病態であり,開胸によるドレナージ,または経皮的胸腔ドレナージが行われる。被包化膿胸は通常の抗菌薬治療のみでは改善せず,敗血症から回復する可能性は低いと考えられる。英国胸部疾患学会ガイドラインや米国胸部疾患学会ガイドラインでは,膿胸の患者には経皮的胸腔ドレナージを実施し,胸部X線や全身状態を観察することが推奨されている19, 20)。抗菌薬投与とドレナージにより5~7日以内に改善がみられない,すなわち胸水の増量や症状が軽快しない場合には,外科的手術も CQ1-8:敗血症の感染源コントロールはどのタ イミングで行うか? Answer:感染源を同定後,可能な限り速やかに感染 源コントロールを実施する(Good Practice Statement)。 (1)背景 敗血症の診療において,適切な感染源のコントロールは重要である。感染源コントロールの方法には,外科手術,膿瘍ドレナージ,胆道/胆嚢ドレナージ,カテーテル類の抜去などがある。J-SSCG 2020においても,感染源コントロールを可及的速やかに実施することの重要性が述べられている1, 2)。 (2)解説 敗血症の診療において,感染源のコントロールは重要臨床課題である。本ガイドラインでは敗血症に対する感染源のコントロールのタイミングをCQとして扱うこととしたが,質の高いエビデンスは存在しなかった。また,感染源のコントロールを実施することの益が害を上回ることが予想される場合も多く,今後もRCTの実施は困難であると考えられる。したがって,一般臨床医を含めた敗血症診療に従事する医療者に適切なメッセージを届けるため,本CQをGPSとして推奨することとした。 多くの腹腔内感染症は,適切な感染源のコントロール(外科手術および膿瘍,胆道/胆嚢を含むドレナージ)が必要である。下部消化管穿孔による汎発性腹膜炎など,抗菌薬治療のみでは改善する可能性が乏しい腹腔内感染症による敗血症では,迅速な感染源のコントロールが求められる。米国外科感染症学会のガイドラインでは,迅速な感染源のコントロールの重要性が強調されている3, 4)。また,敗血症と診断後12時間以内(中央値4.6時間)に感染源のコントロールを受けた患者では,感染源のコントロールを受けなかった患者に比べて重症度が高かったにもかかわらず死亡率は低いことが報告されている5)。その他,消化管穿孔による敗血症性ショックの患者において,入院から感染源コントロールまでの時間が長いほど,死亡率が高値であったとする報告がある6)。敗血症・敗血症性ショックにより全身状態が不良となっている場合でも,感染源コントロールを実施することの益が害を上回ると判断されるならば実施を考慮する7)。 しかし,腹腔内感染症の中でも感染性膵壊死は,早期介入の一般原則が該当しない。感染性膵壊死に対しては,保存的治療で全身状態が保たれていれば,被包
-S 1190- 17) Garnacho-Montero J, Aldabó-Pallás T, Palomar-Martínez M, et al: Risk factors and prognosis of catheter-related bloodstream infection in critically ill patients: a multicenter study. Intensive Care Med. 2008; 34: 2185-93. 18) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 19) Davies HE, Davies RJ, Davies CW; BTS Pleural Disease Guideline Group. Management of pleural infection in adults: British Thoracic Society Pleural Disease Guideline 2010. Thorax. 2010; 65: ii41-53. 20) Colice GL, Curtis A, Deslauriers J, et al: Medical and surgical treatment of parapneumonic effusions : an evidence-based guideline. Chest. 2000; 118: 1158-71. 21) Redden MD, Chin TY, van Driel ML: Surgical versus non-surgical management for pleural empyema. Cochrane Database Syst Rev. 2017; 3: CD010651. 考慮する19)。経皮的ドレナージと開胸ドレナージについて,いずれの方法も合併症に有意差を認めなかったと報告されている21)。 以上をまとめると,敗血症の感染源コントロールは,感染源が同定され次第,その害と益を迅速に判断したうえで速やかに実施する。ただし,感染性膵壊死については,早期感染源コントロールの一般原則が必ずしも該当しない。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Solomkin JS, Mazuski JE, Bradley JS, et al: Diagnosis and management of complicated intra-abdominal infection in adults and children: guidelines by the Surgical Infection Society and the Infectious Diseases Society of America. Surg Infect (Larchmt). 2010; 11: 79-109. 4) Mazuski JE, Tessier JM, May AK, et al: The Surgical Infection Society Revised Guidelines on the Management of Intra- Abdominal Infection. Surg Infect (Larchmt). 2017; 18: 1-76. 5) Martínez ML, Ferrer R, Torrents E, et al; Edusepsis Study Group: Impact of Source Control in Patients With Severe Sepsis and Septic Shock. Crit Care Med. 2017; 45: 11-9. 6) Azuhata T, Kinoshita K, Kawano D, et al: Time from admission to initiation of surgery for source control is a critical determinant of survival in patients with gastrointestinal perforation with associated septic shock. Crit Care. 2014; 18: R87. 7) Ross JT, Matthay MA, Harris HW: Secondary peritonitis: principles of diagnosis and intervention. BMJ. 2018; 361: k1407. 8) 急性膵炎診療ガイドライン2021 改訂出版委員会: 急性膵炎診療ガイドライン2021(第5版). 金原出版, 東京, 2021. 9) Trikudanathan G, Tawfik P, Amateau SK, et al: Early (<4 Weeks) Versus Standard (≥ 4 Weeks) Endoscopically Centered Step-Up Interventions for Necrotizing Pancreatitis. Am J Gastroenterol. 2018; 113: 1550-8. 10) Mallick B, Dhaka N, Gupta P, et al: An audit of percutaneous drainage for acute necrotic collections and walled off necrosis in patients with acute pancreatitis. Pancreatology. 2018; 18: 727-33. 11) Chantarojanasiri T, Yamamoto N, Nakai Y, et al: Comparison of early and delayed EUS-guided drainage of pancreatic fluid collection. Endosc Int Open. 2018; 6: E1398-405. 12) Oblizajek N, Takahashi N, Agayeva S, et al: Outcomes of early endoscopic intervention for pancreatic necrotic collections: a matched case-control study. Gastrointest Endosc. 2020; 91: 1303-9. 13) Assimos D, Krambeck A, Miller NL, et al: Surgical Management of Stones: American Urological Association/Endourological Society Guideline, PART I. J Urol. 2016; 196: 1153-60. 14) Türk C, Petřík A, Sarica K, et al: EAU Guidelines on Interventional Treatment for Urolithiasis. Eur Urol. 2016; 69: 475-82. 15) Borofsky MS, Walter D, Shah O, et al: Surgical decompression is associated with decreased mortality in patients with sepsis and ureteral calculi. J Urol. 2013; 189: 946-51. 16) Nawijn F, Smeeing DPJ, Houwert RM, et al: Time is of the essence when treating necrotizing soft tissue infections: a systematic review and meta-analysis. World J Emerg Surg. 2020; 15: 4.
-S 1191- 遷延,呼吸状態の悪化,乳酸クリアランス不良などが含まれる。ただし,適切な病床選択には,重症度だけでなく,必要となる医療資源,回復の見込み,患者の意向などを総合的に判断する。患者が積極的な治療を希望しない場合の意思決定支援の方法に関しては, CQ8-3を参照されたい。 「集中治療が行える場所」の条件は,患者因子と環境因子に左右されるため明文化することは難しいが,日本の特定集中治療室管理料,小児特定集中治療室管理料,救命救急入院料の要件などはひとつの基準になる。日本の敗血症性ショック患者10,818人を対象としたデータベース研究では,ICUに入室した患者では, HDU(high-dependency care unit)に入室した患者と比べ,30日死亡率が低いことが報告されている(調整ハザード比 0.89,95% CI: 0.83~0.96)5)。また,日本の敗血症患者1,167,901人を対象としたデータベース研究では,傾向スコアマッチング後の院内死亡率はICU患者で25.8%,非ICU患者で29.2%(差−3.4%,95% CI: −3.7~−3.1)であり,ICU入室が院内死亡率低下と関連する可能性が示唆された6)。「集中治療が行える場所」として,集中治療科医の関わり方も重要である。系統的レビューにより, high-intensity ICU(集中治療科医が決定権を持つclosed ICU,または全症例で集中治療科医へのコンサルトが必須)はlow-intensity ICU(各科が独自に管理するopen ICU,または集中治療科医が不在)に比べ,重症患者の院内死亡率低下(リスク比 0.83,95% CI: 0.70~ 0.99),入院期間短縮(加重平均の差−0.17日, 95% CI: −0.31~−0.03日)と関連することが報告されている7)。日本の敗血症患者1,018例を対象としたFORECAST研究では,closed ICUとopen ICUで院内死亡率に有意差はなかったが8),敗血症患者2,495例を対象としたデータベース研究では,closed ICUはopen ICUと比べ,生存退院率の改善(オッズ比 1.59,95% CI: 1.276~1.827)と関連していた9)。また,敗血症患者1,849人を対象とした観察研究において,早期のICU入室と28日死亡率低下の関連が報告されている10)。これらの観察研究は,敗血症患者を集中治療が行える場所で早期に管理することで予後が改善する可能性を示唆している。 小児の敗血症治療では,初期輸液蘇生に不応と判断された時点で気管挿管・人工呼吸管理の開始や,循環作動薬の導入を考慮することが診療アルゴリズムにおいて示されている11, 12)。小児の敗血症患者においても,「初期輸液蘇生に不応」という目安をもって集中治療管理への移行を判断するのは妥当であろう。すな CQ1-9:初期輸液蘇生に不応の敗血症はどこで 管理するか? Answer:初期輸液蘇生に不応の敗血症は集中治療が 行える場所で管理する(Good Practice Statement)。 (1)背景 敗血症はどの診療科,医療施設でも遭遇しうる頻度の高い病態であり,様々な医療者が診療に携わる。敗血症患者が重症化した場合には高度な集中治療が必要となる。日本では欧米に比べて集中治療科医も集中治療病床も少なく1, 2),一般病床で昇圧薬管理や人工呼吸管理などが行われる例もある。適切な医療資源・環境が提供されることで敗血症患者の予後が改善される可能性があり,本CQを取り上げた。 (2)解説 敗血症の罹患率は高く,集中治療を専門としない医療者も診療する病態である。一般病床で治療可能なこともあるが,重症度が高いあるいは重症化した場合にはケアレベルの高い病床での管理を要するため,適切な病床を選択する必要がある。診療スキルを備えたスタッフ,モニタリング機器,人工呼吸器などの診療に必要な医療資源を十分に提供できない環境では,患者の転帰に悪影響が及ぶ可能性がある。適切な病床選択は,施設の機能,規模,病床使用状況によっても左右されるため,一概に患者の重症度と適切な病床区分を対応させることはできない3)。初期輸液蘇生に不応な患者に適切な治療を提供することを目的として,本CQをGPSとして推奨するに至った。なお,院外への搬送では移動中のリスク,距離,方法なども勘案する。 初期輸液蘇生に不応の敗血症患者を対象としたが,質の高いエビデンスは見当たらなかった。米国集中治療医学会のICU admission, discharge, and triage guidelines(ADTガイドライン)では,生命の危険がある敗血症患者をICUで治療することを弱く推奨している4)。本ガイドラインでは,ICUのない環境で診療している医療者も対象としていること,敗血症の表現型が多様であるため可能な限りシンプルな基準が望ましいことを考慮して,「初期輸液蘇生に不応の敗血症患者」を集中治療が行える場所で管理する対象患者基準とした。「初期輸液蘇生に不応の敗血症」は敗血症性ショックを想定しているが,定義上必要となる乳酸値測定ができない施設も多い状況を考慮した対象患者とした。「不応」という範疇には,持続性低血圧,意識障害の
-S 1192- Executive Summary. Pediatr Crit Care Med. 2017; 18: 884-90. 13) Tilford JM, Simpson PM, Green JW, et al: Volume-outcome relationships in pediatric intensive care units. Pediatrics. 2000; 106: 289-94. 14) Marcin JP, Song J, Leigh JP: The impact of pediatric intensive care unit volume on mortality: a hierarchical instrumental variable analysis. Pediatr Crit Care Med. 2005; 6: 136-41. 15) Pearson G, Shann F, Barry P, et al: Should paediatric intensive care be centralised? Trent versus Victoria. Lancet. 1997; 349: 1213-7. 16) Markovitz BP, Kukuyeva I, Soto-Campos G, et al: PICU Volume and Outcome: A Severity-Adjusted Analysis. Pediatr Crit Care Med. 2016; 17: 483-9. 17) Ramnarayan P, Thiru K, Parslow RC, et al: Effect of specialist retrieval teams on outcomes in children admitted to paediatric intensive care units in England and Wales: a retrospective cohort study. Lancet. 2010; 376: 698-704. 18) Moynihan K, McSharry B, Reed P, et al: Impact of Retrieval, Distance Traveled, and Referral Center on Outcomes in Unplanned Admissions to a National PICU. Pediatr Crit Care Med. 2016; 17: e34-42. 19) Hamrin TH, Berner J, Eksborg S, et al: Characteristics and outcomes of critically ill children following emergency transport by a specialist paediatric transport team. Acta Paediatr. 2016; 105: 1329-34. わち,院内の集中治療が行える病床へ患者を転床するか,重症小児患者の管理に熟練した近隣施設への転送を検討する。敗血症に限らず,重症小児患者の診療成績に関しては患者数の増加と良好な治療成績の間に関連が見られる13-16)。重症小児患者の搬送に熟練したチームが搬送を担えば,患者の生命予後は悪化しないとの報告もあり17-19),病院間搬送の適否や手段を検討する際に考慮されたい。 日本においては,集中治療が可能な環境として人員,チームや設備を整えることに依然多くの課題が残る。日本の少ない集中治療科医と集中治療病床を鑑みた敗血症患者の適切な管理の場の設定については,さらなる研究が必要である。 文 献 1) 橋本悟: わが国の集中治療医学の現況とこれからの課題 ─新専門医制度をふまえて─. ICUとCCU. 2013; 37: 113-8. 2) 内野滋彦: わが国の集中治療室は適正利用されているのか.日集中医誌. 2010; 17: 141-4. 3) Marshall JC, Bosco L, Adhikari NK, et al: What is an intensive care unit? A report of the task force of the World Federation of Societies of Intensive and Critical Care Medicine. J Crit Care. 2017; 37: 270-6. 4) Nates JL, Nunnally M, Kleinpell R, et al: ICU Admission, Discharge, and Triage Guidelines: A Framework to Enhance Clinical Operations, Development of Institutional Policies, and Further Research. Crit Care Med. 2016; 44: 1553-602. 5) Endo K, Mizuno K, Seki T, et al: Intensive care unit versus highdependency care unit admission on mortality in patients with septic shock: a retrospective cohort study using Japanese claims data. J Intensive Care. 2022; 10: 35. 6) Oami T, Imaeda T, Nakada TA, et al: Mortality analysis among sepsis patients in and out of intensive care units using the Japanese nationwide medical claims database: a study by the Japan Sepsis Alliance study group. J Intensive Care. 2023; 11: 2. 7) Wilcox ME, Chong CA, Niven DJ, et al: Do intensivist staffing patterns influence hospital mortality following ICU admission? A systematic review and meta-analyses. Crit Care Med. 2013; 41: 2253-74. 8) Nagata I, Abe T, Ogura H, et al; JAAM FORECAST group: Intensive care unit model and in-hospital mortality among patients with severe sepsis and septic shock: A secondary analysis of a multicenter prospective observational study. Medicine (Baltimore). 2021; 100: e26132. 9) Ogura T, Nakamura Y, Takahashi K, et al: Treatment of patients with sepsis in a closed intensive care unit is associated with improved survival: a nationwide observational study in Japan. J Intensive Care. 2018; 6: 57. 10) Shibata J, Osawa I, Fukuchi K, et al: The Association Between Time From Emergency Department Visit to ICU Admission and Mortality in Patients With Sepsis. Crit Care Explor. 2023; 5: e0915. 11) Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; Surviving Sepsis Campaign Guidelines Committee including The Pediatric Subgroup: Surviving Sepsis Campaign: international guidelines for management of severe sepsis and septic shock, 2012. Intensive Care Med. 2013; 39: 165-228. 12) Davis AL, Carcillo JA, Aneja RK, et al: The American College of Critical Care Medicine Clinical Practice Parameters for Hemodynamic Support of Pediatric and Neonatal Septic Shock:
-S 1193- の提示とした。AIを用いた敗血症診断システムの評価は,今後さらなる研究が必要である。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Fleuren LM, Klausch TLT, Zwager CL, et al: Machine learning for the prediction of sepsis: a systematic review and meta-analysis of diagnostic test accuracy. Intensive Care Med. 2020; 46: 383-400. 4) Shimabukuro DW, Barton CW, Feldman MD, et al: Effect of a machine learning-based severe sepsis prediction algorithm on patient survival and hospital length of stay: a randomised clinical trial. BMJ Open Respir Res. 2017; 4: e000234. 5) Schinkel M, van der Poll T, Wiersinga WJ: Artificial Intelligence for Early Sepsis Detection: A Word of Caution. Am J Respir Crit Care Med. 2023; 207: 853-4. FRQ1-1:ERやICUにおいて,AIを用いた診断 システムは従来の診断システムと比較して予後を 改善するか? (1)背景 敗血症の管理は時間的制約が大きく,死亡を防ぐためには敗血症を早期に予測することが極めて重要である。J-SSCG 2020においても敗血症を早期に疑い,血液培養,抗菌薬投与,初期蘇生などの初期治療バンドルを迅速に進めることが推奨されている1, 2)。近年,高い精度で敗血症の早期診断を可能にするための人工知能(artificial intelligence: AI)ツールが開発され,その有用性が研究されている。これらの背景を考慮して, AIを用いた敗血症診断システムは敗血症患者の予後を改善するかという臨床課題を提示した。 (2)解説 診断性能の系統的レビュー・メタ解析において, AIを用いた敗血症の診断精度は,ICUではAUROCが0.68~0.99,病院内では0.96~0.98,ERでは0.87~ 0.97と報告されている3)。一方,AIを用いたRCTはほとんど報告されておらず,今回の系統的レビューで採用された文献は1つのみであった4)。そのため,臨床における適応は,研究背景を理解し,慎重に検討する必要性があると判断した。この研究は,“InSight”という機械学習ワークフローを使用したICUにおけるRCTである。介入群ではInSightを使用し,対照群は既存の診断ツールが使用された。主要評価項目である平均入院日数は介入群で10.3日,比較群で13.0日と短縮し,副次評価項目である院内死亡も介入群9.0%,対照群21.3%と減少を認めた。InSightは,経時的に測定された収縮期血圧,拡張期血圧,心拍数,呼吸数, SpO2,体温の6つのバイタルサインをもとに,勾配ブースティング決定木という機械学習手法を使用してアウトカムの予測を行うものである。米国においては, InSightはDascena社から入手可能であるが,日本におけるプログラム医療機器としてのSoftware as a Medical Device(SaMD)認証は得ておらず,その実証実験も行われていない。患者層の異なる日本のICUにおいては,予測精度が異なる可能性がある。また,本研究はICUでの使用に限られている。以上より,推奨を提示するためにはエビデンスが不足している。また,AIによる敗血症の早期予測に伴い,不必要な抗菌薬の使用が増える可能性も懸念されており5),未知の有害事象の発生の可能性もある。 以上の理由から,本ガイドラインでは FRQとして
-S 1194- 隔医療機器やソフトウェアの技術的な問題により,遠隔ICUの効果が制限されることもある8)。これらの問題に対処して遠隔ICUを導入,実施するためのモデル参考書が総務省から出版されており,参考にできる9)。 2023年に出版された観察研究を中心とした系統的レビューにおいては,遠隔医療の使用は敗血症診療において有益な可能性があり,特に対照群の生存率が低い治療環境でより効果が高いこと,その効果は医療環境など病院側の因子に影響されることが示されている10)。集中治療の専門家との常時の遠隔相談を介入群としたクラスターRCTでは,遠隔相談の介入群において敗血症患者管理におけるガイドライン遵守率が有意に増加したとの報告がある11)。しかし,現時点では敗血症患者の予後について,遠隔ICUによる有効性を評価した質の高い研究はない。今後,さらなる介入試験や費用対効果などの分析により,敗血症患者に対して遠隔ICUによる支援下での診療の効果についてエビデンスを蓄積していく必要がある。 文 献 1) 厚生省健康政策局長通知. 情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について. 平成9年12月24日付け健政発第1075号. 2) 厚生労働省医政局長通知. 情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について. 平成29年7月14日付け医政発0714第4号. 3) 日本集中治療医学会ad hoc遠隔ICU委員会: 遠隔ICU設置と運用に関するガイドライン改訂版 ─2023年5月─. Available online at: https://www.jsicm.org/pdf/Guidelines_of_Tele-ICU_ JSICM2023.pdf Accessed March 14, 2024. 4) Gaieski DF, Edwards JM, Kallan MJ, et al: The relationship between hospital volume and mortality in severe sepsis. Am J Respir Crit Care Med. 2014; 190: 665-74. 5) Faine BA, Noack JM, Wong T, et al: Interhospital Transfer Delays Appropriate Treatment for Patients With Severe Sepsis and Septic Shock: A Retrospective Cohort Study. Crit Care Med. 2015; 43: 2589-96. 6) West H: Current and Future Questions for Telemedicine Research in Oncology-Moving Beyond Feasibility. JAMA Netw Open. 2022; 5: e2220550. 7) Vranas KC, Slatore CG, Kerlin MP: Telemedicine Coverage of Intensive Care Units: A Narrative Review. Ann Am Thorac Soc. 2018; 15: 1256-64. 8) Machado SM, Wilson EH, Elliott JO, et al: Impact of a telemedicine eICU cart on sepsis management in a community hospital emergency department. J Telemed Telecare. 2018; 24: 202-8. 9) 総務省: 遠隔医療モデル参考書 ─医師対医師(D to D)の遠隔医療版─. 2022年4月28日. Available online at: https://www. soumu.go.jp/main_content/000812534.pdf Accessed March 14, 2024. 10) Tu KJ, Wymore C, Tchangalova N, et al: The impact of telehealth in sepsis care: A systematic review. J Telemed Telecare. 2023; 24: 1357633X231170038. 11) Marx G, Greiner W, Juhra C, et al: An Innovative Telemedical Network to Improve Infectious Disease Management in Critically Ill Patients and Outpatients (TELnet@NRW): Stepped-Wedge Cluster Randomized Controlled Trial. J Med Internet Res. 2022; 24: e34098. FRQ1-2:敗血症に対して,遠隔ICUによる支援 下での診療を行うか? (1)背景 敗血症はどの医療施設でも遭遇しうる病態である。敗血症管理に精通した医療者による適切な治療を行うことが予後改善には必要であるが,集中治療科医などの専門医の数には限りがあり,すべての施設で専門医が敗血症診療を行えるわけではない。近年,ビデオ音声通話やコンピュータシステムネットワークを用いた診療支援である「遠隔ICU」が利用され,医療の質の標準化を担保することが期待されている。 (2)解説 厚生労働省による「遠隔診療に関する通知」において,遠隔医療は「情報通信機器を活用した健康増進,医療に関する行為」と定義されている1, 2)。また,遠隔ICUは遠隔医療のひとつであり,日本集中治療医学会遠隔ICU委員会において「集中治療に成熟した医療従事者が協力して重症患者における医療体制を提供する,ビデオ音声通話やコンピュータシステムなどを用いた集中治療における診療支援システムである」と定義されている3)。2024年度診療報酬改訂によって,特定集中治療室管理料5・6の届け出を行っている施設において算定可能な「特定集中治療室遠隔支援加算」が新設された。 敗血症患者診療数が多い病院では,敗血症患者の死亡率は低い傾向があり,病院によって敗血症診療の質が異なる可能性が示されている4)。敗血症の治療が十分にできない医療機関で敗血症患者が発生した場合,専門治療が可能な医療機関への転院が必要となるが,重篤な状態では転院ならびに適切な敗血症の治療が遅れる可能性も指摘されている5)。遠隔ICUは,集中治療科医などの専門医の不足をカバーし,日本における敗血症患者の診療に役立つ可能性がある。 遠隔診療を行う際には,参加者が,高速かつ信頼できる通信接続,ハードウェア,適切な環境(光,音,空間),技術的熟練,コミュニケーション能力,通話機能を備えていることが前提であり,理想的にはビデオ通話ができるアプリケーションとの組み合わせがよいとされる6)。重症患者に関わる遠隔ICUでは,これらの前提条件が揃う必要があり,どこでも利用できるものではない。遠隔ICUは,集中治療へのアクセスと質を向上させる可能性があるが,遠隔ICUが導入される環境の特性や,遠隔ICU提供者とベッドサイドの臨床医との連携の程度に左右される可能性が高い7)。遠
-S 1195- 敗血症あるいは疑い患者 迅速診断検査 腎機能障害No Yes CQ2-2 敗血症に対する経験的抗菌薬は,敗血症認知後1時間以内を目標に投与開始するか? CQ2-7 敗血症に対して,βラクタム系/グリコペプチド系薬の持続投与または投与時間の延長を行うか? CQ2-8 敗血症において,therapeutic drug monitoring(TDM)を活用した抗菌薬の用量調整を行うか? CQ2-6 腎排泄型の抗微生物薬の用量調整に際して,何が参考になるか? 抗微生物薬投与 臨床症状の改善 No Yes CQ2-1 経験的抗菌薬を選択するうえで,グラム染色検査は有用か? CQ2-9 敗血症に対する抗菌薬治療において,培養結果に基づいたデエスカレーションを行うか? CQ2-10 経験的抗真菌薬が投与された敗血症において,β-Dグルカンを指標とした抗真菌薬の中止を行うか? CQ2-11 敗血症に対する抗菌薬治療において,プロカルシトニン(PCT)を指標とした抗菌薬治療の中止を行うか? CQ2-12 敗血症に対して,比較的短期間(7日間以内)の抗菌薬治療を行うか? CQ2-3 経験的抗菌薬はどのようにして選択するか? CQ2-4 経験的抗菌薬にカルバペネム系抗菌薬を含めるのはどのような場合か? CQ2-5 どのような場合に,MRSAや一般細菌以外(カンジダ,ウイルス,レジオネラ,リケッチア,クロストリジオイデス ディフィシルなど)に対する経験的抗微生物薬を選択するか? 診療フロー
-S 1196- には,細菌の形態学的特徴によって分類する知識と抗菌薬選択に関する知識を持ったスタッフが必要である。そのため実行可能性については病院ごとに異なる。 文 献 1) Wenzel RP: The antibiotic pipeline--challenges, costs, and values. N Engl J Med. 2004; 351: 523-6. 2) Cassell GH, Mekalanos J: Development of antimicrobial agents in the era of new and reemerging infectious diseases and increasing antibiotic resistance. JAMA. 2001; 285: 601-5. 3) WHO. Global action plan on antimicrobial resistance. 2015. http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/193736/1/978924150 9763_eng.pdf. Accessed May 16, 2023. 4) Jones BE, Ying J, Stevens V, et al: Empirical Anti-MRSA vs Standard Antibiotic Therapy and Risk of 30-Day Mortality in Patients Hospitalized for Pneumonia. JAMA Intern Med. 2020; 180: 552-60. 5) Kett DH, Cano E, Quartin AA, et al; Improving Medicine through Pathway Assessment of Critical Therapy of Hospital-Acquired Pneumonia (IMPACT-HAP) Investigators: Implementation of guidelines for management of possible multidrug-resistant pneumonia in intensive care: an observational, multicentre cohort study. Lancet Infect Dis. 2011; 11: 181-9. 6) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 7) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 8) Yoshimura J, Yamakawa K, Ohta Y, et al: Effect of Gram Stain- Guided Initial Antibiotic Therapy on Clinical Response in Patients With Ventilator-Associated Pneumonia: The GRACE-VAP Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2022; 5: e226136. 9) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. CQ2-1:経験的抗菌薬を選択するうえで,グラ ム染色検査は有用か? Answer:敗血症に対して,経験的抗菌薬を選択する うえでグラム染色検査を利用することを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 薬剤耐性菌が世界的に拡散する一方,新たな抗菌薬の開発は減少傾向にある1, 2)。そのため,2015年にWHOにおいてグローバルアクションプランが採択され,広域抗菌薬適正使用の必要性が強調されている3)。過剰な広域抗菌薬の曝露と死亡率の上昇の関連も報告されているが4, 5),安全に広域抗菌薬使用を制限する方法は確立していない。グラム染色検査は短時間で細菌の形態学的特徴を分類でき,適切な経験的抗菌薬選択の指標となる可能性がある。なお,J-SSCG 20206, 7)ではエキスパートコンセンサスとして,経験的抗菌薬を選択するにあたって培養検体のグラム染色所見を参考にすることが推奨されている。 (2)利益と害のバランス 1編の多施設RCT(n=206)を評価した8)。グラム染色を用いた抗菌薬治療により,28日死亡は1,000人あたり38人減少(95% CI: 103人減少~84人増加)し,臨床的治癒は50人増加(65人減少~180人増加)した。さらに抗MRSA薬の使用は390人減少(470人減少~ 280人減少)し,抗緑膿菌活性のある抗菌薬の使用は300人減少(380人減少~200人減少)した。一方,原因菌に対して抗菌活性がある抗菌薬の選択は55人減少(138人減少~28人増加)した。以上のことから,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 検査部門において,日常診療の一環としてグラム染色を行っている施設は多いと考える。一部の施設においては,新規にグラム染色を始めることで検査部門における負担が増加するが,容認可能と考えられる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20219)ではグラム染色の有用性に関する記載はない。 (5)実施に関わる検討事項 グラム染色の結果に基づいて抗菌薬を選択するため
-S 1197- (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20211)では,敗血症または敗血症性ショックを認識してから1時間以内の抗菌薬投与を推奨している。ただし,ショックを伴わない場合は,3時間以内に感染性あるいは非感染性の病因を迅速に評価したうえで,抗菌薬投与の判断を行うことも提案されている。 (5)実施に関わる検討事項 予想される標的微生物をカバーする適切な抗菌薬を選択し,可及的速やかに投与することを否定するものではないことに注意が必要である。 文 献 1) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 2) Marik PE, Farkas JD, Spiegel R, et al; collaborating authors: POINT: Should the Surviving Sepsis Campaign Guidelines Be Retired? Yes. Chest. 2019; 155: 12-4. 3) Abe T, Kushimoto S, Tokuda Y, et al; JAAM FORECAST group: Implementation of earlier antibiotic administration in patients with severe sepsis and septic shock in Japan: a descriptive analysis of a prospective observational study. Crit Care. 2019; 23: 360. 4) Althunayyan SM, Aljanoubi MA, Alghadeer SM, et al: The impact of emergency antibiotic administration time on patients with sepsis. Saudi Med J. 2021; 42: 1002-8. 5) Ascuntar J, Mendoza D, Jaimes F: Antimicrobials administration time in patients with suspected sepsis: is faster better? An analysis by propensity score. J Intensive Care. 2020; 8: 28. 6) Im Y, Kang D, Ko RE, et al; Korean Sepsis Alliance (KSA) investigators: Time-to-antibiotics and clinical outcomes in patients with sepsis and septic shock: a prospective nationwide multicenter cohort study. Crit Care. 2022; 26: 19. 7) Li A, Ling L, Qin H, et al: Epidemiology, Management, and Outcomes of Sepsis in ICUs among Countries of Differing National Wealth across Asia. Am J Respir Crit Care Med. 2022; 206: 1107-16. 8) Tantarattanapong S, Hemwej T: Door-to-antibiotic Time and In-hospital Mortality of Elder Patients Presenting to Emergency Department with Sepsis; a Cross-Sectional Study. Arch Acad Emerg Med. 2021; 9: e44. 9) Ferrer R, Artigas A, Suarez D, et al; Edusepsis Study Group: Effectiveness of treatments for severe sepsis: a prospective, multicenter, observational study. Am J Respir Crit Care Med. 2009; 180: 861-6. 10) Ferrer R, Martin-Loeches I, Phillips G, et al: Empiric antibiotic treatment reduces mortality in severe sepsis and septic shock from the first hour: results from a guideline-based performance improvement program. Crit Care Med. 2014; 42: 1749-55. 11) Gaieski DF, Mikkelsen ME, Band RA, et al: Impact of time to antibiotics on survival in patients with severe sepsis or septic shock in whom early goal-directed therapy was initiated in the emergency department. Crit Care Med. 2010; 38: 1045-53. 12) Puskarich MA, Trzeciak S, Shapiro NI, et al; Emergency Medicine Shock Research Network (EMSHOCKNET): Association between timing of antibiotic administration and mortality from septic shock in patients treated with a quantitative resuscitation protocol. Crit Care Med. 2011; 39: 2066-71. 13) Yokota PK, Marra AR, Martino MD, et al: Impact of appropriate antimicrobial therapy for patients with severe sepsis and septic shock--a quality improvement study. PLoS One. 2014; 9: e104475. CQ2-2:敗血症に対する経験的抗菌薬は,敗血 症認知後1時間以内を目標に投与開始するか? Answer:敗血症あるいは敗血症性ショックと認知し た後,抗菌薬は可及的早期に開始するが,必ずしも1時間以内という目標は用いないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 敗血症に対する抗菌薬投与のタイミングについて, SSCG 20211)では1時間以内の投与が理想的であると推奨されており,これは世界的に受け入れられている。しかし,主に観察研究の結果に基づく推奨であり, 1時間以内の抗菌薬投与に固執することによって原因微生物診断の推定が不十分となり,不必要な広域・多剤抗菌薬投与が増加する可能性がある2)。J-SSCG 2020においても,「エビデンスの確実性は低」としたうえで,抗菌薬は可及的早期に開始するが,必ずしも1時間以内という目標は用いないことを弱く推奨していた。しかし,早期の抗菌薬投与をどの程度推奨できるかについては議論の余地があり,新たな研究結果を追加して推奨を再評価する必要がある。 (2)利益と害のバランス 11編の観察研究を用いたメタ解析を行った3-13)。1時間以内の抗菌薬投与によって,院内死亡は1,000人あたり22人減少(57人減少~16人増加)した。1時間以内の抗菌薬投与により薬剤が不要な患者に抗菌薬投与が行われる可能性があるが,メタ解析に用いた研究では該当するアウトカムは評価されていなかった。1時間以内の抗菌薬投与による望ましい効果はわずかであり,介入による望ましくない効果は評価できていないため,効果のバランスは介入あるいは非介入のどちらも優位ではないと考えられる。 (3)容認性 介入による有害事象のリスクは低い可能性が高い。介入に伴う抗菌薬の総投与量やコストの変化は評価できていないが,個人負担額が大きく変化する可能性は低く,患者・家族の個人の視点から容認できると考える。一方,1時間以内の投与に固執することで,原因微生物診断の推定が不十分となり,不必要な広域・多剤の抗菌薬投与が増加するという潜在的な害が否定できず,抗菌薬適正使用の観点からの容認性は低いと予想される。
-S 1198- 炎,人工関節感染症など)は特異的所見が得られにくく,これらを考慮した感染巣の想定が必要となる16-19)。 原因微生物の想定に際しては,患者背景も考慮する。外的因子としての患者周囲環境からの曝露歴(医療関連,渡航歴を含む)と,内的因子としての患者自身の状態(年齢,性別,基礎疾患を含む)を考える。一般的に,市中感染症は医療関連感染症と異なる微生物が原因になることが多く,緑膿菌は市中感染症でルーチンにカバーする必要はない。医療関連感染症の危険因子となる曝露には,侵襲的手技またはデバイス(手術,移植,血管内カテーテル,尿道留置カテーテル,気管チューブ,経管栄養チューブ,その他の人工物)や抗菌薬治療歴がある。海外渡航歴のある敗血症患者では,マラリアやウイルス性出血熱,レプトスピラ症などの全身性感染症や,薬剤耐性菌による感染症を考慮する20, 21)。国内でも,ダニ媒介感染症流行地への旅行歴があれば,リケッチア感染症(日本紅斑熱,ツツガムシ病)や重症熱性血小板減少症候群[SFTS(severe fever with thrombocytopenia syndrome)]を鑑別に含める22)。また,宿主要因として年齢は重要であり,髄膜炎の原因菌は50歳以上か否かで異なる19, 23)。肺炎の原因としてのレジオネラ症の約75~80%は50歳以上で発生している24)。好中球減少患者の敗血症では,緑膿菌やMRSAなどを想定する25)。細胞性免疫不全患者[HIV (human immunodeficiency virus)を含む]の肺炎ではニューモシスチス・イロベチーを鑑別に含める26)。 感染巣と患者背景に関連する疫学情報から原因微生物を想定した後,可能であれば迅速微生物診断法を実施する。迅速微生物診断法としてのグラム染色は,採取検体の白血球の有無により局所炎症があるかどうか,有意な微生物が存在するかを確認できる。近年新たな微生物診断手法として,質量分析計,マルチプレックスPCR,マイクロアレイなどが開発され,迅速かつ正確な微生物診断が可能になりつつある27-30)。さらにESBLに代表されるβラクタマーゼ産生菌,MRSAやカルバペネム耐性腸内細菌科などの薬剤耐性の迅速診断も可能となりつつあり,臨床への適応拡大が期待される。一方,迅速診断法には偽陽性のピットフォールも存在するため,臨床情報を参考にしながら検査前確率を上げるとともに予測した結果と矛盾しないか吟味する。原因微生物と薬剤感受性の想定・確認ができれば,臓器移行性や抗菌スペクトラム,および臨床的なエビデンスを踏まえて抗菌薬を選択する。抗菌薬の臓器移行性と到達部位での活性に関しても注意する。例えば,髄液移行性の観点から,髄膜炎に対してセファゾリン CQ2-3:経験的抗菌薬はどのようにして選択す るか? Answer:疑わしい感染巣ごとに,患者背景,疫学や 迅速微生物診断法に基づいて原因微生物を推定し,臓器移行性と耐性菌の可能性も考慮して選択する方法がある(BQに対する情報提示)。(Table 2-3-1, Table 2-3-2を参照) (1)背景および本CQの重要度 適切な経験的抗菌薬の選択は,外科的感染巣のコントロールと並ぶ敗血症の根本治療であり,患者予後に関連する重要な介入である1, 2)。経験的抗菌薬は原因微生物の想定のもとに選択し,原因微生物が確定した後には標的抗菌薬へ最適化する必要があるが,最初の段階でいかに原因微生物を想定するかが重要である2-4)。J-SSCG 2020では,敗血症患者を対象に,疑われる感染巣ごとに経験的抗菌薬の選択薬一覧を作成した4-6)。さらに本ガイドラインでは,J-SSCG 2020をもとに,最新の情報を取り入れた改訂を行った。 (2)解説 経験的抗菌薬の選択は,疑われる感染巣ごとに患者背景や疫学に基づいて原因微生物を想定し,迅速微生物診断法を用い,臓器移行性やスペクトラム(耐性菌の可能性を含む),および臨床的なエビデンスを踏まえて行う。Table 2-3-1(各感染症別の経験的治療薬)は,頻度の高い感染巣と患者背景の組み合わせごとに,敗血症を前提とした経験的抗菌薬の選択リストを専門家の意見として示した。本表は,個別の状況や地域の疫学などの情報を加味し,各地域・施設における抗菌薬ガイドラインと共に利用することで,意思決定の参考になることを想定している。 日本の疫学研究によると,敗血症の原因感染巣は,呼吸器感染症,腹腔内感染症,尿路感染症,軟部組織感染症が多く(これらの合計で全体の70~90%を占める)8, 9),海外の報告ではカテーテル関連感染が加わる2, 10-14)。一方,敗血症患者の28~49%は感染巣が特定されない10-15)。感染巣の特異的な所見を認めない場合に考慮すべき感染症として,感染巣はあるが特異的な所見を捉えにくい感染症(感染性心内膜炎,カテーテル関連血流感染症など),感染巣を形成しない不明の全身感染症(劇症型脾摘後感染症,電撃性紫斑病,リケッチア感染症,感染巣のない発熱性好中球減少症など)がある。人工物関連感染症(カテーテル関連血流感染症,人工弁心内膜炎,脳室腹腔シャント関連髄膜
-S 1199- 感染巣患者背景・病態主に想定される原因菌薬剤の例(VCMの用量は注釈i)を参照)備考肺炎b)市中下記以外肺炎球菌,インフルエンザ桿菌,クレブシエラ,マイコプラズマ,レジオネラCTRX 2g 24時間毎42, 43) ±AZM 500 mg 24時間毎42, 43)レジオネラリスクは CQ2-5を参照。 インフルエンザ後,壊死性肺炎上記+黄色ブドウ球菌(市中型MRSAを含む) CTRX 2g 24時間毎42, 44) ± VCM 42, 44) i) MRSAリスクはCQ2-5を参照。 医療関連・人工呼吸器関連肺炎球菌,大腸菌,緑膿菌,黄色ブドウ球菌CFPM 2g 8時間毎 or TAZ/PIPC 4.5g 8時間毎±VCM42) i)早期あるいは耐性菌リスクがない場合には市中肺炎の選択肢が適用可能。MRSAリスクはCQ2-5を参照。細胞性免疫低下+ニューモシスチス予防なし+両側陰影ニューモシスチス・イロベチーST:トリメトプリムとして 240~320 mg 8時間毎or ペンタミジン 4 mg/kg 24時間毎42) ST:トリメトプリムとして15 mg/ kg/day≒日本の ST 合剤(1錠または1g中のトリメトプリムは 80 mg)で1回 3~4錠または 3~4 g 8時間毎。 尿路感染症市中(ESBL産生菌リスク低い)大腸菌CTRX 1~2g 24時間毎42) ESBL産生菌リスクはCQ2-4参照。 市中(ESBL産生菌リスク高い) CMZ 1~2g 8時間毎45, 46) or TAZ/PIPC 4.5g 8時間毎47)or MEPM 1g 8時間毎42)医療関連大腸菌,クレブシエラ,エンテロバクター,緑膿菌,腸球菌TAZ/PIPC 4.5g 8時間毎 or MEPM 1g 8時間毎±VCM42) i) VCMはグラム染色で連鎖状グラム陽性球菌を認める場合などに追加。 胆道・腹腔内感染症市中(ESBL産生菌リスク低い)大腸菌,バクテロイーデス等の嫌気性菌SBT/ABPC 3g 6時間毎48) or CTRX 2g 24時間毎+MNZ 500 mg 8時間毎48) ESBL産生菌リスクはCQ2-4参照。SBT/ABPCを選択肢にしてよいか,施設・地域のアンチバイオグラムを確認する。市中(ESBL 産生菌リスク高い) CMZ 1~2g 8時間毎48) or TAZ/PIPC 4.5g 8時間毎42) 医療関連大腸菌,バクテロイーデス等の嫌気性菌,エンテロバクター,緑膿菌,腸球菌±カンジダTAZ/PIPC 4.5g 8時間毎 or CFPM 2g 8時間毎+MNZ 500 mg 8時間毎 or MEPM 1g 8時間毎42, 48) ±MCFG 100 mg 24時間毎42)カンジダリスクはCQ2-5を参照。 壊死性軟部組織感染症c)単一菌疑い(グラム陽性球菌ある いはグラム陽性桿菌) β溶血性レンサ球菌,クロストリジウム,稀に黄色ブドウ球菌(市中型MRSAを含む) CTRX 2g 24時間毎 or SBT/ABPC 3g 6時間毎±VCM i) ±CLDM 600 mg 8時間毎42, 49) MRSAリスクはCQ2-5を参照。CLDMは,トキシックショック症候群におけるトキシン産生の抑制目的。 複数菌疑い(糖尿病性,フルニエ壊疸)黄色ブドウ球菌, 大腸菌,嫌気性菌MEPM 1g 8時間毎 or TAZ/PIPC 4.5g 8時間毎±VCM42, 49) i)海水・淡水への曝露エロモナス,ビブリオCTRX 2g 24時間毎+MINO 100 mg 12時間毎42, 49) 脊椎炎d)市中MSSA,レンサ球菌,稀に肺炎球菌,グラム陰性桿菌CEZ 2g 8時間毎42) or CTRX 2g 24時間毎42) MRSAリスクはCQ2-5を参照。 医療関連黄色ブドウ球菌,グラム陰性桿菌CFPM 2g 12時間毎+VCM 42) i) 心内膜炎e)自己弁: MRSAリスクなしMSSA,レンサ球菌,腸球菌SBT/ABPC 3g 6時間毎42) or CTRX 2g 24時間毎+ABPC 2g 4時間毎42, 50)腸球菌の可能性が高い場合はCTRX+ABPCを選択。頭蓋内播種病変がある場合はCTRXは2g 12時間毎。 自己弁: MRSAリスクあり上記+MRSA CTRX 2g 24時間毎+ VCM42, 50) i)頭蓋内播種病変がある場合はCTRXは2g 12時間毎。MRSAリスクはCQ2-5を参照。人工弁 orペースメーカ上記+表皮ブドウ球菌,グラム陰性桿菌CTRX 2g 24時間毎 or CFPM 2g 12時間毎+ VCM42, 50) i) or VCM+GM 2~3 mg/kg 24時間毎±RFP 600 mg 24時間毎 Table2-3-1 各感染症別の経験的治療薬a) 【利用にあたって】本表は,各種感染症に関するガイドラインおよび日本感染症学会/日本化学療法学会(JAID/JSC)感染症治療ガイド2023を参照し,敗血症に関係するものを一覧にまとめたものである42) 。実践的にするために,代表的な選択肢に絞って提示した。個別の状況や地域の疫学などの情報を加味して意思決定の参考にすることを想定している。
-S 1200- 感染巣患者背景・病態主に想定される原因菌薬剤の例(VCMの用量は注釈i)を参照)備考感染性動脈瘤f)市中黄色ブドウ球菌,サルモネラ,グラム陰性桿菌CTRX 2g 12時間毎±VCM i) MRSAリスクはCQ2-5を参照。 人工血管黄色ブドウ球菌,表皮ブドウ球菌,緑膿菌TAZ/PIPC 4.5g 8時間毎+VCM i) カテーテル関連血流感染症血管内カテーテル表皮ブドウ球菌,黄色ブドウ球菌(MRSA含む),大腸菌,緑膿菌, ±カンジダVCM i) +CFPM 2g 8~12時間毎±MCFG 100 mg 24時間毎 42)カンジダリスクはCQ2-5を参照。 髄膜炎g)市中(50歳未満)肺炎球菌,髄膜炎菌CTRX 2g 12時間毎+VCM42, 51) i) 市中(50歳以上,細胞性免疫不全)肺炎球菌,髄膜炎菌,リステリアABPC 2g 4時間毎+CTRX 2g 12時間毎+VCM42, 51) i)脳外科術後 or シャント関連髄膜炎MRSA,緑膿菌CAZ or CFPM or MEPM (2g 8時間毎) +VCM42, 51) i) 感染巣不明または全身性h)市中(下記のいずれでもない)肺炎球菌,髄膜炎菌,β溶血性レンサ球菌,大腸菌CTRX 2g 24時間毎 42)髄膜炎の可能性がある場合は,髄膜炎の項目を参照。 医療関連(下記のいずれでもない)緑膿菌,MRSA CFPM 2g 8時間毎 or TAZ/PIPC 4.5g 8時間毎 or MEPM 1g 8時間毎+VCMi)トキシックショック症候群黄色ブドウ球菌, β溶血性レンサ球菌,クロストリジウムCTRX 2g 24時間毎 or SBT/ABPC 3g 6時間毎+CLDM 600 mg 8時間毎±VCMi) MRSAリスクはCQ2-5を参照。リケッチア流行地日本紅斑熱,ツツガムシ病MINO 100 mg 12時間毎52)発熱性好中球減少症緑膿菌,MRSA CFPM 2g 12時間毎+VCM42) i)抗緑膿菌薬の併用はCQ2-4を参照。脾摘後肺炎球菌,髄膜炎菌,インフルエンザ桿菌,カプノサイトファーガ髄膜炎の可能性がない場合: CTRX 2g 24時間毎42)髄膜炎の可能性がある場合は,髄膜炎の項目を参照。ショック+発疹電撃性紫斑病(髄膜炎菌,肺炎球菌),リケッチアCTRX 2g 12時間毎+VCM42) i) +MINO 100 mg 12時間毎52, 53)心内膜炎の可能性がある場合は,心内膜炎の項目を参照。 【略語】ABPC:アンピシリン,AZM:アジスロマイシン,CAZ:セフタジジム,CEZ:セファゾリン,CFPM:セフェピム,CLDM:クリンダマイシン,CMZ:セフメタゾール,CTRX:セフトリアキソン,GM:ゲンタマイシン,MCFG:ミカファンギン,MEPM:メロペネム,MINO:ミノサイクリン,MNZ:メトロニダゾール,RFP:リファンピシン,SBT/ABPC:スルバクタム/ アンピシリン,ST:スルファメトキサゾール/トリメトプリム, TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,VCM:バンコマイシン。(抗菌薬の略語はJAID/JSC感染症治療ガイドに準じた) a) 基本的にJAID/JSC感染症治療ガイドに記載があるものはこれを参考に選択肢を提示した。b) 肺炎:インフルエンザウイルス感染後や壊死性肺炎は,通常の市中肺炎の原因に加えて黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)が問題になるため,別項を作成して記載した。c) 壊死性軟部組織感染症:患者背景(曝露歴,基礎疾患)や経過などから原因菌を推定できる場合の選択肢として3種類を提示した。d) 脊椎炎:敗血症を合併した場合は経験的治療の適応である54)。経験的治療のレジメンは確立しておらず,JAID/JSC感染症治療ガイドを参考に選択肢を提示した42)。e) 心内膜炎:自然弁の心内膜炎におけるGMの併用は,黄色ブドウ球菌の場合以前は推奨されていた42)が,近年推奨されなくなっている50)。腸球菌の場合には,GMの代わりにCTRXをABPCと併用するレジメンが示された。これらのことを加味して,経験的治療としてGMを併用しないレジメンを提示した50)。また,心内膜炎で高率に合併する頭蓋内播種を有する場合について,本表では髄液移行性を加味して提示した。人工弁の心内膜炎では,GMの腎毒性を考慮して,原因菌が未確定な段階での経験的治療としてはGMを含まない選択肢を提示した。f) 感染性動脈瘤:JAID/JSC感染症治療ガイド等に記載がなく確立した推奨はない42, 55)が,選択肢として提示した。g) 髄膜炎:JAID/JSC感染症治療ガイド等を参考に選択肢を提示した42, 51)。h) 感染巣不明または全身性:JAID/JSC感染症治療ガイド等を参考に,想定される病態ごとの選択肢を提示した。i) VCMの用量は,抗菌薬TDMガイドライン2022の記載(初回負荷投与として25~30 mg/kg,維持量として腎機能正常例では1回20 mg/kgを12時間 ごと)が参考になる56)。Table2-3-1 各感染症別の経験的治療薬a)(つづき)
-S 1201- はセファゾリンであり,メチシリン耐性が判明していない段階で頻用されるバンコマイシンよりもMSSA菌血症に対する治療成績が優れている40, 41)。MRSAとMSSAの両方の可能性があると判断した場合は,バンコマイシンとセファゾリンの併用も考慮される。このように,経験的抗菌薬の選択に際しては,後に移行する予定の標的抗菌薬の選択肢を事前に想定しておくことが有用である。Table 2-3-2(原因微生物別の標的治療薬)には,敗血症診療で遭遇する可能性が高い標的抗菌薬リストを感受性パターン別に示した。 最後に,敗血症における経験的抗菌薬の選択の特徴は,患者の重症度が高く,情報収集や抗菌薬選択に時間的猶予がないことである。原因となる感染症の種類は多岐にわたり,感染臓器が不明なことも多い。敗血症において適切な経験的抗菌薬を選択するには,「疑われる感染巣ごとに,患者背景,疫学や迅速微生物診断法に基づいて原因微生物を推定し,臓器移行性と耐性菌の可能性を考慮する」という感染症診療の原則を忠実に実践していくことが重要である。そして,想定 は避けるべき抗菌薬である。心内膜炎に頭蓋内への播種として脳膿瘍を合併した場合も,同様に髄液移行性に注意する。肺炎に対してのダプトマイシンは,肺胞のサーファクタントで不活化されるため避ける31)。 世界的に薬剤耐性の問題が大きくなってきており,敗血症診療においても耐性菌の増加は脅威である32-37)。抗菌薬の感受性率は,時と場所(国,地域,施設,病棟)によって変化するため,地域・施設のローカル・データ(アンチバイオグラムを含む)の把握が重要である6, 7)。なお,アンチバイオグラムは抗菌薬開始前の検体のみを集めた実際の感受性率よりも耐性度が高く示されることが報告されており,注意する38)。また,患者自身の細菌検査歴も重要であり,過去に耐性菌の検出歴がある場合はカバーすることを考慮する。標的抗菌薬は,治療効果を最大限引き出し,副作用および菌交代に伴うコラテラルダメージ(常在微生物叢に対する悪影響)を最小限にするものがよい39)。頭蓋内播種のないメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症に対する第一選択薬は,日本で Table2-3-2 原因微生物別の標的治療薬【利用にあたって】本表は,各種感染症に関するガイドラインおよび日本感染症学会/日本化学療法学会感染症治療ガイドを参照し,感受性検査の碁準57)および抗菌薬適正使用の考え方58)を加味して,敗血症に関係するものを一覧にまとめたものである。実践的にするために,代表的な選択肢を提示した。各施設の敗血症および抗菌薬適正使用支援チームの専門家は,デエスカレーションを推進する際に,各施設の状況(利用可能な採用抗菌薬など)を加味して本表を利用できる。 原因微生物感染巣感受性結果選択肢代替薬備考グラム陽性球菌(ブドウ状)〈GPC in clusters〉Staphylococcus aureus黄色ブドウ球菌カテーテル関連血流感染症,脊椎炎・関節炎・腸腰筋膿瘍,自己弁心内膜炎(頭蓋内播種の 合併なし),肺炎MSSA(PCG: S & CEZ: S) ※PCG: Sとは,ペニシリナーゼ非産生が確認できた場合PCG 400万単位4~6時間毎59-61) or ABPC 2g 4~6時間毎42) (心内膜炎:4時間毎,他:4~6時間毎) CEZ MSSA(PCG: R & CEZ: S) CEZ 2g 8時間毎42, 50, 62) GM併用は推奨されない50)。MRSA(CEZ: R & VCM: S)VCM初回25~30mg/kg,その後15 ~20mg/kg 12時間毎7, 42, 50, 56, 62, 63) DAP(肺炎は除く) or TEIC or LZD 42, 50, 56, 63) VCM目標AUCは400~600 μg・h/mL j) 自己弁心内膜炎(頭蓋内播種の合併あり),術後髄膜炎(髄液シャント感染症を含む) MSSA(PCG: S & CEZ: S) PCG 400万単位4~6時間毎59-61) or ABPC 2g 4~6時間毎42) (心内膜炎:4時間毎,他:4~6時間毎) CEZは避ける MSSA(CEZ: S) CTRX 2g 12時間毎 or CFPM 2g 8時間毎 or MEPM 2g 8時間毎8, 50) CEZは避けるESC2015ではCTXの記載あり62)。MRSA(CEZ: R & VCM: S)VCM初回25~30mg/kg,その後15 ~20mg/kg 12時間毎7, 42, 50, 56, 62, 63) DAP or TEIC or LZD 50, 56, 63) VCM目標AUCは400~600 μg・h/mL j)。BSAC 2012ではVCM+RFPなど64)。 人工弁心内膜炎GM: S & RFP: S自己弁心内膜炎の各レジメン(上記)+GM 2~3mg/kg 24時間毎±RFP 600mg経口1日1回(3剤併用)7, 50, 62, 63)。GMは2週間併用。GM目標濃度は,ピークは3 ~5 μg/mL,トラフは1 μg/mL未満50, 56)。RFPの追加について「Coagulase Negative Staphylococcus(CNS)」の項目(次項)を参照。 GM: R, AMK or LVFX: S前項のGMの代わり:AMK or LVFX
-S 1202- 原因微生物感染巣感受性結果選択肢代替薬備考Staphylococcus aureus黄色ブドウ球菌(つづき)トキシックショック症候群CLDM: S上記各レジメン+CLDM 600mg 8時間毎65) CLDM: R & LZD: S上記各レジメン+CLDM 600mg 8時間毎 or 上記各レジメン+LZD 600mg 12時間毎65) CLDMはトキシン産生抑制目的[感受性検査で耐性(R)でも抑制できるためよく使用される]58)。 Coagulase Negative Staphylococcus (CNS)コアグラーゼ陰性ブドウ球菌カテーテル関連血流感染症,人工弁心内膜炎,人工関節感染症・感受性別の選択はS. aureusと同様。→「Staphylococcus aureus」の項目(上記)を参照。・ 人工弁心内膜炎や,人工関節感染症で温存療法を行う場合は,RFPの追加を考慮する。→RFPは耐性化しやす いため単剤で使用しない。菌量が多い時は避けたほうがよいとする専門家の意見がある。感受性検査結果が参考になる7, 43, 51, 63)。 グラム陽性球菌(レンサ状)〈GPC in chains〉Streptococcus pneumoniae肺炎球菌※ PCGの感受性基準は,髄膜炎と非髄膜炎で異なるので注意髄膜炎以外(肺炎など) PCG: S(MIC ≦ 2 μg/mL) PCG 200 万単位4時間毎 or ABPC 2g 6~8時間毎42) (心内膜炎・侵襲性感染症は,PCG 400万単位 4 時間毎or ABPC 2g 4時間毎) CTRX PCG: I or R(MIC≧4 μg/mL)CTRX 2g 24時間毎42) VCM or LVFX (Sなら) 髄膜炎PCG: S(MIC ≦ 0.06 μg/mL)PCG 400万単位 4時間毎42, 51)or ABPC 2g 4時間毎23, 42, 66) CTRX PCG: R(MIC≦0.12 μg/mL) &CTRX: S (MIC≦0.5 μg/mL) CTRX 2g 12時間毎42, 51) CFPM 8) PCG: R(MIC≧0.12 μg/mL) & CTRX: I or R(MIC≧1.0 μg/mL) VCM 初回 25~30mg/kg,その後15~20mg/kg 12時間毎+CTRX 2g 12時間毎42, 51, 56) (CTRX MIC>2 μg/mL & RFP: Sで, RFPの追加を考慮)23, 42, 66) VCM目標AUCは400~600 μg・h/mL j) Group A,B,C,F, G Streptococcusβ溶血性レンサ球菌菌血症,軟部組織感染症PCG: S PCG 200~400万単位4時間毎42)or ABPC 2g 4~6時間毎CEZ or CTRX トキシックショック症候群PCG: S上記各レジメン+CLDM 600mg 8時間毎42, 67) CLDMはトキシン産生抑制目的[感受性検査で耐性(R)でも抑制できるためよく使用される]。 Viridans Streptococcus, S. gallolyticus (S. bovis)心内膜炎PCGのMIC≦ 0.12 μg/mL PCG 400万単位4時間毎42)or ABPC 2g 4~6時間毎50) CTRX42) PCGは,24時間持続静注や42),6時間毎に分割する方法もあり7, 62)。PCG 200~300万単位4時間毎も選択肢(自然弁7, 62),人工弁62)) PCGのMIC=0.25 μg/mL PCG 400万単位4時間毎 or ABPC 2g 4 時間毎+GM 3mg/kg 24時間毎(or 1mg/kg 1日2~3回7, 42, 50, 56, 62)) CTRX(MIC ≦0.5 μg/mL なら)+GM PCGは,24時間持続静注する方法もあり42)。GM目標濃度は,ピークは3~5 μg/mL,トラフは1 μg/mL未満50, 56)。GMは自然弁2週間,人工弁6週間併用。PCGのMIC≧0.5 μg/mL感染症専門家に相談7, 50, 62)。 心内膜炎以外(肺炎,菌血症,発熱性好中球減少症など) PCG: S PCG 200~300万単位4~6時間毎or ABPC 2g 6~8時間毎42, 68) CTRX PCGは,1日量を24時間持続静注する方法もあり42)。 PCG: I/R & CTRX: S CTRX 2g 24時間毎68) PCG: I/R & CTRX: R & VCM: S VCM初回25~30mg/kg,その 後15~20mg/kg 12時間毎68) Enterococcus spp.心内膜炎PCG: S (1)GM高度耐性試験でMIC≦500 μg/mL の場合: PCG 400万単位4時間毎 or ABPC 2g 4時間毎+GM 3mg/kg 24時間毎(or 1mg/kg 1日2~3回)7, 42, 50, 62) (2)GM MIC>500 μg/mL,またはGM を併用しない場合: ABPC 2g 4 時間毎+ CTRX 2g 12時間毎7, 42, 50, 62)心内膜炎ではGMの高度耐性試験を実施。GM目標濃度は,ピークは3~5 μg/mL,トラフは1 μg/mL未満50, 56)。 Table2-3-2 原因微生物別の標的治療薬(つづき)
-S 1203- 原因微生物感染巣感受性結果選択肢代替薬備考Enterococcus spp. (つづき)心内膜炎(つづき) PCG: R(MIC≧16 μg/mL) & VCM: S GM高度耐性試験でMIC≦500 μg/ mLの場合: VCM初回25~30mg/kg,その後15 ~20mg/kg 12時間毎56)+GM 3mg/ kg 24時間毎(or 1mg/kg 1日2~3回)42, 50) SBT/ABPC: SならSBT/ABPC + GM 7, 62) GM目標濃度は,ピークは3~5 μg/mL,トラフは1 μg/mL未満50, 56)。VCM目標AUCは400~600 μg・h/mL j)。 VCM: R(VRE) LZD or DAP+ABPC 7, 62, 69)感染症専門家に相談も必要。 心内膜炎以外PCG: S PCG 300万単位4時間毎 or ABPC 2g 4~6時間毎42) PCG: R & VCM: S VCM 初回 25~30mg/kg,その後15~20mg/kg 12時間毎56) グラム陽性桿菌〈GPR〉Bacillus spp. (Bacillus anthracis以外)カテーテル関連血流感染症などVCM: S VCM 初回 25~30mg/kg,その後15 ~20 mg/kg 12時間毎42, 56) CLDM42) Corynebacterium spp.カテーテル関連血流感染症,人工物感染症などVCM: S VCM初回25~30 mg/kg,その後15 ~20 mg/kg 12時間毎42, 56) PCG(Sなら)or TEIC or LZD(Sなら)42) Listeria monocytogenes髄膜炎ABPC: S ABPC 2g 4時間毎42)±GM 1.7mg/kg 8時間毎ST or ABPC + ST併用などは感染症専門家に相談も必要。Nocardia spp.重症肺炎・脳膿瘍・播種性感染症(ルーチンの感受性検査実 施は困難なので,Nocardia疑いでの重症例における抗菌薬選択肢を示す) STトリメトプリムとして240~ 320mg 8時間毎+IPM/CS 0.5g 6時間毎or IPM/CS 0.5g 6時間毎+ AMK 15mg/kg 24時間毎42, 70) LZD, MEPM, CTRX, MINO感染症専門家に相談も必要。LZDは基本的にS 。STは稀にRだが,感受性結果と臨床効果の相関は議論あり。ST:トリメトプリムとして15 mg/kg/day≒日本のST合剤(1錠または1g中のトリメトプリムは80mg)で1回3~4錠または3~4g 8時間毎。 グラム陰性球菌 〈GNC〉Neisseria meningitidis髄膜炎,菌血症PCG: S(MIC<0.1 μg/mL) PCG 400万単位4時間毎 or ABPC 2g 4時間毎23, 42, 66) CTRX PCG: R CTRX 2g 12時間毎23, 42, 66) グラム陰性桿菌(腸内細菌目)〈GNR1〉Escherichia coli, Proteus mirabilis注:Proteus vulgarisはEnterobacterの項目を参照尿路感染症,菌血症など(髄膜炎は除く) ABPC: S ABPC 1~2g 6時間毎71) CPFX(Sなら) or ST(Sなら) ABPC: R & CEZ: S CEZ 2g 8時間毎42, 57, 72) ABPC: R & CEZ: R & CTRX (CTX): S CTRX 1~2g 24時間毎42, 57, 73) ESBL 産生菌CTRX(CTX): R or CAZ: R &MEPM: S & TAZ/PIPC: S & CMZ: S CMZ 1~2g 8時間毎45, 46, 74) TAZ/PIPC 4.5g 6~8時間毎47, 75) MEPM 1g 8時間毎42, 57, 73) CMZ,TAZ/PIPCは臨床的安定,腎孟腎炎などで選択肢になるという報告あり。 MEPM or IPM/CSのいずれかがSでない。感染症専門家に相談 髄膜炎CTRX: S CTRX 2g 12時間毎17, 42)髄膜炎ではCEZは避ける。 CTRX: R & MEPM: S MEPM 2g 8時間毎17) MEPM or IPM/CSのいずれかがSでない。感染症専門家に相談。 Klebsiella spp.尿路感染症,肺炎,肝膿瘍など・ABPC: Sでも自然耐性なのでABPCは選択しない。・ABPC以外は,E. coliと同様なので,上記「Escherichia coli, Proteus mirabilis」の項目を参照。・侵襲性肝膿瘍症候群では,CEZ: Sであっても,CEZよりCTRXのほうが成績がよいとする観察研究あり76)。Enterobacter spp., Citrobacter spp., Serratia marcescens, Proteus vulgaris, Morganella spp.菌血症,肺炎など(髄膜炎は除く) CTRX(CTX): S & CAZ: S & CFPM: S CFPM(1g 8時間毎 or 2g 8~12時間毎)42, 57, 73, 77) TAZ/PIPC 4.5g 6~8時間毎73)or CTRX 1~2g 24時間毎42, 57, 73) MEPM or CPFX(Sなら)or ST(Sなら) ABPCは自然耐性。CTRX,CAZ,TAZ/PIPCは治療中にAmpC型セファロスポリナーゼ産生により耐性化する可能性がある。胆道系悪性腫瘍に伴う胆管炎などでは注意78)。 Table2-3-2 原因微生物別の標的治療薬(つづき)
-S 1204- 原因微生物感染巣感受性結果選択肢代替薬備考Enterobacter spp., Citrobacter spp., Serratia marcescens, Proteus vulgaris, Morganella spp. (つづき)菌血症,肺炎など(髄膜炎は除く) (つづき) CTRX (CTX): R or CAZ: R CFPM: S & MEPM: S CFPM(1g 8時間毎 or 2g 8~12時間毎)42, 57, 73) CPFX(Sなら) or ST(Sなら) ABPCは自然耐性。CTRX,CAZ,TAZ/PIPCは治療中にAmpC型セファロスポリナーゼ産生により耐性化する可能性がある。胆道系悪性腫瘍に伴う胆管炎などでは注意79)。 CFPM: R & MEPM: S MEPM 1g 8時間毎42, 57, 73) MEPM or IPM/CSのいずれかがSでない。感染症専門家に相談。Serratiaはコリスチンに自然耐性。 髄膜炎CFPM: S CFPM 2g 8時間毎17)感染症専門家に相談も必要。C. koseriはCTRXも選択肢。MEPM: S MEPM 2g 8時間毎17, 79) MEPM or IPM/CSのいずれかがSでない。感染症専門家に相談。Serratia marcescensはコリスチンに自然耐性。 Salmonella sp. (腸チフス以外)菌血症,腸管外感染症(感染性大動脈 瘤など) ABPC: S ABPC 2g 6時間毎79) CPFX(Sなら) ABPC: R & CTRX: S CTRX 2g 24時間毎79)髄膜炎では2g 12時間毎ABPC: R & CTRX: R & MEPM: S MEPM 1g 8時間毎79)髄膜炎では2g 8時間毎 グラム陰性桿菌(ブドウ糖非発酵菌)〈GNR2〉Pseudomonas aeruginosa緑膿菌肺炎,尿路感染症,菌血症,発熱性好中球減少症など(髄膜炎は除く) CAZ: S CAZ 2g 8時間毎(or 1g 6時間毎)42, 57)MEPM(Sなら) or CPFX(Sなら) CFPM: S CFPM 2g 8~12時間毎(or 1g 8時間毎)42, 57) PIPC: S PIPC 4g 6時間毎42) PIPCの感受性基準は最低3g 6時間毎以上用いた場合で設定されている57)。上記いずれもR & MEPM: S MEPM 1g 8時間毎42, 57) CPFX(Sなら) MEPM or IPM/CSのいずれかがSでない。TAZ/CTLZを検討感染症専門家に相談。 髄膜炎CAZ: S or CFPM: S CAZ 2g 8時間毎 or CFPM 2g 8時間毎8) MEPM: S MEPM 2g 8時間毎17) Acinetobacter baumannii院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎,創傷感染CFPM: S CFPM 2g 8時間毎42) CPFX(Sなら) or MINO(Sなら) SBT/ABPC: S SBT/ABPC 3g 6時間毎以上(重症例は用量を感染症専門家に相談)42, 80) SBTの部分が抗菌作用を発揮。 MEPM: S MEPM 1g 8時間毎57) MEPM or IPM/CSのいずれかがSでない。感染症専門家に相談。 Stenotrophomonas maltophilia菌血症,肺炎ST: S ST:トリメトプリムとして240~ 320mg 8時間毎42) MINO 42) or CPFX(Sなら)カルバペネム系に自然耐性。ST:トリメトプリムとして15 mg/kg/day≒日本のST合剤(1錠または1g中のトリメト プリムは80mg)で1回3~4錠または3~4g 8時間毎。 グラム陰性桿菌(その他)〈GNR3〉Haemophilus influenzae髄膜炎ABPC: S ABPC 2g 4時間毎23, 51, 66) CTRX17) ABPC: R & CTRX(CTX): S CTRX 2g 12時間毎23, 42, 66) CFPM17) 肺炎,喉頭蓋炎ABPC: S ABPC 2g 6時間毎42) ABPC: R & SBT/ABPC: S SBT/ABPC 3g 6時間毎42) ABPC: R & CTRX(CTX): S CTRX 1~2g 24時間毎42) Pasteurella multocida, Capnocytophaga canimorsus動物咬傷PCG: S SBT/ABPC 3g 6時間毎 67) CTRX単一菌による感染症ではPCG 400万単位4時間毎。 PCG: R & SBT/ABPC: S SBT/ABPC 3g 6時間毎67) CTRX Aeromonas sp.軟部組織感染症,菌血症CTRX: S or MINO: S CTRX 2g 24時間毎+MINO 100 mg 12時間毎67) CPFX+MINO, LVFX Vibrio vulnificus軟部組織感染症,菌血症CTRX: S & MINO: S CTRX 2g 24時間毎+MINO 100 mg 12時間毎67) CTX + CPFX, LVFX βラクタム単剤は併用療法より死亡率が高かったとする観察研究あり81)。 Table2-3-2 原因微生物別の標的治療薬(つづき)
-S 1205- 原因微生物感染巣感受性結果選択肢代替薬備考偏性嫌気性菌[Clostridioides (Clostridium) difficile以外]偏性嫌気性菌複数菌感染症・検出できていない偏性嫌気性菌も含めてどこまでカバーするかは,ドレナージが十分かどうかに左右される。・ 偏性嫌気性菌が原因になる複数菌感染症の抗菌薬選択では,検出された嫌気性菌の感受性結果のみにより判断 するのではなく,複数の嫌気性菌・好気性菌の混合感染を想定する。・偏性嫌気性菌は,感受性率により次の3つの特徴がある。1 横隔膜より上の偏性嫌気性菌(Peptostreptococcus spp., Prevotella spp. など)の大部分は,PCG(に代表されるβラクタム系薬)や CLDMが感性である。ただし一部には,βラクタマーゼ産生菌やCLDM耐性菌(Prevotella spp.の一部など)がある。2 横隔膜より下の偏性嫌気性菌(Bacteroides spp. など)は,βラクタマーゼ産生菌である。特にnon-fragilis Bacteroide(B. fragilis以外)のCLDM,CMZの耐性率が増加している。31と2をあわせた偏性嫌気性菌のほとんどは,SBT/ABPC,TAZ/PIPC,MEPM,MNZに対して感性である。・したがって,偏性嫌気性菌が関与する複数菌感染症の標的治療薬を選択する際には, (1)横隔膜より上か下か,ドレナージが十分かという情報から,偏性嫌気性菌カバーをどこまでするか, (2)偏性嫌気性菌以外の原因菌をカバーするか,の2点を考慮する。 Peptostreptococcus spp., Prevotella spp. (横隔膜より上の偏性嫌気性菌)肺化膿症,深頸部感染症など右記では代表的な選択肢を示す。偏性嫌気性菌以外に検出されている細菌の感受性結果も,選択の参考になる。SBT/ABPC 3g 6時間毎 or CLDM 600 mg 8時間毎 or MNZ 500 mg 8時間毎+(PCG 200 ~300 万単位 4時間毎 or CTRX 2g 24時間毎)82) TAZ/PIPC 脳膿瘍(PCG 400万単位4時間毎 or CTRX 2g 12時間毎 or CFPM 2g 8時間毎) +MNZ 500mg 8時間毎83) Bacteroides spp. (横隔膜より下の偏性嫌気性菌)腹腔内の複数菌感染症(二次性腹膜炎, 腹腔内膿瘍,胆管炎)ドレナージ不十分右記では代表的な選択肢を示す。偏性嫌気性菌以外に検出されている細菌の感受性結果も,選択の参考になる。SBT/ABPC 3g 8時間毎 or TAZ/PIPC 4.5g 8時間毎 or MNZ 500 mg 8時間毎+(CEZ 2g 8時間毎 or CTRX 2g 24時間毎 or CFPM 2g 12時間毎 or CPFX 400mg 12時間毎)42) MEPM CMZ: R,CLDM: Rが増えている42)。 ドレナージ十分CMZ 1g 8時間毎 or CLDM 600 mg 8時間毎+(CEZ 2g 8時間毎or CTRX 2g 24時間毎or CFPM 2g 12時間毎 or CPFX 400mg 12時間毎)or前項の「ドレナージ不十分」の選択肢42) Clostridium spp. (C. perfringensなど)ガス壊疸PCG: S PCG 400万単位4時間毎+CLDM 600 mg 8時間毎42, 67) CLDMはトキシン産生抑制目的(Rでも抑制できるためよく使用される)42)。Clostridioides (Clostridium) difficile Clostridioides (Clostridium) difficile Clostridioides difficile感染症(CDI)初発VCM 125mg 1日4回(経口または経鼻投与) or FDX 200 mg 1日2回42, 84)非重症:MNZ経口VCM静注は無効。 再発FDX 200mg 1日2回84)初発治療がMNZの時:VCMショック,低血圧,巨大結腸症,イレウス,VCM 125mg レジメン不応の時VCM 500 mg 6時間毎(経口 or 経鼻胃管)or イレウスでは 500 mg/生食100 mL 停留浣腸として経肛門注入±MNZ 500 mg 静注 8時間毎84) その他の細菌Legionella spp.肺炎LVFX 500~750 mg 24時間毎42)or AZM 500 mg 24時間毎42) MINO 42) Mycoplasma pneumoniae肺炎MINO 100 mg 12時間毎42) AZM or LVFX Rickettsia japonica日本紅斑熱MINO 100 mg 12時間毎52) CPFX Orientia tsutsugamushiツツガムシ病MINO 100 mg 12時間毎52) AZM CPFXは無効。Leptospira interrogansレプトスピラ症PCG 150万単位6時間毎85) CTRX or MINO Table2-3-2 原因微生物別の標的治療薬(つづき)
-S 1206- 原因微生物感染巣感受性結果選択肢代替薬備考真菌Candida spp.カンジダ血症,播種性カンジダ症(発熱性好中球 減少症を含む)・ 経験的治療(通常はMCFG)は,血液培養の陰性化と臨床的安定が確認されれば,下記のFLCZまたはVRCZ経 口薬へ変更。・ 眼内炎の合併があれば,MCFGは眼内移行性が悪いため,FLCZまたはVRCZへの変更(両方とも耐性の場合は,L-AMB±5-FC)。・ C. albicans, parapsilosis, tropicalisの大部分はFLCZに感性,C. glabrataは感性または耐性,C. kruseiは自然耐性である。同定が難しいC. auris(FLCZに耐性,多剤耐性のことあり)が近年報告されている。・ カンジダ尿の大部分は治療対象ではないが,カンジダ尿を契機としてカンジダ血症・播種性カンジダ症と診断される場合がある。また,稀だがカンジダ性尿路感染症として治療を要する場合は,感染症専門家に相談(MCFGやL-AMBは尿路移行性が悪い)。 Candida albicans, C. parapsilosis, C. tropicalisカンジダ血症の安定後FLCZ: S FLCZ 初回 800 mg (その後 400mg)24時間毎86) C. glabrata FLCZ: S FLCZ 初回 800 mg (その後 400mg)24時間毎86) MCFGのまま治療を完遂するのも選択肢。感染症専門家に相談。FLCZ: R & VRCZ: S VRCZ 初日 6 mg/kg 12時間毎(その後 4mg/kg 12時間毎)86) C. krusei FLCZ: R & VRCZ: S VRCZ 初日 6 mg/kg 12時間毎(その後 4mg/kg 12時間毎)86) Aspergillus sp.侵襲性肺アスペルギルス症VRCZ 初日 6 mg/kg 12時間毎(その後 4mg/kg 12時間毎)42, 86) L-AMB42) Pneumocystis jiroveciiニューモシスチス肺炎ST:トリメトプリムとして 240~ 320 mg 8時間毎42)ペンタミジン点滴静注42) ST:トリメトプリムとして15 mg/kg/day≒日本のST合剤(1錠または1g中のトリメト プリムは80 mg)で1回3~4錠または 3~4g 8時間毎。 Cryptococcus spp.髄膜炎(非HIV) L-AMB 3~4 mg/kg 24時間毎+ 5-FC 25 mg/kg 経口 6時間毎86) FLCZ(高用量) Mucor spp. などムコール症L-AMB 5~10 mg/kg 24時間毎86)ウイルスインフルエンザ肺炎などオセルタミビル 75 mg 経口 1 日 2回87)ペラミビルSFTS重症熱性血小板減少症候群最適な治療方法は未だに不明88)リケッチア常在地で,リケッチア感染症が否定できない場合はテトラサイクリンを検討88) CMV肺炎などガンシクロビル 5 mg/kg 12時間毎42)ホスカルネットHSV脳炎などアシクロビル 10 mg/kg 8時間毎89) SARS-CoV2肺炎など詳細は他ガイドライン参照90, 91)【略語】ABPC:アンピシリン,AMK:アミカシン,AZM:アジスロマイシン,CAZ:セフタジジム,CEZ:セファゾリン,CFPM:セフェピム, CLDM:クリンダマイシン,CMV:サイトメガロウイルス,CMZ:セフメタゾール,CPFX:シプロフロキサシン,CTRX:セフトリアキソン, CTX:セフォタキシム,DAP:ダプトマイシン,5-FC:フルシトシン,FDX:フィダキソマイシン,FLCZ:フルコナゾール,GM:ゲンタマイシン, HSV:単純ヘルペスウイルス,IPM/CS:イミペネム/ シラスタチン,L-AMB:リポソーマル・アムホテリシンB,LVFX:レボフロキサシン,LZD:リネゾリド,MCFG:ミカファンギン,MEPM:メロペネム,MINO:ミノサイクリン,MNZ:メトロニダゾール,PCG:ペニシリンG,PIPC:ピペラシリン,MIC:minimum inhibitory concentration,RFP:リファンピシン,SBT/ABPC:スルバクタム/ アンピシリン,SFTS:重症熱性血小板減少症候群, ST:スルファメトキサゾール/ トリメトプリム,TAZ/CTLZ:タゾバクタム/セフトロザン,TAZ/PIPC:タゾバクタム/ ピペラシリン,TEIC:テイコプラニン,VCM:バンコマイシン,VRCZ:ボリコナゾール。(抗菌薬の略語は JAID/JSC 感染症治療ガイド2023に準じた) S:感性,I:中間,R:耐性j) 現在,トラフ値15~20 μg/mLをガイドとした投与設計は腎障害のリスクがあり勧められていない。安全性の面でAUCを指標とする投与設計が推 奨となり,目標AUCは400~600 μg・h/mLとされている56)。ただし,トラフ値をガイドとした投与設計が必要な場合(髄膜炎,透析,MRSA感染以外の場合など)もあるため,詳細は同ガイドラインを参照されたい。 Table2-3-2 原因微生物別の標的治療薬(つづき) される自然経過の範疇かを注意深く観察し,経験的抗菌薬の選択が適切か評価を繰り返すことも忘れない。 文 献 1) Paul M, Shani V, Muchtar E, et al: Systematic review and metaanalysis of the efficacy of appropriate empiric antibiotic therapy for sepsis. Antimicrob Agents Chemother. 2010; 54: 4851-63. 2) Niederman MS, Baron RM, Bouadma L, et al: Initial antimicrobial management of sepsis. Crit Care. 2021; 25: 307. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 4) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411.
-S 1207- Review. JAMA. 2022; 328: 2147-54. 24) Tanimoto T, Takahashi K, Crump A: Legionellosis in Japan: A Self-inflicted Wound? Intern Med. 2021; 60: 173-80. 25) Freifeld AG, Bow EJ, Sepkowitz KA, et al: Clinical Practice Guideline for the Use of Antimicrobial Agents in Neutropenic Patients with Cancer: 2010 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2011; 52: e56–93. 26) Maschmeyer G, Helweg-Larsen J, Pagano L, et al; 6th European Conference on Infections in Leukemia (ECIL-6), a joint venture of The European Group for Blood and Marrow Transplantation (EBMT), The European Organization for Research and Treatment of Cancer (EORTC), the International Immunocompromised Host Society (ICHS) and The European LeukemiaNet (ELN): ECIL guidelines for treatment of Pneumocystis jirovecii pneumonia in non-HIV-infected haematology patients. J Antimicrob Chemother. 2016; 71: 2405-13. 27) 栁原克紀: 感染症診療における検査法. 日内会誌. 2018; 107: 2230-9. 28) 大城健哉: 血液培養検査におけるDiagnostic Stewardship. 日臨微生物会誌. 2022; 32: 1-13. 29) Kempf M, Bakour S, Flaudrops C, et al: Rapid detection of carbapenem resistance in Acinetobacter baumannii using matrixassisted laser desorption ionization-time of flight mass spectrometry. PLoS One. 2012; 7: e31676. 30) 日本感染症学会, 日本臨床微生物学会: 多項目遺伝子関連検査の実施指針(2020年12月25日改訂). Available online at: https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2012_ sepsis_1.pdf Accessed March 14, 2004. 31) Kalil AC, Metersky ML, Klompas M, et al: Management of Adults With Hospital-acquired and Ventilator-associated Pneumonia: 2016 Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America and the American Thoracic Society. Clin Infect Dis. 2016; 63: e61-111. 32) Bretonnière C, Leone M, Milési C, et al; Société de Réanimation de Langue Française (SRLF); Société Française d’Anesthésie et de Réanimation (SFAR): Strategies to reduce curative antibiotic therapy in intensive care units (adult and paediatric). Intensive Care Med. 2015; 41: 1181-96. 33) Ammerlaan HS, Harbarth S, Buiting AG, et al: Secular trends in nosocomial bloodstream infections: antibiotic-resistant bacteria increase the total burden of infection. Clin Infect Dis. 2013; 56: 798-805. 34) Saito H, Noda H, Takakura S, et al: First Major Practical Step toward Appropriate Antimicrobial Use by the Government of Japan. Jpn J Infect Dis. 2019; 72: 56-7. 35) 厚生労働省: 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2023-2027. Available online at: https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/ ap_honbun.pdf Accessed August 20, 2023. 36) Collignon PJ, Conly JM, Andremont A, et al; World Health Organization Advisory Group, Bogotá Meeting on Integrated Surveillance of Antimicrobial Resistance (WHO-AGISAR); Agerso Y, Andremont A, Collignon P, et al: World Health Organization Ranking of Antimicrobials According to Their Importance in Human Medicine: A Critical Step for Developing Risk Management Strategies to Control Antimicrobial Resistance From Food Animal Production. Clin Infect Dis. 2016; 63: 1087-93. 37) Ti TY, Kumarasinghe G, Taylor MB, et al: What is true community-acquired urinary tract infection? Comparison of pathogens identified in urine from routine outpatient specimens and from community clinics in a prospective study. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2003; 22: 242-5. 38) Paterson DL: “Collateral damage” from cephalosporin or quinolone antibiotic therapy. Clin Infect Dis. 2004; 38: S341-5. 39) Schweizer ML, Furuno JP, Harris AD, et al: Comparative effectiveness of nafcillin or cefazolin versus vancomycin in 5) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 6) Oda S, Aibiki M, Ikeda T, et al; Sepsis Registry Committee of The Japanese Society of Intensive Care Medicine: The Japanese guidelines for the management of sepsis. J Intensive Care. 2014; 2: 55. 7) 日本集中治療医学会 Sepsis Registry委員会: 日本版敗血症治療ガイドライン. 日集中医誌. 2013; 20: 124-73. 8) Imaeda T, Nakada TA, Takahashi N, et al: Trends in the incidence and outcome of sepsis using data from a Japanese nationwide medical claims database-the Japan Sepsis Alliance (JaSA) study group. Crit Care. 2021; 25: 338. 9) Abe T, Ogura H, Kushimoto S, et al; JAAM FORECAST group: Variations in infection sites and mortality rates among patients in intensive care units with severe sepsis and septic shock in Japan. J Intensive Care. 2019; 7: 28. 10) Guarino M, Perna B, Cesaro AE, et al: 2023 Update on Sepsis and Septic Shock in Adult Patients: Management in the Emergency Department. J Clin Med. 2023; 12: 3188. 11) Rannikko J, Syrjänen J, Seiskari T, et al: Sepsis-related mortality in 497 cases with blood culture-positive sepsis in an emergency department. Int J Infect Dis. 2017; 58: 52-7. 12) Vakkalanka JP, Harland KK, Swanson MB, et al: Clinical and epidemiological variability in severe sepsis: an ecological study. J Epidemiol Community Health. 2018; 72: 741-5. 13) van Vught LA, Klein Klouwenberg PM, Spitoni C, et al; MARS Consortium: Incidence, Risk Factors, and Attributable Mortality of Secondary Infections in the Intensive Care Unit After Admission for Sepsis. JAMA. 2016; 315: 1469-79. 14) Leligdowicz A, Dodek PM, Norena M, et al; Co-operative Antimicrobial Therapy of Septic Shock Database Research Group: Association between source of infection and hospital mortality in patients who have septic shock. Am J Respir Crit Care Med. 2014; 189: 1204-13. 15) Li Y, Guo J, Yang H, et al: Comparison of culture-negative and culture-positive sepsis or septic shock: a systematic review and meta-analysis. Crit Care. 2021; 25: 167. 16) Zou H, Li G: Clinical practice guidelines for the diagnosis and management of intravascular catheter-related infection: 2009 update by the Infectious Diseases Society of America. Chinese J Infect Chemother. 2010; 2010: 81-4. 17) Tunkel AR, Hasbun R, Bhimraj A, et al: 2017 Infectious Diseases Society of America’s Clinical Practice Guidelines for Healthcare- Associated Ventriculitis and Meningitis. Clin Infect Dis. 2017; 64: e34-65. 18) Osmon DR, Berbari EF, Berendt AR, et al; Infectious Diseases Society of America: Diagnosis and management of prosthetic joint infection: clinical practice guidelines by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2013; 56: e1-25. 19) van de Beek D, Cabellos C, Dzupova O, et al; ESCMID Study Group for Infections of the Brain (ESGIB): ESCMID guideline: diagnosis and treatment of acute bacterial meningitis. Clin Microbiol Infect. 2016; 22: S37-62. 20) Hayakawa K, Mezaki K, Sugiki Y, et al: High rate of multidrugresistant organism colonization among patients hospitalized overseas highlights the need for preemptive infection control. Am J Infect Control. 2016; 44: e257-9. 21) Southeast Asia Infectious Disease Clinical Research Network: Causes and outcomes of sepsis in southeast Asia: a multinational multicentre cross-sectional study. Lancet Glob Health. 2017; 5: e157-67. 22) Yamaji K, Aonuma H, Kanuka H: Distribution of tick-borne diseases in Japan: Past patterns and implications for the future. J Infect Chemother. 2018; 24: 499-504. 23) Hasbun R: Progress and Challenges in Bacterial Meningitis: A
-S 1208- TDMガイドライン策定委員会抗菌薬小委員会(編): 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022. 日本化学療法学会/日本TDM学会. 2022. Available online at: https://www.chemotherapy. or.jp/uploads/files/guideline/tdm2022.pdf Accessed March 14, 2024. 57) Patel JB, Clinical and Laboratory Standards Institute: Performance standards for antimicrobial susceptibility testing. CLSI. M100; S27. 58) 8学会合同抗微生物薬適正使用推進検討委員会: 抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス. 2017. 59) Fraimow HS: Systemic antimicrobial therapy in osteomyelitis. Semin Plast Surg. 2009; 23: 90-9. 60) Bille J: Medical treatment of staphylococcal infective endocarditis. Eur Heart J. 1995; 16: 80-3. 61) Infectious Disease and Antimicrobial Agents: Penicillins. Available online at: www.antimicrobe.org/d24.asp Accessed August 20, 2023. 62) Habib G, Lancellotti P, Antunes MJ, et al; ESC Scientific Document Group: 2015 ESC Guidelines for the management of infective endocarditis: The task force for the management of infective endocarditis of the European Society of cardiology (ESC). Endorsed by: European association for cardio-thoracic surgery (EACTS), the European association of nuclear medicine (EANM). Eur Heart J. 2015; 36: 3075-128. 63) 日本化学療法学会, 日本感染症学会, MRSA感染症の治療ガイドライン作成委員会: MRSA感染症の治療ガイドライン改訂-2019. 2019. 64) Gould FK, Denning DW, Elliott TS, et al: Guidelines for the diagnosis and antibiotic treatment of endocarditis in adults: a report of the Working Party of the British Society for Antimicrobial Chemotherapy. J Antimicrob Chemother. 2012; 67: 269-89. 65) Lappin E, Ferguson AJ: Gram-positive toxic shock syndromes. Lancet Infect Dis. 2009; 9: 281-90. 66) Tunkel AR, Hartman BJ, Kaplan SL, et al: Practice guidelines for the management of bacterial meningitis. Clin Infect Dis. 2004; 39: 1267-84. 67) Stevens DL, Bisno AL, Chambers HF, et al; Infectious Diseases Society of America: Practice guidelines for the diagnosis and management of skin and soft tissue infections: 2014 update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2014; 59: e10-52. 68) Han SB, Bae EY, Lee JW, et al: Clinical characteristics and antimicrobial susceptibilities of viridans streptococcal bacteremia during febrile neutropenia in patients with hematologic malignancies: a comparison between adults and children. BMC Infect Dis. 2013; 13: 273. 69) Nigo M, Munita JM, Arias CA, et al: What’s New in the Treatment of Enterococcal Endocarditis? Curr Infect Dis Rep. 2014; 16: 431. 70) Restrepo A, Clark NM; Infectious Diseases Community of Practice of the American Society of Transplantation: Nocardia infections in solid organ transplantation: Guidelines from the Infectious Diseases Community of Practice of the American Society of Transplantation. Clin Transplant. 2019; 33: e13509. 71) NICE: Pyelonephritis (acute) antimicrobial prescribing guideline Evidence review. NICE guideline 111. 2018. 72) Wang KC, Liu MF, Lin CF, et al: The impact of revised CLSI cefazolin breakpoints on the clinical outcomes of Escherichia coli bacteremia. J Microbiol Immunol Infect. 2016; 49: 768-74. 73) European Association of Urology: EAU Guidelines on Urological Infections. 2018. 74) Fukuchi T, Iwata K, Kobayashi S, et al: Cefmetazole for bacteremia caused by ESBL-producing enterobacteriaceae comparing with carbapenems. BMC Infect Dis. 2016; 16: 427. 75) Harris PN, Tambyah PA, Paterson DL: β-lactam and β methicillin-susceptible Staphylococcus aureus bacteremia. BMC Infect Dis. 2011; 11: 279. 40) McDanel JS, Perencevich EN, Diekema DJ, et al: Comparative effectiveness of beta-lactams versus vancomycin for treatment of methicillin-susceptible Staphylococcus aureus bloodstream infections among 122 hospitals. Clin Infect Dis. 2015; 61: 361-7. 41) Leone M, Bechis C, Baumstarck K, et al; AZUREA Network Investigators: De-escalation versus continuation of empirical antimicrobial treatment in severe sepsis: a multicenter non-blinded randomized noninferiority trial. Intensive Care Med. 2014; 40: 1399-408. 42) 日本感染症学会, 日本化学療法学会, JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会: JAID/JSC感染症治療ガイド2023. ライフサイエンス出版, 東京, 2023. 43) Martin-Loeches I, Torres A, Nagavci B, et al: ERS/ESICM/ ESCMID/ALAT guidelines for the management of severe community-acquired pneumonia. Intensive Care Med. 2023; 49: 615-32. 44) Chertow DS, Memoli MJ: Bacterial coinfection in influenza: a grand rounds review. JAMA. 2013; 309: 275-82. 45) Matsumura Y, Yamamoto M, Nagao M, et al: Multicenter retrospective study of cefmetazole and flomoxef for treatment of extended-spectrum-β-lactamase-producing Escherichia coli bacteremia. Antimicrob Agents Chemother. 2015; 59: 5107-13. 46) Fukuchi T, Iwata K, Kobayashi S, et al: Cefmetazole for bacteremia caused by ESBL-producing enterobacteriaceae comparing with carbapenems. BMC Infect Dis. 2016; 16: 427. 47) Harris PNA, Tambyah PA, Lye DC, et al; MERINO Trial Investigators and the Australasian Society for Infectious Disease Clinical Research Network (ASID-CRN): Effect of Piperacillin- Tazobactam vs Meropenem on 30-Day Mortality for Patients With E coli or Klebsiella pneumoniae Bloodstream Infection and Ceftriaxone Resistance: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018; 320: 984-94. 48) Gomi H, Solomkin JS, Schlossberg D, et al: Tokyo Guidelines 2018: antimicrobial therapy for acute cholangitis and cholecystitis. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018; 25: 3-16. 49) Hua C, Urbina T, Bosc R, et al: Necrotising soft-tissue infections. Lancet Infect Dis. 2023; 23: e81-94. 50) 日本循環器学会, 日本心臓病学会, 日本心エコー図学会, 他:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版). 2017. 51) 細菌性髄膜炎診療ガイドライン作成委員会: 細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014. 南江堂, 東京, 2014. 52) 山藤栄一郎: リケッチア感染症─日本紅斑熱とツツガムシ病をどのように疑い,診断・治療するか. Hospitalist. 2017; 5: 519-28. 53) IASR 31-5: 日本紅斑熱,Rickettsia japonica,急性感染性電撃性紫斑病の合併,DIC,間接蛍光抗体法,PCR. Available online at: https://idsc.niid.go.jp/iasr/31/363/dj363b.html Accessed August 20, 2023. 54) Berbari EF, Kanj SS, Kowalski TJ, et al: 2015 Infectious Diseases Society of America (IDSA) Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Native Vertebral Osteomyelitis in Adults. Clin Infect Dis. 2015; 61: e26-46. 55) Wilson WR, Bower TC, Creager MA, et al; American Heart Association Committee on Rheumatic Fever, Endocarditis, and Kawasaki Disease of the Council on Cardiovascular Disease in the Young; Council on Cardiovascular and Stroke Nursing; Council on Cardiovascular Radiology and Intervention; Council on Cardiovascular Surgery and Anesthesia; Council on Peripheral Vascular Disease; and Stroke Council: Vascular Graft Infections, Mycotic Aneurysms, and Endovascular Infections: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2016; 134: e412-60. 56) 日本化学療法学会抗菌薬TDMガイドライン作成委員会/
-S 1209- CQ2-4:経験的抗菌薬にカルバペネム系抗菌薬 を含めるのはどのような場合か? Answer:ESBL産生菌,あるいはカルバペネムのみ に感受性を持つ耐性緑膿菌,耐性アシネトバクターなど,カルバペネムが特に有効と考えられる微生物が原因として想定される場合である(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 適切な抗菌薬の早期投与が敗血症の予後を改善するため,最も広域なスペクトラムを有するカルバペネムが経験的治療として用いられる頻度が高い。しかし,カルバペネムの過剰使用は,カルバペネム耐性菌の増加のほか,抗菌薬関連の副作用やコストを高める可能性がある。適切な症例を選択してカルバペネムを使用することは,抗菌薬スチュワードシップの観点から望ましい。 (2)解説 カルバペネムと他の広域βラクタム系薬剤の効果の比較では,敗血症や重症感染症を対象とした複数の研究においてカルバペネムの優位性は示されていない1-7)。しかし,近年の人工呼吸器関連肺炎を含む院内肺炎を対象とした20編のRCTの系統的レビューでは,カルバペネムが有意に死亡率を低下させるとする報告がある(リスク比0.84,95% CI: 0.74~0.96)8)。ただし,その報告においても,臨床的奏効率は同等であり,耐性菌発生率もカルバペネム使用により増加することが示唆されている。カルバペネムの過剰使用には,耐性菌増加,抗菌薬関連副作用やコストを高める可能性がある。 カルバペネムなどの広域スペクトラム抗菌薬を経験的治療に用い,これらの薬剤が不必要に広域であった場合には予後が不良となるとする報告や9, 10),米国における成人の敗血症患者において,カルバペネムで治療した場合に実際にESBLが分離されたのはわずか1.4%との報告がある10)。 適切な経験的治療を行うためには,どの細菌を標的にしているかを認識し,カルバペネムなどの広域スペクトラムを有する抗菌薬の選択が合理的であるかを考慮する。カルバペネムの治療優位性が指摘されている細菌としては,ESBLを産生する腸内細菌科グラム陰性桿菌があり,これらに対してはカルバペネムが第一選択となり得る11, 12)。また,カルバペネムのみに感受性を有する緑膿菌やアシネトバクター株が想定され - lactamase inhibitor combinations in the treatment of extendedspectrum β-lactamase producing Enterobacteriaceae: time for a reappraisal in the era of few antibiotic options? Lancet Infect Dis. 2015; 15: 475-85. 76) Cheng HP, Siu LK, Chang FY: Extended-spectrum cephalosporin compared to cefazolin for treatment of Klebsiella pneumoniaecaused liver abscess. Antimicrob Agents Chemother. 2003; 47: 2088-92. 77) Tamma PD, Girdwood SC, Gopaul R, et al: The use of cefepime for treating AmpC β-lactamase-producing Enterobacteriaceae. Clin Infect Dis. 2013; 57: 781-8. 78) Choi SH, Lee JE, Park SJ, et al: Emergence of antibiotic resistance during therapy for infections caused by Enterobacteriaceae producing AmpC beta-lactamase: implications for antibiotic use. Antimicrob Agents Chemother. 2008; 52: 995-1000. 79) Pegues DV, Miller SI: Salmonella Species. Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases. Elsevier Inc., Amsterdam, 2019. 80) Chu H, Zhao L, Wang M, et al: Sulbactam-based therapy for Acinetobacter baumannii infection: a systematic review and metaanalysis. Braz J Infect Dis. 2013; 17: 389-94. 81) Wong KC, Brown AM, Luscombe GM, et al: Antibiotic use for Vibrio infections: important insights from surveillance data. BMC Infect Dis. 2015; 15: 226. 82) Desai H, Agrawal A: Pulmonary emergencies: pneumonia, acute respiratory distress syndrome, lung abscess, and empyema. Med Clin North Am. 2012; 96: 1127-48. 83) Brouwer MC, Tunkel AR, McKhann GM 2nd, et al: Brain abscess. N Engl J Med. 2014; 371: 447-56. 84) 日本化学療法学会・日本感染症学会 CDI診療ガイドライン作成委員会: Clostridioides(Clostridium)difficile感染症診療ガイドライン2022. 85) Rajapakse S: Leptospirosis: clinical aspects. Clin Med (Lond). 2022; 22: 14-7. 86) 日本医真菌学会侵襲性カンジダ症の診断・治療ガイドライン作成委員会: 日本医真菌学会侵襲性カンジダ症の診断・治療ガイドライン2013. 日本医真菌学会, 東京, 2013. 87) Uyeki TM, Bernstein HH, Bradley JS, et al: Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America: 2018 Update on Diagnosis, Treatment, Chemoprophylaxis, and Institutional Outbreak Management of Seasonal Influenzaa. Clin Infect Dis. 2019; 68: e1-47. 88) 加藤康幸: 重症熱性血小板減少症(SFTS)診療の手引き 改訂新版. 国立国際医療センター, 東京, 2019. 89) 日本神経感染症学会, 日本神経学会, 日本神経治療学会, 単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン作成委員会: 単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017. 南江堂, 東京, 2017. 90) 日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG 2020)特別編COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations 第5.0版. 日本版敗血症診療ガイドライン2020 特別委員会: COVID-19 対策タスクフォース: Available online at: https:// www.jsicm.org/news/upload/J-SSCG2020_COVID-19_1_ ver.5.0.0.pdf Accessed March 14, 2024. 91) COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15.1版. 一般社団法人日本感染症学会COVID-19治療薬タスクフォース.
-S 1210- imipenem/cilastatin in the treatment of nosocomial pneumonia--a double blind prospective multicentre study. Infection. 2006; 34: 127-34. 4) Joshi M, Metzler M, McCarthy M, et al: Comparison of piperacillin/tazobactam and imipenem/cilastatin, both in combination with tobramycin, administered every 6 h for treatment of nosocomial pneumonia. Respir Med. 2006; 100: 1554-65. 5) Erasmo AA, Crisostomo AC, Yan LN, et al: Randomized comparison of piperacillin/tazobactam versus imipenem/cilastatin in the treatment of patients with intra-abdominal infection. Asian J Surg. 2004; 27: 227-35. 6) Klugman KP, Dagan R: Randomized comparison of meropenem with cefotaxime for treatment of bacterial meningitis. Meropenem Meningitis Study Group. Antimicrob Agents Chemother. 1995; 39: 1140-6. 7) Schmutzhard E, Williams KJ, Vukmirovits G, et al: A randomised comparison of meropenem with cefotaxime or ceftriaxone for the treatment of bacterial meningitis in adults. Meropenem Meningitis Study Group. J Antimicrob Chemother. 1995; 36: 85-97. 8) Howatt M, Klompas M, Kalil AC, et al: Carbapenem Antibiotics for the Empiric Treatment of Nosocomial Pneumonia: A Systematic Review and Meta-analysis. Chest. 2021; 159: 1041-54. 9) Webb BJ, Sorensen J, Jephson A, et al: Broad-spectrum antibiotic use and poor outcomes in community-onset pneumonia: a cohort study. Eur Respir J. 2019; 54: 1900057. 10) Rhee C, Kadri SS, Dekker JP, et al; CDC Prevention Epicenters Program: Prevalence of Antibiotic-Resistant Pathogens in Culture-Proven Sepsis and Outcomes Associated With Inadequate and Broad-Spectrum Empiric Antibiotic Use. JAMA Netw Open. 2020; 3: e202899. 11) Tamma PD, Rodriguez-Bano J: The Use of Noncarbapenem β- Lactams for the Treatment of Extended-Spectrum β-Lactamase Infections. Clin Infect Dis. 2017; 64: 972-80. 12) Harris PNA, Tambyah PA, Lye DC, et al; MERINO Trial Investigators and the Australasian Society for Infectious Disease Clinical Research Network (ASID-CRN): Effect of Piperacillin- Tazobactam vs Meropenem on 30-Day Mortality for Patients With E coli or Klebsiella pneumoniae Bloodstream Infection and Ceftriaxone Resistance: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018; 320: 984-94. 13) Voor In ’t Holt AF, Severin JA, Lesaffre EM, et al: A systematic review and meta-analyses show that carbapenem use and medical devices are the leading risk factors for carbapenem-resistant Pseudomonas aeruginosa. Antimicrob Agents Chemother. 2014; 58: 2626-37. 14) Liu P, Li X, Luo M, et al: Risk Factors for Carbapenem-Resistant Klebsiella pneumoniae Infection: A Meta-Analysis. Microb Drug Resist. 2018; 24: 190-8. 15) Goodman KE, Lessler J, Cosgrove SE, et al; Antibacterial Resistance Leadership Group: A Clinical Decision Tree to Predict Whether a Bacteremic Patient Is Infected With an Extended- Spectrum β-Lactamase-Producing Organism. Clin Infect Dis. 2016; 63: 896-903. 16) Raman G, Avendano EE, Chan J, et al: Risk factors for hospitalized patients with resistant or multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa infections: a systematic review and meta-analysis. Antimicrob Resist Infect Control. 2018; 7: 79. 17) Lambregts MMC, Hendriks BJC, Visser LG, et al: Using local clinical and microbiological data to develop an institution specific carbapenem-sparing strategy in sepsis: a nested case-control study. Antimicrob Resist Infect Control. 2019; 8: 19. る時に,カルバペネムを選択することは合理的である。しかし,現在の日本における臨床では,このような耐性株が治療対象となることは稀である。 カルバペネムの使用自体が,多剤耐性緑膿菌あるいは多剤耐性アシネトバクター保菌の最大の危険因子である13)。2021年度の厚生労働省院内感染対策サーベイランスによるカルバペネム耐性緑膿菌の割合は,メロペネム10%,イミペネム16%であり,2018年度の報告と比較し横ばいではあるが,依然として高率である。また,カルバペネム使用は,カルバペネマーゼ産生菌を含めたカルバペネム耐性腸内細菌科グラム陰性桿菌の危険因子でもある14)。そのため,カルバペネムの使用に関しては,耐性菌を誘導する危険性があることを意識した適正使用の観点が必要で,カルバペネムは他の薬剤では代替し難い上記の微生物が病原菌であると想定される状況においてのみ使用することが適当である。これはカルバペネムスペアリングと呼ばれる戦略であり,カルバペネム耐性菌を減らしつつ適正な抗菌薬を選択するうえで重要な考え方である。抗菌薬スチュワードシップを重視する観点や世界的に抗菌薬耐性菌が増加している状況,また,日本においてカルバペネムが頻用されているという現状を踏まえ,本ガイドラインはJ-SSCG 2020に引き続きこの保守的選択を支持する。 カルバペネムが有用と考えられるESBL産生菌感染症の危険因子は,長期入院,抗菌薬投与歴,血管内留置カテーテルの存在などが報告されており15),耐性緑膿菌感染症では,抗菌薬投与歴や入院歴,ICUへの入室歴などが報告されている16)。また,カルバペネムが経験的治療の選択肢となりうる感染症かを判断するには,前項のTable 2-3-1(各感染症別の経験的治療薬)が参考になる。 不必要なカルバペネムの使用を避け17),“ESBL産生菌,あるいはカルバペネムのみに感受性を持つ耐性緑膿菌,耐性アシネトバクターなど,カルバペネムが特に有効と考えられる微生物が原因として想定される場合”に,危険因子を十分に評価し,カルバペネムを経験的治療に用いることを考慮することが適当である。 文 献 1) Bochud PY, Bonten M, Marchetti O, et al: Antimicrobial therapy for patients with severe sepsis and septic shock: an evidencebased review. Crit Care Med. 2004; 32: S495-512. 2) Trouillet JL, Vuagnat A, Combes A, et al: Pseudomonas aeruginosa ventilator-associated pneumonia: comparison of episodes due to piperacillin-resistant versus piperacillin-susceptible organisms. Clin Infect Dis. 2002; 34: 1047-54. 3) Schmitt DV, Leitner E, Welte T, et al: Piperacillin/tazobactam vs
-S 1211- が死亡転帰と有意に関連したとされる5)。一方, MRSAに対する経験的抗菌療法の有用性についての研究は十分でなく,医療関連MRSA菌血症に対するグリコペプチドの経験的抗菌療法の予後改善との関連は示されていない6)。 2)Legionella pneumophila レジオネラ症は,臨床的に細菌性肺炎と鑑別することは困難である7)。発症リスクとして,男性,喫煙,慢性心疾患,肺疾患,糖尿病,末期腎不全,固形臓器移植,免疫不全,担癌,50歳以上などがある8)。汚染した水系曝露がある肺炎患者で危険因子がある場合にL. pneumophilaによる感染症を考慮する。ただし,重症市中肺炎に対しする経験的治療において,レジオネラ肺炎を含む非定型肺炎までルーチンにカバーすることによる有効性は示されていない9)。 3)リケッチア属 日本で報告されているリケッチア症は,Orientia tsutsugamushiによるツツガムシ病とRickettsia japonicaによる日本紅斑熱である。発熱,皮疹,痂皮/刺し口(eschar)が3主徴とされ10),重症例では播種性血管内凝固を20%に合併する10)。背景や臨床所見からリケッチア症による敗血症を疑った場合は,保健所と相談して検体採取を行い,結果を待たずに経験的治療を開始する。 4)Clostridioides(Clostridium)difficile 毒素産生型のC. difficileによる感染症(C. difficile infection: CDI)は,下痢のみで自然軽快する軽症から,高熱,腹痛,白血球増多(≧25,000/μL),低アルブミン血症,腎不全,ショック,中毒性巨大結腸症などの所見がみられる重症にわたる11)。ただし,CDIの重症度において統一されたものは未だ示されていない12)。 抗菌薬曝露は最も重要なCDI発症のリスク因子であり,抗菌薬治療中および終了後1か月以内に発症するリスクが高い。抗菌薬の種類によってもリスクは異なる13)(Table 2-5-1)。プロトンポンプ阻害薬やヒスタミンH2受容体拮抗薬などの制酸薬14),高齢,入院の既往,基礎疾患の重症度,腹部手術後,経鼻カテーテル留置,長期入院などもCDIの発症リスクである15)。抗菌薬曝露歴があり,腹部症候やショックを呈する患者にリスクがある場合にCDIを考慮する。 5)Candida 属 Candida属は,免疫抑制状態の患者において,菌血症やカテーテル関連血流感染症,感染性心内膜炎,固形臓器膿瘍,髄膜炎,眼内炎などの侵襲性感染症を起こす16)。侵襲性Candida感染症の発症リスクは,広域抗菌薬の使用,血管内カテーテル留置,人工物留置, CQ2-5:どのような場合に,MRSAや一般細菌 以外(カンジダ,ウイルス,レジオネラ,リケッ チア,クロストリジオイデス ディフィシルなど) に対する経験的抗微生物薬を選択するか? Answer:感染巣,患者背景および検査結果などから,それぞれの微生物が原因として想定される場合である(BQに対する情報提示)。(Table 2-5-1を参照) (1)背景および本CQの重要度 敗血症の抗菌療法において,経験的治療の適切性が死亡率低下に関連するとの観察研究が多数存在する1)。しかし,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA)やClostridioides(Clostridium)difficileなどの細菌, Legionella pneumophila,リケッチア,真菌,ウイルスは,一般的な細菌感染症診療で用いられる抗菌療法では治療ができない。これらすべての病原体を考慮した経験的抗微生物薬を選択した場合,副作用の危険性やコストを高めるだけでなく,耐性微生物の発生を助長しうる。症例に応じた抗微生物薬を選択的に使用することは,抗菌薬スチュワードシップの観点からも望ましい。 (2)解説 MRSAや一般細菌以外の病原体に対して,経験的抗微生物薬を選択する際に考慮すべき感染症発症と重症化のリスクを記載する。 1)MRSA MRSAは黄色ブドウ球菌の多剤耐性菌であり,その保菌リスクは,糖尿病,chronic obstructive pulmonary disease(COPD),心不全などの医療曝露である2)。S. aureus(MRSAを含む)による感染症は,皮膚軟部組織感染症,骨髄炎,関節炎,手術部位感染症,インフルエンザウイルス感染症後の市中肺炎,院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎,菌血症,カテーテル関連血流感染症,感染性心内膜炎,トキシックショック症候群など幅広く3),これらの感染症を起こすリスクとして,血液透析,腹膜透析,糖尿病,心疾患,脳卒中,担癌患者,systemic lupus erythematosus(SLE),関節リウマチ, HIV感染症,固形臓器移植後,アルコール依存症などがある3)。 MRSA菌血症は死亡率の高い疾患であり4),特に患者背景からMRSA感染症が強く疑われる場合や重症例などにおいて,グリコペプチドの経験的抗菌療法は容認される。MRSA菌血症患者のうち,65歳以上,尿道カテーテル留置,低アルブミン血症を有すること
-S 1212- の内臓の障害を伴う致死性播種性感染症となりうる。重症HSV感染症の発症高リスクは,臓器移植患者ではT細胞への免疫抑制が最も強い移植後30日以内25),骨髄移植ではHSV1陽性レシピエントがHSV1陰性ドナーから移植を受けた場合である26)。また,妊婦ではHSV2の初感染が播種性感染症となる危険性がある27)。血清や髄液,水疱内容液などの検体でPCR検査を行うが,診断の迅速性に欠ける。そのため,重症HSV感染症の発症リスクが高い患者では,HSV感染症を疑ったら治療の開始を考慮する。3サイトメガロウイルス サイトメガロウイルス(cytomegalovirus: CMV)は,固形臓器移植後,骨髄移植後,HIV感染症などの免疫抑制状態の患者における脳炎,網脈絡膜炎,腸炎,肺炎の原因となり,致死的病態となりうる。そのため,免疫抑制状態の患者では,ウイルス迅速同定(シェルバイアル法),CMV抗原血症検査(CMVアンチゲネミア法),定量PCR法などで,定期的に血液中のサイトメガロウイルス量をモニタリングして治療開始の参考とする28)。4重症発熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス SFTSウイルスによる重症発熱性血小板減少症候群はダニ媒介性疾患であり,発熱や消化器症状,意識障害などの中枢神経症状,血小板減少症や白血球減少症,肝障害や腎障害を認める。重症例では2週間以内に急性腎障害や心筋炎,髄膜脳炎を発症し,致死的となる29)。感染者の約半数が農作業に従事し,発症前に屋外活動を行っていたとの報告があり30),職業と症状からSFTSの可能性を疑う。生存への有効性が示された薬剤は報告されていない31)。5新型コロナウイルス 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症は,ARDSを呈する重症肺炎となる。核酸検出検査,抗原検査,抗体検査で,可能な限り偽陽性を除外した陽性例を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断する。周囲の感染状況や患者の身体所見,画像所見などからCOVID-19罹患を疑い検査を行う。 絶食/経静脈的高カロリー輸液,細胞毒性のある抗がん薬使用,心臓,肺,腎臓,膵臓,肝臓などの固形臓器移植後,Candida定着などである。早期の適切な抗真菌薬投与は死亡率を50%減らすという報告があり17),リスク因子がある敗血症患者に対する抗真菌薬併用は容認される。一方,non-albicans種による侵襲性Candida感染症の割合が増加しており,抗真菌薬の適正使用に警鐘を鳴らす報告もある18)。Candidaの定着のみで抗真菌薬を投与するのは不適切とする意見もあり19),その他の臨床情報を併せた検討が必要である。 6)ウイルス感染症 1インフルエンザウイルス 季節性インフルエンザは,肺炎,心筋炎や脳炎・脳症を合併し,重篤化する症例がある20)。鳥インフルエンザ(H7N9など)はARDSを発症し,死亡率は約30%である21)。インフルエンザ感染症の重症化リスクとして,65歳以上,流行期の妊婦,喘息を含む慢性呼吸器疾患,心・腎・肝・血液障害や糖尿病,免疫不全,呼吸機能低下,高誤嚥リスク,気道分泌物を扱う職業,BMI 40 kg/m2以上の肥満,長期ケア病棟入院,鳥インフルエンザや新型インフルエンザ流行地への渡航歴などがある22)。季節性インフルエンザの流行期や,鳥インフルエンザの流行地への渡航歴がある患者の呼吸不全や心筋炎,脳炎・脳症を疑う場合には,抗原迅速検査に加え,重症化リスクを勘案して抗インフルエンザ薬の投与を考慮する22)。2単純ヘルペスウイルス 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus: HSV)は,免疫不全患者における脳炎や播種性感染症などの致死的感染症の原因となる。単純ヘルペスウイルス脳炎は側頭葉の神経巣症状を伴うことが特徴であるが,他のウイルス性脳炎との鑑別は難しい23)。ウイルス性脳炎の原因として最も頻度の高いHSV1型は,経験的抗微生物療法の対象とする24)。また,固形臓器移植後,骨髄移植後,HIV感染症などの免疫抑制状態では,HSV再活性化により広範な粘膜疹や肝不全など Table 2-5-1 Clostridioides(Clostridium)difficile感染症の発症リスク別抗菌薬表 高リスク中リスク低リスククリンダマイシン,キノロン, 2世代以上セファロスポリンペニシリン,マクロライド, βラクタマーゼ配合剤,カルバペネム,バンコマイシン,メトロニダゾールアミノグリコシド,テトラサイクリン,トリメトプリム,スルフォナミド,リファンピシン種類が多く,投与期間が長いほど発症リスクが高まる。
-S 1213- Concerning Trend for the Present and Future. Curr Infect Dis Rep. 2019; 21: 47. 19) Troughton JA, Browne G, McAuley DF, et al: Prior colonisation with Candida species fails to guide empirical therapy for candidaemia in critically ill adults. J Infect. 2010; 61: 403-9. 20) Treanor JJ: Influenza Viruses, Including Avian Influenza and Swine Influenza. 9th Edit. Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles Practice of Infectious Diseases. Elsevier Inc., Amsterdam, 2019; p2143-68.e7. 21) Gao HN, Lu HZ, Cao B, et al: Clinical findings in 111 cases of influenza A (H7N9) virus infection. N Engl J Med. 2013; 368: 2277-85. 22) Uyeki TM, Bernstein HH, Bradley JS, et al: Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America: 2018 Update on Diagnosis, Treatment, Chemoprophylaxis, and Institutional Outbreak Management of Seasonal Influenzaa. Clin Infect Dis. 2019; 68: e1-47. 23) Whitley RJ, Cobbs CG, Alford CA Jr, et al: Diseases that mimic herpes simplex encephalitis. Diagnosis, presentation, and outcome. NIAD Collaborative Antiviral Study Group. JAMA. 1989; 262: 234-9. 24) Beaman MH: Community-acquired acute meningitis and encephalitis: a narrative review. Med J Aust. 2018; 209: 449-54. 25) Kusne S, Schwartz M, Breinig MK, et al: Herpes simplex virus hepatitis after solid organ transplantation in adults. J Infect Dis. 1991; 163: 1001-7. 26) Nichols WG, Boeckh M, Carter RA, et al: Transferred herpes simplex virus immunity after stem-cell transplantation: clinical implications. J Infect Dis. 2003; 187: 801-8. 27) Schiffer JT, Core L: Herpes Simplex Virus. 9th Edit. Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles Practice of Infectious Diseases. Elsevier Inc., Amsterdam, 2019; p1828-48.e7. 28) Ljungman P, de la Camara R, Robin C, et al; 2017 European Conference on Infections in Leukaemia group: Guidelines for the management of cytomegalovirus infection in patients with haematological malignancies and after stem cell transplantation from the 2017 European Conference on Infections in Leukaemia (ECIL 7). Lancet Infect Dis. 2019; 19: e260-72. 29) Park SY, Kwon JS, Kim JY, et al: Severe fever with thrombocytopenia syndrome-associated encephalopathy/encephalitis. Clin Microbiol Infect. 2018; 24: 432.e1-432.e4. 30) NIID国立感染研究所: 重症熱性血小板減少症候群(SFTS), 2019年6月現在. Available online at: https://www.niid.go.jp/niid/ ja/sfts/sfts-iasrtpc/8982-473t.html Accessed August 17, 2023. 31) Seo JW, Kim D, Yun N, et al: Clinical Update of Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome. Viruses. 2021; 13: 1213. 文 献 1) Paul M, Shani V, Muchtar E, et al: Systematic review and metaanalysis of the efficacy of appropriate empiric antibiotic therapy for sepsis. Antimicrob Agents Chemother. 2010; 54: 4851-63. 2) McKinnell JA, Miller LG, Eells SJ, et al: A systematic literature review and meta-analysis of factors associated with methicillinresistant Staphylococcus aureus colonization at time of hospital or intensive care unit admission. Infect Control Hosp Epidemiol. 2013; 34: 1077-86. 3) Que YA, Moreillon P: Staphylococcus aureus (Including Staphylococcal Toxic Shock Syndrome). 9th Edit. Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles Practice of Infectious Diseases. Elsevier Inc., Amsterdam, 2019; p2393-431. e9. 4) Marchaim D, Kaye KS, Fowler VG, et al: Case-control study to identify factors associated with mortality among patients with methicillin-resistant Staphylococcus aureus bacteraemia. Clin Microbiol Infect. 2010; 16: 747-52. 5) Hasmukharay K, Ngoi ST, Saedon NI, et al: Evaluation of methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) bacteremia: Epidemiology, clinical characteristics, and outcomes in the older patients in a tertiary teaching hospital in Malaysia. BMC Infect Dis. 2023; 23: 241. 6) Yoon YK, Park DW, Sohn JW, et al: Effects of inappropriate empirical antibiotic therapy on mortality in patients with healthcare-associated methicillin-resistant Staphylococcus aureus bacteremia: a propensity-matched analysis. BMC Infect Dis. 2016; 16: 331. 7) Roig J, Aguilar X, Ruiz J, et al: Comparative study of Legionella pneumophila and other nosocomial-acquired pneumonias. Chest. 1991; 99: 344-50. 8) Paul HE, Craig RR: Legionnaires’ disease and pontiac fever. 9th Edit. US Pharm. Douglas, and Bennett’s Principles Practice of Infectious Diseases. Elsevier Inc., Amsterdam, 2019; p2807-17. e5. 9) Eliakim-Raz N, Robenshtok E, Shefet D, et al: Empiric antibiotic coverage of atypical pathogens for community-acquired pneumonia in hospitalized adults. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 2012: CD004418. 10) National Institute of Infectious Diseases: Scrub typhus and Japanese spotted fever in Japan 2007-2016. IASR. 2017; 38: 109-12. 11) Formerly C, Infection C, Gerding DN, et al: Clostridioides difficile (Formerly Clostridium difficile) Infection. 9th Edit. Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles Practice of Infectious Diseases. Elsevier Inc., Amsterdam, 2019; p2933-47.e4. 12) Kunishima H, Ohge H, Suzuki H, et al: Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Clostridioides (Clostridium) difficile infection. J Infect Chemother. 2022; 28: 1045-83. 13) Stevens V, Dumyati G, Fine LS, et al: Cumulative antibiotic exposures over time and the risk of Clostridium difficile infection. Clin Infect Dis. 2011; 53: 42-8. 14) Janarthanan S, Ditah I, Adler DG, et al: Clostridium difficileassociated diarrhea and proton pump inhibitor therapy: a metaanalysis. Am J Gastroenterol. 2012; 107: 1001-10. 15) Loo VG, Bourgault AM, Poirier L, et al: Host and pathogen factors for Clostridium difficile infection and colonization. N Engl J Med. 2011; 365: 1693-703. 16) Lionakis MS, Jr JEE: Candida Species. 9th Edit. Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles Practice of Infectious Diseases. Elsevier Inc., Amsterdam, 2019; p3087-102.e3. 17) Pappas PG, Kauffman CA, Andes DR, et al: Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2016; 62: e1-50. 18) Hendrickson JA, Hu C, Aitken SL, et al: Antifungal Resistance: a
-S 1214- チニン値は急激な糸球体濾過量の変化から24~48時間遅れて変化するため,急性期病態では腎機能を正確に反映しない。複数回の測定による血清クレアチニン値の変動を参考に腎機能を推定する17, 18)。血清クレアチニン値が上昇傾向であれば真のGFRはeGFR値よりも小さく,血清クレアチニン値が低下傾向であればeGFR値よりも大きいことを想定する。また,eGFR値は体表面積を1.73 m2と仮定しているため,患者の体格の違いに注意する。 一方,敗血症患者の初期には,血清クレアチニン値やeGFR値による腎機能評価に基づく薬剤投与量では抗微生物薬濃度が不十分となる19-21)。腎機能障害時であっても,以下1,2を考慮した体液量の変動を把握した用量調整を考慮する22-30)。 1 毛細管からの体液漏出による浮腫,輸液療法,胸 腹水,体液ドレナージ,低アルブミン血症による蛋白結合率低下などに伴う分布容積の増加と血漿や細胞外液における抗微生物薬の希釈2 心拍出量および腎血流増加,血管拡張による腎ク リアランスの増加(augmented renal clearance)体外循環によっても抗微生物薬の濃度は影響を受ける27, 31, 32)。体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation: ECMO)では回路における抗微生物薬の吸着などが原因となり,分布容積や抗微生物薬クリアランスが変化するが,その変動は抗微生物薬や回路の種類などにより異なる33-40)。 腎代替療法が導入された場合も,抗微生物薬の濃度が変動する41-47)。設定により異なるが48-52),一般的に推奨されている腎代替療法中の抗菌薬投与方法では不十分となりやすい53-60)。限外濾過量や廃液中の濃度測定が投与量調整の参考になる61, 62)。また,血中濃度測定が可能な薬剤では,測定された濃度から投与量を調整する63)。なお,海外で用いられている腎代替療法の濾過量は,日本の保険診療における上限量(16 L/日)よりも多いことに注意する。 CQ2-6:腎排泄型の抗微生物薬の用量調整に際 して,何が参考になるか? Answer:複数の時点で測定された腎機能検査値(血 清クレアチニン値など)に加えて,体液量の変動,腎代替療法や他の体外循環治療の有無などが参考になる(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 敗血症の治療において,抗微生物薬の適切な投与設計は患者の予後に関連する1-5)。敗血症患者では腎障害を併発しやすく,ICUにおいてKDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcome)基準による急性腎障害の約半数は敗血症が原因である6-10)。腎障害時には腎排泄型の抗微生物薬の減量が考慮されるが,敗血症の初期には体液量の変動や分布容積(volume of distribution: Vd)が変化し,腎代替療法などの体外循環治療が導入されることも多く,用量調整に影響する因子は多岐にわたる。J-SSCG 2020に引き続き,CQとして取り上げる。 (2)解説 腎排泄型の抗微生物薬では,敗血症による腎障害においても投与量の調整が必要である11-16)。腎排泄型である多くの水溶性抗微生物薬(抗菌薬;β-ラクタム系,アミノグリコシド系,グリコペプチド系,ポリペプチド系など,抗真菌薬;フルオロピリミジン系,一部のトリアゾール系)や脂溶性で腎排泄型のニューキノロン系の投与に際しては,腎機能に応じた用量調整を行う(Table 2-6-1)。 腎機能の指標として,血清クレアチニン値,年齢・性別や体重を考慮して算出される推算糸球体濾過量[estimated glomerular filtration rate(eGFR)値]や推算クレアチニンクリアランス(estimated creatinine clearance: CCr)値が一般的に使用される。ただし,血清クレア Table 2-6-1 腎排泄型であり腎機能障害時に用量調整を要する抗微生物薬の種類 抗微生物薬の種類例外β-ラクタム系セフォペラゾン,セフトリアキソン,ビアペネムアミノグリコシド系グリコペプチド系ポリペプチド系ニューキノロン系モキシフロキサシン(経口) ST合剤フルオロピリミジン系トリアゾール系イトラコナゾール,ボリコナゾール,ポサコナゾール
-S 1215- kidney injury on antimicrobial dosing in critically ill patients: are dose reductions always necessary? Diagn Microbiol Infect Dis. 2014; 79: 77-84. 21) Hughes S, Heard KL, Mughal N, et al: Optimization of antimicrobial dosing in patients with acute kidney injury: a single-centre observational study. JAC Antimicrob Resist. 2022; 4: dlac080. 22) Baptista JP, Udy AA, Sousa E, et al: A comparison of estimates of glomerular filtration in critically ill patients with augmented renal clearance. Crit Care. 2011; 15: R139. 23) Martin JH, Fay MF, Udy A, et al: Pitfalls of using estimations of glomerular filtration rate in an intensive care population. Intern Med J. 2011; 41: 537-43. 24) Gonçalves-Pereira J, Póvoa P: Antibiotics in critically ill patients: a systematic review of the pharmacokinetics of β-lactams. Crit Care. 2011; 15: R206. 25) Udy AA, Varghese JM, Altukroni M, et al: Subtherapeutic initial β-lactam concentrations in select critically ill patients: association between augmented renal clearance and low trough drug concentrations. Chest. 2012; 142: 30-9. 26) Grootaert V, Willems L, Debaveye Y, et al: Augmented renal clearance in the critically ill: how to assess kidney function. Ann Pharmacother. 2012; 46: 952-9. 27) Udy AA, Roberts JA, Lipman J: Clinical implications of antibiotic pharmacokinetic principles in the critically ill. Intensive Care Med. 2013; 39: 2070-82. 28) Udy AA, Baptista JP, Lim NL, et al: Augmented renal clearance in the ICU: results of a multicenter observational study of renal function in critically ill patients with normal plasma creatinine concentrations*. Crit Care Med. 2014; 42: 520-7. 29) Udy AA, Roberts JA, Shorr AF, et al: Augmented renal clearance in septic and traumatized patients with normal plasma creatinine concentrations: identifying at-risk patients. Crit Care. 2013; 17: R35. 30) Carlier M, Carrette S, Roberts JA, et al: Meropenem and piperacillin/tazobactam prescribing in critically ill patients: does augmented renal clearance affect pharmacokinetic/pharmacodynamic target attainment when extended infusions are used? Crit Care. 2013; 17: R84. 31) Yang CJ, Wu CW, Wu CC: Effect of Extracorporeal Membrane Oxygenation on the New Vancomycin Dosing Regimen in Critically Ill Patients Receiving Continuous Venovenous Hemofiltration. Ther Drug Monit. 2018; 40: 310-4. 32) Cheng V, Abdul-Aziz MH, Burrows F, et al; ASAP ECMO Investigators: Population Pharmacokinetics of Vancomycin in Critically Ill Adult Patients Receiving Extracorporeal Membrane Oxygenation (an ASAP ECMO Study). Antimicrob Agents Chemother. 2022; 66: e0137721. 33) Shekar K, Fraser JF, Smith MT, et al: Pharmacokinetic changes in patients receiving extracorporeal membrane oxygenation. J Crit Care. 2012; 27: 741.e9-18. 34) Shekar K, Roberts JA, Mcdonald CI, et al: Sequestration of drugs in the circuit may lead to therapeutic failure during extracorporeal membrane oxygenation. Crit Care. 2012; 16: R194. 35) Shekar K, Roberts JA, Mcdonald CI, et al: Protein-bound drugs are prone to sequestration in the extracorporeal membrane oxygenation circuit: results from an ex vivo study. Crit Care. 2015; 19: 164. 36) Dzierba AL, Abrams D, Brodie D: Medicating patients during extracorporeal membrane oxygenation: the evidence is building. Crit Care. 2017; 21: 66. 37) Donadello K, Antonucci E, Cristallini S, et al: β-Lactam pharmacokinetics during extracorporeal membrane oxygenation therapy: A case-control study. Int J Antimicrob Agents. 2015; 45: 278-82. 38) Kühn D, Metz C, Seiler F, et al: Antibiotic therapeutic drug monitoring in intensive care patients treated with different 文 献 1) Bagshaw SM, George C, Bellomo R; ANZICS Database Management Committee: Early acute kidney injury and sepsis: a multicentre evaluation. Crit Care. 2008; 12: R47. 2) Kollef MH, Sherman G, Ward S, et al: Inadequate antimicrobial treatment of infections: a risk factor for hospital mortality among critically ill patients. Chest. 1999; 115: 462-74. 3) Ibrahim EH, Sherman G, Ward S, et al: The influence of inadequate antimicrobial treatment of bloodstream infections on patient outcomes in the ICU setting. Chest. 2000; 118: 146-55. 4) Shorr AF, Micek ST, Welch EC, et al: Inappropriate antibiotic therapy in Gram-negative sepsis increases hospital length of stay. Crit Care Med. 2011; 39: 46-51. 5) Roberts JA, Paul SK, Akova M, et al; DALI Study: DALI: defining antibiotic levels in intensive care unit patients: are current β-lactam antibiotic doses sufficient for critically ill patients? Clin Infect Dis. 2014; 58: 1072-83. 6) Uchino S, Kellum JA, Bellomo R, et al; Beginning and Ending Supportive Therapy for the Kidney (BEST Kidney) Investigators: Acute renal failure in critically ill patients: a multinational, multicenter study. JAMA. 2005; 294: 813-8. 7) Bagshaw SM, Lapinsky S, Dial S, et al; Cooperative Antimicrobial Therapy of Septic Shock (CATSS) Database Research Group: Acute kidney injury in septic shock: clinical outcomes and impact of duration of hypotension prior to initiation of antimicrobial therapy. Intensive Care Med. 2009; 35: 871-81. 8) Lagu T, Rothberg MB, Shieh MS, et al: Hospitalizations, costs, and outcomes of severe sepsis in the United States 2003 to 2007. Crit Care Med. 2012; 40: 754-61. 9) Schortgen F, Asfar P: Update in sepsis and acute kidney injury 2014. Am J Respir Crit Care Med. 2015; 191: 1226-31. 10) Hoste EA, Bagshaw SM, Bellomo R, et al: Epidemiology of acute kidney injury in critically ill patients: the multinational AKI-EPI study. Intensive Care Med. 2015; 41: 1411-23. 11) Roberts JA, Abdul-Aziz MH, Lipman J, et al; International Society of Anti-Infective Pharmacology and the Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Study Group of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases: Individualised antibiotic dosing for patients who are critically ill: challenges and potential solutions. Lancet Infect Dis. 2014; 14: 498-509. 12) Godin M, Murray P, Mehta RL: Clinical approach to the patient with AKI and sepsis. Semin Nephrol. 2015; 35: 12-22. 13) Sime FB, Roberts MS, Roberts JA: Optimization of dosing regimens and dosing in special populations. Clin Microbiol Infect. 2015; 21: 886-93. 14) Lewis SJ, Mueller BA: Antibiotic Dosing in Patients With Acute Kidney Injury: “Enough But Not Too Much”. J Intensive Care Med. 2016; 31: 164-76. 15) Póvoa P, Moniz P, Pereira JG, et al: Optimizing Antimicrobial Drug Dosing in Critically Ill Patients. Microorganisms. 2021; 9: 1401. 16) Eyler RF, Mueller BA; Medscape: Antibiotic dosing in critically ill patients with acute kidney injury. Nat Rev Nephrol. 2011; 7: 226-35. 17) Bernier-Jean A, Beaubien-Souligny W, Goupil R, et al: Diagnosis and outcomes of acute kidney injury using surrogate and imputation methods for missing preadmission creatinine values. BMC Nephrol. 2017; 18: 141. 18) Ostermann M, Joannidis M: Acute kidney injury 2016: diagnosis and diagnostic workup. Crit Care. 2016; 20: 299. 19) De Waele JJ, Lipman J, Akova M, et al: Risk factors for target non-attainment during empirical treatment with β-lactam antibiotics in critically ill patients. Intensive Care Med. 2014; 40: 1340-51. 20) Blot S, Lipman J, Roberts DM, et al: The influence of acute
-S 1216- 57) Euteneuer JC, Kamatkar S, Fukuda T, et al: Suggestions for Model-Informed Precision Dosing to Optimize Neonatal Drug Therapy. J Clin Pharmacol. 2019; 59: 168-76. 58) Li Q, Liang F, Sang L, et al: Pharmacokinetics of and maintenance dose recommendations for vancomycin in severe pneumonia patients undergoing continuous venovenous hemofiltration with the combination of predilution and postdilution. Eur J Clin Pharmacol. 2020; 76: 211-7. 59) Roberts JA, Joynt GM, Lee A, et al; SMARRT Study Collaborators and the ANZICS Clinical Trials Group: The Effect of Renal Replacement Therapy and Antibiotic Dose on Antibiotic Concentrations in Critically Ill Patients: Data From the Multinational Sampling Antibiotics in Renal Replacement Therapy Study. Clin Infect Dis. 2021; 72: 1369-78. 60) Werumeus Buning A, Hodiamont CJ, Lechner NM, et al: Population Pharmacokinetics and Probability of Target Attainment of Different Dosing Regimens of Ceftazidime in Critically Ill Patients with a Proven or Suspected Pseudomonas aeruginosa Infection. Antibiotics (Basel). 2021; 10: 612. 61) Wahby KA, Cunmuljaj L, Mouabbi K, et al: Evaluation of dosing strategies and trough concentrations of vancomycin in patients undergoing continuous venovenous hemofiltration. Pharmacotherapy. 2021; 41: 554-61. 62) Wang C, Zhang C, Li X, et al: Dose Optimization of Vancomycin for Critically Ill Patients Undergoing CVVH: A Prospective Population PK/PD Analysis. Antibiotics (Basel). 2021; 10: 1392. 63) Economou CJP, Wong G, McWhinney B, et al: Impact of βlactam antibiotic therapeutic drug monitoring on dose adjustments in critically ill patients undergoing continuous renal replacement therapy. Int J Antimicrob Agents. 2017; 49: 589-94. modalities of extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) and renal replacement therapy: a prospective, observational singlecenter study. Crit Care. 2020; 24: 664. 39) Zhang Y, Hu H, Zhang Q, et al: Effects of ex vivo Extracorporeal Membrane Oxygenation Circuits on Sequestration of Antimicrobial Agents. Front Med (Lausanne). 2021; 8: 748769. 40) Jung Y, Lee DH, Kim HS: Prospective Cohort Study of Population Pharmacokinetics and Pharmacodynamic Target Attainment of Vancomycin in Adults on Extracorporeal Membrane Oxygenation. Antimicrob Agents Chemother. 2021; 65: e02408-20. 41) Heintz BH, Matzke GR, Dager WE: Antimicrobial dosing concepts and recommendations for critically ill adult patients receiving continuous renal replacement therapy or intermittent hemodialysis. Pharmacotherapy. 2009; 29: 562-77. 42) Choi G, Gomersall CD, Tian Q, et al: Principles of antibacterial dosing in continuous renal replacement therapy. Crit Care Med. 2009; 37: 2268-82. 43) Bogard KN, Peterson NT, Plumb TJ, et al: Antibiotic dosing during sustained low-efficiency dialysis: special considerations in adult critically ill patients. Crit Care Med. 2011; 39: 560-70. 44) Scoville BA, Mueller BA: Medication dosing in critically ill patients with acute kidney injury treated with renal replacement therapy. Am J Kidney Dis. 2013; 61: 490-500. 45) Ulldemolins M, Vaquer S, Llauradó-Serra M, et al: Beta-lactam dosing in critically ill patients with septic shock and continuous renal replacement therapy. Crit Care. 2014; 18: 227. 46) Veiga RP, Paiva JA: Pharmacokinetics-pharmacodynamics issues relevant for the clinical use of beta-lactam antibiotics in critically ill patients. Crit Care. 2018; 22: 233. 47) Sember AM, LoFaso ME, Lewis SJ: An optimal extendedinfusion dosing of cefepime and ceftazidime in critically ill patients with continuous renal replacement therapy. J Crit Care. 2022; 69: 154011. 48) Churchwell MD, Mueller BA: Drug dosing during continuous renal replacement therapy. Semin Dial. 2009; 22: 185-8. 49) Roberts DM, Roberts JA, Roberts MS, et al; RENAL Replacement Therapy Study Investigators: Variability of antibiotic concentrations in critically ill patients receiving continuous renal replacement therapy: a multicentre pharmacokinetic study. Crit Care Med. 2012; 40: 1523-8. 50) Jamal JA, Udy AA, Lipman J, et al: The impact of variation in renal replacement therapy settings on piperacillin, meropenem, and vancomycin drug clearance in the critically ill: an analysis of published literature and dosing regimens*. Crit Care Med. 2014; 42: 1640-50. 51) Roberts DM, Liu X, Roberts JA, et al; RENAL Replacement Therapy Study Investigators: A multicenter study on the effect of continuous hemodiafiltration intensity on antibiotic pharmacokinetics. Crit Care. 2015; 19: 84. 52) Shaw AR, Mueller BA: Antibiotic Dosing in Continuous Renal Replacement Therapy. Adv Chronic Kidney Dis. 2017; 24: 219-27. 53) Burkhardt O, Joukhadar C, Traunmüller F, et al: Elimination of daptomycin in a patient with acute renal failure undergoing extended daily dialysis. J Antimicrob Chemother. 2008; 61: 224-5. 54) Seyler L, Cotton F, Taccone FS, et al: Recommended β-lactam regimens are inadequate in septic patients treated with continuous renal replacement therapy. Crit Care. 2011; 15: R137. 55) Wilson FP, Berns JS: Vancomycin levels are frequently subtherapeutic during continuous venovenous hemodialysis (CVVHD). Clin Nephrol. 2012; 77: 329-31. 56) Zoller M, Maier B, Hornuss C, et al: Variability of linezolid concentrations after standard dosing in critically ill patients: a prospective observational study. Crit Care. 2014; 18: R148.
-S 1217-文 献 1) Abdul-Aziz MH, Sulaiman H, Mat-Nor MB, et al: Beta-Lactam Infusion in Severe Sepsis (BLISS): a prospective, two-centre, open-labelled randomised controlled trial of continuous versus intermittent beta-lactam infusion in critically ill patients with severe sepsis. Intensive Care Med. 2016; 42: 1535-45. 2) Angus BJ, Smith MD, Suputtamongkol Y, et al: Pharmacokineticpharmacodynamic evaluation of ceftazidime continuous infusion vs intermittent bolus injection in septicaemic melioidosis. Br J Clin Pharmacol. 2000; 49: 445-52. 3) Chytra I, Stepan M, Benes J, et al: Clinical and microbiological efficacy of continuous versus intermittent application of meropenem in critically ill patients: a randomized open-label controlled trial. Crit Care. 2012; 16: R113. 4) Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al: Continuous infusion of beta-lactam antibiotics in severe sepsis: a multicenter doubleblind, randomized controlled trial. Clin Infect Dis. 2013; 56: 236-44. 5) Georges B, Conil JM, Cougot P, et al: Cefepime in critically ill patients: continuous infusion vs. an intermittent dosing regimen. Int J Clin Pharmacol Ther. 2005; 43: 360-9. 6) Laterre PF, Wittebole X, Van de Velde S, et al: Temocillin (6 g daily) in critically ill patients: continuous infusion versus three times daily administration. J Antimicrob Chemother. 2015; 70: 891-8. 7) Lau WK, Mercer D, Itani KM, et al: Randomized, open-label, comparative study of piperacillin-tazobactam administered by continuous infusion versus intermittent infusion for treatment of hospitalized patients with complicated intra-abdominal infection. Antimicrob Agents Chemother. 2006; 50: 3556-61. 8) Lipš M, Siller M, Strojil J, et al: Pharmacokinetics of imipenem in critically ill patients during empirical treatment of nosocomial pneumonia: a comparison of 0.5-h and 3-h infusions. Int J Antimicrob Agents. 2014; 44: 358-62. 9) Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al; BLING II Investigators for the ANZICS Clinical Trials Group*: A Multicenter Randomized Trial of Continuous versus Intermittent β-Lactam Infusion in Severe Sepsis. Am J Respir Crit Care Med. 2015; 192: 1298-305. 10) Rafati MR, Rouini MR, Mojtahedzadeh M, et al: Clinical efficacy of continuous infusion of piperacillin compared with intermittent dosing in septic critically ill patients. Int J Antimicrob Agents. 2006; 28: 122-7. 11) Roberts JA, Boots R, Rickard CM, et al: Is continuous infusion ceftriaxone better than once-a-day dosing in intensive care? A randomized controlled pilot study. J Antimicrob Chemother. 2007; 59: 285-91. 12) Roberts JA, Kirkpatrick CM, Roberts MS, et al: Meropenem dosing in critically ill patients with sepsis and without renal dysfunction: intermittent bolus versus continuous administration? Monte Carlo dosing simulations and subcutaneous tissue distribution. J Antimicrob Chemother. 2009; 64: 142-50. 13) Zhao HY, Gu J, Lyu J, et al: Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Efficacies of Continuous versus Intermittent Administration of Meropenem in Patients with Severe Sepsis and Septic Shock: A Prospective Randomized Pilot Study. Chin Med J (Engl). 2017; 130: 1139-45. 14) Nicolau DP, McNabb J, Lacy MK, et al: Continuous versus intermittent administration of ceftazidime in intensive care unit patients with nosocomial pneumonia. Int J Antimicrob Agents. 2001; 17: 497-504. 15) Mirjalili M, Zand F, Karimzadeh I, et al: The clinical and paraclinical effectiveness of four-hour infusion vs. half-hour infusion of high-dose ampicillin-sulbactam in treatment of critically ill patients with sepsis or septic shock: An assessor-blinded CQ2-7(SR1):敗血症に対して,βラクタム系 薬の持続投与または投与時間の延長を行うか? Answer:敗血症に対するβラクタム系抗菌薬治療に おいて,持続投与もしくは投与時間の延長を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)。 (1)背景 敗血症診療において広く使用されているβラクタム系薬は,時間依存性に抗菌効果を示すことが知られている。薬物動態学的/薬力学的(PK/PD)の観点からは, βラクタム系薬は持続投与もしくは投与時間の延長においてより有効である。J-SSCG 2020以降,多くの研究知見が提示されており,最新のエビデンスを踏まえてこの問題を検討する。 (2)利益と害のバランス 17編のRCTを用いたメタ解析を行った1-17)。βラクタム系薬の持続投与または投与時間の延長によって,死亡は1,000人あたり53人減少(96人減少~0人減少),臨床的治癒が109人増加(18人増加~214人増加)した。副作用は1人減少(23人減少~31人増加),薬剤耐性菌の検出は14人減少(58人減少~46人増加)した。効果のバランスは,介入がおそらく優れていると判断した。 (3)容認性 抗菌薬の持続投与や投与時間の延長に際しては, 特別な手技は求められない。ICUにおいてその実施は比較的容易であり,医療者にとっての容認性は高いと考えられる。患者の負担するコストは変わらず,患者・家族の個人の視点からもおそらく許容できる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 202118)では,成人の敗血症または敗血症性ショックの患者に対して,βラクタム系薬の初回ボーラス投与後,従来のボーラス投与よりも維持投与のための投与時間の延長を弱く推奨している。 (5)実施に関わる検討事項 抗菌薬の持続投与または投与時間の延長を新規に実践するにあたっては,各施設における医療資源(輸液ポンプ, シリンジポンプなど)の確保, 看護師への教育, 薬剤部の協力,院内のコンセンサスが必要となる。
-S 1218- CQ2-7(SR2):敗血症に対して,グリコペプチ ド系薬の持続投与または投与時間の延長を行う か? Answer:敗血症に対するグリコペプチド系抗菌薬治 療において,持続投与もしくは投与時間の延長を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 バンコマイシンに代表されるグリコペプチド系薬は,MRSA感染症あるいはMRSAによることが疑われる敗血症診療においても広く使用されている。グリコペプチド系薬はβラクタム系薬と同様に,時間依存性に抗菌効果を示すことが知られており,PK/PDの観点からは持続投与もしくは投与時間の延長がより有効と考えられる。また,血中濃度の上昇に比例して腎障害の副作用が増加するため,有効血中濃度の範囲にとどめる必要がある。これらから,間欠的投与の代わりに持続投与を行う方法の有用性が検討されている。グリコペプチド系薬の持続投与または投与時間の延長の有用性は,敗血症診療における重要な臨床課題である。 (2)利益と害のバランス 3編のRCTを用いたメタ解析を行った1-3)。グリコペプチド系薬の持続投与または投与時間の延長によって,死亡は1,000人あたり16人増加(121人減少~242人増加),臨床的治癒は24人減少(154人減少~130人増加)した。副作用は49人減少(107人減少~68人増加)した。各アウトカムの相対的価値を考慮すると,効果のバランスは比較対照がおそらく優れていると判断した。 (3)容認性 抗菌薬の持続投与や投与時間の延長に際しては, 特別な手技は求められない。ICUにおいてその実施は比較的容易であり,医療者にとっての容認性は高いと考えられる。患者の負担するコストは変わらず,患者・家族の個人の視点からもおそらく許容できる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20214)では,PK/PD原則に基づいて抗菌薬の投与戦略を最適化することを推奨している。IDSA (Infectious Diseases Society of America)などによる重症MRSA感染に対するバンコマイシンの治療モニタリングに関するガイドライン5)では,従来の間欠投与に代わる妥当な選択肢としてバンコマイシンの持続投与を randomized clinical trial. J Crit Care. 2023; 73: 154170. 16) Naiim CM, Elmazar MM, Sabri NA, et al: Extended infusion of piperacillin-tazobactam versus intermittent infusion in critically ill egyptian patients: a cost-effectiveness study. Sci Rep. 2022; 12: 10882. 17) Monti G, Bradic N, Marzaroli M, et al; MERCY Investigators: Continuous vs Intermittent Meropenem Administration in Critically Ill Patients With Sepsis: The MERCY Randomized Clinical Trial. JAMA. 2023; 330: 141-51. 18) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021; 49: e1063-143.
-S 1219- 提案している。日本化学療法学会のバンコマイシンTDMに関するガイドライン6)では,トラフガイドを用いた間欠投与に比べ持続投与の方がAKI発症のリスクが低い点に言及している。しかし,AKI発症リスクを軽減できる目標AUC値(400~600μg・h/mL)ガイド下に間欠投与と持続投与の安全性や有効性を比較した研究がないとして,現時点では持続投与を推奨していない。 (5)実施に関わる検討事項 抗菌薬の持続投与または投与時間の延長を新規に実践するにあたっては, 各施設において医療資源(輸液ポンプ,シリンジポンプなど)の確保,看護師への教育,薬剤部の協力,院内のコンセンサスが必要となる。 文 献 1) Wysocki M, Delatour F, Faurisson F, et al: Continuous versus intermittent infusion of vancomycin in severe Staphylococcal infections: prospective multicenter randomized study. Antimicrob Agents Chemother. 2001; 45: 2460-7. 2) Eldemiry EM, Sabry NA, Abbassi MM, et al: A specially tailored vancomycin continuous infusion regimen for renally impaired critically ill patients. SAGE Open Med. 2013; 1: 2050312113507921. 3) Schmelzer TM, Christmas AB, Norton HJ, et al: Vancomycin intermittent dosing versus continuous infusion for treatment of ventilator-associated pneumonia in trauma patients. Am Surg. 2013; 79: 1185-90. 4) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 5) Rybak MJ, Le J, Lodise TP, et al: Therapeutic monitoring of vancomycin for serious methicillin-resistant Staphylococcus aureus infections: A revised consensus guideline and review by the American Society of Health-System Pharmacists, the Infectious Diseases Society of America, the Pediatric Infectious Diseases Society, and the Society of Infectious Diseases Pharmacists. Am J Health Syst Pharm. 2020; 77: 835-64. 6) Matsumoto K, Oda K, Shoji K, et al: Clinical Practice Guidelines for Therapeutic Drug Monitoring of Vancomycin in the Framework of Model-Informed Precision Dosing: A Consensus Review by the Japanese Society of Chemotherapy and the Japanese Society of Therapeutic Drug Monitoring. Pharmaceutics. 2022; 14: 489. CQ2-8:敗血症において,therapeutic drug monitoring(TDM)を活用した抗菌薬の用量調整 を行うか? Answer:敗血症において,TDMを活用した抗菌薬投 与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2D)。 (1)背景および本CQの重要度 敗血症では,血管透過性亢進や腎血流量の変化などによって抗菌薬血中濃度が変動することから,血中濃度測定による適切な抗菌薬投与設計(therapeutic drug monitoring: TDM)に関する研究が報告されている1-3)。不適切な抗菌薬血中濃度は感染コントロールの失敗や臓器障害を引き起こすため,TDMを活用した治療を行うことの有用性は重要な臨床課題である4-6)。 (2)利益と害のバランス 死亡について5編のRCT(n=1,011)7-11),臨床的治癒について3編のRCT(n=250)7, 8, 10)を用いたメタ解析を行った12)。TDMを活用した抗菌薬投与による望ましい効果について,それぞれのアウトカムの相対的価値を考慮した正味の効果は1,000人あたり124人の増加(57人減少~304人増加)であった。また,TDMを行うことによる害は想定されないため,全体として効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 TDMを行うことによって採血回数が増加するが,治療の主要な場所となるICUにおける診療業務を大きく越えるものではない。また,血中濃度を測定する薬剤師の従事する部門における負担が増加するものの,容認可能と考えられる。さらに,抗菌薬の濃度測定系を新規に立ち上げるためには,専門的知識を有する薬剤師による集中治療への関与が必要である。これらに要するコストも勘案すると,実行可能性は病院ごとに異なると考えられる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 敗血症を対象とし,TDMを活用した抗菌薬投与についての推奨が記載されたガイドラインはない。SSCG 202113)では,PK/PDおよび薬物特性に基づいた抗菌薬投与方法の最適化がベストプラクティスとして推奨され,各抗菌薬について目標血中濃度が記載されているものの,TDMの使用に関する記載はされていない。
-S 1220- patients with sepsis: a randomized controlled trial. Intensive Care Med. 2022; 48: 311-21. 11) Roggeveen LF, Guo T, Fleuren LM, et al: Right dose, right now: bedside, real-time, data-driven, and personalised antibiotic dosing in critically ill patients with sepsis or septic shock-a two-centre randomised clinical trial. Crit Care. 2022; 26: 265. 12) Takahashi N, Kondo Y, Kubo K, et al: Efficacy of therapeutic drug monitoring-based antibiotic regimen in critically ill patients: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Intensive Care. 2023; 11: 48. 13) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. (5)実施に関わる検討事項 TDMの目的のひとつとして,「血中濃度の治療域と中毒域が近い抗菌薬について,個々の患者に対する適切な投与を行うこと」が挙げられ,その例としてバンコマイシンなどのグリコペプチド系薬やアミカシンなどのアミノグリコシド系薬などがある。血中濃度測定は自施設または外注によって実施し,比較的容易にTDMを導入できる。一方,今回解析に含まれた5つの論文のうち4つはβラクタム系薬を含んでおり,「標的細菌の最小発育阻止濃度(MIC)以上の薬剤濃度を示す時間(time above MIC)を最大とすること」が考慮されていた。βラクタム系薬の血中濃度測定のためには高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や液体クロマトグラフ質量分析計(liquid chromatography with tandem mass spectrometry: LC-MS/MS)などによる新規測定系の立ち上げを要し,抗菌薬の種類によってはTDMの導入が容易でない可能性がある。これらを考慮すると,TDM導入が可能な薬剤に関して,特に薬剤血中濃度の変動が予測される患者に対してTDMを選択的に実施することが検討される。 文 献 1) Roberts JA, Paul SK, Akova M, et al; DALI Study: DALI: defining antibiotic levels in intensive care unit patients: are current β-lactam antibiotic doses sufficient for critically ill patients? Clin Infect Dis. 2014; 58: 1072-83. 2) Roberts JA, Abdul-Aziz MH, Lipman J, et al; International Society of Anti-Infective Pharmacology and the Pharmacokinetics and Pharmacodynamics Study Group of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases: Individualised antibiotic dosing for patients who are critically ill: challenges and potential solutions. Lancet Infect Dis. 2014; 14: 498-509. 3) Póvoa P, Moniz P, Pereira JG, et al: Optimizing Antimicrobial Drug Dosing in Critically Ill Patients. Microorganisms. 2021; 9: 1401. 4) Kollef MH, Sherman G, Ward S, et al: Inadequate antimicrobial treatment of infections: a risk factor for hospital mortality among critically ill patients. Chest. 1999; 115: 462-74. 5) Ibrahim EH, Sherman G, Ward S, et al: The influence of inadequate antimicrobial treatment of bloodstream infections on patient outcomes in the ICU setting. Chest. 2000; 118: 146-55. 6) Shorr AF, Micek ST, Welch EC, et al: Inappropriate antibiotic therapy in Gram-negative sepsis increases hospital length of stay. Crit Care Med. 2011; 39: 46-51. 7) Bartal C, Danon A, Schlaeffer F, et al: Pharmacokinetic dosing of aminoglycosides: a controlled trial. Am J Med. 2003; 114: 194-8. 8) De Waele JJ, Carrette S, Carlier M, et al: Therapeutic drug monitoring-based dose optimisation of piperacillin and meropenem: a randomised controlled trial. Intensive Care Med. 2014; 40: 380-7. 9) Ewoldt TMJ, Abdulla A, Rietdijk WJR, et al: Model-informed precision dosing of beta-lactam antibiotics and ciprofloxacin in critically ill patients: a multicentre randomised clinical trial. Intensive Care Med. 2022; 48: 1760-71. 10) Hagel S, Bach F, Brenner T, et al; TARGET Trial Investigators: Effect of therapeutic drug monitoring-based dose optimization of piperacillin/tazobactam on sepsis-related organ dysfunction in
-S 1221- らく介入が優れている」とした。 (3)容認性 デエスカレーションは一般的な治療戦略であり,その実施は容易である。介入に伴う広域抗菌薬投与量の変化,およびこれに伴う医療コストへの影響は評価できないが,個人負担額を考えると,患者・家族の個人の視点からは問題なく許容できる。また,抗菌薬適正使用チームの視点からもデエスカレーションは望ましい医療行為と判断できる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では,デエスカレーションそのものについて推奨を示していない20)。 (5)実施に関わる検討事項 介入は抗菌薬の変更のみであり,多くの医療施設において実行可能である。なお,デエスカレーションを行った場合に抗菌薬の総投与期間が延長する可能性があり2),不必要な投与期間の延長を避けるよう留意する21)。 文 献 1) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al: The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2020 (J-SSCG 2020). J Intensive Care. 2021; 9: 53. 2) Leone M, Bechis C, Baumstarck K, et al; AZUREA Network Investigators: De-escalation versus continuation of empirical antimicrobial treatment in severe sepsis: a multicenter non-blinded randomized noninferiority trial. Intensive Care Med. 2014; 40: 1399-408. 3) Byoung Soo K, Sang Ho C, Younsuck K, et al: Safety of antimicrobial de-escalation for culture-negative severe pneumonia. J Crit Care. 2019; 54: 14-9. 4) Pedroso JVM, Motter FR, Koba ST, et al: Feasibility of De-Escalation Implementation for Positive Blood Cultures in Patients With Sepsis: A Prospective Cohort Study. Front Pharmacol. 2021; 11: 576849. 5) Routsi C, Gkoufa A, Arvaniti K, et al: De-escalation of antimicrobial therapy in ICU settings with high prevalence of multidrugresistant bacteria: a multicentre prospective observational cohort study in patients with sepsis or septic shock. J Antimicrob Chemother. 2020; 75: 3665-74. 6) Palacios-Baena ZR, Delgado-Valverde M, Valiente Méndez A, et al; REIPI/GEIRAS-SEIMC Bacteraemia-MIC Group: Impact of De-escalation on Prognosis of Patients With Bacteremia due to Enterobacteriaceae: A Post Hoc Analysis From a Multicenter Prospective Cohort. Clin Infect Dis. 2019; 69: 956-62. 7) Carugati M, Franzetti F, Wiemken T, et al: De-escalation therapy among bacteraemic patients with community-acquired pneumonia. Clin Microbiol Infect. 2015; 21: 936.e11-8. 8) Garnacho-Montero J, Gutiérrez-Pizarraya A, Escoresca-Ortega A, et al: De-escalation of empirical therapy is associated with lower mortality in patients with severe sepsis and septic shock. Intensive Care Med. 2014; 40: 32-40. 9) Gonzalez L, Cravoisy A, Barraud D, et al: Factors influencing the CQ2-9:敗血症に対する抗菌薬治療において, 培養結果に基づいたデエスカレーションを行う か? Answer:敗血症に対する抗菌薬治療で,デエスカ レーションを行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 敗血症診療では初期に広域抗菌薬が投与されることが多いが,広域抗菌薬の不適切な使用は薬剤耐性(antimicrobial resistance: AMR)を助長し,医療コストの増加に寄与する1) 。敗血症に対する抗菌薬治療において,患者の安全性を損なうことなく狭域抗菌薬に変更すること(デエスカレーション)が可能であるかどうか検討する価値がある。安全にデエスカレーションが可能であれば,AMR対策,感染管理,そして医療経済的な視点から実施すべきプラクティスに位置づけることが可能である。 (2)効果のバランス 望ましい効果: 総死亡は,1編のRCT(n=116)2)では1,000人あたり78人増加(64人減少~335人増加)し,17編の観察研究(n=4,374)3-19)では92人減少(121人減少~58人減少)した。エビデンスの質は,RCTは「非常に低」であり,観察研究は「低」であった。観察研究では,総死亡に差があると言えない,もしくは低い方に向かっていた。観察研究とRCTにおける総死亡の方向性の不一致は,小規模のRCTが1編しかなかったことが影響した可能性がある。また,広域抗菌薬の使用量減少, AMR対策に与える効果などの望ましい効果については,十分なエビデンスがなく検討できなかった。以上より,望ましい効果は「小さい」とした。望ましくない効果: 重複感染の発生はRCT2)で1,000人あたり166人増加(8人増加~539人増加)したが,観察研究3-19)において同アウトカムを評価した論文はなく,解析はできなかった。また,RCTでは介入群において抗菌薬の総投与期間が延長しており,重複感染の割合が上昇した原因が,デエスカレーションによるものか抗菌薬投与期間が延長したことによるものか判断できず,正確に評価したとは言えない。そのため,望ましくない効果は「わからない」とした。効果のバランス: 患者・家族,あるいは抗菌薬適正使用チームでは重複感染よりも死亡に重きを置く可能性が高く,「おそ
-S 1222- CQ2-10:経験的抗真菌薬が投与された敗血症に おいて,β-Dグルカンを指標とした抗真菌薬の 中止を行うか? Answer:経験的抗真菌薬を投与された敗血症に対し て,β-Dグルカンを指標とした抗真菌薬投与の中止を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 真菌感染症,特にカンジダ血症は死亡率が高く1, 2),真菌感染症を強く疑う敗血症では経験的抗真菌薬の投与が検討される。しかし,確定診断や除外診断までに時間がかかること,薬剤による有害事象や耐性化のリスクがあることから,真菌感染の可能性が低いと判断される段階で安全に抗真菌薬を中止できるかという臨床的疑問は重要である。 (2)効果のバランス 2編のRCTを用いたメタ解析では,経験的抗真菌薬を投与された敗血症に対してβ-Dグルカンを指標とした抗真菌薬投与の中止を行うことで,β-Dグルカンを指標としない抗真菌薬中止よりも抗真菌薬の投与日数は平均差7.64日短縮(8.74日短縮~6.54日短縮)した3, 4)。以上より,望ましい効果は「小さい」と判断した。 2編の研究(n=229)で,β-Dグルカンを指標とした抗真菌薬投与の中止を行うことによる28~30日死亡は1,000人あたり3人増加(91人減少~146人増加)した。耐性カンジダの検出は,β-Dグルカンを指標とした抗真菌薬投与の中止を行うことで1,000人あたり20人増加(47人減少~254人増加)した(1研究)。いずれも効果量が小さく,95% CIが広いため不確実性が高く,望ましくない効果は「わずか」と判断した。 以上より,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 β-Dグルカンの測定は外注となる施設があるものの,血液検査の一環として実施することは多くの施設で可能である。β-Dグルカンの測定による個人負担の増加は限定的であり,患者・家族からの容認性は高いと考えられる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 欧州臨床微生物学会5),欧州臨床微生物学会/欧州集中治療医学会6),米国感染症学会7)のガイドライン implementation of antibiotic de-escalation and impact of this strategy in critically ill patients. Crit Care. 2013; 17: R140. 10) Heenen S, Jacobs F, Vincent JL: Antibiotic strategies in severe nosocomial sepsis: why do we not de-escalate more often? Crit Care Med. 2012; 40: 1404-9. 11) Lee CC, Lee NY, Chen PL, et al: Impact of antimicrobial strategies on clinical outcomes of adults with septic shock and community-onset Enterobacteriaceae bacteremia: de-escalation is beneficial. Diagn Microbiol Infect Dis. 2015; 82: 158-64. 12) Lee CC, Wang JL, Lee CH, et al: Clinical benefits of antimicrobial de-escalation in adults with community-onset monomicrobial Escherichia coli, Klebsiella species and Proteus mirabilis bacteremia. Int J Antimicrob Agents. 2017; 50: 371-6. 13) Mokart D, Slehofer G, Lambert J, et al: De-escalation of antimicrobial treatment in neutropenic patients with severe sepsis: results from an observational study. Intensive Care Med. 2014; 40: 41-9. 14) Moraes RB, Guillén JA, Zabaleta WJ, et al: De-escalation, adequacy of antibiotic therapy and culture positivity in septic patients: an observational study. Rev Bras Ter Intensiva. 2016; 28: 315-22. 15) Morel J, Casoetto J, Jospé R, et al: De-escalation as part of a global strategy of empiric antibiotherapy management. A retrospective study in a medico-surgical intensive care unit. Crit Care. 2010; 14: R225. 16) Niimura T, Zamami Y, Imai T, et al: Evaluation of the Benefits of De-Escalation for Patients with Sepsis in the Emergency Intensive Care Unit. J Pharm Pharm Sci. 2018; 21: 54-9. 17) Oshima T, Kodama Y, Takahashi W, et al: Empiric Antibiotic Therapy for Severe Sepsis and Septic Shock. Surg Infect (Larchmt). 2016; 17: 210-6. 18) Salahuddin N, Amer L, Joseph M, et al: Determinants of Deescalation Failure in Critically Ill Patients with Sepsis: A Prospective Cohort Study. Crit Care Res Pract. 2016; 2016: 6794861. 19) Viasus D, Simonetti AF, Garcia-Vidal C, et al: Impact of antibiotic de-escalation on clinical outcomes in communityacquired pneumococcal pneumonia. J Antimicrob Chemother. 2017; 72: 547-53. 20) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021; 49: e1063-143. 21) Campion M, Scully G: Antibiotic Use in the Intensive Care Unit: Optimization and De-Escalation. J Intensive Care Med. 2018; 33: 647-55.
-S 1223- candidiasis in critically ill patients. Intensive Care Med. 2019; 45: 789-805. 7) Pappas PG, Kauffman CA, Andes DR, et al: Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2016; 62: e1-50. 8) 侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドライン作成委員会: 侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドライン. 日本医真菌学会. 2021. では,本CQに関連する言及はない。日本医真菌学会の「侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための実践ガイドライン」8)においては,「β-D-グルカン陰性結果は,侵襲性カンジダ症の否定や,抗菌薬不応性発熱などを理由にエンピリックに始めた抗真菌治療の中止の目安に使用できる可能性がある」としている。また,同ガイドラインでは,非好中球減少患者で侵襲性カンジダ症を疑う場合のキャンディン系薬の推奨において,「適切なエンピリック治療期間を設定するための臨床データはない(III-B)。血液培養陽性が判明すれば標的治療へと移行し,培養陰性化確認後少なくとも2週間の治療を行う。一方,敗血症性ショックなどでエンピリック治療開始基準の確認前に抗真菌薬が開始され,カンジダの監視培養陰性またはβ-Dグルカン陰性が確認された場合は,臨床経過を参考に治療の中止を検討する」としている。 (5)実施に関わる検討事項 本CQは真菌感染のリスクが低い敗血症に対する不要な経験的抗真菌薬の中止を検討したものである。2編のRCTでは,以下のようなリスクの高い症例は除外されている:1好中球減少症,23か月以内の化学療法,3臓器移植後の免疫抑制薬の使用中,4AIDS, 5過去3か月以内の侵襲性カンジダ感染症あるいは抗真菌薬治療。 また,侵襲性カンジダ感染の確定診断がついた場合には,β-Dグルカンのみを指標として抗真菌薬を中止すべきではない。カンジダ以外の真菌を疑い経験的抗真菌薬を開始した場合のβ-Dグルカンを指標とした抗真菌薬の中止の有効性は不明である。 文 献 1) Wisplinghoff H, Bischoff T, Tallent SM, et al: Nosocomial bloodstream infections in US hospitals: analysis of 24,179 cases from a prospective nationwide surveillance study. Clin Infect Dis. 2004; 39: 309-17. 2) Nagao M: A multicentre analysis of epidemiology of the nosocomial bloodstream infections in Japanese university hospitals. Clin Microbiol Infect. 2013; 19: 852-8. 3) Rouzé A, Loridant S, Poissy J, et al; S-TAFE study group: Biomarker-based strategy for early discontinuation of empirical antifungal treatment in critically ill patients: a randomized controlled trial. Intensive Care Med. 2017; 43: 1668-77. 4) De Pascale G, Posteraro B, D’Arrigo S, et al: (1,3)-β-D-Glucanbased empirical antifungal interruption in suspected invasive candidiasis: a randomized trial. Crit Care. 2020; 24: 550. 5) Cornely OA, Bassetti M, Calandra T, et al; ESCMID Fungal Infection Study Group: ESCMID* guideline for the diagnosis and management of Candida diseases 2012: non-neutropenic adult patients. Clin Microbiol Infect. 2012; 18 Suppl 7: 19-37. 6) Martin-Loeches I, Antonelli M, Cuenca-Estrella M, et al: ESICM/ ESCMID task force on practical management of invasive
-S 1224- (3)容認性 PCT値の測定は,患者の状態をモニタリングするための血液検査の一環として実施可能であることから,医療者および患者にとっての容認性は高い。PCT値測定に伴うコスト増大があるが,全体の診療に占める割合は非常に少なく,患者・家族の視点から許容できる。ただし,過剰な頻回測定は保険適用外である。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では,敗血症または敗血症性ショックの初期診断で十分な感染源制御が行われた成人において,最適な治療期間が不明確な場合の抗菌薬中止時期を決定するために,臨床評価単独よりもPCTと臨床評価を併用することを推奨する(推奨度=弱,エビデンスの質=低)としている。 (5)実施に関わる検討事項 施設内におけるPCT値測定の可否,測定結果に基づく抗菌薬治療の意思決定のためのプロトコル準備などに留意する必要がある。 プロトコル作成にあたっては,海外および日本からエキスパートコンセンサスとして提案されたものがある22, 23)。前者は,「PCTを24~48時間ごとに測定し, 0.5μg/L未満または80%減少した場合に抗菌薬中止する」(2018年)とするものである。日本の保険診療なども加味して検討されたのが後者であり,「PCTの測定は,DPC病院では4回(day 0,1,3~4,5~7),非DPC病院では2回(day 0,day 3~5)とし,day 5~7に0.5 μg/L未満または80%減少した場合に抗菌薬中止する」(2022年)としている。 文 献 1) Micek S, Johnson MT, Reichley R, et al: An institutional perspective on the impact of recent antibiotic exposure on length of stay and hospital costs for patients with gram-negative sepsis. BMC Infect Dis. 2012; 12: 56. 2) Baggs J, Jernigan JA, Halpin AL, et al: Risk of Subsequent Sepsis Within 90 Days After a Hospital Stay by Type of Antibiotic Exposure. Clin Infect Dis. 2018; 66: 1004-12. 3) Charles PE, Tinel C, Barbar S, et al: Procalcitonin kinetics within the first days of sepsis: relationship with the appropriateness of antibiotic therapy and the outcome. Crit Care. 2009; 13: R38. 4) Karlsson S, Heikkinen M, Pettilä V, et al; Finnsepsis Study Group: Predictive value of procalcitonin decrease in patients with severe sepsis: a prospective observational study. Crit Care. 2010; 14: R205. 5) Póvoa P, Coelho L, Dal-Pizzol F, et al: How to use biomarkers of infection or sepsis at the bedside: guide to clinicians. Intensive Care Med. 2023; 49: 142-53. 6) Hochreiter M, Köhler T, Schweiger AM, et al: Procalcitonin to guide duration of antibiotic therapy in intensive care patients: a randomized prospective controlled trial. Crit Care. 2009; 13: R83. 7) Ali WA, Bazan NS, Elberry AA, et al: A randomized trial to CQ2-11:敗血症に対する抗菌薬治療において, プロカルシトニン(PCT)を指標とした抗菌薬治 療の中止を行うか? Answer:敗血症に対して,PCTを指標とした抗菌薬 治療の中止を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)。 (1)背景 抗菌薬総使用量は,薬剤耐性菌の出現と関連しており,抗菌薬曝露歴は新たな敗血症のリスクになりうる1, 2)。近年,推奨される抗菌薬の投与期間は従来の教科書的な期間よりも短縮できるとしているが,敗血症にも適用可能かは議論の余地がある。敗血症の経過において,PCTやC反応性蛋白(CRP)の低下は死亡リスクの減少と関連している3-5)。これらの背景から,敗血症における抗菌薬中止の意思決定に際して, PCT,あるいはCRPを用いることにより,患者転帰を悪化させることなく抗菌薬日数を短縮できるかという臨床的疑問は重要である。 J-SSCG 2020では,敗血症に対する抗菌薬治療においてPCTを指標とした治療中止を行うことを弱く推奨した。しかし,CRP値をガイドとした抗菌薬中止戦略は,比較対照(PCT値をガイドとしない群)として取り扱っていた。本CQでは,効果推定値の精度を高めるべく,PCT値をガイドとした抗菌薬中止戦略, CRP値をガイドとした抗菌薬中止戦略,および標準治療(PCT・CRPのいずれもガイドとしない:Control)の3群によるネットワークメタ解析(NMA)を行うこととした。 (2)利益と害のバランス 16編のRCTを用いてNMAを行った(PCT vs. Control 13編,CRP vs. Control 1編,PCT vs. CRP 2編)6-21)。 PCTガイドにより,死亡を1,000人あたり32人減少(53人減少~9人減少),抗菌薬投与日数は7~10日程度から平均差で2.15日短縮(2.80日短縮~1.50日短縮)できる。望ましくない効果としての再発は,1,000人あたり7人増加(14人減少~32人増加)する。したがって,効果のバランスは,「介入が優れている」と判断した。 CRPガイドにより,抗菌薬投与日数は7~10日程度から平均差で2.69日短縮(4.70日短縮~0.67日短縮)できる。望ましくない効果としての死亡や再発はやや増加する可能性があるが,95% CIが広く方向性が明確ではなかった。そのため,効果のバランスは,「わからない」と判断した。
-S 1225- 57: 1308-18. 23) Ito A, Shime N, Fujishima S, et al: An algorithm for PCT-guided antimicrobial therapy: a consensus statement by Japanese experts. Clin Chem Lab Med. 2022; 61: 407-11. compare procalcitonin and C-reactive protein in assessing severity of sepsis and in guiding antibacterial therapy in Egyptian critically ill patients. Ir J Med Sci. 2021; 190: 1487-95. 8) Deliberato RO, Marra AR, Sanches PR, et al: Clinical and economic impact of procalcitonin to shorten antimicrobial therapy in septic patients with proven bacterial infection in an intensive care setting. Diagn Microbiol Infect Dis. 2013; 76: 266-71. 9) Borges I, Carneiro R, Bergo R, et al; NIIMI-Núcleo Interdisciplinar de Investigação em Medicina Intensiva: Duration of antibiotic therapy in critically ill patients: a randomized controlled trial of a clinical and C-reactive protein-based protocol versus an evidencebased best practice strategy without biomarkers. Crit Care. 2020; 24: 281. 10) Bloos F, Trips E, Nierhaus A, et al; for SepNet Critical Care Trials Group: Effect of Sodium Selenite Administration and Procalcitonin-Guided Therapy on Mortality in Patients With Severe Sepsis or Septic Shock: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2016; 176: 1266-76. 11) de Jong E, van Oers JA, Beishuizen A, et al: Efficacy and safety of procalcitonin guidance in reducing the duration of antibiotic treatment in critically ill patients: a randomised, controlled, openlabel trial. Lancet Infect Dis. 2016; 16: 819-27. 12) Liu Y, Yang W, Wei J: Guiding Effect of Serum Procalcitonin (PCT) on the Antibiotic Application to Patients with Sepsis. Iran J Public Health. 2017; 46: 1535-9. 13) Schroeder S, Hochreiter M, Koehler T, et al: Procalcitonin (PCT)-guided algorithm reduces length of antibiotic treatment in surgical intensive care patients with severe sepsis: results of a prospective randomized study. Langenbecks Arch Surg. 2009; 394: 221-6. 14) Shehabi Y, Sterba M, Garrett PM, et al; ProGUARD Study Investigators; ANZICS Clinical Trials Group: Procalcitonin algorithm in critically ill adults with undifferentiated infection or suspected sepsis. A randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med. 2014; 190: 1102-10. 15) Annane D, Maxime V, Faller JP, et al: Procalcitonin levels to guide antibiotic therapy in adults with non-microbiologically proven apparent severe sepsis: a randomised controlled trial. BMJ Open. 2013; 3: e002186. 16) Kyriazopoulou E, Liaskou-Antoniou L, Adamis G, et al: Procalcitonin to Reduce Long-Term Infection-associated Adverse Events in Sepsis. A Randomized Trial. Am J Respir Crit Care Med. 2021; 203: 202-10. 17) Oliveira CF, Botoni FA, Oliveira CR, et al: Procalcitonin versus C-reactive protein for guiding antibiotic therapy in sepsis: a randomized trial. Crit Care Med. 2013; 41: 2336-43. 18) Jeon K, Suh JK, Jang EJ, et al: Procalcitonin-Guided Treatment on Duration of Antibiotic Therapy and Cost in Septic Patients (PRODA): a Multi-Center Randomized Controlled Trial. J Korean Med Sci. 2019; 34: e110. 19) Vishalashi SG, Gupta P, Verma PK: Serum Procalcitonin as a Biomarker to Determine the Duration of Antibiotic Therapy in Adult Patients with Sepsis and Septic Shock in Intensive Care Units: A Prospective Study. Indian J Crit Care Med. 2021; 25: 507-11. 20) Bouadma L, Luyt CE, Tubach F, et al; PRORATA trial group: Use of procalcitonin to reduce patients' exposure to antibiotics in intensive care units (PRORATA trial): a multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2010; 375: 463-74. 21) Nobre V, Harbarth S, Graf JD, et al: Use of procalcitonin to shorten antibiotic treatment duration in septic patients: a randomized trial. Am J Respir Crit Care Med. 2008; 177: 498-505. 22) Schuetz P, Beishuizen A, Broyles M, et al: Procalcitonin (PCT)-guided antibiotic stewardship: an international experts consensus on optimized clinical use. Clin Chem Lab Med. 2019;
-S 1226- (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20219)では,成人の敗血症や敗血症性ショックにおいて,適切な感染源のコントロールが行えた場合,抗菌薬投与は長期間よりも短期間行うことを提案している。ただし,全体的なエビデンスの質は非常に低いとされている。 (5)実施に関わる検討事項 敗血症または集中治療患者を対象としたエビデンスがあるのは,肺炎,腹腔内感染症,菌血症に限られており,今回の推奨は参考となる。長期投与が必要な感染症(心内膜炎,化膿性脊椎炎)は本CQの対象ではない。また,再発や再燃リスクに注意する必要がある。 文 献 1) Lee RA, Stripling JT, Spellberg B, et al: Short-course antibiotics for common infections: what do we know and where do we go from here? Clin Microbiol Infect. 2023; 29: 150-9. 2) Israelsen SB, Fally M, Tarp B, et al: Short-course antibiotic therapy for hospitalized patients with early clinical response in community-acquired pneumonia: a multicentre cohort study. Clin Microbiol Infect. 2023; 29: 54-60. 3) Molina J, Montero-Mateos E, Praena-Segovia J, et al; SHORTEN trial team: Seven-versus 14-day course of antibiotics for the treatment of bloodstream infections by Enterobacterales: a randomized, controlled trial. Clin Microbiol Infect. 2022; 28: 550-7. 4) Yahav D, Franceschini E, Koppel F, et al; Bacteremia Duration Study Group: Seven Versus 14 Days of Antibiotic Therapy for Uncomplicated Gram-negative Bacteremia: A Noninferiority Randomized Controlled Trial. Clin Infect Dis. 2019; 69: 1091-8. 5) Montravers P, Tubach F, Lescot T, et al; DURAPOP Trial Group: Short-course antibiotic therapy for critically ill patients treated for postoperative intra-abdominal infection: the DURAPOP randomised clinical trial. Intensive Care Med. 2018; 44: 300-10. 6) Kollef MH, Chastre J, Clavel M, et al: A randomized trial of 7-day doripenem versus 10-day imipenem-cilastatin for ventilatorassociated pneumonia. Crit Care. 2012; 16: R218. 7) Capellier G, Mockly H, Charpentier C, et al: Early-onset ventilator-associated pneumonia in adults randomized clinical trial: comparison of 8 versus 15 days of antibiotic treatment. PLoS One. 2012; 7: e41290. 8) Chastre J, Wolff M, Fagon JY, et al; PneumA Trial Group: Comparison of 8 vs 15 days of antibiotic therapy for ventilatorassociated pneumonia in adults: a randomized trial. JAMA. 2003; 290: 2588-98. 9) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Executive Summary: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for the Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021; 49: 1974-82. CQ2-12:敗血症に対して,比較的短期間(7日 間以内)の抗菌薬治療を行うか? Answer:敗血症に対して,比較的短期間(7日間以内) の抗菌薬治療を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 抗菌薬治療期間は,標的臓器および原因微生物ごとにある程度定められているが,科学的根拠は十分ではない。肺炎などの感染症における抗菌薬治療期間について,短期間治療は長期間治療と比較して死亡率や臨床的治癒率に差がないとする報告がみられるが1, 2),敗血症に対する治療期間は明確ではない。また,抗菌薬投与期間が長いほど,薬剤耐性菌やClostridioides difficile,真菌が定着し増殖するリスクが高まり,新たな敗血症のリスクになる。患者の転帰を悪化させることなく,抗菌薬投与期間を短縮できるかという臨床的疑問は重要である。J-SSCG 2020においては,比較的短期間(7日間以内)の抗菌薬治療を行うことを弱く推奨したが,最新知見を追加した検討を行う価値があると考えた。 (2)利益と害のバランス 6編のRCTを用いたメタ解析を行った3-8)。薬剤耐性菌検出の減少を望ましい効果,臨床的治癒の減少,死亡の増加,新たな感染イベントの増加を望ましくない効果と設定した。薬剤耐性菌の検出は1,000人あたり132人減少(166人減少~292人増加)した。一方で,臨床的治癒は1,000人あたり24人減少(96人減少~63人増加),死亡は5人増加(23人減少~39人増加),新たな感染イベントは1,000人あたり26人増加(20人減少~96人増加)した。それぞれの相対的価値を考慮した効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と考えられる。 (3)容認性 抗菌薬治療期間を1週間以内に短縮すると,医療者の業務量は減少し患者への侵襲が軽減することから,医療者および患者にとっての容認性は高い。介入に伴う広域抗菌薬投与量減少に伴うコストへの影響は評価できていないが,患者個人の医療費の負担は限定的であり,患者・家族の個人の視点からは許容できる。また,抗菌薬の短期間治療により医療施設における薬剤耐性(AMR)対策にもつながる。
-S 1227- CQ3-10 敗血症の初期蘇生後に頻脈が持続する場合に,心拍数管理目的にβ受容体遮断薬を使用するか? CQ3-8 敗血症性ショックに対して,ステロイドを投与するか? CQ3-11 重度の代謝性アシドーシス(pH≦7.2)を伴う敗血症に対して,重炭酸ナトリウムの静脈投与を行うか? FRQ3-2 敗血症性ショックでノルアドレナリンとバソプレシンを併用しても循環動態の維持が難しい場合にアドレナリンを追加するか? FRQ3-3 心収縮力低下かつ組織低灌流を伴う敗血症性ショックに対して,強心薬を使用するか? CQ3-9 敗血症性ショックに対する初期蘇生において,赤血球輸血を行うヘモグロビンの閾値は? CQ3-12 敗血症性ショックに対する機械的循環補助の適応は? FRQ3-4 敗血症性ショックに対する初期蘇生後に高張アルブミン製剤(20 ~25%)を用いて血清アルブミン値を3.0 g/dLに維持するか? CQ3-13 循環動態が安定した敗血症に対して,制限的輸液管理を行うか? FRQ3-5 循環動態が安定している敗血症に対して,赤血球輸血を行うヘモグロビン値の閾値は? Yes No Yes No ショック離脱 ショック離脱 CQ3-4 敗血症に対する初期輸液にどの輸液製剤を用いるか? • 調整晶質液 • 等張アルブミン製剤(4~5%) • 人工膠質液 CQ3-7 敗血症性ショックに対して,血管収縮薬をどのように使用するか? • ノルアドレナリン •ノルアドレナリン+バソプレシン CQ3-1 敗血症の初期蘇生における組織低灌流の指標は? CQ3-5 敗血症に対する初期輸液の速度や投与量は? CQ3-2 敗血症に対する初期蘇生において,心臓超音波検査による心機能・循環血液量評価を行うか? CQ3-6 敗血症の初期蘇生において,早期に血管収縮薬を使用するか? CQ3-3 敗血症に対する初期蘇生において,平均動脈圧の目標値をいくらとするか? FRQ3-1 敗血症性ショックに対する初期輸液に高張アルブミン製剤(20 ~25%)を用いるか? 初期蘇生の目標と評価方法 初期輸液の種類 初期輸液の方法 血管収縮薬の投与方法敗血症/敗血症性ショック 診療フロー
-S 1228- CQ3-1:敗血症の初期蘇生における組織低灌流 の指標は? Answer:敗血症の初期蘇生における組織低灌流の指 標として主に血中乳酸値が用いられている。また,毛細血管再充満時間の有用性も報告されている(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 敗血症や敗血症性ショックにおいて,初期蘇生は急性期の臓器・組織灌流を維持するために重要である。J-SSCG 2020では,敗血症/敗血症性ショック患者に対して,初期蘇生の指標として乳酸値を用いることを弱く推奨している1, 2)。また,SSCG 2021では,乳酸値以外の補助指標として毛細血管再充満時間(capillary refill time: CRT)を使用することを弱く推奨している3)。初期蘇生において,組織低灌流の指標として何を用いるかは重要な臨床課題である。 (2)解説 乳酸値は敗血症性ショックの診断基準に含まれており,初期蘇生における組織低灌流の指標として一般的に用いられている。また,CRTは,敗血症の初期蘇生において乳酸値を指標に管理した場合と比較した多施設RCTにおいて,72時間後のSOFAスコアが有意に低下し,28日死亡率も減少傾向にあったことが報告されている4)。中心静脈血酸素飽和度(central venous oxygen saturation: ScvO2)/混合静脈血酸素飽和度(mixed venous oxygen saturation: SvO2)を指標としたearly goal-directed therapy(EGDT)については,特別な指標を用いない初期蘇生と比較して死亡率や人工呼吸器装着期間などを改善しなかったことが示されている5)。また,同時測定した静脈血と動脈血の二酸化炭素分圧差[veno-arterial difference in the partial pressure of carbon dioxide: P(v-a)CO2 gap]も組織低灌流の指標となる可能性があるが,敗血症の初期蘇生に有用であるかを調査した研究は限定的である6)。これらの指標の特徴についてTable 3-1-1に示す。 本CQでは,臓器・組織灌流評価の指標についての有用性を検討するために,系統的レビューとネットワークメタ解析を実施した7)。RCT 17件(n=7,729)を用いてメタ解析を行った結果,乳酸値とCRTは,いずれも特定の指標を用いない管理と比較して90日死亡を減少させた。一方,乳酸値と比較した場合には, ScvO2/SvO2は死亡率を増加させる可能性が示唆された。現状のエビデンスを考慮すると,初期蘇生におけ はじめに ショックとは組織への酸素供給が需要を下回り細胞機能障害が生じている状態であり,不足している酸素供給を改善させるために蘇生を行う必要がある。敗血症性ショックは単に末梢血管拡張に伴う血液分布異常性ショックだけではなく,循環血液量減少性ショックや心原性ショックを合併した複雑な病態を形成することがある。血液分布異常性ショックに対しては輸液や血管収縮薬が投与されるが,輸液量が不足すれば臓器虚血が懸念され,一方で過剰であるとうっ血による臓器障害を引き起こす。また,心原性ショックを伴っている場合は,低下した心機能に対する評価と介入が必要である。したがって,敗血症性ショックに対する初期蘇生には適切な評価と介入が求められる。 このような考えのもと,J-SSCG 2024ではまず初期蘇生の目標と評価方法をCQ3-1,3-2,3-3で取り上げた。特に心臓超音波検査で心原性ショックを合併していないかを評価することは重要である。次に,初期輸液や血管収縮薬の種類・投与方法については, CQ3-4,3-5,3-6,3-7,FRQ3-1で検討した。これら の介入でもショックを離脱しない場合は,低用量ヒドロコルチゾンの投与(CQ3-8)や,Hb 7 g/dL以下であれば赤血球輸血を考慮する(CQ3-9)。さらに,初期蘇生後に頻脈が持続する場合はβ1受容体遮断薬の投与(CQ3-10)が,重度の代謝性アシドーシス(pH ≦ 7.2)がある場合は重炭酸ナトリウムの静脈投与(CQ3-11)が治療の選択肢となる。しかし,β1受容体遮断薬は血行動態を悪化させる恐れがあるため,ICUにおいて集中治療の経験が豊富な医師のもとで,慎重に投与することが望ましい。また,心機能不全を伴う敗血症性ショックに対しては,強心薬の投与や機械的循環補助という選択もありうる(CQ3-12,FRQ3-2,3-3)。最後に,循環動態が安定した初期蘇生後の検討事項についてはCQ3-13,FRQ3-4,3-5で取り上げた。過剰輸液による臓器うっ血を避けるために,制限的輸液管理が勧められるようになってきている。しかし,低灌流所見や体液量の喪失などがある場合には,必要な輸液をためらうべきではない。 推奨されている介入であっても,敗血症の病態によっては害が大きくなる場合がある。臨床現場で推奨を適用する際には,実施に関わる検討事項などを確認したうえで慎重に判断していただきたい。
-S 1229- る組織低灌流の指標としては乳酸値やCRTを用いるのがよいだろう。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 4) Hernández G, Ospina-Tascón GA, Damiani LP, et al: The ANDROMEDA SHOCK Investigators and the Latin America Intensive Care Network (LIVEN); Hernández G, Ospina-Tascón G, Petri Damiani L, et al: Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mor tality Among Patients With Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019; 321: 654-64. 5) PRISM Investigators; Rowan KM, Angus DC, Bailey M, et al: Early, Goal-Directed Therapy for Septic Shock-A Patient-Level Meta-Analysis. N Engl J Med. 2017; 376: 2223-34. 6) Ltaief Z, Schneider AG, Liaudet L: Pathophysiology and clinical implications of the veno-arterial PCO2 gap. Crit Care. 2021; 25: 318. 7) Yumoto T, Kuribara T, Yamada K, et al: Clinical parameterguided initial resuscitation in adult patients with septic shock: A systematic review and network meta-analysis. Acute Med Surg. 2023; 10: e914. Table 3-1-1 各指標の特徴 指標目標値利点欠点血中乳酸値a) 2時間ごとに10~20%のクリアランス血液ガス分析検査項目として多くの施設で測定可能必ずしも組織低灌流を反映していない可能性があるa) CRTb) 3秒以下特別な機器を必要としない主観的判断となるScvO2/SvO2c) 70%以上連続モニタリングが可能専用デバイスが必要酸素利用障害やシャントにより高値となり得るP(v-a)CO2 gap P(v-a)CO2/C(a-v)O2d) 6 mmHg以下1.8未満血液ガス分析装置があれば容易動脈血と中心静脈血の同時評価が必要a) 肝不全では乳酸代謝の低下により,またビタミンB1欠乏やメトホルミンに代表されるビグアナイド系糖尿病治療薬などの薬剤によっても高値を示すことがある。b) 爪床を白色になるまで数秒間圧迫し,圧迫を解除した後に爪床の色調が戻るまでの時間を測定する。圧迫時間を10秒間とし,30分ごとに評価している4)。c) ScvO2:専用デバイスを内頚静脈から挿入し,先端が上大静脈に位置すれば持続的に測定できる。中心静脈カテーテルから血液を採取すれば測定できるが,頻回の採血は患者・医療者の負担や感染のリスクが上がる。SvO2は肺動脈カテーテルを用いて測定する。d) 広義のP(v-a)CO2 gapを評価したRCTは,P(v-a)CO2/C(a-v)O2を指標に用いた文献6のみである。C(a-v)O2は動脈血と静脈血の酸素含量 差CaO2−CvO2で求められ,CaO2=1.34×SaO2×Hb+0.003×PaO2である。CvO2は,SaO2をSvO2,PaO2をPvO2に置き換えて計算する。P(v-a)CO2 gapはPvCO2−PaCO2で求める。
-S 1230- 従った輸液投与を比較したRCTでは,死亡率(33% vs. 20%)およびSOFAスコアの変化(−4 vs. −6)に有意差はなかった3)。これまで行われたRCTでは臨床アウトカムの改善を示すことができていないが,評価における閾値や至適介入方法が確立していないことがその理由のひとつと考えられる。 心臓超音波検査を用いた心機能・循環血液量評価は,集中治療を行う日本の医療施設では広く行われており,実施可能である。また,心臓超音波検査は非侵襲的な検査であり,患者への負担は少ない。ただし,実施する医療従事者の技量が評価に影響するため,一定のトレーニングや教育を要する。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2020; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Lanspa MJ, Burk RE, Wilson EL, et al: Echocardiogram-guided resuscitation versus early goal-directed therapy in the treatment of septic shock: a randomized, controlled, feasibility trial. J Intensive Care. 2018; 6: 50. 4) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 5) Musikatavorn K, Plitawanon P, Lumlertgul S, et al: Randomized Controlled Trial of Ultrasound-guided Fluid Resuscitation of Sepsis-Induced Hypoperfusion and Septic Shock. West J Emerg Med. 2021; 22: 369-78. CQ3-2:敗血症に対する初期蘇生において,心 臓超音波検査による心機能・循環血液量評価を行 うか? Answer:敗血症に対する初期蘇生と並行して,心臓 超音波検査による心機能・循環血液量評価を行う(Good Practice Statement)。 (1)背景 敗血症性ショックは末梢血管拡張に伴う血液分布異常性ショックが主たる病態であるが,循環血液量減少や心原性ショックを合併することがある。心臓超音波検査により心機能および循環血液量を評価することは,初期蘇生における輸液投与量を適正化し予後を改善する可能性がある。しかし,敗血症の初期蘇生に際し,心臓超音波検査を用いた心機能および循環血液量評価の有効性を検討したRCTはほとんど行われていない。J-SSCG 2020でも同様のCQを取り上げたが1, 2), 1編のRCT(n=30)3)しかなく,エビデンスの確実性は「非常に低」であった。初期蘇生において心臓超音波検査を用いた心機能・循環血液量評価を行うことは必要であり,GPSとして取り上げた。 (2)解説 敗血症や敗血症性ショックでは,敗血症性心筋障害による心機能低下がしばしば観察される。SSCG 2021では,身体所見や静的指標のみでなく,心臓超音波検査を含めた動的指標を輸液蘇生の指標として用いることが弱く推奨されている4)。また,血管内容量と動脈圧が適切であるにもかかわらず低灌流が持続し,心機能障害を伴う敗血症の治療としてβ作動薬の追加(ノルアドレナリンに加え,ドブタミンの追加投与,あるいはアドレナリンの単独投与)が弱く推奨されている4)。このように,初期蘇生において心臓超音波検査による心機能・循環血液量評価に基づいて介入することは国際ガイドラインでも推奨されている。 敗血症の初期蘇生において,心臓超音波検査を用いて心機能・循環血液量評価を行った質の高い大規模RCTは報告されていない。これまでに,下大静脈径を測定し輸液投与量を決定する方法と,心臓超音波検査なしで輸液(30 mL/kg)を投与する方法を比較したRCTが報告されている5)。30日死亡率に有意差はなかったが,介入群では総輸液量が有意に減少した(中央値 2,600 mL[IQR 2,300~3,220 mL] vs. 1,900 mL [1,500~2,570 mL])。一方,心臓超音波検査により下大静脈径と心収縮能を参考にした輸液投与とEGDTに
-S 1231- リンゲル液であれば500 mLにつき190円程度と,これもICUであれば介入による費用面での負担は少ない。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20211)では,循環作動薬を必要とする成人の敗血症性ショックにおいて,MAP 65mmHg以上を血圧の初期目標値とすることが中等度の確実性で強く推奨されている。 (5)実施に関わる検討事項 血圧のモニタリング方法としてSSCG 2021では,特に血圧が低い場合には非侵襲的な血圧測定は不安定で信頼性に欠けるため,信頼度の高い連続測定が行える動脈カテーテルの留置を推奨している1)。MAPを高く維持することは,特に慢性高血圧のある患者において腎代替療法を減らす可能性が系統的レビューで指摘されている5)。慢性高血圧患者では腎血流量を維持するためにより高いMAPが必要であることが影響していると考えられる5)。一方で,高いMAPを達成するため血管収縮薬の投与を増やすと不整脈や臓器虚血など重篤な副作用を増やす可能性があるため,血管収縮薬の投与の際にはこれらのサインに注意してモニタリングを行う。 費用対効果に関してはLamontagneらが報告したRCT 4)に関連して1編の研究がある6)。90日時点での生存年数および質調整生存年(quality-adjusted life year, QALY)において低血圧許容群(本系統的レビューでの比較群)で費用対効果に優れていた。 文 献 1) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021; 49: e1063-143. 2) Asfar P, Meziani F, Hamel JF, et al; SEPSISPAM Investigators: High versus low blood-pressure target in patients with septic shock. N Engl J Med. 2014; 370: 1583-93. 3) Lamontagne F, Meade MO, Hébert PC, et al; Canadian Critical Care Trials Group: Higher versus lower blood pressure targets for vasopressor therapy in shock: a multicentre pilot randomized controlled trial. Intensive Care Med. 2016; 42: 542-50. 4) Lamontagne F, Richards-Belle A, Thomas K, et al; 65 trial investigators: Effect of Reduced Exposure to Vasopressors on 90-Day Mortality in Older Critically Ill Patients With Vasodilatory Hypotension: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2020; 323: 938-49. 5) Yoshimoto H, Fukui S, Higashio K, et al: Optimal target blood pressure in critically ill adult patients with vasodilatory shock: A systematic review and meta-analysis. Front Physiol. 2022; 13: 962670. 6) Mouncey PR, Richards-Belle A, Thomas K, et al: 65 trial investigators: Reduced exposure to vasopressors through permissive hypotension to reduce mortality in critically ill people aged 65 and over: the 65 RCT. Health Technol Assess. 2021; 25: 1-90. CQ3-3:敗血症に対する初期蘇生において,平 均動脈圧の目標値をいくらとするか? Answer:敗血症に対して,平均動脈圧の目標値を65 mmHgとすることを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景および本CQの重要度 成人敗血症患者で低血圧を伴う場合の治療において,低血圧のリスクと血管収縮薬による潜在的な有害事象とのバランスを取る必要がある。SSCG 20211)では,循環作動薬を必要とする敗血症性ショックの成人患者に対して,平均動脈圧(mean arterial pressure: MAP)65 mmHg以上を初期目標とすることが中等度の確実性で強く推奨されている。しかし,より高いMAPを維持することがアウトカムを改善するのか明らかでない。MAPの目標値を提示することは重要臨床課題と考えられ,成人敗血症患者に対するMAPの至適目標を求め,エビデンスの確実性を評価した。 (2)利益と害のバランス 3編のRCT 2-4)を用いたメタ解析を行った。目標とするMAPを65 mmHg(60~70 mmHg)よりも高く(70~85 mmHg)する2-4)ことによって,短期死亡は1,000人あたり12人減少(43人減少~24人増加)し,腎代替療法は1,000人あたり5人減少(33人減少~27人増加)した。一方,重篤な副作用(不整脈,心筋障害,四肢壊死,腸間膜虚血)は1,000人あたり16人増加(6人減少~44人増加)した。望ましい効果は「わずか」,望ましくない効果は「小さい」と判断した。それぞれのアウトカムのイベント発生率と相対的価値を考慮した有害効果は1,000人あたり3人増加(83人減少~89人増加)した。したがって,より高いMAPを目標とすることによる益と害のバランスは,「どちらも優位ではない」と判断した。 (3)容認性 血管収縮薬はICUにおいて一般的に使用され,実行可能性は高い。よく用いられるノルアドレナリン1アンプル1 mgあたりの薬価は94円,体重60 kgの患者が 0.2 μg/kg/minで使用した場合,1日当たりの薬価は約 1,600円であり,介入による費用面での新規の負担は少ない。ただし,高いMAPを目標とすることで,侵襲的モニタリングである動脈カテーテル留置期間の延長につながる可能性がある。高いMAPを目標とした場合には輸液の投与量も増える可能性がある。乳酸リンゲル液であれば500 mLにつき215~231円程度,酢酸
-S 1232- (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20212)の推奨では,「成人敗血症または敗血症性ショック患者に対して初期蘇生に生理食塩液のかわりに調整晶質液を使用することを提案する(エビデンスの確実性=低)」であった。 (5)実施に関わる検討事項 調整晶質液の使用に際して,配合禁忌薬剤への注意を要する。 文 献 1) Yunos NM, Bellomo R, Hegarty C, et al: Association between a chloride-liberal vs chloride-restrictive intravenous fluid administration strategy and kidney injury in critically ill adults. JAMA. 2012; 308: 1566-72. 2) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021; 49: e1063-143. 3) Young P, Bailey M, Beasley R, et al; SPLIT Investigators; ANZICS CTG: Effect of a Buffered Crystalloid Solution vs Saline on Acute Kidney Injury Among Patients in the Intensive Care Unit: The SPLIT Randomized Clinical Trial. JAMA. 2015; 314: 1701-10. 4) Verma B, Luethi N, Cioccari L, et al: A multicentre randomised controlled pilot study of fluid resuscitation with saline or Plasma-Lyte 148 in critically ill patients. Crit Care Resusc. 2016; 18: 205-12. 5) Semler MW, Wanderer JP, Ehrenfeld JM, et al; SALT Investigators* and the Pragmatic Critical Care Research Group; SALT Investigators: Balanced Crystalloids versus Saline in the Intensive Care Unit. The SALT Randomized Trial. Am J Respir Crit Care Med. 2017; 195: 1362-72. 6) Semler MW, Self WH, Wanderer JP, et al; SMART Investigators and the Pragmatic Critical Care Research Group: Balanced Crystalloids versus Saline in Critically Ill Adults. N Engl J Med. 2018; 378: 829-39. 7) Brown RM, Wang L, Coston TD, et al: Balanced Crystalloids versus Saline in Sepsis. A Secondary Analysis of the SMART Clinical Trial. Am J Respir Crit Care Med. 2019; 200: 1487-95. 8) Zampieri FG, Machado FR, Biondi RS, et al; BaSICS investigators and the BRICNet members: Effect of Intravenous Fluid Treatment With a Balanced Solution vs 0.9% Saline Solution on Mortality in Critically Ill Patients: The BaSICS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2021; 326: 1-12. 9) Finfer S, Micallef S, Hammond N, et al; PLUS Study Investigators and the Australian New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group: Balanced Multielectrolyte Solution versus Saline in Critically Ill Adults. N Engl J Med. 2022; 386: 815-26. 10) Golla R, Kumar S, Dhibhar DP, et al: 0.9% saline V/S Ringer’s lactate for fluid resuscitation in adult sepsis patients in emergency medical services: An open-label randomized controlled trial. Hong Kong Journal of Emergency Medicine. 2022; 29: 271-80. CQ3-4:敗血症に対する初期輸液にどの輸液製 剤を用いるか? SR1:調整晶質液 Answer:敗血症の初期輸液療法に生理食塩液と比較 して調整晶質液の投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 0.9%塩化ナトリウム溶液(生理食塩液)は,大量投与により高クロール性代謝性アシドーシスを引き起こし,急性腎障害のリスクを高める可能性がある1)。SSCG 2021では,成人の敗血症や敗血症性ショック患者に対して,生理食塩液よりも調整晶質液(balanced crystalloids: 血漿に近い塩化物濃度を持つ晶質液)を使用することを低い確実性のエビデンスで提案している2)。調整晶質液を使用するかは重要臨床課題と考えられ,成人敗血症患者に対するエビデンスの確実性を評価した。 (2)利益と害のバランス 8編の文献(7編のRCTと,そのうちの1編のRCTの二次解析研究1編)を組み入れた3-10)。敗血症のみを対象とした研究は1編のみであったため10),敗血症を一部含む研究を対象にした。1編のRCTとその二次解析研究は1つの研究とし,クラスターRCTを含む7編のRCT(n=34,822)を評価した。 望ましい効果として,短期死亡は1,000人あたり8人減少(18人減少~4人増加)し,腎代替療法の使用は1,000人あたり4人減少(12人減少~3人増加)し,高カリウム血症は1,000人あたり1人減少(3人減少~ 4人増加)した。望ましくない効果に関しては,人工呼吸器の使用をアウトカムとして選択した。1編のRCTで(n=595)3),人工呼吸器の使用は1,000人あたり7人増加(61人減少~88人増加)した。したがって,調整晶質液の使用によって得られる望ましい効果は「小さく」,望ましくない効果は「わずか」であり,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 調整晶質液は通常診療で使用されており,実行可能である。日本で使用可能な生理食塩液や調整晶質液はいずれも約200円であり,価格に大きな違いはない。コストを考慮しても容認可能と思われる。
-S 1233- とする場合には,アルブミン製剤の投与を考慮してもよいことをエキスパートコンセンサスとして提示していた。SSCG 20217)では,敗血症または敗血症性ショックの成人に対して,大量の晶質液を投与された患者には晶質液のみを使用するよりもアルブミン製剤を使用することを提案するとしている。初期輸液の第一選択としてアルブミン製剤の投与を推奨しておらず,大量の晶質液を使用した患者にのみ使用することが考慮されている。 (5)実施に関わる検討事項 アルブミン製剤は血管内水分量増加を期待して使用されることが多いため,循環動態モニタリングを行いながら投与する。また,アルブミン製剤使用による感染症リスクも懸念されるが,感染症発生に関する報告はない。 初期輸液に等張アルブミン製剤(4~5%)を投与することの正味の効果推定値は「介入が優れている」であったが,害のアウトカムの報告がなく,望ましくない効果を含めた検討ができなかった。また,等張アルブミン製剤(4~5%)投与は多くの医療施設で実行可能であるが,晶質液に比べてコストが高い。また,今回メタ解析に組み入れた試験でランダム割り付け前の晶質液投与に関する記載があったのはSAFE study3)のみであり,アルブミン製剤開始前の晶質液投与量は明確ではなかった。しかし,ProCESS8),ARISE9), ProMISe trial10)などの大規模RCTではランダム化前の初期輸液で晶質液を30 mL/kg程度投与されており,初期輸液としての晶質液投与は日常臨床の場で広く浸透していると考えられる。以上から,「晶質液を用いた標準治療に反応せず大量の晶質液を必要とする場合」の条件付き推奨とした。ただし, アルブミン製剤を開始する前の晶質液投与量について根拠がない点には注意が必要である。 文 献 1) Rackow EC, Falk JL, Fein IA, et al: Fluid resuscitation in circulatory shock: a comparison of the cardiorespiratory effects of albumin, hetastarch, and saline solutions in patients with hypovolemic and septic shock. Crit Care Med. 1983; 11: 839-50. 2) van der Heijden M, Verheij J, van Nieuw Amerongen GP, et al: Crystalloid or colloid fluid loading and pulmonary permeability, edema, and injury in septic and nonseptic critically ill patients with hypovolemia. Crit Care Med. 2009; 37: 1275-81. 3) SAFE Study Investigators; Finfer S, McEvoy S, Bellomo R, et al: Impact of albumin compared to saline on organ function and mortality of patients with severe sepsis. Intensive Care Med. 2011; 37: 86-96. 4) Park CHL, de Almeida JP, de Oliveira GQ, et al: Lactated Ringer’s Versus 4% Albumin on Lactated Ringer's in Early Sepsis Therapy in Cancer Patients: A Pilot Single-Center Randomized Trial. Crit CQ3-4:敗血症に対する初期輸液にどの輸液製 剤を用いるか? SR2:等張アルブミン製剤(4~5%) Answer:敗血症に対して,晶質液を用いた標準治療 に反応せず大量の晶質液を必要とする場合には,初期輸液に等張アルブミン製剤(4~5%)の投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)。 (1)背景 敗血症/敗血症性ショックにおいて,急性期の臓器灌流を保つために初期輸液は重要である。しかし,初期輸液に用いる輸液製剤として何が優れているか一定の見解がない。このため,アルブミン製剤の初期輸液における有用性を検討することは重要な課題である。 (2)利益と害のバランス 4編のRCTを用いたメタ解析を行った1-4)。等張アルブミン製剤(4~5%)投与により,短期死亡は1,000人あたり11人減少(94人減少~97人増加)(4RCT)1-4)し,重篤な合併症(肺水腫)は1,000人あたり583人減少(723人減少~86人減少)(1RCT)1)した。したがって,望ましい効果は「大きい」と判断した。一方,対象となるRCTにおいて,望ましくない効果に該当するアウトカムはなく,望まくしない効果は「分からない」と判断した。初期輸液に等張アルブミン製剤(4~ 5%)の投与を行うことで得られる効果は大きく,効果のバランスは「介入が優れている」と考えられる。 (3)容認性 アルブミン製剤のコストは約4,000~5,000円/250 mLであり,生理食塩液500 mL(約230円)や乳酸リンゲル液(215~231円)と比較して高価である。初期輸液において10本投与した場合4),介入に伴うコストは約40,000円である。しかし,個人負担額を考えると,患者・家族の視点からおそらく許容できると思われる。また,アルブミン投与に伴う医療者の仕事量増加はわずかであることや,アルブミン製剤はほとんどの医療施設において使用できることから実行可能である。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 J-SSCG 20205, 6)では,敗血症患者に対して,初期輸液の開始時に標準治療としてアルブミン製剤の投与を行わないことが弱く推奨されていた。ただし,晶質液を用いた標準治療に反応せず,大量の晶質液を必要
-S 1234- CQ3-4:敗血症に対する初期輸液にどの輸液製 剤を用いるか? SR3:人工膠質液 Answer:敗血症に対して,人工膠質液の投与を行わ ないことを強く推奨する(GRADE 1B)。 (1)背景 敗血症において,初期蘇生輸液に何を用いるかは重要な問題である。人工膠質液(ヒドロキシエチルスターチ製剤)は膠質浸透圧の維持による血管内容量の増加が期待されるが,初期輸液として人工膠質液を用いるかどうかに関しては,J-SSCG 20201, 2)では,人工膠質液の投与を行わないことを弱く推奨し,SSCG 20213)では,人工膠質液の投与を行わないことを強く推奨している。敗血症に対する輸液として人工膠質液を避けるべきかどうかは引き続き重要な問題である。 (2)利益と害のバランス 4編のRCTを用いメタ解析を行った4-7)。人工膠質液使用による望ましい効果に該当すると期待されるアウトカムはなく,すべてのアウトカム[短期死亡, renal replacement therapy(RRT)の使用,重篤な出血]を望ましくない効果として扱った。したがって,望ましい効果は「分からない」と判断した。望ましくない効果である短期死亡は1,000人あたり9人増加(25人減少~46人増加),RRTの使用は1,000人あたり55人増加(5人増加~118人増加),重篤な出血は1,000人あたり49人増加(9人増加~104人増加)した。 それぞれのアウトカムの相対的価値を考慮すると,正味の効果推定値は有害効果として1,000人あたり131人の増加(1人増加~261人増加)であった。したがって,効果のバランスは「比較対照がおそらく優れている」と判断した。 (3)容認性 人工膠質液(日本ではボルベン®のみ使用可能)(約900円/500 mL)は,晶質液(生理食塩液や乳酸リンゲル液など)(約200円/500 mL)よりも高価であるが,いずれも医療経済に与える負担は大きくはない。医療従事者への負担はどちらの輸液を投与しても変わりはない。添付文書では重症の敗血症の患者には「患者の状態を悪化させるおそれがある。」として禁忌となっており(2024年3月時点),介入は容認されない可能性がある。 Care Med. 2019; 47: e798-805. 5) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 6) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 7) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 8) ProCESS Investigators; Yealy DM, Kellum JA, Huang DT, et al: A randomized trial of protocol-based care for early septic shock. N Engl J Med. 2014; 370: 1683-93. 9) ARISE Investigators; ANZICS Clinical Trials Group; Peake SL, Delaney A, Bailey M, Bellomo R, et al: Goal-directed resuscitation for patients with early septic shock. N Engl J Med. 2014; 371: 1496-506. 10) Mouncey PR, Osborn TM, Power GS, et al; ProMISe Trial Investigators. Trial of early, goal-directed resuscitation for septic shock. N Engl J Med. 2015; 372: 1301-11.
-S 1235- CQ3-5:敗血症に対する初期輸液の速度や投与 量は? Answer:血管内容量減少のある敗血症の初期輸液 は,循環血液量を適正化することを目標とし,3時間以内に晶質液30 mL/kg以上の投与を要することがある。ただし,過剰な輸液による害も報告されている(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 J-SSCG 2020 1, 2)では,敗血症による組織低灌流と血管内容量減少のある患者に対する初期輸液において晶質液30 mL/kg以上を3時間以内に投与することの必要性とともに,各種指標を参考に過剰輸液を避けることの重要性についても記載されていた。早期から初期輸液戦略として30 mL/kg相当の輸液投与を開始することは日常診療で普及してきている3-5)。しかし,初期輸液後の輸液戦略に関しては輸液過剰の有害性6)も報告されている。成人敗血症患者に対する初期輸液の輸液速度や輸液量の指標を提示することは重要と考え,本ガイドラインのCQとして取り上げた。 (2)解説 J-SSCG 2020 1, 2)において,「血管内容量減少のある患者の初期輸液として,晶質液30 mL/kg 以上を3時間以内に投与することが必要との意見がある。」と記載されていた。SSCG 20217)では,「敗血症に惹起された低灌流状態または敗血症性ショックの蘇生には,最初の3時間以内に晶質液を最低30 mL/kg投与することを推奨する(弱い推奨,エビデンスの確実性=低)」と記載されている。Kuttabら8)は,1,032名の敗血症性ショック患者の観察研究から,敗血症発症から3時間以内に30 mL/kgの初期蘇生輸液を達成できない場合には院内死亡が増加することを報告している(オッズ比 1.52,95% CI: 1.03~2.24)。 ProCESS9),ARISE10),ProMISe11) trialなどの大規模RCTでは,初期蘇生輸液を積極的に実施するEGDTによる予後改善効果は認められなかった。しかし,これら3編のRCTのランダム化前の初期輸液量はいずれも30 mL/kg程度であり,この輸液量は日常臨床で広く浸透していると考えられる3)。その後に実施されたCLASSIC4),CLOVERS5) trialなどの大規模RCTにおいても,ランダム化前に蘇生輸液として30 mL/kgの投与が実施されている。 ほとんどの敗血症患者は,初期蘇生後,継続的な輸液を必要とする。このような不安定期における輸液は, (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20213)では,人工膠質液の投与を行わないことを強く推奨している[ヒドロキシエチルスターチ[hydroxyethyl starch: HES]を使用しないことを推奨する(1A),ゼラチンを使用しないことを推奨する(2B)]。 (5)実施に関わる検討事項 日本では,HES製剤としてヘスパンダー®,サリンヘス®,ボルベン®が販売されてきた。2023年1月,ヒドロキシエチルデンプン70,000配合剤(ヘスパンダー輸液®),ヒドロキシエチルデンプン70,000(サリンヘス6%輸液®),ヒドロキシエチルデンプン130,000(ボルベン輸液6%®)の添付文書が改訂され,重症の敗血症の患者には「患者の状態を悪化させるおそれがある。」として禁忌とされた。前二者は2023年3月末で販売中止となった。日本ではゼラチン製剤は販売されていない。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al:Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 4) Perner A, Haase N, Guttormsen AB, et al: 6S Trial Group; Scandinavian Critical Care Trials Group: Hydroxyethyl starch 130/0.42 versus Ringer’s acetate in severe sepsis. N Engl J Med. 2012; 367: 124-34. 5) Annane D, Siami S, Jaber S, et al; CRISTAL Investigators: Effects of fluid resuscitation with colloids vs crystalloids on mortality in critically ill patients presenting with hypovolemic shock: the CRISTAL randomized trial. JAMA. 2013; 310: 1809-17. 6) Guidet B, Martinet O, Boulain T, et al: Assessment of hemodynamic efficacy and safety of 6% hydroxyethylstarch 130/0.4 vs. 0.9% NaCl fluid replacement in patients with severe sepsis: the CRYSTMAS study. Crit Care. 2012; 16: R94. 7) McIntyre LA, Fergusson D, Cook DJ, et al; Canadian Critical Care Trials Group: Fluid resuscitation in the management of early septic shock (FINESS): a randomized controlled feasibility trial. Can J Anaesth. 2008; 55: 819-26.
-S 1236- Treatment of Acute Lung Injury Clinical Trials Network; Shapiro NI, Douglas IS, Brower RG, et al: Early Restrictive or Liberal Fluid Management for Sepsis-Induced Hypotension. N Engl J Med. 2023; 388: 499-510. 6) Boyd JH, Forbes J, Nakada TA, et al: Fluid resuscitation in septic shock: a positive fluid balance and elevated central venous pressure are associated with increased mortality. Crit Care Med. 2011; 39: 259-65. 7) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 8) Kuttab HI, Lykins JD, Hughes MD, et al: Evaluation and Predictors of Fluid Resuscitation in Patients With Severe Sepsis and Septic Shock. Crit Care Med. 2019; 47: 1582-90. 9) ProCESS Investigators; Yealy DM, Kellum JA, Huang DT, et al: A randomized trial of protocol-based care for early septic shock. N Engl J Med. 2014; 370: 1683-93. 10) ARISE Investigators; ANZICS Clinical Trials Group; Peake SL, Delaney A, Bailey M, et al: Goal-directed resuscitation for patients with early septic shock. N Engl J Med. 2014; 371: 1496-506. 11) Mouncey PR, Osborn TM, Power GS, et al; ProMISe Trial Investigators: Trial of early, goal-directed resuscitation for septic shock. N Engl J Med. 2015; 372: 1301-11. 12) Tigabu BM, Davari M, Kebriaeezadeh A, et al: Fluid volume, fluid balance and patient outcome in severe sepsis and septic shock: A systematic review. J Crit Care. 2018: 153-9. 13) Wardi G, Joel I, Villar J, et al: Equipoise in Appropriate Initial Volume Resuscitation for Patients in Septic Shock With Heart Failure: Results of a Multicenter Clinician Survey. J Intensive Care Med. 2020; 35: 1338-45. 14) Hernández G, Ospina-Tascón GA, Damiani LP, et al: The ANDROMEDA SHOCK Investigators and the Latin America Intensive Care Network (LIVEN); Hernández G, Ospina-Tascón G, Petri Damiani L, et al: Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mor tality Among Patients With Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019; 321: 654-64. 15) Gu WJ, Zhang Z, Bakker J: Early lactate clearance-guided therapy in patients with sepsis: a meta-analysis with trial sequential analysis of randomized controlled trials. Intensive Care Med. 2015; 41: 1862-3. 体液蓄積のリスクや体液過剰に伴う潜在的な害,特に人工呼吸器装着期間の延長,急性腎障害の進行,死亡率上昇とのバランスを考慮する必要がある。 敗血症性ショックを対象とした15編の研究(n= 31,443)のメタ解析12)は,過剰な輸液バランスは死亡リスクを70%増加(pooled RR 1.70,95% CI: 1.20~ 2.41)させた。さらに,敗血症発症から3時間以内の輸液量で2群に分けたところ,輸液量が多かった群では(2,085 mL vs. 1,600 mL,P=0.007),院内死亡オッズが低かった(OR 0.34,95% CI: 0.15~0.75)。 近年行われたCLASSIC trial4)では,ランダム化前に3 L程度の輸液負荷を行った敗血症性ショックに対して標準輸液群(n=784,90日間の総輸液量3,811 mL)と制限輸液群(n=770,90日間の総輸液量1,798 mL)とを比較したが,90日死亡率に差を認めなかった(42.1% vs. 42.3%,adjusted absolute difference,0.1 percentage points,95% CI: -4.7~4.9)。CLOVERS trial5)では,ランダム化前に2L程度の輸液負荷を行った発症4時間以内の敗血症性ショックに対する制限輸液群(n=782, 24時間の総輸液量1,267 mL)と自由輸液群(n=781, 24時間の総輸液量3,400 mL)とを比較したが,同様に90日死亡率に差を認めなかった(14.0% vs. 14.9%, estimated difference,−0.9% percentage points,95% CI: −4.4~2.6)。 以上より,敗血症性ショックにおいて輸液反応性を評価した後,血管内容量減少のある患者の初期蘇生輸液として晶質液30 mL/kg 以上を3時間以内に投与することは,現在の標準的な治療といえる。また,駆出率40%以下などの心不全を合併した敗血症性ショックにおける初期蘇生輸液量については,より少ない輸液量の設定が考えられる13)。過剰な輸液負荷を避けるために,初期輸液の最中はバイタルサインを注意深く観察し,CRTや14)乳酸クリアランス15)や心エコーなどを用いて組織酸素代謝や血行動態の評価を継続的に行う。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) PRISM Investigators; Rowan KM, Angus DC, Bailey M, et al: Early, Goal-Directed Therapy for Septic Shock-A Patient-Level Meta-Analysis. N Engl J Med. 2017; 376: 2223-34. 4) Meyhoff TS, Hjortrup PB, Wetterslev J, et al; CLASSIC Trial Group: Restriction of Intravenous Fluid in ICU Patients with Septic Shock. N Engl J Med. 2022; 386: 2459-70. 5) National Heart, Lung, and Blood Institute Prevention and Early
-S 1237- 用したRCTには,血管収縮薬を早期に投与した研究と初期輸液量が少量のうちから開始した研究がある。 CLOVERS trialでは,組み入れ患者のおよそ32%において,末梢静脈路から血管収縮薬が投与されていたが,血管外漏出を起こした患者はそのうち0.6%だった6)。末梢静脈路から投与された患者のうち3.4% (95% CI: 2.5~4.7%)で,血管外漏出の発生が報告されているが,組織壊死または四肢虚血のリスクに関する報告はなかった8)。血管収縮薬を投与する場合は,遅れを避けるために末梢静脈路から開始してもよいが,血管外漏出がないか注意深く観察する。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Elbouhy MA, Soliman M, Gaber A, et al: Arch Med Res. 2019; 50: 325-32. 4) Macdonald SPJ, Keijzers G, Taylor DM, et al: REFRESH trial investigators: Restricted fluid resuscitation in suspected sepsis associated hypotension (REFRESH): a pilot randomised controlled trial. Intensive Care Med. 2018; 44: 2070-78. 5) Permpikul C, Tongyoo S, Viarasilpa T, et al: Early Use of Norepinephrine in Septic Shock Resuscitation (CENSER). A Randomized Trial. Am J Respir Crit Care Med. 2019; 199: 1097-105. 6) National Heart, Lung, and Blood Institute Prevention and Early Treatment of Acute Lung Injury Clinical Trials Network; Shapiro NI, Douglas IS, Brower RG, et al: Early Restrictive or Liberal Fluid Management for Sepsis-Induced Hypotension. N Engl J Med. 2023; 388: 499-510. 7) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 8) Tian DH, Smyth C, Keijzers G, et al: Safety of peripheral administration of vasopressor medications: A systematic review. Emerg Med Australas. 2020; 32: 220-27. CQ3-6:敗血症の初期蘇生において,早期に血 管収縮薬を使用するか? Answer:低血圧を伴う敗血症に対する初期蘇生にお いて,蘇生輸液と並行して,早期に血管収縮薬を投与することを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 敗血症/敗血症性ショックの初期蘇生において,初期輸液のみで目標血圧を維持できない場合は血管収縮薬が投与される。J-SSCG 2020では,循環動態の維持が困難な敗血症/敗血症性ショック患者に対して,初期蘇生輸液と同時または早期(3時間以内)に血管収縮薬を投与することを弱く推奨した1, 2)。血管収縮薬を早期に投与することにより,過剰輸液を減らし予後を改善する可能性があるが,虚血性臓器障害などの有害事象が増加する可能性もある。 (2)効果のバランス 4編のRCTを用いたメタ解析を行った3-6)。早期の血管収縮薬投与により,死亡は1,000人あたり41人減少(80人減少~17人増加),肺水腫は23人減少(32人減少~10人減少),AKIは10人減少(28人減少~12人増加)した。一方,虚血性臓器障害は4人増加(2人減少~21人増加)した。早期の血管収縮薬投与により得られる効果について,それぞれの相対的価値を考慮した効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 血管収縮薬として一般的なノルアドレナリンは1アンプル(1 mg/1 mL)あたり94円と高額ではない。ICUにおける血管収縮薬投与は日常的であり,仕事量の増加もほとんどないと思われる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では,血管収縮薬の早期投与に関する推奨はないものの,「平均動脈圧を維持するために,中心静脈路確保をされるまで血管収縮薬の投与を遅らせるのではなく,末梢静脈路から開始することを提案する(弱い推奨,エビデンスの質=非常に低)」と記載されている7)。 (5)実施に関わる検討事項 今回採用されたRCTで使用された血管収縮薬のほとんどはノルアドレナリンであった3-6)。本CQで採
-S 1238- してノルアドレナリンの使用が強く推奨され,エビデンスの確実性は高い。 (5)実施に関わる検討事項 血管収縮薬投与に際しては,観血的動脈圧測定を行うことを検討する。長期投与にあたっては,中心静脈カテーテルの留置を検討する。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 4) De Backer D, Biston P, Devriendt J, et al; SOAP II Investigators: Comparison of dopamine and norepinephrine in the treatment of shock. N Engl J Med. 2010; 362: 779-89. 5) Martin C, Papazian L, Perrin G, et al: Norepinephrine or dopamine for the treatment of hyperdynamic septic shock?. Chest. 1993; 103: 1826-31. 6) Patel GP, Grahe JS, Sperry M, et al: Efficacy and safety of dopamine versus norepinephrine in the management of septic shock. Shock. 2010; 33: 375-80. 7) Sazgar M, Golikhatir I, Pashaee SM, et al: Norepinephrine with dopamine infusion on the end-tidal carbon dioxide (ETco2) pressure in patients with septic shock. Caspian J Intern Med. 2021; 12: 580-5. CQ3-7:敗血症性ショックに対して,血管収縮 薬をどのように使用するか? SR1:ノルアドレナリン Answer:敗血症に対する血管収縮薬の第一選択薬と して,ノルアドレナリンを使用することを弱く推奨する(GRADE 2D)。 (1)背景 敗血症患者では,静脈系の血管拡張および動脈血管抵抗の低下により低血圧を生じることが多い。初期蘇生においては血管収縮薬の投与が多くの患者に対して実施されている。J-SSCG 20201, 2),SSCG 20213)ではともに第一選択薬としてノルアドレナリンを推奨している。低血圧に対する対処は初期蘇生において重要な臨床課題であり,ノルアドレナリンを第一選択とすることのエビデンスの確実性を評価するため,ドパミンとの比較により検討した。 (2)利益と害のバランス 4編のRCT 4-7)を評価し,ノルアドレナリンを介入群,ドパミンを対照群,短期死亡,不整脈,腎代替療法の使用,臓器虚血(四肢・腸管)をアウトカムとして検討した。 短期死亡は1,000人あたり21人減少(101人減少~ 69人増加),不整脈は1,000人あたり124人減少(176人減少~11人減少),腎代替療法の使用は1,000人あたり1人増加(21人減少~31人増加)した。臓器虚血(四肢・腸管)は1,000人あたり2人減少(13人減少~ 17人増加)した。 アウトカム全体にわたる正味の効果推定値は,有益効果として1,000人あたり312人増加(7人増加~617人増加)となり,効果のバランスは「介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 日本におけるノルアドレナリンの薬価は1アンプルあたり94円であり,一般的に使用されている。シリンジポンプによる持続投与と循環動態モニタリングを必要とするが,ICUにおいては一般的に行われており,実行性に問題はない。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 J-SSCG 20201, 2)ではノルアドレナリンを投与することが弱く推奨されているが,そのエビデンスの確実性は非常に低い。一方,SSCG 20213)では第一選択と
-S 1239- プレシンの使用が弱く推奨され,エビデンスの確実性は中等度である。 (5)実施に関わる検討事項 バソプレシンの使用にあたっては,臓器虚血の発生などの有害性に十分注意する。有益な効果が期待されるサブグループ,有害事象を伴うサブグループなどの解析は行っていない。バソプレシンは観血的動脈圧測定下に中心静脈カテーテルを使用しての投与が必要であり,適切な監視と評価ができるICUでの使用を前提としている。したがって,一般病棟での使用には十分に注意する。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 4) Barzegar E, Ahmadi A, Mousavi S, et al: The Therapeutic Role of Vasopressin on Improving Lactate Clearance During and After Vasogenic Shock: Microcirculation, Is It The Black Box? Acta Med Iran. 2016; 54: 15-23. 5) Gordon AC, Mason AJ, Thirunavukkarasu N, et al; VANISH Investigators: Effect of Early Vasopressin vs Norepinephrine on Kidney Failure in Patients With Septic Shock: The VANISH Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016; 316: 509-18. 6) Hussien RM, EI-Gendy HA, Elsaidy MI, et al: Comparison Between Norepinephrine Alone Versus Norepinephrine/ Vasopressin Combination for Resuscitation in Septic Shock. The Egyptian Journal of Critical Care Medicine. 2021; 8: 58-65. 7) Lauzier F, Lévy B, Lamarre P, Lesur O: Vasopressin or norepinephrine in early hyperdynamic septic shock: a randomized clinical trial. Intensive Care Med. 2006; 32: 1782-9. 8) Russell JA, Walley KR, Singer J, et al; VASST Investigators: Vasopressin versus norepinephrine infusion in patients with septic shock. N Engl J Med. 2008; 358: 877-87. CQ3-7:敗血症性ショックに対して,血管収縮 薬をどのように使用するか? SR2:ノルアドレナリン+バソプレシン Answer:敗血症に対する血管収縮薬の第二選択薬と して,バソプレシンを使用することを弱く推奨する(GRADE 2A)。(保険適用外) (1)背景 J-SSCG 2020 1, 2)およびSSCG 20213)では,敗血症の初期蘇生においてノルアドレナリンの投与が推奨されているが,ノルアドレナリンを使用しても血圧が保てない症例もみられる。このような場合,昇圧薬の併用療法を考慮する必要がある。第二選択薬として使用される頻度が高いバソプレシン併用療法のエビデンスの確実性を評価するために,重要臨床課題として取り上げた。 (2)利益と害のバランス 5編のRCT 4-8)を評価し,短期死亡,腸管虚血の発生, RRTの使用,急性冠症候群の発生をアウトカムとした。介入群をバソプレシン併用投与群,対照群をノルアドレナリン単独投与群に定めた。望ましい効果として,短期死亡は1,000人あたり21人減少(65人減少~ 31人増加),腸管虚血の発生は1,000人あたり7人減少(19人減少~16人増加),RRTの使用は1,000人あたり115人減少(191人減少~0人減少)した。望ましくない効果として,急性冠症候群の発生は1,000人あたり8人増加(6人減少~38人増加)した。それぞれのアウトカムの相対的価値を考慮すると,アウトカム全体にわたる正味の効果推定値は,有益効果として1,000人あたり178人増加(3人増加~353人増加)であった。したがって,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 バソプレシン(商品名:ピトレシン®)は,1アンプル(20単位)あたり551円と高価ではない。バソプレシンには循環動態補助への保険適用がないが,日本で広く使用されており,使用は容認されると考えられる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 J-SSCG 20201, 2)では成人敗血症患者に対する血管収縮薬の第二選択としてバソプレシンを投与することが弱く推奨されているが,そのエビデンスの確実性は非常に低い。SSCG 20213)では,第二選択としてバソ
-S 1240- 対象としている血管収縮薬が継続的に必要な敗血症性ショックは,目標血圧を維持するためにノルアドレナリンまたはアドレナリン0.25 μg/kg/min以上が4時間以上必要,と定義されている。 (5)実施に関わる検討事項 敗血症性ショックからの離脱を目的として使われるステロイドはヒドロコルチゾンが一般的であり,循環動態のモニタリングが必須である。 重大なアウトカムとして採用しなかったが,血糖値が上昇する可能性がある。今回採用した11編のRCTにおいて,ヒドロコルチゾン間欠投与が8編,持続投与が3編であった。血糖管理においては,持続投与の方の管理が容易とする研究もあれば15),高血糖の持続時間が長期化するという報告もある16)。また,ヒドロコルチゾンの減量・中止についても標準的方法は示されていない。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Annane D, Sébille V, Charpentier C, et al: Effect of treatment with low doses of hydrocortisone and fludrocortisone on mortality in patients with septic shock. JAMA. 2002; 288: 862-71. 4) Annane D, Renault A, Brun-Buisson C, et al; CRICS-TRIGGERSEP Network: Hydrocortisone plus Fludrocortisone for Adults with Septic Shock. N Engl J Med. 2018; 378: 809-18. 5) Arabi YM, Aljumah A, Dabbagh O, et al: Low-dose hydrocortisone in patients with cirrhosis and septic shock: a randomized controlled trial. CMAJ. 2010; 182: 1971-7. 6) Bollaert PE, Charpentier C, Levy B, et al: Reversal of late septic shock with supraphysiologic doses of hydrocortisone. Crit Care Med. 1998; 26: 645-50. 7) Briegel J, Forst H, Haller M, et al: Stress doses of hydrocortisone reverse hyperdynamic septic shock: a prospective, randomized, double-blind, single-center study. Crit Care Med. 1999; 27: 723-32. 8) Gordon AC, Mason AJ, Perkins GD, et al: The interaction of vasopressin and corticosteroids in septic shock: a pilot randomized controlled trial. Crit Care Med. 2014; 42: 1325-33. 9) Gordon AC, Mason AJ, Thirunavukkarasu N, et al; VANISH Investigators: Effect of Early Vasopressin vs Norepinephrine on Kidney Failure in Patients With Septic Shock: The VANISH Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016; 316: 509-18. 10) Lv QQ, Gu XH, Chen QH, et al: Early initiation of low-dose hydrocortisone treatment for septic shock in adults: A randomized clinical trial. Am J Emerg Med. 2017; 35: 1810-4. 11) Oppert M, Schindler R, Husung C, et al: Low-dose hydrocortisone improves shock reversal and reduces cytokine levels in early hyperdynamic septic shock. Crit Care Med. 2005; 33: 2457-64. 12) Sprung CL, Annane D, Keh D, et al; CORTICUS Study Group: Hydrocortisone therapy for patients with septic shock: N Engl J CQ3-8:敗血症性ショックに対して,ステロイ ドを投与するか? Answer:初期輸液と血管収縮薬投与に反応しない敗 血症性ショックに対して,ショックからの離脱を目的として,低用量ヒドロコルチゾン(200~300 mg/day)を投与することを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 初期輸液と血管収縮薬に反応しない敗血症性ショックでは,相対的副腎不全がショックに関与している可能性がある。J-SSCG 2020では,ショックからの離脱を目的として,低用量ステロイド(ヒドロコルチゾン)を投与することを弱く推奨した1, 2)。ステロイド投与は,相対的副腎不全の改善,抗炎症作用,血管収縮作用,血管収縮薬への反応性改善などの作用により,ショックからの離脱が期待される。一方,免疫機能を抑制し,感染症,消化管出血,高血糖などの合併症を増加させる可能性がある。 (2)効果のバランス 11編のRCTを用いたメタ解析を行った3-13)。すべてのRCTにおいて低用量ヒドロコルチゾン 200~300 mg/dayが使用された。低用量ヒドロコルチゾンの投与により,短期死亡は1,000人あたり12人減少(40人減少~18人増加),ショック離脱は60人増加(30人減少~164人増加),ショック離脱期間は平均差1.6日短縮(2.8日短縮~0.4日短縮)した。一方,重篤な有害事象は9人増加(26人減少~54人増加),新規の感染症は10人増加(10人減少~31人増加),消化管出血は12人増加(16人減少~55人増加)した。それぞれの相対的価値を考慮した効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 ヒドロコルチゾン投与に伴う費用は,200 mgで約1,000円と投与量・投与期間により異なるものの高額ではない。介入は多くの医療施設において実行可能であり,仕事量の増加もほとんどない。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021において14),血管収縮薬の投与が必要な成人敗血症性ショックにはステロイドの静脈内投与が提案されており,代表的なステロイドの投与方法はヒドロコルチゾン 200 mg/day(6時間毎の間欠投与または持続投与)と記載されている。また,この推奨で
-S 1241- CQ3-9:敗血症性ショックに対する初期蘇生に おいて,赤血球輸血を行うヘモグロビンの閾値 は? Answer:敗血症性ショックに対する初期蘇生におい て,赤血球輸血を行う閾値はヘモグロビン 7 g/dLとすることを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 赤血球輸血によりヘモグロビン(Hb)値が上昇すれば,血液中の酸素含有量が上昇する。J-SSCG 2020およびSSCG 2021では,敗血症性ショックの初期蘇生において,Hb 7g/dL未満で赤血球輸血を開始することを推奨している1-3)。一方で,ショックにおける高めのHb値は,組織低酸素や虚血性臓器障害を改善しうる。本CQでは敗血症性ショックに対する赤血球輸血を行う閾値として,高めのHb値(介入群)と低めのHb値(対照群)を用いた管理を比較した。 (2)効果のバランス 3編のRCTを用いたメタ解析を行った4-6)。いずれのRCTも赤血球輸血を行う閾値として,高めではHb 9 g/dL,低めではHb 7 g/dLが採用されていた。高めの閾値を用いることにより,死亡は1,000人あたり20人減少(99人減少~69人増加)した。一方,輸血関連有害事象は今回採用したRCTでは低めの闘値では発生しておらず,1名発生したとすれば,3人増加(1人減少~113人増加),虚血性臓器障害は1人増加(23人減少~38人増加)した。高めの閾値による望ましい効果は小さかったものの,それぞれの相対的価値を考慮した効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 高めのHb値を採用することで,赤血球輸血量の増加が見込まれる。初期蘇生の間に速やかに赤血球輸血を行うためには,迅速な検査や血液製剤の供給体制の整備が必要であり,医療従事者の仕事量が増加することが予想される。本CQと同様のメタ解析において,患者中心のアウトカムの改善はないが,輸血の機会が32.8%多くなり,輸血製剤の使用が2.45単位多くなることが指摘されている7)。日本の基準で考えると,およそ6単位(54,396円)の増加となる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では,制限的な輸血戦略を用いることが Med. 2008; 358: 111-24. 13) Venkatesh B, Finfer S, Cohen J, et al; ADRENAL Trial Investigators and the Australian–New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group: Adjunctive Glucocorticoid Therapy in Patients with Septic Shock. N Engl J Med. 2018; 378: 797-808. 14) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 15) Loisa P, Parviainen I, Tenhunen J, et al: Effect of mode of hydrocortisone administration on glycemic control in patients with septic shock: a prospective randomized trial. Crit Care. 2007; 11: R21. 16) Tilouche N, Jaoued O, Ali HBS, et al: Comparison Between Continuous and Intermittent Administration of Hydrocortisone During Septic Shock: A Randomized Controlled Clinical Trial. Shock. 2019; 52: 481-6.
-S 1242- CQ3-10:敗血症の初期蘇生後に頻脈が持続する 場合に,心拍数管理目的にβ受容体遮断薬を使用 するか? Answer:初期蘇生後の頻脈に対して,心拍数の管理 目的にβ1受容体遮断薬を投与することを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 過剰な頻脈やカテコラミンの投与は,敗血症の予後不良因子である1, 2)。敗血症性ショックの循環管理として,初期輸液・血管収縮薬に加え,頻脈に対する心拍数の管理目的にβ1受容体遮断薬の使用が検討される。J-SSCG 2020では,敗血症や敗血症性ショック患者に対して,初期蘇生輸液などの標準治療でコントロールできない頻拍(頻脈)の管理目的に,短時間作用型β1受容体遮断薬をモニター監視下で投与することを弱く推奨した3, 4)。しかし,採用されたRCTはいずれも小規模な単施設研究であったため,効果の外的妥当性は不明である5, 6)。さらに,β1受容体遮断薬の投与により循環動態が悪化する懸念もあり,その有効性は確立していない。 (2)効果のバランス 4編のRCTを用いたメタ解析を行った5-8)。β1受容体遮断薬の投与により,短期死亡は1,000人あたり206人減少(271人減少~130人減少),不整脈は160人減少(213人減少~46人減少)した。一方,重篤な有害事象は3人増加(62人減少~184人増加)した。β1受容体遮断薬の投与による望ましい効果は「大きく」,望ましくない効果は「わずか」であり,それぞれの相対価値を考慮した効果のバランスは「介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 日本において使用可能なβ1受容体遮断薬であるランジオロールは,敗血症に伴う頻脈性不整脈に対する保険適用を有している。ランジオロールの薬価は4,091円/50 mgである。今回採用したRCTのうち,ランジオロールを検討したRCTでは,平均94.5時間で1,526.2 mg投与され,これは12万円超に相当する。しかし, ICU管理を行う施設のほとんどは包括医療費支払い制度を採用しており,当該介入を行うことでの自己負担額の顕著な増加は生じない。また,介入に際して必要な循環動態のモニタリングはICUで日常的に行われており,仕事量の増加はほとんどないと思われる。 推奨されている3)。また,欧州集中治療医学会の「出血していない重症患者に対する輸血戦略のガイドライン」でも,敗血症性ショック患者に対して制限的な輸血戦略が条件付きで推奨されている7)。 (5)実施に関わる検討事項 慢性的な低酸素血症による高Hb血症の既往,併発する出血性ショック,併発する臓器虚血(心筋梗塞など),外科的処置などにより出血が予想される場合など,患者の状況によっては高めのHb値の選択を要する。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他:. 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 4) Bergamin FS, Almeida JP, Landoni G, et al: Liberal Versus Restrictive Transfusion Strategy in Critically Ill Oncologic Patients: The Transfusion Requirements in Critically Ill Oncologic Patients Randomized Controlled Trial. Crit Care Med. 2017; 45: 766-73. 5) Holst LB, Haase N, Wetterslev J, et al; TRISS Trial Group: Scandinavian Critical Care Trials Group: Lower versus higher hemoglobin threshold for transfusion in septic shock. N Engl J Med. 2014; 371: 1381-91. 6) Mazza BF, Freitas FG, Barros MM, et al: Blood transfusions in septic shock: is 7.0 g/dL really the appropriate threshold?. Rev Bras Ter Intensiva. 2015; 27: 36-43. 7) Vlaar AP, Oczkowski S, de Bruin S, et al: Transfusion strategies in non-bleeding critically ill adults: a clinical practice guideline from the European Society of Intensive Care Medicine. Intensive Care Med. 2020; 46: 673-96.
-S 1243- CQ3-11:重度の代謝性アシドーシス(pH≦7.2) を伴う敗血症に対して,重炭酸ナトリウムの静脈 投与を行うか? Answer:重度の代謝性アシドーシス(pH≦7.2)を伴 う敗血症に対して,重炭酸ナトリウムの静脈投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 敗血症では急性の代謝性アシドーシスを発症することが多く,アシドーシス是正のために重炭酸ナトリウムが使用されることがある。しかし,重症代謝性アシドーシスに対する重炭酸ナトリウム投与が転帰改善につながるかどうかは不明である。SSCG 2021では,組織低灌流による高乳酸血症を伴う成人の敗血症や敗血症性ショックにおいて,循環動態を改善させるもしくは循環作動薬を減らす目的で重炭酸ナトリウムを使用しないことが,低い確実性のエビデンスで提案されている1)。敗血症に対する重炭酸ナトリウムの使用に関してはJ-SSCG 20202, 3)では取り上げられていなかったが,J-SSCG 2024では取り上げるべき重要臨床課題と考えられる。 (2)利益と害のバランス 系統的レビューの結果,4編の文献4-7)(3編のRCT 4, 6, 7)と,そのうちの1編のRCTの2次解析研究1編5))を抽出し,事前設定したアウトカムの報告があった1編のRCT(n=389)4)を評価した。 短期死亡は1,000人あたり91人減少(172人減少~ 11人増加)し,1つ以上の新規臓器不全は1,000人あたり69人減少(152人減少~28人増加)し,腎代替療法の使用は1,000人あたり165人減少(242人減少~72人減少)した。望ましくない効果として,治療介入が必要な電解質異常は1,000人あたり15人増加(57人減少~118人増加)した。それぞれのアウトカムの相対的価値を考慮すると,効果のバランスは「介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 重炭酸ナトリウム投与は通常診療の範囲内の医療行為であり,追加の機材の購入や人材確保は必要ない。一方,過剰な重炭酸ナトリウム投与により医原性の代謝性アルカローシスが惹起される可能性もある。日本における重炭酸ナトリウムの薬価は,8.4% 20 mL 138円,8.4% 250 mL 346円であり,コストを考慮しても十分に実行可能と思われる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021には,β受容体遮断薬に対する推奨はない9)。 (5)実施に関わる検討事項 推奨作成後に,頻脈を有する敗血症性ショック患者に対するランジオロールの効果を検討したRCTが発表された10)。本RCTは,ランジオロールの投与により28日死亡率が上昇する可能性が示唆され(37.1% vs. 25.4%),早期中止となった。β1受容体遮断薬の投与は,心拍出量の低下や血圧低下,低灌流所見を悪化させる可能性がある。したがって,頻脈を有する敗血症患者に対するβ1受容体遮断薬の投与は,標準的な初期蘇生の治療戦略を十分に行ったうえで検討し, 循環管理に熟練した医師のもとで,適切なモニタリングを行いながら慎重に投与するのがよい。 文 献 1) Xiao W, Liu W, Zhang J, et al: The association of diastolic arterial pressure and heart rate with mortality in septic shock: a retrospective cohort study. Eur J Med Res. 2022; 27: 285. 2) Sacha GL, Lam SW, Wang L, et al: Association of Catecholamine Dose, Lactate, and Shock Duration at Vasopressin Initiation With Mortality in Patients With Septic Shock. Crit Care Med. 2022; 50: 614-23. 3) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 4) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 5) Kakihana Y, Nishida O, Taniguchi T, et al; J-Land 3S Study Group: Efficacy and safety of landiolol, an ultra-short-acting β 1-selective antagonist, for treatment of sepsis-related tachyarrhythmia (J-Land 3S): a multicentre, open-label, randomised controlled trial. Lancet Respir Med. 2020; 8: 863-72. 6) Cocchi MN, Dargin J, Chase M, et al: Esmolol to Treat the Hemodynamic Effects of Septic Shock: A Randomized Controlled Trial. Shock. 2022; 57: 508-17. 7) Morelli A, Ertmer C, Westphal M, et al: Effect of heart rate control with esmolol on hemodynamic and clinical outcomes in patients with septic shock: a randomized clinical trial. JAMA. 2013; 310: 1683-91. 8) Wang Z, Wu Q, Nie X, et al: Combination therapy with milrinone and esmolol for heart protection in patients with severe sepsis: a prospective, randomized trial. Clin Drug Investig. 2015; 35: 707-16. 9) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 10) Whitehouse T, Hossain A, Perkins GD, et al; STRESS-L Collaborators: Landiolol and Organ Failure in Patients With Septic Shock: The STRESS-L Randomized Clinical Trial. JAMA. 2023; 330: 1641-52.
-S 1244- therapy on hemodynamics and tissue oxygenation in patients with lactic acidosis: a prospective, controlled clinical study. Crit Care Med. 1991; 19: 1352-6. 7) Cooper DJ, Walley KR, Wiggs BR, et al: Bicarbonate does not improve hemodynamics in critically ill patients who have lactic acidosis. A prospective, controlled clinical study. Ann Intern Med. 1990; 112: 492-8. 8) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock: 2016. Intensive Care Med. 2017; 43: 304-77. 9) Fujii T, Udy A, Licari E, et al: Sodium bicarbonate therapy for critically ill patients with metabolic acidosis: A scoping and a systematic review. J Crit Care. 2019; 51: 184-191. (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021の推奨1)では,「敗血症性ショックと低灌流による乳酸アシドーシスを有する成人に対して,血行動態の改善や血管収縮薬の必要量を減らすために重炭酸ナトリウムを投与しないことを提案する(GRADE 2C,弱い推奨/低の確実性のエビデンス)」と,SSCG 2016の推奨8)から基本的に変更されていない。一方,「敗血症性ショック,重度の代謝性アシドーシス(pH≦7.2),AKI[AKI Network(AKIN)ステージ2または3]を同時に有する成人に対しては,重炭酸ナトリウムを投与することを提案する(GRADE 2C,弱い推奨/低の確実性のエビデンス)」とした推奨が追加されている。 (5)実施に関わる検討事項 今回検討したBICAR-ICU 4)では,動脈血pH≧7.3を維持するために4.2%の重炭酸ナトリウムを30分で125~250 mL,24時間で最大1,000 mLまで投与された。日本で使用可能な注射液は7%または8.4%の製剤であることに留意する。今後,異なる投与量,タイミング,投与期間に関する検討が必要である9)。BICAR-ICUにリクルートされた重症患者のうち, 61%が敗血症患者,83%が人工呼吸管理を受けており,重症度が高いことに留意する。BICAR-ICUでは, AKINステージ2または3と定義されたAKI患者のサブグループにおいて,重炭酸ナトリウムの投与群では複合アウトカム(28日目の死亡率と少なくとも1つ以上の新規の臓器不全)の低下を認めた。敗血症性ショック,重度代謝性アシドーシス,AKIを同時に有する患者のサブグループを考慮しながら,重炭酸ナトリウムの投与を検討する。 文 献 1) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 3) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 4) Jaber S, Paugam C, Futier E, et al; BICAR-ICU Study Group: Sodium bicarbonate therapy for patients with severe metabolic acidaemia in the intensive care unit (BICAR-ICU): a multicentre, open-label, randomised controlled, phase 3 trial. Lancet. 2018; 392: 31-40. 5) Bendiab E, Garnier F, Soler M, et al; BICAR-ICU Investigators: Long-Term Outcome of Severe Metabolic Acidemia in ICU Patients, a BICAR-ICU Trial Post Hoc Analysis. Crit Care Med. 2023; 51: e1-12. 6) Mathieu D, Neviere R, Billard V, et al: Effects of bicarbonate
-S 1245- ECMO管理を受けた患者(n=82)の90日生存率は60%であり,V-A ECMOの使用は生存と関連していることが示唆されている。また,V-A ECMOを導入された敗血症性ショックに関するメタ解析19)では,院内生存率は36%と報告されている。V-A ECMOを導入した成人敗血症性ショックの予後不良因子として,高齢13),ECMO導入前の心停止20),Simplified Acute Physiology Score (SAPS)II 高値21)などがあげられる。 循環補助用心内留置型ポンプカテーテル(Impella®,日本アビオメッド)の適応は薬剤抵抗性の急性心不全であり,SIMDを合併した敗血症性ショックに対する使用についての症例報告は限られており,有効性は不明である22, 23)。 敗血症発症前における心機能にもよるが,SIMDは可逆的な病態である。薬剤による介入では血行動態を維持できない心機能不全に対して,機械的循環補助を用いる場合もありうる。ショックによる臓器障害の重症度や右心および左心機能障害の程度や合併症リスクを評価して,適切なデバイスを選択する必要があるため,実施する場合は習熟している施設で行う方がよい。 現時点では,心機能不全を呈する敗血症性ショックに対する機械的循環補助に関する有効性の評価は不十分で適応は不明であり,知見の蓄積が期待される。 文 献 1) Parker MM, Shelhamer JH, Bacharach SL, et al: Profound but reversible myocardial depression in patients with septic shock. Ann Intern Med. 1984; 100: 483-90. 2) Kakihana Y, Ito T, Nakahara M, et al: Sepsis-induced myocardial dysfunction: pathophysiology and management. J Intensive Care. 2016; 4: 22. 3) Charpentier J, Luyt CE, Fulla Y, et al:Brain natriuretic peptide: A marker of myocardial dysfunction and prognosis during severe sepsis. Crit Care Med. 2004; 32: 660-5. 4) Landesberg G, Gilon D, Meroz Y, et al: Diastolic dysfunction and mortality in severe sepsis and septic shock. Eur Heart J. 2012; 33: 895-903. 5) Lanspa MJ, Cirulis MM, Wiley BM, et al: Right Ventricular Dysfunction in Early Sepsis and Septic Shock. Chest. 2021; 159: 1055-63. 6) Dugar S, Sato R, Chawla S, et al: Is Left Ventricular Systolic Dysfunction Associated With Increased Mortality Among Patients With Sepsis and Septic Shock? Chest. 2023; 163: 1437-47. 7) Vallabhajosyula S, Shankar A, Vojjini R, et al: Impact of Right Ventricular Dysfunction on Short-term and Long-term Mortality in Sepsis: A Meta-analysis of 1,373 Patients. Chest. 2021; 159: 2254-63. 8) Thiele H, Zeymer U, Neumann FJ,et al; IABP-SHOCK II Trial Investigators: Intraaortic balloon support for myocardial infarction with cardiogenic shock. N Engl J Med. 2012; 367: 1287-96. 9) Thiele H, Zeymer U, Neumann FJ, et al; Intraaortic Balloon Pump in cardiogenic shock II (IABP-SHOCK II) trial investigators: Intra-aortic balloon counterpulsation in acute myocardial infarction complicated by cardiogenic shock (IABP-SHOCK II): final 12 month results of a randomised, open-label trial. Lancet. CQ3-12:敗血症性ショックに対する機械的循環 補助の適応は? Answer:敗血症性ショックにおける心機能不全に対 して,体外式膜型人工肺,大動脈内バルーンパンピング,循環補助用心内留置型ポンプカテーテルなどの機械的循環補助の効果に関するエビデンスは十分ではなく,適応は確立していない(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 敗血症性ショックは,敗血症誘発性心筋障害(sepsis-induced myocardial dysfunction: SIMD)による心原性ショックを呈することもある1, 2)。敗血症または敗血症性ショック患者において,左室の収縮障害や拡張障害,右室機能障害はそれぞれ23~63% 3-6),37~ 68% 4, 5),35~48% 5, 7)と報告されており,いずれも死亡との関連が示唆されている4-7)。重篤な心機能不全を呈した成人敗血症患者に対して,体外式膜型人工肺(veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation: V-A ECMO)や大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping, IABP)などの機械的循環補助が効果的であったとする報告が散見されるが,有効性に関するエビデンスは確立していない。 (2)解説 ショックに対する機械的循環補助のエビデンスは確立していない。心原性ショックを対象としてIABPの効果を検討したRCT(IABP-SHOCK II trial)8, 9)では, IABPによる予後改善効果を認めなかった。また,心原性ショックにおけるV-A ECMOとIABPを比較したメタ解析10)では,V-A ECMOは血行動態を改善したものの,30日生存率に有意差はなく,出血関連の合併症が多いことが報告されている。 SIMDによる心機能不全を呈した敗血症性ショックに関して,機械的循環補助の有効性を検討した報告は少ない。SIMDを合併した敗血症性ショックに対してIABPを導入した国内の症例集積研究によると,28日生存率は30%であった11)。V-A ECMO使用については,症例報告や観察研究が散見されるが,そのほとんどが単施設後ろ向き観察研究であり,生存率は15~ 90%と研究間で大きな差がある12-16)。2011~2013年の間に行われた播種性血管内凝固を伴った敗血症患者を対象とした国内の多施設後ろ向き観察研究のサブ解析で17),V-A ECMOを導入した患者(n=30)の生存退院率は20%であった。最近報告された国際多施設後ろ向きコホート研究18)では,SIMDに対してV-A
-S 1246- CQ3-13:循環動態が安定した敗血症に対して, 制限的輸液管理を行うか? Answer:循環動態が安定した敗血症では,低灌流に よる臓器障害に十分注意しつつ,制限的輸液管理を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 付帯事項:低灌流は,皮膚所見(斑状皮膚や末梢チアノーゼなど),バイタルサイン,毛細血管再充満時間,血中乳酸値,尿量などを用いて総合的に判断する。 (1)背景 J-SSCG 2020では制限的輸液管理を検討したCQはなかった1, 2)。敗血症患者に対する輸液は,不足だけではなく過剰であっても死亡率上昇との関連が報告されている3)。制限的輸液管理により過剰輸液に伴う臓器うっ血が減少し,予後が改善する可能性がある。一方,虚血性臓器障害などの有害事象が増加する懸念もある。 (2)効果のバランス 8編のRCTを用いたメタ解析を行った4-11)。制限的輸液管理により,90日死亡は1,000人あたり6人減少(34人減少~23人増加)し,AKIまたはRRTの使用は19人減少(37人減少~5人増加)した。また,重篤な有害事象は8人減少(28人減少~16人増加)した。いずれのアウトカムも制限的輸液管理が優位であり,それぞれの相対的価値を考慮した効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 循環動態のモニタリングや低灌流所見の評価は標準的に行っており,仕事量の増加はほとんどないと思われる。制限的輸液管理により血管収縮薬の使用が増える可能性があるが,一般的に使用されるノルアドレナリンは1 mgあたり94円であり高額ではない。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では,初期蘇生後も低灌流と血管内容量減少の徴候がある場合における24時間以内の制限的輸液管理について推奨を作成するには十分なエビデンスがないとされている12)。また,本CQと同様の系統的レビュー13)も行われており,輸液管理の違いにより死亡や有害事象など検討されたすべてのアウトカムに差はなく,さらに,バイアスリスク,重症度,プロトコル(輸液戦略のみ,または輸液以外の介入も含む),介入時期,敗血症の定義などについて感度分析 2013; 382: 1638-45. 10) Cheng JM, den Uil CA, Hoeks SE, et al: Percutaneous left ventricular assist devices vs. intra-aortic balloon pump counterpulsation for treatment of cardiogenic shock: a meta-analysis of controlled trials. Eur Heart J. 2009; 30: 2102-8. 11) Takahashi Y, Sonoo T, Naraba H, et al: Effect of Intra-arterial Balloon Pumping for Refractory Septic Cardiomyopathy: A Case Series. Indian J Crit Care Med. 2019; 23: 182-5. 12) Huang CT, Tsai YJ, Tsai PR, et al: Extracorporeal membrane oxygenation resuscitation in adult patients with refractory septic shock. J Thorac Cardiovasc Surg. 2013; 146: 1041-6. 13) Cheng A, Sun HY, Tsai MS, et al: Predictors of survival in adults undergoing extracorporeal membrane oxygenation with severe infections. J Thorac Cardiovasc Surg. 2016; 152: 1526-36.e1. 14) Bréchot N, Luyt CE, Schmidt M, et al: Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation support for refractory cardiovascular dysfunction during severe bacterial septic shock. Crit Care Med. 2013; 41: 1616-26. 15) Falk L, Hultman J, Broman LM: Extracorporeal Membrane Oxygenation for Septic Shock. Crit Care Med. 2019; 47: 1097-105. 16)Vogel DJ, Murray J, Czapran AZ, et al: Veno-arterio-venous ECMO for septic cardiomyopathy: a single-centre experience. Perfusion. 2018; 33: 57-64. 17) 高氏修平, 早川峰, 大野浩, 他: 成人重症敗血症・敗血症ショックに対するV-A ECMOについての後ろ向き研究. 日救急医会誌 2017; 28: 904-9. 18) Bréchot N, Hajage D, Kimmoun A, et al; International ECMO Network: Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation to rescue sepsis-induced cardiogenic shock: a retrospective, multicentre, international cohort study. Lancet. 2020; 396: 545-52. 19) Ling RR, Ramanathan K, Poon WH, et al: Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation as mechanical circulatory support in adult septic shock: a systematic review and meta-analysis with individual participant data meta-regression analysis. Crit Care. 2021; 25: 246. 20) Park TK, Yang JH, Jeon K, et al: Extracorporeal membrane oxygenation for refractory septic shock in adults. Eur J Cardiothorac Surg. 2015; 47: e68-74. 21) Choi MJ, Ha SO, Kim HS, et al: The Simplified Acute Physiology Score II as a Predictor of Mortality in Patients Who Underwent Extracorporeal Membrane Oxygenation for Septic Shock. Ann Thorac Surg. 2017; 103: 1246-53. 22) Haidari Z, Ruhparwar A, Weymann A: Mechanical circulatory support with Impella 5.0 in septic shock. Artif Organs. 2021; 45: 183-4. 23) Mustafa A, Obholz J, Hitt N, et al: Prolonged Use of an Impella Assist Device in a Sepsis-Induced Cardiomyopathy: A Case Report. Cureus. 2021; 13: e18889.
-S 1247- FRQ3-1:敗血症性ショックに対する初期輸液に 高張アルブミン製剤(20~25%)を用いるか? (1)背景 敗血症性ショックにおいて,初期蘇生輸液は重要な介入である。SSCG 2021,J-SSCG 2020のいずれにおいても,晶質液を用いた標準治療に反応せず,大量の晶質液を必要とする場合にアルブミン製剤の投与を考慮してもよいとしている。しかし,アルブミン濃度の選択[等張アルブミン製剤(4~5%)と高張アルブミン製剤(20~25%)]に関する一定の見解はなく,敗血症性ショックに対し,初期蘇生輸液として高張アルブミン製剤を用いることの有用性は不明である。 (2)解説 アルブミン製剤には,ヒトの血漿濃度に近い4~ 5%製剤(等張アルブミン製剤)と,20~25%製剤(高張アルブミン製剤)がある。実験データや観察研究では,高張アルブミン製剤の血管内容量増加効果は等張製剤よりも高く,高張アルブミン製剤の投与により少ない量の輸液蘇生で管理できる可能性が示唆されている。理論的には,高張アルブミン製剤を用いることで輸液量を減じ,体液の蓄積を少なくすることで有害なアウトカムを軽減する可能性がある。一方,敗血症性ショックのような著しい血管透過性亢進状態では,理論的な血管内容量増加効果を得られない可能性もある。さらに,高張アルブミン製剤の急速投与により高浸透圧状態を誘発し,糸球体濾過量の低下をきたす可能性もある。 敗血症性ショックに対して初期蘇生における高張アルブミン製剤の効果を検討したRCTとして,ERASS試験とALPS試験がある。ERASS試験1)では,発症6時間以内の敗血症性ショック(n=792)を対象として,3日間8時間毎の20%アルブミン100 mL投与と生理食塩液100 mL投与を比較したが,28日死亡における差はなく(24.1% vs. 26.3%),腎不全発症率も同等であった。ALPS試験2)では,肝硬変を合併した敗血症性ショック(n=100)を対象として,3時間以上の20%アルブミン(0.5~1.0 g/kg)投与と晶質液(30 mL/ kg)投与を比較したが,28日死亡に有意差はなかった(58% vs. 62%)。 ERASS試験とALPS試験以降,敗血症性ショックに対する初期蘇生における高張アルブミン製剤の有効性を検討したRCTはない。今後,敗血症性ショックの初期蘇生において,晶質液と高張アルブミン製剤を比較して,輸液量減少や生存率改善を検討することが必 を行っているが,いずれのサブグループにおいても有意な効果は確認されていない。 (5)実施に関わる検討事項 今回採用したRCTのほとんどで4-6, 9-11),組み入れ時に20~30 mL/kg以上の輸液が投与されており,初期輸液を控えることにはならない。制限的輸液管理を行った場合でも,低灌流による虚血性臓器障害の懸念がある場合は輸液負荷を検討してもよい。その際には,輸液反応性を評価し過剰輸液とならないように注意する。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Marik PE, Linde-Zwirble WT, Bittner EA, et al: Fluid administration in severe sepsis and septic shock, patterns and outcomes: an analysis of a large national database. Intensive Care Med. 2017; 43: 625-32. 4) Chen C, Kollef MH: Targeted Fluid Minimization Following Initial Resuscitation in Septic Shock: A Pilot Study. Chest. 2015; 148: 1462-69. 5) Corl KA, Prodromou M, Merchant RC, et al: The Restrictive IV Fluid Trial in Severe Sepsis and Septic Shock (RIFTS): A Randomized Pilot Study. Crit Care Med. 2019; 47: 951-9. 6) Hjortrup PB, Haase N, Bundgaard H, et al; CLASSIC Trial Group: Scandinavian Critical Care Trials Group: Restricting volumes of resuscitation fluid in adults with septic shock after initial management: the CLASSIC randomised, parallel-group, multicentre feasibility trial. Intensive Care Med. 2016; 42: 1695-705. 7) Jessen MK, Andersen LW, Thomsen MH, et al: Restrictive fluids versus standard care in adults with sepsis in the emergency department (REFACED): A multicenter, randomized feasibility trial. Acad Emerg Med. 2022; 29: 1172-84. 8) Macdonald SPJ, Keijzers G, Taylor DM, et al; REFRESH trial investigators: Restricted fluid resuscitation in suspected sepsis associated hypotension (REFRESH): a pilot randomised controlled trial. Intensive Care Med. 2018; 44: 2070-8. 9) Meyhoff TS, Hjortrup PB, Wetterslev J, et al; CLASSIC Trial Group: Restriction of Intravenous Fluid in ICU Patients with Septic Shock. N Engl J Med. 2022; 386: 2459-70. 10) Semler MW, Janz DR, Casey JD, et al: Conservative Fluid Management After Sepsis Resuscitation: A Pilot Randomized Trial. J Intensive Care Med. 2020; 35: 1374-82. 11) National Heart, Lung, and Blood Institute Prevention and Early Treatment of Acute Lung Injury Clinical Trials Network; Shapiro NI, Douglas IS, Brower RG, et al: Early Restrictive or Liberal Fluid Management for Sepsis-Induced Hypotension. N Engl J Med. 2023; 388: 499-510. 12) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 13)Sivapalan P, Ellekjaer KL, Jessen MK, et al: Lower vs Higher Fluid Volumes in Adult Patients With Sepsis: An Updated Systematic Review With Meta-Analysis and Trial Sequential Analysis. Chest. 2023; 164:892-912.
-S 1248- FRQ3-2:敗血症性ショックでノルアドレナリン とバソプレシンを併用しても循環動態の維持が難 しい場合にアドレナリンを追加するか? (1)背景および本 CQ の重要度 SSCG 20211)では,敗血症の初期蘇生においてノルアドレナリンとバソプレシンを併用しても昇圧効果が十分でない場合,アドレナリンの追加が推奨されている。しかし,エビデンスの確実性は低く,ノルアドレナリンとバソプレシンを併用しても昇圧効果が十分でない場合のアドレナリンの追加使用に関するコンセンサスは得られていない。臓器灌流圧を保つために血管収縮薬の選択は敗血症の初期蘇生に重要であり,ノルアドレナリンとバソプレシンを併用しても昇圧効果が十分でない場合の血管収縮薬の選択は重要臨床課題といえる。 (2)解説 SSCG 2021では,敗血症の初期蘇生において,十分な輸液後にノルアドレナリンとバソプレシンを併用しても昇圧効果が十分でない場合,目標平均血圧まで上げるためにアドレナリンの追加が推奨されているが1),これを検討したRCTは存在しない。ノルアドレナリンの高用量使用下ではα1受容体はすでに飽和状態にあり,ダウンレギュレーションされている可能性がある。この推奨は,α1受容体に対する作用ではなく,心機能低下症例における強心薬としての効果を期待しているものと考えられる。一方,アドレナリン投与には,α刺激作用に伴う臓器虚血やβ刺激作用に伴う不整脈などの有害事象が増える可能性がある2)。 敗血症の初期蘇生において,十分な輸液後にノルアドレナリンとバソプレシンを併用しても昇圧効果が十分でない場合のアドレナリン追加に関して,利益と有害事象のどちらが上回るかを検討することが必要である。アドレナリンの使用の有無,および投与のタイミングや投与量に関するRCTが行われることが望まれる。 文 献 1) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 2) De Backer D, Creteur J, Silva E, et al: Effects of dopamine, norepinephrine, and epinephrine on the splanchnic circulation in septic shock: which is best? Crit Care Med. 2003; 31: 1659-67. 要である。なお,日本におけるアルブミン製剤の使用に関しては,血液製剤使用指針を参考に使用するなど保険診療上の制限がある。 文 献 1) Charpentier J, Mira JP, Group ES: Efficacy and tolerance of hyperoncotic albumin administration in septic shock patients: the EARSS study. Intensive Care Med 2011;37(suppl 1): S115. 2) Maiwall R, Kumar A, Pasupuleti SSR, et al: A randomizedcontrolled trial comparing 20% albumin to plasmalyte in patients with cirrhosis and sepsis-induced hypotension [ALPS trial]. J Hepatol. 2022; 77: 670-82.
-S 1249- て,組織灌流を保つための強心薬の効果を評価するとともに,有益な患者集団を特定するための研究や投与のタイミング,投与量などに関する研究が行われることが望まれる。 文 献 1) Bouhemad B, Nicolas-Robin A, Arbelot C, et al: Acute left ventricular dilatation and shock-induced myocardial dysfunction. Crit Care Med. 2009; 37: 441-7. 2) Romero-Bermejo FJ, Ruiz-Bailen M, Gil-Cebrian J, et al: Sepsisinduced cardiomyopathy. Curr Cardiol Rev. 2011; 7: 163-83. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 4) Gordon AC, Perkins GD, Singer M, et al: Levosimendan for the Prevention of Acute Organ Dysfunction in Sepsis. N Engl J Med. 2016; 375: 1638-48. FRQ3-3:心収縮力低下かつ組織低灌流を伴う敗 血症性ショックに対して,強心薬を使用するか? (1)背景および本CQの重要度 敗血症性ショックでは,SIMDと呼ばれる心機能障害が約40%の患者に合併し,重症化との関連が示唆されている1, 2)。SIMDを合併している敗血症性ショックでは,血管収縮薬のノルアドレナリンに加え,強心薬であるドブタミンやアドレナリンの投与が行われてきた。SSCG 2021では,適切な輸液と動脈圧を保っても組織の低灌流が持続する,心収縮力低下を伴う敗血症性ショックに対して,ノルアドレナリンとドブタミンの併用か,ノルアドレナリンではなくアドレナリン単剤による投与を推奨しているが,十分なエビデンスに基づいた推奨ではない3)。心収縮力低下を合併した敗血症性ショックに対する組織灌流を保つための強心薬の使用については,敗血症性ショックの初期蘇生において重要な課題である。 (2)解説 SIMDを含む様々な原因で心収縮力低下を合併した敗血症性ショック患者においては,組織灌流を保つために強心薬の使用が検討される。強心薬としては,ドブタミン,アドレナリン,phosphodiesterase(PDE)III阻害薬,Ca感受性増強薬が選択肢となる。SSCG 2021では,心収縮力低下を合併した敗血症性ショックにおいて,適切な輸液やノルアドレナリン投与により動脈圧を保っても,組織の低灌流が持続する場合には,ドブタミンの追加あるいはアドレナリンの単独使用が弱く推奨されている3)。Ca感受性増強薬に関しては使用しないことを弱く推奨しており,PDE III阻害薬に関しては述べられていない3)。SSCG 2021の出版時には,ドブタミン,アドレナリン,PDE III阻害薬の使用の有無を比較したRCTは存在しなかった。一方, Ca感受性増強薬の使用の有無に関しては,Ca感受性増強薬使用群とプラセボ群を比較した3編のRCTを統合してメタ解析が行われ,死亡との関連は認められていない3)。LeoPARDS trialは516人を対象とした大規模RCTであり,Ca感受性増強薬使用群はプラセボ群と比較して,28日時点での侵襲的人工呼吸管理の離脱成功の減少と上室性不整脈の増加が示唆された4)。 SSCG 2021の出版以降,心収縮力低下を合併した敗血症性ショック患者に対する強心薬に関する新規のRCTは発表されておらず,これらの薬剤に関するエビデンスは依然として不十分である。 心収縮力低下を合併した敗血症性ショックにおい
-S 1250- 唆された(リスク比 0.87,95% CI: 0.77~0.99)。 しかし,ALBIOS試験以降,敗血症性ショックに対する初期蘇生後において血清アルブミン値維持の有効性を評価したRCTは現在進行中のARISS試験2)とALBIOSS-BAL試験3)のみである。なお,高張アルブミン製剤は約 4,000~5,000 円/50 mLと高価であり,血液製剤使用指針などを参考に適正使用が求められる。 文 献 1) Caironi P, Tognoni G, Masson S, et al; ALBIOS Study Investigators: Albumin replacement in patients with severe sepsis or septic shock. N Engl J Med. 2014; 370: 1412-21. 2) Sakr Y, Bauer M, Nierhaus A, et al; SepNet-Critical Care Trials Group: Randomized controlled multicentre study of albumin replacement therapy in septic shock (ARISS): protocol for a randomized controlled trial. Trials. 2020; 21: 1002. 3) ALBumin Italian Outcome Septic Shock-BALANCED Trial (ALBIOSS-BALANCED) (ALBIOSS-BAL). Available online at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT03654001 Accessed 20 Nov 2024. FRQ3-4:敗血症性ショックに対する初期蘇生後 に高張アルブミン製剤(20~25%)を用いて血清 アルブミン値を3.0 g/dLに維持するか? (1)背景 高張アルブミン製剤は,敗血症性ショックの低アルブミン血症を是正し,膠質浸透圧の維持に役立ち,浮腫を減少させ,転帰を改善する可能性がある。しかし,敗血症性ショックに,高張アルブミン製剤を用いて血清アルブミン値を維持することの有用性は,依然として不明である。SSCG 2021では敗血症性ショックに相当量の晶質液を必要とする場合,初期蘇生にアルブミン製剤を使用することを推奨しているが,血清アルブミン値の維持に関する推奨はされていない。また,アルブミン濃度の選択[等張アルブミン整剤(4~5%)と高張アルブミン製剤(20~25%)]に関する言及もない。敗血症性ショックに対する初期蘇生後において,高張アルブミン製剤を投与し,血清アルブミン値を維持することで利益が得られるかという疑問は, J-SSCG 2024で取り上げるべきCQであると考えた。 (2)解説 血漿蛋白質であるアルブミンは,血管内容量増加,膠質浸透圧の調節機能,様々な分子と結合し輸送する能力,抗炎症作用および抗酸化作用,一酸化窒素代謝の調節など,いくつかの性質を有している。アルブミン投与は,理論的には膠質浸透圧の維持に役立ち,浮腫を減少させ,転帰を改善する可能性がある。一方, Interferon-γやtumor necrosis factor(TNF)-αといった末梢血単核球やTリンパ球からの炎症性サイトカインの産生を抑制し,免疫抑制作用により感染症の頻度を増加し予後を悪化させる可能性も指摘されている。低アルブミン血症は重症患者の予後不良と関連しており,敗血症では前述のアルブミンの作用が損なわれている可能性がある。 敗血症に対して血清アルブミン値の維持を目的に高張アルブミン製剤を投与することを検証したRCTとしてALBIOS試験がある。ALBIOS試験1)では,ICU滞在中過去24時間以内に重症敗血症の臨床基準を満たした患者のうち,28日間もしくはICU退室まで, 20%アルブミン製剤を投与して血清アルブミン値を3.0g/dL以上に維持する群と晶質液を単独で投与する群を比較したが,28日および90日死亡に有意差を認めなかった。この試験のサブグループ解析では,敗血症性ショック(n=1,121)において,血清アルブミン値を維持することで90日死亡が減少する可能性が示
-S 1251- 2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) 厚生労働省医薬・生活衛生局. 血液製剤の使用指針 [cited 2023 Aug 26]. Available online at: https://www.mhlw.go.jp/ content/11127000/000493546.pdf 4) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 5) Hébert PC, Wells G, Blajchman MA, et al: A multicenter, randomized, controlled clinical trial of transfusion requirements in critical care. Transfusion Requirements in Critical Care Investigators, Canadian Critical Care Trials Group. N Engl J Med. 1999; 340: 409-17. FRQ3-5:循環動態が安定している敗血症に対し て,赤血球輸血を行うヘモグロビン値の閾値は? (1)背景 循環動態が安定している敗血症に対する赤血球輸血開始基準について,J-SSCG 2020では,Hb 7 g/dL未満での輸血開始を弱く推奨した1, 2)。しかし,敗血症に対象を限定したRCTがなかったため,エキスパートコンセンサスによる推奨であった。厚生労働省の「血液製剤の使用指針」平成31年版3)およびSSCG 20214)でも同様の基準が用いられているが,循環動態が安定している敗血症に対して限定した推奨ではない。循環動態が安定している敗血症に対する赤血球輸血の開始基準は重要臨床課題と考えられるため,FRQとして取り上げた。 (2)解説 赤血球輸血は,貧血に伴う低酸素性組織障害に対する予防や治療のために行うが,必要以上の輸血は血液製剤投与に伴う循環への負荷(transfusion-associated circulatory overload: TACO),輸血関連急性肺障害(transfusion-related acute lung injury: TRALI),感染症などの合併症のリスクを高める。したがって,循環動態が安定している敗血症に対する赤血球輸血開始のHb閾値は,益と害のバランスを考慮する必要がある。HebertらのRCT 5)では,Hb 9.0 g/dL未満の重症患者838人を対象とし,Hb 7.0 g/dL未満を輸血閾値として7.0~9.0 g/dLに維持する管理(制限輸血群418人)と, Hb 10.0 g/dLを輸血閾値として10.0~12.0 g/dLで維持する管理(非制限輸血群420人)に無作為割り付けして検討している。主要評価項目である30日死亡率は両群間で有意差を認めなかったが(制限輸血群18.7% vs. 非制限輸血群23.3%),院内死亡率は制限輸血群で有意に低かった(22.3% vs. 28.1%)。本研究のサブグループでは,重篤な感染症もしくは敗血症性ショックでの解析も行われているが, 30日死亡率に有意差を認めなかった(22.8% vs. 29.7%)。 ショックではない,もしくはショックを離脱した敗血症に対する赤血球輸血開始のHb閾値を検討した臨床試験はこれまで行われておらず,本FRQを検証するための臨床試験が実施されることが期待される。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン
-S 1252- 敗血症または敗血症性ショック AKI診断と重症度評価CQ4-1 敗血症に対して,PMX-DHPを行うか?適宜再評価 腎代替療法が必要? No Yes CQ4-3 敗血症性AKIに対する腎代替療法では持続的治療を行うか? CQ4-4 敗血症性AKIに対する腎代替療法において,血液浄化量の増加を行うか? CQ4-2 敗血症性AKIに対して,早期の腎代替療法を行うか? 診療フロー
-S 1253- (5)実施に関わる検討事項 現在進行しているRCT(TIGRIS trial)8)などの結果により効果のバランスや大きさが今後変わる可能性がある。ただし,日本における18歳以上の患者での保険適用は「敗血症」ではなく「エンドトキシン血症が強く疑われる状態」である。PMX-DHP研究の現在の傾向として,DPCなどを用いた後ろ向き観察研究やRCTの事後解析でのレスポンダー同定が行われている。今後これらの結果に基づいたRCTが実施され,エビデンスが蓄積されることが期待される。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Nakamura T, Ebihara I, Shoji H, et al: Treatment with polymyxin B-immobilized fiber reduces platelet activation in septic shock patients: decrease in plasma levels of soluble P-selectin, platelet factor 4 and beta-thromboglobulin. Inflamm Res. 1999; 48: 171-5. 4) Cruz DN, Antonelli M, Fumagalli R, et al: Early use of polymyxin B hemoperfusion in abdominal septic shock: the EUPHAS randomized controlled trial. JAMA. 2009; 301: 2445-52. 5) Payen DM, Guilhot J, Launey Y, et al; ABDOMIX Group: Early use of polymyxin B hemoperfusion in patients with septic shock due to peritonitis: a multicenter randomized control trial. Intensive Care Med. 2015; 41: 975-84. 6) Dellinger RP, Bagshaw SM, Antonelli M, et al; EUPHRATES Trial Investigators: Effect of Targeted Polymyxin B Hemoperfusion on 28-Day Mortality in Patients With Septic Shock and Elevated Endotoxin Level: The EUPHRATES Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018; 320: 1455-63. 7) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 8) Safety and Efficacy of Polymyxin B Hemoperfusion (PMX) for Endotoxemic Septic Shock in Randomized, Open-Label Study (TIGRIS). (ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03901807, https:// clinicaltrials.gov/study/NCT03901807 Accessed 9 Nov 2024). CQ4-1:敗血症に対して,PMX-DHPを行う か? Answer:敗血症に対して,PMX-DHPを行わないこ とを弱く推奨する(GRADE 2D)。 (1)背景 エンドトキシンの吸着を目的としたポリミキシンB固定化カラムを用いた直接血液灌流法(direct hemoperfusion with polymyxin B immobilized fiber column: PMX-DHP)は,日本で開発された技術であり,敗血症性ショックに対して保険適用を有する。J-SSCG 2020 1, 2)では,敗血症性ショックに対してPMX-DHPを実施しないことを弱く推奨していたが, PMX-DHPの効果については依然として議論があり, J-SSCG 2024でも継続して取り上げることにした。 (2)効果のバランス 4編のRCT 3-6)を用い,メタ解析を行った。PMX-DHPによる望ましい効果として,死亡は1,000人あたり37人減少(134人減少~110人増加),臓器障害スコアは標準化平均差で0.49低い(1.2低い~0.21高い)であり,望ましい効果は「わずか」と考えられた。一方,望ましくない効果として,研究ごとに定義は異なるが,出血や回路内凝固などのPMX-DHPによる合併症は1,000人あたり216人増加(91人減少~1,000人増加),vasopressor-free daysは平均差1.8日短い(4.14日短い~0.54日長い)であり,望ましくない効果は「大きい」と考えられた。以上より,効果のバランスとしては,「比較対照が優れている」と判断した。 (3)容認性 吸着式血液浄化法(1日につき)の診療報酬は2,000点(2022年)で,エンドトキシン除去用の吸着カラムの価格は約30万円/本と比較的高額な医療である。敗血症性ショックの診療にあたる施設では,血液浄化装置を配備していることやそれらを扱うことのできる臨床工学技士の体制を敷いていることが想定されるため,PMX-DHPの実施は十分可能であると思われる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20217)では,成人の敗血症あるいは敗血症性ショックに対してPMX-DHPを実施しないことを弱く推奨している。
-S 1254- と定義して検討を行った。実際に腎代替療法を開始するタイミングについては,医学的な面だけでなく,施設ごとの設備状況や人的資源によって変わり得る。また,腎代替療法を行うに際しては,医療資源や患者の意向など臨床倫理面からも検討する必要がある。 文 献 1) Peters E, Antonelli M, Wittebole X, et al: A worldwide multicentre evaluation of the influence of deterioration or improvement of acute kidney injury on clinical outcome in critically ill patients with and without sepsis at ICU admission: results from The Intensive Care Over Nations audit. Crit Care. 2018; 22: 188. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 3) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 4) STARRT-AKI Investigators; Canadian Critical Care Trials Group; Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group; United Kingdom Critical Care Research Group; Canadian Nephrology Trials Network; Irish Critical Care Trials Group; Bagshaw SM, Wald R, Adhikari NKJ, et al: Timing of Initiation of Renal-Replacement Therapy in Acute Kidney Injury. N Engl J Med. 2020; 383: 240-51. 5) Wald R, Adhikari NK, Smith OM, et al; Canadian Critical Care Trials Group: Comparison of standard and accelerated initiation of renal replacement therapy in acute kidney injury. Kidney Int. 2015; 88: 897-904. 6) Gaudry S, Hajage D, Schortgen F, et al; AKIKI Study Group: Initiation Strategies for Renal-Replacement Therapy in the Intensive Care Unit. N Engl J Med. 2016; 375: 122-33. 7) Barbar SD, Clere-Jehl R, Bourredjem A, et al; IDEAL-ICU Trial Investigators and the CRICS TRIGGERSEP Network: Timing of Renal-Replacement Therapy in Patients with Acute Kidney Injury and Sepsis. N Engl J Med. 2018; 379: 1431-42. 8) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. CQ4-2:敗血症性AKIに対して,早期の腎代替 療法を行うか? Answer:敗血症性AKIに対して,早期の腎代替療法 を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 敗血症性AKI(acute kidney injury, 急性腎障害)を合併した患者では,非敗血症性AKIを合併した患者と比較してAKIの重症度や腎代替療法の実施率,死亡率が高いことが報告されている1)。しかしAKIを合併した敗血症患者に対する腎代替療法の開始時期については明らかな基準はない。J-SSCG 2020 2, 3)では,stage 2のAKIに早期腎代替療法を行うか否かについては推奨を提示せず,stage 3のAKIでは早期に腎代替療法は行わないことを弱く推奨した。敗血症患者に対する腎代替療法の開始時期については2020年に新たに大規模なRCT(STARRT-AKI trial)4)の結果が報告されたため,今回もCQとして取り上げた。 (2)効果のバランス 4編のRCT 4-7)を用いたメタ解析を行った。早期の腎代替療法による望ましい効果として,透析依存は1,000人あたり12人減少(40人減少~70人増加),出血性合併症は5人減少(12人減少~8人増加)した。一方,望ましくない効果として,死亡は8人増加(23人減少~38人増加)した。したがって,効果のバランスは「分からない」と判断した。 (3)容認性 腎代替療法の早期開始の妨げとなる要因として設備および人的資源が挙げられるが,敗血症やAKIを診療する施設においては容認される。腎代替療法を早期に介入した場合,その分の医療費は増加するが,日本では保険診療の範囲において実施される治療であり,患者・家族の視点から費用負担は容認できる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20218)においては,成人の敗血症や敗血症性ショックによるAKIでは腎代替療法の絶対的適応がなければ腎代替療法を行わないこと,が提案されている。 (5)実施に関わる検討事項 本ガイドラインでは「早期」について,AKI stage(2または3)と腎代替療法開始までの時間(12時間以内)
-S 1255- して,CRRTまたはIRRTのいずれかを行うことが提案され,利益と害のバランスを検討した結果ではいずれも有益とはされなかった。 (5)実施にかかわる検討事項 日本の観察研究において,循環動態が不安定な症例では,一般的にCRRTを選択されていることが報告されている10)。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Mehta RL, McDonald B, Gabbai FB, et al: Collaborative Group for Treatment of ARF in the ICU: A randomized clinical trial of continuous versus intermittent dialysis for acute renal failure. Kidney Int. 2001; 60: 1154-63. 4) Gasparović V, Filipović-Grcić I, Merkler M, et al: Continuous renal replacement therapy (CRRT) or intermittent hemodialysis (IHD)--what is the procedure of choice in critically ill patients?. Ren Fail. 2003; 25: 855-62. 5) Uehlinger DE, Jakob SM, Ferrari P, et al: Comparison of continuous and intermittent renal replacement therapy for acute renal failure. Nephrol Dial Transplant. 2005; 20: 1630-7. 6) Vinsonneau C, Camus C, Combes A, et al; Hemodiafe Study Group: Continuous venovenous haemodiafiltration versus intermittent haemodialysis for acute renal failure in patients with multiple-organ dysfunction syndrome: a multicentre randomised trial. Lancet. 2006; 368: 379-85. 7) Schefold JC, von Haehling S, Pschowski R, et al: The effect of continuous versus intermittent renal replacement therapy on the outcome of critically ill patients with acute renal failure (CONVINT): a prospective randomized controlled trial. Crit Care. 2014; 18: R11. 8) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 9) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021; 49: e1063-143. 10) Iwagami M, Yasunaga H, Noiri E, et al: Choice of renal replacement therapy modality in intensive care units: data from a Japanese Nationwide Administrative Claim Database. J Crit Care. 2015; 30: 381-5. CQ4-3:敗血症性AKIに対する腎代替療法では 持続的治療を行うか? Answer:敗血症性AKIに対する腎代替療法は,持続 的治療・間欠的治療のどちらを選択しても構わない(GRADE 2D)。 ただし,循環動態が不安定な症例については持続的治療を選択する(Good Practice Statement)。 (1)背景 敗血症性AKIが高度に進行した場合,腎代替療法は生命維持に必要不可欠となる。治療時間に基づく分類として持続的腎代替療法(continuous renal replacement therapy: CRRT)と間欠的腎代替療法(intermittent renal replacement therapy: IRRT)がある。J-SSCG 2020 1, 2)では,循環動態が不安定な場合にはCRRTを選択し,安定している場合はCRRT・IRRTのどちらを選択しても構わないとしていた。CRRTとIRRTのどちらを敗血症性AKIに対して用いるのかは,病態のみならず治療施設における経験や診療体制にも依存し,意見が分かれるため,今回もCQとして取り上げた。 (2)効果のバランス 5編のRCTを用いたメタ解析を行った3-7)。IRRTを対照とした場合,望ましい効果として,CRRTによって出血性合併症は1,000人あたり3人減少(29人減少~46人増加)した。一方,望ましくない効果では,死亡は38人増加(49人減少~136人増加),透析依存は4人増加(38人減少~106人増加)した。したがって,効果のバランスは「比較対照がおそらく優れている」と判断した。 (3)容認性 日本の保険診療において,IRRTとCRRTはともに承認された治療であり,医療コストの視点からはどちらを選択しても容認できる。一方で,昇圧薬投与を必要とする敗血症性AKIに対してIRRTを行うことは,血行動態をさらに悪化させる可能性があるため,患者・家族の視点からも容認はされ難い。日本における急性期病院ではICUにおいて通常診療の中でCRRTが行われており,血行動態が不安定なAKI症例でCRRTを選択することは容認されると考える。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20218, 9)では,腎代替療法を必要とするAKIを合併した敗血症または敗血症性ショックの成人に対
-S 1256- られている5)。海外のAKIガイドラインでは,血液浄化量として20~25 mL/kg/hrで行うことが推奨されている6)。 (5)実施に関わる検討事項 国際的な血液浄化量の標準量は20~25 mL/kg/hrであるが,日本における保険適用量は10~15 mL/kg/hrである。今回のメタ解析で抽出されたRCTの標準的な処方量は国際標準の20~25 mL/kg/hrであり,日本の標準的な血液浄化量とは大きく異なる1-3)。なお,高用量RRTを行う場合はICUで実施・管理する。 文 献 1) Tolwani AJ, Campbell RC, Stofan BS, et al: Standard versus high-dose CVVHDF for ICU-related acute renal failure. J Am Soc Nephrol. 2008; 19: 1233-8. 2) RENAL Replacement Therapy Study Investigators; Bellomo R, Cass A, Cole L, et al: Intensity of continuous renal-replacement therapy in critically ill patients. N Engl J Med. 2009; 361: 1627-38. 3) VA/NIH Acute Renal Failure Trial Network; Palevsky PM, Zhang JH, O'Connor TZ, et al: Intensity of renal support in critically ill patients with acute kidney injury. N Engl J Med. 2008; 359: 7-20. 4) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 5) AKI(急性腎障害)診療ガイドライン作成委員会編: AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016. 日腎会誌. 2017; 59: 419-533. 6) KDIGO AKI Working Group: KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury. Kidney Int Suppl. 2012; 2:1-138. CQ4-4:敗血症性AKIに対する腎代替療法にお いて,血液浄化量の増加を行うか? Answer:敗血症性AKIに対して,血液浄化量を国際 的な標準量(20~25 mL/kg/hr)よりも増やさないことを強く推奨する(GRADE 1A)。 (1)背景 敗血症性AKI患者に腎代替療法(renal replacement therapy: RRT)を実施する際に,予後改善を期待し,透析量・濾過量を増やすことが検討されてきた。日本の保険診療では15 mL/kg/hr程度の処方量が標準とされているが,国際的には25 mL/kg/hr程度が標準的な処方量である。敗血症性AKIに対して最も治療効果の高い処方量を設定することは予後改善に向けて重要な課題であるため,J-SSCG 2020から継続してCQとして取り上げた。 (2)効果のバランス 3編のRCTを用いたメタ解析を行った1-3)。血液浄化量の増加を行うことによる望ましい効果は,今回のメタ解析では得られなかったため,望ましい効果は,「わからない」と判断した。一方,望ましくない効果は,死亡では1,000人あたり26人増加(9人減少~64人増加),透析依存では1,000人あたり68人増加(51人減少~226人増加),合併症(低リン血症)では1,000人あたり124人増加(4人増加~286人増加)であった。したがって,効果のバランスは「比較対照が優れている」と考えられた。 (3)容認性 国際的な標準量(20~25 mL/kg/hr)よりも透析量・濾過量を増やす高用量RRTを行う場合,その費用は標準量RRTよりも高額となる。日本では保険診療の対象であるため,個人負担額に大きな差は生じず,患者・家族の視点からは容認できるが,病院の負担は増える可能性はある。高用量RRTでは,血液濾過量の増加に伴うフィルター凝固が発生し得るが,フィルターの選択と抗凝固薬の増量などである程度は対応可能であり,医療現場においても実施は容認される。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では血液浄化量に関する記述はない4)。日本のAKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016では,「至適な血液浄化量を推奨できる根拠となるエビデンスはなく,病態に応じた設定が必要である。」と述べ
-S 1257- 敗血症 CQ5-1 敗血症性DICの診断方法は? 診断基準に合致? する 確定 CQ5-2 敗血症性 DICが疑われる症例での鑑別疾患は? DIC診断 CQ5-3 敗血症性DICにアンチトロンビンの投与を行うか? CQ5-4 敗血症性DICにリコンビナント・トロンボモジュリンの投与を行うか? 適宜見直ししない FRQ5-1 敗血症性DICに対して,アンチトロンビンとトロンボモジュリンを併用投与するか? FRQ5-2 敗血症性DICにヘパリン・ヘパリン類の投与を行うか? 診療フロー
-S 1258- (International Society on Thrombosis and Haemostasis: ISTH)が提唱するovert-DIC診断基準やsepsis-induced coagulopathy(SIC)診断基準,日本救急医学会が作成した急性期DIC診断基準や日本血栓止血学会が作成したDIC診断基準など,様々な基準が公表されてきた(Table 5-1-1)。 この中で敗血症性DICの早期診断を目的として広く用いられているのは,急性期DIC診断基準とSIC診断基準であり,DICの確定診断においてはovert-DIC診断基準が用いられることが多い1-3)。急性期DIC診断基準は,炎症に伴う凝固異常を鋭敏に感知するために,診断項目にsystemic inflammatory response syndrome (SIRS)スコアや血小板数の経日的な減少率を含めており,日本の診療現場で頻用されている。近年発表されたSIC診断基準は,PTと血小板数というルーチン検査項目に加え,SOFAスコアを診断項目に含めており,SIRSスコアからSOFAスコアに変更された敗血症の診断基準に対応している。一方,海外で標準的に使用されているovert-DIC診断基準は,急性期DIC診断基準やSIC診断基準と比較してより厳密な診断基準であり,過剰診断を回避したり,重症DIC症例を同定したりするのに用いられる。また,2017年に発表された日本血栓止血学会DIC診断基準の「感染症型」では,アンチトロンビンやトロンビン−アンチトロンビン複合体などの分子マーカーを診断項目に加えており, CQ5-1:敗血症性DICの診断方法は? Answer:敗血症におけるDIC診断には目的に応じた 複数の診断基準が提唱されている。早期DICの診断や治療開始判断には急性期DIC診断基準やsepsis-induced coagulopathy(SIC)診断基準,進行期DICの診断や死亡予測には国際血栓止血学会overt-DIC診断基準がある。(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 すべての生体侵襲はDICを引き起こしうるが,特に敗血症に起因するDICは頻度と重症度の高さから重要な臨床課題である。また,抗凝固療法の有効性が認められるのは,敗血症の中でも凝固異常を有する患者に限られており,DIC診断は抗凝固療法の適応や重症度を判断するために必要である。現在に至るまでに複数のDIC診断基準が提唱されており,診断基準間でそれらの優劣を判断することは困難であるが,早期診断,治療開始の判断,予後予測など目的に応じた使い分けの指針を提示することが求められており,CQのひとつとして取り上げた。 (2)解説 DIC診断基準は,1979年に発表された日本の旧厚生省DIC診断基準に始まり,国際血栓止血学会 Table 5-1-1 ISTH overt-DIC,急性期DIC診断基準(JAAM DIC),ISTH SIC 診断基準の比較血液検査項目スコア国際血栓止血学会(ISTH) overt-DIC診断基準日本救急医学会(JAAM) 急性期DIC診断基準国際血栓止血学会(ISTH) SIC診断基準 血小板数(×1,000 /mm3) 3 ─ <80 24時間以内に50%以上の減少 ─ 2 <50 ─ <100 1 ≧50,<100 120>,80≦ 24時間以内に30%以上の減少≧100,<150 FDP(D-dimer) 3 高度の増加 ≧25 μg/mL (換算表の使用) ─ 2 中程度の増加 ─ ─ 1 ─ ≧10,<25 μg/mL (換算表の使用) ─ プロトロンビンテスト2 ≧6秒─ >1.4 1 ≧3秒,<6秒 ≧1.2(PT比) >1.2,≦1.4(PT-INR) フィブリノゲン(g/mL) 1 <100 ─ ─ SIRS score 1 ─ ≧3 ─ SOFA score 2 ─ ─ ≧2 1 ─ ─ 1 DIC診断のスコア合計≧5 ≧4 ≧4 FDP, fibrin/fibrinogen degradation products; ISTH, International Society on Thrombosis and Haemostasis; JAAM, Japanese Association for Acute Medicine; PT, prothrombin time; PT-INR, prothrombin time-international normalized ratio; SIC, Sepsis-Induced Coagulopathy; SIRS, systemic inflammatory response syndrome. SICのSOFA scoreは以下の4 項目の合計(respiratory SOFA, cardiovascular SOFA, hepatic SOFA, renal SOFA)で行う
-S 1259- CQ5-2:敗血症性 DICが疑われる症例での鑑別 疾患は? Answer:DIC類似病態として,血栓性微小血管障害 症(TMA)やヘパリン起因性血小板減少症(HIT)などがあり鑑別を要する(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 敗血症を含む重症病態では,しばしば血小板減少を伴う凝固異常がみられる。一方,類似の血液検査異常をきたしながらもDICとは一線を画す病態も存在する。そしてこの中には血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy: TMA)をはじめとして敗血症性 DICとは異なる治療アルゴリズムが必要な病態も含まれている。DICで有効とされる抗凝固療法は,これらの病態では効果が期待できないどころか,かえって有害である可能性がある。したがって,敗血症性 DICとその類似病態を鑑別することは重要である。 (2)解説 DICは基礎疾患の存在下に全身性の凝固活性化が生じた状態で,微小血管内に血栓が形成されることにより消費性の血小板減少がみられる。ICUの血小板減少患者の9~19%はDICによるもので1),その多くが敗血症性DICである。しかし,DICと同様に血小板減少をきたし鑑別を要する病態も存在する。そのうち迅速に特異的な対応を行うことによって,救命あるいは重篤な後遺症の防止が可能になるものとしてTMAが挙げられる。TMAは微小血管障害性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia: MAHA),消費性血小板減少,微小血管内血小板血栓による臓器機能障害を3主徴とする病態で,DICで見られるようなprothrombin time(PT)延長やfibrihoger degradation products(FDP)の上昇などは通常観察されないか軽度にとどまる2)。TMAは志賀毒素を産生する病原性大腸菌(Shiga toxin-producing Escherichia coli: STEC)による 溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome: HUS),補体の異常な活性化による非典型溶血性尿毒症症候群(atypical HUS, aHUS),von Willebrand 因子(vWF)の切断酵素であるa disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motif,member 13(ADAMTS13)の活性が先天的にあるいは自己抗体により後天的に低下する血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura: TTP),その他の原因(自己免疫性疾患,移植関連,妊娠,感染症,薬剤など)による二次性 TMAに分類される3)。 TMAとDICの鑑別に関して様々な診断フローが提 28日生存率に関して,ISTH overt-DIC診断基準と同等の診断精度を有するという小規模の前向き観察研究の報告がある4)。 DIC診断はゴールドスタンダードが存在しないため,いずれの基準が優れているか判断することは困難であり,目的に応じて使い分けることが妥当である5)。以上をまとめると,1早期診断ならびに治療開始の判断には急性期DIC診断基準やSIC診断基準があり6, 7), 2確定診断,予後予測・重症度評価を目的とする場合にはISTH overt-DIC診断基準がある。 文 献 1) Gando S, Iba T, Eguchi Y, et al; Japanese Association for Acute Medicine Disseminated Intravascular Coagulation (JAAM DIC) Study Group: A multicenter, prospective validation of disseminated intravascular coagulation diagnostic criteria for critically ill patients: comparing current criteria. Crit Care Med. 2006; 34: 625-31. 2) Iba T, Nisio MD, Levy JH, et al: New criteria for sepsis-induced coagulopathy (SIC) following the revised sepsis definition: a retrospective analysis of a nationwide survey. BMJ Open. 2017; 7: e017046. 3) Taylor FB Jr, Toh CH, Hoots WK, et al; Scientific Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation (DIC) of the International Society on Thrombosis and Haemostasis (ISTH): Towards definition, clinical and laboratory criteria, and a scoring system for disseminated intravascular coagulation. Thromb Haemost. 2001; 86: 1327-30. 4) Mori H, Harada-Shirado K, Kawano N, et al: Net reclassification index in comparison of prognostic value of disseminated intravascular coagulation diagnostic criteria by Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis and International Society on Thrombosis and Haemostasis: a multicenter prospective cohort study. Thromb J. 2023; 21: 84. 5) Iba T, Umemura Y, Watanabe E, et al; Japanese Surviving Sepsis Campaign Guideline Working Group for disseminated intravascular coagulation: Diagnosis of sepsis-induced disseminated intravascular coagulation and coagulopathy. Acute Med Surg. 2019; 6: 223-32. 6) Yamakawa K, Yoshimura J, Ito T, et al: External Validation of the Two Newly Proposed Criteria for Assessing Coagulopathy in Sepsis. Thromb Haemost. 2019; 119: 203-12. 7) Wada T, Yamakawa K, Kabata D, et al; JAAM FORECAST Group: Sepsis-related coagulopathy treatment based on the disseminated intravascular coagulation diagnostic criteria: a post-hoc analysis of a prospective multicenter observational study. J Intensive Care. 2023; 11: 8.
-S 1260- elevated liver enzymes and low platelets(HELLP)症候群,重症肝障害などがある。いずれも血小板減少が診断の端緒となるが,HITは4Tsスコアリング8)によるスクリーニングや抗体検査などによる診断精度向上により早期にDICと鑑別できる。HELLP症候群は妊娠高血圧症候群の重症型であるが,妊娠中はvWFの増加により先天性TTPや aHUSが顕在化する場合があり, TMAとの鑑別が困難となるので注意する9)。肝硬変などの肝障害は血小板減少を呈し,凝固,抗凝固因子の低下も見られる。さらに敗血症では肝障害が生じ得るため10),DICとの鑑別が困難な場合も多い。 以上,主要な DIC類似病態の存在を勘案し,本ガイドライン作成委員会のDIC診断と治療に関するワーキンググループは,早期鑑別診断フローを以下のように提唱する2)(Figure 5-2-1)。 文 献 1) Vincent JL, Castro P, Hunt BJ, et al: Thrombocytopenia in the ICU: disseminated intravascular coagulation and thrombotic microangiopathies-what intensivists need to know. Crit Care. 2018; 22: 158. 2) Iba T, Watanabe E, Umemura Y, et al; Japanese Surviving Sepsis Campaign Guideline Working Group for disseminated 唱されているが1, 4, 5),これらには第一段階でDICを想定した凝固障害を確認するか4, 5),あるいはTMAを想定したMAHAの確認を行うか1)という方針上の違いがある。TMAの発生頻度はDICと比べて約150分の1とする報告もあり6),日本ではDICを最初に想定するフローが一般的である。しかし,一度DICと診断されても実際にはTMAであったり,TMAが併発している可能性は否定できない。敗血症性DICの診断は迅速に行う必要があるが,当初は敗血症性DICと診断したものの,治療反応性が乏しい,あるいは臨床徴候が非典型的な場合にはTMAの可能性を念頭に置き,迅速な診断と特異的治療(血漿交換や分子標的治療薬など)への切り替えが必要である。補体制御異常に起因するaHUSに対して,分子標的薬の抗C5モノクローナル抗体であるエクリズマブやラブリズマブが有効であり,後天性TTPの治療薬として,日本でも2022年から遺伝子組換え抗vWFモノクローナル抗体であるカプラシズマブが使用可能となった。いずれも早期の使用により効果が得られることが示されており7),迅速な診断が重要である。 TMA以外に敗血症性DICと鑑別が必要な疾患としてはheparin-induced thrombocytopenia(HIT),hemolysis, Figure 5-2-1 血小板減少をきたす敗血症患者における鑑別診断フロー(文献2を参考に独自に作成) ADAMTS13, a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13; aHUS, atypical hemolytic uremic syndrome; AIPF, Acute infectious purpura fulminans; APS, Antiphospholipid syndrome; CAPS, Catastrophic antiphospholipid syndrome; FDP, fibrin/fibrinogen degradation products; HIT, heparin-induced thrombocytopenia; HUS, hemolytic uremic syndrome, HPS, Hemophagocytic syndrome; ITP, immune thrombocytopenia; LDH, lactate dehydrogenase; MAHA, Microangiopathic hemolytic anemia PT-INR, prothrombin time-international normalized ratio; SFTS, Severe fever and thrombocytopenia syndrome; STEC, Shiga toxin-producing Escherichia coli; T-Bil, total bilirubin; TMA, thrombotic microangiopathy; TTP, thrombotic thrombocytopenic purpura
-S 1261- CQ5-3:敗血症性DICにアンチトロンビンの投 与を行うか? Answer:敗血症性DICに対して,アンチトロンビン の投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)。 (1)背景 アンチトロンビンは主にトロンビンと活性化第X因子を阻害し抗凝固作用を有するだけでなく,抗炎症作用を有することから敗血症性DICの病態を制御できる可能性がある1)。日本の「科学的根拠に基づいた感染症に伴うDIC治療のエキスパートコンセンサス」では抗凝固療法の第一選択薬のひとつとしてアンチトロンビンが挙げられており,臨床現場でも幅広く使われている2)。過去のメタ解析では,敗血症性DICの予後改善への寄与に関して相反する結果が公表されており,明確なエビデンスが確立されていない3, 4)。J-SSCG 2020ではGRADE 2Cでアンチトロンビンを投与することを弱く推奨していた5, 6)。 (2)効果のバランス アンチトロンビン投与による望ましい効果は,死亡の減少とDICからの離脱である。5編のRCT 7-11)の解析において,死亡は1,000人あたり147人減少(95% CI: 214人減少~67人減少)であり,3編のRCT 7, 8, 11)の解析において,DICからの離脱は1,000人あたり448人増加(95% CI: 161人増加~999人増加)であった。一方,望ましくない効果は,出血性合併症の増加である。3編のRCT 7, 10, 11)の解析において,1,000人あたり8人増加(95% CI: 24人減少~89人増加)であった。それぞれのアウトカムの相対的価値を考慮すると,望ましい効果は「大きい」,望ましくない効果は「わずか」と判断した。したがって,効果のバランスは「介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 アンチトロンビン投与に伴う医療者の仕事量の増加はわずかである。治療の侵襲はほとんどなく,利益と害のバランスを患者・家族の個人の視点から考えると,おそらく許容できる。アンチトロンビン投与は日本の多くの医療機関において実行可能である。ただし,敗血症患者発生の絶対数が少ない地域では在庫の維持が困難で,その実行可能性は高くない可能性がある。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2016では敗血症および敗血症性ショックに対 intravascular coagulation: Sepsis-associated disseminated intravascular coagulation and its differential diagnoses. J Intensive Care. 2019; 7: 32. 3) Masias C, Vasu S, Cataland SR: None of the above: thrombotic microangiopathy beyond TTP and HUS. Blood. 2017; 129: 2857-63. 4) Iba T, Levy JH, Wada H, et al; Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation: Differential diagnoses for sepsisinduced disseminated intravascular coagulation: communication from the SSC of the ISTH. J Thromb Haemost. 2019; 17: 415-9. 5) Iba T, Umemura Y, Watanabe E, et al; Japanese Surviving Sepsis Campaign Guideline Working Group for disseminated intravascular coagulation: Diagnosis of sepsis-induced disseminated intravascular coagulation and coagulopathy. Acute Med Surg. 2019; 6: 223-32. 6) Wada H, Matsumoto T, Suzuki K, et al: Differences and similarities between disseminated intravascular coagulation and thrombotic microangiopathy. Thromb J. 2018; 16: 14. 7) Zheng XL, Vesely SK, Cataland SR, et al: ISTH guidelines for treatment of thrombotic thrombocytopenic purpura. J Thromb Haemost. 2020; 18: 2496-502. 8) Warkentin TE: Clinical picture of heparin-induced thrombocytopenia (HIT) and its differentiation from non-HIT thrombocytopenia. Thromb Haemost. 2016; 116: 813-22. 9) Hulstein JJ, van Runnard Heimel PJ, Franx A, et al: Acute activation of the endothelium results in increased levels of active von Willebrand factor in hemolysis, elevated liver enzymes and low platelets (HELLP) syndrome. J Thromb Haemost. 2006; 4: 2569-75. 10) Strnad P, Tacke F, Koch A, et al: Liver - guardian, modifier and target of sepsis. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2017; 14: 55-66.
-S 1262- 2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 6) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 7) Fourrier F, Chopin C, Huart JJ, et al: Double-blind, placebocontrolled trial of antithrombin III concentrates in septic shock with disseminated intravascular coagulation. Chest. 1993; 104: 882-8. 8) Inthorn D, Hoffmann JN, Hartl WH, et al: Antithrombin III supplementation in severe sepsis: beneficial effects on organ dysfunction. Shock. 1997; 8: 328-34. 9) Baudo F, Caimi TM, de Cataldo F, et al: Antithrombin III (ATIII) replacement therapy in patients with sepsis and/or postsurgical complications: a controlled double-blind, randomized, multicenter study. Intensive Care Med. 1998; 24: 336-42. 10) Kienast J, Juers M, Wiedermann CJ, et al; KyberSept investigators: Treatment effects of high-dose antithrombin without concomitant heparin in patients with severe sepsis with or without disseminated intravascular coagulation. J Thromb Haemost. 2006; 4: 90-7. 11) Gando S, Saitoh D, Ishikura H, et al; Japanese Association for Acute Medicine Disseminated Intravascular Coagulation (JAAM DIC) Study Group for the JAAM DIC Antithrombin Trial (JAAMDICAT): A randomized, controlled, multicenter trial of the effects of antithrombin on disseminated intravascular coagulation in patients with sepsis. Crit Care. 2013; 17: R297. 12) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock: 2016. Intensive Care Med. 2017; 43: 304-77. 13) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021; 49: e1063-143. 14) Tsuchida T, Makino Y, Wada T, et al: Efficacy of antithrombin administration for patients with sepsis: A systematic review, metaanalysis, and meta-regression. Acute Med Surg. 2024; 11: e950. 15) Iba T, Saito D, Wada H, et al: Efficacy and bleeding risk of antithrombin supplementation in septic disseminated intravascular coagulation: a prospective multicenter survey. Thromb Res. 2012; 130: e129-33. 16) Iba T, Saitoh D, Wada H, et al: Efficacy and bleeding risk of antithrombin supplementation in septic disseminated intravascular coagulation: a secondary survey. Crit Care. 2014; 18: 497. してアンチトロンビンを投与しないことを推奨していたが12),SSCG 2021ではアンチトロンビンについての記載自体が見られなくなった13)。なお,J-SSCG 2024において実施した系統的レビューまでの間に組み入れ対象となる新規のRCTは出版されておらず,同一の文献を対象にメタ解析を行ったが,複数のアウトカムにわたる正味の効果推定値によるエビデンスの確実性評価の結果,GRADE 2Cから2Bへ変更となった。 (5)実施に関わる検討事項 J-SSCG 2016は,活性値が70%以下に低下した敗血症性DIC患者に対してアンチトロンビン補充療法を行うことを弱く推奨したが,「活性値70%以下」に明確な科学的根拠がないため,J-SSCG 2020ではこの文言が削除され,今回のJ-SSCG 2024でもそれを踏襲した。今回の系統的レビュー・メタ解析で採用したRCTで使用されたアンチトロンビンの投与量は様々で,日本からの報告11)を除いて日本の保険適用量を超えていた7-10)。しかし,観察研究を含めた系統的レビュー・メタ解析でも有効な投与量は不明であった14)。日本の保険適用範囲内である1,500単位/dayと3,000単位/ dayの比較では,高用量投与が出血性合併症を増やすことなくDIC離脱率および生存率を改善させる可能性が示されている15, 16)。投与量,目標活性値,投与開始・中止基準などは今後の研究で明らかにされるべき課題であり,明確なエビデンスがない現行の実臨床では患者の全身状態などに応じた個別の判断を要する。またリコンビナント製剤と血漿由来製剤との比較も重要な臨床課題である。敗血症における出血性合併症の頻度とそれによるリスクは,病態や手術治療の有無によって大きく異なる。特に出血リスクの高いと判断される症例に対する使用は注意する。 文 献 1) Levy JH, Sniecinski RM, Welsby IJ, et al: Antithrombin: antiinflammatory properties and clinical applications. Thromb Haemost. 2016; 115: 712-28. 2) 日本血栓止血学会学術標準化委員会DIC部会ガイドライン作成委員会: 科学的根拠に基づいた感染症に伴うDIC治療のエキスパートコンセンサス. 日本血栓止血学会誌. 2009; 20: 77-113. 3) Allingstrup M, Wetterslev J, Ravn FB, et al: Antithrombin III for critically ill patients. Cochrane Database Syst Rev. 2016; 2: CD005370. 4) Wiedermann CJ, Kaneider NC: A systematic review of antithrombin concentrate use in patients with disseminated intravascular coagulation of severe sepsis. Blood Coagul Fibrinolysis. 2006; 17: 521-6. 5) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン
-S 1263- ない可能性がある。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 日本の「科学的根拠に基づいた感染症に伴うDIC治療のエキスパートコンセンサスの追補」では推奨度B1で投与が推奨されている12)。また,SSCG 2016で敗血症および敗血症性ショックに対するリコンビナント・トロンボモジュリン投与に関しての推奨はないと記載はされていたが,SSCG 2021ではリコンビナント・トロンボモジュリンについての記載自体がなくなった。なお,J-SSCG 2024において実施した系統的レビューまでの間に組み入れ対象となる新規のRCTが日本から1編報告されており,エビデンスの確実性評価の結果が効果推定値によりGRADE 2Cから2Bへ変更となった。 (5)実施に関わる検討事項 敗血症性DICにおいてリコンビナント・トロンボモジュリン投与のための基準や,投与終了時期については意見が分かれており,今後の研究で明らかにされるべき課題である。また,敗血症性DICにおける出血性合併症の頻度とそれによるリスクは,病態や手術など侵襲的治療の有無によって大きく異なる。特に出血リスクが高いと判断される症例に対する使用は注意する。 文 献 1) Mohri M, Sugimoto E, Sata M, et al: The inhibitory effect of recombinant human soluble thrombomodulin on initiation and extension of coagulation--a comparison with other anticoagulants. Thromb Haemost. 1999; 82: 1687-93. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 3) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 4) Yamakawa K, Levy JH, Iba T: Recombinant human soluble thrombomodulin in patients with sepsis-associated coagulopathy (SCARLET): an updated meta-analysis. Crit Care. 2019; 23: 302. 5) Zhang C, Wang H, Yang H, et al: Recombinant human soluble thrombomodulin and short-term mortality of infection patients with DIC: a meta-analysis. Am J Emerg Med. 2016; 34: 1876-82. 6) Valeriani E, Squizzato A, Gallo A, et al: Efficacy and safety of recombinant human soluble thrombomodulin in patients with sepsis-associated coagulopathy: A systematic review and metaanalysis. J Thromb Haemost. 2020; 18: 1618-25. 7) Vincent JL, Francois B, Zabolotskikh I, et al; SCARLET Trial Group: Effect of a Recombinant Human Soluble Thrombomodulin on Mortality in Patients With Sepsis-Associated Coagulopathy: The SCARLET Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019; 321: 1993-2002. 8) van der Poll T: Recombinant Human Soluble Thrombomodulin in Patients With Sepsis-Associated Coagulopathy: Another Negative Sepsis Trial? JAMA. 2019; 321: 1978-80. CQ5-4:敗血症性DICにリコンビナント・トロ ンボモジュリンの投与を行うか? Answer:敗血症性DICに対して,リコンビナント・ トロンボモジュリンの投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)。 (1)背景 リコンビナント・トロンボモジュリンは,トロンビンに結合しプロテインCを活性化することで抗凝固作用を有するだけでなく,そのレクチン様ドメインを介した抗炎症作用も有することから,敗血症性DICの病態を制御できる可能性がある1)。また,日本の臨床現場でも幅広く使われており,J-SSCG 2020 2, 3)においては投与することを弱く推奨していた。しかし,現時点でリコンビナント・トロンボモジュリンに関するエビデンスは十分とはいえず,その有用性についての十分な結論は出ていない4-6)。2019年に多国間第III相試験(SCARLET trial)の結果も公表されたが研究の限界もあり7, 8),リコンビナント・トロンボモジュリンの効果に関して新しいRCTも発表されたため,今一度系統的レビューで再評価することとした。 (2)効果のバランス 4編のRCTを用いたメタ解析を行った7, 9-11)。リコンビナント・トロンボモジュリン投与による望ましい効果は,死亡の減少とDICからの離脱である。4編のRCT 7, 9-11)の解析において,死亡は1,000人あたり39人減少(75人減少~3人増加)であり,3編のRCT 9-11)の解析において,DICからの離脱は1,000人あたり120人増加(4人増加~274人増加)であった。一方,望ましくない効果は出血性合併症であり,4編のRCT 7, 9-11)の解析において1,000人あたり12人増加(6人減少~41人増加)であった。それぞれのアウトカムの相対的価値を考慮すると,望ましい効果は「大きい」,望ましくない効果は「わずか」と判断した。したがって,効果のバランスは「介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 リコンビナント・トロンボモジュリン投与に伴う医療者の仕事量の増加はわずかである。治療の侵襲はほとんどなく,患者・家族の個人の視点から考えるとおそらく許容できる。また,リコンビナント・トロンボモジュリン投与は,日本の多くの医療機関において実行可能である。ただし,敗血症患者の絶対数が少ない地域では在庫の維持が困難で,その実行可能性は高く
-S 1264- FRQ5-1:敗血症性DICに対して,アンチトロン ビンとトロンボモジュリンを併用投与するか? (1)背景 本ガイドラインでは敗血症性DICに対して,アンチトロンビンまたはリコンビナント・トロンボモジュリンの投与をそれぞれ弱く推奨している。日本の臨床現場ではアンチトロンビンとリコンビナント・トロンボモジュリンの併用療法が行われている施設もあり,その有用性については様々な報告がある1-4)。しかし,現時点では併用療法の有用性について一定の見解は得られておらず,本ガイドラインのFRQのひとつに取り上げた。 (2)解説 リコンビナント・トロンボモジュリンはトロンビンと結合することでプロテインCを活性化し,活性化プロテインCを産生することで抗凝固作用を発揮する。一方で,アンチトロンビンはトロンビンと不可逆的に結合しトロンビンを不活化する。そのためアンチトロンビンとリコンビナント・トロンボモジュリンの併用療法は,アンチトロンビン投与によってトロンビンが不活化されるため,リコンビナント・トロンボモジュリンとトロンビンの結合を介した活性化プロテインC産生が抑制され, リコンビナント・トロンボモジュリンの効果が十分に発揮されない可能性が考えられていた。 しかし,基礎研究で,併用療法は,アンチトロンビンまたはリコンビナント・トロンボモジュリンの単独投与に比べて予後を改善する可能性が示唆されている5, 6)。その機序として,アンチトロンビンとリコンビナント・トロンボモジュリン併用下において,産生されたトロンビン量はプロテインCを活性化するのに十分である可能性が提示されている。また,同じく基礎研究で,アンチトロンビンとリコンビナント・トロンボモジュリンの併用投与はdamage-associated molecular patterns(DAMPs)を抑制することが示されている6)。 臨床研究でも様々な観察研究が報告されている。敗血症性DICの治療におけるアンチトロンビンとリコンビナント・トロンボモジュリンの併用投与について,本委員会のDIC診断と治療に関するワーキンググループでメタ解析を行い7),ランダム効果モデルを用いて併用療法の有用性を検討した結果,有意な差ではなかったものの,併用療法により死亡率が低下する傾向にあった(ハザード比 0.67,95% CI: 0.43~1.05. 異質 9) Hagiwara A, Tanaka N, Uemura T, et al: Can recombinant human thrombomodulin increase survival among patients with severe septic-induced disseminated intravascular coagulation: a singlecentre, open-label, randomised controlled trial. BMJ Open. 2016; 6: e012850. 10) Mori S, Ai T, Sera T, Ochiai K, et al: Human Soluble Recombinant Thrombomodulin, ART-123, Resolved Early Phase Coagulopathies, but Did Not Significantly Alter the 28 Day Outcome in the Treatment of DIC Associated with Infectious Systemic Inflammatory Response Syndromes. J Clin Med. 2019; 8: 1553. 11) Vincent JL, Ramesh MK, Ernest D, et al: A randomized, doubleblind, placebo-controlled, Phase 2b study to evaluate the safety and efficacy of recombinant human soluble thrombomodulin, ART-123, in patients with sepsis and suspected disseminated intravascular coagulation. Crit Care Med. 2013; 41: 2069-79. 12) 日本血栓止血学会学術標準化委員会DIC部会ガイドライン作成委員会: 科学的根拠に基づいた感染症に伴うDIC治療のエキスパートコンセンサスの追補. 日血栓止血会誌. 2014; 25: 123-5.
-S 1265- post-hoc analysis of a prospective multicenter observational study. J Intensive Care. 2023; 11: 8. 10) Murao A, Kato T, Yamane T, et al: Benefit Profile of Thrombomodulin Alfa Combined with Antithrombin Concentrate in Patients with Sepsis-Induced Disseminated Intravascular Coagulation. Clin Appl Thromb Hemost. 2022; 28: 10760296221077096. 性60%)(オッズ比 0.89,95% CI: 0.74~1.07. 異質性72%)。出血性合併症は併用療法と単剤療法で合併率は同等であった。対象研究が全て日本で実施されたこと,RCTではなく観察研究であったこと,統計学的に異質性が高い,などいくつかの限界があった。そのため現時点では,本CQに対しては推奨を提示せずFRQとして提案するに留めることとした。 抗凝固療法の効果が十分に発揮されるのは敗血症性DICなどの一部の患者群に限られる可能性が報告されており8, 9),より効果を発揮する適切な患者群が存在するという考えもある。Muraoらは,アンチトロンビン活性が低下し,かつ血小板減少症を呈している患者群において併用療法が最も効果を呈したと報告している10)。今後,併用療法の有用性や適切な患者群の解明のためにもRCTや質の高い観察研究によるエビデンスの蓄積が期待される。 文 献 1) Iba T, Hagiwara A, Saitoh D, et al: Effects of combination therapy using antithrombin and thrombomodulin for sepsis-associated disseminated intravascular coagulation. Ann Intensive Care. 2017; 7: 110. 2) Iba T, Gando S, Saitoh D, et al: Efficacy and Bleeding Risk of Antithrombin Supplementation in Patients With Septic Disseminated Intravascular Coagulation: A Third Survey. Clin Appl Thromb Hemost. 2017; 23: 422-8. 3) Suzuki J, Sasabuchi Y, Hatakeyama S, et al: The effect of antithrombin added to recombinant human-soluble thrombomodulin for severe community-acquired pneumonia-associated disseminated intravascular coagulation: a retrospective cohort study using a nationwide inpatient database. J Intensive Care. 2020; 8: 8. 4) Umemura Y, Yamakawa K, Hayakawa M, et al: Concomitant Versus Individual Administration of Antithrombin and Thrombomodulin for Sepsis-Induced Disseminated Intravascular Coagulation: A Nationwide Japanese Registry Study. Clin Appl Thromb Hemost. 2018; 24: 734-40. 5) Iba T, Miki T, Hashiguchi N, et al: Combination of antithrombin and recombinant thrombomodulin modulates neutrophil celldeath and decreases circulating DAMPs levels in endotoxemic rats. Thromb Res. 2014; 134: 169-73. 6) Iba T, Nakarai E, Takayama T, et al: Combination effect of antithrombin and recombinant human soluble thrombomodulin in a lipopolysaccharide induced rat sepsis model. Crit Care. 2009; 13: R203. 7) Totoki T, Makino Y, Yamakawa K, et al: Effects of combination therapy of antithrombin and thrombomodulin for sepsisassociated disseminated intravascular coagulation: a systematic review and meta-analysis. Thromb J. 2024; 22: 10. 8) Yamakawa K, Gando S, Ogura H, et al; Japanese Association for Acute Medicine (JAAM) Focused Outcomes Research in Emergency Care in Acute Respiratory Distress Syndrome, Sepsis Trauma (FORECAST) Study Group: Identifying Sepsis Populations Benefitting from Anticoagulant Therapy: A Prospective Cohort Study Incorporating a Restricted Cubic Spline Regression Model. Thromb Haemost. 2019 ; 119: 1740-51. 9) Wada T, Yamakawa K, Kabata D, et al; JAAM FORECAST Group: Sepsis-related coagulopathy treatment based on the disseminated intravascular coagulation diagnostic criteria: a
-S 1266- Thromboprophylaxis in High-risk Hospitalized Patients With COVID-19: The HEP-COVID Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2021; 181: 1612-20. 4) Billett HH, Reyes-Gil M, Szymanski J, et al: IAnticoagulation in COVID-19: Effect of Enoxaparin, Heparin, and Apixaban on Mortality. Thromb Haemost. 2020; 120: 1691-9. 5) Zhang Z, Yan T, Ren D, et al: Low-molecular-weight heparin therapy reduces 28-day mortality in patients with sepsis-3 by improving inflammation and coagulopathy. Front Med (Lausanne). 2023; 10: 1157775. 6) Beurskens DMH, Huckriede JP, Schrijver R, et al: The Anticoagulant and Nonanticoagulant Properties of Heparin. Thromb Haemost. 2020; 120: 1371-83. 7) Li X, Li X, Zheng Z, et al: Unfractionated heparin suppresses lipopolysaccharide-induced monocyte chemoattractant protein-1 expression in human microvascular endothelial cells by blocking Krüppel-like factor 5 and nuclear factor- κ B pathway. Immunobiology. 2014; 219: 778-85. 8) Fu S, Yu S, Wang L, et al: Unfractionated heparin improves the clinical efficacy in adult sepsis patients: a systematic review and meta-analysis. BMC Anesthesiol. 2022; 22: 28. 9) Huang JJ, Zou ZY, Zhou ZP, et al: Effectiveness of early heparin therapy on outcomes in critically ill patients with sepsis-induced coagulopathy. Front Pharmacol. 2023; 14: 1173893. 10) Li X, Liu Z, Luo M, et al: Therapeutic effect of low-molecularweight heparin on adult sepsis: a meta-analysis. Ann Palliat Med. 2021; 10: 3115-27. FRQ5-2:敗血症性DICにヘパリン・ヘパリン 類の投与を行うか? (1)背景 J-SSCG 2020でヘパリン・ヘパリン類は,敗血症性DICに対して標準治療として行わないことを弱く推奨された1, 2)。しかし,近年COVID-19における凝固異常にヘパリンが有用であったことや,諸外国を中心に敗血症や敗血症性DICに対してヘパリンの予後改善効果が報告されていることから再注目されている3-5)。そこで,敗血症性DICに対するヘパリン・ヘパリン類の投与について再検討するため,本ガイドラインのFRQとして取り上げた。 (2)解説 ヘパリンは1916年に発見された抗凝固薬で,世界で広く使用されている6)。ヘパリン自体は抗凝固活性を有しておらず,体内のアンチトロンビンと結合することでアンチトロンビンの抗凝固活性を増強させる。また,ヘパリン-アンチトロンビン複合体は,トロンビン,FIXa,FXa,FXIa,FXIIaなどを阻害し抗凝固活性を発揮する。ヘパリンは抗凝固作用以外にも抗炎症作用など様々な作用を有する7)。 近年,Fuらの系統的レビューでは,敗血症に対するヘパリンの早期投与が予後を改善する可能性を示唆している8)。また,sepsis-induced coagulopathy(SIC)を対象とした米国のMedical Information Mart for Intensive Care(MIMIC)-IV databaseを用いた研究でもヘパリン早期投与がICU死亡率を改善したと報告されており9),投与するタイミングや適切な治療介入群によってはヘパリンが有用な可能性はある。またLiらの系統的レビューでは,敗血症に対する低分子ヘパリンが予後を改善し,出血リスクを低下させる可能性を報告している10)。しかしながら,risk of bias(RoB)の観点から推奨を提示するに足るエビデンスが不足していると判断したため,本CQは推奨を提示せず,FRQに設定した。今後のRCTや質の高い観察研究が必要である。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Spyropoulos AC, Goldin M, Giannis D, et al; HEP-COVID Investigators: Efficacy and Safety of Therapeutic-Dose Heparin vs Standard Prophylactic or Intermediate-Dose Heparins for
-S 1267-
-S 1268- (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では,敗血症または敗血症性ショックの成人に対して,IVIG投与は行わないことを提案している12)。 (5)実施に関わる検討事項 今回採用されたRCTにおけるIVIG使用量は,体重50 kg換算で日本の重症感染症に対する用量用法5 g/day×3日間=15 gの約3倍~7倍の量であった。標準的治療として IVIG 投与を行うことは好ましくないが,劇症型溶血性レンサ球菌感染症のような特殊病態において症例に応じた適応判断13, 14)を否定するものではない。この点についてはFRQ6-1にまとめた。 文 献 1) Taccone FS, Stordeur P, De Backer D, et al: Gamma-globulin levels in patients with community-acquired septic shock. Shock. 2009; 32: 379-85. 2) Akatsuka M, Tatsumi H, Sonoda T, et al: Low immunoglobulin G level is associated with poor outcomes in patients with sepsis and septic shock. J Microbiol Immunol Infect. 2021; 54: 728-32. 3) Darenberg J, Ihendyane N, Sjölin J, et al; StreptIg Study Group: Intravenous immunoglobulin G therapy in streptococcal toxic shock syndrome: a European randomized, double-blind, placebocontrolled trial. Clin Infect Dis. 2003; 37: 333-40. 4) Werdan K, Pilz G, Bujdoso O, et al; Score-Based Immunoglobulin Therapy of Sepsis (SBITS) Study Group: Score-based immunoglobulin G therapy of patients with sepsis: the SBITS study. Crit Care Med. 2007; 35: 2693-701. 5) Madsen MB, Hjortrup PB, Hansen MB, et al: Immunoglobulin G for patients with necrotising soft tissue infection (INSTINCT): a randomised, blinded, placebo-controlled trial. Intensive Care Med. 2017; 43: 1585-93. 6) Dominioni D, Bianchi V, Imperatori A, et al: High-Dose Intravenous IgG for Treatment of Severe Surgical Infections. Dig Surg. 2016; 13: 430-4. 7) Burns ER, Lee V, Rubinstein A: Treatment of septic thrombocytopenia with immune globulin. J Clin Immunol. 1991; 11: 363-8. 8) De Simone C, Delogu G, Corbetta G: Intravenous immunoglobulins in association with antibiotics: a therapeutic trial in septic intensive care unit patients. Crit Care Med. 1988; 16: 23-6. 9) Grundmann R, Hornung M: Immunoglobulin therapy in patients with endotoxemia and postoperative sepsis--a prospective randomized study. Prog Clin Biol Res. 1988; 272: 339-49. 10) Marenović T, Filipović D, Lukić Z, et al: High doses of immunoglobulins decrease mortality rate of surgical patients with severe intraabdominal infections and sepsis. Vojnosanit Pregl. 1998; 55: 71-4. 11) Masaoka T, Hasegawa H, Takaku F, et al: The efficacy of intravenous immunoglobulin in combination therapy with antibiotics for severe infections. Jpn J Chemother. 2000; 48: 199-217. 12) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 13) Parks T, Wilson C, Curtis N, et al: Polyspecific Intravenous Immunoglobulin in Clindamycin-treated Patients With Streptococcal Toxic Shock Syndrome: A Systematic Review and Meta-analysis. Clin Infect Dis. 2018; 67: 1434-6. 14) Bartoszko JJ, Elias Z, Rudziak P, et al: Prognostic factors for streptococcal toxic shock syndrome: systematic review and metaanalysis. BMJ Open. 2022; 12: e063023. CQ6-1:敗血症に対して,免疫グロブリン (IVIG)投与を行うか? Answer:敗血症に対して,IVIG投与を行わないこと を弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 免疫グロブリン(IVIG)製剤には種々の細菌や毒素,ウイルスに対する特異抗体が含まれ,病原微生物・毒素の中和作用,補体活性化による貪食・溶菌促進作用,オプソニン効果,抗体依存性細胞障害作用,非特異的抗炎症作用,炎症性サイトカイン産生抑制作用などを有する。敗血症患者では,産生抑制や漏出・消耗により発症早期から血清IgG値は低下し,その程度が著しいほど,ショック発症率や死亡率は有意に増加する1, 2)。以上の背景から,適切な全身管理と抗菌薬の早期投与とともに,IVIGの投与により予後が改善する可能性がある。現状では,IVIG投与の有効性・有害性の評価は定まっておらず,J-SSCG 2020に引き続き検討した。 (2)利益と害のバランス 9編のRCTを用いたメタ解析を行った3-11)。死亡については最もエビデンスの確実性が高いものを採用する事前設定に基づき短期死亡(28日または30日死亡)をアウトカムに採用した。 短期死亡の減少を望ましい効果,重篤な副作用の増加を望ましくない効果と設定して検討した。解析の結果,IVIG投与によって重篤な副作用は1,000人あたり1人減少(23人減少~46人増加)(2RCT,724人)し,短期死亡は14人増加(51人減少~88人増加)(3RCT, 745人)した。以上の結果を考慮し,効果のバランスは「比較対照がおそらく優れている」と判断した。 (3)容認性 有害事象の発生リスクは低い可能性が高い。また,介入に伴うコストは約111,000円(IVIG 5 g=平均的な薬価約37,000円を3日間投与の場合)である。その個人負担額を考えると,患者・家族の個人の視点からおそらく許容できるだろう。ただし,今回採用されたRCTにおけるIVIG使用量は,体重50 kg換算で日本の重症感染症に対する用量用法5 g/day×3日間=15 gの約3倍~7倍の量であり,介入に伴うコストは約333,000~777,000円と見積もられる。IVIG投与に伴う医療者の仕事量増加はわずかである。
-S 1269- (5)実施に関わる検討事項 メタ解析に採用したRCTの大部分において,日本の承認量の上限である2 g/dayの3倍となる6 g/day程度が投与されていた。保険診療上の適応疾患は,消耗性疾患などでビタミンCの需要が増大し,食事からの摂取が不十分な際の補給であることにも留意する。また,本推奨は,敗血症患者に対し生命予後の改善を期待したビタミンC投与(大量)に関するものであり,一般的な栄養療法としてのビタミンC投与(通常量)を否定するものではない。 文 献 1) Marik PE, Khangoora V, Rivera R, et al: Hydrocortisone, Vitamin C, and Thiamine for the Treatment of Severe Sepsis and Septic Shock: A Retrospective Before-After Study. Chest. 2017; 151: 1229-38. 2) Fujii T, Luethi N, Young PJ, et al; VITAMINS Trial Investigators: Effect of Vitamin C, Hydrocortisone, and Thiamine vs Hydrocortisone Alone on Time Alive and Free of Vasopressor Support Among Patients With Septic Shock: The VITAMINS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2020; 323: 423-31. 3) Hwang SY, Ryoo SM, Park JE, et al; Korean Shock Society (KoSS): Combination therapy of vitamin C and thiamine for septic shock: a multi-centre, double-blinded randomized, controlled study. Intensive Care Med. 2020; 46: 2015-25. 4) Lamontagne F, Masse MH, Menard J, et al; LOVIT Investigators and the Canadian Critical Care Trials Group: Intravenous Vitamin C in Adults with Sepsis in the Intensive Care Unit. N Engl J Med. 2022; 386: 2387-98. 5) Lyu QQ, Zheng RQ, Chen QH, et al: Early administration of hydrocortisone, vitamin C, and thiamine in adult patients with septic shock: a randomized controlled clinical trial. Crit Care. 2022; 26: 295. 6) Rosengrave P, Spencer E, Williman J, et al: Intravenous vitamin C administration to patients with septic shock: a pilot randomised controlled trial. Crit Care. 2022; 26: 26. 7) Sevransky JE, Rothman RE, Hager DN, et al; VICTAS Investigators: Effect of Vitamin C, Thiamine, and Hydrocortisone on Ventilator- and Vasopressor-Free Days in Patients With Sepsis: The VICTAS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2021; 325: 742-50. 8) Chang P, Liao Y, Guan J, et al: Combined Treatment With Hydrocortisone, Vitamin C, and Thiamine for Sepsis and Septic Shock: A Randomized Controlled Trial. Chest. 2020; 158: 174-82. 9) Moskowitz A, Huang DT, Hou PC, et al; ACTS Clinical Trial Investigators: Effect of Ascorbic Acid, Corticosteroids, and Thiamine on Organ Injury in Septic Shock: The ACTS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2020; 324: 642-50. 10) Wacker DA, Burton SL, Berger JP, et al; Evaluating Vitamin C in Septic Shock: A Randomized Controlled Trial of Vitamin C Monotherapy. Crit Care Med. 2022; 50: e458-67. 11) Fowler AA 3rd, Syed AA, Knowlson S, et al: Phase I safety trial of intravenous ascorbic acid in patients with severe sepsis. J Transl Med. 2014; 12: 32. 12) Fowler AA 3rd, Truwit JD, Hite RD, et al: Effect of Vitamin C Infusion on Organ Failure and Biomarkers of Inflammation and Vascular Injury in Patients With Sepsis and Severe Acute Respiratory Failure: The CITRIS-ALI Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019; 322: 1261-70. 13) Hussein AA, Sabry NA, Abdalla MS, et al: A prospective, CQ6-2:敗血症に対して,大量ビタミンC療法 を行うか? Answer:敗血症に対して,大量ビタミンC療法を行 わないことを弱く推奨する(GRADE 2B)。 (1)背景 水溶性ビタミンであるビタミンCは,生体内で合成ができない。近年,敗血症患者に対して大量のビタミンCを投与することで,生存率を改善できる可能性が報告され1),その後多くのRCTが実施されている。一方で,大量のビタミンC投与による腎障害の発生も懸念される。以上より,ビタミンC投与の敗血症患者における益と害のバランスを明らかにすることは,敗血症診療ガイドラインに取り上げるべき重要臨床課題であると考え,J-SSCG 2020に引き続き検討した。 (2)利益と害のバランス 18編のRCTを用いたメタ解析を行った2-19)。死亡については最もエビデンスの確実性が高いものを採用する事前設定に基づき長期死亡(60日以上)をアウトカムに採用した。 長期死亡の減少を望ましい効果,急性腎障害の増加を望ましくない効果と設定して検討した。大量ビタミンC投与によって長期死亡は1,000人あたり23人増加し(15人減少~69人増加)(6RCT, 2148人)2-7),急性腎障害は26人増加した(34人減少~104人増加) (6RCT, 1846人)3, 4, 7-10)。大量ビタミンC療法によって得られる効果は少なく,効果のバランスは非介入がおそらく優れていると考えられる。 (3)容認性 ビタミンC(アスコルビン酸)2g(1アンプル)は,約85円である。多くのRCTで採用している6 g/day×4日間で計算すると総コストは約1,020円であり,その費用は容認される。仕事量も軽微な増加であり,通常の臨床業務範囲内で行える。6 g/dayで投与する場合は,保険適用外の用量となるため,患者説明ならびに各施設における承認が必要となるが,おそらく実行可能である。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では,成人の敗血症や敗血症性ショックにおいて,ビタミンCの静脈内投与を行わないことを提案している20)。
-S 1270- CQ6-3:敗血症の目標血糖値はいくつにする か? Answer:敗血症の目標血糖値を144~180 mg/dLと することを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 高血糖は感染症の増加などから予後の悪化につながる可能性がある。一方で,高血糖を是正するためにインスリンを使用した場合,鎮静下の患者では低血糖の発見が難しく,不可逆的な神経障害を招く危険がある。そのため,強化インスリン療法1)で提唱された110 mg/dL未満の低い血糖値帯と,180 mg/dL以上の高い血糖値帯を避けることが推奨されてきた。しかし, 110 mg/dLに近い血糖値と180 mg/dLに近い血糖値では,特に低血糖の発生率に差があるのではないかという疑問が生じる。そのため本CQでは,J-SSCG 2020に引き続き,血糖管理の益と害のバランスを検討するために,この領域における最大のRCTであるNICE-SUGAR研究2)をもとに110~180 mg/dLを110~144 mg/dL,144~180 mg/dLの2群に分けることとし,110 mg/dL未満,110~144 mg/dL,144~180 mg/dL,180 mg/dL以上の4つの血糖値帯に分けて検討した。しかし,一部の血糖値帯間では直接比較したRCTが存在しない,あるいは少ないためネットワークメタ解析を行うことでこの4群間の益と害のバランスを評価することとした。 (2)利益と害のバランス 36編のRCT 1-36)を用いたネットワークメタ解析を行った。望ましい効果である死亡,感染,望ましくない効果である低血糖に関する結果をTable 6-3-1に示す(結果は1,000人あたりの効果を示す)。 (3)容認性 インスリンの薬価は1週間で約800~1,000円程度でありコストに関する容認性は高い。血糖測定が頻回になった場合,看護師の労力は増加する。一般的な薬剤を用いた治療であり,どの病院においても実行可能性は高い。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では,血糖値が180 mg/dL以上となった場合にインスリン治療を開始することを推奨し,開始した後の目標値として144~180 mg/dLを提示している37)。 randomised clinical study comparing triple therapy regimen to hydrocortisone monotherapy in reducing mortality in septic shock patients. Int J Clin Pract. 2021; 75: e14376. 14) Iglesias J, Vassallo AV, Patel VV, et al: Outcomes of Metabolic Resuscitation Using Ascorbic Acid, Thiamine, and Glucocorticoids in the Early Treatment of Sepsis: The ORANGES Trial. Chest. 2020; 158: 164-73. 15) Jamshidi MR, Zeraati MR, Forouzanfar B, et al: Tahrekhani M, Motamed N. Effects of triple combination of hydrocortisone, thiamine, and Vitamin C on clinical outcome in patients with septic shock: A single-center randomized controlled trial. J Res Med Sci. 2021; 26: 47. 16) Mahmoodpoor A, Shadvar K, Sanaie S, et al: Effect of Vitamin C on mortality of critically ill patients with severe pneumonia in intensive care unit: a preliminary study. BMC Infect Dis. 2021; 21: 616. 17) Mohamed ZU, Prasannan P, Moni M, et al: Vitamin C Therapy for Routine Care in Septic Shock (ViCTOR) Trial: Effect of Intravenous Vitamin C, Thiamine, and Hydrocortisone Administration on Inpatient Mortality among Patients with Septic Shock. Indian J Crit Care Med. 2020; 24: 653-61. 18) Wani SJ, Mufti SA, Jan RA, et al: Combination of vitamin C, thiamine and hydrocortisone added to standard treatment in the management of sepsis: results from an open label randomised controlled clinical trial and a review of the literature. Infect Dis (Lond). 2020; 52: 271-8. 19) Zabet MH, Mohammadi M, Ramezani M, et al: Effect of high-dose Ascorbic acid on vasopressor’s requirement in septic shock. J Res Pharm Pract. 2016; 5: 94-100. 20) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247.
-S 1271-文 献 1) van den Berghe G, Wouters P, Weekers F, et al: Intensive insulin therapy in critically ill patients. N Engl J Med. 2001; 345: 1359-67. 2) NICE-SUGAR Study Investigators; Finfer S, Chittock DR, Su SY, et al: Intensive versus conventional glucose control in critically ill patients. N Engl J Med. 2009; 360: 1283-97. 3) COIITSS Study Investigators; Annane D, Cariou A, Maxime V, et al: Corticosteroid treatment and intensive insulin therapy for septic shock in adults: a randomized controlled trial. JAMA. 2010; 303: 341-8. 4) Arabi YM, Dabbagh OC, Tamim HM, et al: Intensive versus conventional insulin therapy: a randomized controlled trial in medical and surgical critically ill patients. Crit Care Med. 2008; 36: 3190-7. 5) Arabi YM, Tamim HM, Dhar GS, et al: Permissive underfeeding and intensive insulin therapy in critically ill patients: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2011; 93: 569-77. 6) Bilotta F, Caramia R, Cernak I, et al: Intensive insulin therapy after severe traumatic brain injury: a randomized clinical trial. Neurocrit Care. 2008; 9: 159-66. 7) Bilotta F, Caramia R, Paoloni FP, et al: Safety and efficacy of intensive insulin therapy in critical neurosurgical patients. Anesthesiology. 2009; 110: 611-9. 8) Bilotta F, Spinelli A, Giovannini F, et al: The effect of intensive insulin therapy on infection rate, vasospasm, neurologic outcome, and mortality in neurointensive care unit after intracranial aneurysm clipping in patients with acute subarachnoid hemorrhage: a randomized prospective pilot trial. J Neurosurg Anesthesiol. 2007; 19: 156-60. 9) Bland DK, Fankhanel Y, Langford E, et al: Intensive versus modified conventional control of blood glucose level in medical intensive care patients: a pilot study. Am J Crit Care. 2005; 14: 370-6. 10) Brunkhorst FM, Engel C, Bloos F, et al; German Competence Network Sepsis (SepNet): Intensive insulin therapy and pentastarch resuscitation in severe sepsis. N Engl J Med. 2008; (5)実施に関わる検討事項 インスリンによる低血糖を防ぐために,インスリン持続投与中は適切な間隔で血糖測定を行うことが重要であるが,適切な血糖測定間隔について本ガイドラインでは検討を行っていない。SSCG 2021においても,血糖測定間隔に関しては言及されていない37)。SSCG2016では,血糖値とインスリン投与量が安定するまでは1~2時間ごと,安定した後は4時間ごとの血糖測定をBest Practice Statementとして推奨していた38)。また,European Society for Clinical Nutrition and Metabolism(ESPEN)のガイドラインでは,Good Practice Pointsとして入室48時間は少なくとも4時間ごとの血糖測定を推奨し,患者の状態によってはより頻回の測定を必要とすると述べている39)。 急性期における血糖測定の方法としては,検査室における血液生化学検査,動脈血/静脈血を利用した血液ガス分析装置,簡易血糖測定器を用いた測定のほかに,毛細管血を利用した簡易血糖測定がある。観血的動脈圧ラインを留置している患者では,血液ガス分析装置などによる血糖測定が比較的容易に実施可能である。動脈圧ラインが留置されていない患者においては,毛細管血を利用した簡易血糖測定が行われることがある。毛細管血を利用した簡易血糖測定は,頻回の動脈血/静脈血採血に伴う看護師の負担や患者の苦痛を軽減できる一方で,測定誤差が大きく低血糖を見過ごすリスクがある40-41)。 Table 6-3-1 望ましい効果および望ましくない効果の各血糖帯間における絶対効果推定値 死亡感染低血糖 110 mg/dL未満に対して110~144 mg/dL 9人減少(160人減少~200人増加) 23人減少(66人減少~28人増加) 18人減少(90人減少~232人増加) 144~180 mg/dL 15人減少(53人減少~20人増加) 11人減少(43人減少~20人増加) 69人減少(79人減少~51人減少) 180 mg/dL以上5人増加(35人減少~46人増加) 45人増加(7人増加~88人増加) 122人減少(133人減少~102人減少) 110~144 mg/dLに対して144~180 mg/dL 3人減少(135人減少~83人増加) 21人増加(60人減少~124人増加) 64人減少(80人減少~5人増加) 180 mg/dL以上6人増加(57人減少~127人増加) 110人増加(23人増加~216人増加) 29人減少(35人減少~2人増加) 144~180 mg/dLに対して180 mg/dL以上18人増加(23人減少~68人増加) 30人増加(6人増加~65人増加) 1人減少(6人減少~11人増加)各群間の効果のバランスをまとめると以下のようになる。110 mg/dL未満に対して,110~144 mg/dL,144~180 mg/dL, 180 mg/dL以上のいずれも優位である。次に,110~144 mg/dLに対して,144~180 mg/dLは優位,180 mg/dL以上は優位ではない。最後に144~180 mg/dLに対して,180 mg/dL以上は優位ではない。以上より,144~180 mg/dLが最も優位といえる。
-S 1272- Approach to Glucose Control in Critically Ill Patients with Type 2 Diabetes: A Multicenter, Parallel-Group, Open-Label Randomized Clinical Trial. Am J Respir Crit Care Med. 2022; 206: 874-82. 30) Preiser JC, Devos P, Ruiz-Santana S, et al: A prospective randomised multi-centre controlled trial on tight glucose control by intensive insulin therapy in adult intensive care units: the Glucontrol study. Intensive Care Med. 2009; 35: 1738-48. 31) Santana-Santos E KP, Vieira RC, Oliveira LB, et al: Impact of intensive glycemic con-trol on acute renal injury: a randomized clinical trial. Acta Paul Enferm 2019; 32: 592-9. 32) Savioli M, Cugno M, Polli F, et al: Tight glycemic control may favor fibrinolysis in patients with sepsis. Crit Care Med. 2009; 37: 424-31. 33) Umpierrez G, Cardona S, Pasquel F, et al: Randomized Controlled Trial of Intensive Versus Conservative Glucose Control in Patients Undergoing Coronary Artery Bypass Graft Surgery: GLUCO-CABG Trial. Diabetes Care. 2015; 38: 1665-72. 34) Van den Berghe G, Wilmer A, Hermans G, et al: Intensive insulin therapy in the medical ICU. N Engl J Med. 2006; 354: 449-61. 35) Walters MR, Weir CJ, Lees KR: A randomised, controlled pilot study to investigate the potential benefit of intervention with insulin in hyperglycaemic acute ischaemic stroke patients. Cerebrovasc Dis. 2006; 22: 116-22. 36) Wang Y, Li JP, Song YL, et al: Intensive insulin therapy for preventing postoperative infection in patients with traumatic brain injury: A randomized controlled trial. Medicine (Baltimore). 2017; 96: e6458. 37) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 38) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock: 2016. Intensive Care Med. 2017; 43: 304-77. 39) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al: ESPEN guideline on clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr. 2019; 38: 48-79. 40) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 41) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 358: 125-39. 11) Bruno A, Kent TA, Coull BM, et al: Treatment of hyperglycemia in ischemic stroke (THIS): a randomized pilot trial. Stroke. 2008; 39: 384-9. 12) Cappi SB, Noritomi DT, Velasco IT, et al: Dyslipidemia: a prospective controlled randomized trial of intensive glycemic control in sepsis. Intensive Care Med. 2012; 38: 634-41. 13) Chan RP, Galas FR, Hajjar LA, et al: Intensive perioperative glucose control does not improve outcomes of patients submitted to open-heart surgery: a randomized controlled trial. Clinics (Sao Paulo). 2009; 64: 51-60. 14) Coester A, Neumann CR, Schmidt MI: Intensive insulin therapy in severe traumatic brain injury: a randomized trial. J Trauma. 2010; 68: 904-11. 15) Davies RR, Newton RW, McNeill GP, et al: Metabolic control in diabetic subjects following myocardial infarction: difficulties in improving blood glucose levels by intravenous insulin infusion. Scott Med J. 1991; 36: 74-6. 16) de Azevedo JR, de Araujo LO, da Silva WS, et al: A carbohydrate-restrictive strategy is safer and as efficient as intensive insulin therapy in critically ill patients. J Crit Care. 2010; 25: 84-9. 17) De La Rosa Gdel C, Donado JH, Restrepo AH, et al; Grupo de Investigacion en Cuidado intensivo: GICI-HPTU: Strict glycaemic control in patients hospitalised in a mixed medical and surgical intensive care unit: a randomised clinical trial. Crit Care. 2008; 12: R120. 18) Farah R, Samokhvalov A, Zviebel F, et al: Insulin therapy of hyperglycemia in intensive care. Isr Med Assoc J. 2007; 9: 140-2. 19) Giakoumidakis K, Eltheni R, Patelarou E, et al: Effects of intensive glycemic control on outcomes of cardiac surgery. Heart Lung. 2013; 42: 146-51. 20) Green DM, O’Phelan KH, Bassin SL, et al: Intensive versus conventional insulin therapy in critically ill neurologic patients. Neurocrit Care. 2010; 13: 299-306. 21) Grey NJ, Perdrizet GA: Reduction of nosocomial infections in the surgical intensive-care unit by strict glycemic control. Endocr Pract. 2004; 10 Suppl 2: 46-52. 22) Hsu CW, Sun SF, Lin SL, et al: Moderate glucose control results in less negative nitrogen balances in medical intensive care unit patients: a randomized, controlled study. Crit Care. 2012; 16: R56. 23) Iapichino G, Albicini M, Umbrello M, et al: Tight glycemic control does not affect asymmetric-dimethylarginine in septic patients. Intensive Care Med. 2008; 34: 1843-50. 24) Kalfon P, Giraudeau B, Ichai C, et al; CGAO–REA Study Group: Tight computerized versus conventional glucose control in the ICU: a randomized controlled trial. Intensive Care Med. 2014; 40: 171-81. 25) McMullin J, Brozek J, McDonald E, et al: Lowering of glucose in critical care: a randomized pilot trial. J Crit Care. 2007; 22: 112-8; discussion 118-9. 26) Mitchell I, Knight E, Gissane J, et al; Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group: A phase II randomised controlled trial of intensive insulin therapy in general intensive care patients. Crit Care Resusc. 2006; 8: 289-93. 27) Mohod V, Ganeriwal V, Bhange J: Comparison of intensive insulin therapy and conventional glucose management in patients undergoing coronary artery bypass grafting. J Anaesthesiol Clin Pharmacol. 2019; 35: 493-7. 28) Oksanen T, Skrifvars MB, Varpula T, et al: Strict versus moderate glucose control after resuscitation from ventricular fibrillation. Intensive Care Med. 2007; 33: 2093-100. 29) Poole AP, Finnis ME, Anstey J, et al; LUCID Study Investigators and the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group (ANZICS CTG): The Effect of a Liberal
-S 1273-ウォーターパッド体温管理装置を含む体表クーリン グデバイス使用により看護師の作業量は増加するが, ICUにおいては通常の診療業務範囲内である。ウォーターパッド体温管理用ジェルパッドは,全身装着の際には約10万円と高額であり(再使用禁止),適応は心肺停止蘇生後であり容認性が低い。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20218)では,発熱を伴う敗血症患者への解熱療法に関して推奨項目としての取り扱いはない。 (5)実施に関わる検討事項 著しい高体温への対応や発熱に伴う症状改善のための解熱療法の実施を制限するものではない。アセトアミノフェン投与後の血圧低下リスクが示唆されており9),投与前の循環動態が不安定な患者では厳重なモニタリングを行う10)。 文 献 1) Bernard GR, Wheeler AP, Russell JA, et al: The effects of ibuprofen on the physiology and survival of patients with sepsis. The Ibuprofen in Sepsis Study Group. N Engl J Med. 1997; 336: 912-8. 2) Niven DJ, Stelfox HT, Léger C, et al: Assessment of the safety and feasibility of administering antipyretic therapy in critically ill adults: a pilot randomized clinical trial. J Crit Care. 2013; 28: 296-302. 3) Yang YL, Liu DW, Wang XT, et al: Body temperature control in patients with refractory septic shock: too much may be harmful. Chin Med J (Engl). 2013; 126: 1809-13. 4) Young P, Saxena M, Bellomo R, et al; Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group. Acetaminophen for Fever in Critically Ill Patients with Suspected Infection. N Engl J Med. 2015; 373: 2215-24. 5) Janz DR, Bastarache JA, Rice TW, et al; Acetaminophen for the Reduction of Oxidative Injury in Severe Sepsis Study Group: Randomized, placebo-controlled trial of acetaminophen for the reduction of oxidative injury in severe sepsis: the Acetaminophen for the Reduction of Oxidative Injury in Severe Sepsis trial. Crit Care Med. 2015; 43: 534-41. 6) Vasikasin V, Rojdumrongrattana T, Chuerboonchai W, et al: Effect of standard dose paracetamol versus placebo as antipyretic therapy on liver injury in adult dengue infection: a multicentre randomised controlled trial. Lancet Glob Health. 2019; 7: e664-70. 7) Haupt MT, Jastremski MS, Clemmer TP, et al: Effect of ibuprofen in patients with severe sepsis: a randomized, double-blind, multicenter study. The Ibuprofen Study Group. Crit Care Med. 1991; 19: 1339-47. 8) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 9) Cantais A, Schnell D, Vincent F, et al: Acetaminophen-Induced Changes in Systemic Blood Pressure in Critically Ill Patients: Results of a Multicenter Cohort Study. Crit Care Med. 2016; 44: 2192-8. 10) Maxwell EN, Johnson B, Cammilleri J, et al: Intravenous Acetaminophen-Induced Hypotension: A Review of the Current Literature. Ann Pharmacother. 2019; 53: 1033-41. CQ6-4:発熱を伴う敗血症に解熱療法を行うか? Answer:発熱を伴う敗血症に対して,解熱療法を行 わないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 敗血症患者では発熱は頻繁に生じる。発熱は,その原因検索のための診断や治療法の変更へとつながる徴候であるとともに,患者不快感,呼吸筋および心筋を含む全身の酸素需要増大,中枢神経障害などを生じる。一方,発熱は抗体産生増加,T細胞活性化,サイトカイン合成促進,好中球およびマクロファージ活性化から,病原微生物の除去促進に関連する防御反応でもある。解熱療法は不快感,酸素需要増大の軽減,中枢神経障害予防を目的に頻繁に実施されているが,解熱療法により前記の防御反応が抑制される可能性もある。このように,解熱療法の是非について有効性・有害性の評価は定まっていない。そのため,発熱を伴う敗血症患者に対する解熱療法の益と害のバランスを明らかにすることは,敗血症診療ガイドラインで検討するべき重要臨床課題であると考え,J-SSCG 2020に引き続き検討した。 (2)利益と害のバランス アセトアミノフェンを主とする薬物療法,体外クーリング,もしくはそれらの組み合わせを用いた解熱療法と非介入群とを比較した7編のRCTを用いたメタ解析を行った1-7)。6論文が薬物療法1, 2, 4-7)(うち1論文は体表クーリングの併用あり2)),1論文が体表クーリングを用いた介入3)であった。望ましい効果として28または30日死亡の減少を,望ましくない効果としてあらゆる重篤な副作用(消化管出血,肝機能障害)と感染性合併症を設定した。解熱療法による28または30日死亡は1,000人あたり43人増加(48人減少~ 174人増加)(4RCT,1,236人)1-4)。また,あらゆる重篤な副作用は1人増加(39人減少~74人増加)(4RCT, 1,312人)1, 4-6),感染性合併症は28人減少(70人減少~ 54人増加)(3RCT,510人)1, 2, 7)であった。解熱療法によって得られる効果は限定的であり,効果のバランスは「非介入がおそらく優れている」と考えられる。 (3)容認性 アセトアミノフェン静注薬(1,000 mg)の薬価は304円と費用負担は少なく,患者・家族の視点からは容認される。また,薬物療法に要する仕事量は軽微であり,通常の診療業務範囲内である。
-S 1274- 瘍薬の使用を提案している(弱い推奨,中等度の質のエビデンス)34)。 (5)実施に関わる検討事項 今回は集中治療患者に対する抗潰瘍薬効果を検証した結果を外挿し敗血症患者への推奨を決定した点に注意する。なお,ICUで開始された抗潰瘍薬がICU退室後や病院退院後も理由なく継続されていることがある35, 36)。いつまで抗潰瘍薬の投与を続けるかについては,症例ごとに検討する。 文 献 1) Apte NM, Karnad DR, Medhekar TP, et al: Gastric colonization and pneumonia in intubated critically ill patients receiving stress ulcer prophylaxis: a randomized, controlled trial. Crit Care Med. 1992; 20: 590-3. 2) Basso N, Bagarani M, Materia A, et al: Cimetidine and antacid prophylaxis of acute upper gastrointestinal bleeding in high risk patients. Controlled, randomized trial. Am J Surg. 1981; 141: 339-41. 3) Ben-Menachem T, Fogel R, Patel RV, et al: Prophylaxis for stressrelated gastric hemorrhage in the medical intensive care unit. A randomized, controlled, single-blind study. Ann Intern Med. 1994; 121: 568-75. 4) Burgess P, Larson GM, Davidson P, et al: Effect of ranitidine on intragastric pH and stress-related upper gastrointestinal bleeding in patients with severe head injury. Dig Dis Sci. 1995; 40: 645-50. 5) Chan KH, Lai EC, Tuen H, et al: Prospective double-blind placebo-controlled randomized trial on the use of ranitidine in preventing postoperative gastroduodenal complications in high-risk neurosurgical patients. J Neurosurg. 1995; 82: 413-7. 6) Darlong V, Jayalakhsmi TS, Kaul HL, et al: Stress ulcer prophylaxis in patients on ventilator. Trop Gastroenterol. 2003; 24: 124-8. 7) Eddleston JM, Pearson RC, Holland J, et al: Prospective endoscopic study of stress erosions and ulcers in critically ill adult patients treated with either sucralfate or placebo. Crit Care Med. 1994; 22: 1949-54. 8) El-Kersh K, Jalil B, McClave SA, et al: Enteral nutrition as stress ulcer prophylaxis in critically ill patients: A randomized controlled exploratory study. J Crit Care. 2018; 43: 108-13. 9) Granholm A, Krag M, Marker S, et al: Predictors of gastrointestinal bleeding in adult ICU patients in the SUP-ICU trial. Acta Anaesthesiol Scand. 2021; 65: 792-800. 10) Groll A, Simon JB, Wigle RD, et al: Cimetidine prophylaxis for gastrointestinal bleeding in an intensive care unit. Gut. 1986; 27: 135-40. 11) Gündoğan K, Karakoc E, Teke T, et al: Effects of oral/enteral nutrition alone versus plus pantoprazole on gastrointestinal bleeding in critically ill patients with low risk factor: a multicenter, randomized controlled trial. Turk J Med Sci. 2020; 50: 776-83. 12) Halloran LG, Zfass AM, Gayle WE, et al: Prevention of acute gastrointestinal complications after severe head injury: a controlled trial of cimetidine prophylaxis. Am J Surg. 1980; 139: 44-8. 13) Hanisch EW, Encke A, Naujoks F, et al: A randomized, doubleblind trial for stress ulcer prophylaxis shows no evidence of increased pneumonia. Am J Surg. 1998; 176: 453-7. 14)Hastings PR, Skillman JJ, Bushnell LS, et al: Antacid titration in the prevention of acute gastrointestinal bleeding: a controlled, CQ6-5:敗血症に消化管出血の予防を目的とし た抗潰瘍薬の投与を行うか? Answer:敗血症に対して,予防的抗潰瘍薬投与を行 うことを弱く推奨する(GRADE 2D)。 (1)背景 集中治療患者においては,ストレス潰瘍から消化管出血をきたす可能性がある。ストレス潰瘍予防には抗潰瘍薬が投与される。一方で,抗潰瘍薬投与の副作用として肺炎,クロストリジオイデス・ディフィシル感染症などが懸念される。以上より,敗血症患者に対する抗潰瘍薬投与の益と害のバランスを明らかにすることは,敗血症診療ガイドラインで検討するべき重要臨床課題であると考え,J-SSCG 2020に引き続き検討した。 (2)利益と害のバランス 32編のRCTに加えて1編のアウトカムの追加報告論文を含めたメタ解析を行った1-33)。「消化管出血」(RCT 30編,n=6,866)1-30),「死亡」(RCT14編,n= 5,065)1, 3, 5, 8, 10, 15, 16, 18, 19, 24, 26, 28, 31, 32),「肺炎」(RCT 15編,n=5,146)1, 3, 5, 7, 13, 15, 16, 18-22, 28, 31, 33),「重篤な副作用」(RCT 7編,n=4,143)5, 15, 16, 23, 25, 28, 31),「クロストリジオイデス感染症」(RCT 3編,n=3,607)8, 28, 31)の5つのアウトカムで評価した。望ましい効果は消化管出血が1,000人あたり66人減少(84人減少~43人減少),クロストリジオイデス感染症が4人減少(9人減少~5人増加)であった。一方,死亡は10人増加(13人減少~36人増加),肺炎は8人増加(12人減少~29人増加),重篤な副作用は5人増加(6人減少~20人増加)であった。それぞれのアウトカムの相対的価値を考慮すると,効果のバランスは「介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 抗潰瘍薬は数十年前から集中治療領域含め広く臨床現場で使用されている。ほとんどの抗潰瘍薬はその他の薬と比較し薬価は低い。そのため患者・家族の視点からおそらく許容できる。また,医療者の仕事量増加はわずかである。以上から,敗血症患者に対する抗潰瘍薬投与は容認される。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 2021では,敗血症または敗血症性ショックの成人で,消化管出血の危険因子を有する場合は,抗潰
-S 1275- 31) Krag M, Marker S, Perner A, et al: Pantoprazole in Patients at Risk for Gastrointestinal Bleeding in the ICU. N Engl J Med. 2018; 379: 2199-208. 32) Rixen D, Livingston DH, Loder P, et al: Ranitidine improves lymphocyte function after severe head injury: results of a randomized, double-blind study. Crit Care Med. 1996; 24: 1787-92. 33) Cloud ML, Offen W: Continuous infusions of nizatidine are safe and effective in the treatment of intensive care unit patients at risk for stress gastritis. The Nizatidine Intensive Care Unit Study Group. Scand J Gastroenterol Suppl. 1994; 206: 29-34. 34) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 35) Blackett JW, Faye AS, Phipps M, et al: Prevalence and Risk Factors for Inappropriate Continuation of Proton Pump Inhibitors After Discharge From the Intensive Care Unit. Mayo Clin Proc. 2021; 96: 2550-60. 36) Cascone AE, Sullivan J, Ackerbauer K, et al: Pharmacist-Initiated De-Prescribing Efforts Reduce Inappropriate Continuation of Acid-Suppression Therapy Initiated in the ICU. Am J Med. 2023; 136: 186-92. randomized trial in 100 critically ill patients. N Engl J Med. 1978; 298: 1041-5. 15) Kantorova I, Svoboda P, Scheer P, et al: Stress ulcer prophylaxis in critically ill patients: a randomized controlled trial. Hepatogastroenterology. 2004; 51: 757-61. 16) Karlstadt RG, Iberti TJ, Silverstein J, et al: Comparison of Cimetidine and Placebo for the Prophylaxis of Upper Gastrointestinal Bleeding Due to Stress-related Gastric Mucosal Damage in the Intensive Care Unit. J Intensive Care Med. 1990; 5: 26-32. 17) Kaushal S, Midha V, Sood A, et al: A comparative study of the effects of famotidine and sucralfate in prevention of upper gastrointestinal bleeding in patients of head injury. Indian J Pharmacology. 2000; 32: 246. 18) Lin CC, Hsu YL, Chung CS, et al: Stress ulcer prophylaxis in patients being weaned from the ventilator in a respiratory care center: A randomized control trial. J Formos Med Assoc. 2016; 115: 19-24. 19) Martin LF, Booth FV, Karlstadt RG, et al: Continuous intravenous cimetidine decreases stress-related upper gastrointestinal hemorrhage without promoting pneumonia. Crit Care Med. 1993; 21: 19-30. 20) Metz CA, Livingston DH, Smith JS, et al: Impact of multiple risk factors and ranitidine prophylaxis on the development of stressrelated upper gastrointestinal bleeding: a prospective, multicenter, double-blind, randomized trial. The Ranitidine Head Injury Study Group. Crit Care Med. 1993; 21: 1844-9. 21) Muzlovič I, Štubljar D: Stress ulcer prophylaxis as a risk factor for tracheal colonization and hospital-acquired pneumonia in intensive care patients: impact on latency time for pneumonia. Acta Clin Croat. 2019; 58: 72-86. 22) Nourian A, Mohammadi M, Beigmohammadi MT, et al: Comparing efficacy of enteral nutrition plus ranitidine and enteral nutrition alone as stress ulcer prophylaxis. J Comp Eff Res. 2018; 7: 493-501. 23) 大塚敏文, 八木義弘, 島崎修次, 他: 脳血管障害,頭部外傷による胃酸分泌亢進に対するファモチジン注の抑制効果の検討 プラセボを対照とした二重盲検比較試験. 診療と新薬. 1991; 28: 1-12. 24) Pinilla JC, Oleniuk FH, Reed D, et al: Does antacid prophylaxis prevent upper gastrointestinal bleeding in critically ill patients? Crit Care Med. 1985; 13: 646-50. 25) Powell H, Morgan M, Li S, et al: Inhibition of gastric acid secretion in the intensive care unit after coronary artery bypass graft. A pilot control study of intravenous omeprazole by bolus and infusion, ranitidine and placebo. Theoretical surgery. 1993; 8: 125-30. 26) Reusser P, Gyr K, Scheidegger D, et al: Prospective endoscopic study of stress erosions and ulcers in critically ill neurosurgical patients: current incidence and effect of acid-reducing prophylaxis. Crit Care Med. 1990; 18: 270-4. 27) Ruiz-Santana S, Ortiz E, Gonzalez B, et al: Stress-induced gastroduodenal lesions and total parenteral nutrition in critically ill patients: frequency, complications, and the value of prophylactic treatment. A prospective, randomized study. Crit Care Med. 1991; 19: 887-91. 28) Selvanderan SP, Summers MJ, Finnis ME, et al: Pantoprazole or Placebo for Stress Ulcer Prophylaxis (POP-UP): Randomized Double-Blind Exploratory Study. Crit Care Med. 2016; 44: 1842-50. 29) van den Berg B, van Blankenstein M: Prevention of stress-induced upper gastrointestinal bleeding by cimetidine in patients on assisted ventilation. Digestion. 1985; 31: 1-8. 30) Zinner MJ, Zuidema GD, Smith PL, et al: The prevention of upper gastrointestinal tract bleeding in patients in an intensive care unit. Surg Gynecol Obstet. 1981; 153: 214-20.
-S 1276- く,低体温の重症度と随伴症状の重篤度により,復温による益と害のバランスが異なる可能性がある。 復温の手段として,室内温度を高く設定することや,加温輸液,エアーブランケット,電気毛布などが多くの施設で利用可能である4)。ウォーターパッド体温管理用装置は高額で,適応は心肺停止蘇生後の患者のみである。また,敗血症患者の低体温は多くの場合, 34°Cを下回ることはなく,6時間程度で自然に復温したとする報告もある11)。 低体温を呈する敗血症患者の復温を行う場合には,低体温の重症度と復温に伴う合併症の重篤度を見極め,患者ごとに判断する。 文 献 1) Rumbus Z, Matics R, Hegyi P, et al: Fever Is Associated with Reduced, Hypothermia with Increased Mortality in Septic Patients: A Meta-Analysis of Clinical Trials. PLoS One. 2017; 12: e0170152. 2) Kushimoto S, Abe T, Ogura H, et al; JAAM Focused Outcome Research on Emergency Care for Acute respiratory distress syndrome, Sepsis and Trauma (FORECAST) Group: Impact of Body Temperature Abnormalities on the Implementation of Sepsis Bundles and Outcomes in Patients With Severe Sepsis: A Retrospective Sub-Analysis of the Focused Outcome Research on Emergency Care for Acute Respiratory Distress Syndrome, Sepsis and Trauma Study. Crit Care Med. 2019; 47: 691-9. 3) Drewry AM, Fuller BM, Skrupky LP, et al: The presence of hypothermia within 24 hours of sepsis diagnosis predicts persistent lymphopenia. Crit Care Med. 2015; 43: 1165-9. 4) Brown DJ, Brugger H, Boyd J, et al: Accidental hypothermia. N Engl J Med. 2012; 367: 1930-8. 5) Epstein E, Anna K: Accidental hypothermia. BMJ. 2006; 332: 706-9. 6) Wolberg AS, Meng ZH, Monroe DM 3rd, et al: A systematic evaluation of the effect of temperature on coagulation enzyme activity and platelet function. J Trauma. 2004; 56: 1221-8. 7) Young PJ, Bellomo R Fever in sepsis: is it cool to be hot?. Crit Care. 2014; 18: 109. 8) Harmon MBA, Pelleboer I, Steiner AA, et al: Opinions and Management of Hypothermic Sepsis: Results from an Online Survey. Ther Hypothermia Temp Manag. 2020; 10: 102-5. 9) Paal P, Gordon L, Strapazzon G, et al: Accidental hypothermia-an update: The content of this review is endorsed by the International Commission for Mountain Emergency Medicine (ICAR MEDCOM). Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2016; 24: 111. 10) Watanabe M, Matsuyama T, Morita S, et al: Impact of rewarming rate on the mortality of patients with accidental hypothermia: analysis of data from the J-Point registry. Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2019; 27: 105. 11) Fonseca MT, Rodrigues AC, Cezar LC, et al: Spontaneous hypothermia in human sepsis is a transient, self-limiting, and nonterminal response. J Appl Physiol (1985). 2016; 120: 1394-401. CQ6-6 : 低体温を伴う患者の体温管理はどのよ うにするか? Answer: 低体温(深部体温<35°C)を呈する敗血症 において,低体温に伴う循環障害や凝固異常などを認めるときには,復温療法を行うほうがよいとする意見がある。ただし,復温により末梢血管の拡張が生じ,血圧低下などの新たな有害事象が発生する可能性があるため注意が必要である(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 低体温は敗血症患者に生じる体温異常のひとつで,低体温を伴う敗血症患者の予後は不良であることが報告されている。低体温は感染防御機能の低下と関連があり,心機能低下,不整脈,電解質異常,凝固障害などの合併症を引き起こす可能性がある。低体温を伴う敗血症患者の転帰改善を期待し,復温療法を行う施設もあるが,その有効性と実施基準について明確な指針は存在しないため,本ガイドラインの臨床疑問のひとつとして取り上げた。 (2)解説 低体温は敗血症患者において独立した予後不良因子である1)。日本の敗血症患者を対象とした多施設観察研究では,ICU入室時に11.1%の患者で36°C未満の低体温を伴っていた2)。ICU入室時の体温が38°Cを超える患者を対照とした低体温(36°C未満)患者の病院死亡非調整オッズ比は1.76(95% CI: 1.13~2.73)であり,低体温を呈した敗血症患者の予後は不良であることが示されている2)。 低体温(深部体温<35 °C)では,IL-6やtumor necrosis factor alpha(TNF-α)などの炎症性サイトカインの調節異常や,リンパ球数の低下から免疫機能が低下する可能性がある3)。また,心機能低下,不整脈,寒冷利尿,電解質異常,凝固異常などを生じ,重篤な場合には血行動態が不安定になり出血傾向が出現することがある4-6)。これらの重篤な合併症があるため,低体温時の復温が有用な方法かもしれないとの考えもある7)。Harmonらが実施したアンケート調査では, 96%が自施設において低体温を伴う敗血症患者の管理に関するプロトコルはないと回答したものの,62%が積極的に加温していると回答した8)。ただし,復温の際には,末梢血管拡張による血圧低下,酸素需給バランスの変化,電解質異常など新たな有害事象に注意する9, 10)。 低体温を伴う敗血症患者の復温に関するRCTはな
-S 1277- うな重症患者に気管挿管を行う場合は,陽圧換気に移行すること自体が循環虚脱など状態悪化の引き金となる2, 7)。敗血症患者の気管挿管では,頸椎可動性制限,開口障害,下顎の前方移動制限など気管挿管で注意が必要な解剖学的な因子4)に加えて,生理学的異常も考慮する7)。気管挿管に関連する合併症を軽減するには,気道の評価,気管挿管前の十分な酸素化,薬剤や気管挿管デバイスの準備などが重要となる2)。 気管挿管前の酸素化はフェイスマスク,経鼻高流量酸素療法,非侵襲的陽圧換気などを用いて行い,機能的残気量と酸素貯蔵量を増加することで,無呼吸時の酸素飽和度の低下を防ぐことを目的としている。経鼻高流量酸素療法は挿管操作中も無呼吸酸素化を利用した酸素供給ができ8),非侵襲的陽圧換気は特に肥満患者において肺胞虚脱と無気肺を予防できる9)。 重症患者では気管挿管時の鎮痛薬,鎮静薬の必要量が減少している可能性があり,それらの使用による気管挿管直後の循環不全に注意する10)。フェンタニルは交感神経系刺激による心血管系の影響を軽減できるが,挿管後の低血圧と関連している11)。ミダゾラムやプロポフォールは,交感神経抑制作用により心筋抑制や血管抵抗の低下をもたらすが,循環動態への影響はミダゾラムの方が少ない12)。ただし,プロポフォールよりもミダゾラムは作用発現が遅い12)。ケタミンはカテコールアミンの放出により,心筋抑制など循環動態に対する影響が他の薬剤よりも小さいが12),重症患者ではカテコールアミン放出作用が少なくなる可能性もある12)。気管挿管に伴う血行動態の悪化を減らすためには,補液と早期からの血管作動薬の併用が有効との報告もある13)。 また,初回挿管の失敗は処置に伴う合併症や死亡の要因となる13)。MACOCHAスコアはICUでの挿管困難を予測するスコアリングシステムであり(Table 6-7-2)14),3点以下において安全に気管挿管が可能で CQ6-7:敗血症ではどのように気管挿管を行うか? Answer:敗血症において気管挿管が必要な患者は,気道閉塞や低酸素血症だけではなく,ショックや酸素需給バランス障害などが考えられる。気管挿管の際に使用する鎮静薬や鎮痛薬によって循環変動を来す可能性があるため,循環作動薬の準備など適切な循環管理が求められる(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 敗血症性ショックの40~85%の患者では,さまざまな理由で気管挿管や人工呼吸が必要になる1)。手術室外での重症患者の気管挿管では45.2%で合併症が発生したとの報告がある2)。しかし,各国の敗血症ガイドラインや気管挿管ガイドラインでは,敗血症患者における挿管の適応や方法について十分な解説はされていない。適切に気管挿管の適応を判断し,安全に気管挿管を行うことは敗血症診療における重要課題であり,本ガイドラインの臨床疑問のひとつとして取り上げた。 (2)解説 気管挿管の適応は,気道の問題と肺におけるガス交換の問題に大別される3, 4)(Table 6-7-1)。さらに,ショック状態では,機械換気を行うことにより重要臓器への酸素供給を維持できることが示唆されており5),ショックや循環不全など酸素必要量に対して供給量が不足する場合にも適応になる。経鼻高流量酸素療法や非侵襲的陽圧換気により酸素化を行っている場合,気管挿管への移行が遅れることは予後の悪化につながる6)。高濃度酸素を要する場合や呼吸状態が増悪傾向にある場合などは,経鼻高流量酸素療法や非侵襲的陽圧換気から気管挿管への移行を考慮する。 敗血症では低酸素血症,低血圧,代謝性アシドーシスといった生理学的異常を認めることが多く,このよ Table 6-7-1 気管挿管の適応 気道の問題・意識レベル低下に伴う舌根沈下・咽頭や喉頭の浮腫などによる気道閉塞・意識レベル低下や昏睡による咽頭反射消失・ 痰や気道分泌物の制御が困難などによる誤嚥のリスクが高 い場合ガス交換の問題・ 肺炎やARDSなどに伴う低酸素血症や高二酸化炭素血症に よる呼吸不全酸素供給量の問題・ショック・循環不全Table 6-7-2 MACOCHAスコア点数 患者関連因子MallampatiスコアIIIまたはIV閉塞性睡眠時無呼吸症候群頸椎可動性制限3 cm未満の開口障害5 2 1 1病態関連因子昏睡(Glasgow Coma Scale<8)重度低酸素血症(SpO2<80%) 1 1術者因子非麻酔科医1 (文献14をもとに作成)
-S 1278- FRQ6-1:劇症型溶血性レンサ球菌感染症に対し て,IVIG投与を行うか? (1)背景 敗血症は,病原微生物の種類に依存しない重症感染症であるが,特定の感染症では病原菌が産生する毒素により特有の重症病態を呈する。劇症型溶血性レンサ球菌感染症(severe invasive streptococcal infection,またはstreptococcal toxic shock syndrome: STSS)の発症には,主にA群溶血性レンサ球菌が産生する外毒素が関与するとされ,毒素中和作用やサイトカイン産生抑制作用を持つIVIGの投与が病態を改善する可能性が指摘されている1)。STSSの病状は急激に進行し,血圧低下の他に急性呼吸窮迫症候群,腎障害,肝障害,凝固異常などの多臓器不全を来す。死亡率は40%前後と高く2, 3),そのほとんどが発症後数日以内の死亡である4)。そのため,治療成績を向上させる介入法の確立は急務である。 (2)解説 STSSにおけるIVIGの有用性に関し,1編のRCT 5)および複数の観察研究を対象に解析した系統的レビューでは,IVIG投与は予後改善に関連することが示された6, 7)。J-SSCG 2020においても,成人のSTSS症例に限定し解析を行い同様の結果を得た8, 9)。いずれの解析においてもエビデンスの確実性は低いが, IVIGの有用性に関する理論的な背景と合わせて, STSSにおける補助療法として期待する意見がある。 しかし,前述の系統的レビューのエビデンスの確実性が低いこと,中和抗体の力価がIVIG製剤ごとに異なることなどから,IVIG投与に否定的な意見もある2)。また,IVIG投与量に関して,唯一のRCTでは治療開始日に1 g/kg,2日目と3日目に0.5 g/kgを投与していたが5),明確な投与プロトコルは存在しない。近年,1回あたり25 gのIVIG投与が毒素の中和に有効であることが報告され,治療開始日0.5 g/kg,2日目と3日目に25 gを投与するプロトコルが提案されている10)。しかし,いずれにしても日本における保険適用量(IVIG 5 g/dayを3日間)を大幅に超過している。 STSSは急速に進行する致死的疾患であることや稀な疾患であること,また倫理的な配慮などからRCTで有用性を証明することは今後も困難と予想される。疾患の特異性を考慮すると,質の高い観察研究を用いたIVIGの有用性および有害性の評価が現実的かもしれない11, 12)。 ある13)。挿管成功率の向上や挿管困難の発生を減らす方法としてスタイレットの使用15),ビデオ喉頭鏡の使用,臨床シミュレーションや実臨床におけるビデオ喉頭鏡の使用訓練13, 16)がある。敗血症患者の気管挿管を安全かつ確実に行うためには,気管挿管を専門とする医師(麻酔科医,救急科医,集中治療科医)の協力を得ることも重要である。 文 献 1) Delbove A, Darreau C, Hamel JF, et al: Impact of endotracheal intubation on septic shock outcome: A post hoc analysis of the SEPSISPAM trial. J Crit Care. 2015; 30: 1174-8. 2) Karamchandani K, Wheelwright J, Yang AL, et al: Emergency Airway Management Outside the Operating Room: Current Evidence and Management Strategies. Anesth Analg. 2021; 133: 648-62. 3) Admass BA, Endalew NS, Tawye HY, et al: Evidence-based airway management protocol for a critical ill patient in medical intensive care unit: Systematic review. Ann Med Surg (Lond). 2022; 80: 104284. 4) 日本集中治療医学会教育委員会: 日本集中治療医学会専門医テキスト −第3版−. 東京, 真興交易, 2019. 5) Manthous CA, Hall JB, Kushner R, Schmidt GA, et al: The effect of mechanical ventilation on oxygen consumption in critically ill patients. Am J Respir Crit Care Med. 1995; 151: 210-4. 6) Roca O, Caralt B, Messika J, et al: An Index Combining Respiratory Rate and Oxygenation to Predict Outcome of Nasal High-Flow Therapy. Am J Respir Crit Care Med. 2019; 199: 1368-76. 7) Mosier JM, Joshi R, Hypes C, et al: The Physiologically Difficult Airway. West J Emerg Med. 2015; 16: 1109-17. 8) Papazian L, Corley A, Hess D, et al: Use of high-flow nasal cannula oxygenation in ICU adults: a narrative review. Intensive Care Med. 2016; 42: 1336-49. 9) Pépin JL, Timsit JF, Tamisier R, et al: Prevention and care of respiratory failure in obese patients. Lancet Respir Med. 2016; 4: 407-18. 10) Sklar MC, Detsky ME: Emergent airway management of the critically ill patient: current opinion in critical care. Curr Opin Crit Care. 2019; 25: 597-604. 11) Takahashi J, Goto T, Okamoto H, et al; Japanese Emergency Medicine Network Investigators. Association of fentanyl use in rapid sequence intubation with post-intubation hypotension. Am J Emerg Med. 2018; 36: 2044-49. 12) Carsetti A, Vitali E, Pesaresi L, et al: Anesthetic management of patients with sepsis/septic shock. Front Med (Lausanne). 2023; 10: 1150124. 13) De Jong A, Myatra SN, Roca O, et al: How to improve intubation in the intensive care unit. Update on knowledge and devices. Intensive Care Med. 2022; 48: 1287-98. 14) De Jong A, Molinari N, Terzi N, et al; AzuRéa Network for the Frida-Réa Study Group: Early identification of patients at risk for difficult intubation in the intensive care unit: development and validation of the MACOCHA score in a multicenter cohort study. Am J Respir Crit Care Med. 2013; 187: 832-9. 15) Jaber S, Rollé A, Godet T, et al; STYLETO trial group: Effect of the use of an endotracheal tube and stylet versus an endotracheal tube alone on first-attempt intubation success: a multicentre, randomised clinical trial in 999 patients. Intensive Care Med. 2021; 47: 653-64. 16) Amalric M, Larcher R, Brunot V, et al: Impact of Videolaryngoscopy Expertise on First-Attempt Intubation Success in Critically Ill Patients. Crit Care Med. 2020; 48: e889-96.
-S 1279- 文 献 1) Sriskandan S, Ferguson M, Elliot V, et al: Human intravenous immunoglobulin for experimental streptococcal toxic shock: bacterial clearance and modulation of inflammation. J Antimicrob Chemother. 2006; 58: 117-24. 2) Schmitz M, Roux X, Huttner B, et al: Streptococcal toxic shock syndrome in the intensive care unit. Ann Intensive Care. 2018; 8: 88. 3) Nelson GE, Pondo T, Toews KA, et al: Epidemiology of Invasive Group A Streptococcal Infections in the United States, 2005-2012. Clin Infect Dis. 2016; 63: 478-86. 4) Lamagni TL, Neal S, Keshishian C, et al: Predictors of death after severe Streptococcus pyogenes infection. Emerg Infect Dis. 2009; 15: 1304-7. 5) Darenberg J, Ihendyane N, Sjölin J, et al; StreptIg Study Group: Intravenous immunoglobulin G therapy in streptococcal toxic shock syndrome: a European randomized, double-blind, placebocontrolled trial. Clin Infect Dis. 2003; 37: 333-40. 6) Parks T, Wilson C, Curtis N, et al: Polyspecific Intravenous Immunoglobulin in Clindamycin-treated Patients With Streptococcal Toxic Shock Syndrome: A Systematic Review and Meta-analysis. Clin Infect Dis. 2018; 67: 1434-6. 7) Bartoszko JJ, Elias Z, Rudziak P, et al: Prognostic factors for streptococcal toxic shock syndrome: systematic review and metaanalysis. BMJ Open. 2022; 12: e063023. 8) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 9) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 10) Bergsten H, Madsen MB, Bergey F, et al; INFECT Study Group: Correlation Between Immunoglobulin Dose Administered and Plasma Neutralization of Streptococcal Superantigens in Patients With Necrotizing Soft Tissue Infections. Clin Infect Dis. 2020; 71: 1772-75. 11) Arends JE, Harkisoen S: Efficacy of polyspecific intravenous immunoglobulin therapy in streptococcal toxic shock syndrome. Clin Infect Dis. 2015; 60: 324. 12) Matthews AA, Danaei G, Islam N, et al: Target trial emulation: applying principles of randomised trials to observational studies. BMJ. 2022; 378: e071108.
-S 1280- 敗血症(あるいは疑い) PICSのリスク因子があるか? CQ7-1 PICSの予防に早期リハビリテーションを行うか?モニタリング継続 CQ7-2 ICU-AWの予防に神経筋電気刺激を行うか? FRQ7-1 PICSの予防にABCDEFGHバンドルを行うか? Yes No CQ7-3 ICU退室後に身体機能・認知機能・精神機能改善のためのフォローアップを行うか? CQ7-4 退院後に身体機能・認知機能・精神機能改善のためのリハビリテーションを行うか? ICU滞在中 診療フロー
-S 1281- (3)容認性 患者が負担する費用や,必要資源量は無視できるほどの増加であるため,早期リハビリテーションという選択肢は患者や医療従事者にとって妥当と判断した。集中治療領域での経験がある医師,看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの医療従事者によって実行可能であるが,安全性や実践内容を担保するための早期リハビリテーションの基準やプロトコルなどの整備が必要である。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 なし。 (5)実施に関わる検討事項 重症患者全般における標準治療として早期リハビリテーションを行うことが望まれるが,リハビリテーション実施は酸素需要の増加をもたらすため,呼吸不全,循環不全が存在する患者では,その実施の是非に注意する。また,全身管理が優先される場合には,早期離床や早期からの積極的な運動が禁忌となることもある。日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会が作成している「重症患者の離床と運動療法の開始基準案や中止基準案」などに照らし合わせて,呼吸状態,循環動態,自覚症状などの変化に細心の注意を払いながら実施する8)。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Morris PE, Berry MJ, Files DC, et al: Standardized Rehabilitation and Hospital Length of Stay Among Patients With Acute Respiratory Failure: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016; 315: 2694-702. 4) Schweickert WD, Pohlman MC, Pohlman AS, et al: Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial. Lancet. 2009; 373: 1874-82. 5) Hodgson CL, Bailey M, Bellomo R, et al: A Binational Multicenter Pilot Feasibility Randomized Controlled Trial of Early Goal-Directed Mobilization in the ICU. Crit Care Med. 2016; 44: 1145-52. 6) Schaller SJ, Anstey M, Blobner M, et al; International Early SOMS-guided Mobilization Research Initiative: Early, goaldirected mobilisation in the surgical intensive care unit: a randomised controlled trial. Lancet. 2016; 388: 1377-88. 7) Brummel NE, Girard TD, Ely EW, et al: Feasibility and safety of early combined cognitive and physical therapy for critically ill medical and surgical patients: the Activity and Cognitive Therapy in ICU (ACT-ICU) trial. Intensive Care Med. 2014; 40: 370-9. 8) 卯野木健, 林田敬, 河合佑亮, 他: 重症患者リハビリテーショ CQ7-1:PICSの予防に早期リハビリテーション を行うか? Answer:PICSの予防に早期リハビリテーションを行 うことを弱く推奨する(GRADE 2D)。 (1)背景 ICU患者における早期リハビリテーションは,患者の筋肉量増加,運動機能改善,早期離床の促進,ADL改善などへの効果が数多く報告されており,集中治療後症候群(post-intensive care syndrome: PICS)を予防しうる。しかし,敗血症患者に対する早期リハビリテーションの有効性・有害性の評価は定まっておらず,臨床現場でもその定義・種類・開始時期・実施期間などについては一定の見解を得られていない。J-SSCG 20201, 2)では,敗血症患者あるいは重症患者に対して, PICS の予防に早期リハビリテーションを行うことが弱く推奨された。その後の知見を踏まえて本CQでは早期リハビリテーションのPICS発症予防効果やQOLや身体機能に与える有用性について検証した。 (2)効果のバランス 5編のRCTを用いたメタ解析を行った3-7)。退院以降の筋力は標準化平均差で0.16増加(0.08減少~0.40増加)*1し,退院以降の認知機能は平均差 0.6増加(0.25減少~1.45増加)*2し,退院以降の精神機能は平均差 0.3増加(4.92減少~5.52増加)*3し,退院以降のADLは標準化平均差で0.57増加(0.1増加~1.05増加)*1した。あらゆる有害事象は1,000人あたり7人減少(58人減少~124人増加)した。一方,短期死亡は11人増加(36人減少~77人増加)し,望ましくない効果と考えた。 以上より,介入優位であるが,短期死亡の重要度を考慮し,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 *1 コーエンの効果サイズの解釈では,標準化平均差0.2は小さい効果を,0.5は中等度の効果を表す。*2 認知機能の評価はMini-Mental State Examination (MMSE)が用いられている。MMSEのスコアは最小値が0,最大値が30であり,認知症が疑われるカットオフ値は23以下である。*3 精神機能の評価にはHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)が用いられている。HADSのスコアは最小値が0,最大値が21のスコアであり,抑うつが疑われるカットオフ値は8以上である。
-S 1282- CQ7-2:ICU-AWの予防に神経筋電気刺激を行 うか? Answer:ICU-AWの予防に神経筋電気刺激を行うこ とを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 ICU獲得性筋力低下(ICU acquired weakness: ICU-AW)は,生命予後,身体機能低下や健康関連QOL低下と関連している。敗血症罹患そのものや昇圧薬の使用はICU-AW発症のリスク因子とされている。神経筋電気刺激には重症患者の筋力低下予防の効果が期待されているが,敗血症患者や昇圧薬を要する患者,浮腫のある患者では有効な筋収縮が得られにくいという報告1)もあり,有効性は明らかではない。J-SSCG 2020 2, 3)では,敗血症患者あるいは重症患者に対して,ICU-AW予防として神経筋電気刺激を実施しないことが弱く推奨された。その後の知見を踏まえて本CQでは 神経筋電気刺激のICU-AWの発症予防効果やQOLや身体機能に与える効果について検証した。 (2)効果のバランス 15編のRCTを用いたメタ解析を行った4-18)。ICU退室時のICU-AW発症割合は1,000人あたり218人減少(285人減少~117人減少)し,ICU退室以降の健康関連QOLは平均差0.2増加(0.03減少~0.43増加)した*1 。一方,短期死亡は18人増加(33人減少~79人増加)し,あらゆる有害事象は10人増加(20人減少~ 40人増加)した。それぞれの相対的価値を考慮した効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 *1 健康関連QOLの評価にはEuro Quality of life-5 dimensions and 3 levels questionnaire(EQ-5D-3L)indexが用いられていた。EQ-5D-3Lの回答から算出される指数で,0は最も悪い健康状態,1は最もよい健康状態を表す。 (3) 容認性 患者が負担する費用は,特定集中治療室管理料における早期離床・リハビリテーション加算で算定した場合は1日あたり500点,疾患別リハビリテーション料で算定した場合は1単位(20分)あたり「疾患別リハビリテーション料200点前後+早期リハビリテーション加算30点+初期加算45点」である(2023年12月現在)。神経筋電気刺激装置を必要とするため,必要資 ン診療ガイドライン2023 Japanese Clinical Practice Guidelines for Rehabilitation in Critically Ill Patients 2023(J-ReCIP 2023).日集中医誌. 2023; 30: S905-72.
-S 1283- Intensive Care. 2019; 7: 59. 10) Abu-Khaber HA, Abouelela AMZ, Abdelkarim EM: Effect of electrical muscle stimulation on prevention of ICU acquired muscle weakness and facilitating weaning from mechanical ventilation. Alexandria Journal of Medicine. 2013; 39: 309-15. 11) Baron MV, Silva PE, Koepp J, et al: Efficacy and safety of neuromuscular electrical stimulation in the prevention of pressure injuries in critically ill patients: a randomized controlled trial. Ann Intensive Care. 2022; 12: 53. 12) Cebeci GC, Cebeci H, Kucuk MP, et al: Neuromuscular Electrical Stimulator as a Protective Treatment against Intensive Care Unit Muscle Wasting in Sepsis/Septic Shock Patients. J Coll Physicians Surg Pak. 2022; 32: 1300-7. 13) Chen YH, Hsiao HF, Li LF, et al: Effects of Electrical Muscle Stimulation in Subjects Undergoing Prolonged Mechanical Ventilation. Respir Care. 2019; 64: 262-71. 14) Nakamura K, Kihata A, Naraba H, et al: Efficacy of belt electrode skeletal muscle electrical stimulation on reducing the rate of muscle volume loss in critically ill patients: A randomized controlled trial. J Rehabil Med. 2019; 51: 705-11. 15) Ojima M, Takegawa R, Hirose T, et al: Hemodynamic effects of electrical muscle stimulation in the prophylaxis of deep vein thrombosis for intensive care unit patients: a randomized trial. J Intensive Care. 2017; 5: 9. 16) Dos Santos FV, Cipriano G Jr, Vieira L, et al: Neuromuscular electrical stimulation combined with exercise decreases duration of mechanical ventilation in ICU patients: A randomized controlled trial. Physiother Theory Pract. 2020; 36: 580-8. 17) Shen SY, Lee CH, Lin RL, et al: Electric Muscle Stimulation for Weaning from Mechanical Ventilation in Elder Patients with Severe Sepsis and Acute Respiratory Failure - A Pilot Study. Int J Gerontol, 2017; 11: 41-5. 18) Bao W, Yang J, Li M, et al: Prevention of muscle atrophy in ICU patients without nerve injury by neuromuscular electrical stimulation: a randomized controlled study. BMC Musculoskelet Disord. 2022; 23: 780. 源量は中等度の増加であると判断した。医師または医師の指示のもとで看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によって実行可能であるが,安全性や実践内容を担保するための基準やプロトコルなどを各施設で整備する必要がある。集中治療領域での経験がある医療従事者と,神経筋電気刺激の開始基準やプロトコルなどの整備が確保できれば,神経筋電気刺激装置を所有する施設においては,すべてのICUにおいて実行可能と考える。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 なし。 (5)実施に関わる検討事項 実行に際しては,各施設の人員配置や構造に適した基準やプロトコルを作成する。また,敗血症や昇圧薬の使用はICU-AW発症のリスク因子であるが,神経筋電気刺激による大腿四頭筋の収縮反応不良とも関連している1)。神経筋電気刺激によりICU-AW予防の効果を得るためには,介入により筋収縮が得られていることを確認したうえで導入を検討する。 文 献 1) Segers J, Hermans G, Bruyninckx F, et al: Feasibility of neuromuscular electrical stimulation in critically ill patients. J Crit Care. 2014; 29: 1082-8. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 3) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 4) Campos DR, Bueno TBC, Anjos JSGG, et al: Early Neuromuscular Electrical Stimulation in Addition to Early Mobilization Improves Functional Status and Decreases Hospitalization Days of Critically Ill Patients. Crit Care Med. 2022; 50: 1116-26. 5) Kho ME, Truong AD, Zanni JM, et al: Neuromuscular electrical stimulation in mechanically ventilated patients: a randomized, sham-controlled pilot trial with blinded outcome assessment. J Crit Care. 2015; 30: 32-9. 6) Koutsioumpa E, Makris D, Theochari A, et al: Effect of Transcutaneous Electrical Neuromuscular Stimulation on Myopathy in Intensive Care Patients. Am J Crit Care. 2018; 27: 495-503. 7) Nakanishi N, Oto J, Tsutsumi R, et al: Effect of Electrical Muscle Stimulation on Upper and Lower Limb Muscles in Critically Ill Patients: A Two-Center Randomized Controlled Trial. Crit Care Med. 2020; 48: e997-1003. 8) Routsi C, Gerovasili V, Vasileiadis I, et al: Electrical muscle stimulation prevents critical illness polyneuromyopathy: a randomized parallel intervention trial. Crit Care. 2010; 14: R74. 9) Silva PE, de Cássia Marqueti R, Livino-de-Carvalho K, et al: Neuromuscular electrical stimulation in critically ill traumatic brain injury patients attenuates muscle atrophy, neurophysiological disorders, and weakness: a randomized controlled trial. J
-S 1284- (3)容認性 患者が負担する費用は無視できるほどの増加であるが,重症患者全般における標準治療としてICU退室後のフォローアップを実施する場合,医療者の仕事量が増えることが予測される。対象を選定したうえで行うなど,各施設の状況に応じたICU退室後のフォローアップを行うという選択肢は,患者や医療従事者にとっておそらく容認できると判断した。転棟後やPICS外来などでのフォローアップは施設によっては難しい可能性もある。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20214)では,成人の敗血症や敗血症性ショックの回復者に対し,集中治療後のフォローアッププログラムが利用可能なら紹介することが弱く推奨されている。 (5)実施に関わる検討事項 各施設の状況に応じてICU退室後のフォローアップの方法について検討が必要であり,対象の選定基準を設けることも考慮する。実施にあたっては,開始時期や継続期間,頻度,参加する職種,評価する項目などを規定する。 文 献 1) Schmidt K, Worrack S, Von Korff M, et al; SMOOTH Study Group: Effect of a Primary Care Management Intervention on Mental Health-Related Quality of Life Among Survivors of Sepsis: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016; 315: 2703-11. 2) Cuthbertson BH, Rattray J, Campbell MK, et al; PRaCTICaL study group: The PRaCTICaL study of nurse led, intensive care follow-up programmes for improving long term outcomes from critical illness: a pragmatic randomised controlled trial. BMJ. 2009; 339: b3723. 3) Valsø Å, Rustøen T, Småstuen MC, et al: Effect of Nurse-Led Consultations on Post-Traumatic Stress and Sense of Coherence in Discharged ICU Patients With Clinically Relevant Post-Traumatic Stress Symptoms-A Randomized Controlled Trial. Crit Care Med. 2020; 48: e1218-25. 4) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. CQ7-3:ICU退室後に身体機能・認知機能・精 神機能改善のためのフォローアップを行うか? Answer:ICU退室後に身体機能・認知機能・精神機 能改善のためのフォローアップを行うことを弱く推奨する(GRADE 2D)。 (1)背景 ICUに入室した生存者の多くはPICSを生じ,ICU退室後も身体機能障害や認知機能障害,精神機能障害のため社会・職場復帰が困難となる。ICU退室後のPICS症状の診療を目的としたフォローアップラウンド(PICSラウンド)や退院後のPICS症状の診療を目的としたフォローアップ外来は,身体機能や認知機能,精神機能改善を目的としている。しかし,敗血症患者に対するICU退室後のフォローアップの有効性・有害性の評価は定まっていない。 以上より,J-SSCG 2024に取り上げるべき重要臨床課題であると考えた。 (2)効果のバランス 3編のRCTを用いたメタ解析を行った1-3)。退院以降の身体機能は平均差15減少(25.41減少~4.59減少)*1し,退院以降の精神機能(うつ)は標準化平均差で0減少(0.19減少~0.19増加)*2した。あらゆる有害事象を報告している研究はなかった。一方,退院以降の認知機能は平均差0.3減少(1.35減少~0.75増加)*3し,退院以降の精神機能(心的外傷後ストレス障害,post-traumatic stress disorder: PTSD)は標準化平均差で0.1増加(0.42減少~0.62増加)*2し,望ましくない効果と考えた。 以上より,介入優位であるが,退院後の認知機能と精神機能の結果を考慮し,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 *1 身体機能はthe extra short musculoskeletal function assessment regarding physical function(XSFMA-F)で測定されている。このスコアは0から100の範囲で表示され,スコアが高いほど障害が大きいことを示す。*2 コーエンの効果サイズの解釈では,標準化平均差0.2は小さい効果を,0.5は中等度の効果を表す。*3 認知機能の評価はThe modified telephone interview of cognitive status(TICS-M)で測定されている。TICS-Mのスコアは最小値が0,最大値が50であり,スコアが高いほど障害が小さいことを示す。
-S 1285- (20分)あたり200点前後である。病院での外来リハビリテーション実施の場合は通院のため交通費や時間の捻出,患者の状況によっては介助者が必要な場合があり,容認性は患者によって異なり,頻度や方法によっても異なる。介護保険でのリハビリテーションを利用している患者もいるため,退院後の強化リハビリテーションという選択肢は患者や医療従事者にとって“さまざま”と判断した。医師または医師の指示のもとで看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によって実行可能であるが,安全性や実践内容を担保するための基準やプロトコルを各施設で整備する。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 202110)では,人工呼吸器管理が48時間を超える,もしくはICU滞在が72時間を超える成人の敗血症や敗血症性ショックの回復者において,退院後のリハビリテーションプログラムを紹介することが弱く推奨されている。 (5)実施に関わる検討事項 各施設の状況に応じて退院後の強化リハビリテーションの対象の選定基準を設ける。患者にとっては,外来リハビリテーションを実施するために交通費や時間の捻出,介助者が必要な場合がある。介護保険でのリハビリテーションを利用している患者もいるため,実施にあたっては,患者の状況に応じて開始時期や継続期間,強度や時間,頻度を規定する。 文 献 1) Jackson JC, Ely EW, Morey MC, et al: Cognitive and physical rehabilitation of intensive care unit survivors: results of the RETURN randomized controlled pilot investigation. Crit Care Med. 2012; 40: 1088-97. 2) Connolly B, Thompson A, Douiri A, et al: Exercise-based rehabilitation after hospital discharge for survivors of critical illness with intensive care unit-acquired weakness: A pilot feasibility trial. J Crit Care. 2015; 30: 589-98. 3) McWilliams DJ, Benington S, Atkinson D: Outpatient-based physical rehabilitation for survivors of prolonged critical illness: A randomized controlled trial. Physiother Theory Pract. 2016; 32: 179-90. 4) Battle C, James K, Temblett P, et al: Supervised exercise rehabilitation in survivors of critical illness: A randomised controlled trial. J Intensive Care Soc. 2019; 20: 18-26. 5) Elliott D, McKinley S, Alison J, et al: Health-related quality of life and physical recovery after a critical illness: a multi-centre randomised controlled trial of a home-based physical rehabilitation program. Crit Care. 2011; 15: R142. 6) Batterham AM, Bonner S, Wright J, et al: Effect of supervised aerobic exercise rehabilitation on physical fitness and quality-oflife in survivors of critical illness: an exploratory minimized controlled trial (PIX study). Br J Anaesth. 2014; 113: 130-7. CQ7-4:退院後に身体機能・認知機能・精神機 能改善のためのリハビリテーションを行うか? Answer:退院後に身体機能・認知機能・精神機能改 善のためのリハビリテーションを行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 ICUに入室した生存者の多くはPICSを生じ,退院後も身体機能障害や認知機能障害,精神機能障害のためQOLが低下することや長期予後不良となることが問題となる。退院後に強化リハビリテーションを行う目的は,身体機能や認知機能,精神機能の改善である。しかし,敗血症患者に対する退院後のリハビリテーションの有効性・有害性の評価は定まっていない。 以上より,J-SSCG 2024に取り上げるべき重要臨床課題であると考えた。 (2)効果のバランス 9編のRCTを用いたメタ解析を行った1-9)。退院以降の身体機能は標準化平均差で0.17増加(0.17減少~ 0.52増加)*1し,退院以降の認知機能は平均差3.5増加(1.56増加~5.44増加)*2し,退院以降の精神機能(うつ)は平均差0.24減少(3.53減少~3.05増加)*3した。一方,あらゆる有害事象は1,000人あたり29人増加(2人増加~107人増加)した。 以上より,介入優位であるが,あらゆる有害事象の結果を考慮し,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 *1 コーエンの効果サイズの解釈では,標準化平均差 0.2は小さい効果を,0.5は中等度の効果を表す。*2 認知機能の評価はMini-Mental State Examination (MMSE)で測定されている。MMSEのスコアは最小値が0,最大値が30であり,認知症が疑われるカットオフ値は23以下である。*3 精神機能:うつの評価はHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)が用いられている。HADSのスコアは最小値が0,最大値が21のスコアであり,抑うつが疑われるカットオフ値は8以上である。 (3)容認性 重症患者全般における標準的治療として退院後に強化リハビリテーションを実施する場合,医療者の仕事量が増えることが予測される。患者が負担する費用は,疾患別リハビリテーション料で算定した場合は1単位
-S 1286- FRQ7-1:PICSの予防にABCDEFGHバンドル を行うか? (1)背景 PICSは自然経過では完治が困難であることが多く,予防や早期介入が重要である。PICSを予防するためにABCDEFGHバンドルが提唱されている。これは, 2010年に人工呼吸患者での管理を包括的に改善するために提唱されたABCDEバンドル1)に,PICSあるいはPICS-Family(PICS-F)を減少させるために「FGH」が加えられた概念である2, 3)。重症患者においてABCDEFバンドルの遵守割合が高いことと院内死亡やせん妄発生減少との関連が報告されている4, 5)。しかし,PICS発症リスクの高い敗血症患者においてABCDEFGHバンドルの遵守割合を高めることでPICSを予防しうるかは明らかにされておらず,その背景知識について解説する本FRQの重要度は高い。 (2)解説 現在ICU Liberation バンドル6)として広く知られているABCDEFバンドルは,当初は人工呼吸管理患者を対象としたABCDEバンドルと呼ばれるものであった1)。コミュニケーションの標準化,ケアの改善,死亡率の低下,身体機能や認知機能の改善を目指す構成要素として,A:awaken the patient daily: sedation cessation(毎日の覚醒トライアル),B:breathing: daily interruptions of mechanical ventilation(毎日の呼吸器離脱トライアル),C:coordination: daily awakening and daily breathing(A+Bの毎日の実践)とchoice of sedation or analgesic exposure(鎮静・鎮痛薬の選択), D:delirium monitoring and management(せん妄のモニタリングと管理),E:early mobility and exercise(早期離床と運動療法)からなるバンドルである。その後, ICUにおける成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン7)と対応するように,Aの部分がassess, prevent, and manage painと変更され,“痛み”を評価,予防,管理することが強調された。あわせて,BからDも修正され,家族の参加やPICS-Fへの対応を促すF:family engagement and empowermentという要素が加わって,現在のICU入室患者を対象としたICU liberationバンドルの形となっている(Table 7-5-1)1-3, 6)。 成人重症患者を対象とした大規模多施設観察研究では,ABCDEFバンドルの遵守割合が高いことと院内死亡やせん妄発生減少に関連があることが報告されている4, 5)。国内からの報告でもバンドル遵守割合が高 7) Vitacca M, Barbano L, Vanoglio F, et al: Does 6-Month Home Caregiver-Supervised Physiotherapy Improve Post-Critical Care Outcomes?: A Randomized Controlled Trial. Am J Phys Med Rehabil. 2016; 95: 571-9. 8) McDowell K, O’Neill B, Blackwood B, et al: Effectiveness of an exercise programme on physical function in patients discharged from hospital following critical illness: a randomised controlled trial (the REVIVE trial). Thorax. 2017; 72: 594-5. 9) Shelly AG, Prabhu NS, Jirange P, et al: Quality of Life Improves with Individualized Home-based Exercises in Critical Care Survivors. Indian J Crit Care Med. 2017; 21: 89-93. 10) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247.
-S 1287- Table 7-5-1 ABCDEFGHバンドル A assess, prevent, and manage pain痛みを理解し,その評価,治療,予防のためにツールを使用する。B both SAT and SBT自発覚醒トライアルと自発呼吸トライアルを併用する。C choice of analgesia and sedation鎮静の深さの重要性を理解し,適切な薬剤を選択する。D delirium: assess, prevent, and manageせん妄の危険因子を理解し,その評価,治療,予防のためにツールを使用する。E Early mobility and exercise ICUでの早期離床・リハビリテーションは患者の体位を変えるだけではない。F family engagement and empowerment, follow-up referrals, functional reconciliation患者のケアに家族を参加させることで,患者の回復を促すことができる。フォローアップの紹介,機能的回復。G good handoff communication良好な申し送り伝達。H hand the patients and family written information about PICS or PICS-F患者やその家族への書面でのPICSやPICS-Fに関する情報提供。(文献1-3, 6より作成) 2) Davidson JE, Harvey MA, Schuller J, et al: Post-intensive care syndrome: What to do and how to prevent it. American Nurse Today 2013:32–38. 3) Harvey MA, Davidson JE: Postintensive Care Syndrome: Right Care, Right Now...and Later. Crit Care Med. 2016; 44: 381-5. 4) Barnes-Daly MA, Phillips G, Ely EW: Improving Hospital Survival and Reducing Brain Dysfunction at Seven California Community Hospitals: Implementing PAD Guidelines Via the ABCDEF Bundle in 6,064 Patients. Crit Care Med. 2017; 45: 171-8. 5) Pun BT, Balas MC, Barnes-Daly MA, et al: Caring for Critically Ill Patients with the ABCDEF Bundle: Results of the ICU Liberation Collaborative in Over 15,000 Adults. Crit Care Med. 2019; 47: 3-14. 6) ICU Liberation Bundle (A-F).Available online at: https://www. sccm.org/clinical-resources/iculiberation-home/abcdef-bundles Accessed November 12 2024. 7) Barr J, Fraser GL, Puntillo K, et al; American College of Critical Care Medicine: Clinical practice guidelines for the management of pain, agitation, and delirium in adult patients in the intensive care unit. Crit Care Med. 2013; 41: 263-306. 8) Kawakami D, Fujitani S, Koga H, et al: Evaluation of the Impact of ABCDEF Bundle Compliance Rates on Postintensive Care Syndrome: A Secondary Analysis Study. Crit Care Med. 2023; 51: 1685-96. 9) Moraes FDS, Marengo LL, Moura MDG, et al: ABCDE and ABCDEF care bundles: A systematic review of the implementation process in intensive care units. Medicine (Baltimore). 2022; 101: e29499. 10) Sosnowski K, Lin F, Chaboyer W, et al: The effect of the ABCDE/ ABCDEF bundle on delirium, functional outcomes, and quality of life in critically ill patients: A systematic review and metaanalysis. Int J Nurs Stud. 2023; 138: 104410. 11) Morandi A, Piva S, Ely EW, et al: Worldwide Survey of the “Assessing Pain, Both Spontaneous Awakening and Breathing Trials, Choice of Drugs, Delirium Monitoring/Management, Early Exercise/Mobility, and Family Empowerment” (ABCDEF) Bundle. Crit Care Med. 2017; 45: e1111-22. 12) Stollings JL, Devlin JW, Lin JC, et al: Best Practices for Conducting Interprofessional Team Rounds to Facilitate Performance of the ICU Liberation (ABCDEF) Bundle. Crit Care Med. 2020; 48: 562-70. 13) Brown JC, Querubin JA, Ding L, et al: Improving ABCDEF Bundle Compliance and Clinical Outcomes in the ICU: Randomized Control Trial to Assess the Impact of Performance Measurement, Feedback, and Data Literacy Training. Crit Care Explor. 2022; 4: e0679. 14) Sosnowski K, Mitchell ML, White H, et al: A feasibility study of a randomised controlled trial to examine the impact of the いことと院内死亡や長期死亡減少の間に関連があるとされる8)。また,観察研究を対象としたメタ解析ではABCDEバンドルやABCDEFバンドルの実施によりICU滞在日数が短縮し,院内死亡やせん妄発生が減少することが報告されている9, 10)。ABCDEFバンドルの各項目の遵守割合に関する国際調査では,地域ごとの違いはあるが多くの項目で改善の余地がある11)。遵守割合を高める介入のひとつに,多職種回診が挙げられる12)。また,メディカルスタッフ教育,データリテラシー教育,実施データへのアクセスを組み合わることで遵守割合を改善したという報告もある13)。RCT 14)や敗血症患者のみを対象とした研究15, 16)は少なく,今後の研究が望まれる。 ABCDEFバンドルは主にICU内での介入であり, ICU退室後もPICS対策を継続するためのFGHを加えた,ABCDEFGHバンドル2, 3)が提唱されている。Fには家族の参加に加え,follow-up referrals(フォローアップ紹介),functional reconciliation(機能的回復)が追加されている。Gはgood handoff communication(良好な申し送り伝達),Hはhand the patient and family written information about the elements of PICS or PICS-F(患者やその家族に対する書面でのPICSやPICS-Fに関する情報提供)であり,どちらもPICSやPICS-Fに関する情報を医療従事者と患者やその家族の双方に情報提供をすることで,PICS対策を継続することが強調されている。 現時点では,ABCDEFGHバンドル全体でのPICSやPICS-F予防をアウトカムにした臨床研究はないため, ICU退室後も含めた包括的なPICS予防であるABCDEFGHバンドルの効果検証が望まれる。 文 献 1) Vasilevskis EE, Ely EW, Speroff T, et al: Pun BT, Boehm L, Dittus RS. Reducing iatrogenic risks: ICU-acquired delirium and weakness--crossing the quality chasm. Chest. 2010; 138: 1224-33.
-S 1288- ABCDE bundle on quality of life in ICU survivors. Pilot Feasibility Stud. 2018; 4: 32. 15) Loberg RA, Smallheer BA, Thompson JA: A Quality Improvement Initiative to Evaluate the Effectiveness of the ABCDEF Bundle on Sepsis Outcomes. Crit Care Nurs Q. 2022; 45: 42-53. 16) Liu K, Kotani T, Nakamura K, et al: Effects of evidence-based ICU care on long-term outcomes of patients with sepsis or septic shock (ILOSS): protocol for a multicentre prospective observational cohort study in Japan. BMJ Open. 2022; 12: e054478.
-S 1289- CQ8-1 重症患者の家族に対して,文書などによる情報提供を行うか? モニタリング継続 敗血症(あるいは疑い)の患者と家族 PICSおよびPICS-Fのリスク因子があるか? CQ8-2 重症患者の家族に対する面会制限の緩和とは何か? CQ8-3 患者の価値観・考え方などを尊重した意思決定支援の方法は? CQ8-4 重症患者に対して,ICU日記をつけるか? No CQ8-5 重症患者の家族に対して,メンタルヘルスの改善にICU退室後のフォローアップなどの新たな介入を行うか? Yes ICU退室 診療フロー
-S 1290- その労働負担の程度は大きくなく,現行の診療体制において許容できる。介入のために新たに必要となる医療機器などはなく,医療経済の視点からも許容できる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20219)では,「敗血症または敗血症性ショック成人患者とその家族に対して,退院前と経過観察中に書面と口頭による敗血症教育(診断,治療,集中治療後/敗血症後症候群)を行うことを提案する(弱い推奨,エビデンスの質=非常に低)」と提示している。 (5)実施に関わる検討事項 今回組み入れたRCTでは患者の重症度が多様(数日以内の死亡が予測される患者も含まれる)で,情報提供の方法(ツールやタイミング)も様々であった。そのため,介入にあたっては事前に患者や家族の意向を確認するなど,適切な対象や情報提供の方法について検討する。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Lautrette A, Darmon M, Megarbane B, et al: A communication strategy and brochure for relatives of patients dying in the ICU. N Engl J Med. 2007; 356: 469-78. 4) Robin S, Labarriere C, Sechaud G, et al: Information Pamphlet Given to Relatives During the End-of-Life Decision in the ICU: An Assessor-Blinded, Randomized Controlled Trial. Chest. 2021; 159: 2301-8. 5) Greenberg JA, Basapur S, Quinn TV, et al: Daily Written Care Summaries for Families of Critically Ill Patients: A Randomized Controlled Trial. Crit Care Med. 2022; 50: 1296-305. 6) Chiang VCL, Lee RLP, Ho MF, et al: Fulfilling the psychological and information need of the family members of critically ill patients using interactive mobile technology: A randomised controlled trial. Intensive Crit Care Nurs. 2017; 41: 77-83. 7) Azoulay E, Pochard F, Chevret S, et al: Impact of a family information leaflet on effectiveness of information provided to family members of intensive care unit patients: a multicenter, prospective, randomized, controlled trial. Am J Respir Crit Care Med. 2002; 165: 438-42. 8) Rodríguez-Huerta MD, Álvarez-Pol M, Fernández-Catalán ML, et al: An informative nursing intervention for families of patients admitted to the intensive care unit regarding the satisfaction of their needs: The INFOUCI study. Intensive Crit Care Nurs. 2019; 55: 102755. 9) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. CQ8-1:重症患者の家族に対して,文書などに よる情報提供を行うか? Answer:重症患者の家族に対して,文書などによる 集中治療に関連する情報を提供することを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 ICUで診療を受ける重症患者の家族の多くは,不慣れな医療情報や医療者とのコミュニケーション不足から,患者の状態について十分に理解しにくい状況に置かれている。重症患者の家族に対して,医療者が口頭での説明だけではなく,文書による情報提供を行うことは家族の精神的症状の軽減,満足度や理解度の向上と関連することが複数の研究によって示唆されているが,その効果や有害事象について一定の見解は得られていない。J-SSCG 2020 1, 2)では,BQに対する情報提示として,「患者と家族等にPICS およびPICS-F に関する情報を正確に,かつ継続して提供することが重要と考えられている。患者に関わるメディカルスタッフは,ICU入退室時にリーフレットを渡すなど,適宜情報を提供する動きが広まりつつある。」としていた。重症患者の家族に対して,文書などによる情報提供を行うことの有用性について検討する臨床的意義は大きく,本ガイドラインにおいて扱うべき重要な臨床課題であると判断した。 (2)効果のバランス 6編のRCTを用いたメタ解析を行った3-8)。重症患者の家族に対して,文書などによる集中治療に関連する情報を提供することによって,家族の不安の程度は標準化平均差で0.27低く(0.68低い~0.13高い),うつの程度は標準化平均差で0.23低く(0.54低い~0.08高い),ストレス障害の程度は平均差で9.39低く(13.47低い~5.3低い)なった(それぞれ低いほうが症状は軽度)。また,家族の満足度(低いほうが満足度は高い)は平均差で1.26低く(2.35低い~0.17低い),家族の理解度は1,000人あたり295人増加(142人増加~479人増加)した。情報提供による有害事象についての報告はなかったことから,効果のバランスは「介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 介入にあたっての家族の自己負担はないことから,家族の視点から許容可能である。介入内容によっては医療従事者の労働量が増加することが予測されるが,
-S 1291- 中あるいはICU退室後,さらには退院後に生じる家族のメンタルヘルスの障害である。不安,うつ,心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder: PTSD)などの精神障害が生じ,患者本人だけではなく,その家族全体の生活の質(QOL)にも影響を及ぼす。 この問題の対策のひとつとして,面会制限の緩和が提案されている。面会によって患者や家族の精神的な安定がもたらされ,家族に対する情報提供の機会が増えることで,PICS-Fの発症リスクが軽減することが期待される。成人ICUを対象にした大規模RCTでは,適切な情報提供のもと面会制限を緩和することは,感染症発症率や医療者のバーンアウト率を上昇させることなく実施可能であり,家族の不安を低減し,満足度を向上させた7, 8)。さらに近年のメタ解析では,面会制限の緩和は患者のせん妄発症率の低下,ICU滞在日数の短縮に関連し,感染症発症率の増加には関連しなかったとされている9)。また,大規模な後ろ向き観察研究では退院後1年間の患者の精神障害の発生頻度が21%減少したと報告されている10)。 COVID-19パンデミック時には,面会禁止を含む厳格な面会制限が実施され,5類感染症に移行後も継続されている医療機関もある。感染症パンデミック時において重症患者の診療を行う医療者は,社会情勢,感染症発生リスク,自施設の方針や状況,患者の状態に基づいて,面会制限の緩和をどのように行うべきかを決定する。面会制限の緩和の新しい方法として,新たなテクノロジーの導入と国民への普及により,オンライン面会などの多様な介入が新たに導入された11)。これにより,物理的な制約を受けずに安全かつ簡便に患者と会い,コミュニケーションをとることが可能になる。 COVID-19パンデミック下に実施されたオンライン面会に関する単施設RCTでは,家族の満足度が向上したと報告されている12)。今後,オンライン面会を含めた面会制限の緩和の効果や影響に関する知見の蓄積が待たれる。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) 百田武司, 木村勇喜, 中山奨. 日本の集中治療室における面会の実態調査(第1報)面会の機会拡大に向けての検討. 日本赤十字広島看護大学紀要. 2014; 14: 19-27. 4) 日本集中治療医学会PICS対策・生活の質改善検討委員会.本邦の診療現場におけるpost-intensive care syndrome(PICS)の実態調査. 日集中医誌. 2019; 26: 467-75. 5) Berwick DM, Kotagal M: Restricted visiting hours in ICUs: time CQ8-2:重症患者の家族に対する面会制限の緩 和とは何か? Answer:重症患者の家族に対する面会制限の緩和と は,面会時間や面会者の制限緩和やオンライン面会などの代替面会手段を導入することであり,PICS-Fの予防に有効であるとの意見がある。自施設の状況や個々の症例に応じてその必要性を検討する(BQに対する情報)。 (1)背景および本CQの重要度 ICU入室中の患者は心身ともに重篤な状態であり,家族の存在は大きく,患者と家族の面会は重要である。面会は患者のみならず家族のメンタルヘルスにも影響を与え,面会時間を緩和することはPICS-F(post intensive care syndrome-family)の予防に有効な可能性がある。一方で,面会制限を緩和することで,処置やケアを行うにあたり医療者の負担が増加する可能性もある。また,感染症予防の観点から,面会時間や面会者を制限している施設もあり,面会制限を緩和することに対して一定の見解は得られていない。J-SSCG 20201, 2)では「成人の敗血症患者あるいは集中治療患者に対して,家族の面会制限を緩和することを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=「非常に低」)」と示していたが, COVID-19のパンデミックによって医療現場の状況が大きく変化した。COVID-19の感染症法上の位置づけが5類感染症に移行した後も多くの医療機関において厳格な面会制限が継続されており,面会制限の緩和の捉え方や,緩和の方法(オンライン面会などの代替法含む)も様々であることから,推奨を提示することは困難であると考え,BQとして情報提示を行うこととした。 (2)解説 日本における2011年の調査3)では,75.4%のICUが面会時間の制限を,92.4%のICUが面会者の制限を設けており,この割合は日本集中治療医学会のPICS対策・生活の質改善検討委員会が実施した2019年の調査4)でも同様であった。面会制限は医療の観点から必要な措置と考えられており,感染拡散の防止,患者の安静や安全の確保,治療や処置に伴う医療スタッフの作業効率化,プライバシーの保護などのために導入されている3, 5, 6)。しかし,その一方で家族は患者の情報を得にくくなり,患者・家族中心の医療の実践に支障をきたし,これらはPICS-Fの発症リスクを増加させる可能性がある。PICS-Fとは,患者がICU在室
-S 1292- CQ8-3:患者の価値観・考え方などを尊重した 意思決定支援の方法は? Answer:患者や家族を含めた多職種カンファレンス で議論を重ね,患者の価値観や意向を尊重した意思決定を支援するなどの方法がある。患者の意思が不明確な場合には,家族等の代理意思推定者を慎重に見極め,患者本人の意思を推定する方法が提案されている。患者の意思を尊重すると同時に,患者・家族に医学的に正確な情報を提供する(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 医療の複雑化や患者の価値観・考え方,ライフスタイルの多様化に伴い,意思決定支援の重要性が高まっている。患者の知る権利・自己決定権・自律の原則の尊重が重要視され,従前の医療者主導のパターナリスティックな意思決定支援から,患者の意思を尊重したインフォームド・コンセントや事前指示書(advance directive: AD)による意思決定支援が推進された。しかし,実際の状況は複雑で,患者が予想し得ないことや,特に救急・集中治療領域では病状や環境の変化が急激であることから,これらの意思決定支援方法では対応がむずかしいことが明らかになった。その結果,患者や家族と医療者が治療方針を共同で話し合うプロセスである「共同意思決定(shared decision making: SDM)」 と「人生会議(advance care planning: ACP)」が提案された。SDMやACPが家族の不安を軽減させた報告もあり,今後の普及の可能性を考え,本ガイドラインのCQとして取り上げた。 (2)解説 SDMとは,患者や家族等(家族だけではなく,患者が信頼して自身の治療・療養を決めてほしいと思う知人・友人を含む)と医療者がともに意思決定を進めることである。医療者は患者の状態と治療の選択肢・方法のエビデンスとなる正確な情報を提供し,患者と家族は患者自身の価値観や意向の情報を提供するといった双方向の継続的な過程を通して意思決定を行う。医学的な事実を整理し,患者本人による意思決定を基本として,多職種カンファレンスなどで議論を重ね,患者にとっての最善となる方針の決定を行うことが提案されている1)。この意思決定のプロセスにおいて重要となるのがACPである。患者の価値観や意向,患者が望む医療ケアの情報を提示するには,もしものときを見据えて患者と家族などがあらかじめ話し合っておく必要があり,この話し合いがACPとされている。 to change. JAMA. 2004; 292: 736-7. 6) Cappellini E, Bambi S, Lucchini A, et al: Open intensive care units: a global challenge for patients, relatives, and critical care teams. Dimens Crit Care Nurs. 2014; 33: 181-93. 7) Rosa RG, Falavigna M, da Silva DB, et al; ICU Visits Study Group Investigators and the Brazilian Research in Intensive Care Network (BRICNet): Effect of Flexible Family Visitation on Delirium Among Patients in the Intensive Care Unit: The ICU Visits Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019; 322: 216-28. 8) Rosa RG, Pellegrini JAS, Moraes RB, et al: Mechanism of a Flexible ICU Visiting Policy for Anxiety Symptoms Among Family Members in Brazil: A Path Mediation Analysis in a Cluster-Randomized Clinical Trial. Crit Care Med. 2021; 49: 1504-12. 9) Wu Y, Wang G, Zhang Z, et al: Efficacy and safety of unrestricted visiting policy for critically ill patients: a meta-analysis. Crit Care. 2022; 26: 267. 10) Moss SJ, Rosgen BK, Lucini F, et al: Psychiatric Outcomes in ICU Patients With Family Visitation: A Population-Based Retrospective Cohort Study. Chest. 2022; 162: 578-87. 11) Moss SJ, Krewulak KD, Stelfox HT, et al: Restricted visitation policies in acute care settings during the COVID-19 pandemic: a scoping review. Crit Care. 2021; 25: 347. 12) Yuan C, Xiao Y, Wang F, et al: The effect of video visitation on intensive care unit patients and family members outcomes during the COVID-19 pandemic: A randomised controlled trial. Intensive Crit Care Nurs. 2023; 76: 103394.
-S 1293- Engl J Med. 2007; 356: 469-78. 5) Kaukonen KM, Bailey M, Suzuki S, et al: Mortality related to severe sepsis and septic shock among critically ill patients in Australia and New Zealand, 2000-2012. JAMA. 2014; 311: 1308-16. 6) Schneiderman LJ, Jecker NS, Jonsen AR: Medical futility: its meaning and ethical implications. Ann Intern Med. 1990; 112: 949-54. 7) 日本集中治療医学会, 日本救急医学会, 日本循環器学会: 救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン ~3学会からの提言~. https://www.jsicm.org/pdf/1guidelines1410. pdf Accessed May 26, 2023. 8) Fletcher JC, Siegler M: What are the goals of ethics consultation? A consensus statement. J Clin Ethics. 1996; 7: 122-6. 9) Bell JAH, Salis M, Tong E, et al: Clinical ethics consultations: a scoping review of reported outcomes. BMC Med Ethics. 2022; 23: 99. 患者の意思確認ができない場合には,家族などの代理意思推定者を慎重に見極め,ACPをもとにした患者の推定意思を尊重し,患者にとっての最善の方針をとる方法が提案されている。また,家族が患者の意思を直接的に推定できない場合には,緊急ACPを行い2),患者の生活や家族などとの会話のなかから患者の意思を推測し,それをもとに患者にとって最善と考えられる方針をとることを基本とする。このようなACPや緊急ACPを活用したSDMは,死別後の家族のストレス・うつ・不安を低減すると報告されている3, 4)。SDMやACPの有用性は未だ十分に検証されていないが,今後の研究や医療制度によって実施が拡大されていくと考える。これらの方法は,一度意思決定されたら終了ではなく,時間の経過,心身の状態の変化,医学的評価の変更に応じて,繰り返し行う。このプロセスにおいて話し合った内容は,その都度,文書にまとめておく1)。 救急・集中治療医学の発展により,従来では救命不可能であった敗血症患者を救命できるようになってきている5)。これに伴い,救急・集中治療領域における終末期の状況も複雑化しており,終末期の判断について意見が対立することがある。終末期については,治療の目標を達成できる確率や,治療の結果として期待される生活の質(quality of life: QOL)を患者が受け入れられるかなどの医学的無益性に基づいて判断する6)。そのためには,主治医を含む複数の医師(複数の診療科であることが望ましい)と看護師などからなる医療チームでの十分な検討が必要である7)。また,倫理的問題の特定,分析,解決の支援により,患者ケアのプロセスと結果の改善を目的とするclinical ethics consultation(CEC)も活用する8)。CECは特定の臨床事例に関する倫理的問題に対応するために個人やチーム,委員会によって提供される9)。終末期か否かの線引きはむずかしいが,明らかに救命可能な命を終末期に持ち込んだり,明らかな延命治療を救命と誤認したりすることがないよう,患者と家族へ医学的に正確な情報を提供することが重要である。 文 献 1) 厚生労働省: 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン. Available online at: https:// www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000197721.pdf Accessed May 26, 2023. 2) 伊藤香, 大内啓: 新訂版 緊急ACP悪い知らせの伝え方,大切なことの決め方. 医学書院. 2022. 3) Detering KM, Hancock AD, Reade MC, et al: The impact of advance care planning on end of life care in elderly patients: randomised controlled trial. BMJ. 2010; 340: c1345. 4) Lautrette A, Darmon M, Megarbane B, et al: A communication strategy and brochure for relatives of patients dying in the ICU. N
-S 1294- 事者の労働量が増加することが予測されるが,その程度は大きくはなく,現行の診療体制において許容できる。また,新たに必要となる医療機器などはなく,医療経済の視点からも許容できる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 なし。 (5)実施に関わる検討事項 今回組み入れたRCTでは対象患者や家族が多様であり,介入によって精神障害が増悪する患者や家族が存在する可能性もある。また,ICU日記の記載者や記載方法(記載頻度や写真を掲載するのかも含む),開始時期や継続期間の方法も多様である。介入にあたっては事前に患者や家族の意向を確認し,実施の有無や方法について検討する。 文 献 1) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 3) Kredentser MS, Blouw M, Marten N, et al: Preventing Posttraumatic Stress in ICU Survivors: A Single-Center Pilot Ra n d o m i z e d Co n t ro l l e d Tr i a l o f ICU D i a r i e s and Psychoeducation. Crit Care Med. 2018; 46: 1914-22. 4) Nielsen AH, Angel S, Egerod I, et al: The effect of familyauthored diaries on posttraumatic stress disorder in intensive care unit patients and their relatives: A randomised controlled trial (DRIP-study). Aust Crit Care. 2020; 33: 123-9. 5) Garrouste-Orgeas M, Flahault C, Vinatier I, et al: Effect of an ICU Diary on Posttraumatic Stress Disorder Symptoms Among Patients Receiving Mechanical Ventilation: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019; 322: 229-39. 6) Sayde GE, Stefanescu A, Conrad E, et al: Implementing an intensive care unit (ICU) diary program at a large academic medical center: Results from a randomized control trial evaluating psychological morbidity associated with critical illness. Gen Hosp Psychiatry. 2020; 66: 96-102. 7) Wang S, Xin HN, Chung Lim Vico C, et al: Effect of an ICU diary on psychiatric disorders, quality of life, and sleep quality among adult cardiac surgical ICU survivors: a randomized controlled trial. Crit Care. 2020; 24: 81. 8) Rice RN, Qualls BW, Carey MG: Use of Diaries for Family Members of Intensive Care Unit Patients to Reduce Long-Term PTSD: A Pilot Study. J Patient Exp. 2022; 9: 23743735221105681. CQ8-4:重症患者に対して,ICU日記をつける か? Answer:重症患者に対して,ICU日記をつけること を弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 ICUで診療を受ける重症患者は,重症病態に伴う意識障害や鎮静管理下にあることが多く,ICUでの記憶欠損,実際にはなかった出来事が鮮明な記憶として思い起こされるといった妄想的記憶が生じ得る。ICU日記とは,ICUでの患者の日々の状況について医療者や家族らが日記に記載し,患者の回復後にその日記を渡すことにより,記憶を正しく整理・再構築することを支援するための介入である。ICU日記は,重症患者と家族におけるストレス障害や不安,うつ症状の軽減と関連することが複数の研究によって示されているが,その効果や有害事象について一定の見解は得られていない。以上より,重症患者に対して,ICU日記をつけることの有用性を検討する臨床的意義は大きく,本ガイドラインで扱うべき重要臨床課題であると判断した。なお,J-SSCG 20201, 2)では,「成人の敗血症患者あるいは集中治療患者に対して,ICU日記をつけることを弱く推奨する(GARDE 2D:エビデンスの確実性=非常に低)」としており,今回新たな論文を追加して検討を行った。 (2)効果のバランス 6編のRCTを用いたメタ解析を行った3-8)。重症患者に対して,ICU日記をつけることによって,患者のストレス障害の程度は標準化平均差で0.13低く(0.32低い~0.06高い),不安の程度は平均差で1.15低く(2.59低い~0.28高い),うつの程度は平均差で0.39低く(1.06低い~0.28高い)なった(それぞれ低いほうが症状は軽度)。また,家族の不安は1,000人あたり58人増加(43人減少~191人増加)したものの,うつは1,000人あたり19人減少(104人減少~80人増加)し,ストレス障害の程度は標準化平均差で0.09低く(0.29低い~0.11高い)なった。ICU日記をつけることによる有害事象についての報告はなかった。 以上により,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 介入にあたっての患者や家族の自己負担はないことから,患者と家族の視点から許容可能である。医療従
-S 1295- 己負担が生じることから,介入内容や家族の希望によっては容認できない可能性がある。介入のために新たに必要となる医療機器などはないが,介入により医療従事者の労働量が増加する。高度急性期機能を有する医療機関であっても人員の加配の程度は大きく異なるため,体制が整っている医療機関では容認できても,そうではない医療機関では容認できない可能性がある。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20219)では,敗血症または敗血症性ショックからICUを生存退室した成人重症患者とその家族に対する退室後のフォローアップとして,「ピアサポートグループを紹介することを提案する(弱い推奨,エビデンスの質=「非常に低」)」,「経済的・社会的支援(住居,栄養,財政,精神的支援)のスクリーニングを行い,これらのニーズに対応できる場を紹介することを推奨する(best practice statement)」,「退院計画を受け入れ可能かつ実現可能なものとするために,ICU退室後計画や退院計画における共同意思決定に参加する機会を臨床チームが提供することを推奨する(best practice statement)」,「ICU滞在,敗血症および関連する診断,治療,敗血症後の一般的な障害に関する情報を,書面および口頭による退院サマリーに含めることを推奨する(best practice statement)」としている。 (5)実施に関わる検討事項 今回組み入れたRCTでは対象や介入方法が多様であり,介入によって精神障害が増悪する家族が存在する可能性がある。実施にあたっては,事前に家族の意向を確認するとともに,フォローアップの内容や実施期間,介入を担当する医療従事者への教育などについて検討する。 文 献 1) Jones C, Skirrow P, Griffiths RD, et al: Post-traumatic stress disorder-related symptoms in relatives of patients following intensive care. Intensive Care Med. 2004; 30: 456-60. 2) Torke AM, Wocial LD, Johns SA, et al: The Family Navigator: A Pilot Intervention to Support Intensive Care Unit Family Surrogates. Am J Crit Care. 2016; 25: 498-507. 3) Bohart S, Egerod I, Bestle MH, et al: Recovery programme for ICU survivors has no effect on relatives' quality of life: Secondary analysis of the RAPIT-study. Intensive Crit Care Nurs. 2018; 47: 39-45. 4) Cox CE, Hough CL, Carson SS, et al: Effects of a Telephone- and Web-based Coping Skills Training Program Compared with an Education Program for Survivors of Critical Illness and Their Family Members. A Randomized Clinical Trial. Am J Respir Crit Care Med. 2018; 197: 66-78. 5) White DB, Angus DC, Shields AM, et al; PARTNER CQ8-5:重症患者の家族に対して,メンタルヘ ルスの改善にICU退室後のフォローアップなど の新たな介入を行うか? Answer:重症患者の家族のメンタルヘルスの改善 に,体制が整っている施設においては,ICU退室後の対面や電話,オンラインでの面談などのフォローアップを行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 PICS-Fとは,重症患者の家族の精神障害であり,患者がICU在室中や退室後,または逝去した場合に生じ,その有病率は20~40%程度とされる。重症患者の家族に対して,患者がICUを退室した後にフォローアップなどの新たな介入を行うことは,家族の精神的症状の軽減やQOLの向上と関連することが複数の研究によって示唆されているが,その効果や有害事象について一定の見解は得られていない。 以上より,重症患者の家族に対して,ICU退室後のフォローアップなどの新たな介入を行うことの有用性について検討する臨床的意義は大きく,本ガイドラインにおいて扱うべき重要臨床課題であると判断した。 (2)効果のバランス 8編のRCTを用いたメタ解析を行った1-8)。重症患者の家族に対して,ICU退室後の対面や電話,オンラインでの面談などのフォローアップを行うことによって,家族のうつの程度は標準化平均差で0.03高く(0.09低い~0.15高い)なったものの,不安の程度は標準化平均差で0.03低く(0.15低い~0.09高い),ストレス障害の程度は標準化平均差で0.01低く(0.14低い~ 0.11高い)なった(それぞれ低いほうが症状は軽度)。また,家族の精神関連QOLは標準化平均差で0.06低く(0.3低い~0.18高い),全体的健康関連QOLは標準化平均差で0.11低く(0.35低い~0.13高い)なった(それぞれ高いほうがよい)。フォローアップを行うことによる有害事象についての報告はなかった。家族の不安・うつ・ストレス障害に高い重みづけをして検討し,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 介入はICU退室後の対面や電話,オンラインでの面談によるものが多く,家族の自己負担は生じないため,家族の視点からの容認性は問題ないと考える。しかし,退院後の外来診察などの介入を行う場合には家族の自
-S 1296- Investigators: A Randomized Trial of a Family-Support Intervention in Intensive Care Units. N Engl J Med. 2018; 378: 2365-75. 6) Ågren S, Eriksson A, Fredrikson M, et al: The health promoting conversations intervention for families with a critically ill relative: A pilot study. Intensive Crit Care Nurs. 2019: 103-10. 7) Lester EG, Mace RA, Bannon SM, et al: Can a Dyadic Resiliency Program Improve Quality of Life in Cognitively Intact Dyads of Neuro-ICU Survivors and Informal Caregivers? Results from a Pilot RCT. Neurocrit Care. 2021; 35: 756-66. 8) Gawlytta R, Kesselmeier M, Scherag A, et al: Internet-based cognitive-behavioural writing therapy for reducing post-traumatic stress after severe sepsis in patients and their spouses (REPAIR): results of a randomised-controlled trial. BMJ Open. 2022; 12: e050305. 9) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247.
-S 1297- *1・ 末梢,中枢の脈拍触知不良・ 末梢温と中枢温較差・ 皮膚色不良・ 末梢冷感・ 毛細血管再充満時間(CRT)> 2秒・ 低血圧・ 頻脈・ 意識レベル 低下・ 乏尿 組織灌流悪化のサイン(右記*1のいくつか) • 血液ガス分析• 低血糖の補正• 血液培養採取後,抗菌薬を投与 • 10 ~20 mL/kgの調整晶質液のボーラス(輸液過剰の所見に注意しながら,必要に応じて40~60 mL/kgまで繰り返す) 輸液不応性ショック*1, *2をもとに評価 ・ 観血的動脈圧測定±中心静脈路確保・ 気管挿管/人工呼吸開始を考慮・ 循環作動薬開始アドレナリン:0.05 ~0.3μg/kg/minノルアドレナリン:0.05 ~0.3μg/kg/min 心収縮不良+ → アドレナリン追加ないし増量血管内容量不足+ → 調整晶質液追加ボーラス10~20mL/kgを必要に応じて繰り返す末梢血管拡張+ → ノルアドレナリン追加ないし増量末梢血管収縮+ → PDEIII阻害薬,ニトロ化合物など 体外式循環補助(V-A ECMO)も考慮 敗血症性ショックの疑い カテコラミン不応性ショック*1, *2をもとに評価*2・ 心エコー・ 乳酸値 カテコラミン不応性ショックの持続*1, *2をもとに評価 CQ9-2 小児敗血症における初期輸液はどのように行うか? CQ9-1 小児敗血症性ショックに対する経験的抗微生物薬はどのように選択するか? CQ9-3 小児敗血症性ショックに対する循環作動薬はどのように選択するか? CQ9-5 初期輸血と循環作用薬に反応しない小児敗血症性ショックに対して,ステロイド投与を行うか? • 気道確保後,酸素投与を考慮• 静脈路あるいは骨髄路確保• 急性臓器機能障害・ショックの評価 CQ9-6 小児敗血症で循環動態が安定している場合に赤血球輸血はどのような閾値で開始するか? CQ9-7 小児敗血症に対して厳密な血糖管理を行うか? 管理を継続 所見改善*1, *2をもとに評価 所見改善*1, *2をもとに評価 所見改善*1, *2をもとに評価 CQ9-4 小児敗血症に対して,循環作動薬の投与方法はどのようなものがあるか? CQ9-8 重症小児患者を中心においた診療,支援方針は? FRQ9-1 小児敗血症患者に対して,IVIG投与を行うか? 診療フロー
-S 1298- したスコアの作成を目指した。機械学習アプローチを用いて,最もパフォーマンスの高い臓器障害スコアを作成し,検証用データを用いてその妥当性を評価した。成人とは異なり,小児敗血症では死亡率と生存率に大きな不均衡があるため,area under the precision recall curve(AUPRC)を用いて,陽性的中率および感度が最大になるようにスコアを作成し,SCCMの委員会でコンセンサスを得た。 そうしてできあがったスコアがPhoenix Sepsis Scoreである(次頁表)。来院後24時間以内に感染症が疑われた小児を対象とし,呼吸機能,心血管機能,凝固機能,神経機能の4つの臓器系を抽出し,各臓器障害に0~3点のスコアをつける基準である。様々な資源や条件下でも使用できるように,各臓器障害は複数の項目から成っている。感染症が疑われ,Phoenix Sepsis Scoreで2点以上示したものを敗血症と定義した。閾値を2点以上とすることで,IPSCCによる敗血症および重症敗血症と比較し,より陽性的中率は高く,感度は高いか同等であった。また,心血管機能障害が1点以上認められるものを敗血症性ショックと定義した。多彩な環境に合わせ,血圧,乳酸値,血管作動薬のいずれを用いても心血管機能障害が評価できる。なお, Phoenix Sepsis Scoreの4項目に加え,腎機能,肝機能,内分泌機能,免疫機能の臓器障害もスコア化したPhoenix-8-organ dysfunction scoreも開発されたが, AUPRCもAUROCも Phoenix Sepsis Scoreと変わらないため採用しなかった。Phoenix-8-organ dysfunction scoreはその他の臓器障害の認識や疫学調査を目的に使用できる。 Phoenix Sepsis Scoreは本ガイドラインのパブリックコメント募集や委員会査読などが終了した段階で公開されたため,J-SSCG 2024作成時点での敗血症の定義としてはIPSCCを用いている。しかし,Phoenix Sepsis Scoreは小児敗血症の新しい定義として,広く使われていくことが予想される。小児診療に携わる読者にとって,知っておかなければならない新しい情報である。 文 献 1) Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al: The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016; 315: 801-10. 2) Goldstein B, Giroir B, Randolph A; International Consensus Conference on Pediatric Sepsis. International pediatric sepsis consensus conference: definitions for sepsis and organ dysfunction in pediatrics. Pediatr Crit Care Med. 2005; 6: 2-8. 3) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign international guidelines for the management of septic shock and sepsis-associated organ dysfunction in children. Intensive Care Med. 2020; 46: 10-67. 小児敗血症・敗血症性ショックの新しい 診断基準の登場:Phoenix Sepsis Score 成人敗血症の定義は,2016年に,感染症に伴う臓器障害に焦点を当てた”Sepsis-3”へと改定された。しかし,“Sepsis-3”の基準を作成する際の問題点として,高所得国および中所得国からの報告のみに準拠しており,さらに小児の臓器障害についてどの指標を用いて評価するかを決めることができなかった経緯があり, “Sepsis-3”をそのまま小児には適応できなかった1)。 小児敗血症の診断基準は,2005年にInternational Pediatric Sepsis Consensus Conference(IPSCC)によって報告された基準が現在まで使われてきた。IPSCCによる診断基準では,年齢別にSIRS基準を作成し,「感染症に惹起されたSIRS」を「敗血症」として定義した。また,敗血症のうち「臓器機能障害を伴うもの」を「重症敗血症」と定義し,その中で「循環不全をきたすもの」が「敗血症性ショック」であると定義した2)。IPSCC以降,小児敗血症の診断に関する研究報告はなく,J-SSCG 2020およびJ-SSCG 2024でも敗血症の定義に関するCQは設けられなかった。SSCG in children 2020でも定義に関するCQは設けられず,この定義は20年近く変わらなかった3)。 そのようななか,2019年に米国集中治療医学会(SCCM)は小児敗血症の診断基準のアップデートを目的に,Pediatric Sepsis Definition Task Forceを組織した。タスクフォースの活動のひとつとして,2022年にMenonらにより小児敗血症の診断基準に関する系統的レビューとメタ解析が報告された4)。採用された106編の文献のうち,74編(69.8%)の文献でIPSCCによる基準が用いられており,最頻の基準であることが明らかとなった。 そして,2024年1月21日,SCCMの年次総会にて,小児の新しい敗血症の診断基準となるPhoenix Sepsis Scoreが報告され,同時にJAMAからも出版された5, 6)。Phoenix Sepsis Scoreを作成するにあたり,タスクフォースは6つのhigh-resource setting(すべて米国)と4つのlow-resource setting(バングラデシュ,中国,コロンビア,ケニア)において,国際的多施設医療電子データベースを作成した。このデータベースには300万件を超える0歳から18歳未満の小児患者の入院から退院もしくは死亡までの情報が登録された。データベースは,スコア作成,内部検証用および外部検証用の3つに分けられた。退院前の新生児および妊娠37週未満の小児患者のデータは除外された。タスクフォースは,感染症による生命を脅かす臓器機能障害に着目
-S 1299- 4) Menon K, Schlapbach LJ, Akech S, et al; Pediatric Sepsis Definition Taskforce of the Society of Critical Care Medicine: Criteria for Pediatric Sepsis-A Systematic Review and Meta-Analysis by the Pediatric Sepsis Definition Taskforce. Crit Care Med. 2022; 50: 21-36. 5) Schlapbach LJ, Watson RS, Sorce LR, et al; Society of Critical Care Medicine Pediatric Sepsis Definition Task Force: International Consensus Criteria for Pediatric Sepsis and Septic Shock. JAMA. 2024; 331: 665-74. 6) Sanchez-Pinto LN, Bennett TD, DeWitt PE, et al; Society of Critical Care Medicine Pediatric Sepsis Definition Task Force; Biban P, Carrol E, Chiotos K, et al: Development and Validation of the Phoenix Criteria for Pediatric Sepsis and Septic Shock. JAMA. 2024; 331: 675-86. 表 Phoenix Sepsis Scorea(文献5, 6をもとに日本語へ改変し作成)略語:FEU, fibrinogen equivalent units, IMV, invasive mechanical ventilation a. いくつかの変数がなくても計算可能。臨床的判断に基づいて医療チームの裁量で行われることが期待される。未測定の変数はスコアに加点しない。b. SpO2≦97%の場合のみ計算する。c. 呼吸機能障害1点のスコアは,酸素吸入,高流量,非侵襲的陽圧換気,侵襲的機械換気による呼吸補助を受けているすべの患者で評価する。侵襲的機械換気を受けていない小児ではPaO2/FIO2比<200およびSpO2/FIO2比<220を含む。d. アドレナリン,ノルアドレナリン,ドパミン,ドブタミン,ミルリノン,およびバソプレシン(ショック用)の任意の用量。e. 乳酸値は動脈でも静脈でも可。基準は0.5~2.2 mmol/L 。f. 平均動脈圧の測定値を優先的に使用(侵襲的動脈圧もしくはオシロメトリック法)。使用できない場合は,(1/3×収縮期血圧+2/3×拡張期血圧)にて平均動脈圧を計算してもよい。g. 年齢は未熟児では調整されていない。出生児の入院,妊娠37週未満の小児,18歳の小児には適用されない。h. 凝固機能の基準範囲:血小板150~450×103 /μL,D-dimer<0.5 mg/L FEU,フィブリノゲン180~410 mg/dL 。PT-INRは地域ごとのプロトロンビン時間に基づく。i. 神経機能障害のサブスコアは,侵襲的機械換気の有無にかかわらず,鎮静下および非鎮静下で実用的に検証された。j. GCSは開眼,言語,運動反応に基づいて意識レベルを測定する。3から15の範囲で評価し,スコアが高いほど神経機能が良好であること を示す。
-S 1300- 症性ショックにおける経験的抗微生物薬の選択を重要な課題として取り上げた。 (2)解説 感染症診療の原則として,経験的抗微生物薬の選択には原因微生物を想定する必要がある。まず感染巣の同定が重要であり,感染巣が同定できれば,過去の疫学情報を踏まえたうえで,原因微生物を絞り込むことが可能となる。過去の報告では,小児の敗血症の原因となる感染巣は呼吸器系,尿路系が多く,その他は腹腔内,皮膚・軟部組織,中枢神経などがある2-4)。病歴,身体所見,各種検査などにより感染巣を同定できれば,患者の年齢,発生場所,患者背景から原因微生物を想定し,臓器移行性やスペクトラムをもとに抗微生物薬を選択できる。Table 9-1-1に小児の市中発症で頻度の高い感染巣ごとに,経験的抗微生物薬の候補を示した。また,市中感染症ではウイルスを原因とするものが多く,敗血症を合併することがあるため注意する。なおTable 9-1-1は,各患者の詳細な背景,各施設の疫学・アンチバイオグラムなどを踏まえたうえで,抗微生物薬を決定するための参考になることを想定している。 感染巣の同定ができない場合には,年齢,発生場所,患者背景,想定される臓器への移行性を加味して経験 CQ9-1:小児敗血症性ショックに対する経験的 抗微生物薬はどのように選択するか? Answer:感染臓器,発生場所(市中,院内,ICUな ど),患者背景(免疫状態,治療歴など)を考慮して,想定しうる微生物をカバーできる抗微生物薬を選択する(BQに対する情報提示)(Table 9-1-1を参照)。 (1)背景および本CQの重要度 敗血症性ショックにおいて,原因微生物を推定し,それに対して効果的な抗微生物薬を迅速に投与することは,患者予後に関連する重要な因子である1)。感染巣や患者の年齢,発生場所,患者背景から原因微生物を推定し,臓器移行性を考慮した最適な抗微生物薬を選択する。敗血症と診断後に速やかに投与することを目標とし,原因微生物の同定後は標的微生物に合わせて抗微生物薬を狭域化する。敗血症の診療で緊急性が求められるなか,適切な経験的抗微生物薬を選択するための情報収集は不可欠である。小児敗血症性ショックにおける経験的抗微生物薬選択は原則として成人と同様であるが,成人の場合と比較して発生率が低く,疫学情報が不足しているため,適切な経験的抗微生物薬の選択が困難なことが多い。したがって,小児敗血 Table 9-1-1 小児の市中発症の感染巣と抗微生物薬の例 感染巣年齢原因微生物抗微生物薬の例使用例備考呼吸器17) 1~6か月Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Bordetella pertussis第3世代セファロスポリンCTX: 200 mg/kg/day,6時間毎 6か月~ 5歳S. pneumoniae, H. influenzae第3世代セファロスポリンCTX: 200 mg/kg/day,6時間毎この年齢帯は原因病原体としてウイルス性が多くを占める5歳~ S. pneumoniae, H. influenzae第3世代セファロスポリンCTX: 200 mg/kg/day,6時間毎 尿路18) Escherichia coli, Enterococcus spp., Klebsiella spp., Proteus mirabilis第2, 3世代セファロスポリンCTM: 120 mg/kg/day,8時間毎 CTX: 200 mg/kg/day,6時間毎 腹腔内19) E. coli, Enterococcus spp., Klebsiella spp., P. mirabilis第3世代セファロスポリンCTX: 200 mg/kg/day,6時間毎皮膚・軟部組織20) Group A Streptococcus, Staphylococcus aureus第1世代セファロスポリンCEZ: 150 mg/kg/day,8時間毎中枢神経6)新生児(~2か月) Group B Streptococcus, E. coli, S. pneumoniae, H. influenzae type b, Listeria monocytogenes第3世代セファロスポリン+バンコマイシン+アンピシリンCTX: 300 mg/kg/day,6時間毎VCM: 60 mg/kg/day,6時間毎ABPC: 300 mg/kg/day,6時間毎特に1か月未満では抗ヘルペスウイルス薬の併用を考慮7) 15mg/kg/day,8時間毎 2か月~ S. pneumoniae, H. influenzae type b第3世代セファロスポリン+バンコマイシンCTX: 300 mg/kg/day,6時間毎VCM: 60 mg/kg/day,6時間毎世界ではNeisseria meningitidisは頻度が多いが,日本では稀 CTX:セフォタキシム,CEZ:セファゾリン,CTM:セフォチアム,VCM:バンコマイシン,ABPC:アンピシリン
-S 1301- Pediatric Sepsis. JAMA. 2018; 320: 358-67. 3) Weiss SL, Fitzgerald JC, Pappachan J, et al; Sepsis Prevalence, Outcomes, and Therapies (SPROUT) Study Investigators and Pediatric Acute Lung Injury and Sepsis Investigators (PALISI) Network: Global epidemiology of pediatric severe sepsis: the sepsis prevalence, outcomes, and therapies study. Am J Respir Crit Care Med. 2015; 191: 1147-57. 4) Ruth A, McCracken CE, Fortenberry JD, et al: Pediatric severe sepsis: current trends and outcomes from the Pediatric Health Information Systems database. Pediatr Crit Care Med. 2014; 15: 828-38. 5) Watson RS, Carcillo JA, Linde-Zwirble WT, et al: The epidemiology of severe sepsis in children in the United States. Am J Respir Crit Care Med. 2003; 167: 695-701. 6) Thigpen MC, Whitney CG, Messonnier NE, et al; Emerging Infections Programs Network: Bacterial meningitis in the United States, 1998-2007. N Engl J Med. 2011; 364: 2016-25. 7) Shah SS, Aronson PL, Mohamad Z, et al: Delayed acyclovir therapy and death among neonates with herpes simplex virus infection. Pediatrics. 2011; 128: 1153-60. 8) Okada T, Sato Y, Toyonaga Y, et al: Nationwide survey of Streptococcus pneumoniae drug resistance in the pediatric field in Japan. Pediatr Int. 2016; 58: 192-201. 9) Nakano S, Fujisawa T, Ito Y, et al: Spread of Meropenem- Resistant Streptococcus pneumoniae Serotype 15A-ST63 Clone in Japan, 2012-2014. Emerg Infect Dis. 2018; 24: 275-83. 10) Olarte L: Vancomycin Should Be Part of Empiric Therapy for Suspected Bacterial Meningitis. J Pediatric Infect Dis Soc. 2019; 8: 187-8. 11) Niedner MF, Huskins WC, Colantuoni E, et al: Epidemiology of central line-associated bloodstream infections in the pediatric intensive care unit. Infect Control Hosp Epidemiol. 2011; 32: 1200-8. 12) Zervou FN, Zacharioudakis IM, Ziakas PD, et al: MRSA colonization and risk of infection in the neonatal and pediatric ICU: a meta-analysis. Pediatrics. 2014; 133: e1015-23. 13) Prout AJ, Talisa VB, Carcillo JA, et al: Bacterial and Fungal Etiology of Sepsis in Children in the United States: Reconsidering Empiric Therapy. Crit Care Med. 2020; 48: e192-9. 14) Lukac PJ, Bonomo RA, Logan LK: Extended-spectrum β -lactamase-producing Enterobacteriaceae in children: old foe, emerging threat. Clin Infect Dis. 2015; 60: 1389-97. 15) Kizilca O, Siraneci R, Yilmaz A, et al: Risk factors for community-acquired urinary tract infection caused by ESBL-producing bacteria in children. Pediatr Int. 2012; 54: 858-62. 16) Zaoutis TE, Prasad PA, Localio AR, et al: Risk factors and predictors for candidemia in pediatric intensive care unit patients: implications for prevention. Clin Infect Dis. 2010; 51: e38-45. 17) Jain S, Williams DJ, Arnold SR, et al; CDC EPIC Study Team: Community-acquired pneumonia requiring hospitalization among U.S. children. N Engl J Med. 2015; 372: 835-45. 18) Edlin RS, Shapiro DJ, Hersh AL, et al: Antibiotic resistance patterns of outpatient pediatric urinary tract infections. J Urol. 2013; 190: 222-7. 19) Solomkin JS, Mazuski JE, Bradley JS, et al: Diagnosis and management of complicated intra-abdominal infection in adults and children: guidelines by the Surgical Infection Society and the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2010; 50: 133-64. 20) Salleo E, MacKay CI, Cannon J, et al: Cellulitis in children: a retrospective single centre study from Australia. BMJ Paediatr Open. 2021; 5: e001130. 的抗微生物薬を決定する。市中発症の小児敗血症では,感染巣が不明な敗血症のほか,呼吸器系,尿路系,腹腔内感染症の頻度が高く2),原因微生物はStreptococcus pneumoniae,Haemophilus influenzae,Staphylococcus aureus,腸内細菌目細菌(Escherichia coliなど)の頻度が高い5)。通常,これらの細菌は第3世代セファロスポリン(例:セフォタキシム)でカバーできることが多い。そのため,市中発症の感染巣を同定できない敗血症では第3世代セファロスポリンが第一選択となる。特定の条件下では,これらの細菌に加えて,特殊な微生物や耐性菌のカバーを検討する。例えば生後1か月未満の新生児では,Listeria monocytogenes 6)によるリスクが高く,アンピシリンの追加を検討するとともに,感染巣として中枢神経感染症が疑われるか,感染巣が特定できない患者において,抗ヘルペスウイルス薬の投与を検討する7)。感染巣が不明で髄膜炎の可能性が高い場合,第3世代セファロスポリン耐性株の肺炎球菌を考慮して8, 9),バンコマイシンの追加を検討する10)。 一般病棟やICU内で発症した小児の敗血症性ショックも,同様の考え方により抗微生物薬を決定する。院内発症の場合,グラム陰性桿菌では腸内細菌目細菌に加えて,Pseudomonas aeruginosaやAcinetobacter speciesなどのブドウ糖非発酵菌も原因微生物となるため11),それらのカバーも検討する。また,基礎疾患が存在する場合,MRSA,P. aeruginosa,Clostridioides difficile,真菌などによる敗血症のリスクも上昇するため12, 13),個々の患者背景,リスク,重症度に合わせて,それらの微生物をカバーする。近年,腸内細菌目細菌におけるESBL産生菌の検出頻度が増加している14)。尿路感染症,腹腔内感染症,新生児髄膜炎など,腸内細菌目細菌が原因微生物と考えられる感染巣の敗血症において,抗微生物薬の先行投与や医療曝露歴などがある場合にはESBL産生菌のリスクが上昇するため15),カルバペネムの選択も検討する。耐性菌検出歴や抗微生物薬への曝露歴があると,原因微生物が耐性菌や真菌である可能性が高まる16)。なお,抗微生物薬の各々の微生物に対する感受性は施設や地域ごとに異なるため,最終的には院内のアンチバイオグラムを参考に抗微生物薬を選択する。 文 献 1) Kumar A, Ellis P, Arabi Y, et al; Cooperative Antimicrobial Therapy of Septic Shock Database Research Group: Initiation of inappropriate antimicrobial therapy results in a fivefold reduction of survival in human septic shock. Chest. 2009; 136: 1237-48. 2) Evans IVR, Phillips GS, Alpern ER, et al: Association Between the New York Sepsis Care Mandate and In-Hospital Mortality for
-S 1302- 比べて死亡率が高かったと報告されており,施設環境によっては,投与量や投与速度をより制限した初期輸液が望ましい可能性がある。ただし,FEAST 研究に組み入れられた患者は,全体の57%がマラリアに罹患,32%がヘモグロビン(Hb)<5 g/dLの貧血をきたしていたことから,日本の敗血症患者に外挿しづらいという指摘もある。 関連する他ガイドラインの記載としては,European Resuscitation Council Guidelines 2021: Paediatric Life Support6)では1回量として10 mL/kg,1時間の最大量として40~60 mL/kgを提示,SSCG 20207)では,1回量として10~20 mL/kg,1時間の最大量として40~ 60 mL/kg(集中治療環境でなければ40 mL/kg)を提示している。ACCM-PALSのアルゴリズム以後に公表されている各種ガイドラインでは,同アルゴリズムよりも少ない1回ボーラス量が記載されている。 しかし,近年の大規模観察研究では,ERでの最初の1時間の輸液量30 mL/kg未満と30 mL/kg以上とで比較したところ,死亡率に差はなかったという報告8)や,ERでの初期輸液速度が20 mL/kg/hr増加するごとに,死亡や気管挿管の調整オッズ比が1.11,1.25と有意に上昇したという報告9)があり,現時点で輸液速度や輸液量について質の高いエビデンスに基づいた推奨を行うことは困難である。・輸液の種類 輸液の種類に関しては,生理食塩液よりも調整晶質液を用いるほうが,高クロール性代謝性アシドーシス10)や低重炭酸血症11)のリスクが低下するという報告もあるが,海外の研究では日本で一般に用いられる調整晶質液よりもNa濃度が高く,またCl濃度が低い製品が使用されているものもあり,日本における臨床応用には注意が必要である。現時点で生理食塩液と調整晶質液の優劣に関して明確に推奨に利用できるエビデンスは存在しないが,SSCGでは弱いながらも調整晶質液を推奨している11)。・輸液反応性評価 初期輸液を行う際には,輸液の前後で輸液反応性を評価し,その都度輸液量の設定や循環作動薬の使用を判断する。輸液反応性および体液量の評価は複数の指標を組み合わせる必要があり,意識状態の改善,低血圧や頻脈の是正,末梢・中枢の温度較差の縮小,乏尿の是正といった所見は,心拍出量の増加や,低灌流の是正を示唆する指標となる1)。なお,小児においては血圧の至適範囲や低血圧のカットオフ値が年齢や体格によって異なり,目標とすべき血圧の算出方法に十分なエビデンスは存在しない。参考として海外の健常小 CQ9-2:小児敗血症における初期輸液はどのよ うに行うか? Answer:小児敗血症に対しての初期輸液投与法とし て,調整晶質液に対する反応を評価しながら10~20 mL/kgずつボーラス投与を反復する方法がある。輸液過剰を示唆する臨床所見や輸液に対する反応の鈍化があれば,初期輸液中断の参考になる。特に心不全を合併している場合などはボーラス量や投与速度に注意を要する。輸液速度や輸液量の上限について提示できる情報はない(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 小児敗血症の早期認識と早期介入は重要である。特に,初期蘇生としての調整晶質液輸液は,循環動態を安定させ,臓器への適切な血流を維持するための基礎となる。一方で,過剰な輸液は呼吸状態の悪化や死亡率の上昇を招く可能性があり,適切な輸液量・輸液速度を理解し,実践することが重要である。また,輸液を行う前後で体液量および輸液反応性の有無を評価し,必要に応じて循環作動薬の使用を判断する。以上から,初期輸液の理解は,すべての小児敗血症患者の診療において重要な課題である。 (2)解説 ・輸液量と速度 敗血症患者において組織低灌流や血圧低下が合併する場合,臓器障害の進行を防ぐために初期輸液が重要となる。初期輸液の方法として,American College of Critical Care Medicine-Pediatric Advanced Life Support (ACCM-PALS)では,調整晶質液を20 mL/kgボーラス投与し,輸液過剰の徴候に注意しながら,正常な灌流と血圧が得られるまで最初の 1 時間で最大40~60 mL/kg まで投与するアルゴリズムが示されている1)。 小児敗血症患者を対象とした初期輸液の投与量・投与速度についてのRCTはこれまで4編報告されている2-5)。いずれも小規模であり,輸液の投与量・投与速度の違いにより死亡率に有意差はみられていない。しかし,1回あたり20 mL/kgの輸液を5~10分で投与した群では,15~20分で投与した群に比べて人工呼吸器管理を要する割合が増加したという報告3)や,15分間で20~40 mL/kgの輸液を投与することで肝腫大が増加したという報告2)もあり,過剰な輸液量・輸液速度による弊害を認識する。さらに,アフリカ3か国で実施されたRCT(FEAST研究)5)では,20~40 mL/ kgの急速輸液群は維持輸液のみの急速輸液なし群に
-S 1303-文 献 1) Davis AL, Carcillo JA, Aneja RK, et al: American College of Critical Care Medicine Clinical Practice Parameters for Hemodynamic Support of Pediatric and Neonatal Septic Shock. Crit Care Med. 2017; 45: 1061-93. 2) Santhanam I, Sangareddi S, Venkataraman S, et al: A prospective randomized controlled study of two fluid regimens in the initial management of septic shock in the emergency department. Pediatr Emerg Care. 2008; 24: 647-55. 3) Sankar J, Ismail J, Sankar MJ, et al: Fluid Bolus Over 15-20 Versus 5-10 Minutes Each in the First Hour of Resuscitation in Children With Septic Shock: A Randomized Controlled Trial. Pediatr Crit Care Med. 2017; 18: e435-45. 4) Inwald DP, Canter R, Woolfall K, et al; PERUKI (Paediatric Emergency Research in the UK and Ireland) and PICS SG (Paediatric Intensive Care Society Study Group): Restricted fluid bolus volume in early septic shock: results of the Fluids in Shock pilot trial. Arch Dis Child. 2019; 104: 426-31. 5) Maitland K, Kiguli S, Opoka RO, et al; FEAST Trial Group. Mortality after fluid bolus in African children with severe infection. N Engl J Med. 2011; 364: 2483-95. 6) Van de Voorde P, Turner NM, Djakow J, et al: European Resuscitation Council Guidelines 2021: Paediatric Life Support. Resuscitation. 2021; 161: 327-87. 7) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis-Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med. 2020; 21: e52-106. 8) Eisenberg MA, Riggs R, Paul R, et al; IPSO collaborative investigators: Association Between the First-Hour Intravenous Fluid Volume and Mortality in Pediatric Septic Shock. Ann Emerg Med. 2022; 80: 213-24. 9) Mullan PC, Pruitt CM, Levasseur KA, et al: Intravenous Fluid Bolus Rates Associated with Outcomes in Pediatric Sepsis: A Multi-Center Analysis. Open Access Emerg Med. 2022; 14: 375-84. 10) Stenson EK, Cvijanovich NZ, Anas N, et al: Hyperchloremia Is Associated With Complicated Course and Mortality in Pediatric Patients With Septic Shock. Pediatr Crit Care Med. 2018; 19: 155-60. 11) Lehr AR, Rached-d’Astous S, Barrowman N, et al: Balanced Versus Unbalanced Fluid in Critically Ill Children: Systematic Review and Meta-Analysis. Pediatr Crit Care Med. 2022; 23: 181-91. 12) Haque IU, Zaritsky AL: Analysis of the evidence for the lower limit of systolic and mean arterial pressure in children. Pediatr Crit Care Med. 2007; 8: 138-44. 13) Fleming S, Gill P, Jones C, et al: Validity and reliability of measurement of capillary refill time in children: a systematic review. Arch Dis Child. 2015; 100: 239-49. 14) Fleming S, Gill P, Jones C, et al: The Diagnostic Value of Capillary Refill Time for Detecting Serious Illness in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis. PLoS One. 2015; 10: e0138155. 15) Pickard A, Karlen W, Ansermino JM: Capillary refill time: is it still a useful clinical sign? Anesth Analg. 2011; 113: 120-3. 16) Scott HF, Brou L, Deakyne SJ, et al: Association Between Early Lactate Levels and 30-Day Mortality in Clinically Suspected Sepsis in Children. JAMA Pediatr. 2017; 171: 249-55. 17) Schlapbach LJ, MacLaren G, Festa M, et al; Australian & New Zealand Intensive Care Society (ANZICS) Centre for Outcomes & Resource Evaluation (CORE) and Australian & New Zealand Intensive Care Society (ANZICS) Paediatric Study Group: Prediction of pediatric sepsis mortality within 1 h of intensive care admission. Intensive Care Med. 2017; 43: 1085-96. 児の大規模調査12)によって報告された,平均血圧の中央値「55+年齢×1.5 mmHg」と5パーセンタイル値「40+年齢×1.5 mmHg」があるが,健常小児の値であることに留意する。 毛細血管再充満時間(capillary refill time: CRT)は簡便かつ非侵襲的に測定でき,反復して心拍出量が増加したかどうかを事後に評価する方法である。一般に, CRTが3秒以上の場合,末梢循環不全の可能性を示唆し,死亡率上昇と関連するとの報告がある13, 14)。しかし,CRTは患者年齢や測定部位,圧迫時間,気温,皮膚温といった種々の因子の影響を受けるという欠点や15),評価者間一致性が低いことも指摘されており, CRT単独で循環動態を評価することは避ける。 乳酸値は組織低酸素を反映するマーカーとして広く用いられており,小児敗血症においても乳酸値上昇と死亡率上昇との関連を示す報告がある16, 17)。一方で,敗血症性ショックであっても乳酸値上昇を伴わないことや,非特異的に乳酸値が上昇することもある。さらには小児において乳酸値上昇と判断できるカットオフ値も明らかではないため1, 7),経時的な推移や他の指標とあわせて循環動態を評価する。 心臓超音波検査はベッドサイドで非侵襲的に繰り返し評価が可能であり,心室前負荷や収縮性を判断する客観的な情報が得られるうえ,先天性心疾患や肺高血圧症・右心不全合併の有無も確認できる。輸液により適切な左室拡張末期容量が確保されたかどうかを評価するとともに,房室弁逆流をきたすほどの輸液は過負荷と判断する根拠となる1)。 小児において,初期輸液を実施したら心拍出量が増加するかどうかを事前に予測することは困難であるが,有用な予測因子として,ドップラー心エコーを用いたrespiratory variation in aortic blood flow peak velocity (Vpeak)は唯一の信頼できる指標であると系統的レビュー18)で報告されている。passive leg raising test 19), pulse pressure variation(PPV),stroke volume variation (SVV)18),下大静脈径の評価20),腹部圧迫による血圧変動21)などは十分な信頼性を得ていない。 以上の指標を用いて初期輸液の効果を随時評価し,反応が不十分な場合や,過剰輸液の徴候が出現した場合は,輸液負荷を中断し循環作動薬の使用を検討する(CQ9-3, 4参照)。過剰輸液の徴候とは,努力呼吸の増悪や湿性ラ音,肝腫大,ギャロップ音の出現などであり,心臓および肺の超音波検査を併用して評価する1, 6)。
-S 1304- CQ9-3:小児敗血症性ショックに対する循環作 動薬はどのように選択するか? Answer:小児敗血症性ショックに対して,身体所見 や循環動態パラメータ,心エコー所見などを総合的に判断し,アドレナリンやノルアドレナリンなどを循環作動薬として使用する(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 成人の敗血症性ショックではノルアドレナリンが第一選択となっており,小児においても血管拡張性ショックの病態でα受容体刺激作用を求める場合には,ノルアドレナリンを優先して使用することが合理的である。しかし,小児敗血症性ショックに対しては,ドパミンが第一選択として使用されるなど,依然,診療現場における不均一性の存在が推測される1)。J-SSCG 2020では系統的レビューをもとに「小児敗血症性ショックに対して,第一選択の循環作動薬としてドパミンを使用するか?」とのCQで,ドパミンを第一選択薬として使用せず,アドレナリンかノルアドレナリンを選択することを弱く推奨した2, 3)。しかし,アドレナリンに対してはGRADE 2D,またノルアドレナリンについてはエキスパートコンセンサスであった。またバソプレシンについても小児敗血症性ショックに対して使用しないことを弱く推奨するとしたが, GRADE 2Dであった。小児敗血症性ショックにおける循環作動薬の選択は,依然として重要臨床課題と考えるが,J-SSCG 2020公開後の4年間,アドレナリンを介入とした研究も含め,新たな大規模RCTの報告はなく,今後近いうちにもそのような研究成果は期待できない。そのためBQとして,これらのCQを扱うこととした。 (2)解説 J-SSCG 2020の系統的レビューでは,第一選択の循環作動薬としてドパミンとノルアドレナリンを比較した RCT は存在しなかった。ドパミンはノルアドレナリンよりもα受容体刺激作用が弱く,ドパミン受容体を介したプロラクチン分泌抑制による免疫抑制作用も懸念されるため4),血管拡張性ショックの循環動態を呈する患者においてはノルアドレナリンを選択することが合理的である。 J-SSCG 2020では,小児敗血症性ショック患者を対象とし,ドパミンとアドレナリンを比較した2編のRCTに対しても評価を行っている。ブラジルからのRCTでは,生後1か月から15歳までの120名を対象と 18) Gan H, Cannesson M, Chandler JR, et al: Predicting fluid responsiveness in children: a systematic review. Anesth Analg. 2013; 117: 1380-92. 19) Lukito V, Djer MM, Pudjiadi AH, et al: The role of passive leg raising to predict fluid responsiveness in pediatric intensive care unit patients. Pediatr Crit Care Med. 2012; 13: e155-60. 20) Carioca FL, de Souza FM, de Souza TB, et al: Point-of-care ultrasonography to predict fluid responsiveness in children: A systematic review and meta-analysis. Paediatr Anaesth. 2023; 33: 24-37. 21) Jacquet-Lagrèze M, Tiberghien N, Evain JN, et al: Diagnostic accuracy of a calibrated abdominal compression to predict fluid responsiveness in children. Br J Anaesth. 2018; 121: 1323-31.
-S 1305- 2020. 日集中医誌. 2021; 28: S1-411. 3) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S1-411. 4) Devins SS, Miller A, Herndon BL, et al: Effects of dopamine on T-lymphocyte proliferative responses and serum prolactin concentrations in critically ill patients. Crit Care Med. 1992; 20: 1644-9. 5) Ventura AM, Shieh HH, Bousso A, et al: Double-Blind Prospective Randomized Controlled Trial of Dopamine Versus Epinephrine as First-Line Vasoactive Drugs in Pediatric Septic Shock. Crit Care Med. 2015; 43: 2292-302. 6) Ramaswamy KN, Singhi S, Jayashree M,et al: Double-Blind Randomized Clinical Trial Comparing Dopamine and Epinephrine in Pediatric Fluid-Refractory Hypotensive Septic Shock. Pediatr Crit Care Med. 2016; 17: e502-12. 7) Choong K, Bohn D, Fraser DD, et al; Canadian Critical Care Trials Group: Vasopressin in pediatric vasodilatory shock: a multicenter randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med. 2009; 180: 632-9. 8) Yildizdas D, Yapicioglu H, Celik U, et al: Terlipressin as a rescue therapy for catecholamine-resistant septic shock in children. Intensive Care Med. 2008; 34: 511-7. 9) Egan JR, Festa M, Cole AD, et al: Clinical assessment of cardiac performance in infants and children following cardiac surgery. Intensive Care Med. 2005; 31: 568-73. 10) Razavi A, Newth CJL, Khemani RG, et al: Cardiac output and systemic vascular resistance: Clinical assessment compared with a noninvasive objective measurement in children with shock. J Crit Care. 2017; 39: 6-10. し,ドパミン群で死亡率が有意に高く(21% vs. 7%),医療関連感染が有意に多かった(29% vs. 2%)5)。また,インドからのRCTでは,生後3か月から12歳までの29名を対象とし,ドパミン群では1時間以内のショックからの離脱率が有意に低く(13% vs. 41%),3日目のsequential oran function assessment scoreが高い傾向にあり(12 vs. 8),organ failure-free daysが有意に短かった(20日 vs. 24日)6)。以上からドパミンを第一選択の循環作動薬として使用する根拠は乏しいと判断される。 バソプレシンについては,カテコラミンと異なるメカニズムによる昇圧作用を有するため,小児敗血症性ショック患者の循環動態改善効果が期待されてきた。J-SSCG 2020での系統的レビューでも,バソプレシン(およびその誘導体)をプラセボないし通常治療と比較したRCTが2編検討されていた。カナダからのRCTでは,小児血管拡張性ショック患者69名が対象となり,死亡率の有意な低下(30% vs. 15.6%)や循環作動薬離脱までの時間短縮は確認されなかった(49.7時間vs. 47.1時間)7)。また,トルコからのRCTでは,小児敗血症性ショック患者58名を対象とし,バソプレシンの誘導体であるテルリプレシンを使用した群は非使用群と比較して,死亡率の改善は認めなかった(67.3% vs. 71.4%)8)。他の循環作動薬とは異なるメカニズムを考慮し,症例ごとにノルアドレナリンやアドレナリンなど第一選択薬への反応性を判断し,その使用を考慮する。 小児敗血症性ショックにおける循環動態の評価は繰り返し行う必要があり,特に介入前後での評価は重要である。意識状態,血圧,脈拍数などのバイタルサインに加え,末梢・中枢の温度較差,尿量,毛細血管再充満時間,皮膚色,末梢冷感の有無,脈拍の強さなどの身体所見も丁寧に評価する。持続モニタリングデバイスなどで測定された心拍出量や体血管抵抗も有益なことがあるが,実際の循環動態と乖離がある9, 10)ため,他の所見と照らし合わせて総合的に評価する。 以上,小児敗血症性ショックに対しては,症例ごとに,身体所見,循環動態パラメータ,心エコーなどの画像所見を総合的に,かつ繰り返し評価し,ノルアドレナリンやアドレナリンを中心に薬剤による循環補助を検討する。 文 献 1) 横川真理, 笠井正志, 志馬伸朗: 本邦小児集中治療領域における敗血症性ショック管理の現状. 日集中医誌. 2018; 25: 115-20. 2) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他; 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会: 日本版敗血症診療ガイドライン
-S 1306-成人患者を対象としたARISE研究の事後解析にお いて,患者の42%で末梢静脈路から循環作動薬の投与が開始されていたが,中心静脈路からの投与と比べて開始までの時間が有意に短いと報告された(中央値2.4時間 [IQR: 1.3~3.9] vs. 4.9時間 [IQR: 3.5~6.6])9)。SSCG2020では,パネルメンバーの82%が,特に救急部やその他のPICU以外の環境で中心静脈路または骨髄路が容易に得られない場合には,まず血管作動薬を末梢静脈路から投与することがあるとしている10)。 末梢静脈路からの投与の安全性に関して,小児では複数の症例集積研究において,適切な濃度かつ短時間であれば,循環作動薬を安全に投与可能であることが示唆されている。フランスの単施設観察研究では,ノルアドレナリンを投与された小児敗血症性ショック患者144例のうち,19%の症例で末梢静脈路または骨髄路から投与されていたが,投与時間は中央値3時間[IQR: 2~4]で,副作用はなかった11)。米国PICUの観察研究では,敗血症性ショック患者63名を含む102名の小児患者で末梢静脈路からの循環作動薬投与が行われ,投与時間は中央値4.3時間 [IQR: 2.4~9],血管外漏出発生は2%であり,内科的・外科的処置を必要とする傷害の発生はなかった6)。使用された循環作動薬(多剤投与あり)は,ドパミン85%,アドレナリン25%,ノルアドレナリン11%,バソプレシン6%で,ドパミンのみ濃度の記載があった(0.8 mg/mL)。 成人および小児を対象とした最新の系統的レビューとメタ解析では,小児の末梢静脈路から血管作動薬を投与した場合の血管外漏出の発生率は3.3%(95% CI: 0.0~10.1%)であり,重篤な後遺症はなかった12)。使用された血管作動薬はドパミンが最多であるが,アドレナリンやノルアドレナリンも使用されていた。その後も観察研究が8件報告され,小児の末梢静脈路または骨髄路から血管作動薬を投与した場合の血管外漏出の発生率は0~4.9%で13-20),血管外漏出は合計50例報告されているが,そのうち1例で重篤な組織傷害が起こっていた14)。また,8編の観察研究のうち6編ではアドレナリンまたはノルアドレナリンを主に使用していた13, 14, 17-20)。 濃度に関しては,アドレナリンおよびノルアドレナリンは4~154 μg/mL,ドパミンは0.8~3.2 mg/mLで使用されている。アドレナリンおよびノルアドレナリンを比較的高濃度(80 μg/mL以上)で使用している研究もあるが14, 16, 17, 19),濃度と血管外漏出の発生率の関係性は明らかでない。各研究の投与時間に関しても,中央値または平均値で1~31時間とばらつきがある。また投与時間が1時間程度でも血管外漏出の発生率が CQ9-4:小児敗血症患者に対して,循環作動薬 の投与方法はどのようなものがあるか? Answer:小児敗血症患者の管理において,輸液不応 のショック状態では循環作動薬の迅速な投与開始が重要である。循環作動薬は血管外漏出により組織障害を引き起こすため,一般的には中心静脈路から投与される。しかし末梢静脈路や骨髄路からであっても,適切な濃度かつ短時間であれば投与可能であり,必要な循環作動薬の投与を遅らせてはならない(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 小児敗血症患者の管理において,輸液不応のショック状態では循環作動薬の迅速な投与開始が重要となる。循環作動薬は一般的に中心静脈路から投与されるが,中心静脈路の確保には時間がかかる可能性があり,循環作動薬の開始の遅延につながる恐れがある。そのため末梢静脈路から循環作動薬の投与を行うことが考慮されるが,循環作動薬は血管外漏出により組織障害を引き起こす可能性がある。現時点では臨床上どのような状況において末梢静脈路から循環作動薬を投与するかに関しての統一した見解はない。したがって,国内外のエビデンスを集約し,小児敗血症性ショックにおける末梢静脈路からの循環作動薬投与の有効性と安全性を評価する必要があり,本ガイドラインの臨床疑問のひとつとして取り上げた。 (2)解説 小児敗血症性ショックの死亡率は,国際的な疫学調査では25%1),日本からの報告でも28~32% 2, 3)と非常に高いことが報告されており,その迅速な治療は最重要臨床課題のひとつである1)。輸液不応のショック状態とは,「最初の1時間に少なくとも40~60 mL/kgの蘇生輸液を行ったにもかかわらず,ショックが持続するもの」と定義される4)。このような場合,速やかに循環作動薬の投与を開始する必要があり,理想的には輸液開始から60分以内に開始すべきとされている4)。J-SSCG 2020では輸液過剰の危険性についても述べられており5, 6),循環作動薬を迅速に開始することは敗血症性ショックの管理に不可欠な要素である。循環作動薬は末梢静脈路から投与すると血管外漏出や二次的な組織損傷や局所灌流障害などを起こすことが危惧され7),一般に中心静脈路から投与される8)。しかし中心静脈路の確保には時間がかかる場合があり,循環作動薬の投与開始の遅延につながる。
-S 1307- and Central/Intraosseous Vasoactive Infusions During and After Pediatric Critical Care Transport: Retrospective Cohort Study of Extravasation Injury. Pediatr Crit Care Med. 2022; 23: 626-34. 15) Yeong YQ, Chan JMF, Chan JKY, et al: Safety and outcomes of short-term use of peripheral vasoactive infusions in critically ill paediatric population in the emergency department. Sci Rep. 2022; 12: 16340. 16) Levy RA, Reiter PD, Spear M, et al: Peripheral Vasoactive Administration in Critically Ill Children With Shock: A Single- Center Retrospective Cohort Study. Pediatr Crit Care Med. 2022; 23: 618-25. 17) Charbel RC, Ollier V, Julliand S, et al: Safety of early norepinephrine infusion through peripheral vascular access during transport of critically ill children. J Am Coll Emerg Physicians Open. 2021; 2: e12395. 18) Kohn-Loncarica G, Hualde G, Fustiñana A, et al: Use of Inotropics by Peripheral Vascular Line in the First Hour of Treatment of Pediatric Septic Shock: Experience at an Emergency Department. Pediatr Emerg Care. 2022; 38: e371-7. 19) D’Souza M, Pye S, Randle E, et al: Use of peripheral vasoactive drug infusions during the critical care transport of children with paediatric inflammatory multisystem syndrome temporally associated with SARS-CoV-2 infection. Arch Dis Child. 2022; 107: e11. 20) Abrar S, Abbas Q, Inam M, et al: Safety of Vasopressor Medications through Peripheral Line in Pediatric Patients in PICU in a Resource- Limited Setting. Crit Care Res Pract. 2022; 2022: 6160563. 21) Kumar S, Poovazhagi V, Shanthi S: Study of Vasoactive Infusions through Peripheral Line. Pediatr Oncall J. 2015; 12: 31-3. 22) Turner DA, Kleinman ME: The use of vasoactive agents via peripheral intravenous access during transport of critically III infants and children. Pediatr Emerg Care. 2010; 26: 563-6. 4.9%と比較的高い研究がある一方で14),投与時間が最も長い研究での血管外漏出の発生率は1.5%と低く21),投与時間と合併症発生率との関係も不明である。しかし,血管外漏出が起こった患者群では,起こらなかった患者群に比較して投与時間が有意に長かったという報告もあり22),可及的早期に中心静脈路からの投与に切り替える。 小児敗血症性ショック患者に対する循環作動薬投与は,通常臨床使用濃度かつ短時間であれば重大な合併症をきたす可能性は低く,早期の循環安定化につながる可能性がある。中心静脈路からの投与に固執し,循環作動薬の投与開始を遅らせてはならないが,血行動態の安定化を図りつつも可能な限り早期に中心静脈路を挿入し,末梢静脈路からの投与を終了する。 文 献 1) Weiss SL, Fitzgerald JC, Pappachan J, et al; Sepsis Prevalence, Outcomes, and Therapies (SPROUT) Study Investigators and Pediatric Acute Lung Injury and Sepsis Investigators (PALISI) Network: Global epidemiology of pediatric severe sepsis: the sepsis prevalence, outcomes, and therapies study. Am J Respir Crit Care Med. 2015; 191: 1147-57. 2) Miura S, Michihata N, Hashimoto Y, et al: Descriptive statistics and risk factor analysis of children with community-acquired septic shock. J Intensive Care. 2023; 11: 6. 3) Shime N, Kawasaki T, Saito O, et al: Incidence and risk factors for mortality in paediatric severe sepsis: results from the national paediatric intensive care registry in Japan. Intensive Care Med. 2012; 38: 1191-7. 4) Martin K, Weiss SL: Initial resuscitation and management of pediatric septic shock. Minerva Pediatr. 2015; 67: 141-58. 5) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2020; 28: S1-411. 6) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2020; 28: S1-411. 7) Patregnani JT, Sochet AA, Klugman D: Short-Term Peripheral Vasoactive Infusions in Pediatrics: Where Is the Harm? Pediatr Crit Care Med. 2017; 18: e378-81. 8) Taylor RW, Palagiri AV: Central venous catheterization. Crit Care Med. 2007; 35: 1390-6. 9) Delaney A, Finnis M, Bellomo R, et al: Initiation of vasopressor infusions via peripheral versus central access in patients with early septic shock: A retrospective cohort study. Emerg Med Australas. 2020; 32: 210-9. 10) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al: Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis-Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med. 2020; 21: e52-106. 11) Lampin ME, Rousseaux J, Botte A, et al: Noradrenaline use for septic shock in children: doses, routes of administration and complications. Acta Paediatr. 2012; 101: e426-30. 12) Owen VS, Rosgen BK, Cherak SJ, et al: Adverse events associated with administration of vasopressor medications through a peripheral intravenous catheter: a systematic review and metaanalysis. Crit Care. 2021; 25: 146. 13) Mooli RK, Sadasivam K: Peripheral Inotropes in Critically Ill Children: Is It Safe? Glob Pediatr Health. 2021; 8: 2333794X211022250. 14) Peshimam N, Bruce-Hickman K, Crawford K, et al: Peripheral
-S 1308- 期間についての記載はない。 (5)実施に関わる検討事項 先天性副腎皮質過形成症を基礎に持つ患者や,長期間にわたってステロイド投与を受けている患者が敗血症に罹患した際には,ショックの有無に関係なくステロイドカバーが不可欠である。 文 献 1) El-Nawawy A, Khater D, Omar H, et al: Evaluation of Early Corticosteroid Therapy in Management of Pediatric Septic Shock in Pediatric Intensive Care Patients: A Randomized Clinical Study. Pediatr Infect Dis J. 2017; 36: 155-9. 2) Valoor HT, Singhi S, Jayashree M: Low-dose hydrocortisone in pediatric septic shock: an exploratory study in a third world setting. Pediatr Crit Care Med. 2009; 10: 121-5. 3) Menon K, McNally D, O’Hearn K, et al; Canadian Critical Care Trials Group: A Randomized Controlled Trial of Corticosteroids in Pediatric Septic Shock: A Pilot Feasibility Study. Pediatr Crit Care Med. 2017; 18: 505-12. 4) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. CQ 9-5:初期輸液と循環作動薬に反応しない小 児敗血症性ショックに対して,ステロイド投与を 行うか? Answer:初期輸液と循環作動薬に反応しない小児敗 血症性ショックに対して,ルーチンのステロイド投与を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D)。 (1)背景 これまで小児患者に対するルーチンのステロイド使用については様々な議論がなされ,関連する質の高い研究も少なからず存在している。J-SSCG 2020においても,同様のCQを取り扱い,「初期輸液と循環作動薬に反応しない小児敗血症性ショックに対して,ルーチンのステロイド投与を行わないことを弱く推奨する」と示されている。二次感染症の合併症を増やす可能性など望ましくない効果も予想されることから,利益と害のバランスの判断が重要となる。よって引き続き,重要臨床課題として取り上げ,エビデンスの最新化を図ることとした。なお,ここでは「敗血症性ショック」に対するルーチンのステロイド使用を扱う。 (2)効果のバランス 3編のRCTを用いたメタ解析を行った1-3)。望ましい効果は,死亡で1,000人あたり57人減少(161人減少~100人増加),ショック離脱までの日数は平均差3.3日短縮(3.97日短縮~2.67日短縮)した。したがって,望ましい効果は「小さい」と判断した。一方,望ましくない効果は,感染性合併症で1,000人あたり40人増加(68人減少~328人増加),病院滞在日数は平均差3.2日延長(0.13日短縮~6.53日延長)であり,「小さい」と判断した。以上より,効果のバランスは,「介入も比較対照もいずれも支持しない」と判断した。 (3)容認性 ステロイド投与はどの病院においても可能で,医療者の労力もわずかであり,通常の診療範囲内で介入(実施)可能と考えられる。患者・家族の個人の視点からおそらく許容できると考えられる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG 20214)においては,適切な輸液蘇生と血管収縮薬で血行動態が安定しない場合は,ヒドロコルチゾン静注またはヒドロコルチゾン無投与のいずれかを選択することが弱く推奨されている(エビデンスの質:低)。しかし,体重あたりの投与量や投与回数,投与
-S 1309- 一方,望ましくない効果は,ICU死亡率が1,000人あたり9人(11人減少~57人増加)多く,赤血球輸血合併症が1,000人あたり20人(48人減少~97人増加)多く,「わずか」と判断した。それぞれの相対的価値を考慮した効果のバランスは,「おそらく介入が優れている」と判断した。 (3)容認性 日本おける輸血のコストは約17,000円(赤血球液2単位)である。介入により赤血球輸血,その手技に関わる労力や医療費は軽減する。輸血を制限する介入はほとんどの医療施設において容易に実行できる。したがって,本介入は許容できると考えられる。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG in children 2020 5)においては,「敗血症性ショックまたはその他の敗血症に関連した臓器機能障害を有する,血行動態が安定した小児において,血中ヘモグロビン濃度が7.0 g/dL以上である場合には,赤血球輸血を行わないことを推奨する(弱い推奨,エビデンスの質は低い)」となっている。 (5)実施に関わる検討事項 チアノーゼ性心疾患などの基礎疾患を持つ患者では,より高めの閾値での赤血球輸血の開始を考慮する必要があるかもしれない。 文 献 1) Lacroix J, Hébert PC, Hutchison JS, et al; TRIPICU Investigators; Canadian Critical Care Trials Group: Pediatric Acute Lung Injury and Sepsis Investigators Network. Transfusion strategies for patients in pediatric intensive care units. N Engl J Med. 2007; 356: 1609-19. 2) Carson JL, Stanworth SJ, Dennis JA, et al: Transfusion thresholds for guiding red blood cell transfusion. Cochrane Database Syst Rev. 2021; 12: CD002042. 3) Akyildiz B, Ulgen Tekerek N, Pamukcu O, et al: Comprehensive Analysis of Liberal and Restrictive Transfusion Strategies in Pediatric Intensive Care Unit. J Trop Pediatr. 2018; 64: 118-25. 4) Elshinawy M, Kamal M, Nazir H, et al: Sepsis-related anemia in a pediatric intensive care unit: transfusion-associated outcomes. Transfusion. 2020; 60 Suppl 1: S4-9. 5) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign international guidelines for the management of septic shock and sepsis-associated organ dysfunction in children. Intensive Care Med. 2020; 46: 10-67. CQ9-6:小児敗血症で循環動態が安定している 場合に赤血球輸血はどのような閾値で開始する か? Answer:循環動態の安定している小児敗血症におい て,ヘモグロビン値7.0 g/dL を閾値として赤血球輸血を開始することを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 重篤な疾患によりICUでの治療を要する小児では,様々な要因による造血能異常や頻回の採血検査によって,貧血をきたすことも多い。また,酸素運搬におけるヘモグロビン(Hb)の意義は大きく,輸血療法は強力な治療手段のひとつと考えられる。一方,生理学的予備力の小さい患児などに対しての過剰輸血や感染・アレルギー反応などの合併症発症の影響,治療後の長期的な影響などを考慮すると,輸血療法を実施するか否かの選択は熟慮を要する。また,年齢によるHb値の基準も異なり,どのレベルにHb濃度を維持すべきかのコンセンサスは得られていない。J-SSCG 2020では,「小児敗血症で循環動態が安定している場合に赤血球輸血はいつ開始するか?」というCQに対し, 「循環動態の安定している重篤な小児敗血症患者において,Hb7.0 g/dLを閾値として赤血球輸血を開始することを弱く推奨する」としていた。Hb7.0 g/dLという値の設定根拠としては,TRIPICU study 1)などのPICUでの研究,さらには成人領域での多くの研究において,赤血球輸血閾値として広く用いられている点にある2)。小児敗血症においては,疾患背景の多様性あるいは幅広い年齢・体重の患者を扱うため,成人患者にもまして慎重に輸血閾値を勘案する必要がある。特に必要以上の輸血曝露を避けるという観点から,より低い赤血球輸血開始閾値を中心にその是非についての検討がなされており,その診療における最新のエビデンスを整理し,最新化しておくことは有益である。 (2)効果のバランス 3編のRCTを用いたメタ解析を実施した1, 3, 4)。赤血球輸血を開始するHb閾値を低めに設定することの望ましい効果は,病院死亡率(2 RCT 3, 4): n=227)が1,000人あたり117人減少(170人減少~22人減少),新規または進行性MODS(multiple organ dysfunction syndrome)は1,000人あたり5人減少(46人減少~55人増加),ICU入室期間は平均1.78日短縮(2.7日短縮~ 0.86日短縮),人工呼吸期間は平均1.02日短縮(1.77日短縮~0.27日短縮)であり,「小さい」と判断した。
-S 1310- 下を目標値とするインスリン療法を行わないことを推奨している(強い推奨,中等度のエビデンスの質)。 (5)実施に関わる検討事項 厳密な血糖管理は行わないことが望まれるが,一般的に高血糖とみなされる随時血糖値180 mg/dL以上の小児患者に対してインスリン療法を行うことを否定するものではない。なお,今回採用されたRCTにおいて,厳密な血糖管理群での管理目標値は,80~126 mg/dLの間で設定され,比較対照群での管理目標値は, 150~216 mg/dLの間で設定されていた。 文 献 1) Agus MS, Steil GM, Wypij D, et al; SPECS Study Investigators. Tight glycemic control versus standard care after pediatric cardiac surgery. N Engl J Med. 2012; 367: 1208-19. 2) Agus MS, Wypij D, Hirshberg EL, et al; HALF-PINT Study Investigators and the PALISI Network: Tight Glycemic Control in Critically Ill Children. N Engl J Med. 2017; 376: 729-41. 3) Jeschke MG, Kulp GA, Kraft R, et al: Intensive insulin therapy in severely burned pediatric patients: a prospective randomized trial. Am J Respir Crit Care Med. 2010; 182: 351-9. 4) Macrae D, Grieve R, Allen E, et al; CHiP Investigators: A randomized trial of hyperglycemic control in pediatric intensive care. N Engl J Med. 2014; 370: 107-18. 5) Vlasselaers D, Milants I, Desmet L, et al: Intensive insulin therapy for patients in paediatric intensive care: a prospective, randomised controlled study. Lancet. 2009; 373: 547-56. 6) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. CQ9-7:小児敗血症に対して,厳密な血糖管理 を行うか? Answer:小児敗血症に対して,厳密な血糖管理を行 わないことを弱く推奨する(GRADE 2C)。 (1)背景 小児敗血症患者の死亡率は依然として高く,救命率を向上させる治療・介入方法の確立は重要な命題である。一方で,実臨床においては小児敗血症患者に対する厳密な血糖管理の是非に関する判断には多様性がある。高血糖の発生は,重篤な状態にある小児患者においても,免疫能に影響を与え感染症を増悪させ,高い死亡率や入院日数の長さとの関連など予後を悪化させる可能性がある。インスリンを使用した血糖管理の重要な害として低血糖があり,低血糖の発生は重症患者の予後悪化と関連する。J-SSCG 2020では同CQを取り上げ,「小児敗血症に対して,厳密な血糖管理を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=「低」)」としたが,J-SSCG 2024 においても引き続き最新のエビデンスを整理すべき重要臨床課題であると考えた。 (2)利益と害のバランス 5編のRCTを用いたメタ解析を行った1-5)。望ましい効果として,重要度の最も高い短期死亡は1,000人あたり2人増加(10人減少~19人増加)し,ICU入室期間は平均差0.51日短縮(0.53日短縮~0.49日短縮)し,人工呼吸期間は平均差0.30日短縮(0.32日短縮~ 0.28日短縮)した。よって,望ましい効果は「わずか」であった。一方,望ましくない効果として,低血糖は1,000人あたり146人増加(108人増加~192人増加)した。望ましくない効果の程度は「中」であった。望ましくない効果が望ましい効果を上回るため,その効果のバランスは「比較対照がおそらく優れている」と判断した。 (3)容認性 介入は集中治療を行うことのできる多くの医療施設において実行可能であり,薬剤も安価ではあるが,低血糖を回避するための労力(頻繁な血糖値の確認など)は確実に増加するため,本介入はおそらく容認できない。 (4)関連する他のガイドラインにおける推奨 SSCG in children 20206)では,血糖値を140 mg/dL以
-S 1311- することで患者の転帰そのものが改善するという報告もある1, 2)。 こうした重症小児患者を中心とした患者家族も含めたケアの計画を適切に立案することは,質の高い集中治療の提供に必要なことであるが5),その最適な手法に関しては十分なエビデンスが集積されておらず,標準的な見解は定まっていない。このため,現状では各医療機関が独自に指針を策定し,それに則った患児中心の包括的ケア計画を実行する。 包括的ケア計画の例としては,家族に医療チームラウンドに参加してもらうこと,ICUに関する情報のリーフレットを家族へ提示すること,ICU日記を導入すること6),多職種(ソーシャルワーカーや心理カウンセラー)と連携して家族に関わること,ICUでの騒音低減や環境衛生に取り組むこと,可能な限り面会時間の制限を設けないこと,家族がともに過ごせる時間を確保することなどの積極的な環境整備の取り組みが挙げられる。患児の病態改善を考えることを最優先としつつ,小児診療の特殊性を念頭に,家族支援の具体的な指針を策定し包括的ケアを行うことによって,意思決定のプロセスを支援し,重症小児患者の転帰改善,ならびに家族の精神的負担の緩和が期待できる。 文 献 1) Lautrette A, Darmon M, Megarbane B, et al: A communication strategy and brochure for relatives of patients dying in the ICU. N Engl J Med. 2007; 356: 469-78. 2) Davidson JE, Jones C, Bienvenu OJ: Family response to critical illness: postintensive care syndrome-family. Crit Care Med. 2012; 40: 618-24. 3) Adelman RD, Tmanova LL, Delgado D, et al: Caregiver burden: a clinical review. JAMA. 2014; 311: 1052-60. 4) Erçin-Swearinger H, Lindhorst T, Curtis JR, et al: Acute and Posttraumatic Stress in Family Members of Children With a Prolonged Stay in a PICU: Secondary Analysis of a Randomized Trial. Pediatr Crit Care Med. 2022; 23: 306-14. 5) 杉本晃一, 黒澤寛史: 第1章 総論. PICUハンドブック. 東京, TECOM, 2018; 33-9. 6) Davidson JE, Aslakson RA, Long AC, et al: Guidelines for Family-Centered Care in the Neonatal, Pediatric, and Adult ICU. Crit Care Med. 2017; 45: 103-28. CQ9-8:重症小児患者を中心においた診療,支 援方針は? Answer:患児の利益を最優先とし,患児やその家族 の価値観や意向を尊重した意思決定を支援する必要がある。多職種で構成されたチームで,正確な医学的情報を提供することが不可欠である。特に重症小児患者における診療では,家族のケアへの参加などの環境整備を積極的に行い,意思決定のプロセスを支援することも重要である(BQに対する情報提示)。 (1)背景および本CQの重要度 小児の診療では,患児の価値観や意思表示が明確でない場面に少なからず遭遇する。重症小児患者の診療では,意思決定を委ねられる家族の精神的負担が大きく,適切な支援が必要であるが,現時点では普遍的な指針は存在しない。原則として患児の意思を尊重し,患児にとっての最善の利益を最優先事項として,医療者と家族が話し合いを重ねながらひとつの意思決定にいたる共同意思決定(shared decision making)が重要である。それに加えて,患児の家族も含めた継続的な心理的ケアも行う。 本ガイドラインでは重症小児患者特有の診療や支援方針について重要な臨床疑問として新たに加え,成人診療と異なる小児特有の事情,最優先とすべき患者利益へのアプローチ,包括的ケアのための環境整備について解説する。 (2)解説 多くの重症小児患者は,自らの診療方針に関する意思決定はできず,その決定は家族に委ねられる場面が多い。患者家族の意思決定を支援するためには,多職種で構成されたチームで,治療に対する潜在的リスクや利益について正確な医学的情報を提供することが不可欠である。これは成人診療と大きく異なる小児診療に特有の事情であるが,診療の決定を委ねられる患者家族にとって著しい精神的な負担となる可能性がある。実際に重症小児患者の家族の約1/4から1/2は,急性ストレス障害や心的外傷後ストレス障害,全般性不安,うつ病などの精神症状を経験すると報告され1-3),その要因には予想外の入院,家族関係の悪化,入院期間の長期化,子供の死亡,社会的支援の少なさ,重症小児疾患に関する社会的認識の低さがあるとされている4)。重症小児患者の診療方針を検討する際には,患児の利益と価値観を第一に考えるとともに,診療の決定を委ねられる患者家族へのケア計画を十分に整備
-S 1312- ルーチンでIVIGを投与しないことを提案する(弱い推奨,低いエビデンスの質)」としている5)。 成人領域においてはその効果は否定的であり,本ガイドライン,SSCG 2021ともに,成人敗血症患者にはIVIGの投与を行わないことを弱く推奨している4)。新生児領域においても,早産児を主体に実施された質の高い大規模多施設RCT(INIS trial)10)やそれを含むメタ解析1, 11)において,重症感染症に対するIVIGの治療効果が明確に否定されている。 現状を鑑みると,小児患者を対象としたIVIGに対する質の高い大規模多施設RCTが望まれる。その際には,感染症の種類(毒素性ショック症候群,壊死性筋膜炎など)や併存疾患(低ガンマグロブリン血症や免疫不全など)の有無に応じた層別化を行い,それらの集団におけるIVIGの効果に関する不確実性を解消することが理想的であろう12-14)。 文 献 1) Alejandria MM, Lansang MA, Dans LF, et al: Intravenous immunoglobulin for treating sepsis, severe sepsis and septic shock. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 2013: CD001090. 2) Busani S, Damiani E, Cavazzuti I, et al: Intravenous immunoglobulin in septic shock: review of the mechanisms of action and meta-analysis of the clinical effectiveness. Minerva Anestesiol. 2016; 82: 559-72. 3) Aubron C, Berteau F, Sparrow RL: Intravenous immunoglobulin for adjunctive treatment of severe infections in ICUs. Curr Opin Crit Care. 2019; 25: 417-22. 4) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021; 47: 1181-247. 5) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al: Surviving sepsis campaign international guidelines for the management of septic shock and sepsis-associated organ dysfunction in children. Intensive Care Med. 2020; 46: 10-67. 6) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日集中医誌. 2021; 28: S354-356. 7) 江木盛時, 小倉裕司, 矢田部智昭, 他: 日本版敗血症診療ガイドライン2020. 日救急医会誌. 2021; 32: S354-356. 8) van der Poll T, Shankar-Hari M, Wiersinga WJ: The immunology of sepsis. Immunity. 2021; 54: 2450-64. 9) El-Nawawy A, El-Kinany H, Hamdy El-Sayed M, et al: Intravenous polyclonal immunoglobulin administration to sepsis syndrome patients: a prospective study in a pediatric intensive care unit. J Trop Pediatr. 2005; 51: 271-8. 10) INIS Collaborative Group; Brocklehurst P, Farrell B, King A, et al: Treatment of neonatal sepsis with intravenous immune globulin. N Engl J Med. 2011; 365: 1201-11. 11) Ohlsson A, Lacy JB: Intravenous immunoglobulin for suspected or proven infection in neonates. Cochrane Database Syst Rev. 2020; 1: CD001239. 12) Parks T, Wilson C, Curtis N, et al: Polyspecific Intravenous Immunoglobulin in Clindamycin-treated Patients With Streptococcal Toxic Shock Syndrome: A Systematic Review and Meta-analysis. Clin Infect Dis. 2018; 67: 1434-6. 13) Kadri SS, Swihart BJ, Bonne SL, et al: Impact of Intravenous Immunoglobulin on Survival in Necrotizing Fasciitis With Vasopressor-Dependent Shock: A Propensity Score-Matched Analysis From 130 US Hospitals. Clin Infect Dis. 2017; 64: FRQ9-1:小児敗血症患者に対して,IVIG投与 を行うか? (1)背景 日本では重症感染症に対する免疫グロブリン(IVIG)の投与が保険適用となっており,臨床予後の改善効果は不明ではあるが,投与されることがある。一方,海外では免疫修飾(immunomodulation)を目的とした,より大量の投与が試みられているが,その研究結果には一貫性がなく, 新生児を除く小児患者を対象とした質の高いRCTも不足している1-3)。成人患者に対しては投与しないことが弱く推奨されており4),小児患者に対してもルーチンでの投与をしないことが弱く推奨されつつも5-7),有効性・有害性の評価は定まっていない。また,血漿分画製剤であるIVIGは安価ではなく,その臨床効果を明確にする意義は大きい。新たなエビデンスの積み重ねはないものの小児敗血症患者の致死率は高く,日本の小児敗血症診療を考えると,IVIGに関する情報を明示しておくことは未だ重要な項目であると考え,本ガイドラインにおいても取り上げることとした。 (2)解説 敗血症は,感染症に伴う生体反応が調節不能な状態となり,重篤な臓器障害が引き起こされる状態と定義され,その宿主反応の一部に,高炎症状態(hyperinflammation)と免疫抑制(immunosuppression)が関与している。IVIGは病原微生物や毒素の中和による受動免疫の増強と炎症性メディエーターの抑制を通じて免疫調整作用を発揮し,炎症を軽減する薬理作用が期待されている5, 8)。 しかし,小児敗血症患者を対象としたIVIGに関する質の高い研究は乏しい。これまでに1編のRCTが存在する。小児敗血症患者100名を対象にしたpolyclonal IVIGのRCTであり,院内死亡率(28 % vs. 56 %), PICU滞在日数(6.1日 vs. 9.1日),合併症進行(8 % vs. 32 %)の減少を示した9)。しかし,この研究は単施設かつサンプル数の小さい非盲検RCTであり,またそのランダム化の方法が明記されておらず,対象母集団が比較的年少児(生後1か月から2歳)に限られているため,小児敗血症患者全体に一般化しづらいなどの懸念がある。そのため,J-SSCG 2020においても,このエビデンスだけを利用した推奨作成は回避され, IVIGの有効性・有害性の評価は定まっていない。SSCG in children 2020においても,「敗血症性ショックまたは敗血症関連臓器機能障害の小児患者に対して
-S 1313- 877-85. 14) Madsen MB, Hjortrup PB, Hansen MB, et al: Immunoglobulin G for patients with necrotising soft tissue infection (INSTINCT): a randomised, blinded, placebo-controlled trial. Intensive Care Med. 2017; 43: 1585-93.
-S 1314- 日本集中治療医学会雑誌 Vol. 31 Supplement 2 2024 年12 月25 日 発行製 作株式会社Gakken〔〒141-8416〕 東京都品川区西五反田2-11-8 TEL.03-6431-1211 FAX.03-6431-1214 E-mail:jjsicm@gakken.co.jp本書の著作権は一切学会が所有しています.したがって,当学会の許諾を得ないで本書を転載刊行することを禁じます. 発行人理事長 黒田 泰弘 発行者一般社団法人 日本集中治療医学会〔〒113-0033〕東京都文京区本郷2-15-13 お茶の水ウイングビル10F TEL.03-3815-0589 FAX.03-3815-0585 E-mail:jimu@jsicm.org Web site:https://www.jsicm.org/ 編集人日本版敗血症診療ガイドライン2024 特別委員会 日本集中治療医学会機関誌編集・用語委員会委員長 高橋 伸二